特許第6902458号(P6902458)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902458
(24)【登録日】2021年6月23日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】電子線滅菌装置の非常時対処方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 55/04 20060101AFI20210701BHJP
   B65B 55/08 20060101ALI20210701BHJP
   A61L 2/08 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   B65B55/04 Z
   B65B55/08 B
   B65B55/04 A
   A61L2/08 108
   B65B55/04 K
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-229746(P2017-229746)
(22)【出願日】2017年11月30日
(65)【公開番号】特開2019-99179(P2019-99179A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横林 孝康
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−249082(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/059990(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/059991(WO,A1)
【文献】 特開2013−133153(JP,A)
【文献】 特表2003−509296(JP,A)
【文献】 特開2016−137895(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0012032(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B53/00−55/24
A61L 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌対象物が外部から連続的に供給される上流経路と、この上流経路からの滅菌対象物を連続的に搬送しながら電子線の照射により滅菌する滅菌経路と、この滅菌経路からの滅菌対象物を連続的に外部に排出する下流経路とを備える電子線滅菌装置において、非常時が発生した際に対処する電子線滅菌装置の非常時対処方法であって、
前記非常時に、外部から前記上流経路への滅菌対象物の供給を停止するとともに、前記電子線の照射が停止されたか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程で前記電子線の照射が停止されたと判断された場合、前記電子線の照射を再開し、この再開により滅菌された滅菌対象物を前記下流経路から連続的に廃棄し、前記判断工程で前記電子線の照射が停止されていないと判断された場合、滅菌された滅菌対象物を前記下流経路から連続的に廃棄する、廃棄工程と、
を具備し、
前記廃棄工程において、前記滅菌経路での滅菌対象物の搬送が、非常時以外である通常時よりも低速であることを特徴とする電子線滅菌装置の非常時対処方法。
【請求項2】
滅菌対象物が外部から連続的に供給される上流経路と、この上流経路からの滅菌対象物を連続的に搬送しながら電子線の照射により滅菌する滅菌経路と、この滅菌経路からの滅菌対象物を連続的に外部に排出する下流経路とを備える電子線滅菌装置において、非常時が発生した際に対処する電子線滅菌装置の非常時対処方法であって、
前記非常時に、外部から前記上流経路への滅菌対象物の供給を停止するとともに、前記電子線の照射が停止されたか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程で前記電子線の照射が停止されたと判断された場合、前記電子線の照射を再開し、この再開により滅菌された滅菌対象物を前記下流経路から連続的に廃棄し、前記判断工程で前記電子線の照射が停止されていないと判断された場合、滅菌された滅菌対象物を前記下流経路から連続的に廃棄する、廃棄工程と、
を具備し、
前記廃棄工程において、前記判断工程で電子線の照射が停止されたと判断された場合、前記電子線の照射が停止されたことにより滅菌が不十分な滅菌対象物を、前記滅菌経路または上流経路まで逆方向に搬送してから、前記電子線の照射を再開することを特徴とする電子線滅菌装置の非常時対処方法。
【請求項3】
廃棄工程の前に、電子線の照射が停止されたことにより滅菌が不十分な滅菌対象物を特定する位置特定工程を具備することを特徴とする請求項に記載の電子線滅菌装置の非常時対処方法。
【請求項4】
滅菌対象物が、内面および外面を有する容器形状体であって、
滅菌経路が、前記容器形状体の外面を電子線の照射により滅菌する外面滅菌経路と、前記容器形状体の内面を電子線の照射により滅菌する内面滅菌経路とを有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の電子線滅菌装置の非常時対処方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線滅菌装置の非常時対処方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子線滅菌装置は、滅菌対象物を電子線の照射により滅菌する装置であり、その長所として、電子線を滅菌対象物に照射する時間が比較的短い。この長所を活かして、電子線滅菌装置は、通常、滅菌対象物を連続的に搬送しながら滅菌するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。一般に、電子線滅菌装置は、外部(上流側)の装置から滅菌対象物が連続的に供給される上流経路と、この上流経路からの滅菌対象物を連続的に搬送しながら電子線の照射により滅菌する滅菌経路と、この滅菌経路からの滅菌対象物を外部(下流側)の装置に連続的に排出する下流経路とを有する。この下流経路は、滅菌された滅菌対象物を搬送するので、無菌環境にされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4420237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1にも記載されているように、電子線滅菌装置にも、トラブルなどの非常時が発生し得る。このような非常時が発生した際の対処として、電子線滅菌装置の内部にある滅菌対象物を念のために全て廃棄することで、下流側の装置に滅菌が不十分な滅菌対象物を供給せずに済む。しかしながら、前記廃棄の過程で、滅菌が不十分な滅菌対象物により、電子線滅菌装置の無菌環境を破壊することがある。例えば、前記特許文献1に記載の電子線滅菌装置(電子線殺菌装置40)だと、非常時(電子線照射そのものの異常が発生した場合)には、当該特許文献1の図7および図8に示すように、電子線照射器(電子線照射機構43)から下流側の経路である下流経路に設けられた除去部49により、滅菌対象物(プラスチック空容器P)が廃棄される。これにより、前記特許文献1の段落[0073]に記載されているように、下流側の装置(後工程機構11)には滅菌が不十分な滅菌対象物(プラスチック空容器P)を供給せずに済む。しかしながら、無菌環境にされている電子線照射器(電子線照射機構43)からの下流経路のうち、除去部49までの経路を、滅菌が不十分な滅菌対象物(プラスチック空容器P)により汚染することになる。このため、実際には、滅菌対象物(プラスチック空容器P)を廃棄した後、汚染された経路を過酸化水素ガスなどにより滅菌する必要がある。したがって、従来の電子線滅菌装置では、非常時が発生すると、破壊された無菌環境を再び無菌環境するための作業(除染)が必要になるので、早期に運転の再開をすることができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、非常時が発生しても早期に運転を再開し得る電子線滅菌装置の非常時対処方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、第1の発明に係る電子線滅菌装置の非常時対処方法は、滅菌対象物が外部から連続的に供給される上流経路と、この上流経路からの滅菌対象物を連続的に搬送しながら電子線の照射により滅菌する滅菌経路と、この滅菌経路からの滅菌対象物を連続的に外部に排出する下流経路とを備える電子線滅菌装置において、非常時が発生した際に対処する電子線滅菌装置の非常時対処方法であって、
前記非常時に、外部から前記上流経路への滅菌対象物の供給を停止するとともに、前記電子線の照射が停止されたか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程で前記電子線の照射が停止されたと判断された場合、前記電子線の照射を再開し、この再開により滅菌された滅菌対象物を前記下流経路から連続的に廃棄し、前記判断工程で前記電子線の照射が停止されていないと判断された場合、滅菌された滅菌対象物を前記下流経路から連続的に廃棄する、廃棄工程と、
を具備し、
前記廃棄工程において、前記滅菌経路での滅菌対象物の搬送が、非常時以外である通常時よりも低速である方法である。
【0008】
前記課題を解決するため、第2の発明に係る電子線滅菌装置の非常時対処方法は、滅菌対象物が外部から連続的に供給される上流経路と、この上流経路からの滅菌対象物を連続的に搬送しながら電子線の照射により滅菌する滅菌経路と、この滅菌経路からの滅菌対象物を連続的に外部に排出する下流経路とを備える電子線滅菌装置において、非常時が発生した際に対処する電子線滅菌装置の非常時対処方法であって、
前記非常時に、外部から前記上流経路への滅菌対象物の供給を停止するとともに、前記電子線の照射が停止されたか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程で前記電子線の照射が停止されたと判断された場合、前記電子線の照射を再開し、この再開により滅菌された滅菌対象物を前記下流経路から連続的に廃棄し、前記判断工程で前記電子線の照射が停止されていないと判断された場合、滅菌された滅菌対象物を前記下流経路から連続的に廃棄する、廃棄工程と、
を具備し、
前記廃棄工程において、前記判断工程で電子線の照射が停止されたと判断された場合、前記電子線の照射が停止されたことにより滅菌が不十分な滅菌対象物を、前記滅菌経路または上流経路まで逆方向に搬送してから、前記電子線の照射を再開する方法である。
【0009】
加えて、第の発明に係る電子線滅菌装置の非常時対処方法は、第の発明に係る電子線滅菌装置の非常時対処方法において、廃棄工程の前に、電子線の照射が停止されたことにより滅菌が不十分な滅菌対象物を特定する位置特定工程を具備する方法である。
【0010】
また、第の発明に係る電子線滅菌装置の非常時対処方法は、第1乃至第のいずれかの発明に係る電子線滅菌装置の非常時対処方法において、滅菌対象物が、内面および外面を有する容器形状体であって、
滅菌経路が、前記容器形状体の外面を電子線の照射により滅菌する外面滅菌経路と、前記容器形状体の内面を電子線の照射により滅菌する内面滅菌経路とを有する方法である。
【発明の効果】
【0011】
前記電子線滅菌装置の非常時対処方法によると、非常時の際にも下流経路で搬送される滅菌対象物は滅菌されているので、下流経路の無菌環境が破壊されず、非常時が発生しても早期に運転を再開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態1および2に係る電子線滅菌装置の非常時対処方法における電子線滅菌装置の通常時を示す概略側面図である。
図2A】本発明の実施の形態1に係る電子線滅菌装置の非常時対処方法を説明するための概略側面図であり、非常時で電子線の照射が停止された場合を示す。
図2B】同電子線滅菌装置の非常時対処方法を説明するための概略側面図であり、図2Aの後に照射が再開されて滅菌対象物を搬送している状況を示す。
図2C】同電子線滅菌装置の非常時対処方法を説明するための概略側面図であり、図2Bの後の状況を示す。
図3A】同電子線滅菌装置の非常時対処方法を説明するための概略側面図であり、非常時で電子線の照射が停止されていない場合を示す。
図3B】同電子線滅菌装置の非常時対処方法を説明するための概略側面図であり、図3Aの後に滅菌対象物を搬送している状況を示す。
図3C】同電子線滅菌装置の非常時対処方法を説明するための概略側面図であり、図3Bの後の状況を示す。
図4】本発明の実施の形態1に係る電子線滅菌装置の非常時対処方法におけるフローチャートである。
図5A】本発明の実施の形態2に係る電子線滅菌装置の非常時対処方法を説明するための概略側面図であり、非常時で電子線の照射が停止された場合に滅菌対象物を逆搬送している状況を示す。
図5B】同電子線滅菌装置の非常時対処方法を説明するための概略側面図であり、図5Aの後に滅菌対象物を搬送している状況を示す。
図5C】同電子線滅菌装置の非常時対処方法を説明するための概略側面図であり、図5Bの後の状況を示す。
図6】本発明の実施の形態2に係る電子線滅菌装置の非常時対処方法におけるフローチャートである。
図7】本発明の実施例に係る電子線滅菌装置の非常時対処方法における電子線滅菌装置の通常時を示す概略平面図である。
図8】同電子線滅菌装置が備える内面滅菌部の概略斜視図である。
図9】本発明の実施例に係る電子線滅菌装置の非常時対処方法におけるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る電子線滅菌装置の非常時対処方法について、図面に基づき説明する。
【0014】
まず、前記電子線滅菌装置の概略を図1に基づき説明する。
【0015】
図1に示すように、この電子線滅菌装置100は、上流側の装置Uから連続的に供給される滅菌対象物O0〜O11を電子線Eの照射により滅菌して、下流側の装置Dに連続的に排出する装置である。前記電子線滅菌装置100は、前記滅菌対象物O0〜O11を搬送する搬送経路101〜103と、この搬送経路101〜103で搬送されている滅菌対象物O0〜O11に電子線Eを照射する電子線照射器120とを備える。
【0016】
前記搬送経路101〜103は、外部の装置である上流側の装置Uから滅菌対象物O0〜O11が連続的に供給される上流経路101と、この上流経路101からの滅菌対象物O0〜O11を連続的に搬送しながら電子線Eの照射により滅菌する滅菌経路102と、この滅菌経路102からの滅菌対象物O0〜O11を外部の装置である下流側の装置Dに連続的に排出する下流経路103とを有する。すなわち、前記電子線照射器120は、滅菌経路102の滅菌対象物O4〜O7に電子線Eを照射する位置に配置されている。
【0017】
前記搬送経路101〜103における滅菌対象物O1〜O10は、次の通りである。上流経路101の滅菌対象物O8〜O10は、電子線Eが照射される前の状態なので、滅菌されていない。滅菌経路102の滅菌対象物O4〜O7は、電子線Eが照射されながら搬送されているので、下流側ほど滅菌の度合いが進んでいる。下流経路103の滅菌対象物O1〜O3は、電子線Eが照射された後の状態なので、滅菌されている。したがって、下流経路103は、滅菌された滅菌対象物O0〜O11を搬送するので、無菌環境であることが要求される。
【0018】
[実施の形態1]
以下、本発明の実施の形態1に係る前記電子線滅菌装置100の非常時対処方法について図2A図2C図3A図3Cおよび図4に基づき説明する。
【0019】
図2Aに示すように、上流側の装置U、電子線滅菌装置100および/または下流側の装置Dで非常時が発生した際には、電子線滅菌装置100の内部にある滅菌対象物O1〜O10を全て廃棄する必要がある。これら廃棄する滅菌対象物O1〜O10を必要以上に増やさないためにも、上流側の装置Uから上流経路101に供給される滅菌対象物O11をストッパ110などにより遮断して、上流側の装置Uから上流経路101への滅菌対象物O11の供給を停止する。次に、この非常時に電子線照射器120からの電子線Eの照射が停止されたか否かで、電子線滅菌装置100におけるその後のステップが異なるので、電子線照射器120からの電子線Eの照射が停止されたか否かを判断する。図2Aが電子線照射器120からの電子線Eの照射が停止された場合を示し、図3Aが電子線照射器120からの電子線Eの照射が停止されていない場合を示す。
【0020】
まず、電子線照射器120からの電子線Eの照射が停止された場合について、図2A図2Cに基づき説明する。
【0021】
電子線Eの照射が停止された状態で滅菌対象物O1〜O10の搬送を継続すれば、滅菌対象物O5〜O10が滅菌されないまま下流経路103まで搬送されることで、下流経路103の無菌環境が破壊されることになる。このため、図2Bに示すように、電子線照射器120による電子線Eの照射を再開し、その後、滅菌対象物O1〜O10を搬送する。この搬送を具体的に説明すると、電子線Eの照射を再開する前に、滅菌対象物O1〜O10の搬送が停止されていたのであれば当該搬送を再開し、滅菌対象物O1〜O10の搬送が停止されていないのであれば当該搬送を継続する。この搬送により、通常時よりも電子線Eの照射が少ない滅菌対象物O4が下流経路103に搬送される。しかしながら、通常時の搬送が低速の場合や電子線Eの照射を停止してから再開するまでの時間が非常に短い場合など、このような滅菌対象物O4が下流経路103の無菌環境を破壊しない程度に滅菌されているのであれば、問題は生じない。図2Bおよび図2Cに示すように、滅菌されて下流経路103に搬送された滅菌対象物O1〜O10は、リジェクト機構190などにより、連続的に廃棄されていく。
【0022】
次に、電子線照射器120からの電子線Eの照射が停止されていない場合、つまり電子線Eの照射が継続されている場合について、図3A図3Cに基づき説明する。
【0023】
電子線Eの照射が停止されていない(継続されている)状態であれば、図3Aに示すように、滅菌対象物O1〜O10が滅菌経路102で滅菌されるので、下流経路103の無菌環境が破壊されない。このため、滅菌対象物O1〜O10を搬送する。この搬送を具体的に説明すると、滅菌対象物O1〜O10の搬送が停止されていたのであれば当該搬送を再開し、滅菌対象物O1〜O10の搬送が停止されていないのであれば当該搬送を継続する。図3Bおよび図3Cに示すように、滅菌されて下流経路103に搬送された滅菌対象物O1〜O10は、リジェクト機構190などにより、連続的に廃棄されていく。
【0024】
上述した電子線滅菌装置100の非常時対処方法を、図4に示すフローチャートに基づき説明すると、以下の通りである。
【0025】
この電子線滅菌装置100の非常時対処方法は、図4に示すように、判断工程1および廃棄工程4を具備する。前記判断工程1は、非常時に外部の装置である上流側の装置Uから上流経路101への滅菌対象物O11の供給を停止するとともに、前記電子線Eの照射が停止されたか否かを判断する。前記廃棄工程4は、前記判断工程1で前記電子線Eの照射が停止されたと判断された場合、前記電子線Eの照射を再開し、この再開も含めて滅菌された滅菌対象物O1〜O10を前記下流経路103から連続的に廃棄し、前記判断工程1で前記電子線Eの照射が停止されていないと判断された場合、滅菌された滅菌対象物O1〜O10を前記下流経路103から連続的に廃棄する。
【0026】
具体的に説明すると、前記判断工程1は、電子線滅菌装置100への滅菌対象物O11の供給を停止するステップ(STEP10)と、電子線Eの照射が停止されたか否かを判断するステップ(STEP20)とを有する。
【0027】
前記廃棄工程4は、電子線Eの照射が停止された場合に、電子線Eの照射を再開するステップ(STEP50)と、滅菌対象物O1〜O10を搬送するステップ(STEP60)とを有する。また、前記廃棄工程4は、電子線Eの照射が停止されていない場合に、つまり電子線Eの照射が継続されている場合に、滅菌対象物O1〜O10を搬送するステップ(STEP80)を有する。さらに、前記廃棄工程4は、滅菌対象物O1〜O10を搬送するステップ(STEP60,STEP80)に続くステップとして、滅菌された滅菌対象物O1〜O10を下流経路103から連続的に廃棄するステップ(STEP90)を有する。
【0028】
このように、本実施の形態1に係る電子線滅菌装置100の非常時対処方法によると、非常時の際にも下流経路103で搬送される滅菌対象物O1〜O10は滅菌されているので、下流経路103の無菌環境が破壊されず、非常時が発生しても早期に運転を再開することができる。
【0029】
ところで、本実施の形態1では、図4に示す廃棄工程4における滅菌対象物O1〜O10の搬送(STEP60,STEP80)の速度について説明しなかったが、通常時の搬送よりも低速であることが好ましい。これにより、滅菌対象物O4〜O10に電子線Eが十分に照射されることで、非常時の際にも下流経路103で搬送される滅菌対象物O4〜O10が十分に滅菌されているので、下流経路103の無菌環境が破壊されず、非常時が発生しても早期に運転を再開することができる。なお、廃棄工程4における滅菌対象物O1〜O10の搬送を通常時の搬送よりも低速にする場合、滅菌対象物O4〜O10への電子線Eの過照射による損傷を与えないために、電子線照射器120からの電子線Eの出力を制御してもよい。
【0030】
[実施の形態2]
以下、本発明の実施の形態2に係る電子線滅菌装置100の非常時対処方法について図5A図5Cおよび図6に基づき説明する。
【0031】
本実施の形態2に係る電子線滅菌装置100の非常時対処方法は、前記実施の形態1に係る電子線滅菌装置100の非常時対処方法のうち、図6に示すように、非常時の際に滅菌が不十分な滅菌対象物O4の位置を特定する位置特定工程3を具備するとともに、当該廃棄工程4が滅菌対象物O1〜O10を一時的に逆搬送するステップ(STEP40)を有するものである。以下、前記実施の形態1には無い、位置特定工程3、および、滅菌対象物O1〜O10を一時的に逆搬送するステップ(STEP40)に着目して説明するとともに、前記実施の形態1と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
【0032】
前記実施の形態1では、図2Aに示す電子線Eの照射が停止された後、図2Bに示すように、電子線Eの照射を再開してから、滅菌対象物O1〜O10の搬送を再開することにより、通常時よりも電子線Eの照射が少ない滅菌対象物O4が、下流側に搬送される。ここで、通常時の搬送が高速の場合など、このような滅菌対象物O4が下流経路103の無菌環境を破壊しない程度に滅菌されていない場合、つまり滅菌対象物O4の滅菌が不十分な場合がある。この場合、本実施の形態2では、図2Aに示す電子線Eの照射が停止された後、電子線Eの照射を再開する前に、滅菌が不十分な滅菌対象物O4の位置を特定し、図5Aに示すように、このような滅菌対象物O4が電子線Eを照射され得る位置(滅菌経路102または上流経路101)まで一時的に逆搬送する。当該逆搬送をしながら、または当該逆搬送を停止した後、図5Bに示すように、電子線照射器120による電子線Eの照射を再開し、その後、滅菌対象物O1〜O10を搬送する。図5Cに示すように、滅菌されて下流経路103に搬送された滅菌対象物O1〜O10は、リジェクト機構190などにより、連続的に廃棄されていく。
【0033】
ところで、電子線照射器120からの電子線Eの照射が停止されていない場合、つまり電子線Eの照射が継続されている場合は、前記実施の形態1と同一である。
【0034】
上述した電子線滅菌装置100の非常時対処方法を、図6に示すフローチャートに基づき説明すると、以下の通りである。
【0035】
この電子線滅菌装置100の非常時対処方法は、図6に示すように、判断工程1、位置特定工程3および廃棄工程4を具備する。前記判断工程1は、前記実施の形態1に係る判断工程1と同一である。前記位置特定工程3は、前記廃棄工程4の前に、電子線Eの照射が停止されたことにより滅菌が不十分な滅菌対象物O4の位置を特定する。前記廃棄工程4は、前記実施の形態1に係る廃棄工程4において、判断工程1で前記電子線Eの照射が停止されたと判断された場合、電子線Eの照射が停止されたことにより滅菌が不十分な滅菌対象物O4を、前記滅菌経路102または前記上流経路101まで逆方向に搬送してから、前記電子線Eの照射を再開する。そして、滅菌された滅菌対象物O1〜O10を正方向に搬送して前記下流経路103から連続的に廃棄する。
【0036】
具体的に説明すると、前記位置特定工程3は、滅菌が不十分な滅菌対象物O4の位置を特定するステップ(STEP30)を有する。
【0037】
前記廃棄工程4は、前記実施の形態1に係る廃棄工程4における電子線Eの照射を再開するステップ(STEP50)の前に、滅菌対象物O1〜O10を一時的に逆搬送するステップ(STEP40)を有する。
【0038】
このように、本実施の形態2に係る電子線滅菌装置100の非常時対処方法によると、通常時に滅菌対象物O0〜O11が高速で搬送される電子線滅菌装置100においても、非常時の際にも下流経路103で搬送される滅菌対象物O1〜O10は滅菌されているので、下流経路103の無菌環境が破壊されず、非常時が発生しても早期に運転を再開することができる。
【0039】
ところで、本実施の形態2では、電子線滅菌装置100の非常時対処方法が位置特定工程3を具備するものとして説明したが、位置特定工程3を具備しなくてもよい。位置特定工程3を具備しなくても、一時的に逆搬送する距離を長くすれば、非常時の際にも下流経路103で搬送される滅菌対象物O1〜O10は滅菌されていることになる。もちろん、位置特定工程3を具備することで、滅菌が十分な滅菌対象物O1〜O3を滅菌しないので、すなわち、逆搬送する距離が必要最低限となるので、非常時が発生してもより早期に運転を再開することができる。
【実施例】
【0040】
以下、前記実施の形態1および2をより具体的に示した実施例に係る電子線滅菌装置100の非常時対処方法について図面に基づき説明する。なお、本実施例での前記実施の形態1および2と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
【0041】
まず、前記電子線滅菌装置100を図7および図8に基づき説明する。
【0042】
この電子線滅菌装置100では、前記滅菌対象物O0〜O11を、内面および外面を有する容器形状体とするものである。ここで、内面および外面を有する容器形状体は、ペットボトルなどの容器だけでなく、プリフォーム、つまり、ブロー成形によりペットボトルに成形される前の原料体であって試験管形状(上端が開口した縦断面U字形状)のものも含む。以下では、説明を簡単にするために、内面および外面を有する容器形状体の一例として、容器について説明する。
【0043】
図7に示すように、この電子線滅菌装置100は、上流側の装置Uのシュートから連続的に供給される容器Oを外面滅菌室20および内面滅菌室50(詳しくは後述する)における電子線Eの照射により滅菌して、下流側の装置Dのスターホイールに連続的に排出する装置である。
【0044】
この電子線滅菌装置100は、概略的に5つの室を有する。これら5つの室は、搬送される容器Oの経路の上流側から順に、外部から容器Oが供給される供給室10と、容器Oの外面を電子線Eの照射により滅菌する外面滅菌室20と、前記容器Oの内面を電子線Eの照射により滅菌する内面滅菌室50と、容器Oに電子線Eを照射することで発生する放射線が外部に漏れないようにする遮蔽室60と、適切な容器Oを下流側の装置Dのスターホイールに連続的に排出するとともに不適切な容器Oを廃棄する選別室70とである。なお、前記5つの室は、それぞれの床、壁および天井がX線を遮蔽する材料により構成されている。
【0045】
前記供給室10は、上流側の装置Uのシュートから連続的に供給された容器Oを搬送し始める搬送開始用スターホイール11を備える。
【0046】
前記外面滅菌室20は、搬送開始用スターホイール11から容器Oを受け取ってその外面を電子線Eにより滅菌する外面滅菌部21を有する。この外面滅菌部21は、搬送開始用スターホイール11から受け取った容器Oを楕円経路に搬送する楕円経路搬送機23と、この楕円経路搬送機23で搬送されている容器Oの外面に電子線E(横断面が略矩形状)を照射する外面電子線照射器22(電子線照射器120の一例)とを有する。前記楕円経路搬送機23は、前記外面電子線照射器22の一端側近傍および他端側近傍に配置された2つの外面滅菌用スターホイール24と、これら2つの外面滅菌用スターホイール24に掛け渡されて容器Oを搬送する無端状搬送帯25とを有する。
【0047】
前記内面滅菌室50は、前記楕円経路搬送機23から容器Oを受け取って円経路に搬送する転向旋回テーブル51と、この転向旋回テーブル51から容器Oを受け取ってその内面を電子線Eにより滅菌する内面滅菌部54とを備える。この内面滅菌部54は、容器Oを円経路に搬送する内面滅菌用旋回テーブル55lと、この内面滅菌用旋回テーブル55lに所定の中心角(例えば18°つまり0.1πrad)ピッチで設けられて容器Oを昇降させ得る昇降装置(図示省略)とを有する。前記内面滅菌部54は、さらに、図8に示すように、これら昇降装置に保持された容器Oの直上方に当該昇降装置と同数だけ設けられて当該容器Oの内面に電子線E(横断面が略円形状)を照射する内面電子線照射器52(電子線照射器120の一例)と、これら内面電子線照射器52が縁部に配置される内面滅菌用同期テーブル55hとを有する。これら内面電子線照射器52は、それぞれ、下端部から電子線Eを下方に照射するノズル53が設けられている。前記内面滅菌用同期テーブル55hは、これら内面電子線照射器52を、いずれも、対応する前記昇降装置に保持された容器Oの直上方に位置するように、当該昇降装置と同じ旋回速度で旋回させる。前記昇降装置は、容器Oを上昇させることにより、容器Oの開口mにノズル53を挿入させ、この状態の容器Oを下降させることにより、容器Oの開口mからノズル53を抜くものである。容器Oの開口mからノズル53が抜かれた状態は、図7に示すように、他の旋回テーブル51,61で容器Oの受け取りおよび受け渡しができる状態である。
【0048】
前記遮蔽室60は、前記内面滅菌用旋回テーブル55lから容器Oを受け取って円経路に搬送する無菌旋回テーブル61と、内面滅菌室50から侵入した前記X線を遮蔽する遮蔽壁(図示省略)とを備える。
【0049】
前記選別室70は、前記無菌旋回テーブル61から容器Oを受け取って円経路に搬送しながら適切か不適切かに選別する選別旋回テーブル71と、この選別旋回テーブル71から適切な容器Oを受け取って円経路に搬送し外部に排出する排出旋回テーブル72とを有する。前記選別室70の床には、前記選別旋回テーブル71での円経路の一部における下方に、不適切な容器Oを廃棄するための廃棄口90が形成されている。前記選別旋回テーブル71は、この円経路で搬送されている容器Oが不適切と判断されると、前記廃棄口90に当該不適切な容器Oを落とすように構成されている。前記排出旋回テーブル72は、適切な容器Oを、外部の装置である下流側の装置D(例えばブロー成型のための装置)のスターホイールに排出するものでもある。
【0050】
ところで、上述した転向旋回テーブル51、内面滅菌用旋回テーブル55l、無菌旋回テーブル61、選別旋回テーブル71、および排出旋回テーブル72の縁部には、一定の中心角(例えば18°つまり0.1πrad)ピッチで容器Oを把持する把持具8が設けられる。これら把持具8は、上流側から容器Oを受け取り円経路で搬送する位置において、当該容器Oのネック部を把持し、下流側へ容器Oを受け渡す位置において、前記把持を解除するものである。これにより、上流側から下流側への容器Oの受け取りおよび受け渡しが、滑らかに行われる。なお、前記内面滅菌用旋回テーブル55lに設けられた昇降装置は、前記把持具8ごと容器Oを昇降させ得るものである。
【0051】
前記電子線滅菌装置100は、連続的に搬送される容器Oの個々の位置を特定する位置特定手段30を備える。この位置特定手段30は、供給室10に設けられて容器Oに向けられた検知器31と、単位時間あたりに搬送された容器Oの個数を計測する計測器32とを有する。前記検知器31は、例えば、カメラ、または、誘導型式、光学式(レーザ)若しくは静電容量式のセンサである。前記計測器32は、例えば、搬送開始用スターホイール11の軸に設けられたエンコーダのパルス数、または、旋回テーブルを駆動させるためのモータの回転数、に基づいて、単位時間あたりに搬送された容器Oの個数を計測するものである。
【0052】
前記電子線滅菌装置100において、上流側の装置Uのシュートから搬送開始用スターホイール11に容器Oが供給される位置から、排出旋回テーブル72で容器Oを下流側の装置Dに排出する位置までが、前記実施の形態1および2における搬送経路101〜103に相当する。ここで、(A)容器Oの滅菌として容器Oの全体に着目する場合、外面電子線照射器22により電子線Eが容器Oの外面に照射され始める位置から、内面電子線照射器52により電子線Eが容器Oの内面に照射され終える位置までが、前記実施の形態1および2における滅菌経路102に相当する。(B)容器Oの滅菌として容器Oの外面に着目する場合、外面電子線照射器22により電子線Eが容器Oの外面に照射され始める位置から、外面電子線照射器22によりにより電子線Eが容器Oの外面に照射され終える位置までが、前記実施の形態1および2における滅菌経路102に相当する。(C)容器Oの滅菌として容器Oの内面に着目する場合、内面電子線照射器52により電子線Eが容器Oの内面に照射され始める位置から、内面電子線照射器52によりにより電子線Eが容器Oの内面に照射され終える位置までが、前記実施の形態1および2における滅菌経路102に相当する。なお、上述した(B)および(C)の2つの経路が、それぞれ滅菌経路102に相当するとしてもよい。前記搬送経路101〜103のうち、前記滅菌経路102よりも上流側が前記実施の形態1および2における上流経路101に相当し、前記滅菌経路102よりも下流側が前記実施の形態1および2における下流経路103に相当する。このため、容器Oの滅菌として容器Oをどのように着目しても、前記選別室70は下流経路103の一部であるから、前記選別室70に形成された廃棄口90に容器Oを落として廃棄することは、当該容器Oを下流経路103から廃棄することに相当する。
【0053】
前記滅菌経路102は、図7に示す容器Oの外面を外面電子線照射器22からの電子線Eの照射により滅菌する経路である外面滅菌経路102oと、容器Oの内面を内面電子線照射器52からの電子線Eの照射により滅菌する経路である内面滅菌経路102iとを有する。このように、外面滅菌経路102oと内面滅菌経路102iとが別々であることにより、非常時に外面および内面のいずれの滅菌も不十分な容器Oが下流経路103に搬送されにくいので、非常時に下流経路103の無菌環境が破壊されにくくなる。
【0054】
上述した電子線滅菌装置100の非常時対処方法を、図9に示すフローチャートに基づき説明すると、以下の通りである。
【0055】
この電子線滅菌装置100の非常時対処方法は、図9に示すように、判断工程1および廃棄工程4と、その他のステップとを具備する。前記判断工程1で、電子線Eの照射が停止されたか否かで、電子線滅菌装置100におけるその後のステップが異なるので、以下では、電子線Eの照射が停止された場合のステップと、電子線Eの照射が停止されていない(継続されている)場合のステップとに分けて説明する。
【0056】
まず、電子線Eの照射が停止された場合のステップとして、電子線Eの照射が再開可か否かを判断するステップ(STEP31)がある。電子線Eの照射が再開可であれば、電子線Eの照射を再開するステップ(STEP51)、容器Oの搬送を継続するステップ(STEP61)、滅菌された容器Oを廃棄口90から連続的に廃棄するステップ(STEP90)、の順に実行される。一方で、電子線Eの照射が再開可でなければ、容器Oの搬送を停止するステップ(STEP32)、電子線Eの照射が再開できないトラブルを解消するための作業をするステップ(STEP33)、前記トラブルが解消したか否かを判断するステップ(STEP34)、の順に実行される。前記トラブルが解消したか否かを判断するステップ(STEP34)では、当該トラブルが解消したと判断されるまで、当該トラブルを解消するための作業が続けられる。前記トラブルが解消したか否かを判断するステップ(STEP34)で、当該トラブルが解消したと判断されると、電子線Eの照射を再開するステップ(STEP52)、容器Oの搬送を再開するステップ(STEP62)、滅菌された容器Oを廃棄口90から連続的に廃棄するステップ(STEP90)、の順に実行される。
【0057】
次に、電子線Eの照射が停止されていない(継続されている)場合のステップとして、容器Oの搬送を停止するステップ(STEP70)と、搬送のトラブルが無いか否かを判断するステップ(STEP71)とがある。ここで、停止された容器Oへの電子線Eの照射が続けられるので、この停止の時間が一定時間を超えると、容器Oへの電子線Eの過照射となるおそれがある。このような過照射を避けるために、次のステップが実行される。すなわち、前記トラブルが無いか否かを判断するステップ(STEP71)で、一定時間が経過するまで(STEP72)当該トラブルが無いと判断されると、容器Oの搬送を再開するステップ(STEP81)、滅菌された容器Oを廃棄口90から連続的に廃棄するステップ(STEP90)、の順に実行される。一方で、前記トラブルが無いか否かを判断するステップ(STEP71)で、一定時間が経過するまで(STEP72)前記トラブルが有りのままと判断されると、電子線Eの照射を停止するステップ(STEP73)、前記トラブルを解消するための作業をするステップ(STEP74)、前記トラブルが解消したか否かを判断するステップ(STEP75)、の順に実行される。前記トラブルが解消したか否かを判断するステップ(STEP75)では、当該トラブルが解消したと判断されるまで、当該トラブルを解消するための作業が続けられる。前記トラブルが解消したか否かを判断するステップ(STEP75)で、当該トラブルが解消したと判断されると、電子線Eの照射を再開するステップ(STEP76)、容器Oの搬送を再開するステップ(STEP81)、滅菌された容器Oを廃棄口90から連続的に廃棄するステップ(STEP90)、の順に実行される。
【0058】
ここで、前記廃棄工程4は、上述した、電子線Eの照射を再開するステップ(STEP51,STEP52)と、容器Oの搬送を継続するステップ(STEP61)と、容器Oの搬送を再開するステップ(STEP62,STEP81)と、滅菌された容器Oを廃棄口90から連続的に廃棄するステップ(STEP90)とを有する。
【0059】
前記廃棄工程4は、電子線Eの照射を再開するステップ(STEP51,STEP52)の直前に、容器Oを一時的に逆搬送するステップ(図6のSTEP40に相当)をそれぞれ有してもよい。前記電子線滅菌装置100の非常時対処方法は、容器Oを一時的に逆搬送するステップ(図6のSTEP40に相当)の直前に、滅菌が不十分な容器Oの位置を前記位置特定手段30により特定する位置特定工程3を具備してもよい。
【0060】
このように、本実施例に係る電子線滅菌装置100の非常時対処方法によると、通常時に容器Oが高速で搬送されて当該容器Oの外面および内面を滅菌する電子線滅菌装置100においても、非常時の際にも下流経路103で搬送される容器Oは滅菌されているので、下流経路103の無菌環境が破壊されず、非常時が発生しても早期に運転を再開することができる。
【0061】
ところで、前記実施例では、前記廃棄口90が選別室70に形成されているとして説明したが、これに限定されるものではない。前記廃棄口90は、前記外面電子線照射器22または内面電子線照射器52の下流側、すなわち、前記下流経路103に形成されていればよく、例えば、前記外面滅菌室20、内面滅菌室50または遮蔽室60に形成されてもよい。
【0062】
また、前記実施の形態1および2並びに実施例は、全ての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、上述した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。前記実施の形態1および2並びに実施例で説明した構成のうち「課題を解決するための手段」での第1の発明として記載した構成以外については、任意の構成であり、適宜削除および変更することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
E 電子線
100 電子線滅菌装置
101 上流経路
102 滅菌経路
103 下流経路
110 ストッパ
120 電子線照射器
190 リジェクト機構
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9