(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施例)
図1を参照して、給湯システム2について説明する。
図1に示すように、給湯システム2は、HP(ヒートポンプ)ユニット4と、タンクユニット6と、バーナユニット8を備えている。
【0019】
HPユニット4は、外気から吸熱して水を加熱する熱源である。HPユニット4は、圧縮機10と、凝縮器12と、膨張弁14と、蒸発器16を備えている。HPユニット4は、冷媒(例えばフロン系冷媒)を、圧縮機10、凝縮器12、膨張弁14、蒸発器16の順に循環させることで、外気から吸熱して水を加熱する。圧縮機10は、冷媒を加圧して高温高圧にする。凝縮器12は、水との熱交換により冷媒を冷却する。凝縮器12の水流路の両端部には、それぞれ、HP往き経路19とHP戻り経路21が接続されている。膨張弁14は、冷媒を減圧して低温低圧にする。蒸発器16は、外気との熱交換により冷媒を加熱する。HPユニット4はさらに、凝縮器12に水を循環させる循環ポンプ18と、凝縮器12に流れ込む水の温度を検出する往きサーミスタ20と、凝縮器12から流れ出る水(湯)の温度を検出する戻りサーミスタ22と、外気温度TOを検出するHP外気温度サーミスタ23と、HPユニット4の各構成要素の動作を制御するHPコントローラ24を備えている。HPユニット4は、加熱運転によって後述するタンク30内の水を加熱して再びタンク30内に貯湯する。以下では、圧縮機10、凝縮器12、膨張弁14、蒸発器16を総称して、「HP熱源」と呼ぶ。
【0020】
タンクユニット6は、タンク30と、混合弁32と、バイパス制御弁34と、を備えている。タンク30は、外側が断熱材で覆われており、内部に水を蓄える密閉型の容器である。本実施例のタンク30の容量は、例えば100リットルである。HPユニット4の循環ポンプ18が駆動すると、タンク30の底部の水が、タンク往き経路31およびHP往き経路19を介して、凝縮器12へ送られる。凝縮器12で加熱されて高温となった水(湯)は、HP戻り経路21およびタンク戻り経路33を介して、タンク30の頂部からタンク30内に戻される。HPユニット4によって加熱された水(湯)がタンク30に流れ込むと、タンク30の内部には、低温の水の層の上に高温の水(湯)の層が積み重なった温度成層が形成される。
【0021】
タンクユニット6は、複数のサーミスタ36a〜36dを備えている。サーミスタ36aは、タンク30内に設けられており、サーミスタ36b〜36dは、タンク30の側面に設けられている。サーミスタ36aがタンク30内の頂部の水の温度TW1を検出し、サーミスタ36bがタンク30の頂部から10リットルの位置の水の温度TW2を検出し、サーミスタ36cがタンク30の頂部から30リットルの位置の水の温度TW3を検出し、サーミスタ36dがタンク30の頂部から50リットルの位置の水の温度TW4を検出する。
【0022】
タンクユニット6には、給水経路40を介して水道水が供給される。給水経路40には、給水圧力を減圧する減圧弁42と、給水温度TW5を検出する入水サーミスタ44が取り付けられている。給水経路40は、タンク30の底部に連通するタンク給水経路46と、混合弁32に連通するタンクバイパス経路48に分岐している。タンク給水経路46とタンクバイパス経路48には、それぞれ逆止弁50、52が取り付けられている。また、タンクバイパス経路48には、混合弁32に流入する水道水の流量を検出する水量センサ54が取り付けられている。タンク30の頂部と混合弁32は、タンク出湯経路56を介して連通している。タンク出湯経路56には、逆止弁58と、混合弁32に流入するタンク30からの水の流量を検出する出湯量センサ60が取り付けられている。出湯量センサ60は、タンク30から出湯される湯量を検出する。
【0023】
混合弁32は、タンクバイパス経路48から流れ込む水道水と、タンク出湯経路56から流れ込むタンク30からの水を混合して、第1給湯経路62に送り出す。混合弁32は、ステッピングモータによって弁を駆動し、タンクバイパス経路48側の開度(水側の開度)と、タンク出湯経路56側の開度(湯側の開度)を調整する。第1給湯経路62には、混合弁32から送り出される水の温度を検出する混合サーミスタ64が取り付けられている。
【0024】
タンクユニット6からは、第2給湯経路66を介して、給湯箇所(シャワーS)への給湯が行われる。第2給湯経路66には、給湯箇所(シャワーS)へ供給される水の温度を検出する給湯出口サーミスタ68と、逆止弁70が取り付けられている。第1給湯経路62と第2給湯経路66の間は、給湯バイパス経路72によって連通している。給湯バイパス経路72には、バイパス制御弁34が取り付けられている。
【0025】
タンクユニット6はさらに、タンクコントローラ74を備えている。タンクコントローラ74は、タンクユニット6の各構成要素の動作を制御する。また、タンクコントローラ74は、メモリ75を備えている。メモリ75には各種の情報が記憶されている。メモリ75に記憶されている情報については後述する。
【0026】
バーナユニット8は、バーナ80と、熱交換器82と、バイパスサーボ84と、水量サーボ86と、湯はり弁88と、を備えている。バーナ80は、燃料ガスの燃焼によって熱交換器82を流れる水を加熱する補助熱源機である。バーナ80には、ガス供給管81を介して燃料ガスが供給される。熱交換器82には、バーナ往路90を介して、タンクユニット6の第1給湯経路62からの水が流れ込む。熱交換器82を通過した水は、バーナ復路92を介して、タンクユニット6の第2給湯経路66へ流れ出る。バーナ往路90には、バーナ往路90を流れる水の流量を調整する水量サーボ86と、バーナ往路90を流れる水の流量を検出する水量センサ91が取り付けられている。バーナ往路90とバーナ復路92の間は、バーナバイパス経路94を介して連通している。バーナ往路90とバーナバイパス経路94の接続部に、バイパスサーボ84が取り付けられている。バイパスサーボ84は、バーナ往路90からバーナバイパス経路94へ流れる水の流量を調整する。バーナ復路92には、熱交換器82から流れ出る水の温度を検出するバーナ給湯サーミスタ96が取り付けられている。バーナ復路92からは、湯はり経路98が分岐している。湯はり経路98には、湯はり弁88が取り付けられている。バーナユニット8からは、湯はり経路98を介して、給湯箇所である浴槽Bへの湯はりが行われる。
【0027】
バーナユニット8はさらに、バーナユニット8の各構成要素の動作を制御するバーナコントローラ100と、リモコン102を備えている。リモコン102は、バーナコントローラ100と通信可能である。また、リモコン102は、バーナコントローラ100を介して、タンクコントローラ74と通信可能である。リモコン102は、スイッチやボタンなどを介して、ユーザーからの各種の操作入力を受け入れる。各種の入力とは、例えば、後述する加熱運転の実行指示、給湯設定温度TH、現在時刻Tcの設定などである。また、リモコン102は、表示や音声によってユーザーに給湯システム2の設定や動作に関する各種の情報を通知する。
【0028】
HPコントローラ24とタンクコントローラ74は、互いに通信可能である。タンクコントローラ74とバーナコントローラ100は、互いに通信可能である。従って、HPコントローラ24と、タンクコントローラ74と、バーナコントローラ100が協調して制御を行うことで、給湯システム2は後述する加熱運転、給湯運転等の各種の動作を行うことができる。以下では、HPコントローラ24と、タンクコントローラ74と、バーナコントローラ100を総称して、単にコントローラとも呼ぶ。
【0029】
次いで、給湯システム2の動作について説明する。給湯システム2は、加熱運転と給湯運転を実行することができる。
【0030】
(加熱運転)
加熱運転では、給湯システム2は、HPユニット4を駆動して、タンク30内の水を加熱する。加熱運転が開始されると、HPコントローラ24は、圧縮機10を駆動して、圧縮機10、凝縮器12、膨張弁14、蒸発器16の順に冷媒を循環させるとともに、循環ポンプ18を駆動して、タンク30と凝縮器12の間で水を循環させる。これによって、タンク30の底部から吸い出された水は、凝縮器12において目標温度TT(例えば45℃)まで加熱されて、タンク30の頂部に戻される。所定の湯量が沸き上げられると、HPコントローラ24は加熱運転を終了する。
【0031】
(給湯運転)
給湯運転では、給湯設定温度TH(例えば40℃)の水が給湯箇所(シャワーS等)へ供給される。コントローラは、水量センサ54で検出される流量と、出湯量センサ60で検出される流量を合算した流量(給湯流量ともいう)が最低動作流量(例えば2.4L/分)以上になると、給湯が開始されたものと判断する。また、コントローラは、後述する湯張り開始時刻B1が到来する場合にも、浴槽Bの給湯栓を開いて、浴槽Bに給湯設定温度THの水を供給する給湯運転を開始する。浴槽Bに給湯設定温度THの水を供給する場合の給湯運転を「湯張り運転」と呼ぶ。
【0032】
コントローラは、サーミスタ36aで検出される温度TW1が給湯設定温度TH以上である場合に、混合サーミスタ64で検出される温度が給湯設定温度THとなるように、混合弁32の開度を調整する。これによって、給湯箇所(浴槽B又はシャワーS)に給湯設定温度THに温度調整された湯が供給される。以下では、温度TW1が給湯設定温度TH以上である場合に実行される給湯運転を、「第1の給湯運転」と呼ぶ。
【0033】
一方、コントローラは、サーミスタ36aで検出される温度TW1が給湯設定温度TH未満の場合、バーナ80の燃焼運転を作動させるとともに、混合サーミスタ64で検出される温度が、給湯設定温度THよりもバーナ80の最小加熱能力の分だけ低い温度となるように、混合弁32の開度を調整する。この場合、タンク30の上部から供給される高温の水(湯)と、給水経路40から供給される低温の水が、混合弁32において混合された後、バーナ80によって給湯設定温度THまで加熱されて、給湯箇所へ供給される。以下では、温度TW1が給湯設定温度TH未満の場合に実行される給湯運転を、「第2の給湯運転」と呼ぶ。また、以下では、温度TW1が給湯設定温度TH未満であるタンク30の状態を、「湯切れ状態」と呼ぶ。
【0034】
(メモリ75に記憶される情報)
続いて、メモリ75に記憶されている情報について説明する。メモリ75には、特定の世帯の7日分の給湯情報が記憶されている。給湯情報は、給湯が開始された時刻と給湯が終了した時刻を示す時刻情報と、給湯箇所に供給された湯の量を示す出湯量情報と、給湯時の外気温度TOを示す温度情報と、を含む。メモリ75には、曜日別に、時刻情報、出湯量情報、及び、温度情報が記憶される。コントローラは、1日分の時刻情報、出湯量情報、及び、温度情報を、特定の世帯の1日分の運転履歴として記憶する。本実施例では、メモリ75には、特定の世帯の過去7日分の運転履歴が記憶される。このため、コントローラは、24時間毎(例えば、時刻が2:00になる毎)に、8日前の運転履歴を消去して、前日の運転履歴を記憶する。
【0035】
コントローラは、24時間毎(例えば、時刻が2:00になる毎)に、メモリ75内に記憶されている7日前(即ち、当日と同じ曜日)の運転履歴を利用して、当日のHP駆動開始時刻を特定する。
図2、
図3を参照して、HP駆動開始時刻の特定方法について説明する。
図2は、特定の世帯の平日の運転履歴の一例である。また、
図3は、特定の世帯の休日の運転履歴の一例であり、特定の世帯の住人が外泊した場合である。HP駆動開始時刻は、コントローラに、加熱運転を開始させるための時刻情報である。
【0036】
7日前の運転履歴が
図2のような運転履歴である場合のHP駆動開始時刻の特定方法について説明する。コントローラは、7日前の時刻情報を利用して、給湯が開始された時刻のうち、最も早い時刻を、「給湯開始時刻S1」と特定する。例えば、コントローラは、6:00を給湯開始時刻S1として特定する(
図2参照)。なお、最初の給湯では、20L程度の湯が供給される。
【0037】
また、コントローラは、7日前の時刻情報を利用して、湯張り運転が開始された時刻を「湯張り開始時刻B1」と特定する。例えば、コントローラは、20:00を湯張り開始時刻B1として特定する(
図2参照)。なお、湯張り運転では、150L〜180L程度の湯が供給される。
【0038】
さらに、コントローラは、7日前の時刻情報を利用して、最後の給湯が終了した時刻を、「給湯終了時刻G1」と特定する。例えば、コントローラは、0:00を給湯終了時刻G1として特定する(
図2参照)。
【0039】
さらに、コントローラは、入水サーミスタ44が測定する給水温度TW5に基づいて、第1の所定時間α1、及び、第2の所定時間β1を特定する。
【0040】
次いで、コントローラは、給湯開始時刻S1から、特定された第1の所定時間α1だけ前の時刻である第1のHP駆動開始時刻S0を特定し、湯張り開始時刻B1から、特定された第2の所定時間β1だけ前の時刻である第2のHP駆動開始時刻B0を特定する。コントローラは、第1のHP駆動開始時刻S0が到来する場合に、加熱運転を開始し、当日の最初の給湯に必要な湯量を加熱する。また、コントローラは、第2のHP駆動開始時刻B0が到来する場合に、加熱運転を開始し、タンク30が目標温度TTまで加熱された湯で満たされるようにする。なお、以下では、タンク30が目標温度TTまで加熱された水で満たされるようにする加熱運転を、「満蓄加熱運転」と呼ぶ。
【0041】
続いて、7日前の運転履歴が
図3の場合のHP駆動開始時刻の特定方法について説明する。コントローラは、7日前の時刻情報を利用して、給湯が開始された時刻のうち、最も早い時刻を、「給湯開始時刻S1´」と特定する。そして、入水サーミスタ44が測定する給水温度TW5に基づいて、第1の所定時間α2を特定する。そして、給湯開始時刻S1´から、特定された第1の所定時間α1だけ前の時刻である第1のHP駆動開始時刻S0´を特定する。即ち、
図3の場合、コントローラは、湯張り開始時刻B1、給湯終了時刻G1、第2のHP駆動開始時刻B0などを特定しない。
【0042】
(HP駆動判定処理;
図4)
続いて、
図4を参照して、給湯システム2のコントローラによって実行されるHP駆動判定処理について説明する。HP駆動判定処理は、HP熱源の駆動、即ち、加熱運転を許可又は禁止するための処理である。
図4の処理は、給湯システム2の電源がONされる場合に開始される。なお、後述するS32を経て、
図4の処理が終了した場合、コントローラは、翌日の2:00が到来する場合に、
図4の処理を再開する。
【0043】
S10において、コントローラは、当日に利用される湯の予定出湯量Qpを特定する。コントローラは、メモリ75に記憶されている7日前(即ち、当日と同じ曜日)に利用された出湯量の合計を、予定出湯量Qpと特定する。
【0044】
S12において、コントローラは、当日の実際出湯量Qaを特定する。実際出湯量Qaは、現在までに、給湯箇所(浴槽B又はシャワーS)に供給された湯の合計の出湯量を示す。
【0045】
S14において、コントローラは、当日の残存出湯量Qrを算出する。コントローラは、予定出湯量Qpから実際出湯量Qaを減算することで、残存出湯量Qrを特定する。
【0046】
S16において、コントローラは、翌日に、満蓄加熱運転が実行されるのか否かを判断する。コントローラは、メモリ75に記憶されている6日前の出湯量情報に、100L以上の出湯量となる給湯が含まれている場合に、翌日に、満蓄加熱運転が実行されると判断する。満蓄加熱運転が実行されると判断する場合(S16でYES)に、処理はS18に進む。一方、満蓄加熱運転が実行されないと判断する場合(S16でNO)に、処理はS20に進む。なお、S16でYESと判断される場合とは、例えば、6日前の運転履歴が
図2のような運転履歴の場合であり、S16でNOと判断される場合とは、例えば、6日前の運転履歴が
図3のような運転履歴の場合である。
【0047】
S18において、コントローラは、上限沸き上げ量Quを特定する。上限沸き上げ量Quは、当日において、ヒートポンプ熱源を利用して加熱可能な湯の残量を示す。コントローラは、残存出湯量Qrから所定量dQを減算することで、上限沸き上げ量Quを特定する。所定量dQは、当日の最後の出湯において、第2の給湯運転が実行されるように設定される。
【0048】
また、S20において、コントローラは、上限沸き上げ量Quを特定する。コントローラは、残存出湯量Qrを上限沸き上げ量Quとして特定する。
【0049】
S30において、コントローラは、上限沸き上げ量Quが0[L]に到達したのか否かを判断する。コントローラは、上限沸き上げ量Quが0[L]に到達したと判断する場合に、S30でYESと判断し、処理はS32に進む。S32において、コントローラは、HP熱源の駆動を禁止し、
図4の処理を終了する。即ち、加熱運転の実行が禁止される。コントローラは、加熱運転を実行中の場合は、加熱運転を停止させる。コントローラは、HP熱源の駆動を禁止した後は、翌日の2:00になるまでは、HP熱源の駆動が禁止する。そして、コントローラは、翌日の2:00が到来すると、
図4の処理を開始する。
【0050】
一方、コントローラは、上限沸き上げ量Quが0[L]よりも大きい場合に、S30でNOと判断し、処理はS34に進む。S34において、コントローラは、HP熱源の駆動を許可し、処理はS12に戻る。
【0051】
続いて、当日の最後の出湯時におけるコントローラの動作(以下では「最終出湯動作」と呼ぶ)について説明する。最終出湯動作は、
図4のS16でYES、S16でNOと判断される場合で異なる。
【0052】
図4のS16でYESと判断される場合、残存出湯量Qrから所定量dQが減算された上限沸き上げ量Quが0[L]に到達すると、HP熱源の駆動が禁止される。この場合、当日の最後の出湯において、タンク30が湯切れ状態になる。従って、コントローラは、最後の出湯において、第2の給湯運転を実行して、給湯箇所に湯を供給する。
【0053】
一方、
図4のS16でNOと判断される場合、残存出湯量Qrと一致する上限沸き上げ量Quが0[L]に到達すると、HP熱源の駆動が禁止される。この場合、当日の最後の出湯において、タンク30は湯切れ状態にならない。従って、コントローラは、当日の最後の出湯において、第2の給湯運転を実行せずに、第1の給湯運転を実行し、給湯箇所に湯を供給する。
【0054】
上述のように、コントローラは、第2のHP駆動開始時刻B0が到来する場合に、満蓄加熱運転を実行する。満蓄加熱運転が実行される場合、前日の最後の出湯が完了した際に、タンク30の上部に貯留されている水(以下では、「前日の上部残留水」と呼ぶ)が、タンク30からHPユニット4に供給される。HP熱源を利用して水を加熱する場合のエネルギー効率(以下では、「HPエネルギー効率」と呼ぶ)は、HPユニット4に供給される水の温度が高いほど低くなる。従って、前日の上部残留水の温度が比較的に高いと、HPエネルギー効率が、バーナ80を利用して水を加熱する場合のエネルギー効率(以下では、「ガスエネルギー効率」と呼ぶ)よりも低い状態で、満蓄加熱運転が実行され得る。
【0055】
上記の構成によると、コントローラは、当日の最後の出湯において、第2の給湯運転が実行されるように、HP熱源の動作を制御する。このため、当日の最後の出湯が完了する際に、タンク30には目標温度TTまで加熱された水が貯留されていない状態になる。この場合、翌日の満蓄加熱運転において、HPユニット4には、比較的に温度が低い水が供給される。従って、HPエネルギー効率がガスエネルギー効率よりも高い状態で、翌日の満蓄加熱運転が実行される。この結果、当日及び翌日を含めた給湯システム2のエネルギー効率を向上させることができる。
【0056】
また、コントローラは、残存出湯量Qrから所定量dQを減算することで特定される上限沸き上げ量Quが0[L]に到達する場合(
図4のS18を経た後のS30でYES)に、HP熱源の駆動を禁止する。この場合、当日の最後の出湯において、タンク30が湯切れ状態となっており、第2の給湯運転が確実に実行される。従って、当日の最後の出湯が完了する際に、タンク30には目標温度TTまで加熱された水が貯留されていない状態になる。この場合、翌日に、満蓄加熱運転が実行される際にタンク30からHPユニット4に供給される水の温度は、比較的に低い。従って、HPエネルギー効率がガスエネルギー効率よりも高い状態で、翌日の満蓄加熱運転が実行される。
【0057】
また、コントローラは、曜日別の運転履歴を利用して、翌日に満蓄加熱運転が実行されないと判断する場合(
図4のS16でNO)に、当日の最後の出湯において、第2の給湯運転が実行されないように、HP熱源の動作を制御する。翌日に満蓄加熱運転が実行されない場合、当日の最後の出湯が完了した後に、目標温度TTまで加熱された水がタンク30内に貯留されていても、翌日の加熱運転で、HPエネルギー効率がガスエネルギー効率よりも低くなる状況が発生し難い。このため、当日の最後の出湯時において、第2の給湯運転が実行されないように、HP熱源の動作を制御することで、当日及び翌日を含めた給湯システム2のエネルギー効率を向上させることができる。
【0058】
(対応関係)
バーナ80、コントローラが、それぞれ、「ガス熱源」、「制御装置」の一例である。給湯箇所が、「温水利用箇所」の一例である。予定出湯量Qp、実際出湯量Qaが、それぞれ、「予定供給水量」、「合計加熱水量」の一例である。予定出湯量Qpから所定量dQを減算した水量が、「停止水量」の一例である。
【0059】
(第2実施例)
続いて、
図5を参照して、第2実施例の給湯システム2について説明する。第2実施例において、給湯システム2のコントローラは、第1実施例の
図4の処理に代えて、
図5の処理を実行する。
【0060】
S210において、コントローラは、当日の給湯終了予定時刻T
Lを特定する。コントローラは、メモリ75に記憶されている7日前(即ち、当日と同じ曜日)の給湯終了時刻G1を当日の給湯終了予定時刻T
Lとして特定する。
【0061】
S212において、コントローラは、現在時刻Tcをリモコン102から取得する。
【0062】
S214において、コントローラは、停止時刻Tsを特定する。停止時刻Tsは、停止時刻Ts以降にHP熱源の動作を禁止させるための時刻情報である。コントローラは、給湯終了予定時刻T
Lから所定時間dTを減算することで、停止時刻Tsを算出する。所定時間dTは、最後の出湯において、第2の給湯運転が実行されるように設定される。
【0063】
S220において、コントローラは、停止時刻Tsが到来したのか否かを判断する。コントローラは、現在時刻Tcが停止時刻Tsと一致する場合に、S220でYESと判断し、処理はS222に進む。S222は、
図4のS32と同様である。一方、コントローラは、現在時刻Tcが停止時刻Tsよりも前である場合に、S220でNOと判断し、処理はS224に進む。S224において、コントローラは、HP熱源の駆動を許可し、処理はS212に戻る。
【0064】
上述のように、コントローラは、給湯終了予定時刻T
Lよりも所定時間dT前の停止時刻Tsが到来すると(
図5のS220でYES)、HP熱源の駆動を禁止する(
図5のS222)。この場合、当日の最後の出湯において、タンク30が湯切れ状態となっており、第2の給湯運転が実行される。このため、当日の最後の出湯が完了する際に、タンク30には目標温度TTまで加熱された水が貯留されていない状態になる。この場合、翌日に、満蓄加熱運転が実行される際にタンク30からHPユニット4に供給される水の温度は、比較的に低い。従って、HPエネルギー効率がガスエネルギー効率よりも高い状態で、翌日の満蓄加熱運転が実行される。
【0065】
(対応関係)
給湯終了予定時刻T
Lが、「出湯終了予定時刻」の一例である。
【0066】
(第3実施例)
続いて、
図6を参照して、第3実施例の給湯システム2について説明する。第3実施例において、給湯システム2のコントローラは、第1実施例の
図4の処理に代えて、
図6の処理を実行する。第3実施例において、サーミスタ36aが、「温度センサ」の一例である。
【0067】
S310〜S314は、
図4のS10〜S14と同様である。
【0068】
S316において、コントローラは、残存出湯量Qrが判定開始水量Qd(例えば、50[L])以下か否かを判断する。判定開始水量Qdは、残存出湯量Qrが比較的に少ない場合に、S320以降の処理を実行させるための閾値である。コントローラは、残存出湯量Qrが判定開始水量Qdを超えている場合に、S316でNOと判断し、処理はS334に進む。一方、コントローラは、残存出湯量Qrが判定開始水量Qd以下である場合に、S316でYESと判断し、処理はS320に進む。
【0069】
S320において、コントローラは、サーミスタ36a〜36dで測定される温度TW1〜TW4を取得する。
【0070】
S322において、コントローラは、給水上限温度TWu(例えば、30℃)を特定する。給水上限温度TWuは、HPエネルギー効率がガスエネルギー効率よりも高くなる温度である。コントローラは、翌日に満蓄加熱運転を実行する際の外気温度TO、及び、目標温度TTに基づいて、給水上限温度TWuを特定する。なお、外気温度TOは、メモリ75に記憶されている6日前の満蓄加熱運転時の外気温度TOを利用する。
【0071】
S324において、コントローラは、最後の出湯が完了する際のタンク30の頂部の水の温度を規定するタンク上部温度Tfを特定する。コントローラは、給水上限温度TWu、及び、当日の最後の出湯が完了してから翌日の満蓄加熱運転の開始予定時刻までの放熱による温度低下に基づいて、タンク上部温度Tfを特定する。例えば、当日の最後の出湯が完了してから翌日の満蓄加熱運転までの間にタンク30内の温度が5℃下がることが想定される場合、給水上限温度TWuに5℃加算した温度がタンク上部温度Tfである。
【0072】
S326において、コントローラは、残存沸き上げ量Qsを特定する。残存沸き上げ量Qsは、最後の出湯が完了する際のタンク30の頂部の水の温度をタンク上部温度Tfにするために、当日において、ヒートポンプ熱源を利用して加熱可能な湯の残量を示す。まず、コントローラは、S320で取得した温度TW1〜TW4を利用して、タンク30内の水の温度分布を特定する。コントローラは、タンク30内の水の温度分布に基づいて、S324で特定したタンク上部温度Tfと一致する温度の貯留位置(以下では、「特定温度の貯留位置」と呼ぶ)を特定する。そして、コントローラは、残存出湯量Qrと特定温度の貯留位置を利用して、当日の最後の出湯が完了する際に、当該貯留位置に貯留されている水がタンク30の頂部に位置するように、残存沸き上げ量Qsを特定する。なお、変形例において、コントローラは、当日の最後の出湯が完了する際に、タンク上部温度Tfよりも低い温度の水が、タンク30の頂部に位置するように、残存沸き上げ量Qsを特定してもよい。
【0073】
S330において、コントローラは、残存沸き上げ量Qsが0[L]に到達したのか否かを判断する。コントローラは、残存沸き上げ量Qsが0[L]に到達したと判断する場合に、S330でYESと判断し、処理はS332に進む。S332は、
図4のS32と同様である。これにより、当日の最後の出湯が完了する際のサーミスタ36aで検出される温度TW1が、タンク上部温度Tfと一致し、翌日の満蓄加熱運転開始時の温度TW1が給水上限温度TWuと一致する。従って、HPエネルギー効率がガスエネルギー効率よりも高い状態で、翌日の満蓄加熱運転が実行される。
【0074】
一方、コントローラは、残存沸き上げ量Qsが0[L]よりも大きい場合に、S330でNOと判断し、処理はS334に進む。S334において、コントローラは、HP熱源の駆動を許可し、処理はS312に戻る。
【0075】
上述のように、コントローラは、当日の最後の給湯が完了する際のサーミスタ36aによって測定される温度TW1が、タンク上部温度Tfになるように、HP熱源の動作を制御する。従って、当日の最後の出湯が完了する際に、タンク30には目標温度TTまで加熱された水が貯留されていない状態になる。この場合、翌日に、満蓄加熱運転が実行される際にタンク30からHPユニット4に供給される水の温度は、比較的に低い。従って、HPエネルギー効率がガスエネルギー効率よりも高い状態で、翌日の満蓄加熱運転が実行される。
【0076】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0077】
(第1変形例)コントローラは、
図4及び
図5のHP駆動判定処理を同時的に実行してもよい。この場合、コントローラは、
図4のS30又は
図5のS220のうちのいずれかの処理でYESと判定される場合に、当日のHP熱源の駆動を禁止すればよい。
【0078】
(第2変形例)コントローラは、曜日別に運転履歴を記憶しなくてもよい。この場合、コントローラは、
図4のS16、S20の処理を省略すればよい。
【0079】
(第3変形例)メモリ75に記憶される給湯情報は、7日分ではなく、14日分、21日分など、7の倍数を基本とすればどのような日数分であってもよい。例えば、メモリ75に21日分の給湯情報が記憶される場合、コントローラは、当日と同じ曜日の3週間分の給湯情報の平均値を利用して、当日のHP駆動開始時刻、予定出湯量Qp、給湯終了予定時刻T
L等を特定してもよい。また、コントローラは、7日分の給湯情報を1個の単位としてメモリ75で処理するだけではなく、例えば、14日分の給湯情報を1個の単位として給湯情報をメモリ75で処理してもよい。この場合、コントローラは、14日毎に類似した給湯情報を取得した場合に、14日前の給湯情報を利用して、当日のHP駆動開始時刻、予定出湯量Qp、給湯終了予定時刻T
L等を特定すればよい。
【0080】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。