特許第6902445号(P6902445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902445
(24)【登録日】2021年6月23日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】封止装置
(51)【国際特許分類】
   B65D 51/22 20060101AFI20210701BHJP
   B65D 41/04 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   B65D51/22 110
   B65D41/04
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-187263(P2017-187263)
(22)【出願日】2017年9月27日
(65)【公開番号】特開2019-59530(P2019-59530A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100171848
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 裕美
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 孝光
(72)【発明者】
【氏名】磯部 武志
(72)【発明者】
【氏名】亀田 克巳
(72)【発明者】
【氏名】船島 諒
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−113122(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/126062(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/115857(WO,A1)
【文献】 実開平10−87(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0200491(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00−55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体とキャップとを備え、前記本体と前記キャップとの間に設けられた正ネジタイプの第1締結部によって、前記キャップの着脱を可能にするとともに、前記第1締結部よりも内側において前記本体と前記キャップとの間に設けられた正ネジタイプの第2締結部によって、開封に際して前記本体から中栓を分離して前記キャップに捕捉させる封止装置であって、
前記第1締結部を構成する外ネジは、前記第2締結部を構成する内ネジよりも条数が多く、当該外ネジのリードは、前記内ネジのリードよりも大きい、封止装置。
【請求項2】
開封前において前記本体に前記キャップを組付けた状態で、前記キャップを緩める方向に回転させた場合に、前記キャップが前記本体の外周部から離れる上方向に移動を開始するタイミングが、前記中栓が前記本体の外周部から離れる上方向に移動を開始するタイミングよりも早くなるように設定された、請求項1に記載の封止装置。
【請求項3】
前記第2締結部を構成するキャップ内ネジと中栓内ネジとの少なくとも一方は、前記中栓を前記キャップ側の支持部に押し込む乗り越えを前記中栓を前記支持部から引き抜く乗り越えよりも容易にする偏ったネジ山形状を有する、請求項1及び2のいずれか一項に記載の封止装置。
【請求項4】
前記偏ったネジ山形状は、引き抜く方向に対応する反螺進方向に偏った断面を有する、請求項3に記載の封止装置。
【請求項5】
前記本体と前記キャップとを組み合わせた状態で、前記第2締結部は、最も奥までねじ込まれた状態となっている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の封止装置。
【請求項6】
前記第2締結部を構成するキャップ内ネジ及び中栓内ネジのうち前記キャップ内ネジは、前記キャップの天板から下に延びるキャップ円筒部の外側面に形成され、前記中栓内ネジは、前記中栓の封止体の外縁から上に延びる中栓円筒部の内側面に形成されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の封止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口部に装着される封止装置に関し、特に外ネジと内ネジとを有する封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器の口部に用いられる公知の封止装置として、本体と上蓋とを備え、本体において、ボトルの口部に嵌着される筒状部と、その内側にスコアーを介して連設されている分離部又は中栓とを設けたものが存在する(特許文献1参照)。
【0003】
この封止装置では、上蓋と筒状部との間に外ネジを設け、上蓋と分離部との間に内ネジを設け、例えば外ネジと内ネジとをともに順方向の関係とするとともに外ネジのピッチと内ネジのピッチとの間に差を設けることにより、開封に際して上蓋を回転させることで筒状部から分離部を切り離せるようにしている。
【0004】
しかしながら、上記封止装置のように外ネジと内ネジとにピッチの相違を設けて分離部を切り離す場合、開封時に内ネジが緩んで分離部又は中栓が脱落する可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/126062号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、内ネジの緩みを低減して分離部又は中栓の脱落を抑制した封止装置を提供することを目的とする。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る封止装置は、本体とキャップとを備え、本体とキャップとの間に設けられた正ネジタイプの第1締結部によって、キャップの着脱を可能にするとともに、第1締結部よりも内側において本体とキャップとの間に設けられた正ネジタイプの第2締結部によって、開封に際して本体から中栓を分離してキャップに捕捉させる封止装置であって、第1締結部を構成する外ネジは、第2締結部を構成する内ネジよりも条数が多く、当該外ネジのリードは、内ネジのリードよりも大きい。
【0008】
上記封止装置によれば、第1締結部を構成する外ネジは、第2締結部を構成する内ネジよりも条数が多く、当該外ネジのリードは、内ネジのリードよりも大きいので、開封に際して、外ネジの緩み又は遊びを内ネジの緩み又は遊びよりもかなり小さくしつつ、キャップの上昇に伴って中栓を大きく引っ張り上げることができる。これにより、中栓のねじ戻しを小さくすることができ、中栓の脱落を抑制することができる。
【0009】
本発明の具体的な態様又は側面では、上記封止装置において、開封前において本体にキャップを組付けた状態で、キャップを緩める方向に回転させた場合に、キャップが本体の外周部から離れる上方向に移動を開始するタイミングが、中栓が本体の外周部から離れる上方向に移動を開始するタイミングよりも早くなる。この場合、キャップの上昇に伴って中栓を引っ張り上げる動作が早くなり、中栓の分離を早くしつつ中栓の緩みを抑えることができる。
【0010】
本発明の別の側面では、第2締結部を構成するキャップ内ネジと中栓内ネジとの少なくとも一方は、中栓をキャップ側の支持部に押し込む乗り越えを中栓を支持部から引き抜く乗り越えよりも容易にする偏ったネジ山形状を有する。この場合、キャップに本体を組付ける工程では、第1締結部を所定の位置まで締め込んだ状態にするとともに、第2締結部においてネジ山の強制的な乗り越えを生じさせることができる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、偏ったネジ山形状は、引き抜く方向に対応する反螺進方向に偏った断面を有する。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、本体とキャップとを組み合わせた状態で、第2締結部は、最も奥までねじ込まれた状態となっている。この場合、第1締結部を緩めるようにねじ戻しても、第2締結部のねじ戻しが少なくなり、中栓の脱落を抑制することができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、第2締結部を構成するキャップ内ネジ及び中栓内ネジのうちキャップ内ネジは、キャップの天板から下に延びるキャップ円筒部の外側面に形成され、中栓内ネジは、中栓の封止体の外縁から上に延びる中栓円筒部の内側面に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る第1実施形態の封止装置を説明するための断面図である。
図2】(A)は、第1締結部のネジ山を説明する拡大断面図であり、(B)は、第2締結部のネジ山を説明する拡大断面図である。
図3図1に示す封止装置の組立方法及び使用方法を説明する断面図である。
図4】(A)及び(B)は、図1に示す封止装置の組立方法及び使用方法を説明する断面図である。
図5】(A)及び(B)は、図1に示す封止装置の組立方法及び使用方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照して、本発明の一実施形態である封止装置について説明する。図示の封止装置100は、紙パック、パウチ容器等である容器2の開口部2aに取り付けられる本体10と、本体10を覆うようにして本体10に装着されるキャップ20とによって構成されている。
【0016】
本体10は、樹脂製の一体成形品であり、容器2の開口部2aの周縁部2bに沿って固定された外周部11と、開封時に外周部11から分離される中栓12とを備える。以下、開封とは、中栓12が外周部11から分離されることを意味し、開封後のキャップ20の開け閉めについては開栓又は閉栓と呼ぶことにする。
【0017】
本体10の外周部11は、中栓12の分離後に容器2の内容物のための注出口を形成する部分であり、本体10の軸心であるネジ軸AXに沿って容器2の外側又は上側に延びる円筒状の部材である本体外周壁31を有している。さらに、外周部11は、本体外周壁31の下端において半径方向外方に張り出す肉厚の本体台座32と、本体台座32の周面から半径方向外方に張り出す肉薄の溶着部33とを有している。溶着部33の上面は、容器2の周縁部2bの下面に対して超音波融着によって固定されている。本体台座32の周面には、周方向2〜8箇所に等間隔に係止部34が半径方向外方に張り出して形成されている。また、本体10の本体外周壁31には、外周面に、キャップ20に螺着するための正ネジである本体外ネジ51が形成されている。なお、ネジ軸AXとは、本体10及びキャップ20の中心を通る軸又はキャップ20の回転軸を意味する。
【0018】
本体10の中栓12は、底部に配置された円板状の封止体41と、この封止体41の外縁から上方に延びる円筒状の中栓円筒部42とを備えている。この封止体41の外縁と中栓円筒部42の下端部とが連結されている外周側境界部17は、環状の薄肉部15によって本体10の外周部11に連結されている。薄肉部15の下面には、環状でV溝状のスコアー16が形成されている。薄肉部15は、本体10から中栓12を分離する開封時に切断される。中栓円筒部42は、外側の本体外周壁31の内側に同芯で離間して配置されている。中栓円筒部42の内周面(内側面)には、本体外ネジ51と同様に正ネジである中栓内ネジ52が形成されている。
【0019】
キャップ20は、樹脂製の一体成形品であり、外側の部分として、円板状のキャップ天板21と、円筒状のキャップ外周壁22とを備える。キャップ外周壁22の周囲には、ローレットが形成されている。キャップ20は、キャップ外周壁22と同芯で内側に、最も内側に配置された内側支持部であるキャップ円筒部23と、キャップ円筒部23の外側に配置された外側サポート部24とを備える。また、キャップ外周壁22と外側サポート部24との間には、同様に同芯で円筒状であるがネジ軸AX方向に比較的短いインナーリング25が設けられ。このインナーリング25によって開封後の容器2の開口部2aのシールが図られている。キャップ円筒部23と、外側サポート部24と、インナーリング25とは、キャップ天板21によって連設されている。そして、キャップ外周壁22の内周側面には、本体10の本体外周壁31の外周側面に形成された本体外ネジ51に螺合するキャップ外ネジ53が形成され、キャップ円筒部23の外周面(外側面)には、本体10に設けた中栓12の中栓円筒部42の内周側面に形成された中栓内ネジ52に螺合するキャップ内ネジ54が形成されている。
【0020】
以上において、本体10の本体外周壁31の本体外ネジ51と、キャップ20のキャップ外周壁22のキャップ外ネジ53とは、キャップ20の本体10に対する着脱を可能にする第1締結部50aを構成している。また、本体10の中栓円筒部42の中栓内ネジ52と、キャップ20のキャップ円筒部23のキャップ内ネジ54とは、本体10のうち中栓12をキャップ20のキャップ円筒部23に固定するための第2締結部50bを構成している。つまり、キャップ20のキャップ円筒部23は、第2締結部50bによって中栓12を捕捉することにより当該中栓12を本体10又は外周部11から分離することを可能する支持部として機能している。第1締結部50aは、時計方向の回転で締まり反時計方向の回転で緩む正ネジタイプの螺合部であり、第2締結部50bも、時計方向の回転で締まり反時計方向の回転で緩む正ネジタイプの螺合部である。すなわち、キャップ20のキャップ外周壁22を上側から見て反時計方向に回転させることで第1締結部50aが緩むようにねじ戻されてキャップ20が上昇する場合、キャップ20のキャップ円筒部23を上側から見て反時計方向に回転させることになって第2締結部50bが緩むようにねじ戻されて中栓円筒部42の上昇を抑制する効果がある。
【0021】
第1締結部50a、すなわち本体10の本体外周壁31に形成される本体外ネジ51と、それに噛合するキャップ20のキャップ外周壁22に形成されるキャップ外ネジ53とは、本体10の本体外周壁31をキャップ20のキャップ外周壁22から引き抜く乗り越えに対する抵抗と、本体外周壁31をキャップ外周壁22に押し込む乗り越えに対する抵抗とを均衡させたネジ山形状を有する。
【0022】
一方、第2締結部50b、すなわち本体10の中栓12に形成される中栓内ネジ52と、それに噛合するキャップ20のキャップ円筒部23に形成されるキャップ内ネジ54とは、本体10の中栓12を支持部としてのキャップ円筒部23に押し込む乗り越えを中栓12をキャップ円筒部23から引き抜く乗り越えよりも容易にする偏ったネジ山形状を有する。このような、押し込みを容易にする偏ったネジ山形状をかえり形状とも呼ぶ。
【0023】
図2(A)を参照して、第1締結部50aを構成する外ネジ51,53のネジ山形状についてより詳細に説明する。
【0024】
第1締結部50aを構成する雄ネジである本体外ネジ51は、ネジ軸AXが通る図示のような断面において、ネジ軸AXに沿った外周部11のねじ込み方向又は螺進方向(上側)と、外周部11のねじ戻し方向又は反螺進方向(下側)とに関して、バランスをとった断面形状を有するネジ山となっている。より詳細には、本体外ネジ51は、基部の厚み(H1a)が頂部の厚み(H1b)よりも幅広に設定され、螺進側の係合面であるネジ山上面51tが、反螺進側の係合面であるネジ山下面51bと同様に傾斜(角度θ11≒φ11)するものとなっている。
【0025】
同様に、第1締結部50aを構成する雌ネジであるキャップ外ネジ53は、ネジ軸AXが通る図示のような断面において、ネジ軸AXに沿ったキャップ20のねじ込み方向又は螺進方向(下側)と、キャップ20のねじ戻し方向又は反螺進方向(上側)とに関して、バランスをとった断面形状を有するネジ山となっている。より詳細には、キャップ外ネジ53は、基部の厚み(H2a)が頂部の厚み(H2b)よりも幅広に設定され、螺進側の係合面であるネジ山下面53bが、反螺進側の係合面であるネジ山上面53tと同様に傾斜(角度θ12≒φ12)するものとなっている。
【0026】
第1締結部50aを構成する外ネジ51,53は、多条ネジであって、具体的には2条ネジであり、第1締結部50aのリードL1は、本体外ネジ51のピッチの2倍となっている。図1に示すように、本体外ネジ51は、第1条51fと第2条51sとからなり、これらの条51f,51sを交互に配置したものとなっている。同様に、キャップ外ネジ53は、第1条53fと第2条53sとからなり、これらの条53f,53sを交互に配置したものとなっている。
【0027】
図2(B)を参照して、第2締結部50bを構成する内ネジ52,54のネジ山形状についてより詳細に説明する。
【0028】
第2締結部50bを構成する雌ネジである中栓内ネジ52は、ネジ軸AXが通る図示のような断面において、その先端に向けて中栓12のネジ軸AXに沿った移動成分としてのねじ戻し方向又は反螺進方向(下側)に偏った断面形状を有するネジ山となっている。見方を変えれば、中栓内ネジ52は、引き抜く際に当接する第2面、すなわち中栓12を下方に変位させる際のキャップ内ネジ54との反螺進側の係合面であるネジ山下面52bが水平に近い角度(角度θ21)に形成され、基部の厚み(H3a)が頂部の厚み(H3b)よりも幅広に設定されている。つまり、中栓内ネジ52は、押し込む乗り越えに際して当接する第1面又は螺進側の係合面であるネジ山上面52tが、引き抜く際に当接する第2面又は反螺進側の係合面であるネジ山下面52bよりも、大きく傾斜(角度θ21<φ21)するものとなっている。
【0029】
同様に、第2締結部50bを構成する雄ネジであるキャップ内ネジ54は、ネジ軸AXが通る図示のような断面において、その先端に向けてキャップ20のネジ軸AXに沿った移動成分としてのねじ戻し方向又は反螺進方向(上側)に偏った断面形状を有するネジ山となっている。見方を変えれば、キャップ内ネジ54は、引き抜く際に当接する第2面、すなわちキャップ20を上方に変位させる際の中栓内ネジ52との反螺進側の係合面であるネジ山上面54tが水平に近い角度(角度θ22)に形成され、基部の厚み(H4a)が頂部の厚み(H4b)よりも幅広に設定されている。つまり、キャップ内ネジ54は、押し込む乗り越えに際して当接する第1面又は螺進側の係合面であるネジ山下面54bが、引き抜く際に当接する第2面又は反螺進側の係合面であるネジ山上面54tよりも、大きく傾斜(角度θ22<φ22)するものとなっている。
【0030】
第2締結部50bを構成する内ネジ52,54は、1条ネジであって、第2締結部50bのリードL2は、中栓内ネジ52のピッチと一致している。第2締結部50bのリードL2は、第1締結部50aのリードL1に比較して1/2程度となっており、キャップ20を反時計方向に回転させる開封時において、中栓12がキャップ20又はキャップ円筒部23に対して降下する量は、キャップ20が本体10に対して上昇する量の半分程度となる。これにより、キャップ20の上昇に伴って中栓12を比較的大きく引っ張り上げることができ、中栓12を本体10から分離することができる。
【0031】
さらに、キャップ20を反時計方向に回転させる開封前の状態において、本体外ネジ51のネジ山上面51tと、キャップ外ネジ53のネジ山下面53bとの上下方向の隙間G1(図2(A)参照)は、中栓内ネジ52のネジ山上面52tと、キャップ内ネジ54のネジ山下面54bとの上下方向の隙間G2(図2(B)参照)よりも十分小さくなっている。つまり、第1締結部50aの緩み又は遊びの方が第2締結部50bの緩み又は遊びよりも小さくなっており、キャップ20の反時計方向の回転によって第1締結部50aをねじ戻すように緩め始めても、第2締結部50bがねじ戻すように緩み始めて中栓12がキャップ円筒部23に対して相対的に降下するタイミングが若干遅れたものとなる。これにより、中栓12がキャップ円筒部23に対して緩むことを抑制でき、キャップ円筒部23による中栓12の保持の確実性を高めることができ、中栓12の脱落を抑制することができる。
【0032】
以下、図3等を参照して、封止装置100の組み立て方法の一例について説明する。まず、本体10とキャップ20とを準備する。次に、キャップ20に本体10を収納するようにキャップ20のキャップ外ネジ53に本体10の本体外ネジ51を係合させ、本体10を本体10側から見て時計方向に回転させ或いはキャップ20をキャップ20側から見て時計方向に回転させる。これによって、第1締結部50aは、ねじ込むように締め付けられ、本体外ネジ51とキャップ外ネジ53が螺合される。その際、第2締結部50bを構成する中栓内ネジ52とキャップ内ネジ54とについては、時計方向の回転でねじ込まれるが、第1締結部50aのリードL1と第2締結部50bのリードL2との差に起因してねじ込み量が少なくなる傾向が生じる。しかしながら、両内ネジ52,54は上述のように押し込みに際して変形し易い偏ったネジ山形状又はかえり形状に形成されているので、互いに変形しながら両内ネジ52,54のネジ山を乗り越えて互いに噛合される。この際、外側サポート部24の先端部24dは、薄肉部15の外側の上面に当接又は近接する(図4(A)参照)。
【0033】
このようにして本体10とキャップ20とが最も奥までねじ込まれて互いに係合した状態では、本体10とキャップ20との間隔が調整され、外側サポート部24とキャップ円筒部23との基部に形成される凹部Eに、中栓円筒部42の先端部42dが収容される。また、本体外周壁31の先端に形成されたリップ部31bがキャップ20のキャップ天板21の下面21tに当接した状態に位置される。
【0034】
上述のようにして組立てられた封止装置100(本体10及びキャップ20)は、紙パック等の容器2の開口部2aに裏側から挿入され、その開口部2aの内周面に本体10の本体台座32の外周面が嵌合され、超音波接着や接着剤による接着等によって容器2に接合される(図4(A)参照)。
【0035】
以下、上記実施形態の封止装置100の開封動作について、図4(A)等を参照しながら説明する。
【0036】
当初は、図4(A)に示すように、キャップ20が締結部50a,50bの回転動作前の基準位置又は初期位置(奥までねじ込んだ状態)にあり、中栓12と本体外周壁31とが結合状態にあって、容器2の開口部2a(図4(A))又は本体10の開口部11a(図5(A))が封止された状態にある。
【0037】
図4(A)の状態からキャップ20を緩める方向、即ち反時計回りに回転させると、キャップ外ネジ53が本体外ネジ51に当接し、第1締結部50aの作用によってキャップ20が上昇し始める。これに遅れて、キャップ20の回転に伴ってキャップ内ネジ54が中栓内ネジ52に当接して第2締結部50bが作用し始め、キャップ20又はキャップ円筒部23に対して中栓12が相対的に降下し始める。しかしながら、第2締結部50bよりも第1締結部50aのリードが大きく、キャップ20の上昇が大きく、中栓12も本体10に対して強制的に上昇する(図4(B))。キャップ20の上昇量がある程度以上大きくなると、本体10の薄肉部15が伸びて破断され、中栓12は本体外周壁31から離脱されて開口部11aが形成され、封止装置100が開封される(図5(A)参照)。この状態において、中栓12は、キャップ円筒部23に対して若干ねじ戻された状態となっているが、キャップ円筒部23にネジ付けられてキャップ20に保持される。
【0038】
さらに、キャップ20を緩める方向に回転させると、キャップ20は本体外周壁31から離れ、それによって容器2内の内容物を注ぐことができるようになる。その際、中栓12は、キャップ20に確保され離脱するおそれはない。つまり、一旦開封が行われた後は、本体10側に固定されていた中栓12がキャップ20側に固定されることになる。
【0039】
開封後について説明すると、キャップ20のキャップ外ネジ53を本体10の本体外ネジ51に螺合させ、キャップ20を時計方向に回転させると、本体外周壁31の上端に形成されているリップ部31bがキャップ20のキャップ天板21の下面21tに当接し、かつ、外側サポート部24の先端部24dが薄肉部15の外側面に密着又は近接する。
【0040】
本実施形態の封止装置100では、第1締結部50aを構成する外ネジ51,53は、第2締結部50bを構成する内ネジ52,54よりも条数が多く、当該外ネジ51,53のリードL1は、内ネジ52,54のリードL2よりも大きいので、開封に際して、外ネジ51,53の緩み又は遊びを内ネジの緩み又は遊びよりもかなり小さくしつつ、キャップ20の上昇に伴って中栓12を大きく引っ張り上げることができる。これにより、中栓12のねじ戻しを小さくすることができ、中栓12の脱落を抑制することができる。
【0041】
以上、本実施形態に係る封止装置について説明したが、本発明に係る封止装置は上記のものには限られない。例えば、上記実施形態において、第1締結部50aを構成している本体外ネジ51及びキャップ外ネジ53のピッチ、巻き数、ネジ山高さ等の仕様は、発明の効能を奏する限り、適宜用途に応じて変更することができる。また、第2締結部50bを構成しているキャップ内ネジ54及び中栓内ネジ52のピッチ、巻き数、ネジ山高さ等の仕様も、同様に変更することができる。
【0042】
上記実施形態において、第1締結部50aを1条ネジで構成し、第2締結部50bを2条ネジで構成しているが、第2締結部50bの条数が第1締結部50aの条数よりも多ければよく、例えば第1締結部50aを2条ネジ以上とし、第2締結部50bを3条ネジ以上とすることができる。
【0043】
また、上記実施形態において、キャップ20の外側サポート部24については、これを省略することもできる。
【0044】
また、上記実施形態において、本体10の中栓円筒部42とキャップ20のキャップ円筒部23とは、内外を入れ替えることもできる。この場合も、中栓円筒部42の雄ネジとキャップ円筒部23の雌ネジとは、第1締結部50aと同様に正ネジタイプの第2締結部50bを構成する。
【0045】
上記実施形態において、第1締結部50aを構成する本体外ネジ51及びキャップ外ネジ53の形状は、図1等に例示するものに限らず、様々な断面形状とできる。また、第1締結部50aを構成する外ネジ51,53は、連続的に螺旋状に形成されるものに限らず、分離した複数の部分からなるものとできる。
【0046】
上記実施形態において、第2締結部50bを構成する中栓内ネジ52及びキャップ内ネジ54の形状は、図1等に例示するような、押し込みを容易にする偏ったネジ山形状又はかえり形状を有するネジ山に限らず、様々な断面形状とできる。また、第2締結部50bを構成する内ネジ52,54は、連続的に螺旋状に形成されるものに限らず、分離した複数の部分からなるものとできる。さらに、内ネジ52,54の一方を偏ったかえり形状とし、他方を抜き差しに関する抵抗を均衡させた形状とすることもきる。
【0047】
上記実施形態において、本体10の溶着部33の上面を、容器2の周縁部2bの下面に対して固定したが、溶着部33の下面を、周縁部2bの上面に対して固定してもよい。この場合、本体10の本体台座32と溶着部33とを同じ厚みとし、係止部34を省略してもよい。
【符号の説明】
【0048】
2…容器、 2a…開口部、 2b…周縁部、 10…本体、 11…外周部、 11a…開口部、 12…中栓、 15…薄肉部、 16…スコアー、 17…外周側境界部、 20…キャップ、 21…キャップ天板、 22…キャップ外周壁、 23…キャップ円筒部、 24…外側サポート部、 24r…バリ収納部、 25…インナーリング、 31…本体外周壁、 32…本体台座、 33…溶着部、 34…係止部、 41…封止体、 42…中栓円筒部、 50a…第1締結部、 50b…第2締結部、 51…本体外ネジ、 52…中栓内ネジ、 52b…ネジ山上面、 52t…ネジ山上面、 53…キャップ外ネジ、 54…キャップ内ネジ、 54b…ネジ山下面、 54t…ネジ山上面、 100…封止装置、 AX…ネジ軸
図1
図2
図3
図4
図5