特許第6902396号(P6902396)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6902396-画像分類機能付製造装置 図000002
  • 特許6902396-画像分類機能付製造装置 図000003
  • 特許6902396-画像分類機能付製造装置 図000004
  • 特許6902396-画像分類機能付製造装置 図000005
  • 特許6902396-画像分類機能付製造装置 図000006
  • 特許6902396-画像分類機能付製造装置 図000007
  • 特許6902396-画像分類機能付製造装置 図000008
  • 特許6902396-画像分類機能付製造装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902396
(24)【登録日】2021年6月23日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】画像分類機能付製造装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20210701BHJP
【FI】
   G06T7/00 610C
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-103413(P2017-103413)
(22)【出願日】2017年5月25日
(65)【公開番号】特開2018-198034(P2018-198034A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2019年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敦志
(72)【発明者】
【氏名】豊田 佳弘
【審査官】 藤原 敬利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−224942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00− 7/90
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を製造し、且つ製造した物品の検査を画像分類によって行う画像分類機能付製造装置であって、
分類対象である分類用画像を該分類用画像の種類別に分類する分類手段を備え、
該分類手段は、前記検査において、
前記分類用画像の種類に応じた学習用画像に基づいて、前記分類用画像の種類を識別するための複数の識別境界、該識別境界に基づいて種類が識別された前記分類用画像を分類するための複数の識別済領域と、該識別済領域同士の間に設定される未識別領域とが区分けされるようにして設定する学習処理と、前記分類用画像の種類が前記複数の識別境界の何れかの識別境界が示す種類に合致した場合には、該分類用画像を種類が合致した識別境界に区分けされている識別済領域に分類し、前記分類用画像の種類が前記複数の識別境界の何れの識別境界の種類にも合致しない場合には、該分類用画像を前記未識別領域に分類する分類処理とをオンラインで連続的に繰り返して実行するように構成される画像分類機能付製造装置
【請求項2】
前記分類手段は、
前記学習処理において、前記学習用画像に基づいて前記種類を区別する境目となる基準識別器を設定し、該基準識別器を基準として該基準識別器の一方側及び他方側に所定の閾値を設定することにより、前記複数の識別済領域と前記未識別領域とを区分けするようにして前記識別境界を構成する
請求項に記載の画像分類機能付製造装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の画像を分類する画像分類システム、画像分類機能付製造装置、画像分類用の識別器、及び画像分類方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物品(例えば、回路基板や、フィルム等)の検査において、検査対象の物品を撮像して得た画像を、欠陥の有無に応じて分類する画像分類システムが用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の画像処理装置に構築されている画像分類システムは、物品を撮像した画像から検出される欠陥候補点に基づいて設定される欠陥候補領域と、欠陥候補領域を除く領域に対して設定される非欠陥候補領域との間に閾値を設定しておき、物品を撮像した画像が入力されると、前記閾値に基づいて物品の画像が欠陥候補領域か非欠陥候補領域の何れの領域に含まれるかを判定する。
【0004】
従って、物品を撮像した画像が欠陥候補領域に含まれれば欠陥が有るものと判定でき、物品を撮像した画像が非欠陥候補領域に含まれれば欠陥が無いとものと判定でき、これにより、物品が良品であるか不良品であるかを確認できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−41164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の画像分類システムでは、非欠陥候補領域に欠陥が存在する画像が振り分けられてしまうこと、すなわち、欠陥が存在する物品を良品と判断してしまうことを防止するために、入力された画像が非欠陥候補領域に分類される条件が厳しくなるように前記閾値を設定していた。
【0007】
これにより、非欠陥候補領域への画像の分類精度、すなわち、欠陥のない物品を間違いなく良品であると判断する精度が高まるが、前記閾値が厳しく設定されている分だけ、欠陥候補領域にも欠陥のない物品の画像が含まれることとなり、良品を不良品と誤って判断している状態になることが問題となっている。
【0008】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、画像分類における歩留まりを良くすることができる画像分類機能付製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像分類システムは、
分類対象である分類用画像を該分類用画像の種類別に分類する分類手段を備え、
該分類手段は、
前記分類用画像の種類を識別するための複数の識別境界により、該識別境界に基づいて種類が識別された前記分類用画像を分類するための複数の識別済領域と、該識別済領域同士の間に設定される未識別領域とが区分けされるようにして設定されるとともに、
前記分類用画像の種類が前記複数の識別境界の何れかの識別境界が示す種類に合致した場合には、該分類用画像を種類が合致した識別境界に区分けされている識別済領域に分類し、
前記分類用画像の種類が前記複数の識別境界の何れの識別境界の種類にも合致しない場合には、該分類用画像を前記未識別領域に分類する。
【0010】
上記構成の画像分類システムによれば、分類手段は、複数の識別境界によって前記複数の識別済領域と、前記識別済領域同士の間の未識別領域とが区分けされ、さらに、分類用画像の種類が複数の識別境界のうちの何れかの識別境界が示す種類に合致した場合には、該分類用画像を種類が合致した識別境界に区分けされている識別済領域に分類し、分類用画像の種類が複数の識別境界何れの識別済領域の種類にも合致しない場合には、該分類用画像を未識別領域に分類するため、種類を確実に識別できた分類用画像は識別済領域に分類され、種類を確実に判定できない分類用画像(すなわち、種類の識別を誤る可能性のある分類用画像)は未識別領域に分類される。
【0011】
従って、未識別領域に分類された分類用画像を、例えば、作業者や専用の機器等を用いて正確に分類することで誤った分類を抑制できるようにし、これにより、歩留まりを良くすることができる。
【0012】
本発明の画像分類システムにおいて、
前記分類手段は、
前記分類用画像の種類に応じた学習用画像に基づいて、前記複数の識別済領域と前記未識別領域とが区分けされるように前記複数の識別境界を設定する学習処理を実行するように構成されていてもよい。
【0013】
かかる構成によれば、上述のように、複数の識別済領域同士の間に未識別領域が設定されるため、複数の識別領域を互いに隣接させて設定する場合に比べて、隣接する領域付近での多量の学習用画像が不要となり、必要な学習用画像の数を抑えることができる。
【0014】
従って、前記画像分類システムは、識別境界を設定する学習処理の負担を抑えることができ、学習処理と画像の分類処理とを連続的に繰り返して実行することができる。
【0015】
この場合、前記分類手段は、
前記学習処理において、
前記学習用画像に基づいて前記種類を区別する境目となる基準識別器を設定し、
該基準識別器を基準として該基準識別器の一方側及び他方側に所定の閾値を設定することにより、前記複数の識別済領域と前記未識別領域とを区分けするようにして前記識別境界を構成するように構成されていてもよい。
【0016】
このようにすれば、前記種類を区別する境界となる基準識別器を基準として広がるように未識別領域が設定され、該未識別領域の外側に複数の識別領域が設定されるため、前記種類を識別するための境界同士(識別境界同士)の間に設定された未識別領域に種類が不明な分類用画像を集約できるようになる。
【0017】
本発明の画像分類機能付製造装置は、
画像分類によって検査を行う物品を製造する画像分類機能付製造装置であって、上記何れかの画像分類システムを備え、該画像分類システムで前記物品を分類して検査するように構成される。
【0018】
本発明の画像分類用の識別器は、
分類対象である分類用画像の種類を識別するための複数の識別境界が設定され、
該複数の識別境界により、該識別境界に基づいて種類が識別された前記分類用画像を分類する複数の識別済領域と、該識別済領域同士の間に設定される未識別領域とを区分けするように構成される。
【0019】
本発明の画像分類方法は、
分類対象である分類用画像を、該分類用画像の種類を識別するための複数の識別境界に区分けされるように設定された複数の識別済領域であって、該識別境界に基づいて種類が識別された前記分類用画像を分類する複数の識別済領域、及び該識別済領域同士の間に設定される未識別領域のうちの何れかに分類する際、
前記分類用画像の種類が前記複数の識別境界の何れかの識別境界が示す種類に合致した場合には、該分類用画像を種類が合致した識別境界に区分けされる識別済領域に分類し、
前記分類用画像の種類が前記複数の識別境界の何れの識別境界の種類にも合致しない場合には、該分類用画像を前記未識別領域に分類する。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の画像分類機能付製造装置によれば、画像分類における歩留まりを良くすることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る画像分類機能付製造装置のブロック図である。
図2図2は、同実施形態に係る検査装置のブロック図である。
図3図3は、同実施形態に係る画像分類システムのブロック図である。
図4図4は、同実施形態に係る画像分類機能付製造装置のフローチャートである。
図5図5は、同実施形態に係る画像分類機能付製造装置のサブフローチャートであって、分類手段の学習処理のサブフローチャートである。
図6図6は、同実施形態に係る画像分類機能付製造装置のサブフローチャートであって、分類手段の分類処理のサブフローチャートである。
図7図7の(a)〜(c)は、同実施形態に係る分類手段の学習処理を説明するための特徴量空間のイメージ図である。
図8図8は、同実施形態に係る分類手段の識別器の構築方法を説明するための特徴量空間のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態にかかる画像分類システムについて、添付図面を参照しつつ説明する。
【0023】
本実施形態に係る画像分類システムは、例えば、基板や、フィルム等の物品の検査時に用いられるシステムであり、該検査対象物を撮像して得た画像(以下、分類対象とする画像を分類用画像と称する)に写る欠陥の有無で分類するように構成されている。
【0024】
なお、本実施形態に係る画像分類システムは、上記画像分類システムが組み込まれることにより、前記物品の製造及び検査を行えるように構成された画像分類機能付製造装置について説明を行うこととする。
【0025】
図1に示すように、画像分類機能付製造装置1は、製造した物品を撮像して得た画像に基づいて該物品の検査を行う検査装置2と、該検査装置2が物品を撮像して得た画像を分類する画像分類システム3と、検査後の物品の包装等を行う後工程処理装置4とを備えている。
【0026】
検査装置2は、図2に示すように、検査対象とする物品(以下、検査対象とする物品を検査対象物と称する)を撮像する撮像手段20と、該撮像部で得た物品の画像に基づいて検査対象物の検査を行う検査判定手段21とを有する。
【0027】
撮像手段20は、検査対象物全体を撮像して画像(検査画像)を取得するように構成されている。なお、撮像手段20は、検査対象物全体を撮像した検査画像から欠陥候補(欠陥が発生している可能性のある部分)が複数存在する場合は、欠陥候補の数に応じた枚数の検査画像をさらに取得するように構成されていてもよい。
【0028】
検査判定手段21は、検査対象物の欠陥が検査画像に写っているか否か(すなわち、欠陥の有無)を判定するように構成されている。そのため、検査判定手段21では、検査画像が欠陥の無い正常画像、又は欠陥が有る欠陥画像の何れかの画像であると判定される。
【0029】
なお、検査判定手段21は、例えば、検査対象物が回路基板のようなパターンを含む物品である場合は、良品画像をマスターとした比較検査や、CADデータから取得した検査対象物のパターン情報との比較検査を行うことで検査画像の中から欠陥を抽出するように構成されていればよい。
【0030】
また、検査判定手段21は、検査対象物がフィルムである場合においては、欠陥強調処理を行い、2値化した状態で検査画像中の欠陥を発見できるようにしてもよい。
【0031】
また、検査判定手段21では、欠陥画像が誤って正常画像と判定されてしまうことを防止するために、検査画像を正常画像と判定するための判定条件を厳しく設定し、実際に欠陥が写っている画像の全てを抽出できるようにしておくことが好ましい。
【0032】
画像分類システム3は、例えば、情報の処理を行う処理装置(CPU)と、情報を記憶する記憶装置とを備えた機器(例えば、パソコン等)に構築することができる。
【0033】
本実施形態に係る画像分類システム3は、図3に示すように、検査対象物の画像を取得する画像取得手段30と、該画像取得手段30で取得した画像を分類する分類手段31と、前記画像取得手段30が取得した画像の種類に応じて(種類別に)該分類手段31に学習用の画像を入力するための学習用入力手段32と、前記分類手段31による画像の分類結果を出力する出力手段33とを有する。
【0034】
画像取得手段30は、検査装置2の撮像手段20で撮像して得た画像を取得するように構成されており、より具体的には、検査判定手段21が欠陥画像と判定した画像を欠陥候補画像(欠陥が写っている可能性のある画像)として取得するように構成されている。
【0035】
なお、画像取得手段30は、検査判定手段21から欠陥画像を直接取得してもよいし、記憶装置に一度保存された欠陥画像を取得するようにしてもよい。また、画像取得手段30は、検査判定手段から得た座標情報から、欠陥候補をより鮮明に撮像できる手段で画像を再取得することも可能である。
【0036】
分類手段31は、入力された画像を分類する分類処理と、該分類処理を行うにあたり、分類の基準とする識別器を構築するための学習処理とを実行するように構成されている。
【0037】
学習用入力手段32は、画像取得手段30で取得した画像の種類に対応する種類の一群の学習用データ(以下、学習用データセットと称する)を取得し、該学習用データセットを分類手段31に出力する。
【0038】
学習用データとは、検査対象物を撮像した画像や、検査対象物を撮像した画像を模して作製した画像のことである。また、画像の種類とは、例えば、検査対象物を撮像した場所や、構造毎に定めた画像の種類のことである。本実施形態では、以下の説明において学習用データを学習用画像と称する。
【0039】
学習用画像は、画像分類システム3を構築した端末に内蔵されている記憶装置に記憶させておいてもよいし、該端末に対して有線又は無線接続された外部機器に記憶させておいてもよい。
【0040】
学習用データセットは、良品であること(すなわち、欠陥が写っていないこと)を確実又は略確実に判定できる複数の学習用画像(学習用良品画像)と、不良品であること(すなわち、欠陥が写っていること)を確実又は略確実に判定できる複数の学習用画像(学習用不良品画像)とで構成されている。
【0041】
ここで、分類手段31の学習処理について説明する。
【0042】
分類手段31には、学習用入力手段32によって学習用データセットに含まれる学習用良品画像と学習用不良品画像とが順番に入力される。
【0043】
そして、分類手段31は、入力された学習用良品画像の特徴量、及び学習用不良品画像の特徴量を抽出し、これらの特徴量から識別器を生成する。
【0044】
なお、図7(a)には、特徴量空間Vに出力された特徴量P1,P2のイメージを示している。また、図7(b)に示すように、基準識別器Dは、特徴量空間V内を2つの領域V1,V2に区分けすることで、入力された分類用画像の種類が2つの種類(本実施形態では、欠陥の有無)のうちのどちらの種類に該当するかを識別するようなイメージのものである。
【0045】
なお、分類手段31では、例えば、SVM、AdaBoost、ランダムフォレスト、MT法等のアルゴリズムを用いて生成した識別器と、HOG、SHIFT、LBP、Haar−like、SURF等の特徴量を用いることができる。本実施形態に係る分類手段31は、SVMによって識別器を生成するように構成されており、また、特徴量にはHOGが採用されている。
【0046】
続いて、基準識別器から一方側に閾値を設定するとともに、他方側にも別の閾値を設定する。この2つの閾値が入力された分類用画像の種類を識別するための境界(2つの識別境界)となり、該2つの識別境界は、該識別境界によって種類が識別された分類用画像を分類するための複数の識別済領域と、該識別済領域同士の間に設定される未識別領域とを区分けするように設定されている。
【0047】
なお、基準識別器から一方側に設定した閾値、他方側に設定した閾値、識別済領域、未識別済領域を特徴量空間内に表現すると図7(c)のようなイメージとなる。なお、図7(c)中において「C1」は正常閾値、「C2」は欠陥閾値、「V1,V2」は識別済領域、「V3」は未識別済領域を示している。
【0048】
本実施形態では、一方の識別済領域に正常画像が分類され、他方の識別済領域には欠陥画像が分類される。そのため、基準識別器を基準として一方側に設定される閾値は、分類用画像が正常画像であることを識別するための閾値であり、基準識別器を基準として他方側に設定される閾値は、分類用画像が欠陥画像であることを識別するための閾値である。以下の説明において、分類用画像が正常画像であることを識別するための閾値を正常閾値と称し、分類用画像が欠陥画像であることを識別するための閾値を欠陥閾値と称する。
【0049】
なお、図8に示すように、正常閾値C1及び欠陥閾値C2は、基準識別器Dに区分けされた各区分内において、種類の異なる画像が混在している領域を基準識別器Dとの間に含むようにして設定されている。
【0050】
これにより、分類手段31では、入力された分類用画像を、一方の識別境界(正常閾値)が示す種類に該当(合致)するもの(正常画像であると識別されたもの)と、他方の識別境界(欠陥閾値)が示す種類に該当(合致)するもの(欠陥画像であると識別されたもの)と、各識別境界の何れの種類にも該当しないもの(識別結果が誤る可能性のある画像)とに分類することができるように構成されている。
【0051】
出力手段33は、分類手段31による画像の分類結果を表示装置(例えば、ディスプレイ)に出力して表示したり、記憶装置に出力して保存したりするように構成されている。
【0052】
本実施形態に係る画像分類機能付製造装置1の構成は、以上の通りである。続いて、画像分類機能付製造装置1の画像分類方法を含む動作について説明する。
【0053】
画像分類機能付製造装置1では、図4に示すように、検査装置2による検査対象物の検査を行う(S1)。検査装置2では、撮像手段20により検査対象物の複数個所を撮像し、該撮像により得た複数の画像について欠陥の有無を判定する。
【0054】
そして、欠陥が写っていない分類用画像を正常画像と判定し、欠陥が写っている分類用画像を欠陥画像と判定する。
【0055】
続いて、画像分類システム3の画像取得手段30が、欠陥画像を欠陥候補画像として取得する(S2)。
【0056】
学習用入力手段32は、画像取得手段30が取得した欠陥候補画像の種類に応じて、該種類に対応する種類の学習用データセットを取得し(S3)、該学習用データセットを分類手段31に入力する(S4)。
【0057】
分類手段31は、学習用入力手段32から学習用データセットに含まれる学習用良品画像と学習用不良品画像とが入力されると、学習処理を実行する(S5)。
【0058】
図5に示すように、分類手段31は、学習処理において、各学習用良品画像と各学習用不良品画像の特徴量を導出し、該特徴量を特徴量空間に出力する(S6)。
【0059】
そして、特徴量空間に出力された特徴量に基づいて、分類用画像の種類を区別する境目となる基準識別器を設定し(S7)、基準識別器を基準として一方側に正常閾値、他方側に欠陥閾値を設定する(S8)。なお、本実施形態では、上述のように、正常閾値と欠陥閾値とが、分類用画像の種類を識別するための識別境界となる。また、特徴量空間内には、正常閾値と欠陥閾値により、複数の識別済領域と、該識別済領域同士の間に設定される未識別領域とが区分けされる。
【0060】
これにより、特徴量空間内には複数(本実施形態では、二つ)の識別境界によって構成される画像分類用の識別器が構築される。
【0061】
続いて、図4に示すように、分類手段31による欠陥候補画像の分類処理が行われる(S9)。
【0062】
分類手段31の分類処理では、図6に示すように、入力された欠陥候補画像の特徴量を抽出し(S10)、該特徴量で学習させた識別器にてスコアを出力する(S11)。
【0063】
そして、スコアと正常閾値とを比較し、スコアが正常閾値により設定される条件に該当する場合は(S12でYes)、欠陥候補画像を一方の識別済領域に分類する、すなわち、欠陥候補画像が正常画像であると判定(識別)する(S13)。
【0064】
一方、スコアが正常閾値により設定される条件に該当しない場合は(S12でNo)、スコアと欠陥閾値とを比較し、該スコアが欠陥閾値により設定される条件に該当する場合は(S14でYes)、欠陥候補画像を他方の識別済領域に分類する、すなわち、欠陥候補画像が欠陥画像であると判定(識別)する(S15)。
【0065】
さらに、スコアが欠陥閾値により設定される条件にも該当しない場合は(S14でNo)、欠陥候補画像を未識別領域に分類する、すなわち、欠陥候補画像を欠陥の有無に基づく分類をしていない未分類の画像と判定(識別)する(S16)。
【0066】
そして、図4に示すように、分類手段31による欠陥候補画像の分類処理を行った後、別の欠陥候補画像の分類処理を行わない場合は(S17でNo)、画像分類システム3の処理を終了する。
【0067】
以上のように、本実施形態に係る画像分類機能付製造装置1の画像分類システム3によれば、分類用画像の種類を識別するための複数の識別境界が、該識別境界に基づいて種類が識別された前記分類用画像を分類するための複数の識別済領域と、該識別済領域同士の間に設定される未識別領域とを区分けするようにして設定されているため、分類手段31に入力された分類用画像を、一方の識別境界(正常閾値)が示す種類に該当するもの(正常画像であると識別されたもの)と、他方の識別境界(欠陥閾値)が示す種類に該当するもの(欠陥画像であると識別されたもの)と、各識別境界の何れの種類にも該当しないもの(識別結果が誤る可能性のある画像)とに分類することができる。
【0068】
従って、画像分類システム3は、欠陥の有無を確実に判定できない画像として分類された分類用画像(すなわち、未識別領域に分類された分類用画像)を、例えば、作業者や専用の機器等を用いて正確に分類することで、誤った分類を抑制して画像分類における歩留まりを良くすることができる。
【0069】
また、画像分類システム3における識別器は、複数の識別済領域と該識別済領域同士の間に未識別領域を設定するため、学習に必要な学習用画像の数を抑えることができる。
【0070】
例えば、複数の識別済領域を互いに隣接させて設定する場合は、隣接する識別済領域同士の境界を正確に構築すること(すなわち、分類用画像の種類を正確に分類することができる識別器を構築すること)が求められるため、良品であることを確実又は略確実に判定できる複数の学習用画像と、不良品であることを確実又は略確実に判定できる複数の学習用画像とに加えて、該境界付近に現れる特徴量を有する学習用画像を多量に入力することが必要となる。
【0071】
一方、本実施形態に係る画像分類システム3においては、識別済領域同士の間に所定の広さを有する未識別領域が設定されるため、識別器を構築するために必要な学習用画像の数を抑えることができる。
【0072】
また、画像分類システム3は、識別器を構築するために必要な学習用画像の数を抑えることができる分、分類用画像を分類するための空間を設定する学習処理の実行時にかかる負担を抑えることができるため、学習処理と画像の分類処理とをオンライン上で連続的に繰り返して実行することができる。
【0073】
なお、本発明の画像分類機能付製造装置は、上記一実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更を行うことは勿論である。
【0074】
上記実施形態では、画像分類システム3が物品を製造する装置に組み込まれる場合を一例に挙げて説明を行ったが、例えば、画像分類システム3を独立させて使用することも可能である。この場合、画像分類システム3は、分類したい画像と、分類したい画像の種類に対応する学習用画像とを入力できるように構成されていればよい。
【0075】
上記実施形態において、分類手段31では、画像(分類用画像)を分類するための識別境界(閾値)を2つ設定していたが、この構成に限定されない。例えば、分類手段31では、画像を分類するための識別境界(閾値)を3つ以上設定してもよい。
【0076】
上記実施形態において、画像分類システム3は、欠陥の有無に応じて分類用画像を分類するように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、画像分類システム3は、欠陥の種類毎に分類用画像を分類するように構成されていてもよい。一例を挙げて説明すると、画像分類システム3は、検査対象物が回路基板である場合においては、回路基板に発生している欠陥、すなわち、分類用画像に写る欠陥が、ピンホールであるか、欠けであるかで該分類用画像を分類するように構成されていてもよい。
【0077】
上記実施形態において、画像分類システム3では、一つの基準識別器が構築されていたが、この構成に限定されない。例えば、画像分類システム3では、独立する(非連続の)2つ以上の基準識別器を構築することも可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…画像分類機能付製造装置、2…検査装置、3…画像分類システム、4…後工程処理装置、20…撮像手段、21…検査判定手段、30…画像取得手段、31…分類手段、32…学習用入力手段、33…出力手段、C…識別器、C1…閾値(正常閾値)、C2…閾値(欠陥閾値)、…基準識別器、P1,P2…特徴量、V…特徴量空間、V1,V2…識別済領域、V3…未識別領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8