特許第6902390号(P6902390)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902390
(24)【登録日】2021年6月23日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20210701BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   F25B49/02 510B
   F25B49/02 510Z
   F25B49/02 570Z
   F25B49/02 520D
   F25B1/00 361A
   F25B1/00 371B
   F25B1/00 396B
【請求項の数】11
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-87860(P2017-87860)
(22)【出願日】2017年4月27日
(65)【公開番号】特開2018-185116(P2018-185116A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2020年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】横関 敦彦
(72)【発明者】
【氏名】宮田 祐太郎
(72)【発明者】
【氏名】西出 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】宇野 正記
(72)【発明者】
【氏名】内藤 宏治
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−152208(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/080436(WO,A1)
【文献】 特開平06−117737(JP,A)
【文献】 特開平10−038393(JP,A)
【文献】 特開平09−014779(JP,A)
【文献】 特開平08−261576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 9/00
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器を順次に介して、冷凍サイクルで冷媒が循環する冷媒回路と、
少なくとも前記圧縮機及び前記膨張弁を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記圧縮機の吐出側の圧力検出値に基づいて、前記圧縮機の吐出側から前記凝縮器の出口までの圧力損失を推定し、さらに、前記圧力検出値及び前記圧力損失に基づいて、前記凝縮器の出口付近の圧力を算出する凝縮器圧力算出部と、
前記凝縮器の出口付近の圧力に基づいて、冷媒の飽和液温度を推定し、前記飽和液温度と、前記凝縮器の出口付近における冷媒の温度検出値と、の差に基づいて、冷媒組成の変化を検出する冷媒組成検出部と、を備え
外気温度が所定範囲外である場合、前記冷媒組成検出部は、冷媒組成の変化の検出を行わないこと
を特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器を順次に介して、冷凍サイクルで冷媒が循環する冷媒回路と、
少なくとも前記圧縮機及び前記膨張弁を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記圧縮機の吐出側の圧力検出値に基づいて、前記圧縮機の吐出側から前記凝縮器の中間部までの圧力損失を推定し、さらに、前記圧力検出値及び前記圧力損失に基づいて、前記凝縮器の中間部付近の圧力を算出する凝縮器圧力算出部と、
前記凝縮器の中間部付近の圧力に基づいて、冷媒の露点・沸点の平均温度である飽和温度を推定し、前記飽和温度と、前記凝縮器の中間部付近における冷媒の温度検出値と、の差に基づいて、冷媒組成の変化を検出する冷媒組成検出部と、を備え
外気温度が所定範囲外である場合、前記冷媒組成検出部は、冷媒組成の変化の検出を行わないこと
を特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項3】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器を順次に介して、冷凍サイクルで冷媒が循環する冷媒回路と、
前記凝縮器の下流側に設置され、余剰の冷媒を貯留するレシーバと、
前記レシーバから自身に導かれる冷媒を冷やして過冷却する過冷却器と、
前記過冷却器で冷やされた冷媒の過冷却度に基づいて、前記冷媒回路に封入されている冷媒の量が適正であるか否かを判定する判定部と、
少なくとも前記圧縮機及び前記膨張弁を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記圧縮機の吐出側の圧力検出値に基づいて、前記圧縮機の吐出側から前記凝縮器の出口までの圧力損失を推定し、さらに、前記圧力検出値及び前記圧力損失に基づいて、前記凝縮器の出口付近の圧力を算出する凝縮器圧力算出部と、
前記凝縮器の出口付近の圧力に基づいて、冷媒の飽和液温度を推定し、前記飽和液温度と、前記凝縮器の出口付近における冷媒の温度検出値と、の差に基づいて、冷媒組成の変化を検出する冷媒組成検出部と、を備え
前記判定部によって冷媒の量が適正でないと判定された場合、前記冷媒組成検出部は、冷媒組成の変化の検出を行わないこと
を特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項4】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器を順次に介して、冷凍サイクルで冷媒が循環する冷媒回路と、
前記凝縮器の下流側に設置され、余剰の冷媒を貯留するレシーバと、
前記レシーバから自身に導かれる冷媒を冷やして過冷却する過冷却器と、
前記過冷却器で冷やされた冷媒の過冷却度に基づいて、前記冷媒回路に封入されている冷媒の量が適正であるか否かを判定する判定部と、
少なくとも前記圧縮機及び前記膨張弁を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記圧縮機の吐出側の圧力検出値に基づいて、前記圧縮機の吐出側から前記凝縮器の中間部までの圧力損失を推定し、さらに、前記圧力検出値及び前記圧力損失に基づいて、前記凝縮器の中間部付近の圧力を算出する凝縮器圧力算出部と、
前記凝縮器の中間部付近の圧力に基づいて、冷媒の露点・沸点の平均温度である飽和温度を推定し、前記飽和温度と、前記凝縮器の中間部付近における冷媒の温度検出値と、の差に基づいて、冷媒組成の変化を検出する冷媒組成検出部と、を備え
前記判定部によって冷媒の量が適正でないと判定された場合、前記冷媒組成検出部は、冷媒組成の変化の検出を行わないこと
を特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記冷媒組成検出部は、少なくとも前記圧縮機の吸入圧力及び回転速度に基づく冷媒循環量比を用いて、前記圧力損失を推定すること
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記冷媒回路を循環する冷媒は、非共沸混合冷媒であること
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記飽和液温度を基準として前記温度検出値が所定閾値以上高い場合、冷媒の初期封入時よりも前記圧縮機の回転速度を大きくし、
前記飽和液温度を基準として前記温度検出値が所定閾値以上低い場合、冷媒の初期封入時よりも前記圧縮機の回転速度を小さくすること
を特徴とする請求項1又は請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記飽和温度を基準として前記温度検出値が所定閾値以上高い場合、冷媒の初期封入時よりも前記圧縮機の回転速度を大きくし、
前記飽和温度を基準として前記温度検出値が所定閾値以上低い場合、冷媒の初期封入時よりも前記圧縮機の回転速度を小さくすること
を特徴とする請求項2又は請求項4に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項9】
前記冷媒組成検出部の検出結果を表示する表示装置を備えること
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項10】
前記冷媒組成検出部によって冷媒組成の変化が検出された場合、前記制御装置は、前記差に基づいて、冷媒の凝縮温度及び蒸発温度のうち少なくとも一方の補正を行い、さらに、補正後の前記少なくとも一方に基づいて、前記圧縮機を制御すること
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項11】
前記冷媒組成検出部によって冷媒組成の変化が検出された場合、前記制御装置は、前記差に基づいて、冷媒の凝縮温度及び蒸発温度のうち少なくとも一方の補正を行い、さらに、補正後の前記少なくとも一方に基づいて、前記圧縮機の吸入側及び吐出側の過熱度が所定の目標値となるように前記圧縮機を制御すること
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルで冷媒を循環させる冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクル装置に関して、例えば、特許文献1には、「圧縮機の吐出配管と吸入配管とを接続するバイパス配管とを備え、…第二圧力検知器の検出圧力が所定値未満では前記開閉弁を開とし、所定値以上では前記開閉弁を閉とする」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−157621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、バイパス配管に設けた温度検知器によって、冷媒の凝縮温度や蒸発温度が直接的に測定される。そして、冷媒の組成が変化した場合には、冷媒の実際の凝縮温度や蒸発温度に基づいた所定の制御を行うようにしている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、パイパス配管を流れる冷媒は冷凍能力に寄与しないため、さらなる高効率化を図る余地がある。また、パイパス配管やこれに付随する温度検知器を追加すると、製造コストの増加を招くという事情もある。
【0006】
そこで、本発明は、冷媒組成の変化を適切に検出する低コストな冷凍サイクル装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するために、本発明に係る冷凍サイクル装置は、制御装置が、圧縮機の吐出側の圧力検出値に基づいて、前記圧縮機の吐出側から凝縮器の出口までの圧力損失を推定し、さらに、前記圧力検出値及び前記圧力損失に基づいて、前記凝縮器の出口付近の圧力を算出する凝縮器圧力算出部と、前記凝縮器の出口付近の圧力に基づいて、冷媒の飽和液温度を推定し、前記飽和液温度と、前記凝縮器の出口付近における冷媒の温度検出値と、の差に基づいて、冷媒組成の変化を検出する冷媒組成検出部と、を備え、外気温度が所定範囲外である場合、前記冷媒組成検出部は、冷媒組成の変化の検出を行わないことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る冷凍サイクル装置は、制御装置が、圧縮機の吐出側の圧力検出値に基づいて、前記圧縮機の吐出側から凝縮器の中間部までの圧力損失を推定し、さらに、前記圧力検出値及び前記圧力損失に基づいて、前記凝縮器の中間部付近の圧力を算出する凝縮器圧力算出部と、前記凝縮器の中間部付近の圧力に基づいて、冷媒の露点・沸点の平均温度である飽和温度を推定し、前記飽和温度と、前記凝縮器の中間部付近における冷媒の温度検出値と、の差に基づいて、冷媒組成の変化を検出する冷媒組成検出部と、を備え、外気温度が所定範囲外である場合、前記冷媒組成検出部は、冷媒組成の変化の検出を行わないことを特徴とする。なお、その他については、実施形態の中で説明する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷媒組成の変化を適切に検出する低コストな冷凍サイクル装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る空気調和機の構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る空気調和機のモリエル線図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る空気調和機が備える制御装置の機能ブロック図である。
図4】冷媒の圧力と飽和液温度との関係を示す説明図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る空気調和機の制御装置が実行する処理のフローチャートである。
図6】冷媒循環量比Grrと、圧力損失ΔPと、の関係を示す実験結果である。
図7】冷媒循環量比の実測値と、冷媒循環量比の推定値と、の関係を示す説明図である。
図8】冷媒の圧力と飽和ガス温度との関係を示す説明図である。
図9】冷媒循環量比Grrと、圧力損失ΔPと、の関係を示す実験結果である。
図10】冷媒量が適正であるか否かの判定に用いる、過冷却度の特性を示す実験結果である。
図11】本発明の第2実施形態に係る空気調和機の構成図である。
図12】本発明の第2実施形態に係る空気調和機の制御装置が実行する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪第1実施形態≫
<空気調和機の構成>
図1は、第1実施形態に係る空気調和機100の構成図である。
なお、図1では、冷媒が流れる向きを実線矢印で示し、信号線を破線矢印で示している。図1に示す空気調和機100(冷凍サイクル装置)は、冷房運転を行う機器であり、冷媒回路Qと、制御装置30と、表示装置40と、を備えている。
【0012】
冷媒回路Qは、圧縮機11、室外熱交換器13(凝縮器)、室内膨張弁21(膨張弁)、及び室内熱交換器22(蒸発器)を順次に介して、冷凍サイクルで冷媒が循環する回路である。冷媒回路Qは、室外機10に設置される各機器と、室内機20に設置される各機器と、接続配管k1,k3と、を含んで構成される。
【0013】
(室外機)
室外機10は、圧縮機11と、アキュムレータ12と、室外熱交換器13と、室外ファン14と、レシーバ15と、過冷却器16と、液インジェクション弁17と、ガス阻止弁18aと、液阻止弁18bと、センサ類(吸入圧力センサ19a等)と、を備えている。
【0014】
圧縮機11は、アキュムレータ12を介して流入するガス状の冷媒を、制御装置30からの指令に従って圧縮する機器である。このような圧縮機11として、例えば、スクロール圧縮機を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0015】
アキュムレータ12は、室内熱交換器22から接続配管k1を介して流入する冷媒を気液分離する殻状部材であり、圧縮機11の吸入側に設置されている。アキュムレータ12を設けることで、圧縮機11での液圧縮が防止され、また、圧縮機11に吸入される冷媒の乾き度が適度に調整される。
【0016】
室外熱交換器13は、圧縮機11から吐出される高温高圧の冷媒と、室外ファン14によって送り込まれる外気と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。すなわち、室外熱交換器13は、圧縮機11で圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する。図1に示す例では、室外熱交換器13の上流端が、配管k2を介して圧縮機11の吐出口に接続されている。
【0017】
室外ファン14は、制御装置30からの指令に従って、室外熱交換器13に外気を送り込むファンであり、室外熱交換器13の付近に設置されている。
【0018】
レシーバ15は、余剰の冷媒を貯留する殻状部材であり、室外熱交換器13の下流側に設置されている。
過冷却器16は、レシーバ15から自身に導かれる冷媒を、外気との熱交換によって冷やして過冷却する熱交換器であり、室外熱交換器13と略一体になっている。過冷却器16の下流側は、液阻止弁18b、接続配管k3、及び室内膨張弁21を順次に介して、室内熱交換器22に接続されている。また、過冷却器16の下流側は、液インジェクション弁17を介して圧縮機11にも接続されている。
【0019】
液インジェクション弁17は、制御装置30からの指令によって所定開度に開かれる弁である。これによって、圧縮機11の内部に液冷媒が噴射され、その蒸発潜熱で圧縮機11の吐出温度が調整されるようになっている。なお、過冷却器16で冷やされた液冷媒の一部は、液インジェクション弁17を介して圧縮機11に導かれ、残りの液冷媒は、接続配管k3を介して室内機20に導かれる。
【0020】
ガス阻止弁18a及び液阻止弁18bは、空気調和機100の据付作業後に開弁されることで、室外機10に封入されていた冷媒を冷媒回路Qの全体に行き渡らせるための弁である。ガス阻止弁18aは、アキュムレータ12の上流側に設置されている。液阻止弁18bは、その上流側が、過冷却器16と液インジェクション弁17との間に接続され、下流側が接続配管k3を介して室内電磁弁24に接続されている。
【0021】
吸入圧力センサ19aは、圧縮機11に吸入される冷媒の圧力を検出するセンサであり、圧縮機11の吸入側に設置されている。
吐出圧力センサ19bは、圧縮機11から吐出される冷媒の圧力を検出するセンサであり、圧縮機11の吐出側に設置されている。
吐出温度センサ19cは、圧縮機11から吐出される冷媒の温度を検出するセンサであり、圧縮機11の吐出口の付近に設置されている。なお、吐出温度として、圧縮機11が備えるチャンバ(図示せず)の上部温度を測定してもよい。
【0022】
温度センサ19dは、ガス阻止弁18aの出口側の温度を検出するセンサであり、ガス阻止弁18aの出口付近に設置されている。
温度センサ19eは、冷媒の凝縮温度(飽和液温度)を検出するセンサであり、室外熱交換器22の下流端(出口)の付近に設置されている。
【0023】
温度センサ19fは、過冷却器16で過冷却された冷媒の温度を検出するセンサであり、過冷却器16の下流端付近に設置されている。
外気温度センサ19gは、外気の温度を検出するセンサであり、室外機10の所定箇所に設置されている。
その他、図示はしないが、室内機20にも室内温度センサ等が設置されている。前記したセンサ類の検出値は、それぞれ、制御装置30に出力される。
【0024】
(室内機)
室内機20は、室内膨張弁21と、室内熱交換器22と、室内ファン23と、室内電磁弁24と、を備えている。
室内膨張弁21は、室外熱交換器13で凝縮し、さらに、過冷却器16で過冷却された冷媒を減圧する弁である。すなわち、室内膨張弁21は、過冷却器16から接続配管k3を介して室内熱交換器22に向かう冷媒を減圧する機能を有している。なお、室内膨張弁21の開度は、制御装置30によって調整される。
【0025】
室内熱交換器22は、室内膨張弁21によって減圧された冷媒と、室内空気(被空調空間の空気)と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。すなわち、室内熱交換器22は、室内膨張弁21で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。そして、室内熱交換器22を流れる冷媒の蒸発潜熱によって、室内空気が冷やされるようになっている。
【0026】
室内ファン23は、制御装置30からの指令によって、室内熱交換器22に外気を送り込むファンであり、室内熱交換器22の付近に設置されている。
室内電磁弁24は、室内機20を運転する際に冷媒を流通させるために開かれる弁であり、室内膨張弁21の上流側に設置されている。
なお、室内膨張弁21が全閉可能な構造であれば、室内電磁弁24を省略することも可能である。ただし、温度式膨張弁などが用いられる場合には、運転停止の際に室内膨張弁21を閉止することができないため、室内機20の運転・停止の切替動作のために室内電磁弁24が必要となる。
【0027】
(制御装置)
制御装置30は、図示はしないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、各種インタフェース等の電子回路を含んで構成されている。そして、ROMに記憶されたプログラムを読み出してRAMに展開し、CPUが各種処理を実行するようになっている。制御装置30は、前記したセンサ類の検出値やリモコン(図示せず)からの操作信号に基づいて、圧縮機11や室内膨張弁21を含む各機器を制御する。
【0028】
(表示装置)
表示装置40は、例えば、液晶ディスプレイや、7セグメント表示装置であり、制御装置30の処理結果(後記する冷媒組成検出部32dの検出結果等:図3参照)を表示する機能を有している。
【0029】
<冷凍サイクル>
図2は、第1実施形態に係る空気調和機100のモリエル線図である(適宜、図1を参照)。なお、図2の横軸は、冷媒の比エンタルピh[kJ/kg]であり、縦軸は、冷媒の圧力P[MPaA]である。
【0030】
図1に示す圧縮機11に吸い込まれた状態G1の冷媒は、圧縮されることで比エンタルピ及び圧力が上昇し、中間圧力点(圧力Pinj)の状態G2になる。ここで、比エンタルピが低い状態G7の冷媒が、液インジェクション弁17を介して圧縮機11内に噴射されることで冷媒の比エンタルピが低下し、状態G2から状態G3になる。さらに、圧縮機11において所定の圧縮機吐出圧力Pdまで冷媒が圧縮されて状態G4になり、圧縮機11から高温高圧の冷媒が吐出される。つまり、液インジェクション弁17の開度を制御することで、圧縮機11の吐出ガス温度、或いは圧縮機11の吐出ガス過熱度が制御されている。
【0031】
そして、室外熱交換器13に流入した冷媒は、外気との熱交換で冷やされて凝縮し、状態G5になって、レシーバ15に導かれる。通常、レシーバ15には液冷媒が存在するため、冷媒は飽和液の状態で通過する。レシーバ15の下部から過冷却器16に流れ込んだ冷媒は、外気との熱交換によって冷やされ、過冷却液の状態G6になる。状態G6の冷媒の一部(破線)は、液インジェクション弁17において減圧されて状態G7になる。前記したように、この状態G7の冷媒が圧縮機11内に噴射にされる。
【0032】
一方、状態G7の冷媒の残りは、接続配管k3を介して室内機20に導かれ、室内膨張弁21において減圧される。これによって冷媒は、低温の気液二相の状態G8になり、室内熱交換器22に導かれる。室内熱交換器22を通流する冷媒は、室内空気との熱交換によって蒸発し、状態G1になる。そして、状態G1の冷媒は、接続配管k1及びアキュムレータ12等を介して、圧縮機11の吸入側に導かれる。
【0033】
なお、図2では、冷媒回路Qに適正な量の冷媒が封入されており、また、後記する冷媒組成の変化も生じていない場合を図示している。このような場合、図2に示す状態G6において冷媒の過冷却度が適正な値になるため、室内熱交換器22での比エンタルピ差(状態G8から状態G1までの比エンタルピ差)が十分に確保される。これによって、室内空気が適度に冷やされる。
【0034】
<制御装置の構成>
図3は、空気調和機100が備える制御装置30の機能ブロック図である(適宜、図1を参照)。
図3に示すように、制御装置30は、通信手段31と、演算処理手段32と、記憶手段33と、を備えている。
通信手段31は、各機器やセンサ類との間で通信を行う機能を有している。
演算処理手段32は、所定のプログラムに基づいて、演算処理を行う機能を有している。図2に示すように、演算処理手段32は、運転情報取得部32aと、運転状態判定部32b(判定部)と、凝縮器圧力算出部32cと、冷媒組成検出部32dと、出力処理部32eと、を備えている。
【0035】
運転情報取得部32aは、前記したセンサ類の検出値を取得したり、液インジェクション弁17の開度や圧縮機11の回転速度を取得したりする機能を有している。
運転状態判定部32bは、空気調和機100における冷凍サイクルの状態が、冷媒組成の検出に適しているか否かを判定する機能を有している。
【0036】
凝縮器圧力算出部32cは、圧縮機11の吐出側の圧力検出値に基づいて、圧縮機11の吐出側から室外熱交換器13の出口までの圧力損失を推定し、さらに、前記した圧力検出値及び圧力損失に基づいて、室外熱交換器13の出口付近の圧力を算出する。
【0037】
冷媒組成検出部32dは、室外熱交換器13の出口付近の圧力に基づいて、冷媒の飽和液温度を推定し、この飽和液温度と、室外熱交換器13の出口付近における冷媒の温度検出値と、の差に基づいて、冷媒組成の変化を検出する。
【0038】
出力処理部32eは、冷媒組成検出部32dによって冷媒組成に変化が生じている場合、その旨の情報等を出力する。この出力処理部32eの処理によって、表示装置40に所定の情報が表示されるようになっている。なお、制御装置30が実行する処理の詳細については後記する。
【0039】
<冷媒組成の変化>
図4は、冷媒の圧力と飽和液温度との関係を示す説明図である。
なお、図4の横軸は、冷媒の圧力であり、縦軸は、冷媒の飽和液温度である。
「初期組成」は、初期封入時の適正な冷媒組成における冷媒の圧力と飽和液温度との関係を表している。図4に示すように、冷媒の圧力が高くなるにつれて、飽和液温度も高くなる。なお、図4に示す「高圧組成−16%」や「高圧組成+16%」については後記する。
【0040】
ちなみに、図4に示す例では、冷媒としてR448Aが用いられている。このR448Aは、R32、R125、R134a、R1234yf、及びR1234ze(E)を混合してなる非共沸混合冷媒である。その混合率は、前記した順において、例えば、26wt%、26wt%、21%、20%、7%である。特にR448Aは、不燃性(ANSI/ASHRAE Standard 34-1992 Safety Group A1)であり、また、GWP(Global Warming Factor:地球温暖化係数)が1500未満(IPCC4次レポート値1387)とR404A(同3922)やR410A(同2088)に比べて小さいという特長がある。
【0041】
なお、前記した「非共沸混合冷媒」とは、それぞれの組成ごとに相変化が生じる混合冷媒である。
【0042】
R448Aに含まれる5種類の冷媒(R32、R125、R134a、R1234yf、R1234ze(E))のうち、前2種の大気圧での沸点は、約−52〜−48℃である。また、凝縮温度40℃における前2種の圧力は、約2.5[MPaA]であり、いわゆる高圧組成に分類される(凝縮しにくく、また、蒸発しやすい)。
一方、後3種の大気圧での沸点は、約−30〜−19℃である。また、凝縮温度40℃における後3種の圧力は、約1[MPaA]であり、いわゆる低圧組成に分類される(高圧組成よりも凝縮しやすく、また、蒸発しにくい)。
【0043】
ところで、冷媒が漏洩する場合において、高圧組成及び低圧組成の冷媒のうち、一方が他方よりも多く漏洩することがある。例えば、図1に示すレシーバ15内の上部にはガス冷媒が充満しており、このガス冷媒には凝縮圧力の高い高圧組成の冷媒(R32、R125)が多く含まれている。したがって、レシーバ15の上部に漏洩箇所が存在すると、高圧組成の冷媒が、低圧組成の冷媒よりも多く漏洩する。その結果、冷凍サイクルに残存する冷媒の組成は、初期封入時よりも低圧組成の比率が高くなる。
【0044】
初期封入時の冷媒組成(初期組成)を基準として、低圧組成の冷媒の比率が高くなった場合の飽和液温度は、例えば、図4の「高圧組成−16%」(高圧組成の冷媒の比率が初期組成に対して−16%)の破線で表される。この場合、例えば、2MPaAでの飽和液温度は、初期組成よりも約5.4℃高くなっている。したがって、初期封入時と同様に凝縮圧力が調整されると、結果的に、冷媒の凝縮温度が上昇するように室外ファン14が制御されるため、冷媒の凝縮側の能力低下を招く。ちなみに、冷媒の凝縮温度が上昇すると、冷媒の蒸発温度も同様に上昇するため、冷媒の蒸発側の能力低下も生じる。
【0045】
また、例えば、誤った方法で冷媒回路Qに冷媒が封入されると、高圧組成の冷媒の比率が初期組成よりも高くなる可能性がある。具体的に説明すると、冷媒が充填されたボンベ(図示せず)において冷媒の液面の上側の空間には、高圧組成の冷媒(凝縮しにくい低沸点の冷媒)が充満している。また、ボンベの種類によっては、冷媒を取り出すための管の先端が、冷媒の液面よりも上側に配置されたものがある。このようなボンベから冷媒回路Qに冷媒を封入する際には、作業員がボンベを逆さにした状態で、前記した管を介して液状の冷媒を封入するようにしている。
しかしながら、作業員が誤って、ボンベを逆さにせずに冷媒の封入作業を行うと、高圧組成の冷媒が通常よりも多く冷媒回路Qに封入される。その結果、例えば、図4の「高圧組成が+16%」の破線に示すように、同じ圧力でも飽和液温度が低くなることがある。
【0046】
その他、作業員が冷媒回路Qに封入すべき冷媒とは別種類の冷媒を誤って封入した場合にも、不適正な冷媒組成になる。そこで、本実施形態では、冷媒組成の変化を検出し、その検出結果に基づいて各機器を制御するようにしている。
【0047】
<制御装置の処理>
図5は、制御装置30が実行する処理のフローチャートである(適宜図1図3を参照)。なお、図5の「START」時には、冷房運転が行われているものとする。
ステップS101において制御装置30は、運転情報取得部32aによって、前記したセンサ類の検出値や、液インジェクション弁17の開度、圧縮機11の回転速度等を、空気調和機100の運転状態情報として取得する。
【0048】
次に、ステップS102において制御装置30は、ステップS101で取得した運転状態情報に基づき、冷媒組成の検出が可能な状態であるか否かを、運転状態判定部32bによって判定する。なお、冷媒組成の検出が可能な状態として、以下に示すものが挙げられる。
【0049】
(a)圧縮機11の吸入圧力、及びガス阻止弁18aの出口側の温度に基づいて算出される圧縮機11の吸入過熱度が適正範囲内(例えば、5K以上)である。
(b)ガス阻止弁18aの出口側の温度が適正範囲内(例えば、20℃以下)である。
(c)外気温度が適正範囲内(例えば、0℃以上43℃以下)である。
(d)圧縮機11の回転速度が適正範囲内(例えば、定格回転速度の50%以上)である。
(e)冷媒回路Qに封入されている冷媒の量が適正範囲内である。言い換えると、レシーバ15に貯留されている余剰の冷媒が適量である。
【0050】
なお、前記した(a)〜(e)は、冷媒組成の検出が可能であるか否かの判定に用いられる項目の例であるが、これに限定されるものではない。これらの(a)〜(e)の全てが満たされた場合、制御装置30が「冷媒組成の検出可能」と判定するようにしてもよい。また、(a)〜(e)に含まれる所定の項目が満たされた場合、制御装置30が「冷媒組成の検出可能」と判定するようにしてもよい。なお、(e)の具体的な判定方法については後記する。
【0051】
図5のステップS102において冷媒組成の検出が可能な状態ではない場合(S102:No)、制御装置30の処理はステップS101に戻る。例えば、運転状態判定部32bによって、冷媒回路Qに封入されている冷媒の量が適正でないと判定された場合、制御装置30の冷媒組成検出部32dは、冷媒組成の変化の検出を行わないようにする。
一方、ステップS102において冷媒組成の検出が可能な安定状態である場合(S102:Yes)、制御装置30の処理はステップS103に進む。
ステップS103において制御装置30は、冷媒組成の検出が可能な安定状態が所定時間(例えば、5分間程度)継続したか否かを判定する。
【0052】
ステップS103において、前記した安定状態が所定時間継続していない場合(S103:No)、制御装置30の処理はステップS101に戻る。一方、安定状態が所定時間継続している場合(S103:Yes)、制御装置30の処理はステップS104に進む。
【0053】
ステップS104において制御装置30は、凝縮器圧力算出部32cによって、凝縮器出口圧力Pcoを算出する。なお、凝縮器出口圧力Pcoとは、凝縮器である室外熱交換器13の出口付近の圧力である。
まず、制御装置30は、凝縮器出口圧力Pcoの算出に際して、圧縮機11の吐出側(図2の状態G4を参照)から、室外熱交換器13の出口(図2の状態G5を参照)までの圧力損失ΔPを推定する。この圧力損失ΔPは、以下の式(1)に示す冷媒循環量比Grrに基づいて算出される。なお、係数α,βや配管長補正係数KLは、既知である。
【0054】
【数1】
ここで、Pd :圧縮機吐出圧力[MPa]
Pco:凝縮器出口圧力[MPa]
Grr:冷媒循環量比[−]
α,β:係数[−]
KL :配管長補正係数[−]
【0055】
また、冷媒循環量比Grrは、以下の式(2)に基づいて算出される。なお、圧縮機基準回転速度Fto、基準吸入圧力Pso、及びインジェクション弁における流量比係数Kvは、既知である。
【0056】
【数2】
ここで、Ft :圧縮機回転速度[s−1
Fto:圧縮機基準回転速度[s−1
Ps :吸入圧力[MPaA]
Pso:基準吸入圧力[MPaA]
MV :インジェクション弁開度比[−]
Kv :インジェクション弁における流量比係数[−]
【0057】
なお、更に精度を向上させるには、以下に示すように、式(3)の後半に記載の吸入過熱度補正を実施するのが有効である。ここで、SHsは、圧縮機11の吸入圧力と吸入温度(またはガス阻止弁18aの出口側の冷媒温度)から求められる過熱度であり、Kshは既知の係数である。
【0058】
【数3】
ここで、SHs:吸入ガス過熱度[K]
Ksh:吸入ガス密度過熱度補正係数[−]
【0059】
このように制御装置30は、冷媒組成検出部32dによって、少なくとも圧縮機11の吸入圧力Ps及び回転速度Ftに基づく冷媒循環量比Grrを用いて、冷媒の圧力損失ΔPを推定する(式(1)、式(2)または式(3))。
【0060】
図6は、冷媒循環量比Grrと、圧力損失ΔPと、の関係を示す実験結果である。
図6に示すように、冷媒循環量比Grrの実測値と、圧力損失ΔPの実測値と、の間には、相関関係がある。したがって、図5に示す「実測値」のデータに基づき、冷媒循環量比Grrと圧力損失ΔPとの関係を示す近似曲線が求められる。この近似曲線を与える所定の数式(式(1)のΔP=α×Grr^β×KLに対応)は、記憶手段33(図3参照)に予め記憶されている。そして、式(2)に基づく冷媒循環量比Grrを用いて、圧力損失ΔPが算出(推定)される。
【0061】
図7は、冷媒循環量比の実測値と、冷媒循環量比の推定値と、の関係を示す説明図である。図7の横軸は、冷媒循環量比の実測値であり、図5に示す「実測値」に対応している。図7の縦軸は、式(2)に基づく冷媒循環量比の推定値である。
図7に示す例では、冷媒循環量比に関して、その実測値と推定値とが±5%以内(破線m1,m2の間)の精度で略一致している。したがって、式(2)に基づく冷媒循環量比Grr(冷媒循環量比の推定値)に基づいて、式(1)に示す圧力損失ΔPを十分な精度を推定できることが分かる。
【0062】
そして冷媒循環量比Grrに基づいて推定された圧力損失ΔPと、圧縮機吐出圧力Pd(図1に示す吐出圧力センサ19bの検出値)と、に基づき、以下の式(4)を用いて、凝縮器出口圧力Pcoが算出される。
【0063】
【数4】
【0064】
このようにして制御装置30は、図5のステップS104において、凝縮器出口圧力Pcoを算出する。
次に、ステップS105において制御装置30は、冷媒組成検出部32dによって、冷媒の飽和液温度Tcothを算出する。すなわち、制御装置30は、ステップS104で算出した凝縮器出口圧力Pcoに基づき、以下の式(5)を用いて、初期組成における冷媒の飽和液温度Tcothを算出(推定)する。なお、式(5)に示す係数a,b,c,dは、既知である。
【0065】
【数5】
ここで、Tcoth:初期組成における飽和液温度[℃]
a,b,c,d:係数[−]
【0066】
ちなみに、式(5)に示すように、飽和液温度Tcothを多項式で算出してもよいし、また、凝縮器出口圧力Pcoに基づいて飽和液温度Tcothを導くためのデータテーブルを記憶手段33(図3参照)に予め格納するようにしてもよい。
【0067】
次に、ステップS106において制御装置30は、以下の式(6)に基づいて、凝縮器出口温度変化ΔTcoを算出する。すなわち、制御装置30は、室外熱交換器13の出口付近に設置されている温度センサ19eの検出値と、ステップS105で算出した飽和液温度Tcothと、の差を、凝縮器出口温度変化ΔTcoとして算出する。この凝縮器出口温度変化ΔTcoは、初期組成における冷媒の飽和液温度Tcoth(つまり、推定される凝縮器出口温度)に対する、実測値のズレを示す数値である。
【0068】
【数6】
ここで、ΔTco:冷媒組成の変化に伴う凝縮器出口温度の上昇幅[K]
【0069】
次に、ステップS107において制御装置30は、|ΔTco|が所定閾値ΔT1(例えば、2K)以上であるか否かを判定する。|ΔTco|が所定閾値ΔT1以上である場合(S107:Yes)、制御装置30の処理はステップS108に進む。この場合には、冷媒組成の変化が生じている可能性がある。
一方、|ΔTco|が所定閾値ΔT1未満である場合(S107:No)、制御装置30の処理はステップS101に戻る。この場合には、冷媒組成がほとんど変化していない。
【0070】
ステップS108において制御装置30は、|ΔTco|が所定閾値ΔT1以上である状態が所定時間(例えば、5分間)継続しているか否かを判定する。|ΔTco|が所定閾値ΔT1以上である状態が所定時間継続している場合(S108:Yes)、制御装置30の処理はステップS109に進む。一方、|ΔTco|が所定閾値ΔT1以上である状態が所定時間継続していない場合(S108:No)、制御装置30の処理はステップS101に戻る。
【0071】
ステップS109において制御装置30は、冷媒組成の変化が生じていると判定する。
なお、制御装置30が、冷媒組成の変化が生じている旨を表示装置40(図1参照)に表示させるようにしてもよい。また、前記した高圧組成又は低圧組成の冷媒の比率が初期封入時よりも高くなっていることを示す情報を併せて表示するようにしてもよい。これによって、冷媒組成が変化したことをユーザに知らせることができる。
【0072】
ステップS110において制御装置30は、冷媒の凝縮温度及び蒸発温度を補正する。すなわち、制御装置30は、凝縮器出口圧力Pcoと実際の飽和液温度(凝縮温度)との関係を表す曲線(図4の高温・高圧側)の数式を補正する。そして、制御装置30は、凝縮器出口温度変化ΔTcoに対応して、その曲線を高圧組成側又は低圧組成側にシフトさせる。これによって、冷媒の凝縮温度が補正される。また、前記した処理に伴って、図4の低温・低圧側においても曲線が高圧組成側又は低圧組成側にシフトするため、冷媒の蒸発温度も補正される。
なお、冷媒の凝縮温度が初期組成よりも高くなっている場合には、通常、冷媒の蒸発温度も高くなっている。
【0073】
ステップS111において制御装置30は、補正後の凝縮温度及び蒸発温度に基づいて、各機器を制御する。例えば、前記した飽和液温度を基準として室外熱交換器13の出口付近の温度検出値が所定閾値以上高い場合(例えば、凝縮器出口温度変化ΔTcoが+2K以上である場合)、低圧組成の冷媒の比率が初期封入時よりも高くなっている可能性が高い。その結果、冷媒の凝縮温度及び蒸発温度が初期封入時よりも高くなる。したがって、制御装置30は、圧縮機11の吸入圧力及び吐出圧力を低下させるように機器を制御する。すなわち、制御装置30は、前者(圧縮機11の吸入圧力)への対応として、圧縮機11の回転速度を大きくし、後者(圧縮機11の吐出圧力)への対応として、室外ファン14の回転速度を大きくする。これによって、実際の冷媒組成に基づいて適切に冷房運転を行うことができ、能力不足を防止できる。
【0074】
また、例えば、前記した飽和液温度を基準として室外熱交換器13の出口付近の温度検出値が所定閾値以上低い場合(例えば、凝縮器出口温度変化ΔTcoが−2K以下である場合)、高圧組成の冷媒の比率が初期封入時、或いは正規冷媒時よりも高くなっている可能性が高い。その結果、冷媒の凝縮温度及び蒸発温度が初期封入時よりも低くなる。したがって、制御装置30は、圧縮機11の吸入圧力及び吐出圧力を高くするように機器を制御する。すなわち、制御装置30は、前者(圧縮機11の吸入圧力)への対応として、圧縮機11の回転速度を小さくし、後者(圧縮機11の吐出圧力)への対応として、室外ファン14の回転速度を小さくする。これによって、実際の冷媒組成に基づいて適切に冷房運転を行うことができ、蒸発温度の過剰な低下による断続運転の防止や、ファン動力の低減によって、電力コストを低減できる。
【0075】
ちなみに、前記した圧縮機11及び室外ファン14の制御は一例であり、冷房運転時の負荷状態等によっては、異なる制御が行われることもある。例えば、冷媒の蒸発温度および凝縮温度の一方のみを調整することで、能力調整を重視することもあるし、凝縮温度の調整を重視して省エネ性を重視することもある。
【0076】
また、別の制御方法として、以下で説明するように、補正後の凝縮温度及び蒸発温度に基づき、制御装置30が、圧縮機11の吸入側・吐出側における冷媒の過熱度を算出するようにしてもよい。
【0077】
図8は、冷媒の圧力と飽和ガス温度との関係を示す説明図である。
なお、図8の横軸は、冷媒の圧力であり、縦軸は、冷媒の飽和ガス温度である。
制御装置30は、図8に示す圧力に対応する飽和ガス温度の近似曲線(近似式)と、凝縮器出口温度変化ΔTcoに基づき、圧縮機11の吐出過熱度や吸入過熱度の算出式を補正する。
【0078】
なお、「吐出過熱度」とは、圧縮機11の吐出側における冷媒の過熱度である。また、「吸入側過熱度」とは、圧縮機11の吸入側における冷媒の過熱度である。そして、制御装置30は、圧縮機11の吸入側・吐出側の過熱度が、それぞれ、所定の目標過熱度となるように機器を制御する。すなわち、制御装置30は、蒸発器として作用する室内熱交換器22の上流側にある室内膨張弁21を制御することによって、圧縮機11の吸入側における冷媒の過熱度を調整する。また、制御装置30は、圧縮機11の中間部にインジェクションされる冷媒量を液インジェクション弁17で制御することによって、圧縮機11の吐出側における冷媒の過熱度を調整する。これによって、冷房運転を適切に行うことができ、また、圧縮機11の信頼性を確保できる。
【0079】
次に、冷媒回路Qに封入されている冷媒量の過不足の検知(図5のステップS102の処理で言及した項目(e))について説明する。
例えば、冷媒回路Qの冷媒量が過多である場合、レシーバ15が過冷却液で満たされ、室外熱交換器13の出口付近の冷媒が過冷却状態になる。この状態では、冷媒の凝縮圧力が過冷却度の分だけ上昇するため、圧縮機11の吐出圧力を上昇させるための電力消費に伴い、成績係数(COP:Coefficient Of Performance)の低下を招く。
【0080】
また、冷媒の漏洩等に伴い、冷媒回路Qの冷媒量が不足している場合、レシーバ15内に液冷媒がほとんど存在しない状態になり、室外熱交換器13の出口付近が気液二相状態になる。つまり、図2の状態G5の点が、飽和液線の内側に移動し、この状態G5における比エンタルピが通常よりも高くなる。その結果、室内熱交換器22での比エンタルピ差(図2に示す状態G8と状態G1との比エンタルピ差)が小さくなり、冷凍能力及び成績係数の低下を招く。そこで、本実施形態では、図5に示すステップS102の判定処理の一つとして、冷媒回路Qの冷媒量が適正であるか否かを判定するようにしている。
【0081】
図9は、冷媒循環量比Grrと、圧力損失ΔPと、の関係を示す実験結果である。
なお、図9に示す丸印は、冷媒回路Qに封入されている冷媒の量が適正であるときのデータである。また、図9に示す三角印は、冷媒の量が不足しているときのデータである。つまり、図9は、冷媒の量が不足しているときのデータを、図6の実験結果に追加したものである。
【0082】
冷媒量が不足している場合には、室外熱交換器13において気液二相状態の冷媒が通流する管路長が長くなるため、冷媒量が適正である場合に比べて、圧力損失ΔPが大きくなる。そうすると、図9の三角印で示すように、データにばらつきが生じるため、圧力損失ΔPの推定が困難になる。
【0083】
なお、図9では図示を省略しているが、冷媒量が過多である場合にも、圧力損失ΔPの推定が困難になる。その原因は、凝縮器内での液冷媒での流路長さの比率が多くなり、式(1)での推定値と合わなくなる為である。更には、凝縮器出口温度が過冷却状態であれば、飽和液温度で推定する式(6)の組成変化による温度差ΔTの演算が正しく行えなくなる。
したがって、冷媒量が適正でない場合には、前記したように、冷媒組成の変化を検知するためのステップS103〜S111の処理(図5参照)を行わないようにしている。ちなみに、通常運転時に配管から冷媒が漏洩すると、初期組成時の同様の比率(高圧組成・低圧組成の比率)の冷媒が漏洩し、冷媒組成はほとんど変化しないことが多い。
なぜならば、漏洩する部分が配管であれば、ほぼ封入組成で循環している部分での漏洩になるためである。組成変化が起きやすい漏洩箇所としては、先に記載のレシーバ15の上部のガス部分からの漏洩であるが、レシーバ15の容器部分は、配管や熱交換器などの部位に比べて耐圧対応により肉厚が厚いことから、漏洩発生頻度が少なくなるためである。つまり、組成変化よりも冷媒漏洩による冷媒不足状態が顕在化することが多い傾向があるため、先に冷媒不足を検知し、外部へ通報することで、有効な対処が行えるようになる。
なお、冷媒組成の変化が生じ易いパターンとしては、先に説明した冷媒ボンベのガス側からのチャージや、冷媒漏洩と補充とを繰り返し行ったときが挙げられるが、このような際には冷媒不足状態でなくても、組成変化が生じるため、本組成検知方法が有効に活用できる。
【0084】
図10は、冷媒量が適正であるか否かの判定に用いる、過冷却度の特性を示す実験結果である。
図10の横軸は、前記した冷媒循環量比Grrを室外ファン回転速度比Forで除した値である。図10の縦軸は、過冷却器16で冷やされた冷媒の過冷却度SCである。
外気温度や冷媒の蒸発温度の他、圧縮機11の回転速度等が時々刻々と変化しても、冷媒量が適正であれば、過冷却度SCと値(Grr/For)との関係が直線(「冷媒量適正時」の破線)で近似される。
【0085】
一方、冷媒不足率が約10%(丸印)や約15%(菱形)である場合、図10の「不足判定値」で示す所定の直線よりも下側に、略全てのデータが散在している。したがって、過冷却度SCがこの直線を所定時間下回った場合には、制御装置30が、冷媒不足である判定するようにしている。
なお、図10に示す「冷媒不足率」とは、冷媒不足の程度を示す比率であり、レシーバ15内に余剰の液冷媒がほとんど存在せず、かつ、室外熱交換器13の出口を飽和液で保てる限界の状態を基準としている。
【0086】
また、図10では省略しているが、冷媒過多であるか否かの判定基準となる直線(図示せず)を「冷媒適正時」の直線よりも上側に追加し、過冷却度SCがこの直線を所定時間上回った場合、冷媒量が過多であると判定するようにしてもよい。このように、制御装置30の運転状態判定部32bは、過冷却器16で冷やされた冷媒の過冷却度SCに基づいて、冷媒回路Qに封入されている冷媒の量が適正であるか否かを判定する。
【0087】
そして、冷媒回路Qにおける冷媒量が適正でない(冷媒不足又は冷媒過多である)場合、制御装置30は、その旨の情報を表示装置40(図1参照)に表示させる。これによって、冷媒量が適正でないことをユーザに知らせることができ、冷媒漏洩等に適切に対処できる。
【0088】
<効果>
第1実施形態によれば、初期組成(初期封入時)のデータに基づく飽和液温度と、凝縮器出口温度の検出値と、の差に基づいて(図5のS106)、冷媒組成の変化を適切かつ高精度に検出できる。また、冷媒組成の変化を検出する専用の部品を追加する必要がないため、空気調和機100の低コスト化を図ることができる。また、第1実施形態によれば、冷媒組成の変化の検出処理を通常の空調運転中に行うことが可能である。
【0089】
また、第1実施形態によれば、冷媒組成に変化が生じていると判定した場合(図5のS109)、制御装置30は、補正後の凝縮温度及び蒸発温度に基づいて各機器を制御する(S111)。これによって、冷媒組成の変化に伴う能力不足を抑制し、また、過熱度不足に伴う圧縮機11における潤滑不良や液圧縮を防止できる。したがって、点検の省力化や、低コスト化、省エネ化、信頼性の向上を図ることができる。
【0090】
また、第1実施形態に係る空気調和機100は、過冷却器16の上流側に設けられたレシーバ15を備えている。これによって、凝縮器である室外熱交換器13の出口付近が飽和液状態で維持されやすくなるため、冷媒組成の変化を適切に検出できる。
【0091】
さらに、第1実施形態によれば、冷媒回路Qの冷媒量が適正でないと判定した場合、制御装置30の冷媒組成検出部32dは、冷媒組成の変化の検出を行わない。これによって、冷媒組成の変化の誤検出を防止できる。
【0092】
≪第2実施形態≫
第2実施形態は、空気調和機100A(図11参照)が、四方弁Vと、温度センサ19hと、別の温度センサ25と、を備えている点が、第1実施形態(図1参照)とは異なっている。また、第2実施形態は、空気調和機100A(図11参照)が、レシーバ15(図1参照)、過冷却器16(図1参照)、液インジェクション弁17(図1参照)、及び温度センサ19e(図1参照)を備えない点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0093】
図11は、第2実施形態に係る空気調和機100Aの構成図である。
なお、図11では、冷房運転中に冷媒が流れる向きを実線矢印で示している(暖房運転中には逆向きで冷媒が循環)。図11に示すように、空気調和機100Aは、冷媒回路QAと、制御装置30と、表示装置40と、を備えている。
【0094】
冷媒回路Qは、室外機10Aに設置される各機器と、室内機20Aに設置される各機器と、を含んで構成される。
室外機10Aは、圧縮機11と、四方弁Vと、アキュムレータ12と、室外熱交換器13と、室外ファン14と、ガス阻止弁18aと、液阻止弁18bと、センサ類(温度センサ19h等)と、を備えている。
【0095】
四方弁Vは、冷媒回路QAにおいて冷媒が流れる向きを切り替える弁である。
冷房運転時には、四方弁Vが実線で示す流路に切り替えられ、圧縮機11と、室外熱交換器13(凝縮器)と、室内膨張弁21と、室内熱交換器22(蒸発器)と、が環状に順次接続されてなる冷媒回路QAにおいて冷媒が循環する。
暖房運転時には、四方弁Vが破線で示す流路に切り替えられ、圧縮機11と、室内熱交換器22(凝縮器)と、室内膨張弁21と、室外熱交換器13(蒸発器)と、が環状に順次接続されてなる冷媒回路QAにおいて冷媒が循環する。
【0096】
温度センサ19hは、室外熱交換器13の中間部(冷媒が通流する伝熱管の中間部)付近の温度を検出するセンサであり、室外熱交換器13に設置されている。
別の温度センサ25は、室内熱交換器22の中間部付近の温度を検出するセンサであり、室内熱交換器22に設置されている。温度センサ19h,25等の検出値は、制御装置30に出力される。
以下では、冷房運転中に冷媒組成の変化を検出する処理について説明する。
【0097】
図12は、制御装置30が実行する処理を示すフローチャートである。
なお、第1実施形態(図5参照)と同様の処理には、同一のステップ番号を付している。また、図12の「START」時には、冷房運転が行われているものとする。
ステップS103において、冷媒組成の検出が可能な状態が所定時間継続した場合(S103:Yes)、制御装置30の処理は、ステップS104aに進む。
【0098】
ステップS104aにおいて制御装置30は、凝縮器中間部の圧力(凝縮器である室外熱交換器13の中間部の冷媒の圧力)を算出する。液インジェクション弁17(図1参照)が設けられていない図11の構成では、第1実施形態で説明した式(2)に代えて、以下の式(7)に基づき、まず、冷媒循環量比Grrが算出される。
【0099】
【数7】
ここで、Ft :圧縮機回転速度[s−1
Fto:圧縮機基準回転速度[s−1
Ps :吸入圧力[MPaA]
Pso:基準吸入圧力[MPaA]
【0100】
そして、式(7)の算出結果に基づき、第1実施形態で説明した式(1)を用いて冷媒の圧力損失ΔPが算出される。さらに、制御部は、第1実施形態で説明した式(4)に基づいて、凝縮器中間部の圧力Pcoを算出する。このように制御装置30は、凝縮器圧力算出部32c(図3参照)によって、圧縮機11の吐出側の圧力検出値に基づき、圧縮機11の吐出側から室外熱交換器13(凝縮器)の中間部までの圧力損失ΔPを推定する。さらに、制御装置30は、凝縮器圧力算出部32cによって、前記した圧力検出値及び圧力損失ΔPに基づいて、室外熱交換器13の中間部付近の圧力を算出する。
【0101】
ステップS105aにおいて制御装置30は、凝縮器中間部の飽和温度Tcothを算出する。すなわち、制御装置30は、凝縮器である室外熱交換器13の中間部付近における冷媒の飽和温度Tcothを算出する。
ここでの「飽和温度Tcoth」は、第1実施形態で示した飽和液温度(図4参照)ではなく、飽和ガス温度(図8参照)と飽和液温度との平均温度(つまり、露点・沸点の平均温度)であり、別途、近似式として式(5)の係数a,b,c,dが与えられて算出される。
【0102】
次に、ステップS106aにおいて制御装置30は、凝縮器中間部の温度変化ΔTcoを算出する。すなわち、制御装置30は、室外熱交換器13(凝縮器)の中間部付近に設置された温度センサ19hの検出値と、ステップS105aで算出した飽和温度Tcothと、の差に基づき、凝縮器中間部の温度変化ΔTcoを算出する。
【0103】
なお、ステップS107〜S111の処理については、第1実施形態と同様であるから、説明を省略する。このように制御装置30は、冷媒組成検出部32d(図3参照)によって、凝縮器の中間部付近の圧力に基づいて、冷媒の飽和温度を推定する。そして、制御装置30は、冷媒組成検出部32dによって、飽和温度と、凝縮器の中間部付近における冷媒の温度検出値と、の差に基づいて、冷媒組成の変化を検出する。
【0104】
なお、冷媒回路QAに封入されている冷媒の量が適正であるか否かの判定は、凝縮器(室外熱交換器13又は室内熱交換器22)の出口付近の冷媒の過冷却度に基づいて行われる。また、暖房運転中の処理については、凝縮器として機能する室内熱交換器22の温度センサ25の検出値等が用いられる。
また、暖房運転時には式(1)での圧縮機吐出側から凝縮器中間部までの圧力損失を求める際に、係数KL(配管長補正係数)を接続配管K1の配管長に相当する値に設定する。具体的には制御装置30内のディップスイッチ、若しくは設定画面を操作することで配管長を入力して係数が設定される。これにより凝縮器中間部までの圧力損失が正確に算出されて、組成変化の検知精度を向上することができる。
【0105】
なお、冷媒の飽和温度に基づく制御の具体例を挙げると、制御装置30は、冷媒の飽和温度を基準として、凝縮器の中間部付近における冷媒の温度検出値が所定閾値以上高い場合、冷媒の初期封入時よりも圧縮機11の回転速度を大きくする。また、制御装置30は、冷媒の飽和温度を基準として、凝縮器の中間部付近における冷媒の温度検出値が所定閾値以上低い場合、冷媒の初期封入時よりも圧縮機11の回転速度を小さくする。このような制御を行うことで、冷媒の組成変化に応じて、適切に空調運転を行うことができる。
【0106】
<効果>
第2実施形態では、レシーバ15等(図1参照)が設けられていないため、凝縮器(室内熱交換器22又は室外熱交換器13)の出口付近での冷媒状態が飽和液状態でないことがある。そこで、第2実施形態では、凝縮器の出口ではなく、凝縮器の中間部の温度検出値等に基づいて、冷媒組成の変化を検出するようにしている。凝縮器の中間部では、冷媒が気液二相状態であることが多いため、冷媒組成の変化に関する判定処理を適切に行うことができる。
【0107】
≪変形例≫
以上、本発明に係る空気調和機100,100Aについて各実施形態により説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、各実施形態では、冷媒回路Qに封入される冷媒がR448Aである場合について説明したが、これに限らない。すなわち、R407C、R407F、R407E、R407H、R449A、R452A、R447A等、他の非共沸混合冷媒を使用してもよい。
【0108】
非共沸混合冷媒として更に補足すると、凝縮温度40℃での飽和圧力が約2.5MPa程度のR32およびR125と、凝縮温度40℃での飽和圧力が約1.0MPa程度のR134a、R1234yfが含まれていることが望ましい。これによって、従来から広く使用されていたR22、R407C、R404A等の冷媒と同等の作動圧力が得られるとともに、GWP(地球温暖化係数)を低減し、さらに、燃焼性を抑えることができる。
これらの代表例として、R448A(R32/R125/R134a/R1234yf/R1234ze(E)=26/26/21/20/7wt%)や、R449A(R32/R125/R134a/R1234yf=24.3/24.7/25.7/25.3wt%)がある。前記した冷媒は、多数の冷媒種を混合した非共沸冷媒であり、沸点(飽和液温度)と露点(飽和ガス温度)の温度差である温度グライドが略4K以上あり、前記、使用時や封入時に生じる組成変化により留意する必要が生じる。従って、本発明の組成検知技術を導入することが非常に有効である。
また、前記した冷媒に加えてR744を加えることで、作動圧力を高めることができ、体積能力を増加させることができる。これによって圧縮機11や接続配管のコンパクト化を図ることができ、イニシャルコストを低減できる。
その反面、R744の混合は非共沸性を更に増大させることになり、温度グライドが略6K以上あるため、組成変化への配慮がより重要となる。従って、本発明の組成検知技術を導入すれば、能力低下や効率低下を抑えることができ、非共沸性の大きなR744混合冷媒を使いこなすことができるようになることから、更に有効性が高い。
【0109】
また、R410AやR404Aのような擬似共沸冷媒や、HFO1123を含んだ温度グライドが略2K未満の混合冷媒、あるいはR32、R744などの単一冷媒にも用いることができる。この場合は、正規の冷媒であるか否かを判定することができ、冷媒の誤封入(正規の冷媒を基準とする冷媒組成の変化)に対する警報表示を行うことで、可燃性冷媒など、本来の機器設計時に考慮されていない冷媒の誤封入を未然に防止できるとともに、空気調和機100の能力不足や効率低下を抑制できる。
【0110】
また、各実施形態では、運転状態情報に基づいて、冷媒組成の検出が可能であるか否かを判定する処理(図5のS102)について説明したが、これに限らない。例えば、運転状態判定部32bが、所定時間分の運転状態情報を蓄積し、蓄積された運転状態情報に基づいて(例えば、所定の運転状態情報の平均値に基づいて)、冷媒組成の検出が可能であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0111】
また、第1実施形態では、制御装置30が冷媒組成の変化を検出した場合、飽和液温度と、凝縮器の出口付近における冷媒の温度検出値と、の差に基づいて、冷媒の凝縮温度及び蒸発温度の両方を補正する処理について説明したがこれに限らない。すなわち、冷媒組成検出部32dによって冷媒組成の変化が検出された場合、制御装置30は、前記した差に基づいて、冷媒の凝縮温度及び蒸発温度のうち少なくとも一方の補正を行い、さらに、補正後の前記少なくとも一方に基づいて、圧縮機11を制御するようにしてもよい。なお、第2実施形態についても同様のことがいえる。
また、制御装置30が、補正後の前記少なくとも一方に基づいて、圧縮機11の吸入側及び吐出側の過熱度が所定の目標値となるように圧縮機11を制御するようにしてもよい。
【0112】
また、各実施形態では、空気調和機100等が表示装置40を備える構成について説明したが、表示装置40を省略してもよい。この場合には、通信手段31(図3参照)から外部への通報を行うことで、組成や冷媒量の状態を知らせることができる。
また、各実施形態では、「冷凍サイクル装置」が、パッケージエアコン、ルームエアコン等の空気調和機100である構成について説明したが、これに限らない。例えば、「冷凍サイクル装置」として、冷凍機や冷蔵庫にも各実施形態を適用できる。
また、各実施形態では、室外機10や室内機20の外部に制御装置30が設けられる構成について説明したが(図1図11参照)、これに限らない。すなわち、室外機10及び室内機20の一方又は両方に制御装置30を設けるようにしてもよい。
【0113】
また、各実施形態は、適宜組み合わせることができる。例えば、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせ、空気調和機100がレシーバ15や過冷却器16等を備える構成において(図1参照)、凝縮器の中間部の温度検出値等に基づき、冷媒組成の変化を検出するようにしてもよい。
【0114】
また、図3等に示す各構成は、それらの一部又は全てを、例えば、集積回路で設計すること等によりハードウェアで実現してもよい。また、CPU等のプロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、HDに格納すること以外に、メモリや、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、IC(Integrated Circuit)カードや、SD(Secure Digital)カード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に格納することができる。
【0115】
また、各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【符号の説明】
【0116】
100,100A 空気調和機
11 圧縮機
12 アキュムレータ
13 室外熱交換器(凝縮器/蒸発器)
14 室外ファン
15 レシーバ
16 過冷却器
17 液インジェクション弁
21 室内膨張弁(膨張弁)
22 室内熱交換器(蒸発器/凝縮器)
23 室内ファン
30 制御装置
32 演算処理手段
32a 運転情報取得部
32b 運転状態判定部(判定部)
32c 凝縮器圧力算出部
32d 冷媒組成検出部
32e 出力処理部
40 表示装置
Q,QA 冷媒回路
V 四方弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12