(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
図1は、本発明の一実施形態のスクリーン印刷版を含むスクリーン印刷版10の斜視図である。
図2(a)、
図2(b)は、スクリーン印刷版10において行われるスクリーン印刷を説明するための模式図であり、
図2(a)は印刷前の状態を示し、
図2(b)は印刷後の状態を示している。
図3は、
図1に示したスクリーン印刷版10の
図1中の矢線A−Aに沿う断面図である。本実施形態では、
図1から
図3に示す座標のz方向をスクリーン印刷版10の「上」、−z方向を「下」とする。また、y方向は「手前」、x方向は「奥」である。
【0011】
図1に示したスクリーン印刷版10は、版枠1の開口部に紗張りされたスクリーンメッシュ5を備えている。版枠1は、ステンレスやアルミ合金等を中空フレーム化したものや鋳造したもので形成される枠体である。版枠1の開口部は、形状が正方形、あるいは長方形を有していて、印刷が行われる領域よりも少なくとも一回り以上大きくなっている。
スクリーンメッシュ5は、例えばポリエステルやステンレス等の糸(ワイヤ)を織って形成されたメッシュ素材である。一般にスクリーンメッシュ5の糸の線径が太い場合にはメッシュ数が少なくなり、線径が細い場合にはメッシュ数が多くなる。スクリーンメッシュ5の線径や材料は、スクリーンメッシュ5に要求される強度やスクリーン印刷版10によって印刷される印刷塗膜の厚さ等によって決定される。スクリーンメッシュ5に使用される糸の断面の直径は、糸がポリエステル等の合繊である場合に250μmから20μm、金属である場合には160μmから12μm程度である。また、メッシュの数は、スクリーンメッシュ5に要求される強度や印刷の解像度によって決定される。一般にスクリーンメッシュ5の1インチ当たりの線数は、糸が合繊の場合に25本から500本、糸が金属である場合に40本から900本程度である。
【0012】
スクリーンメッシュ5は、ある程度の張力(テンションともいう)を持たせて枠体に例えば接着剤等で固定される。その際に、スクリーンメッシュ5は、様々な印刷パターン形状に対応するため、通常、版枠に対してスクリーンメッシュ5の糸方向に角度を持たせて固定される、所謂バイアス張りで固定される。なお、版枠に対してスクリーンメッシュ5の糸方向を平行に固定する場合を、所謂ノーマル張りという。
因みに、
図1に示されたスクリーンメッシュ5は、版枠に対して糸方向が平行なノーマル張りで、かつ、内紗と外紗を別々のメッシュによって組み合わせた、所謂コンビネーションメッシュの構成とされている。
【0013】
スクリーンメッシュ5には印刷マスク7が形成されている。印刷マスク7はスクリーンメッシュ5を被覆する乳剤の膜(乳剤膜)であり、印刷マスク7は乳剤膜が形成されていない開口部分8を有し、開口部分8の上面視の形状が、スクリーン印刷版10が印刷すべき印刷パターンと一致している。印刷マスク7に使用される乳剤としては、例えば感光性のものが使用される。感光性乳剤は、感光基の種類によってジアゾ系とSBQ(スチルバゾリウム)系とに大別される。感光性乳剤の選定は、材質、解像性、露光感度、乳剤の膜厚や供給形態を基準にして行われる。
図1中に示した印刷パターンは、基板に印刷される配線層のパターンである。本実施形態は、スクリーン印刷版10が電子部品の配線層を基板に印刷する例をあげて説明するものとする。
【0014】
図2(a)に示すように、本実施形態では、スクリーンメッシュ5に印刷マスク7が形成されたスクリーン印刷版10を基板11上に所定のクリアランスを保って対向配置させる。そして、
図2(b)に示すように、スクリーンメッシュ5及び印刷マスク7にスキージ9を使ってペースト13を塗布する。なお、本実施形態でいう印刷版は、スクリーンメッシュ5及び印刷マスク7が一体化したものをいう。ペースト13は、スクリーン印刷のインクとなる部材である。ペースト13として使用できる粘度範囲は、0.1Pa・s以上、500Pa・s以下程度である。公知のペースト13は、バインダ樹脂、有機溶剤、ビヒクル(ベヒクル、ビークル)及びフィラーと若干の添加剤から組成、混練される。バインダ樹脂としてはセルロース系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等が使用される。また、有機溶剤としては炭化水素系のほかアルコール系、エステル系、グリコールエーテル系等が使用される。添加剤には、界面活性剤及び分散剤の他、反応抑制剤や増粘剤等が含まれる。また、ペースト13は、本実施形態では熱乾燥型であるが、他の固着の方法(熱硬化型、焼成型等、UV硬化型等)のものを採用することもできる。
【0015】
スキージ9は、スクリーンメッシュ5及び印刷マスク7に線接触しながら矢線fの方向に移動する。スキージ9が移動(ストローク)をし始めると、ペースト13が矢線fの方向に回転(ローリング)しながら移動する。このとき、スクリーン印刷版10(
図3)は、スキージ9に上から押されて下方に撓む。印刷マスク7の開口部分8上をスキージ9が通過すると、開口部分8にはペースト13が押し込まれる(充填)。開口部分8に充填されたペースト13が基板11の表面に接触すると同時または直後に、下方に撓んでいたスクリーン印刷版10が上方に向かって基板11から離れる。スクリーン印刷版10が基板11から離れることを、以降「版離れ」とも記す。基板11に接触したペースト13は、自身の粘度、流動性及び弾力性等の物性に応じて基板11上で開口部分8に応じた形状を保持または変形させる(レベリング)。
以上の工程により、基板11上にペースト13のパターンが印刷される。本実施形態では、
図2に示すように、スクリーンメッシュ5においてスキージ9が押し当てられる側の面をスキージ面10a、基板11に向かう側の面を印刷面10bと記す。
本実施形態は、スクリーン印刷版10を、スキージ9の通過後、印刷面10bが基板11から速やかに版離れ(以降、このような特性を「版離れ性が良好」とも記す)させるものである。
【0016】
図3に示すように、スクリーン印刷版10は、スクリーンメッシュ5を備えている。スクリーン印刷版10は、スクリーンメッシュ5のスキージ面10aから印刷面10bへインクであるペースト13が通過する印刷領域O1と、スキージ面10aから印刷面10bへのペースト13の通過を阻止する非印刷領域C1、C2と、を有している。スクリーン印刷版10の非印刷領域C1の少なくとも一部は、印刷領域O1との境界35aを含む境界領域Eと、この境界領域Eよりも、この境界35aから遠い非境界領域Dを有している。また、非印刷領域C2の少なくとも一部は、印刷領域O1との境界35bを含む境界領域Eと、この境界領域Eよりも、この境界35bから遠い非境界領域Dを有している。即ち、非印刷領域の境界領域Eと非境界領域Dは、当該非印刷領域の断面の一方の境界を基準に定められている。
境界領域Eは非境界領域Dよりも厚さが厚い段差部31を備えている。
図3によれば、非印刷領域C1、C2において、段差部31の厚さd3が非境界領域Dの厚さd2よりも厚いことが明らかである。
なお、段差部31を有する非印刷領域C1、C2を全ての印刷領域のうちの少なくとも一つとしたのは、本実施形態がスクリーン印刷版10に形成されている非印刷領域の全てが段差部31を備える構成に限定されないことを意味している。
また、非境界領域Dは、印刷面10bと印刷対象部材である基板11(
図2)とが貼り付くことを防止する貼り付き防止部20a、20b、20c及び20dを含んでいる。
図3に示すように、貼り付き防止部20aから20dは、いずれも非印刷領域C1、C2の印刷面10bから露出するスクリーンメッシュ5の横糸55a及び縦糸55bである。ここで、「貼り付き防止部を含む」とは、非境界領域Dの全面に貼り付き防止部があること限定されるものでなく、その少なくとも一部にスクリーン印刷版10の貼り付きを防止する部材を含むものであればよいことを示している。
以下、上記段差部31と、貼り付き防止部20aから20dとについて説明する。
【0017】
(段差部)
本実施形態のスクリーン印刷版10は、段差部31及び非印刷領域C1、C2を、スクリーンメッシュ5をコーティングする乳剤膜を備えるものとした。ここで、段差部31及び非印刷領域C1、C2が乳剤膜を備えるとは、段差部31及び非印刷領域C1、C2が乳剤膜によってのみ形成されるものであっても、乳剤膜に他の部材を付与して形成されるものであってもよいことを示す。乳剤膜は、乳剤を所定の方法で硬化させて形成された膜状の部材であって、印刷マスク7に相当する。
本実施形態の印刷マスク7は、段差部31と、平板部32と、を有している。
図3に示すように、本実施形態では、段差部31が形成されている領域の全域を境界領域Eとしている。また、平板部32は、印刷マスク7の非境界領域Dの全域に相当する部位である。段差部31は、印刷マスク7の印刷面10bの側に形成された凸形状の部位である。換言すれば、段差部31は、印刷マスク7の印刷面10bの側から基板11(印刷基材)の側に向かって突出している。
なお、上記したように、段差部31は非境界領域Dよりも厚さが厚い。ただし、本実施形態は、非境界領域Dの全てにおいて厚さが等しい、あるいは段差部よりも厚さが薄い構成に限定されるものでない。
【0018】
スクリーンメッシュ5は、糸を織って形成されていて、横糸55aと縦糸55bとを有している。
図3に示したスクリーンメッシュ5は、平織りのスクリーンメッシュである。ただし、本実施形態は、スクリーンメッシュ5を平織りのスクリーンメッシュに限定するものではなく、例えば、綾織りのスクリーンメッシュでもよいし、スクリーンメッシュをカレンダー加工して厚みを薄くした所謂カレンダーメッシュでもよいし、スクリーンメッシュ5の表面にNiめっき等を被覆したリジダイズドスクリーンや、Niめっきが被覆されたスクリーンメッシュ5を黒色化して露光時のハレーションを防止して印刷パターンの解像性を向上させたリジダイズドブラックマスク、強度の異なる縦糸と横糸を使用して製織することで通常のスクリーンメッシュの厚みよりも厚く形成した3Dスクリーン等の他のタイプのスクリーンメッシュであってもよい。
【0019】
(貼り付き防止部)
図3に示すように、スクリーンメッシュ5は、糸を織って形成されているから、上記したタイプのいずれにあっても糸が交差する交点部分Pcを有している。交点部分Pcは、非印刷領域C1、C2の印刷面10bから露出し、露出した交点部分Pcが貼り付き防止部20a、20b、20c、20d、20eを形成する。
交点部分Pcを非境界領域Dの印刷面10bから露出させる方法の一つとして、例えば、交点部分Pcの最大厚さを、非印刷領域C1、C2の非境界領域Dにおける乳剤膜の厚さより厚くすることがある。つまり、
図3に示した例では、交点部分Pcの最大厚さd1が非印刷領域C1、C2の非境界領域Dの厚さd2より厚くなっている。このようにすれば、スクリーンメッシュ5の交点部分Pcにある横糸55a及び縦糸55bが、印刷マスク7の非境界領域Dから少なくとも印刷面10b側に露出している。本実施形態では、交点部分Pcにある横糸55a及び縦糸55bのうち、印刷面10b側に露出している部分を前記した貼り付き防止部20aから20eとした。
【0020】
このような構成によれば、非境界領域Dの印刷マスク7の印刷面10b側の表面にポリエステルあるいは金属等の糸の交点部分が露出するようになる。印刷マスク7はスキージ9によって押圧されて基板11の表面と接触するが、このとき、非境界領域Dには前記の糸の交点部分が露出しているため、露出している糸の交点部分が優先的に基板11の表面と版付きを起こす。このため、本実施形態のスクリーン印刷版10では、印刷マスク7の非境界領域Dにおいて、基板11の表面に対しての接触面積が低減されるため、良好な版離れ性を有するようになる。また、本実施形態では、貼り付き防止部20aから20eを非印刷領域C1、C2のうち段差部31よりも薄い領域に設けている。このため、本実施形態のスクリーン印刷版10は、境界領域Eにおいては印刷面10bの側の印刷マスク7と基板11表面との密着性を維持したままインク(ペースト)が開口部分8において広がることを抑止することができる。
【0021】
以上のことにより、本実施形態は、被印刷面がタック性を有する場合であっても、スクリーン印刷版のメッシュと被印刷面との充分な版離れ性を有し、円滑に、かつ高品質なパターンが得られるスクリーン印刷版を提供することができる。また、このために、スキージ9を摺動させる際の速度(スキージスピードともいう)も早めることが可能となり、単位時間当たりの生産性や歩留まりを高められる上、基板11表面に印刷される配線等の印刷パターンの汚損等を防ぐことができる。
また、本実施形態は、
図3に示したように印刷マスク7を構成することに限定されるものではない。
図4(a)、
図4(b)は、スクリーン印刷版10の他の例を示した図である。
図4(a)は、印刷マスク7の非境界領域Dの厚さを
図3に示した印刷マスク7よりも薄くした例を示していて、印刷面10b側のスクリーンメッシュ5の大部分が露出している。このような印刷マスク71は、
図3に示した印刷マスク7よりも版離れしやすくなることが考えられる。
【0022】
また、
図4(b)に示した印刷マスク72はスクリーンメッシュ5の厚みを薄くしたカレンダーメッシュとし、スキージ面の乳剤膜の厚みが
図4(a)の厚みよりも厚くなっている。カレンダーメッシュのように厚みが薄いスクリーンメッシュを使用する場合、非境界領域Dの乳剤厚みによっては非境界領域Dにピンホールが発生しやすくなる。スキージ面側の乳剤膜の厚みを厚く形成することで、ピンホール発生を抑制することが可能となる。
ところで、公知の印刷マスクは、スクリーンメッシュ5を境にして印刷面の側の厚さがスキージ面の側の厚さよりも厚くなっている(佐野康(2011)「プリンテッドエレクトロニクス:スクリーン印刷版による安定生産」日本印刷学会出版部,特に
図11−7等)。この理由は、微細配線形成や薄膜印刷を達成するためには印刷マスク全体の厚さは適度に薄い方が好ましく、印刷面においては印刷マスクに適度な厚みを持たせ、ペーストの広がりや滲みを抑えるためである。しかし、
図4(b)に示した本実施形態は、スクリーンメッシュ5を境にして印刷マスク72の印刷面の側の厚さを薄くすることによって印刷面側にスクリーンメッシュ5の一部を露出させ、スキージ面側の印刷マスク72の厚さを厚くして印刷マスク72の非境界領域Dの適正な厚みを確保している。さらに、印刷面10bの側に段差部31を設け、印刷面10bの側のペーストの広がりや滲みを抑えている。
【0023】
上記記載において、印刷マスク72の非境界領域Dの適正な厚みとは、例えば、印刷マスク72の非境界領域Dにピンホールが生じない厚さを指す。印刷マスク72の非境界領域Dのピンホールを防ぐには、印刷マスク72のスクリーンメッシュ5を境にした印刷マスク72のスキージ面の側の厚さを、2μm以上、15μm以下とすることが好ましく、2μm以上、10μm以下とすることがより好ましく、2μm以上、5μm以下の厚さとすることがさらに好ましい。
なお、スクリーンメッシュ5の厚みや乳剤膜の厚みを測定する場合は、スクリーン印刷版用厚み測定機、例えば株式会社プロテック製厚み測定機MG5−500Bといった測定機を使用すればよい。また、非境界領域Dにおけるスクリーンメッシュ5の一部の露出状態は、光学式の顕微鏡を用いて焦点位置の違いで確認することができる。また、非境界領域Dにおけるスクリーンメッシュ5の一部の交点部分と乳剤膜の厚みの差を確認する場合は、非接触方式のレーザー顕微鏡や光学式の三次元形状測定機、接触式の表面粗さ計、光学方式の深度測定機等を用いることができる。
【0024】
さらに、本実施形態は、上記したように、スクリーンメッシュ5の交点部分Pcを印刷マスク7から露出させることによって貼り付き防止部を形成するものに限定されるものではない。
例えば、本実施形態は、非境界領域Dの少なくとも印刷面10bにフィラーとなる粉体や粒体を混入し、印刷面10bからフィラーを露出させてもよい。フィラーの混入は、印刷マスク7の乳剤全体に行っても良いし、後述する第二乳剤7d(
図5)に対してのみ行ってもよい。また、本実施形態は、フィラーを含んだ接着剤を印刷面10bの表面に吹き付ける、あるいはコートしてもよい。また、印刷面10bの表面を粗くする等の処理をして非境界領域Dの印刷面10bと基板11表面とが貼り付くことを緩和してもよい。さらに、印刷面10bの表面に印刷マスク7よりも粘着性の低い部材をコーティングしてもよい。
【0025】
(スクリーン印刷版の製造方法)
次に、本実施形態のスクリーン印刷版の製造方法を説明する。
図5は、本実施形態のスクリーン印刷版の製造方法を示すフローチャートである。
図6は、
図5に示した本実施形態のスクリーン印刷版の製造方法の工程を説明するための工程図である。
図5、
図6に示したスクリーン印刷版の製造方法は、スキージ面10aから印刷面10bへインクが通過する印刷領域O1と、スキージ面から印刷面へのインクの通過を阻止する非印刷領域C1、C2と、を形成する領域形成工程を含む(
図3)。
図5に示したフローチャートは、この領域形成工程を示している。
図5に示すように、領域形成工程は、スクリーンメッシュ5の印刷面の側に第一乳剤7cを塗布する工程(ステップS401)と、第一乳剤7cを第一マスクであるマスク51により露光して段差部31に対応する段差パターン7cbを形成する工程(ステップS402)と、スクリーンメッシュ5のスキージ面10aの側に第二乳剤7dを塗布する工程(ステップS403)と、第二乳剤7dを第二マスクであるマスク52により露光して非印刷領域C1、C2に対応する非印刷領域パターン7dbを形成する工程(ステップS404)と、を含んでいる。なお、このような工程において、第一乳剤7cと第二乳剤7dは、同一の乳剤であってもよいし、異なるものであってもよい。
上記工程によって形成された印刷マスク7は、
図3に示した非印刷領域C1、C2の少なくとも一部が、印刷領域O1との境界35を含む境界領域Eと、この境界領域Eよりもこの境界35から遠い非境界領域Dを有し、境界領域Eは非境界領域Dよりも厚さが厚い段差部31を備え、非境界領域Dは、印刷面10bと印刷対象部材である基板11の被印刷面とが貼り付くことを防止する貼り付き防止部を含む。
以下、このような工程を
図5、
図6を用いて詳細に説明する。
【0026】
本実施形態では、先ず、スクリーンメッシュ5に第一乳剤7cが塗布される。第一乳剤7cは、後に段差部31のスクリーンメッシュ5よりも印刷面10bに近い部分になる乳剤であって、
図6(a)のように、スクリーン印刷版10の印刷面10bの側に塗布される(ステップS401)。このとき、塗布型の第一乳剤7cに替えてシート状乳剤を貼合せてもよい。次に、本実施形態では、段差パターン7cbを形成する(ステップS402)。段差パターン7cbの形成は、
図6(b)に示すように、第一乳剤7cにマスク51を介して例えば光を照射することによって行われる。
【0027】
第一乳剤7cは、例えばUV光といった特定の波長領域の光にのみ反応して硬化する感光性乳剤である。本実施形態では、第一乳剤7cにマスク51を介して第一乳剤7cを硬化させる波長領域の光を照射する。マスク51は、開口部51aとマスキング部51bとを有し、光は開口部51aを通って第一乳剤7cに照射されると共に、マスキング部51bによって阻止されて第一乳剤7cに届かない。このため、
図6(b)に示すように、第一乳剤7cの開口部51aに対応する部分だけが硬化して段差パターン7cbとなる。マスキング部51bに対応する第一乳剤7cの部分7caは後に現像によって除去される。
次に、本実施形態では、スクリーンメッシュ5のスキージ面10aの側に第二乳剤7dを塗布する(ステップS403、
図6(c))。次に、本実施形態では、非印刷領域に対応する非印刷領域パターンを形成する(ステップS404)。具体的には、第二乳剤7dも、特定の波長領域の光にのみ反応して硬化する感光性乳剤である。本実施形態では、第二乳剤7dにマスク52を介して第二乳剤7dを硬化させる波長領域の光を照射する。マスク52は、開口部52aとマスキング部52bとを有し、光は開口部52aを通って第二乳剤7dに照射されると共に、マスキング部52bによって阻止されて第二乳剤7dに届かない。このため、
図6(d)に示すように、第二乳剤7dの開口部52aに対応する非印刷領域パターン7dbだけが硬化する。マスキング部52bに対応する第一乳剤7cに対応する部分7daは後に現像処理によって除去される。
以上の処理により、本実施形態では、
図6(e)に示すように、平板部32と段差部31とを有する印刷マスク7が形成される。
【0028】
上記した領域形成工程の
図5のステップS404において、本実施形態は、スクリーンメッシュ5を構成する糸が交差する交点部分Pcが印刷面10bから露出するように非印刷領域(
図3)を形成する。交点部分Pcを印刷面10bから露出させる方法としては、例えば、
図6(d)に示した非印刷領域パターン7dbを形成する工程において、スクリーンメッシュ5の交点部分Pcの影になった部分が露光されず、現像処理において除去されるように露光を行うことが考えられる。また、乳剤のコーティング時の塗布厚や露光時の露光量を調整し、非印刷領域パターン7dbの厚さを交点部分Pc以下にすることも考えられる。
以上説明した本実施形態のスクリーン印刷版10の製造方法は、スキージ面10aの側、印刷面10bの側のそれぞれにおいて第一乳剤7c、第二乳剤7dの塗布、露光及び現像を行っているので、段差部31、平板部32の厚みを高精度に制御することができる。このため、本実施形態では、平板部32の厚みを2μm以下にし、スクリーンメッシュ5の糸の交点の厚みよりも平板部32の厚みを薄くすることができる。このような本実施形態は、印刷物のインクの塗布量を少なくする、あるいは印刷物の厚さを薄くすることに有効な薄いスクリーンメッシュを採用した場合に効果的である。
【0029】
図7(a)、(b)は、以上説明した本実施形態のスクリーン印刷版10によって得られる効果を説明するために示した、比較例のスクリーン印刷版20を示している。
図7(a)はスクリーン印刷版20全体を示す模式図であり、スクリーンメッシュ5に印刷マスク77が形成されている状態を示している。
図7(b)は、印刷マスク77の部分を拡大して示した図である。スクリーン印刷版20は、印刷マスク77の非印刷領域77aにおいて横糸55aと縦糸55bとの交点が非印刷領域77aの印刷面10bの側に露出していない。つまり、スクリーン印刷版20のスクリーン印刷版には貼り付き防止部がないために非印刷領域77aの上からスキージ9を押し当てると、非印刷領域77aの印刷面の側の表面が基板11の表面に貼り付くことが考えられる。さらに、基板11の表面がタック性を有すると、貼り付きの程度が大きくなって印刷されたパターンに汚損が生じるばかりでなく、工程の進行が妨げられる場合がある。
本実施形態のスクリーン印刷版10は、このような比較例のスクリーン印刷版20のスクリーン印刷版よりも高い貼り付き防止の効果を得ることができる。
【0030】
また、本実施形態のスクリーン印刷版の製造方法は、上記の工程によって製造されるものに限定されるものではない。例えば、本実施形態のスクリーン印刷版は、段差パターン7cb、非印刷領域パターン7dbのどちらを先に形成するかは任意であって、先に
図5に示したステップS403、S404で非印刷領域パターン7dbを形成し、この後にステップS401、S402で示した段差パターン7cbを形成するものであってもよい。
さらに、本実施形態は、スクリーンメッシュ5に公知の方法によって単層の乳剤を塗布し、塗布された乳剤を印刷面の側から段差部に対応するマスクを使って露光し、スキージ面の側から平板部に対応するマスクを使って露光するようにしてもよい。このような方法においては、乳剤の塗布厚及び露光の条件を、スクリーンメッシュ5の縦糸と横糸の交点の断面よりも非印刷領域の非境界領域の厚さが薄くなるように設定する必要がある。なお、このスクリーン印刷版の製造方法にあっても、印刷面の側とスキージ面の側とでどちらを先に露光するかは問わないが、印刷面の側を先に露光する方が印刷面の側のパターンとスキージ面の側のパターンとの位置合わせの観点から望ましい。
上記のスクリーン印刷版の製造方法は、印刷面の側を露光し、現像をする前にスキージ面の側の露光を行い、スクリーンメッシュ5の両面の乳剤を現像することによって工程数を少なくし、プロセスを簡易化することができる。
【0031】
さらに、本実施形態では、
図5、
図6に示した工程により非境界領域Dの印刷面10bの側からスクリーンメッシュ5の一部を露出するものに限定されるものではない。例えば、
図5のステップS403で第二乳剤7dが印刷面10bの側に染み出るように塗布し、現像処理した後に印刷面10bの側に染み出した第二乳剤7dを削ってスクリーンメッシュ5の一部を露出させてもよい。
また、
図5に示したステップS402で非印刷領域C1、C2の全体が段差部31の厚さを有する印刷マスクを形成し、物理的または化学的な方法によって印刷マスク7の非境界領域Dの部分を削除してスクリーンメッシュ5の糸を露出させることが考えられる。
【0032】
また、上記した、線径が細い、あるいはカレンダー加工されて厚みが薄くなったカレンダーメッシュは、スクリーンメッシュ5の全体の厚さが薄くなっている。このため、縦糸と横糸の交点の厚さよりも非印刷領域の非境界領域の厚さを薄くする本実施形態に使用すると、非印刷領域にピンホールが発生する虞がある。このような点を解消するため、本実施形態では、ステップS401とステップS403とにより、印刷面側とスキージ面側とに別々に乳剤を塗布している。このようにすれば、非印刷領域の乳剤の厚さが確実に確保でき、ピンホールの発生を抑止することができる。このような場合、ピンホールの発生を確実に抑止するためには、スキージ面の側の乳剤の厚さが2μm以上、15μm以下の厚さになるように塗布することが好ましく、2μm以上、10μm以下となるように塗布することがより好ましく、2μm以上、5μm以下の厚さになるように塗布することがさらに好ましい。
スキージ面側へ感光性乳剤を塗布するタイミングは特に問わないが、確実にスキージ面側の感光性乳剤の厚みを得るためには、印刷面の側の乳剤の塗布が終わってから、スキージ面の側に乳剤を塗布することが望ましい。
【0033】
なお、以上説明した本実施形態のスクリーン印刷版は、使用される枠体形状やスクリーンメッシュの材質や織り方、メッシュの数や厚み、カレンダー加工の有無、感光性乳剤の種類及び厚み、カバーコートの有無、表面処理の方法、直間法や直接法といった乳剤塗布方法、直張りやコンビネーション張りといった紗張り方法や形状、バイアス角度、フィルムマスク、ガラスマスク、クロムマスクといった露光用マスクの種類及び形成する印刷パターン等は問わないものとする。
【0034】
上記実施形態および実施例は以下の技術思想を包含するものである。
(1) スキージが押し当てられる側のスキージ面と、印刷対象部材に向かう側の印刷面と、を有するスクリーンメッシュを備え、前記スキージ面から前記印刷面へインクが通過する印刷領域と、前記スキージ面から前記印刷面へのインクの通過を阻止する非印刷領域と、を有し、前記非印刷領域の少なくとも一部は、前記印刷領域との境界を含む境界領域と、当該境界領域よりも当該境界から遠い非境界領域を有し、前記境界領域は前記非境界領域よりも厚さが厚い段差部を備え、前記非境界領域は、前記印刷面と印刷対象部材とが貼り付くことを防止する貼り付き防止部を含む、スクリーン印刷版。
(2) 前記段差部及び前記非印刷領域は前記スクリーンメッシュをコーティングする乳剤膜を備え、前記段差部は、前記乳剤膜の前記印刷面の側に形成された凸形状の部位である、(1)のスクリーン印刷版。
(3) 前記スクリーンメッシュは糸を織って形成され、前記糸が交差する交点部分は、前記非境界領域の前記印刷面から露出し、露出した前記交点部分が前記貼り付き防止部を形成する、(2)のスクリーン印刷版。
(4) 前記スクリーンメッシュは糸を織って形成され、前記糸が交差する交点部分の最大厚さは、前記非印刷領域の前記非境界領域における前記乳剤膜の厚さより厚い、(2)のスクリーン印刷版。
(5) 前記非印刷領域の前記非境界領域における前記乳剤膜の厚さは、前記印刷面の側よりも前記スキージ面の側において厚い、(2)から(4)のいずれか一つに記載のスクリーン印刷版。
(6) 前記スキージ面の側の前記乳剤膜は、2μm以上、15μm以下の厚さを有する、(5)のスクリーン印刷版。
(7) スキージが押し当てられる側のスキージ面と、印刷対象部材に向かう側の印刷面と、を有するスクリーンメッシュを備えるスクリーン印刷版の製造方法であって、
前記スキージ面から前記印刷面へインクが通過する印刷領域と、前記スキージ面から前記印刷面へのインクの通過を阻止する非印刷領域と、を形成する領域形成工程を含み、
前記非印刷領域の少なくとも一部は、前記印刷領域との境界を含む境界領域と、当該境界領域よりも当該境界から遠い非境界領域を有し、前記境界領域は前記非境界領域よりも厚さが厚い段差部を備え、前記非境界領域は、前記印刷面と印刷対象部材とが貼り付くことを防止する貼り付き防止部を含む、スクリーン印刷版の製造方法。
(8) 前記領域形成工程は、前記スクリーンメッシュを構成する糸が交差する交点部分を前記印刷面から露出させて前記非境界領域を形成する、(7)のスクリーン印刷版の製造方法。
(9) 前記領域形成工程は、前記スクリーンメッシュの前記印刷面の側に第一乳剤を塗布する工程と、前記第一乳剤を第一マスクにより露光して前記段差部に対応する段差パターンを形成する工程と、前記スクリーンメッシュの前記スキージ面の側に第二感光性乳剤を塗布する工程と、前記第二感光性乳剤を第二マスクにより露光して前記非印刷領域に対応する非印刷領域パターンを形成する工程と、を含む、(7)または(8)のスクリーン印刷版の製造方法。