(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902361
(24)【登録日】2021年6月23日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】入力補助装置、入力補助方法及び入力補助プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 21/31 20130101AFI20210701BHJP
G06F 3/0484 20130101ALI20210701BHJP
【FI】
G06F21/31
G06F3/0484
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-29172(P2017-29172)
(22)【出願日】2017年2月20日
(65)【公開番号】特開2018-136627(P2018-136627A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2019年1月21日
【審判番号】不服2020-8911(P2020-8911/J1)
【審判請求日】2020年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】オニバン バス
(72)【発明者】
【氏名】清本 晋作
【合議体】
【審判長】
石井 茂和
【審判官】
須田 勝巳
【審判官】
塚田 肇
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0016520(US,A1)
【文献】
特開2006−18702(JP,A)
【文献】
特開2016−53899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パスワードを構成する文字を、キーボードを介してユーザから順次受け付ける受付部と、
前記受付部が受け付けた入力文字の表示キャラクタを標準の表示態様から変換し、難読化した表示データを生成する変換部と、
前記入力文字が入力された際に前記ユーザに当該入力文字を視認させるため、前記変換部が生成した前記表示データを表示させる表示制御部と、を備え、
前記変換部は、前記入力文字と共に、当該入力文字と異なるダミー文字の表示キャラクタを含む表示データを生成し、その際に、前記ユーザが誤って入力した文字と本来の文字とが同時に表示されないように、前記入力文字と、前記キーボード上の位置が所定以上に離れた文字を前記ダミー文字として選択する入力補助装置。
【請求項2】
前記変換部は、前記表示キャラクタの形状を変換する請求項1に記載の入力補助装置。
【請求項3】
前記変換部は、前記表示キャラクタにノイズ画像を付加する請求項1又は請求項2に記載の入力補助装置。
【請求項4】
コンピュータの制御部において、
受付部が、パスワードを構成する文字を、キーボードを介してユーザから順次受け付ける受付ステップと、
変換部が、前記受付ステップにおいて受け付けた入力文字の表示キャラクタを標準の表示態様から変換し、難読化した表示データを生成する変換ステップと、
表示制御部が、前記入力文字が入力された際に前記ユーザに当該入力文字を視認させるため、前記変換ステップにおいて生成した前記表示データを表示させる表示制御ステップと、を実行し、
前記変換ステップにおいて、前記入力文字と共に、当該入力文字と異なるダミー文字の表示キャラクタを含む表示データを生成し、その際に、前記ユーザが誤って入力した文字と本来の文字とが同時に表示されないように、前記入力文字と、前記キーボード上の位置が所定以上に離れた文字を前記ダミー文字として選択する入力補助方法。
【請求項5】
パスワードを構成する文字を、キーボードを介してユーザから順次受け付ける受付ステップと、
前記受付ステップにおいて受け付けた入力文字の表示キャラクタを標準の表示態様から変換し、難読化した表示データを生成する変換ステップと、
前記入力文字が入力された際に前記ユーザに当該入力文字を視認させるため、前記変換ステップにおいて生成した前記表示データを表示させる表示制御ステップと、をコンピュータに実行させ、
前記変換ステップにおいて、前記入力文字と共に、当該入力文字と異なるダミー文字の表示キャラクタを含む表示データを生成させ、その際に、前記ユーザが誤って入力した文字と本来の文字とが同時に表示されないように、前記入力文字と、前記キーボード上の位置が所定以上に離れた文字を前記ダミー文字として選択させるための入力補助プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パスワード入力時の表示制御を行う入力補助装置、入力補助方法及び入力補助プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端末にパスワードが入力されると、マスクされた文字で表示したり、最後に入力された文字を短時間、又は次の文字が入力されるまで表示したりする制御方法がある。
第三者にパスワードが見られないようにセキュリティを高めるためには、最後の文字もマスク文字も表示しないことが考えられるが、最後に入力された文字が表示されることにより、例えば、PC(Personal Computer)等で用いられる物理キーボードよりも信頼性の低いタッチタイプのソフトウェアキーボード等における入力ミスを、ユーザが容易に気付くことができる。また、マスクされた文字でパスワードの文字をエコーすることで、ユーザの入力が実際に受け付けられたことをユーザに視覚的にフィードバックできる。
【0003】
また、第三者にパスワードを知られないようにする手法として、実際のパスワードそのものを打ち込む操作を排除する技術が提案されており、例えば、特許文献1には、パスワード入力時にダミーパスワードを入力させることにより、真正パスワードの察知を困難にする認証装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−133702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ユーザに実際のパスワードを入力させる場合、前述のように入力操作のフィードバックがあると、利便性が向上する代わりに、第三者にパスワードの内容が知られる可能性が生じてしまう。
【0006】
本発明は、入力した文字をユーザに視認させつつも、この文字が第三者に知られる可能性を低減できる入力補助装置、入力補助方法及び入力補助プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る入力補助装置は、パスワードを構成する文字の入力を順次受け付ける受付部と、前記受付部が受け付けた入力文字の表示キャラクタを標準の表示態様から変換し、難読化した表示データを生成する変換部と、前記変換部が生成した前記表示データを表示させる表示制御部と、を備える。
【0008】
前記変換部は、前記表示キャラクタの形状を変換してもよい。
【0009】
前記変換部は、前記表示キャラクタにノイズ画像を付加してもよい。
【0010】
前記変換部は、前記入力文字と共に、当該入力文字と異なるダミー文字の表示キャラクタを含む表示データを生成してもよい。
【0011】
前記変換部は、前記入力文字と、入力デバイス上の位置が所定以上に離れた文字を前記ダミー文字として選択してもよい。
【0012】
本発明に係る入力補助方法は、パスワードを構成する文字の入力を順次受け付ける受付ステップと、前記受付ステップにおいて受け付けた入力文字の表示キャラクタを標準の表示態様から変換し、難読化した表示データを生成する変換ステップと、前記変換ステップにおいて生成した前記表示データを表示させる表示制御ステップと、をコンピュータが実行する。
【0013】
本発明に係る入力補助プログラムは、パスワードを構成する文字の入力を順次受け付ける受付ステップと、前記受付ステップにおいて受け付けた入力文字の表示キャラクタを標準の表示態様から変換し、難読化した表示データを生成する変換ステップと、前記変換ステップにおいて生成した前記表示データを表示させる表示制御ステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、入力した文字をユーザに視認させつつも、この文字が第三者に知られる可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る入力補助装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係るキャラクタの第1の表示例を示す図である。
【
図3】実施形態に係るキャラクタの第2の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
図1は、本実施形態に係る入力補助装置1の機能構成を示すブロック図である。
入力補助装置1は、スマートフォン、タブレット端末、ゲーム機、ナビゲーション装置等の情報処理装置(コンピュータ)である。本実施形態は、一例としてモバイル端末を想定するが、これには限られず、PC、サーバ装置、家電機器、オフィス機器等、パスワードの入力が要求される様々な電子機器に適用可能である。
【0017】
入力補助装置1は、制御部10と、記憶部20と、入力部30と、表示部40とを備える。
制御部10は、入力補助装置1の全体を制御する部分であり、記憶部20に記憶されたプログラムを適宜読み出して実行することにより、本実施形態における各種機能を実現している。制御部10は、CPUであってよい。
【0018】
記憶部20は、ハードウェア群を入力補助装置1として機能させるための各種プログラム、及び各種データ等の記憶領域であり、ROM、RAM、フラッシュメモリ又はハードディスク(HDD)等であってよい。具体的には、記憶部20は、本実施形態の各機能を制御部10に実行させる入力補助プログラムを記憶する。
【0019】
入力部30は、入力補助装置1に対する利用者からの操作入力を受け付けるインタフェース装置である。入力部30は、例えば、キーボード、マウス及びタッチパネル等により構成される。
【0020】
表示部40は、利用者にデータの入力を受け付ける画面を表示したり、入力補助装置1による処理結果の画面を表示したりするディスプレイ装置である。表示部40は、液晶ディスプレイ(LCD)又は有機ELディスプレイ等であってよい。
【0021】
表示部40には、入力部30としてのタッチパネルが重畳配置されてもよい。この場合、表示部40は、ソフトウェアキーボードを表示し、入力部30がタッチ操作により、本実施形態に係るパスワードの入力を受け付ける。さらに、このパスワードの入力補助として、表示部40は、入力された文字に対応するキャラクタを表示する。
【0022】
次に、制御部10の機能を詳述する。
制御部10は、受付部11と、変換部12と、表示制御部13とを備える。
受付部11は、パスワードを構成する文字の入力を、入力部30を介して順次受け付ける。
【0023】
変換部12は、受付部11が受け付けた入力文字に対応する表示キャラクタを、標準の表示態様から変換し、難読化した表示データを生成する。
具体的には、変換部12は、表示キャラクタの形状を変換したり、表示キャラクタにノイズ画像を付加したりすることで、第三者による読み取りを困難にする。形状の変化とは、例えば、歪みを加える、回転させる、線の色又は模様等を調整する等、表示態様を標準フォントから変更することである。
【0024】
また、変換部12は、入力文字と共に、この入力文字と異なるダミー文字の表示キャラクタを含む表示データを生成してもよい。
このとき、変換部12は、入力文字と、入力デバイスとしてのソフトウェアキーボード上の位置が所定以上に離れた文字を、ダミー文字として選択する。選択されるダミー文字は、複数であってもよい。
【0025】
表示制御部13は、変換部12が生成した表示データを、表示部40に表示させる。
このとき、表示制御部13は、表示データを所定の時間(例えば、数秒)、又は次の文字が入力されるまで等、所定期間表示した後、消去又はマスクされた表示キャラクタ(例えば、「*」)に変更する。
【0026】
図2は、本実施形態に係るキャラクタの第1の表示例を示す図である。
この例では、入力補助装置1は、ユーザにより入力された文字を画面に表示するために、所定の領域内に2つのオーバーレイを使用している。
【0027】
オーバーレイの下層41には、ランダムノイズ等のノイズ画像が出力される。オーバーレイの上層42には、ノイズから目立たない一定のコントラストのキャラクタ(この例では、「A」)が出力される。表示部40には、これら2つのオーバーレイを重ねた合成画像43が表示される。
【0028】
さらに、表示データには、CAPTCHAテストに類似した幾何学的な歪みが導入されることで、第三者による視認が困難であり、機械による自動解読も困難になる。ここで、ノイズ及び歪み等のパラメータは、キャラクタ毎に異なってもよい。
【0029】
図3は、本実施形態に係るキャラクタの第2の表示例を示す図である。
この例では、入力補助装置1は、入力された文字を難読化するために、1又は複数のランダムな文字又は図形をダミーとして同時に表示している。これにより、パスワードの文字を入力したユーザは、自身が入力した文字が表示されていることを確認でき、第三者は、いずれの文字が入力されたのかが判別できない。
なお、複数表示される文字は、互いに異なる変換が施されてもよい。
【0030】
ここで、複数表示される文字は、キーボード上で互いに一定の距離以上、離れていることが望ましい。例えば、モバイル端末における小さなソフトウェアキーボードでは、入力ミスにより近くの文字が入力される場合が少なからずある。この場合に、誤って入力された文字と本来の文字とが同時に表示されると、ユーザは、正しく入力したか否かを判断できない。入力ミスが起こり難い離れた文字を表示することで、このような不都合が抑制される。
【0031】
本実施形態によれば、入力補助装置1は、ユーザが入力したパスワードの文字を、標準の表示態様から変換し、難読化して表示する。したがって、入力補助装置1は、最後の文字を平文で表示したり、入力した文字をマスクしたりといった従来の手法と比べて、入力した文字をユーザに視認させつつも、この文字が第三者に知られる可能性を低減できる。
本実施形態の入力補助方法は、物理キーボードを持たず、デスクトップ又はラップトップコンピュータよりも小さいディスプレイを有するモバイル端末に好適であり、パスワードを正確に、かつ、安全に入力する補助となる。
【0032】
入力補助装置1は、表示キャラクタの形状を変換したり、ノイズ画像を付加したりすることにより、パスワードを入力した本人には入力した文字を容易に確認させ、第三者には解読を困難にできる。
【0033】
また、入力補助装置1は、ダミー文字を同時に表示することにより、パスワードを入力した本人が確認できる利便性を損なわずに、第三者による解読をより困難にできる。
さらに、入力デバイス上の位置が所定以上に離れた文字をダミー文字として選択することにより、ユーザが誤って入力した文字と本来の文字とが同時に表示されることを抑制でき、ユーザによる確認の精度を向上できる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0035】
入力補助装置1による入力補助方法は、ソフトウェアにより実現される。ソフトウェアによって実現される場合には、このソフトウェアを構成するプログラムが、情報処理装置(入力補助装置1)にインストールされる。また、これらのプログラムは、CD−ROMのようなリムーバブルメディアに記録されてユーザに配布されてもよいし、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 入力補助装置
10 制御部
11 受付部
12 変換部
13 表示制御部
20 記憶部
30 入力部
40 表示部