特許第6902401号(P6902401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902401
(24)【登録日】2021年6月23日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】電線ツイスト装置
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/02 20060101AFI20210701BHJP
【FI】
   H01B13/02 Z
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-112396(P2017-112396)
(22)【出願日】2017年6月7日
(65)【公開番号】特開2018-206660(P2018-206660A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】藤田 征一郎
【審査官】 中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−220070(JP,A)
【文献】 特開2002−050248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ第1端部および第2端部を有する複数の電線を撚り合わせる電線ツイスト装置であって、
前記複数の電線の前記第1端部を把持する第1グリッパと、
前記複数の電線の前記第2端部を把持する第2グリッパと、
前記第1グリッパから前記第2グリッパに向かって延びる回転中心線周りに前記第1グリッパを回転させるアクチュエータと、
前記回転中心線に対して垂直な所定方向から見たときに前記回転中心線のうち前記第1グリッパおよび前記第2グリッパの近傍以外の部分と重なる動作位置と、前記動作位置よりも前記回転中心線から離れた休止位置とに位置変更可能に構成された振れ止め部材と、
前記振れ止め部材に連結された回転軸と、
を備えた電線ツイスト装置。
【請求項2】
それぞれ第1端部および第2端部を有する複数の電線を撚り合わせる電線ツイスト装置であって、
前記複数の電線の前記第1端部を把持する第1グリッパと、
前記複数の電線の前記第2端部を把持する第2グリッパと、
前記第1グリッパから前記第2グリッパに向かって延びる回転中心線周りに前記第1グリッパを回転させるアクチュエータと、
前記回転中心線に対して垂直な所定方向から見たときに前記回転中心線のうち前記第1グリッパおよび前記第2グリッパの近傍以外の部分と重なる動作位置と、前記動作位置よりも前記回転中心線から離れた休止位置とに位置変更可能に構成された振れ止め部材と、を備え、
前記振れ止め部材は、前記動作位置にあるときに前記回転中心線に沿って前記第2グリッパから前記第1グリッパの方を見た場合に、前記回転中心線の上方に位置する上方部と、前記回転中心線の側方に位置する側方部と、を有している電線ツイスト装置。
【請求項3】
それぞれ第1端部および第2端部を有する複数の電線を撚り合わせる電線ツイスト装置であって、
前記複数の電線の前記第1端部を把持する第1グリッパと、
前記複数の電線の前記第2端部を把持する第2グリッパと、
前記第1グリッパから前記第2グリッパに向かって延びる回転中心線周りに前記第1グリッパを回転させるアクチュエータと、
前記回転中心線に対して垂直な所定方向から見たときに前記回転中心線のうち前記第1グリッパおよび前記第2グリッパの近傍以外の部分と重なる動作位置と、前記動作位置よりも前記回転中心線から離れた休止位置とに位置変更可能に構成された振れ止め部材と、を備え、
前記振れ止め部材は、前記動作位置にあるときに前記回転中心線に沿って前記第2グリッパから前記第1グリッパの方を見た場合に、前記回転中心線の上方に位置する上方部と、前記回転中心線の左方に位置する左方部と、前記回転中心線の右方に位置する右方部と、を有している電線ツイスト装置。
【請求項4】
それぞれ第1端部および第2端部を有する複数の電線を撚り合わせる電線ツイスト装置であって、
前記複数の電線の前記第1端部を把持する第1グリッパと、
前記複数の電線の前記第2端部を把持する第2グリッパと、
前記第1グリッパから前記第2グリッパに向かって延びる回転中心線周りに前記第1グリッパを回転させるアクチュエータと、
前記回転中心線に対して垂直な所定方向から見たときに前記回転中心線のうち前記第1グリッパおよび前記第2グリッパの近傍以外の部分と重なる動作位置と、前記動作位置よりも前記回転中心線から離れた休止位置とに位置変更可能に構成された振れ止め部材と、
前記振れ止め部材を支持し、前記回転中心線と平行な方向の位置変更が可能な支持部材と、
備えた電線ツイスト装置。
【請求項5】
それぞれ第1端部および第2端部を有する複数の電線を撚り合わせる電線ツイスト装置であって、
前記複数の電線の前記第1端部を把持する第1グリッパと、
前記複数の電線の前記第2端部を把持する第2グリッパと、
前記第1グリッパから前記第2グリッパに向かって延びる回転中心線周りに前記第1グリッパを回転させるアクチュエータと、
前記回転中心線に対して垂直な所定方向から見たときに前記回転中心線のうち前記第1グリッパおよび前記第2グリッパの近傍以外の部分と重なる動作位置と、前記動作位置よりも前記回転中心線から離れた休止位置とに位置変更可能に構成された振れ止め部材と、
所定の搬送方向に移動して前記電線の前記第1端部を前記第1グリッパに受け渡す第1搬送ホルダ、または、所定の搬送方向に移動して前記電線の前記第2端部を前記第2グリッパに受け渡す第2搬送ホルダと、を備え、
前記振れ止め部材は、前記動作位置にあるときに前記回転中心線の前記搬送方向の逆側に位置し、前記休止位置にあるときに前記回転中心線の前記搬送方向の逆側に位置しない部分を有している電線ツイスト装置。
【請求項6】
それぞれ第1端部および第2端部を有する複数の電線を撚り合わせる電線ツイスト装置であって、
前記複数の電線の前記第1端部を把持する第1グリッパと、
前記複数の電線の前記第2端部を把持する第2グリッパと、
前記第1グリッパから前記第2グリッパに向かって延びる回転中心線周りに前記第1グリッパを回転させるアクチュエータと、
前記回転中心線に対して垂直な所定方向から見たときに前記回転中心線のうち前記第1グリッパおよび前記第2グリッパの近傍以外の部分と重なる動作位置と、前記動作位置よりも前記回転中心線から離れた休止位置とに位置変更可能に構成された振れ止め部材と、
前記第2グリッパから前記第1グリッパの方を見た場合に、前記第1グリッパの右方から左方に移動して前記電線の前記第1端部を前記第1グリッパに受け渡す第1搬送ホルダと、
前記第2グリッパから前記第1グリッパの方を見た場合に、前記第2グリッパの右方から左方に移動して前記電線の前記第2端部を前記第2グリッパに受け渡す第2搬送ホルダと、を備え、
前記振れ止め部材は、前記動作位置にあるときに前記回転中心線の右方に位置し、前記休止位置にあるときに前記回転中心線の上方または左方に位置する部分を有している電線ツイスト装置。
【請求項7】
それぞれ第1端部および第2端部を有する複数の電線を撚り合わせる電線ツイスト装置であって、
前記複数の電線の前記第1端部を把持する第1グリッパと、
前記複数の電線の前記第2端部を把持する第2グリッパと、
前記第1グリッパから前記第2グリッパに向かって延びる回転中心線周りに前記第1グリッパを回転させるアクチュエータと、
前記回転中心線に対して垂直な所定方向から見たときに前記回転中心線のうち前記第1グリッパおよび前記第2グリッパの近傍以外の部分と重なる動作位置と、前記動作位置よりも前記回転中心線から離れた休止位置とに位置変更可能に構成された振れ止め部材と、
前記回転中心線に対して前記所定方向から見たときに前記回転中心線のうち前記第1グリッパおよび前記第2グリッパの近傍以外の部分と重なる動作位置と、前記動作位置よりも前記回転中心線から離れた休止位置とに位置変更可能に構成された1つ以上の他の振れ止め部材と、を備え、
前記振れ止め部材および前記他の振れ止め部材は、前記回転中心線と平行な方向に並んでいる電線ツイスト装置。
【請求項8】
前記動作位置は、前記所定方向から見て前記振れ止め部材が前記回転中心線と直交する位置である、請求項1〜7のいずれか一つに記載の電線ツイスト装置。
【請求項9】
前記動作位置は、平面視において前記振れ止め部材が前記回転中心線に重なる位置であり、
前記休止位置は、平面視において前記振れ止め部材が前記回転中心線に重ならない位置である、請求項1〜8のいずれか一つに記載の電線ツイスト装置。
【請求項10】
前記振れ止め部材に連結され、前記振れ止め部材を前記動作位置および前記休止位置に移動させる振れ止めアクチュエータを備えている、請求項1〜のいずれか一つに記載の電線ツイスト装置。
【請求項11】
前記回転中心線と平行なレールと、
前記レールにスライド可能に係合し、前記第1グリッパまたは前記第2グリッパを支持するスライダと、
を備えた、請求項1〜10のいずれか一つに記載の電線ツイスト装置。
【請求項12】
前記振れ止め部材は棒状体である、請求項1〜11のいずれか一つに記載の電線ツイスト装置。
【請求項13】
前記振れ止め部材は、前記第1グリッパと前記第2グリッパとの間隔をLとしたときに、前記第1グリッパから(1/4)L〜(3/4)Lの位置に配置されている、請求項1〜12のいずれか一つに記載の電線ツイスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線を撚り合わせる電線ツイスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の電線を撚り合わせることによりツイスト電線を作製する電線ツイスト装置が知られている。例えば、複数の電線の一端部を把持する第1グリッパと、それら電線の他端部を把持する第2グリッパと、第1グリッパを回転させる第1モータと、第2グリッパを回転させる第2モータとを備えた電線ツイスト装置が知られている。この電線ツイスト装置では、第1グリッパおよび第2グリッパを互いに逆方向に回転させることにより、複数の電線を撚り合わせる。
【0003】
ところで、電線の一端部および他端部はそれぞれ第1グリッパおよび第2グリッパに把持されるが、一端部と他端部との間の部分は把持されない。第1グリッパおよび第2グリッパを回転させたときに、上記両グリッパが互いに離れる方向に引張力を加えても、電線の一端部と他端部との間の部分は遠心力を受ける。そのため、電線の当該部分は振動する。例えば、電線の当該部分は、第1グリッパおよび第2グリッパの回転中心線の周りを旋回する。以下、撚り合わせに伴って電線が振動することを、「電線が振れる」と言うこととする。電線が振れると、電線の一部が周囲の部材と接触するおそれがある。また、撚り合わせ終了後にこの電線の振れが止まる前に両グリッパが電線を放したときに、電線が下方に配置されたトレイに回収されず、トレイの外にこぼれてしまうおそれがある。
【0004】
そこで、電線ツイスト装置に電線の振れ止め手段を設けることが提案されている。例えば特許文献1には、電線の上方に配置されかつ平面視において電線の長手方向と垂直な方向に延びる棒からなる電線振れ止め手段が開示されている。この電線振れ止め手段によれば、電線の上方への振れが抑制される。特許文献1には、グリッパの近傍に配置された電線振れ止め手段と、電線の長手方向の中央部付近に配置された電線振れ止め手段とが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−220070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、撚り合わされる電線の長さは様々である。電線の長さに応じて第1グリッパと第2グリッパとの間隔を調整できるように、第1グリッパおよび第2グリッパの少なくとも一方を他方に対して近づく方および遠ざかる方に移動可能に構成する場合がある。しかし、特許文献1に開示された電線ツイスト装置では、例えば第1グリッパを第2グリッパに近づける際に、第1グリッパが電線の長手方向の中央付近に配置された電線振れ止め手段に当たってしまう場合がある。第1グリッパと第2グリッパとの間隔を調整するときに、電線振れ止め手段が邪魔になる場合がある。
【0007】
また、第1グリッパと第2グリッパとの間隔を調整できない電線ツイスト装置であっても、例えば、搬送ホルダにより電線を側方から第1グリッパおよび第2グリッパに受け渡す動作を行う場合がある。その場合に、電線振れ止め手段が邪魔になることがある。
【0008】
このように、電線振れ止め手段を備えた従来の電線ツイスト装置では、撚り合わせ以外の動作を行う際に電線振れ止め手段が邪魔になり、当該動作を円滑に行うことができない場合がある。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、撚り合わせ時に電線の振れを抑制することができ、かつ、撚り合わせ以外の動作を行う際に、電線の振れを抑制する手段が邪魔にならない電線ツイスト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電線ツイスト装置は、それぞれ第1端部および第2端部を有する複数の電線を撚り合わせる電線ツイスト装置であって、前記複数の電線の前記第1端部を把持する第1グリッパと、前記複数の電線の前記第2端部を把持する第2グリッパと、前記第1グリッパから前記第2グリッパに向かって延びる回転中心線周りに前記第1グリッパを回転させるアクチュエータと、前記回転中心線に対して垂直な所定方向から見たときに前記回転中心線のうち前記第1グリッパおよび前記第2グリッパの近傍以外の部分と重なる動作位置と、前記動作位置よりも前記回転中心線から離れた休止位置とに位置変更可能に構成された振れ止め部材と、を備えている。
【0011】
動作位置および休止位置は特に限定されないが、例えば、前記動作位置は、前記所定方向から見て前記振れ止め部材が前記回転中心線と直交する位置である。また、例えば、前記動作位置は、平面視において前記振れ止め部材が前記回転中心線に重なる位置であり、前記休止位置は、平面視において前記振れ止め部材が前記回転中心線に重ならない位置である。
【0012】
上記電線ツイスト装置によれば、振れ止め部材を動作位置に設定することにより、撚り合わせ時の電線の振れを抑制することができる。一方、振れ止め部材を休止位置に設定することにより、第1グリッパと第2グリッパとを互いに近づける動作等を行う際に、振れ止め部材が邪魔になることを避けることができる。よって、撚り合わせ時に電線の振れを抑制できると共に、撚り合わせ以外の動作を円滑に行うことができる。
【0013】
本発明の好ましい一態様によれば、前記電線ツイスト装置は、前記振れ止め部材に連結された回転軸を備えている。
【0014】
上記態様によれば、回転軸を回転させることにより、振れ止め部材の位置を休止位置から動作位置に、また、動作位置から休止位置に容易に変更することができる。
【0015】
本発明の好ましい一態様によれば、前記電線ツイスト装置は、前記振れ止め部材に連結され、前記振れ止め部材を前記動作位置および前記休止位置に移動させる振れ止めアクチュエータを備えている。
【0016】
上記態様によれば、振れ止めアクチュエータにより、振れ止め部材の位置を休止位置から動作位置に、また、動作位置から休止位置に変更することができる。よって、作業者が振れ止め部材の位置を手動で変更する必要がない。
【0017】
本発明の好ましい一態様によれば、前記電線ツイスト装置は、前記回転中心線と平行なレールと、前記レールにスライド可能に係合し、前記第1グリッパまたは前記第2グリッパを支持するスライダと、を備えている。
【0018】
上記態様によれば、レール上でスライダをスライドさせることにより、第1グリッパと第2グリッパとの間隔を調整することができる。長い電線を撚り合わせるときには上記間隔を大きくし、短い電線を撚り合わせるときには上記間隔を小さくすることにより、長さの異なる複数種類の電線を撚り合わせることができる。また、スライダをスライドさせる際に振れ止め部材を動作位置に設定することにより、上記間隔を調整する動作を円滑に行うことができる。
【0019】
本発明の好ましい一態様によれば、前記振れ止め部材は、前記動作位置にあるときに前記回転中心線に沿って前記第2グリッパから前記第1グリッパの方を見た場合に、前記回転中心線の上方に位置する上方部と、前記回転中心線の側方に位置する側方部と、を有している。
【0020】
上記態様によれば、上方部が電線の上方への振れを抑制し、側方部が電線の側方への振れを抑制する。少なくとも電線の2方向の振れを抑制することができる。よって、電線の振れをより好適に抑制することができる。ところで、振れ止め部材が複雑な形状を有している場合、撚り合わせ以外の動作が妨げられることがより懸念される。しかし、ここでは振れ止め部材の位置変更が可能であるので、振れ止め部材の形状が複雑であったとしても上記動作が妨げられることがない。よって、撚り合わせ以外の動作の円滑化を図りながら、電線の振れをより効果的に抑制することができる。
【0021】
本発明の好ましい一態様によれば、前記振れ止め部材は、前記動作位置にあるときに前記回転中心線に沿って前記第2グリッパから前記第1グリッパの方を見た場合に、前記回転中心線の上方に位置する上方部と、前記回転中心線の左方に位置する左方部と、前記回転中心線の右方に位置する右方部と、を有している。
【0022】
上記態様によれば、上方部が電線の上方への振れを抑制し、左方部が電線の左方への振れを抑制し、右方部が電線の右方への振れを抑制する。少なくとも電線の3方向の振れを抑制することができる。よって、撚り合わせ以外の動作の円滑化を図りながら、電線の振れをより効果的に抑制することができる。
【0023】
本発明の好ましい一態様によれば、前記振れ止め部材は棒状体である。
【0024】
上記態様によれば、振れ止め部材を簡易に構成することができる。
【0025】
本発明の好ましい一態様によれば、前記電線ツイスト装置は、前記振れ止め部材を支持し、前記回転中心線と平行な方向の位置変更が可能な支持部材を備えている。
【0026】
上記態様によれば、支持部材の位置を適宜に設定することにより、回転中心線と平行な方向の振れ止め部材の位置を適宜に設定することができる。例えば、電線の振れが最も大きくなりそうな位置に振れ止め部材を配置することができる。例えば、電線の中央付近に振れ止め部材を配置することができる。これにより、電線の振れをより効果的に抑制することができる。
【0027】
本発明の好ましい一態様によれば、前記振れ止め部材は、前記第1グリッパと前記第2グリッパとの間隔をLとしたときに、前記第1グリッパから(1/4)L〜(3/4)Lの位置に配置されている。
【0028】
上記態様によれば、振れ止め部材は電線の中央付近に配置されている。そのため、電線の振れを効果的に抑制することができる。
【0029】
本発明の好ましい一態様によれば、前記電線ツイスト装置は、所定の搬送方向に移動して前記電線の前記第1端部を前記第1グリッパに受け渡す第1搬送ホルダ、または、所定の搬送方向に移動して前記電線の前記第2端部を前記第2グリッパに受け渡す第2搬送ホルダを備えている。前記振れ止め部材は、前記動作位置にあるときに前記回転中心線の前記搬送方向の逆側に位置し、前記休止位置にあるときに前記回転中心線の前記搬送方向の逆側に位置しない部分を有している。
【0030】
上記態様によれば、振れ止め部材が休止位置に設定されているときに、第1搬送ホルダまたは第2搬送ホルダは搬送方向に移動し、第1グリッパまたは第2グリッパに電線を受け渡す。この際、振れ止め部材の上記部分は回転中心線の搬送方向の逆側に位置しないので、上記部分が電線の受け渡しを邪魔することはない。よって、電線の受け渡しを円滑に行うことができる。一方、振れ止め部材が動作位置に設定されたときに、上記部分は回転中心線の搬送方向の逆側に位置する。よって、上記部分により、電線の搬送方向の逆側への振れが抑制される。
【0031】
本発明の好ましい一態様によれば、前記電線ツイスト装置は、前記第2グリッパから前記第1グリッパの方を見た場合に、前記第1グリッパの右方から左方に移動して前記電線の前記第1端部を前記第1グリッパに受け渡す第1搬送ホルダと、前記第2グリッパから前記第1グリッパの方を見た場合に、前記第2グリッパの右方から左方に移動して前記電線の前記第2端部を前記第2グリッパに受け渡す第2搬送ホルダと、を備えている。前記振れ止め部材は、前記動作位置にあるときに前記回転中心線の右方に位置し、前記休止位置にあるときに前記回転中心線の上方または左方に位置する部分を有している。
【0032】
上記態様によれば、振れ止め部材が休止位置に設定されているときに、第1搬送ホルダおよび第2搬送ホルダは右方から左方に移動し、第1グリッパおよび第2グリッパに電線を受け渡す。この際、振れ止め部材の上記部分は回転中心線の上方または左方に位置するので、上記部分が電線の受け渡しを邪魔することはない。よって、電線の受け渡しを円滑に行うことができる。一方、振れ止め部材が動作位置に設定されたときに、上記部分は回転中心線の右方に配置される。上記部分により、電線の右方への振れが抑制される。
【0033】
本発明の好ましい一態様によれば、前記電線ツイスト装置は、前記回転中心線に対して前記所定方向から見たときに前記回転中心線のうち前記第1グリッパおよび前記第2グリッパの近傍以外の部分と重なる動作位置と、前記動作位置よりも前記回転中心線から離れた休止位置とに位置変更可能に構成された1つ以上の他の振れ止め部材を備え、前記振れ止め部材および前記他の振れ止め部材は、前記回転中心線と平行な方向に並んでいる。
【0034】
上記態様によれば、電線の振れが複数の箇所にて抑えられる。よって、電線の振れをより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、撚り合わせ時に電線の振れを抑制することができ、かつ、撚り合わせ以外の動作を行う際に、電線の振れを抑制する手段が邪魔にならない電線ツイスト装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施形態に係る電線ツイスト装置の側面図である。
図2】前記電線ツイスト装置の平面図である。
図3】2本の電線を撚り合わせてツイスト電線を作製する様子を示した概念図である。
図4】第1グリッパの側面図である。
図5】第1グリッパの平面図である。
図6】第1グリッパの正面図である。
図7図4のB−B線断面図である。
図8図4のC−C線断面図である。
図9図6のG−G線断面図である。
図10図6のF−F線断面図である。
図11】第1グリッパが電線を把持しているときの図8相当図である。
図12】振れ止め機構の正面図である。
図13】他の実施形態に係る電線ツイスト装置の平面図である。
図14】他の実施形態に係る振れ止め部材の正面図である。
図15】他の実施形態に係る振れ止め部材の正面図である。
図16】他の実施形態に係る振れ止め部材の正面図である。
図17】他の実施形態に係る電線ツイスト装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。図1は本実施形態に係る電線ツイスト装置1の側面図であり、図2は電線ツイスト装置1の平面図である。本実施形態に係る電線ツイスト装置1は、両端が切断された2本の電線C1,C2を撚り合わせる装置である。電線C1,C2の形態は特に限定されないが、ここでは、樹脂製の被覆(図示せず)と被覆の内部に配置された金属製の心線(図示せず)とを有する被覆電線である。電線C1,C2の両端には、金属製の端子Tが圧着されている。ただし、端子Tは必ずしも必要ではない。
【0038】
図2に示すように、電線C1,C2は、それぞれ第1端部E1および第2端部E2を有している。電線ツイスト装置1は、電線C1,C2の第1端部E1を把持する第1グリッパ3と、電線C1,C2の第2端部E2を把持する第2グリッパ5と、第1グリッパ3から第2グリッパ5に向かって延びる回転中心線X周りに第1グリッパ3を回転させる第1回転アクチュエータ7と、回転中心線X周りに第2グリッパ5を回転させる第2回転アクチュエータ9と、振れ止め機構50とを備えている。電線ツイスト装置1は、電線C1,C2の第1端部E1を把持した第1グリッパ3と第2端部E2を把持した第2グリッパ5とを互いに逆方向に回転させることにより、電線C1,C2を撚り合わせる(図3参照)。電線C1と電線C2とが撚り合わされることにより、ツイスト電線CTが作製される。
【0039】
図2に示すように、電線ツイスト装置1は、電線C1,C2の第1端部E1を第1グリッパ3に向けて搬送する第1搬送ホルダ4と、電線C1,C2の第2端部E2を第2グリッパ5に向けて搬送する第2搬送ホルダ6とを備えている。第1搬送ホルダ4および第2搬送ホルダ6の構成は特に限定されない。第1搬送ホルダ4および第2搬送ホルダ6は、例えば図6に示すように、電線C1,C2を把持するグリップアーム24と、グリップアーム24を支持するベース25とを備えていてもよい。図示は省略するがベース25は、平面視において回転中心線Xと垂直なレールに摺動可能に係合していてもよい。電線ツイスト装置1は、ベース25をレール上でスライドさせる電動モータなどのアクチュエータを備えていてもよい。以下の説明では、第1搬送ホルダ4および第2搬送ホルダ6によって電線C1,C2が搬送される方向のことを、「搬送方向」と呼ぶこととする。図において、矢印F1は搬送方向を表している。
【0040】
本実施形態では、第1回転アクチュエータ7および第2回転アクチュエータ9は電動モータによって構成されている。ただし、第1回転アクチュエータ7および第2回転アクチュエータ9の種類は何ら限定されない。図1に示すように、第1グリッパ3および第1回転アクチュエータ7は、スライダ11に支持されている。第2グリッパ5および第2回転アクチュエータ9は、スライダ12に支持されている。スライダ11およびスライダ12は、回転中心線Xと平行なレール13に摺動可能に係合している。なお、図2ではレール13は省略している。
【0041】
図4図5図6は、それぞれ第1グリッパ3の側面図、平面図、正面図である。図7図8は、それぞれ図4のB−B線断面図、C−C線断面図である。図9図10は、それぞれ図6のG−G線断面図、F−F線断面図である。図9に示すように第1グリッパ3は、第1把持部15と、第1把持部15を支持する第1アーム17とを有している。図10に示すように、第1グリッパ3は、第1把持部15に対向する第2把持部16と、第2把持部16を支持する第2アーム18とを有している。図7に示すように、第1把持部15は第2把持部16の上方に配置されている。第1アーム17は第2アーム18よりも上方に配置されている。図7に示すように、回転中心線Xに沿って第2グリッパ5から第1グリッパ3の方を見た場合に、第1アーム17は第1把持部15の左方に配置され、第2アーム18は第2把持部16の右方に配置されている。回転中心線Xに沿って見たときに、第1把持部15は第1アーム17よりも搬送ホルダ4の方に設けられ、第2把持部16は第2アーム18よりも搬送ホルダ4と反対の方に設けられている。
【0042】
図9に示すように、第1アーム17はリンク19を介して軸21に連結されている。図10に示すように、第2アーム18はリンク20を介して軸21に連結されている。軸21は、エアシリンダ等の把持アクチュエータ22に連結されている。軸21は、把持アクチュエータ22によって前後(図9および図10の左右)に駆動される。なお、図中の符号F、Rrは、それぞれ前方、後方を表している。軸21が前方に移動すると、第1アーム17は第1把持部15が下方に移動するように駆動され、第2アーム18は第2把持部16が上方に移動するように駆動される。すなわち、軸21が前方に移動すると、第1把持部15および第2把持部16は互いに接近する。これにより、第1把持部15および第2把持部16は電線C1,C2の第1端部E1を掴むことができる。逆に、軸21が後方に移動すると、第1アーム17は第1把持部15が上方に移動するように駆動され、第2アーム18は第2把持部16が下方に移動するように駆動される。すなわち、軸21が後方に移動すると、第1把持部15および第2把持部16は互いに離反する。これにより、第1把持部15および第2把持部16は電線C1,C2の第1端部E1を放すことができる。
【0043】
図11は、第1把持部15と第2把持部16とが接近したときの図8相当図である。図11に示すように電線ツイスト装置1は、第1グリッパ3が電線C1,C2の第1端部E1を把持しているときに第1端部E1の周囲を囲むカバー30を備えている。カバー30は、第1アーム17に固定された第1カバー部材31と、第2アーム18に固定された第2カバー部材32と、第1把持部15および第2把持部16よりも搬送方向側に配置された第3カバー部材33とを有している。なお、図1では第3カバー部材33の図示は省略している。
【0044】
第1カバー部材31は第2カバー部材32の上方に配置されている。また、図5に示すように、第1カバー部材31は第1把持部15の後方に配置されている。言い換えると、第1カバー部材31は、第1把持部15に対して第2グリッパ5と反対の方に配置されている。図4に示すように、第2カバー部材32は第2把持部16の後方に配置されている。第2カバー部材32は、第2把持部16に対して第2グリッパ5と反対の方に配置されている。
【0045】
第1カバー部材31および第1把持部15は第1アーム17に固定され、第2カバー部材32および第2把持部16は第2アーム18に固定されている。第1把持部15が下方に移動すると、第1カバー部材31も下方に移動する。第2把持部16が上方に移動すると、第2カバー部材32も上方に移動する。第1把持部15および第2把持部16が互いに接近すると、第1カバー部材31および第2カバー部材32も互いに接近する。これにより、図11に示すように、電線C1,C2の第1端部E1が第1把持部15および第2把持部16に把持されると、第1端部E1の周囲はカバー30によって囲まれる。一方、第1把持部15および第2把持部16が互いに離反すると、第1カバー部材31および第2カバー部材32は互いに離反する。これにより、電線C1,C2の第1端部E1の側方が開放される(図8参照)。
【0046】
図8に示すように回転中心線Xに沿って見たときに、第1カバー部材31は、第1把持部15に近づくほど第1把持部15が第2把持部16に接近する方向(ここでは下方)に向かう第1ガイド面31aと、第1把持部15に近づくほど第1把持部15が第2把持部16から離反する方向(ここでは上方)に向かう逆ガイド面31bと、第1ガイド面31aと逆ガイド面31bとの間の部分である接触部31cとを有している。接触部31cは、第1把持部15と第2把持部16とが接近したときに第2カバー部材32と接触し、第1把持部15と第2把持部16とが離反したときに第2カバー部材32から離れる。
【0047】
第2カバー部材32は、回転中心線Xに沿って見たときに、第2把持部16に近づくほど第2把持部16が第1把持部15に接近する方向(ここでは上方)に向かう第2ガイド面32aを有している。
【0048】
第3カバー部材33は、回転中心線Xに沿って見たときに、第1把持部15および第2把持部16よりも搬送ホルダ4と反対の方に設けられている。第3カバー部材33は、第1把持部15が第2把持部16に対して接近する方向(ここでは下方)および離反する方向(ここでは上方)に延びる面33aを有している。
【0049】
本実施形態では、第1カバー部材31および第2カバー部材32は、アルミニウム、ステンレスなどの金属製である。第3カバー部材33は、塩化ビニル樹脂などの合成樹脂製である。ただし、第1〜第3カバー部材31〜33の材料は特に限定される訳ではない。第1カバー部材31または第2カバー部材は、弾性材料により構成されていてもよい。第1カバー部材31および第2カバー部材の両方が弾性材料により構成されていてもよい。第1カバー部材31の接触部31cが第2カバー部材32に接触したときに、第1カバー部材31または第2カバー部材32が撓むことができるようになっていてもよい。撚り合わせ対象となる電線C1,C2の外径が多少変化しても、把持部15,16が電線C1,C2をつかんだ時に第1カバー部材31または第2カバー部材32が撓むことにより、第1カバー部材31と第2カバー部材32とは隙間が生じないように接触することができる。
【0050】
図5に示すように、第1把持部15の前方および後方には、第1把持部15および第2把持部16が電線C1,C2の第1端部E1を把持する際に、第1端部E1を第1把持部15の中央側に案内するガイド部材35が設けられている。ガイド部材35は、第1アーム17に固定されている。ガイド部材35は、図6において、左方に行くほど上方に向かうガイド面35aを有している。ガイド面35aは、回転中心線Xに沿って見たときに、搬送方向F1に沿って第1把持部15の中央に近づくほど、第1把持部15が第2把持部16から離反する方向に向かう面である。ガイド面35aは、第1把持部15が第2把持部16に接近する際に、電線C1,C2の第1端部E1を第1把持部15の中央の方に導く役割を果たす。
【0051】
また、ガイド部材35は、図6において、ガイド面35aの右方に設けられ、左方に行くほど下方に向かうガイド面35bを有している。ガイド面35bは、回転中心線Xに沿って見たときに、搬送方向F1に沿って第1把持部15に近づくほど、第1把持部15が第2把持部16に接近する方向に向かう面である。ガイド面35bは、電線C1,C2の第1端部E1が搬送方向Fに沿って搬送されてきたときに、第1端部E1を第1把持部15と第2把持部16との間の領域に導く役割を果たす。
【0052】
以上が第1グリッパ3の構成である。図1に示すように第2グリッパ5は、第1グリッパ3と第2グリッパ5との中間点を境として、第1グリッパ3と前後対称の構成を有している。そのため、ここでは第2グリッパ5の構成の説明は省略する。また、第2グリッパ5には、第1グリッパ3と同様、カバー30およびガイド部材35が設けられている。第2グリッパ5に設けられたカバー30およびガイド部材35は、上記中間点を境として、第1グリッパ3に設けられたカバー30およびガイド部材35と前後対称の構成を有している。そのため、ここではそれらの詳しい説明は省略する。
【0053】
次に、振れ止め機構50について説明する。振れ止め機構50は、電線C1,C2を撚り合わせる際に電線C1,C2が振れることを抑制するものである。振れ止め機構50は、例えば、電線C1,C2が回転中心線Xの周りを旋回することを抑制する。図12に示すように、振れ止め機構50は、フレーム40に固定されたベース41と、ベース41に回転可能に支持された回転軸42と、ベース41に固定され、回転軸42を駆動するアクチュエータ43と、ブラケット44を介して回転軸42に連結された振れ止め部材45とを有している。回転軸42は回転中心線と平行である。アクチュエータ43は回転軸42を回転できるものであれば足り、例えば、エアシリンダ、電動モータなどを好適に用いることができる。アクチュエータ43は、振れ止めアクチュエータの一例である。
【0054】
本実施形態では、振れ止め部材45は棒状体である。振れ止め部材45は、回転中心線Xに対して垂直な所定方向から見たときに(例えば、上方から見たとき、側方から見たとき、など)、回転中心線Xのうち第1グリッパ3および第2グリッパ5の近傍以外の部分と重なる動作位置と、動作位置よりも回転中心線Xから離れた休止位置とに位置変更が可能に構成されている。本実施形態では、動作位置は、平面視において振れ止め部材45が回転中心線Xに重なる位置であり、図12において実線で表される位置である。休止位置は、平面視において振れ止め部材45が回転中心線Xに重ならない位置であり、図12において仮想線で表される位置である。振れ止め部材45の位置変更は手動で行ってもよいが、本実施形態ではアクチュエータ43が回転軸42を回転させることにより、振れ止め部材45の位置が変更される。なお、本実施形態では、動作位置は、平面視において振れ止め部材45が回転中心線Xと直交する位置であるが(図2参照)、平面視において振れ止め部材45が回転中心線Xに対して斜交する位置であっても構わない。
【0055】
振れ止め部材45は、動作位置にあるときに回転中心線Xに沿って第2グリッパ5から第1グリッパ3の方を見た場合に、回転中心線Xの上方に位置する上方部45aと、回転中心線Xの側方に位置する側方部45bとを有している。振れ止め部材45が動作位置にあるときに、振れ止め部材45の先端45tは回転中心線Xよりも下方に位置する。
【0056】
ベース41には、振れ止め部材45が動作位置から休止位置に移動したときに振れ止め部材45を規制するストッパ49が設けられている。ただし、ストッパ49は必ずしも必要ではなく、省略してもよい。
【0057】
電線C1,C2を撚り合わせる際に、電線C1,C2の第1端部E1は第1グリッパ3に把持され、第2端部E2は第2グリッパ5に把持される。そのため、電線C1,C2の回転中心線Xからの偏倚量は第1端部E1および第2端部E2から離れるほど大きくなる。第1端部E1および第2端部E2から離れるほど、電線C1,C2の振れは大きくなる。よって、電線C1,C2の中央部分の振れを抑えると効果的である。図2に示すように、第1グリッパ3と第2グリッパ5との間隔をLとする。本実施形態では振れ止め部材45は、第1グリッパ3から(1/2)Lの位置に配置されている。すなわち、振れ止め部材45は、第1グリッパ3と第2グリッパ5との中間の位置に配置されている。ただし、振れ止め部材45の回転中心線Xに沿った方向の位置は特に限定されない。例えば、振れ止め部材45は、第1グリッパ3から(1/4)L〜(3/4)Lの位置に配置されていてもよい。
【0058】
フレーム40は、ベース41を取り付ける取付部を複数備えていてもよい。振れ止め部材45は複数設けられていてもよい。加工する電線C1,C2の長さに合わせて、動作させる振れ止め部材45を1つまたは2つ以上適宜選択できるようにしてもよい。
【0059】
振れ止め部材45は、振れ止め部材45の回転中心線Xに沿った方向の位置が変更可能に構成されていてもよい。例えば図13に示すように、電線ツイスト装置1は、回転中心線Xと平行な方向に延びるレール52と、ベース41を支持するスライダ53とを備え、スライダ53がレール52に摺動可能に係合していてもよい。この場合、スライダ53をレール52に沿って移動させることにより、振れ止め部材45の回転中心線Xに沿った方向の位置を変更することができる。この位置変更は手動で行ってもよいが、自動化されていてもよい。例えば、電線ツイスト装置1は、スライダ53を駆動するアクチュエータを備えていてもよい。また、動作可能なスライダ53は、レール52上に複数備えられていてもよい。
【0060】
以上が電線ツイスト装置1の構成である。次に、電線ツイスト装置1の動作について説明する。
【0061】
前述の通り、電線ツイスト装置1は、両端が切断された2本の電線C1,C2を撚り合わせることにより、ツイスト電線CTを作製する。まず、図2に示すように、第1搬送ホルダ4が電線C1,C2の第1端部E1を把持しつつ、第1グリッパ3に向かって移動する。また、第2搬送ホルダ6が電線C1,C2の第2端部E2を把持しつつ、第2グリッパ5に向かって移動する。この際、電線C1,C2と振れ止め部材45とが干渉しないよう、振れ止め部材45は休止位置に設定される。
【0062】
また、第1アーム17および第2アーム18は、第1把持部15および第2把持部16が互いに離反する位置に設定されている(図7参照)。図8に示すように、第1カバー部材31の接触部31cは第2カバー部材32から離れており、カバー30の側方は開放されている。ところで、電線C1,C2のうち第1搬送ホルダ4に保持された部分よりも先端側の部分、および、第2搬送ホルダ6に保持された部分よりも先端側の部分が曲がっている場合がある。そのため、電線C1と電線C2とが離れている場合がある。しかし、その場合、電線C1,C2はガイド面31a,32aに案内され、第1把持部15および第2把持部16に近づくにつれて互いに接近する。そのため、電線C1,C2は第1把持部15と第2把持部16との間の領域に導かれる。
【0063】
次に、第1アーム17および第2アーム18が駆動され、図11に示すように第1把持部15および第2把持部16が互いに接近し、電線C1,C2を把持する。また、第1カバー部材31および第2カバー部材32が互いに接近し、第1カバー部材31の接触部31cが第2カバー部材32に接触する。これにより、電線C1,C2の第1端部E1および第2端部E2の周囲がカバー30によって囲まれる。また、第1把持部15および第2把持部16が互いに接近するときに、電線C1,C2はガイド部材35のガイド面35a(図6参照)によって第1把持部15および第2把持部16の中央の方に導かれる。
【0064】
第1グリッパ3が電線C1,C2の第1端部E1を把持し、第2グリッパ5が電線C1,C2の第2端部E2を把持した後、第1搬送ホルダ4は第1端部E1を放し、第2搬送ホルダ6は第2端部E2を放す。そして、第1搬送ホルダ4、第2搬送ホルダ6は搬送方向F1と逆方向に移動し、それぞれ第1グリッパ3、第2グリッパ5から離れる。
【0065】
第1搬送ホルダ4、第2搬送ホルダ6がそれぞれ第1グリッパ3、第2グリッパ5に電線C1,C2を搬送した後、振れ止め機構50のアクチュエータ43が駆動し、振れ止め部材45は休止位置から動作位置に移動する。
【0066】
次に、回転アクチュエータ7,9が駆動し、第1グリッパ3および第2グリッパ5が回転中心線X周りに互いに逆回転する。これにより、電線C1と電線C2とは撚り合わされる。この際、電線C1,C2の第1端部E1および第2端部E2の周囲はカバー30によって囲まれているので、第1端部E1および第2端部E2がカバー30の外部に飛び出ることはない。よって、第1端部E1および第2端部E2が回転中心線Xから大きくずれることはない。また、電線C1,C2の上方および側方に振れ止め部材45が配置されているので、電線C1,C2の上方および側方の振れが振れ止め部材45により規制される。
【0067】
第1グリッパ3および第2グリッパ5が予め定められた回転数だけ回転し、撚り戻しの反力を取り除くため所定回転数だけ逆転した後、第1グリッパ3および第2グリッパ5は、第1把持部15と第2把持部16とが側方に並び、カバー30の第3カバー部材33が上方に位置する姿勢にて停止する。これにより、電線C1,C2の撚り合わせが終了する。その後、第1アーム17および第2アーム18は、第1把持部15および第2把持部16が互いに離反するように駆動される。これにより、電線C1,C2の端部E1,E2は第1把持部15および第2把持部16から離れる。また、第1カバー部材31は第2カバー部材32から離れ、カバー30の下方が開放される。そのため、ツイスト電線CTは自重により落下し、第1グリッパ3および第2グリッパ5よりも下方に配置された図示しないトレイに回収される。その後、第1グリッパ3および第2グリッパ5は90度回転し、第1把持部15と第2把持部16とが上下に並び、第3カバー33が側方に位置する姿勢(図6参照)に戻る。
【0068】
その後は上述の動作が繰り返される。これにより、複数のツイスト電線CTが順次作製される。
【0069】
電線ツイスト装置1では、スライダ11およびスライダ12の少なくとも一方をレール13上でスライドさせることにより、第1グリッパ3と第2グリッパ5との間隔を調整することができる。長い電線C1,C2を撚り合わせるときには上記間隔を大きくし、短い電線C1,C2を撚り合わせるときには上記間隔を短くすることができる。電線ツイスト装置1は、長さの異なる複数組の電線C1,C2を撚り合わせることができる。
【0070】
ところで、例えば第1グリッパ3を第2グリッパ5に近づける場合、振れ止め部材45が第1グリッパ3の移動の邪魔になるおそれがある。しかし、本実施形態に係る電線ツイスト装置1によれば、振れ止め部材45の位置は動作位置と休止位置とに変更可能である。振れ止め部材45を休止位置に設定することにより、第1グリッパ3と振れ止め部材45とが干渉してしまうことを防止することができる。したがって、第1グリッパ3と第2グリッパ5との間隔を調整する動作を円滑に行うことができる。
【0071】
以上のように、本実施形態に係る電線ツイスト装置1によれば、動作位置と休止位置とに位置変更可能に構成された振れ止め部材45を備えている。電線C1,C2を撚り合わせる際に、振れ止め部材45を動作位置に設定することにより、電線C1,C2の振れを抑制することができる。一方、振れ止め部材45を休止位置に設定することにより、第1グリッパ3と第2グリッパ5とを互いに近づける際に、振れ止め部材45が邪魔になることを防止することができる。よって、本実施形態に係る電線ツイスト装置1によれば、撚り合わせ時に電線C1,C2の振れを抑制できると共に、撚り合わせ以外の動作を円滑に行うことができる。
【0072】
図12に示すように振れ止め機構50は、振れ止め部材45に連結された回転軸42を備えている。回転軸42を回転させることにより、振れ止め部材45の位置を休止位置から動作位置に容易に変更することができ、また、動作位置から休止位置に容易に変更することができる。
【0073】
また、回転軸42はアクチュエータ43によって駆動される。本実施形態によれば、アクチュエータ43により、振れ止め部材45の位置を休止位置から動作位置に、また、動作位置から休止位置に変更することができる。よって、作業者が振れ止め部材45の位置を手動で変更する必要がない。
【0074】
図1に示すように電線ツイスト装置1は、レール13と係合し、それぞれ第1グリッパ3、第2グリッパ5を支持するスライダ11、12を備えている。スライダ11,12をレール13上でスライドさせることにより、第1グリッパ3と第2グリッパ5との間隔を調整することができる。よって、電線ツイスト装置1によれば、長さの異なる複数種類の電線C1,C2を撚り合わせることができる。
【0075】
本実施形態では振れ止め部材45は、図12に示すように、動作位置にあるときに第2グリッパ5から第1グリッパ3の方を見た場合に、回転中心線Xの上方に位置する上方部45aと、回転中心線Xの側方に位置する側方部45bとを有している。例えば、振れ止め部材45が回転中心線Xの上方にて側方に延びる直線棒により構成されている場合、電線C1,C2の上方の振れは抑制できるが、側方への振れを抑制することができない。しかし、本実施形態によれば、上方部45aにより電線C1,C2の上方への振れを抑えることができ、かつ、側方部45bにより電線C1,C2の側方への振れを抑えることができる。このように本実施形態によれば、電線C1,C2の2方向の振れを抑えることができる。よって、電線C1,C2の振れをより好適に抑制することができる。
【0076】
ところで、振れ止め部材45が複雑な形状を有している場合、撚り合わせ以外の動作(例えば、電線C1,C2を回転中心線Xに向けて搬送する動作、第1グリッパ3および第2グリッパ5を互いに近づける動作)が振れ止め部材45によって妨げられることがより懸念される。しかし、本実施形態によれば、振れ止め部材45は上方部45aだけでなく側方部45bも有しているが、位置変更が可能であるので、撚り合わせ以外の動作が妨げられることがない。よって、撚り合わせ以外の動作の円滑化を図りながら、電線C1,C2の振れをより効果的に抑制することができる。
【0077】
なお、前述の振れ止め部材45の形状は一例に過ぎない。振れ止め部材45は、必ずしも側方部45bを有していなくてもよい。また、例えば図14に示すように、振れ止め部材45は、動作位置にあるときに回転中心線Xに沿って第2グリッパ5から第1グリッパ3の方を見た場合に、回転中心線Xの上方に位置する上方部45aと、回転中心線Xの左方に位置する左方部45b1と、回転中心線Xの右方に位置する45b2とを有していてもよい。これにより、電線C1,C2の上方、左方、および右方の振れを抑制することができる。すなわち、電線C1,C2の3方向の振れを抑制することができる。
【0078】
振れ止め部材45は、回転中心線Xに沿って見たときに、屈曲した形状(図12図14参照)を有していてもよく、図15に示すように湾曲した形状を有していてもよい。振れ止め部材45は、屈曲部および湾曲部の両方を有していてもよい。
【0079】
図16に示すように、振れ止め機構50は、上下一対の振れ止め部材45を備えていてもよい。例えば、前述の振れ止め部材45と、当該振れ止め部材45と上下反転した構成を有する他の振れ止め部材45とを備えていてもよい。このような上下一対の振れ止め部材45を備えることにより、電線C1,C2の回転中心線Xの上方、左方、右方、および下方の振れを抑えることができ、電線C1,C2の振れをより一層効果的に抑制することができる。
【0080】
また、振れ止め部材45は棒状体でなく、板状体であってもよい。例えば、回転中心線Xに沿って見たときに前記振れ止め部材45(図12図14図15図16参照)と同様の形状の側面と、回転中心線Xに沿って延びる上面および下面とを有する板状体であってもよい。しかし、棒状体とすることにより、振れ止め部材46を簡易に構成することができる。また、振れ止め部材46を軽量化することも可能である。
【0081】
本実施形態によれば図2に示すように、振れ止め部材45は、第1グリッパ3から(1/4)L〜(3/4)Lの位置に配置されている。振れ止め部材45は、電線C1,C2の比較的中央付近に配置されている。そのため、電線C1,C2の振れを効果的に抑制することができる。また、振れ止め部材45を第1グリッパ3から(1/2)Lの位置に配置すれば、電線C1,C2の振れを特に効果的に抑制することができる。
【0082】
図13に示すように、振れ止め部材45を支持し、回転中心線Xと平行な方向の位置変更が可能な支持部材(回転軸42、ベース41、およびスライダ53)を備えることとすれば、振れ止め部材45についての回転中心線Xと平行な方向の位置を適宜に設定することができる。そのため、電線C1,C2の振れが最も大きくなりそうな位置に振れ止め部材45を配置することができる。よって、電線C1,C2の振れを効果的に抑制することができる。通常、電線C1,C2の振れが最も大きくなる部分は、電線C1,C2のうち第1グリッパ3と第2グリッパ5との中間の部分である。しかし、中間部分の位置は、電線C1,C2の長さによって異なる。振れ止め部材45の回転中心線Xと平行な方向の位置変更が可能であれば、撚り合わせるべき電線C1,C2の長さが変わっても、振れ止め部材45を常に中間部分に配置することが可能となる。よって、電線C1,C2の振れを常に効果的に抑制することができる。
【0083】
電線ツイスト装置1によれば、図6に示すように回転中心線Xに沿って第2グリッパ5から第1グリッパ3の方を見た場合、振れ止め部材45が休止位置にあるとき(図12参照)に、第1搬送ホルダ4は右方から左方に移動して第1グリッパ3に電線C1,C2の第1端部E1を受け渡し、第2搬送ホルダ6は右方から左方に移動して第2グリッパ5に電線C1,C2の第2端部E2を受け渡す。図12に示すように、振れ止め部材45の側方部45bは、振れ止め部材45が動作位置にあるときには回転中心線Xの右方に位置し、電線C1,C2の右方の振れを抑制する。一方、側方部45bは、振れ止め部材45が休止位置にあるときには回転中心線Xの上方かつ左方に位置する。そのため、側方部45bは、搬送ホルダ4,6からグリッパ3,5への電線C1,C2の受け渡しを邪魔しない。よって、電線C1,C2の受け渡しを円滑に行うことができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は前述の実施形態に限られない。次に、他の実施形態について簡単に説明する。
【0085】
前記実施形態では、振れ止め機構50は、振れ止め部材45に連結された回転軸42を備えており、振れ止め部材45は回転軸42の軸心を中心として回転するものであった。しかし、振れ止め部材45は動作位置および休止位置に移動可能に構成されていればよく、移動の動作は回転に限定されない。例えば、振れ止め部材45は、動作位置と休止位置との間でスライドするものであってもよい。例えば、振れ止め機構50は、振れ止め部材45を支持するスライダと、スライダを案内するガイドレールまたはガイド溝が形成されたガイド部材とを備えていてもよい。振れ止め部材45は、回転およびスライドを行うことにより動作位置と休止位置とに移動するものであってもよい。
【0086】
前記実施形態では、振れ止め部材45を動作位置および休止位置に移動させる振れ止めアクチュエータは、回転軸42を回転させるアクチュエータ43であった。しかし、振れ止め部材45が動作位置と休止位置との間でスライドするものである場合、振れ止めアクチュエータは直進する駆動部を有するものであってもよい。振れ止めアクチュエータは、例えば、エアシリンダなどであってもよい。
【0087】
図17に示すように、電線ツイスト装置1は、回転中心線Xと平行な方向に並ぶ複数の振れ止め機構50を備えていてもよい。例えば、電線ツイスト装置1は、3つの振れ止め機構50を備えていてもよい。これにより、複数の箇所にて電線C1,C2の振れを抑えることができる。よって、電線C1,C2の振れをより効果的に抑制することができる。
【0088】
電線ツイスト装置1は、動作位置と休止位置とに位置変更可能な振れ止め部材45と、動作位置から位置変更不能な振れ止め部材(図示せず)とを備えていてもよい。電線ツイスト装置1は、回転中心線Xの軸線方向に並ぶ第1の振れ止め機構と第2の振れ止め機構とを備え、第1の振れ止め機構の振れ止め部材45は動作位置と休止位置とに位置変更可能に構成され、第2の振れ止め機構の振れ止め部材は動作位置から位置変更不能に構成されていてもよい。なお、この場合、搬送ホルダ4,6による電線C1,C2の搬送の邪魔にならないよう、第2の振れ止め機構の振れ止め部材は、回転中心線Xの側方に位置する側方部(例えば図12に示す側方部45b)を備えていない。
【0089】
第1回転アクチュエータ7および第2回転アクチュエータ9の一方を省略してもよい。第1グリッパ3および第2グリッパ5の一方が回転し、他方が回転しなくても、電線C1,C2を撚り合わせることができる。回転しない方のグリッパについて、カバー30を省略してもよい。
【0090】
第1把持部および第2把持部のうち、電線C1を把持する部分と電線C2を把持する部分とは一体であってもよく、別体であってもよい。第1グリッパ3および第2グリッパ5は、電線C1を把持するグリッパ部分と、電線C2を把持するグリッパ部分とを別々に備えていてもよい。電線C1を把持するグリッパ部分と電線C2を把持するグリッパ部分とは、互いに離間していてもよい。
【0091】
前記電線ツイスト装置は、2本の電線C1,C2を撚り合わせるように構成されている。しかし、本発明に係る電線ツイスト装置は、3本以上の電線を撚り合わせるものであってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 電線ツイスト装置
3 第1グリッパ
4 第1搬送ホルダ
5 第2グリッパ
6 第2搬送ホルダ
7 第1回転アクチュエータ
9 第2回転アクチュエータ
11,12 スライダ
13 レール
42 回転軸
45 振れ止め部材
45a 上方部
45b 側方部
45b1 左方部
45b2 右方部
C1,C2 電線
E1 第1端部
E2 第2端部
X 回転中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図12
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図16
図17