(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の方向に並べられた複数の電気化学反応単セルを備える電気化学反応ブロックであって、各前記電気化学反応単セルは、電解質層と、前記電解質層を挟んで前記第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む、電気化学反応ブロックと、
前記電気化学反応ブロックに対して前記第1の方向の一方側に配置されたターミナル部材であって、前記第1の方向に貫く第1の貫通孔が形成され、かつ、前記電気化学反応ブロックに電気的に接続された導電性のターミナル部材と、
前記ターミナル部材に対して前記第1の方向の前記一方側に配置された絶縁部材であって、前記第1の貫通孔に連通し、かつ、前記第1の方向に貫く第2の貫通孔が形成された、絶縁性の絶縁部材と、
前記絶縁部材に対して前記第1の方向の前記一方側に配置された導電性のエンド部材と、
前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とに挿入され、かつ、前記エンド部材に係合している導電性の締結部材と、
を備え、前記締結部材によって締結された電気化学反応セルスタックにおいて、
前記第1の方向視において、前記ターミナル部材に形成された前記第1の貫通孔の内周縁は、前記絶縁部材に形成された前記第2の貫通孔の内周縁を取り囲み、
前記第1の方向視において、前記絶縁部材における前記第2の貫通孔の内周縁は、前記締結部材から離間しており、
前記第1の方向視における前記締結部材の中心を通り、かつ、前記第1の方向に平行な断面において、前記絶縁部材における前記第2の貫通孔の内周面に相当する第1の線上の任意の点と前記締結部材との間の前記第1の方向に直交する第2の方向における第1の距離に対する、前記第1の線上の前記任意の点と前記第1の線の前記第1の方向における前記一方側の端点との間の前記第1の線に沿った第2の距離の比は、前記絶縁部材を形成する材料の比誘電率の値未満である、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
第1の方向に並べられた複数の電気化学反応単セルを備える電気化学反応ブロックであって、各前記電気化学反応単セルは、電解質層と、前記電解質層を挟んで前記第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む、電気化学反応ブロックと、
前記電気化学反応ブロックに対して前記第1の方向の一方側に配置されたターミナル部材であって、前記第1の方向に貫く第1の貫通孔が形成され、かつ、前記電気化学反応ブロックに電気的に接続された導電性のターミナル部材と、
前記ターミナル部材に対して前記第1の方向の前記一方側に配置された絶縁部材であって、前記第1の貫通孔に連通し、かつ、前記第1の方向に貫く第2の貫通孔が形成された、絶縁性の絶縁部材と、
前記絶縁部材に対して前記第1の方向の前記一方側に配置された導電性のエンド部材と、
前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とに挿入され、かつ、前記エンド部材に係合している導電性の締結部材と、
を備え、前記締結部材によって締結された電気化学反応セルスタックにおいて、
前記第1の方向視において、前記ターミナル部材に形成された前記第1の貫通孔の内周縁は、前記絶縁部材に形成された前記第2の貫通孔の内周縁を取り囲み、
前記第1の方向視において、前記絶縁部材における前記第2の貫通孔の内周縁は、前記締結部材から離間しており、
前記第1の方向視における前記締結部材の中心を通り、かつ、前記第1の方向に平行な断面において、前記絶縁部材における前記第2の貫通孔の内周面に相当する第1の線上の任意の点と前記締結部材との間の前記第1の方向に直交する第2の方向における第1の距離に対する、前記第1の線上の前記任意の点と前記第1の線の前記第1の方向における前記一方側の端点との間の前記第1の線に沿った第2の距離の比は、前記絶縁部材を形成する材料の比誘電率の値未満であり、
前記絶縁部材は、マイカにより形成されている、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.第1実施形態:
A−1.装置構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、
図2は、
図1(および後述する
図7)のII−IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図3は、
図1(および後述する
図7)のIII−IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図4は、
図1(および後述する
図7)のIV−IVの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
図5以降についても同様である。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を、面方向と呼ぶものとする。
【0021】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という)102と、一対のターミナルプレート410,420と、一対の絶縁シート510,520と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のターミナルプレート410,420は、複数の発電単位102から構成される集合体(以下、「発電ブロック103」という)を上下から挟むように配置されている。一対の絶縁シート510,520は一対のターミナルプレート410,420を上下から挟むように配置されている。また、一対のエンドプレート104,106は、一対の絶縁シート510,520を上下から挟むように配置されている。
【0022】
図1および
図4に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(上側のエンドプレート104、各発電単位102、各ターミナルプレート410,420および各絶縁シート510,520)のZ軸方向回りの外周の4つの角部周辺には、各層を上下方向に貫通し、かつ、Z軸方向視において略円形の孔が形成されている。さらに燃料電池スタック100を構成する下側のエンドプレート106のZ軸方向回りの外周の4つの角部周辺の上面には、後述するボルト22の下側端部が螺合される孔(ねじ孔)が形成されている。各発電単位102と各ターミナルプレート410,420と各絶縁シート510,520と各エンドプレート104,106とに形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、上側のエンドプレート104から下側のエンドプレート106にわたって上下方向に延びるボルト孔109を構成している。以下の説明では、ボルト孔109を構成するために各層に形成された孔も、ボルト孔109ということがある。
【0023】
各ボルト22は、上下方向に延びる各ボルト孔109に挿通されている、略円柱形状の導電性部材である。各ボルト22の下側端部には、各ボルト22が、下側のエンドプレート106に係合可能なように、下側のエンドプレート106のZ軸方向回りの外周の4つの角部周辺の上面に形成された上記孔(ねじ孔)に螺合可能なねじ部が形成されている。このように、本実施形態の燃料電池スタック100では、各ボルト22の頭部と下側のエンドプレート106とによって、各発電単位102および各エンドプレート104,106が一体に締結されている。ここで、「各ボルト22が、下側のエンドプレート106に係合」しているとは、各ボルト22が直接的にまたは他の部材(例えば、ナット)を介して下側のエンドプレート106に取り付けられていることを意味する。
【0024】
また、
図1から
図3に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(各発電単位102、下側のターミナルプレート420および下側の絶縁シート520)のZ軸方向回りの外周辺の付近には、各発電単位102と、下側のターミナルプレート420とを上下方向に貫通する孔が形成されており、各発電単位102に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、複数の発電単位102にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために各層に形成された孔も、連通孔108ということがある。
【0025】
図1および
図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の付近に位置する連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102の後述する空気室166に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の付近に位置する連通孔108は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出するガス流路である酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。酸化剤ガスOGとしては、例えば空気が使用される。
【0026】
また、
図1および
図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する辺の内、上述した酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102の後述する燃料室176に供給するガス流路である燃料ガス導入マニホールド171として機能し、上述した酸化剤ガス導入マニホールド161として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の連通孔108は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出するガス流路である燃料ガス排出マニホールド172として機能する。燃料ガスFGとしては、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0027】
(ターミナルプレート410,420、絶縁シート510,520およびエンドプレート104,106の構成)
一対のターミナルプレート410,420は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。各ターミナルプレート410,420のZ軸方向における厚さ(板厚)は、0.2mm以上、3mm以下である。上側のターミナルプレート410は、複数の発電単位102から構成される発電ブロック103の上方向側に配置されており、下側のターミナルプレート420は、発電ブロック103の下方向側に配置されている。すなわち、上側のターミナルプレート410は、複数の単セル110の内、Z軸方向において、最も上方向側に位置する単セル110を備える発電単位102の上方向側に配置されている。また、下側のターミナルプレート420は、複数の単セル110の内、Z軸方向において、最も下方向側に位置する単セル110を備える発電単位102の下方向側に配置されている。
図2から
図4に示すように、上側のターミナルプレート410には、4つのボルト孔109が形成されている。また、下側のターミナルプレート420には、4つの連通孔108と、4つのボルト孔109とが形成されている。上側のターミナルプレート410は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のターミナルプレート420は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。下側のターミナルプレート420の構成については、後に詳述する。
【0028】
一対の絶縁シート510,520は、略矩形のシート状の絶縁部材である。絶縁シート510,520は、例えばマイカ、アルミナ、窒化ケイ素、ジルコニア等により形成されている。各絶縁シート510,520のZ軸方向における厚さ(シート厚)T1は、0.1mm以上、5mm以下であり、好ましくは、1mm以上、5mm以下である。上側の絶縁シート510は、上側のターミナルプレート410の上方向側に配置されており、下側の絶縁シート520は、下側のターミナルプレート420の下方向側に配置されている。
図2から
図4に示すように、上側の絶縁シート510には、4つのボルト孔109が形成されている。また、下側の絶縁シート520には、4つの連通孔108と、4つのボルト孔109とが形成されている。下側の絶縁シート520の構成については、後に詳述する。なお、本明細書において、「導電性部材」とは、電気抵抗率が100μΩ・m以下である部材を意味し、「絶縁部材」とは、電気抵抗率が10MΩ・m以上である部材を意味している。
【0029】
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。各エンドプレート104,106のZ軸方向における厚さ(板厚)は、1mm以上、15mm以下である。上側のエンドプレート104は、上側の絶縁シート510の上方向側に配置されており、下側のエンドプレート106は、下側の絶縁シート520の下方向側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって、一対の絶縁シート510,520と、一対のターミナルプレート410,420と、複数の発電単位102とが押圧された状態で挟持されている。
図2から
図4に示すように、上側のエンドプレート104には、4つのボルト孔109が形成されている。また、下側のエンドプレート106には、4つの流路用貫通孔107と、4つのボルト孔109とが形成されている。4つの流路用貫通孔107は、それぞれ、酸化剤ガス導入マニホールド161、酸化剤ガス排出マニホールド162、燃料ガス導入マニホールド171、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0030】
(ガス通路部材27等の構成)
図2および
図3に示すように、燃料電池スタック100は、さらに、下側のエンドプレート106に対して複数の発電単位102とは反対側(すなわち、下側)に配置された4つのガス通路部材27を備える。4つのガス通路部材27は、それぞれ、酸化剤ガス導入マニホールド161、酸化剤ガス排出マニホールド162、燃料ガス導入マニホールド171、燃料ガス排出マニホールド172と上下方向に重なる位置に配置されている。各ガス通路部材27は、下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107に連通する孔が形成された本体部28と、本体部28の側面から分岐した筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。なお、各ガス通路部材27の本体部28とエンドプレート106との間には、絶縁シート26が配置されている。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合材等により構成される。
【0031】
(発電単位102の構成)
図5は、
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、
図6は、
図1(および後述する
図7)のVI−VIの位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
図5および
図6に示すように、発電の最小単位である発電単位102は、燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という)110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電部材134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電部材144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ軸方向回りの外周には、上述した各マニホールド161,162,171,172として機能する各連通孔108を構成する孔と、各ボルト孔109を構成する孔とが形成されている。なお、発電単位102は単セル110を備えるため、上述した発電ブロック103は、単セル110が上下方向に複数並べて配置された構造体であるとも表現できる。
【0032】
一対のインターコネクタ150は、Z軸方向視で単セル110より大きい略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。また、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のターミナルプレート410,420を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(
図2〜
図4参照)。
【0033】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0034】
電解質層112は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、緻密な層である。電解質層112は、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト型酸化物等の固体酸化物により形成されている。空気極114は、Z軸方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、多孔質な層である。空気極114は、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、Z軸方向視で電解質層112と略同一の大きさの略矩形の平板形状部材であり、多孔質な層である。燃料極116は、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。このように、本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
【0035】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、ステンレス等の金属材料により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。なお、単セル110とセパレータ120との接合箇所付近に、空気室166と燃料室176との間をシールするシール部材(例えば、ガラスシール部材)がさらに設けられてもよい。
【0036】
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の空気室用孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。空気極側フレーム130に形成された空気室用孔131によって、空気極114に面する空気室166が構成される。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通流路132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通流路133とが形成されている。
【0037】
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の燃料室用孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。燃料極側フレーム140に形成された燃料室用孔141によって、燃料極116に面する燃料室176が構成される。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通流路142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通流路143とが形成されている。
【0038】
燃料極側集電部材144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電部材144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。燃料極側集電部材144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサ149が配置されている。そのため、燃料極側集電部材144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電部材144を介した燃料極116とインターコネクタ150との電気的接続が良好に維持される。
【0039】
空気極側集電部材134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電部材134は、複数の略四角柱状の集電部材要素135から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電部材134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。空気極側集電部材134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150とを電気的に接続する。なお、本実施形態では、空気極側集電部材134とインターコネクタ150とは一体の部材として形成されている。すなわち、該一体の部材の内の、上下方向(Z軸方向)に直交する平板形の部分がインターコネクタ150として機能し、該平板形の部分から空気極114に向けて突出するように形成された複数の凸部である集電部材要素135が空気極側集電部材134として機能する。また、空気極側集電部材134とインターコネクタ150との一体部材は、導電性のコートによって覆われていてもよく、空気極114と空気極側集電部材134との間には、両者を接合する導電性の接合層が介在していてもよい。なお、各発電単位102において、空気極側集電部材134と上側のインターコネクタ150とが別の部材であるとしてもよい。
【0040】
A−2.燃料電池スタック100の動作:
図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29、本体部28、下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107、下側の絶縁シート520の連通孔108および下側のターミナルプレート420の連通孔108を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通流路132を介して、空気室166に供給される。また、
図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29、本体部28、下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107、下側の絶縁シート520の連通孔108および下側のターミナルプレート420の連通孔108を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通流路142を介して、燃料室176に供給される。
【0041】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGに含まれる酸素と燃料ガスFGに含まれる水素との電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電部材134を介して一方のインターコネクタ150(または上側のターミナルプレート410)に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電部材144を介して他方のインターコネクタ150(または下側のターミナルプレート420)に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するターミナルプレート410,420から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0042】
図2に示すように、各発電単位102の酸化剤ガス排出連通流路133を介して空気室166から酸化剤ガス排出マニホールド162に排出された酸化剤オフガスOOGは、下側のターミナルプレート420の連通孔108、下側の絶縁シート520の連通孔108、下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、
図3に示すように、各発電単位102の燃料ガス排出連通流路143を介して燃料室176から燃料ガス排出マニホールド172に排出された燃料オフガスFOGは、下側のターミナルプレート420の連通孔108、下側の絶縁シート520の連通孔108、下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107、燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0043】
なお、本実施形態の燃料電池スタック100を構成する各発電単位102では、空気室166における酸化剤ガスOGの主たる流れ方向と燃料室176における燃料ガスFGの主たる流れ方向とが、略反対方向(互いに対向する方向)となっている。すなわち、本実施形態の発電単位102(燃料電池スタック100)は、カウンターフロータイプのSOFCである。
【0044】
A−3.下側のターミナルプレート420および下側の絶縁シート520の詳細構成:
図7は、
図4のVII−VIIの位置における下側のターミナルプレート420のXY断面構成を示す説明図である。なお、
図7では、便宜上、Z軸方向において、
図4のVII−VIIの位置における下側のターミナルプレート420のXY断面とは異なる位置のXY断面に存在する下側の絶縁シート520も図示している。
図8は、燃料電池スタック100のXZ断面構成を部分的に示す説明図である。
図8は、
図4に示す断面のX1部における部分拡大図、すなわち、
図1および
図7のIV−IVの位置の断面における部分拡大図である。詳しくは、
図8には、Z軸方向視におけるボルト22の中心点POを通り、かつ、Z軸方向に平行なXZ断面の構成が示されている。
【0045】
上述の通り、下側のターミナルプレート420は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている(
図7参照)。また、下側のターミナルプレート420には、酸化剤ガス導入マニホールド161と、酸化剤ガス排出マニホールド162と、燃料ガス導入マニホールド171と、燃料ガス排出マニホールド172とを構成する連通孔108が形成されている。下側のターミナルプレート420には、さらに、Z軸方向回りの外周の4つの角部周辺にボルト孔109が形成されている。また、Y軸方向視において、下側の絶縁シート520における絶縁シート貫通孔522の内周面Siは、Z軸方向と平行な略直線である。換言すると、Y軸方向視において、絶縁シート貫通孔522の内周面Siは、下側の絶縁シート520における上側の表面と直交している。
【0046】
図7における部分拡大図に示すように、Z軸方向視において、ボルト孔109の略中央には、ボルト22が配置されている。Z軸方向視におけるボルト孔109の中心点は、ボルト22の中心点POと略同じ位置である。ボルト孔109の一部を構成する、下側のターミナルプレート420に形成されたボルト孔109(以下、「ターミナルプレート貫通孔422」ともいう)の孔径D2は、ボルト22の軸部における外径(最大外径)D1より大きい。また、ボルト孔109の一部を構成する、下側の絶縁シート520に形成されたボルト孔109(以下、「絶縁シート貫通孔522」ともいう)の孔径D3は、ボルト22の軸部における外径(最大外径)D1より大きく、かつ、ターミナルプレート貫通孔422の孔径D2より小さい。また、Z軸方向視において、ボルト22の軸部と、ターミナルプレート貫通孔422と、絶縁シート貫通孔522とは、略同心である。すなわち、Z軸方向視において、下側のターミナルプレート420に形成されたターミナルプレート貫通孔422の内周縁Etは、下側の絶縁シート520に形成された絶縁シート貫通孔522の内周縁Eiを取り囲んでいる。ここで、「ターミナルプレート貫通孔422の内周縁Et」は、ターミナルプレート貫通孔422の内周面Stと下側の絶縁シート520の上側表面とが接する点P1を含む縁である。また、「Z軸方向視において、下側のターミナルプレート420に形成されたターミナルプレート貫通孔422の内周縁Etは、下側の絶縁シート520に形成された絶縁シート貫通孔522の内周縁Eiを取り囲んでいる」とは、Z軸方向視において、ターミナルプレート貫通孔422の内周縁Etが、内周縁Etの全周にわたって、絶縁シート貫通孔522の内周縁Eiより外側に位置していることを意味し、内周縁Etと内周縁Eiとが一致することを意味しない。換言すると、Y軸方向視において、下側の絶縁シート貫通孔522の内周面Siは、下側のターミナルプレート貫通孔422の内周面Stからボルト22側へ突出している。
【0047】
Z軸方向視において、下側のターミナルプレート420におけるターミナルプレート貫通孔422の内周縁Etおよび下側の絶縁シート520における絶縁シート貫通孔522の内周縁Eiは、いずれもボルト22の軸部の全周にわたって離間している。なお、上述の下側のターミナルプレート420の内周面Stとは、下側のターミナルプレート420の表面の内、ボルト22に対向する表面であり、後述の下側の絶縁シート520の内周面Siとは、下側の絶縁シート520の表面の内、ボルト22に対向する表面である。なお、下側のターミナルプレート420におけるターミナルプレート貫通孔422の内周面Stおよび下側の絶縁シート520における絶縁シート貫通孔522の内周面Siは、それらの全ての部分においてボルト22から離間している。また、下側のターミナルプレート420とボルト22との間には、他の部材が介在することなく、下側のターミナルプレート420とボルト22との間の空間は空気(比誘電率1.0)で満たされている。換言すると、ボルト孔109に占める空気の体積の値は、ボルト孔109の体積からボルト22の体積を差し引いた値と同等である。
【0048】
図8に示すように、Z軸方向に直交するY軸方向視において、下側のターミナルプレート420のターミナルプレート貫通孔422における内周面Stと、下側の絶縁シート520とは点P1において接している。Y軸方向視において、下側の絶縁シート520の絶縁シート貫通孔522における内周面Siと、下側のエンドプレート106とは端点P3において接している。Y軸方向視において、下側の絶縁シート520の上方向側の表面における点P2は、ボルト22に最も近い点であり、かつ、下側の絶縁シート520の表面における屈曲点である。線L1は、Y軸方向視において、下側の絶縁シート520における絶縁シート貫通孔522の内周面Siに相当する線である。空間距離Daは、線L1上の任意の点Paとボルト22との間のX軸方向における最短距離である。距離Dbは、線L1上の任意の点Paと線L1のZ軸方向における下方向側の端点P3との間の線L1に沿った距離である。なお、
図8において、ボルト孔109内に図示された点線は、ターミナルプレート貫通孔422内の空間と絶縁シート貫通孔522内の空間とを示すために便宜上図示された点線である。
【0049】
本実施形態の燃料電池スタック100において、上記空間距離Daに対する上記距離Dbの比(Db/Da)は、下側の絶縁シート520を形成する材料の比誘電率の値未満である。本実施形態において、下側の絶縁シート520を形成する材料がマイカであり、マイカの比誘電率が7.0である場合において、上記比(Db/Da)は、7.0未満である。なお、下側の絶縁シート520における絶縁シート貫通孔522によって形成される空間は、空気(比誘電率1.0)で満たされている。また、下側の絶縁シート520を形成する材料が、アルミナ、窒化ケイ素、ジルコニアである場合において、それらの比誘電率は、アルミナでは8.5〜10.0、窒化ケイ素では8.3〜9.6、ジルコニアでは28〜33である。なお、下側の絶縁シート520を形成する材料の比誘電率は、例えば、JIS C2141に準拠して測定することができる。なお、本実施形態の燃料電池スタック100では、
図8に示すXZ断面だけでなく、Z軸方向視におけるボルト22の中心点POを通るいずれの断面においても同様の構成となっている。
【0050】
本実施形態の燃料電池スタック100において、各ボルト22の軸部(詳しくは、軸部のねじ山の部分)における外径D1は、4mm以上、14mm以下であり、好ましくは、8mm以上、11mm以下である。また、下側のターミナルプレート420に形成されたターミナルプレート貫通孔422の孔径D2は、6mm以上、16mm以下であり、好ましくは、10mm以上、13mm以下である。また、下側の絶縁シート520に形成された絶縁シート貫通孔522の孔径D3は、5mm以上、15mm以下であり、好ましくは、9mm以上、12mm以下である。また、下側のターミナルプレート貫通孔422におけるボルト22との間の間隙に対する、下側の絶縁シート520における下側のターミナルプレート420からの突出距離の割合は、5%以上であり、好ましくは、20%以上であり、より好ましくは、50%以上である。ここで、下側のターミナルプレート貫通孔422におけるボルト22との間の間隙は、ターミナルプレート貫通孔422の内周縁Etとボルト22の外径D1との間の距離((D2−D1)/2)であり、下側の絶縁シート520における下側のターミナルプレート420からの突出距離は、ターミナルプレート貫通孔422の内周縁Etと絶縁シート貫通孔522の内周縁Eiとの間の距離((D2−D3)/2)である。
【0051】
なお、Z軸方向(配列方向または上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。発電ブロック103は、特許請求の範囲における電気化学反応ブロックに相当する。単セル110は、特許請求の範囲における電気化学反応単セルに相当する。下側のターミナルプレート420は、特許請求の範囲におけるターミナル部材に相当する。ターミナルプレート貫通孔422は、特許請求の範囲における第1の貫通孔に相当する。下側の絶縁シート520は、特許請求の範囲における絶縁部材に相当する。絶縁シート貫通孔522は、特許請求の範囲における第2の貫通孔に相当する。下側のエンドプレート106は、特許請求の範囲におけるエンド部材に相当する。ボルト22は、特許請求の範囲における締結部材に相当する。空間距離Daは、特許請求の範囲における第1の距離に相当する。距離Dbは、特許請求の範囲における第2の距離に相当する。
【0052】
A−4.性能評価:
複数の燃料電池スタック100のサンプルを用いて行った性能評価について、以下説明する。
図10は、性能評価(耐電圧値についての評価)の結果を示す説明図である。
図10の縦軸は、耐電圧値の比率であり、横軸は、燃料電池スタック100を構成する下側の絶縁シート520とボルト22との間の空間距離Da(mm)である。
【0053】
(評価方法)
本性能評価では、以下の構成を有する燃料電池スタック100を用いた。
・ボルト22
材料:ステンレス
・下側のターミナルプレート420
材料:ステンレス
厚さT1:1mm
・下側の絶縁シート520
材料:マイカ(比誘電率7.0)
厚さT1:1.5mm
・下側のエンドプレート106
材料:ステンレス
厚さT1:8mm
・下側の絶縁シート520とボルト22との間の空間距離Da:
0mm,0.15mm,0.3mm,0.5mm,1mm,1.5mm,1.8mm,2mm
【0054】
(評価結果)
図10において、縦軸の「耐電圧値の比率」は、上記空間距離Daが2mmである構成を有する燃料電池スタック100の耐電圧の測定値を1としたときの、上記空間距離Daが上記各距離(0mm〜1.8mm)である構成を有する燃料電池スタック100の耐電圧の測定値の比率である。なお、「空間距離Daが2mmである構成」とは、ターミナルプレート貫通孔422の孔径D2と絶縁シート貫通孔522の孔径D3とが同じ値である構成を意味している。また、本性能評価に用いた燃料電池スタック100において、Y軸方向視において、絶縁シート貫通孔522の内周面Siは、下側の絶縁シート520における上側の表面と直交している。このため、上記空間距離Daは、Y軸方向視において、下側の絶縁シート520における絶縁シート貫通孔522の内周面Siに相当する上記線L1上のいずれの点Paにおいても、同じ値である。また、下側の絶縁シート520の厚さT1は1.5mmであるため、上記距離Dbは最大で1.5mmである。
【0055】
本性能評価において、耐電圧値の比率は、上記空間距離Daが2mmの点を基点として小さくなるにつれて上昇し、上記空間距離Daが0.3mmの点で最大値を示した。これは、上記空間距離Daが0.3mm〜1.8mmである構成を有する燃料電池スタック100では、上記空間距離Daに対する上記距離Dbの比(Db/Da)が、下側の絶縁シート520を形成する材料であるマイカの比誘電率7.0未満の値であったためと考えられる。一方、上記空間距離Daが0.15mmの点における耐電圧値の比率は、上記空間距離Daが0.3mmの点における耐電圧値の比率と比較して、顕著に低い値を示した。これは、上記空間距離Daが0.15mmである構成を有する燃料電池スタック100では、上記空間距離Daに対する上記距離Dbの比(Db/Da)が、下側の絶縁シート520を形成する材料であるマイカの比誘電率7.0を超える値であったためと考えられる。
【0056】
下側の絶縁シート520とボルト22との間の空間の空気の誘電率は、下側の絶縁シート520を形成する材料であるマイカの誘電率よりも小さいため、上記距離Dbに沿って放電が起こりやすいと考えられる。一方、上記比(Db/Da)がマイカの比誘電率以上の場合には、上記空間距離Daにおいて放電が起こりやすくなると考えられる。
【0057】
A−5.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100は、発電ブロック103と、下側のターミナルプレート420と、下側の絶縁シート520と、下側のエンドプレート106と、ボルト22とを備える。発電ブロック103は、Z軸方向に並べられた複数の単セル110を備える。各単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んでZ軸方向に互いに対向する空気極114および燃料極116とを含む。下側のターミナルプレート420は、発電ブロック103に対してZ軸方向の下方向側に配置されている。下側のターミナルプレート420には、Z軸方向に貫くターミナルプレート貫通孔422が形成されている。下側のターミナルプレート420は、発電ブロック103に電気的に接続される導電性の部材である。下側の絶縁シート520は、下側のターミナルプレート420に対してZ軸方向の下方向側に配置された絶縁性の部材である。下側の絶縁シート520には、ターミナルプレート貫通孔422に連通し、かつ、Z軸方向に貫く絶縁シート貫通孔522が形成されている。下側のエンドプレート106は、下側の絶縁シート520に対してZ軸方向の下方向側に配置された導電性の部材である。ボルト22は、ターミナルプレート貫通孔422と絶縁シート貫通孔522とに挿入され、かつ、下側のエンドプレート106に係合している導電性の部材である。また、本実施形態の燃料電池スタック100では、Z軸方向視において、下側のターミナルプレート420に形成されたターミナルプレート貫通孔422の内周縁Etは、下側の絶縁シート520に形成された絶縁シート貫通孔522の内周縁Eiを取り囲んでいる。Z軸方向視において、下側の絶縁シート520における絶縁シート貫通孔522の内周縁Eiは、ボルト22から離間している。
【0058】
本実施形態の燃料電池スタック100では、Z軸方向視において、下側のターミナルプレート420に形成されたターミナルプレート貫通孔422の内周縁Etは、下側の絶縁シート520に形成された絶縁シート貫通孔522の内周縁Eiを取り囲んでいる。すなわち、本実施形態の燃料電池スタック100では、Z軸方向視におけるボルト22の中心点POを通り、かつ、Z軸方向に平行な断面において、下側の絶縁シート520における絶縁シート貫通孔522の内周面Siは、下側のターミナルプレート420におけるターミナルプレート貫通孔422の内周面Stと比較して、ボルト22側へ突出している。このため、下側の絶縁シート520における絶縁シート貫通孔522の内周面Siが、下側のターミナルプレート420におけるターミナルプレート貫通孔422の内周面Stと一致する構成と比較して、下側のターミナルプレート420から下側のエンドプレート106に至るまでの下側の絶縁シート520における沿面距離を大きくすることができる。このため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、下側のターミナルプレート420と下側のエンドプレート106との間の短絡の発生を抑制することができる。
【0059】
本実施形態の燃料電池スタック100では、Z方向視において、絶縁シート520における絶縁シート貫通孔522の内周縁Eiは、ボルト22から離間している。すなわち、絶縁シート520とボルト22との間には空間が形成されている。このため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、下側のターミナルプレート420とボルト22との間の短絡の発生を抑制することができる。
【0060】
従って、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、下側のターミナルプレート420とボルト22との間の短絡の発生を抑制するとともに、下側のターミナルプレート420と下側のエンドプレート106との間の短絡の発生を抑制することができる。
【0061】
上記性能評価で用いた、上記空間距離Daが2mmおよび1.5mmである構成を有する燃料電池スタック100について、電界強度に関するシミュレーションを行った。この結果、上記空間距離Daが1.5mmである構成、すなわち、下側のターミナルプレート420のターミナルプレート貫通孔422の内周面Stから、下側の絶縁シート520の絶縁シート貫通孔522の内周面Siがボルト22側へ突出している構成(以下、「突出構成」ともいう)において、内周面Stと下側の絶縁シート520とが接する点P1における電界強度は0.640e7であった。一方、上記空間距離Daが2mmである構成、すなわち、下側のターミナルプレート420のターミナルプレート貫通孔422の内周面Stと下側の絶縁シート520の絶縁シート貫通孔522の内周面Siとが面一である構成(以下、「面一構成」ともいう)においては、内周面Stと下側の絶縁シート520とが接する点P1における電界強度は0.229e7であった。すなわち、上記突出構成における点P1での電界強度は、上記面一構成における点P1での電界強度と比較して大きいことが示された。これにより、上記突出構成が、上記面一構成と比較して、上記下側のターミナルプレート420と下側のエンドプレート106との間の短絡がより発生しやすい構成であると考えられる。しかしながら、上記性能評価の結果にも示されているように、本実施形態の燃料電池スタック100の構成、すなわち、下側のターミナルプレート420から下側のエンドプレート106に至るまでの下側の絶縁シート520における上記沿面距離を大きくする構成とすることにより、耐電圧値が上昇し、ひいては、上記下側のターミナルプレート420と下側のエンドプレート106との間の短絡がより発生しにくくなると考えられる。
【0062】
(シミュレーション条件)
上記電界強度に関するシミュレーションの条件は、以下の通りである。
・ボルト22
材料:ステンレス(比誘電率1e6)
・下側のターミナルプレート420
材料:ステンレス(比誘電率1e6)
厚さT1:1mm
・下側の絶縁シート520
材料:マイカ(比誘電率7.0)
厚さT1:1.5mm
・下側のエンドプレート106
材料:ステンレス(比誘電率1e6)
厚さT1:8mm
・下側の絶縁シート520とボルト22との間の空間距離Da:
1.5mm,2mm
・各部材における電位
ボルト22:0V
下側のターミナルプレート420:1000V
下側のエンドプレート106:0V
【0063】
本実施形態の燃料電池スタック100では、Z軸方向視におけるボルト22の中心点POを通り、かつ、Z軸方向に平行なXZ断面において、下側の絶縁シート520における絶縁シート貫通孔522の内周面Siに相当する線L1上の任意の点Paとボルト22との間のZ軸方向に直交するX軸方向における空間距離Daに対する、線L1上の点Paと線L1のZ軸方向における下方向側の端点P3との間の線L1に沿った距離Dbの比(Db/Da)は、下側の絶縁シート520を形成する材料の比誘電率の値未満である。
【0064】
本実施形態の燃料電池スタック100では、Z軸方向視におけるボルト22の中心点POを通り、かつ、Z軸方向に平行なXZ断面において、上記空間距離Daに対する上記距離Dbの比(Db/Da)は、下側の絶縁シート520を形成する材料の比誘電率の値未満である。ここで、下側の絶縁シート520における下側のターミナルプレート420からの突出距離が大きくなるほど、下側のターミナルプレート420から下側のエンドプレート106に至るまでの下側の絶縁シート520における沿面距離は大きくなり、これにより、燃料電池スタック100の耐電圧は向上する。しかしながら、下側の絶縁シート520における下側のターミナルプレート420からの突出距離が大きくなりすぎると、下側の絶縁シート520とボルト22との間の空間距離Daが十分に確保できない。この結果、燃料電池スタック100において、下側の絶縁シート520とボルト22との間の空間距離Daが十分に確保されていない構成では、下側の絶縁シート520とボルト22との間の空間が十分に確保されず、当該空間に満たされている空気(比誘電率1.0)を介して、下側のターミナルプレート420とボルト22との間の短絡が発生する。具体的には、上記空間距離Daに対する上記距離Dbの比(Db/Da)が、下側の絶縁シート520を形成する材料の比誘電率の値以上となる構成では、下側のターミナルプレート420とボルト22との間の短絡が発生する。一方、本実施形態の燃料電池スタック100では、上記空間距離Daに対する上記距離Dbの比(Db/Da)が、下側の絶縁シート520を形成する材料の比誘電率の値未満となる構成とする。すなわち、本実施形態の燃料電池スタック100では、下側の絶縁シート520とボルト22との間の空間距離Daが十分に確保されている。このため、下側の絶縁シート520とボルト22との間の空間に満たされている空気(比誘電率1.0)を介することにより、下側のターミナルプレート420とボルト22との間で短絡することをより効果的に抑制することができる。
【0065】
従って、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、下側のターミナルプレート420と下側のエンドプレート106との間の短絡の発生を抑制することができるとともに、下側のターミナルプレート420とボルト22との間の短絡の発生をより効果的に抑制することができる。
【0066】
本実施形態の燃料電池スタック100では、下側の絶縁シート520は、マイカにより形成されている。マイカは、市場において容易かつ安価に入手でき、成形加工性に優れている傾向があるため、燃料電池スタック100を効率的に製造することができる。
【0067】
B.変形例
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0068】
図9に示すように、上記実施形態の燃料電池スタック100において、下側のターミナルプレート420には、下側の絶縁シート520に面する欠損空間425が形成されていてもよい。欠損空間425は、例えば、下側のターミナルプレート420と下側のターミナルプレート420に面する発電単位102の内の燃料極側フレーム140との間を溶接により接合する際に発生する溶接部の一部(ビード)を収めるために形成される。このように、下側のターミナルプレート420に欠損空間425が形成されている構成において、下側のターミナルプレート420のターミナルプレート貫通孔422の内周縁Etは、ターミナルプレート貫通孔422の内周面Stと下側の絶縁シート520の上側表面とが接する点P4を含む縁である。このような構成において、電流は、下側のターミナルプレート420における点P4から、点P2を通って下側のエンドプレート106へ流れると考えられるためである。すなわち、下側のターミナルプレート420に欠損空間425が形成されている構成においても、Z軸方向視において、下側のターミナルプレート420に形成されたターミナルプレート貫通孔422における点P4を含む内周縁Etが、下側の絶縁シート520に形成された絶縁シート貫通孔522の内周縁Eiを取り囲み、かつ、下側の絶縁シート520における絶縁シート貫通孔522の内周縁Eiがボルト22から離間している構成であれば、下側のターミナルプレート420と下側のエンドプレート106との間の短絡の発生を抑制することができる。なお、
図9において、ボルト孔109内に図示された点線は、ターミナルプレート貫通孔422内の空間と絶縁シート貫通孔522内の空間とを示すために便宜上図示された点線である。
【0069】
上記実施形態において、燃料電池スタック100は、略円筒状の絶縁性部材である保護管を備えていても良い。具体的には、保護管は、
図4および
図8に示すボルト孔109の内周面とボルト22との間に配置される。保護管は、アルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素等の絶縁材料により形成される。より具体的には、保護管は、ボルト22の軸部の軸周りの外周を全周にわたって囲むとともに、Z軸方向において、上側のエンドプレート104から下側のターミナルプレート420まで延びており、保護管の下方向側の端面は下側の絶縁シート520の上方向側の表面に接する。保護管の厚さは、保護管の軸周りの全周にわたって略均一であることが好ましい。また、保護管の厚さは、保護管の全長にわたって略均一であることが好ましい。また、保護管の厚さは、ボルト22とボルト孔109の内周面との間の面方向の距離に対して、1/3以上であることが好ましく、1/2以上であることがより好ましい。保護管は、特許請求の範囲における筒状部材に相当する。このように、燃料電池スタック100が保護管を備えることにより、導電性部材であるターミナルプレート410,420、セパレータ120、燃料極側フレーム140、インターコネクタ10に形成されたボルト孔109とボルト22とが短絡することを抑制することができる。なお、保護管は、略円筒状に限らず、例えば略角筒状等のように筒状であればよい。
【0070】
上記実施形態の燃料電池スタック100において、ボルト22の軸部と、ターミナルプレート貫通孔422と、絶縁シート貫通孔522とは、Z軸方向視において略同心である構成を採用したが、これに限定されない。すなわち、Z軸方向視において、下側のターミナルプレート420に形成されたターミナルプレート貫通孔422の内周縁Etが、下側の絶縁シート520に形成された絶縁シート貫通孔522の内周縁Eiを取り囲んでおり、かつ、下側の絶縁シート520における絶縁シート貫通孔522の内周縁Eiがボルト22から離間していれば、ボルト22の軸部と、ターミナルプレート貫通孔422と、絶縁シート貫通孔522とが、Z軸方向視において略同心でない構成であってもよい。
【0071】
上記実施形態の燃料電池スタック100において、ボルト22の軸部の下側端部が下側のエンドプレート106を貫いて下方に突出し、その突出した下側端部に形成されたねじ部にナットが螺合している構成であってもよい。また、上記実施形態において、ボルト22の軸部の上側端部の外周面におねじが形成され、上側のエンドプレート104に形成された貫通孔の内周面にめねじが形成されており、ボルト22の軸部の上側端部が上側のエンドプレート104に形成された貫通孔に螺合している構成であってもよい。
【0072】
上記実施形態の燃料電池スタック100において、下側の絶縁シート520における絶縁シート貫通孔522の内周面Siが、Y軸方向視において、Z軸方向と平行な略直線でない構成であってもよい。具体的には、Y軸方向視において、絶縁シート貫通孔522の内周面Siは、内周面Siとボルト22との間の距離が、下方向側に向かうほど小さくなる構成であってもよい。
【0073】
上記実施形態の燃料電池スタック100において、下側の絶縁シート520の点P2を含む部分が、Y軸方向視において、R形状である構成であってもよい。ただし、燃料電池スタック100において良好な耐電圧を確保する観点から、下側の絶縁シート520の点P2を含む部分は、上記実施形態のように直角形状であることが好ましい。下側のターミナルプレート420から下側のエンドプレート106に至るまでの下側の絶縁シート520における沿面距離が同じである構成であっても、下側の絶縁シート520の点P2を含む部分が直角形状している方が、すなわち、当該点P2の部分で屈曲している方が、より効果的に耐電圧が向上する傾向があるからである。
【0074】
上記実施形態において、下側の絶縁シート520の絶縁シート貫通孔522の内周縁Eiは、内周面Siのうち、Z軸方向視において、ボルト22側に最も近い点を含む縁である。
【0075】
上記実施形態の燃料電池スタック100において、上側のターミナルプレート410および上側の絶縁シート510の構成に、下側のターミナルプレート420および下側の絶縁シート520と同様の構成が採用されていてもよい。
【0076】
上記実施形態の燃料電池スタック100における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。
【0077】
上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解単セルや、複数の電解単セルを備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016−81813号公報に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されるとともに、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解単セルにおいて水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解単セルにおいても、本発明を適用することにより上記効果を得ることができる。