(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記インク保持体がインクの流出を阻害するため、筆記や塗布時にインクの供給が追い着かかなくなり、筆記や塗布が不十分になる問題点がある。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、インク保持体を配設してもインクが十分に供給できる塗布具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、インクタンクから塗布部に、インクを誘導するコレクター芯と、
コレクター芯が貫通配置され、インクを一時保溜するコレクターと、
前記コレクターに収容されて、インクを保持するインク保持体とを備え、
前記コレクター芯が前記インク保持体からインクタンク側に露出して配置されていることを特徴とする塗布具である。
【0010】
本発明は、インクタンクから塗布部に、インクを誘導するコレクター芯と、
コレクター芯が貫通配置され、インクを一時保溜するコレクターと、
前記コレクターに収容されて、インクを保持するインク保持部とを備え、
前記コレクターの後端部から前方にかけて切り欠き部が形成されたことを特徴とする塗布具である。
【0011】
本発明において、前記インク保持体は、気孔径が100〜1200μmの多孔質体から構成されていることが好適であり、150〜300μmが最も好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塗布具によれば、コレクターにインク保持部を備えているため、インクが粘度の低いものであってもコレクター及びインク保持部にインクを保持して直流などを十分に防止できるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は第1の実施形態に係る塗布具のキャップをした状態の(a)、(b)が側面図、(c)が縦断面による説明図、
図2は同斜視図、
図3はキャップをとった状態の塗布具の説明図、
図4はコレクターの説明図、
図5はコレクター周囲の説明図である。なお、実施形態の説明では、塗布具1及びその構成部品についての「前方」とは軸線方向における筆記部を備えた方向を示し、「後方」とはその反対側の方向、若しくは軸筒が閉鎖された側の方向を示すものとする。
【0016】
図1〜
図3に示すように第1の実施形態の塗布具は、軸筒10後部のインクタンク12から塗布部(インク供給芯)14からインクを誘導するコレクター芯16と、コレクター芯16が貫通配置され、インクを一時保溜するコレクター18と、前記コレクター18に収容されて、インク保持部であるインクを含侵するインク保持体20とを備え、前記コレクター芯16が前記インク保持体20からインクタンク12側に露出して配置されている。なお、塗布部14は軸筒10先端に前記塗布部14先端が突出しており、塗布部14を覆うようにキャップ22が着脱自在に装着されている。
【0017】
詳しくは、前記塗布具の構造は、
図1に示すように、軸筒10の後部には、後端が閉鎖された筒形状のインクタンク12が嵌入している。前記軸筒10は、その先端が先細り形状を呈した筒形状を呈し、インクタンク12の先端が前記軸筒10の後端の内周に嵌入している。前記インクタンク12は、後端が閉鎖された筒状を呈して後軸24で覆われており、後軸24の先端の内周には軸筒10の後端が嵌入している。
【0018】
図1(c)に示すように、軸筒10は、略筒状でその先端は先細り形状を呈している。前記軸筒10の外周には、前記軸筒10の後端から約1/4程度の位置に、その外径が後軸24の外径と略同径であり、後軸24の先端が当接するフランジ部26が設けられている。また、軸筒10は、フランジ部26を境にして、略円筒状を呈した後方側の軸筒後部と、先細り形状を呈した前方側の軸筒前部とを備えている。
【0019】
この軸筒10の前部には、外周面に前記キャップ22が着脱自在に嵌着している。
【0020】
軸筒10は、塗布具の外部構造であり、後部内に長さ方向に途中部が閉塞されたインクタンク12が嵌着されている。また、軸筒10の後部でインクをインクタンク12に収容し、後軸24で覆っているが、収容方法は特に限定されるものではなく、軸筒10の内部に直接インクを収容するものであってもよいし、インクが充填されたインクリフィルを軸筒10の内部に収容するものであってもよい。
【0021】
また、軸筒10の先端部分には、継手28が内装されている。前記継手28がコレクター18先端付近において、塗布部14の後部がコレクター芯16に接続状態であることを保持するように支持するものである。軸筒10の先端孔内には、継手28の先端を挿入するように縮径された軸筒前部縮径孔30aと、軸筒前部縮径孔30aの前方に連設しているアウター32が挿入されるアウター挿入孔30bとが設けられている。なお、軸筒10の先端近傍の外周には、滑り止めとなるようなグリップ部材30cが装着されている。
【0022】
〔軸筒10の内部構造〕
図1(c)に示すように、軸筒10の内部には、PBTやABS樹脂等の樹脂製のコレクター18が圧入されている。コレクター18においては、複数枚の板状部材が軸方向に平行に配され、この板状部材間に図示しないインクが保溜可能となっている。さらに、そのコレクター18の軸心には、繊維束体により形成されたコレクター芯16が貫通して装着されている。また、軸筒10の前方側、すなわち、コレクター18の前方には継手28が装着される。
【0023】
〔継手28の構造〕
図1(c)に示すように、継手28は、略筒状の中心部材28aと、中心部材28aの後方の外周にコレクター18の先端の厚さ分の空隙部を有するように、中心部材28aの後端から約1/4から約1/3あたりまでに成形された略筒状の周辺部材28bと、周辺部材28bの先端から中心部材28aの先端から約1/3の位置までを覆うように形成された介在部材28cとからなるものである。
【0024】
前記中心部材28aの内部には、後方からコレクター芯16が挿入され、前方から塗布部14が挿入される。
【0025】
中心部材28aの内周には、コレクター芯16と略同径の後方挿入孔が中心部材28aの後端に、塗布部14と略同径の中央挿入孔及び前方挿入孔とが中心部材28aの中央から先端にかけて設けられている。前記中心部材28aは後方円柱部と前方円柱部とを備える。後方円柱部の外径は、コレクター18の先端部の内径と略同径であり、当該後方円柱部がコレクター18の先端内部に装着されている。
【0026】
さらに、前記前方円柱部の外径は、アウター32の後方に設けられた後部挿入孔の径と略同径である。
【0027】
図1(c)に示すように、前記周辺部材28bは、コレクター18の筒状の先端部を覆っている。
【0028】
継手28は、二色成形により成形された部品であり、中心部材28a及び周辺部材28bを一次成形で成形し、これら中心部材28a及び周辺部材28bに対し介在部材28cを二次成形により一体成形している。介在部材28cは、撓りをもたせるため、弾性樹脂材料によって形成されることが好ましい。
【0029】
また、弾性樹脂材料としては、成型工程において、金型を用いて、高温下で行うため熱可塑性のエラストマーが望ましい。なお、一次成形体である中心部材28a及び周辺部材28bの材質はPBT樹脂等の硬質樹脂が望ましい。
【0030】
〔アウター32〕
また、アウター32は、円筒状のアウター固定部と、アウター固定部の前方に連設する略円錐形状のアウターテーパー部とからなる。アウターテーパー部の先端は、面取りされた先端部に形成されている。
【0031】
また、アウター32には、その後端から先端に向けて中心孔が形成されている。アウター32は、前記軸筒10のアウター挿入孔30bに装着されることで、前記軸筒10に固定される。そして、アウター32はその中心孔に塗布部14を挿入させて、当該塗布部14を被覆する。この際、アウター32の後部挿入孔に継手28の前方円柱部が挿入され、前部挿入孔には、前記継手28から突出している塗布部14が挿入される。
【0032】
〔塗布部14〕
前記塗布部(インク供給芯)14は、ポリアセタール等の樹脂素材を押出成形することにより形成され、押出成形時には、毛細管現象により塗布部14の先端までインクを誘導するための通路が形成されている。また、コレクター芯16は、ポリエステル等の繊維芯で形成されている。
【0033】
なお、上記のインクを誘導するための通路は、押出成形時に、塗布部14の内部に毛細管力が発生する間隙を形成することも、塗布部14の外部に毛細管力が発生する間隙を形成することも可能である。また、塗布部14は繊維芯や焼結芯等でもよく、コレクター芯は押出成形品や焼結体等でも良い。さらには塗布部14とコレクター芯16は一体成形されていても良い。
【0034】
なお、キャップ22は、塗布部14を覆う内筒22aが軸筒10先端に嵌着する。
【0035】
〔コレクター18〕
コレクター18は、詳細には、
図4に示すように、長さ方向の前部のほぼ1/3がインクを保溜する機能のあるインク保溜部18aになっている。前記長さ方向の中央のほぼ1/3が外観を前部に類似させたダミー部18bになっている。前記長さ方向の後部のほぼ1/3が切り欠き部18c1のある筒状部18cになっている。
【0036】
また、前記コレクター18には、中心軸部内に内部空洞孔のある装着筒部18dが前後方向に亘って形成され、その装着筒部18dの周囲に前部と後部にインク保溜部18aとダミー部18bが形成されている。なお、前記装着筒部18dの前部は継手28を装着するため段状に拡径している(拡径部に符号「18d1」を付する)。
【0037】
前記インク保溜部18aは所定のインク保溜機能を有するように、装着筒部18d周囲に枚葉体が複数軸方向に配列されて固定されている。
【0038】
また、前記ダミー部18bは、インク保溜部18aの枚葉体と外形的に似ているがインク保溜機能が問われずに、軸方向にスリット18eが形成され,径方向に貫通孔18fが形成されている。
【0039】
前記筒状部18c内にインクを保持するインク保持体20が収容されている。収容されたインク保持体20は、コレクター芯16が装着筒部18d内を貫通して装着された状態貫通するように設けられる。
【0040】
前記切り欠き部18c1は、前記コレクター18の後部の筒状部18cにおいてその後端部から前方にかけて形成されおり、スリット18eに連通している。インクタンク12内部から切り欠き部18c1からスリット18eを経由してインクを前記インク保溜部18aに一時保溜可能にしている。なお、切り欠き部18c1はスリット18eと軸方向の同一直線上に形成されていることが好適である。また、筒状部18cにインク保持体20を挿入した際における塗布部14とインクタンクとの空気置換のために筒状部18cの内部にはリブ18c2が形成される。
【0041】
〔インク保持体20〕
前記インク保持体20は、気孔径が100〜1200μmの多孔質体から構成されていることが好ましく、150〜300μmが最も好ましい。気孔径は、光学顕微鏡および電子顕微鏡にて観察した際の、20個の気孔について測定した気孔径の平均値である。気孔が円形でない場合は、気孔を形成する輪郭の任意の2点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さと最も短い線分の長さを足して2で割った値を、その気孔の気孔径とする。
【0042】
前記インク保持体20にスポンジ、焼結体、海綿体、ポーラス体、発泡体等の多孔質の物質における気孔率は、多孔体のみかけの体積に対する空隙部分の体積比をいい、下記のようにして導出される。まず、既知の質量及び見掛け体積を有する塗布具用ペン芯を水中に浸し、十分に水を浸み込ませた後、水中から取り出した状態で質量を測定する。測定した質量から、塗布具用ペン芯に浸み込ませた水の体積が導出される。この水の体積を塗布具用ペン芯の気孔体積と同一として、下記式(A)から気孔率が算出される。
気孔率(単位:%)=(水の体積)/(塗布具用ペン芯の見掛け体積)×100 …(A)
【0043】
また、コレクター芯16をインク保持体20に挿入した後に、インク保持体20を圧縮することでコレクター芯16と密着する構成になっている。
【0044】
コレクター18はダミー部18bを設けることが好適である。
【0045】
実施形態の塗布具は油性インクコレクター用であるが、表面張力の低い水性インクにも適用可能である。また、表面張力の高いインクにも使用可能である。
【0046】
具体的なインクとしては、インキ組成物の25℃における表面張力が、25〜30mN/mが好適である。
【0047】
界面活性剤の配合量は、インキ全量に対して、0.05〜5重量%であることが好適である。
【0048】
溶剤は、樹脂や着色剤を十分溶解できるものを使用する。具体的には、炭素数4以下の脂肪族アルコールや、炭素数6以下のグリコールエーテル系溶剤を、単独、又は併用して使用できる。
【0049】
炭素数4以下の脂肪族アルコールの例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコールが挙げられる。
【0050】
炭素数6以下のグリコールエーテル系溶剤の例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
【0051】
また、筆記描線の白化を抑える目的で、フェニルグリコール、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのような低蒸気圧成分を少量添加しても良い。
【0052】
樹脂の配合量は、インキ全量に対して2重量%以上かつ分子量が20,000以下であることが好適である。
【0053】
着色剤は、前述した溶剤、及び樹脂と十分相溶するものであれば特に限定されないが、通常筆記具や印刷インキ、塗料などに用いられる油溶性染料が好ましく用いられる。具体例として、オイルレッド5B、バリファーストブラック#3810、3820(以上、オリエント化学工業(株))、スピロンレッドC−GH、スピロンイエローC−GNH(以上、保土ヶ谷化学(株))、ローダミン、メチルバイオレットなどがある。これらは単独で使用しても良いが、必要に応じて2種類以上混合して用いることもできる。その配合量は、インキ全量に対して3〜20重量%が好ましい。
【0054】
インク保持体20は、具体的には、コレクター18に装着された状態で、コレクター芯16がインク保持体20から突出する状態に設けられている。
【0055】
前記コレクター芯16は、ポリアセタール等の樹脂素材を押出成形することにより形成することもできる。なお、押出成形時には、毛細管現象によりコレクター芯16の先端までインクを誘導するための通路が形成されている。また、前記コレクター芯16は繊維芯や焼結芯等でもよい。
【0056】
実施形態の塗布具によれば、コレクター18にインク保持体20を収容しているため、インクが粘度の低いものであってもインク保持体20にインクを保持して直流などを防止できるという優れた効果を奏する。また、上向きにしても筆記し続けることが可能となる。
【0057】
また、塗布部14は筆記時に前後に摺動するため、筆記感が柔らかくできる。また、塗布部14の摩耗を低減することができる。
【0058】
また、コレクター18は、ダミー部18bや筒状部18cがあるためインク保溜部18aが短く保溜能力が小さいが、これに対してインクタンク12は、後軸24よりも短く形成してインク貯留量を少なくし、インク保持体20でインクを貯留できるので噴出を防止するようにしている。
【0059】
インクタンク12は途中に仕切りがあり、当該インクタンク12の容量を減らしているが、後軸24が透明の場合にその仕切りが外部から見えてしまうので、後軸24の外周に転写フィルムを被覆して仕切りを目立たなくすることが好ましい。
【0060】
前記実施形態の塗布具に限定されず、本発明の範囲内で変更することができる。例えば、コレクター18のインク保留部18aやインク保持体20のインク保留力はインクの粘度等の特性に応じて設定することが好ましい。
【0061】
図6は第2の実施形態に係る塗布具のコレクターの説明図、
図7はキャップをとった状態の塗布具及びコレクター周囲の説明図である。
第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点はコレクター18に関する構造であり、他の部品については第1の実施形態と同様である。なお、符号については共通している箇所は同じ番号を付与している。
【0062】
コレクター18は、第1の実施形態では筒状部18cの内部にはインク保持体20が収容されるが、第2実施形態では、筒状部18cとインク保持体20が一体となった蛇腹体34が形成され、この蛇腹体34がインク保持部として機能し、インク保持体20と同等の作用を持つ。当該蛇腹体34は、インク保溜部18aやダミー部18bと類似した枚葉体が形成されているが、枚葉体の軸方向の幅はインク保溜部18aや、ダミー部18bの幅より大きく形成されている。気圧変化でインクタンク12内からあふれたインクが切り欠き部18c1を通って蛇腹体34に保溜され、また、さらには、スリット18eを経由してインク保溜部18aに保留される。
【0063】
本発明は前記実施形態に係るインクを塗布する塗布具に限定されず、筆記具、化粧具として塗布液を塗布する塗布具に実施することができる。