特許第6902523号(P6902523)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902523
(24)【登録日】2021年6月23日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】側面発光型光ファイバ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/00 20060101AFI20210701BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   G02B6/00 326
   G02B6/44 326
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-244324(P2018-244324)
(22)【出願日】2018年12月27日
(65)【公開番号】特開2020-106637(P2020-106637A)
(43)【公開日】2020年7月9日
【審査請求日】2020年1月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 浩一
(72)【発明者】
【氏名】金 正高
(72)【発明者】
【氏名】田中 正俊
【審査官】 野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−526268(JP,A)
【文献】 特許第5341391(JP,B2)
【文献】 中国特許出願公開第1866066(CN,A)
【文献】 特開2000−131530(JP,A)
【文献】 特表2015−510603(JP,A)
【文献】 特表2017−505451(JP,A)
【文献】 特開2006−317844(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/191220(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02−6/036
6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアとの境界面を有して前記コアを被覆するように設けられたクラッドと、前記クラッドとの境界面を有して前記クラッドを被覆するように設けられた被覆層と、を備えた側面発光型光ファイバであって、
前記クラッドは、第1光散乱体を含むとともに、前記被覆層は、第2光散乱体を含み、且つ前記コアは、前記第1及び第2光散乱体を実質的に含まず、
前記クラッドの前記第1光散乱体の平均粒径が、前記被覆層の前記第2光散乱体の平均粒径よりも大きい側面発光型光ファイバ。
【請求項2】
請求項1に記載された側面発光型光ファイバにおいて、
前記コアがガラス材料で形成されている側面発光型光ファイバ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された側面発光型光ファイバにおいて、
前記クラッドがシリコーン系樹脂で形成されている側面発光型光ファイバ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された側面発光型光ファイバにおいて、
前記被覆層がシリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂で形成されている側面発光型光ファイバ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された側面発光型光ファイバにおいて、
前記被覆層が結晶性を有する材料で形成されている側面発光型光ファイバ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された側面発光型光ファイバにおいて、
前記第1光散乱体の平均粒径が1μm以上10μm以下であるとともに、前記第2光散乱体の平均粒径が0.001μm以上1μm未満である側面発光型光ファイバ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載された側面発光型光ファイバにおいて、
前記第1光散乱体の平均粒径の前記第2光散乱体の平均粒径に対する比が10以上50以下である側面発光型光ファイバ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載された側面発光型光ファイバにおいて、
前記第1及び第2光散乱体が有機材料で形成されている側面発光型光ファイバ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載された側面発光型光ファイバにおいて、
前記第1及び第2光散乱体の粒度分布が単分散である側面発光型光ファイバ。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載された側面発光型光ファイバにおいて、
前記第1及び第2光散乱体の粒度分布が多分散である側面発光型光ファイバ。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載された側面発光型光ファイバにおいて、
前記クラッドにおける前記第1光散乱体の含有量が0.02質量%以上10質量%以下である側面発光型光ファイバ。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載された側面発光型光ファイバにおいて、
前記被覆層における前記第2光散乱体の含有量が0.01質量%以上50質量%以下である側面発光型光ファイバ。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載された側面発光型光ファイバにおいて、
前記被覆層における前記第2光散乱体の含有量が、前記クラッドにおける前記第1光散乱体の含有量と同一、又は、前記クラッドにおける前記第1光散乱体の含有量よりも多い側面発光型光ファイバ。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載された側面発光型光ファイバにおいて、
前記被覆層の屈折率が、前記クラッドの屈折率以上、又は、前記クラッドの屈折率よりも高い側面発光型光ファイバ。
【請求項15】
請求項14に記載された側面発光型光ファイバにおいて、
前記被覆層の屈折率と前記クラッドの屈折率との比屈折率差が0%以上40%以下である側面発光型光ファイバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面発光型光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
照明等に用いられる側面発光型光ファイバでは、通常、いずれかの層に光散乱体が含まれている。例えば、特許文献1には、コア及びクラッドに光散乱体が含まれた側面発光型光ファイバが開示されている。また、特許文献2には、コア及びクラッドの外側の散乱層に光散乱体が含まれた側面発光型光ファイバが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5341391号公報
【特許文献2】特表2015−510603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、長尺でも発光量の減衰の小さい側面発光型光ファイバを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コアと、前記コアとの境界面を有して前記コアを被覆するように設けられたクラッドと、前記クラッドとの境界面を有して前記クラッドを被覆するように設けられた被覆層とを備えた側面発光型光ファイバであって、前記クラッドは、第1光散乱体を含むとともに、前記被覆層は、第2光散乱体を含み、且つ前記コアは、前記第1及び第2光散乱体を実質的に含まず、前記クラッドの前記第1光散乱体の平均粒径が、前記被覆層の前記第2光散乱体の平均粒径よりも大きい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、クラッドが平均粒径の大きい光散乱体を含むので、クラッド伝搬光が、側面発光のために消費されるだけでなく、前方への指向性が与えられてクラッド伝搬が促進されることとなり、そのため長尺でも発光量の減衰を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】実施形態1に係る側面発光型光ファイバの横断面図である。
図1B】実施形態1に係る側面発光型光ファイバの一部分の縦断面図である。
図2】実施形態1に係る側面発光型光ファイバの変形例の横断面図である。
図3A】実施形態2に係る側面発光型光ファイバの横断面図である。
図3B】実施形態2に係る側面発光型光ファイバの一部分の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
(実施形態1)
図1A及びBは、実施形態1に係る側面発光型光ファイバ10を示す。
【0011】
実施形態1に係る側面発光型光ファイバ10は、コア11とクラッド12とを備える。クラッド12は、光散乱体Sを分散して含む。光散乱体Sの平均粒径は、1μm以上10μm以下である。クラッド12における光散乱体Sの含有量は、0.01質量%以上10質量%以下である。
【0012】
実施形態1に係る側面発光型光ファイバ10は、一端がレーザ等の光源に接続されて、長尺のイルミネーションや照明等の種々の用途で用いられる。実施形態1に係る側面発光型光ファイバ10は、光源からの光がコア11に入力されると、そのコア伝搬光をクラッド伝搬光にモード変換し、クラッド伝搬光を光散乱体Sにより光散乱させることにより側面発光する。そして、この実施形態1に係る側面発光型光ファイバ10によれば、クラッド12が平均粒径の大きい光散乱体Sを含むので、クラッド伝搬光が、側面発光のために消費されるだけでなく、前方への指向性が与えられてクラッド伝搬が促進されることとなり、そのため長尺でも発光量の減衰を小さくすることができる。
【0013】
コア11は、ファイバ中心に1つ設けられている。なお、コア11は、偏心して設けられていてもよく、また、複数設けられていてもよい。コア径は、例えば10μm以上2000μm(2mm)以下である。
【0014】
コア11は、クラッド12に比べて相対的に屈折率が高い材料で形成されている。コア11の形成材料としては、例えば、石英などのガラス材料、アクリル系樹脂やフッ素系樹脂などの有機材料等が挙げられる。コア11は、ハイパワーのレーザ光を伝送することができ、また、レーザ光が入力された場合に高いレーザ光損傷耐性が得られるという観点から、これらのうちのガラス材料で形成されていることが好ましい。コア11は、ゲルマニウム等のドープにより屈折率が調整されていてもよい。
【0015】
コア11は、長尺でも発光量の減衰を小さくする観点から、クラッド12が含むような光散乱体を実質的に含まないことが好ましい。ここで、コア11が光散乱体を実質的に含まないとは、コア11における光散乱体の含有量が0.000001質量%以下であることをいう。
【0016】
クラッド12は、コア11を被覆するように設けられている。クラッド径は、例えば100μm以上10000μm(10mm)以下である。
【0017】
クラッド12は、コア11に比べて相対的に屈折率が低い材料で形成されている。クラッド12の形成材料としては、例えば、シリコーン系樹脂やアクリル系樹脂やフッ素系樹脂などの有機材料、石英などのガラス材料等が挙げられる。クラッド12は、フッ素等のドープにより屈折率が調整されていてもよい。
【0018】
クラッド12は、上記のうちの有機材料で形成されていることが好ましく、シリコーン系樹脂で形成されていることがより好ましい。シリコーン系樹脂製のクラッド12は、光散乱体Sとの親和性が高い。これにより、光散乱体Sが長さ方向にも厚さ方向にも均一に分散して含まれることとなるので、クラッド12における均一な光散乱を得ることができる。また、シリコーン系樹脂製のクラッド12に均一に分散した光散乱体Sは、コア11とクラッド12との境界面に、コア伝搬光をクラッド伝搬光にモード変換するための構造的で且つ屈折率差を生じる光学的な凹凸を長さ方向に沿って均一に形成する。これにより、コア伝搬光のクラッド伝搬光へのモード変換が長さ方向に沿って均一に起こるので、長さ方向に沿った側面発光の明暗ムラを抑制することができる。さらに、シリコーン系樹脂製のクラッド12は、コア11がガラス材料で形成されている場合、コア11との高い密着性が得られ、また、レーザ光が入力された場合、光透過率が高いので、高いレーザ光耐性が得られる。加えて、シリコーン系樹脂製のクラッド12は、放熱性が高いので、光散乱体Sが耐熱性の低い有機材料の場合、その劣化が抑制される。このシリコーン系樹脂は、量産性及び再現性の観点から、熱硬化型又は紫外線硬化型であることが好ましい。
【0019】
クラッド12の光散乱体Sの形成材料としては、例えば、粉状のポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)やポリスチレン樹脂(PS)などの有機材料、粉状の光透過性のセラミックス(TiO)や金属(AlやAu)や石英などの無機材料、気泡等が挙げられる。光散乱体Sは、透明性が高く、光吸収が少なく、且つクラッド12がシリコーン系樹脂製の場合、分散性が優れるという観点から、粉状のポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)やポリスチレン樹脂(PS)などの有機材料で形成されていることが好ましい。また、光散乱体Sは、分散性が低い材料で形成された粉体の表面に紫外線照射やプラズマ照射などを行なうことによりクラッド12との親和性を高めて分散性を向上させたものであってもよい。
【0020】
光散乱体Sの屈折率(n)は、クラッド伝搬光の前方への指向性を与えてクラッド伝搬を促進する観点から、クラッド12の屈折率(nclad)との間に所望の比屈折率差(絶対値)があることが好ましい。光散乱体Sの屈折率(n)とクラッド12の屈折率(nclad)とすると、比屈折率差(Δ≒(|n−nclad|/n)×100)は、好ましくは1%以上90%以下、より好ましくは3%以上50%以下である。光散乱体Sの屈折率(n)は、クラッド12の屈折率(nclad)よりも高くても、低くても、どちらでもよい。ここで、屈折率は、最小偏角法により計測される(以下、同様)。
【0021】
クラッド12の光散乱体Sの平均粒径は、1μm以上10μm以下であるが、光散乱体Sがコア11とクラッド12との境界面に形成する凹凸によりコア伝搬光のクラッド伝搬光へのモード変換を促進するとともに、クラッド伝搬光の前方への指向性を与えてクラッド伝搬を促進する観点から、好ましくは2.5μm以上5μm以下である。光散乱体Sの粒度分布は、単分散であっても、多分散であっても、どちらでもよい。なお、光散乱体Sの粒度分布が単分散の場合には、光散乱体Sの散乱特性のクラッド伝搬光の波長依存性が大きく、光散乱体Sの粒度分布が多分散の場合には、光散乱体Sの散乱特性のクラッド伝搬光の波長依存性が小さい。光散乱体Sの平均粒径及び粒度分布は、例えば、コールター法を用いた精密粒度分布測定装置、気泡に関してX線観察や各種顕微鏡観察により計測される(以下、同様)。
【0022】
クラッド12における光散乱体Sの含有量は、0.01質量%以上10質量%以下であるが、クラッド伝搬光の前方への指向性を与えてクラッド伝搬を促進する観点から、好ましくは0.01質量%以上3質量%以下、より好ましくは0.02質量%以上0.6質量%以下である。
【0023】
クラッド12は、光散乱体S以外に、蛍光体や蓄光体を含んでいてもよい。例えば、黄色を発光する蛍光体のYAl12:Ce3+(YAG)では、波長440nm付近の青色光を入力すると、それを励起光として黄色を発光し、青色と黄色とを混合した疑似白色の側面発光を得ることができる。また、緑色を発光する蓄光体のアルミン酸ストロンチウム(SrAl)や硫化亜鉛(ZnS)では、光の入力が途絶えても、暫くの間は燐光により側面発光するので、避難表示用装置として利用することができる。これらの蛍光体や蓄光体の平均粒径及び粒度分布も光散乱体Sと同様に指向性などを考慮して設計するができる。
【0024】
なお、コア11及びクラッド12の断面外郭形状は、円形の他、楕円形、矩形などの多角形であってもよい。
【0025】
実施形態1に係る側面発光型光ファイバ10は、図2に示すように、クラッド12を被覆するように設けられた被覆層13を更に備えてもよい。この場合、実施形態1に係る側面発光型光ファイバ10は、クラッド伝搬光を被覆層伝搬光にモード変換し、その被覆層伝搬光を側面発光する。被覆径は、例えば200μm以上20000μm(20mm)以下である。
【0026】
被覆層13の形成材料としては、例えば、シリコーン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やエチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)などのフッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ナイロン系樹脂等が挙げられる。被覆層13は、レーザ光が入力された場合に高いレーザ光伝送耐性が得られ、耐熱性が高く、且つ屋外使用された場合の耐候性が高いという観点から、これらのうちのシリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂で形成されていることが好ましい。被覆層13は、被覆層伝搬光を光散乱させて側面発光を促進することができることから、結晶性を有する材料で形成されていてもよい。
【0027】
被覆層13の屈折率(njackt)は、フレネル反射を抑制してクラッド伝搬光から被覆層伝搬光へのモード変換を促進する観点から、クラッド12の屈折率(nclad)以上、又は、クラッド12の屈折率(nclad)よりも高いことが好ましい。被覆層13の屈折率(njackt)とクラッド12の屈折率(nclad)との比屈折率差(Δ≒((njacket−nclad)/njacket)×100)は、同様の観点から、好ましくは0%以上40%以下、より好ましくは0%以上20%以下である。
【0028】
被覆層13は、被覆層伝搬光を光散乱させて側面発光を促進することができることから、クラッド12と同様、光散乱体Sを分散して含んでいてもよい。
【0029】
この場合、被覆層13の光散乱体Sとしては、クラッド12が含むものと同様のものが挙げられる。被覆層13の光散乱体Sは、被覆層13の光散乱体Sと同一であっても、異なっていても、どちらでもよい。
【0030】
被覆層13の光散乱体Sの平均粒径は、クラッド12の光散乱体Sの平均粒径と同一であっても、クラッド12の光散乱体Sの平均粒径よりも小さくても、クラッド12の光散乱体Sの平均粒径よりも大きくても、いずれでもよい。被覆層13の光散乱体Sの平均粒径は、例えば0.1μm以上30μm以下である。被覆層13の光散乱体Sの平均粒径が、クラッド12の光散乱体Sの平均粒径よりも小さく、具体的には例えば0.1μm以上1μm未満の場合、被覆層伝搬光を光散乱により放射角度を広くして側面発光を促進することができる。一方、被覆層13の光散乱体Sの平均粒径が、クラッド12の光散乱体Sの平均粒径よりも大きく、具体的には例えば10μmよりも大きく且つ30μm以下の場合、被覆層伝搬光に前方への指向性を与えて被覆層伝搬を促進することができる。また、被覆層13の光散乱体Sの平均粒径が大きいと、クラッド12と被覆層13との境界面及び被覆層13と空気との境界面にそれぞれ大きな凹凸が形成されるので、被覆層13の光散乱体Sの平均粒径により、その凹凸による光の屈折を利用した被覆層伝搬光の放射方向の制御を行うことができる。
【0031】
被覆層13における光散乱体Sの含有量は、クラッド12における光散乱体Sの含有量と同一であっても、クラッド12における光散乱体Sの含有量よりも少なくても、クラッド12における光散乱体Sの含有量よりも多くても、いずれでもよい。被覆層13における光散乱体Sの含有量は、例えば0.01質量%以上30質量%以下である。
【0032】
(実施形態2)
図3A及びBは、実施形態2に係る側面発光型光ファイバ10を示す。なお、実施形態1と同一名称の部分は、実施形態1と同一符号で示す。
【0033】
実施形態2に係る側面発光型光ファイバ10は、コア11とクラッド12と被覆層13とを備える。クラッド12は、第1光散乱体Sを含むとともに、被覆層13は、第2光散乱体Sを含む。クラッド12の第1光散乱体Sの平均粒径が、被覆層13の第2光散乱体Sの平均粒径よりも大きい。
【0034】
実施形態2に係る側面発光型光ファイバ10は、一端がレーザ等の光源に接続されて、長尺のイルミネーションや照明等の種々の用途で用いられる。実施形態2に係る側面発光型光ファイバ10は、光源からの光がコア11に入力されると、そのコア伝搬光をクラッド伝搬光にモード変換し、クラッド伝搬光を第1光散乱体Sにより光散乱させるとともに、被覆層伝搬光にモード変換し、被覆層伝搬光を第2光散乱体Sにより光散乱させることにより側面発光する。そして、この実施形態2に係る側面発光型光ファイバ10によれば、クラッド12が相対的に平均粒径の大きい第1光散乱体Sを含むので、クラッド伝搬光が、側面発光のために消費されるだけでなく、前方への指向性が与えられてクラッド伝搬が促進されることとなり、そのため長尺でも発光量の減衰を小さくすることができる。また、被覆層13が相対的に平均粒径の小さい第2光散乱体Sを含むので、被覆層伝搬光の放射角度を広くして側面発光を促進することができる。
【0035】
実施形態2に係る側面発光型光ファイバ10では、コア11は、長尺でも発光量の減衰を小さくする観点から、クラッド12及び被覆層13が含むような光散乱体を実質的に含まないことが好ましい。
【0036】
クラッド12は、有機材料で形成されていることが好ましく、シリコーン系樹脂で形成されていることがより好ましい。シリコーン系樹脂製のクラッド12は、第1光散乱体Sとの親和性が高い。これにより、第1光散乱体Sが長さ方向にも厚さ方向にも均一に分散して含まれることとなるので、クラッド12における均一な光散乱を得ることができる。また、シリコーン系樹脂製のクラッド12に均一に分散した第1光散乱体Sは、コア11とクラッド12との境界面に、コア伝搬光をクラッド伝搬光にモード変換するための構造的で且つ屈折率差を生じる光学的な凹凸を長さ方向に沿って均一に形成する。同様に、クラッド12と被覆層13との境界面に、クラッド伝搬光を被覆層伝搬光にモード変換するための構造的で且つ屈折率差を生じる光学的な凹凸を長さ方向に沿って均一に形成する。これにより、コア伝搬光のクラッド伝搬光へのモード変換及びクラッド伝搬光の被覆層伝搬光へのモード変換が長さ方向に沿って均一に起こるので、長さ方向に沿った側面発光の明暗ムラを抑制することができる。さらに、シリコーン系樹脂製のクラッド12は、コア11がガラス材料で形成されている場合、コア11との高い密着性が得られ、また、レーザ光が入力された場合、光透過率が高いので、高いレーザ光耐性が得られる。加えて、シリコーン系樹脂製のクラッド12は、放熱性が高いので、第1光散乱体Sが耐熱性の低い有機材料の場合、その劣化が抑制される。このシリコーン系樹脂は、量産性及び再現性の観点から、熱硬化型又は紫外線硬化型であることが好ましい。
【0037】
クラッド12の第1光散乱体Sの形成材料としては、例えば、粉状のポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)やポリスチレン樹脂(PS)などの有機材料、粉状の光透過性のセラミックス(TiO)や金属(AlやAu)や石英などの無機材料、気泡等が挙げられる。第1光散乱体Sは、透明性が高く、光吸収が少なく、且つクラッド12がシリコーン系樹脂製の場合、分散性が優れるという観点から、粉状のポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)やポリスチレン樹脂(PS)などの有機材料で形成されていることが好ましい。
【0038】
第1光散乱体Sの屈折率(ns1)は、クラッド伝搬光の前方への指向性を与えてクラッド伝搬を促進する観点から、クラッド12の屈折率(nclad)との間に所望の比屈折率差(絶対値)があることが好ましい。光散乱体Sの屈折率(ns1)とクラッド12の屈折率(nclad)とすると、比屈折率差(Δ≒(|ns1−nclad|/n)×100)は、好ましくは1%以上90%以下、より好ましくは3%以上50%以下である。なお、第1光散乱体Sの屈折率(ns1)は、クラッド12の屈折率(nclad)よりも高くても、低くても、どちらでもよい。
【0039】
クラッド12の第1光散乱体Sの平均粒径は、第1光散乱体Sがコア11とクラッド12との境界面に形成する凹凸によりコア伝搬光のクラッド伝搬光へのモード変換を促進するとともに、クラッド12と被覆層13との境界面に形成する凹凸によりクラッド伝搬光の被覆層伝搬光へのモード変換を促進し、且つクラッド伝搬光の前方への指向性を与えてクラッド伝搬を促進する観点から、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは2.5μm以上5μm以下である。第1光散乱体Sの粒度分布は、単分散であっても、多分散であっても、どちらでもよい。なお、第1光散乱体Sの粒度分布が単分散の場合には、第1光散乱体Sの散乱特性のクラッド伝搬光の波長依存性が大きく、第1光散乱体Sの粒度分布が多分散の場合には、第1光散乱体Sの散乱特性のクラッド伝搬光の波長依存性が小さい。
【0040】
クラッド12における第1光散乱体Sの含有量は、クラッド伝搬光の前方への指向性を与えてクラッド伝搬を促進する観点から、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上3質量%以下、更に好ましくは0.02質量%以上0.6質量%以下である。
【0041】
被覆層13は、クラッド12を被覆するように設けられている。被覆径は、例えば200μm以上20000μm(20mm)以下である。
【0042】
被覆層13の形成材料としては、例えば、シリコーン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やエチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)などのフッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ナイロン系樹脂等が挙げられる。
【0043】
被覆層13は、レーザ光が入力された場合に高いレーザ光伝送耐性が得られ、耐熱性が高く、且つ屋外使用された場合の耐候性が高いという観点から、これらのうちのシリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂で形成されていることが好ましく、シリコーン系樹脂で形成されていることがより好ましい。シリコーン系樹脂製の被覆層13は、第2光散乱体Sとの親和性が高い。これにより、第2光散乱体Sが長さ方向にも厚さ方向にも均一に分散して含まれることとなるので、被覆層13における均一な光散乱を得ることができる。また、シリコーン系樹脂製の被覆層13に均一に分散した第2光散乱体Sは、クラッド12と被覆層13との境界面に、クラッド伝搬光を被覆層伝搬光にモード変換するための構造的で且つ屈折率差を生じる光学的な凹凸を長さ方向に沿って均一に形成する。これにより、クラッド伝搬光の被覆層伝搬光へのモード変換が長さ方向に沿って均一に起こるので、長さ方向に沿った側面発光の明暗ムラを抑制することができる。さらに、シリコーン系樹脂製の被覆層13は、クラッド12がシリコーン系樹脂製の場合、クラッド12との高い密着性が得られ、また、レーザ光が入力された場合、光透過率が高いので、高いレーザ光耐性が得られる。加えて、シリコーン系樹脂製の被覆層13は、放熱性が高いので、第2光散乱体Sが耐熱性の低い有機材料の場合、その劣化が抑制される。このシリコーン系樹脂は、量産性及び再現性の観点から、熱硬化型又は紫外線硬化型であることが好ましい。
【0044】
被覆層13の屈折率(njackt)は、フレネル反射を抑制してクラッド伝搬光から被覆層伝搬光へのモード変換を促進する観点から、クラッド12の屈折率(nclad)以上、又は、クラッド12の屈折率(nclad)よりも高いことが好ましい。被覆層13の屈折率(njackt)とクラッド12の屈折率(nclad)との比屈折率差(Δ≒((njacket−nclad)/njacket)×100)は、同様の観点から、好ましくは0%以上40%以下、より好ましくは0%以上20%以下である。
【0045】
被覆層13の第2光散乱体Sの形成材料としては、クラッド12の第1光散乱体Sと同様、例えば、粉状のポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)やポリスチレン樹脂(PS)などの有機材料、粉状の光透過性のセラミックス(TiO)や金属(AlやAu)や石英などの無機材料、気泡等が挙げられる。第2光散乱体Sは、透明性が高く、光吸収が少なく、且つ被覆層13がシリコーン系樹脂製の場合、分散性が優れるという観点から、粉状のポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)やポリスチレン樹脂(PS)などの有機材料で形成されていることが好ましい。被覆層13の第2光散乱体Sは、クラッド12の第1光散乱体Sと同一材料で形成されていても、異なる材料で形成されていても、どちらでもよい。
【0046】
第2光散乱体Sの屈折率(ns2)は、被覆層伝搬光を光散乱させて側面発光を促進する観点から、被覆層13の屈折率(njacket)との間に所望の比屈折率差(絶対値)があることが好ましい。第2光散乱体Sの屈折率(ns2)被覆層13の屈折率(njacket)とすると、比屈折率差(Δ≒(|ns2−njacket|/ns2)×100)は、好ましくは1%以上90%以下、より好ましくは3%以上50%以下である。なお、第2光散乱体Sの屈折率(ns2)は、被覆層13の屈折率(njacket)よりも高くても、低くても、どちらでもよい。
【0047】
被覆層13の第2光散乱体Sの平均粒径は、第2光散乱体Sがクラッド12と被覆層13との境界面に形成する凹凸によりクラッド伝搬光の被覆層伝搬光へのモード変換を促進するとともに、被覆層伝搬光を光散乱により放射角度を広くして側面発光を促進する観点から、好ましくは0.001μm以上1μm未満、より好ましくは0.1μm以上0.5μm以下である。第2光散乱体Sの粒度分布は、単分散であっても、多分散であっても、どちらでもよい。なお、第2光散乱体Sの粒度分布が単分散の場合には、第2光散乱体Sの散乱特性の被覆層伝搬光の波長依存性が大きく、第2光散乱体Sの粒度分布が多分散の場合には、第2光散乱体Sの散乱特性の被覆層伝搬光の波長依存性が小さい。
【0048】
被覆層13における第2光散乱体Sの含有量は、被覆層伝搬光を光散乱させて側面発光を促進する観点から、クラッド12における第1光散乱体Sの含有量と同一、又は、クラッド12における第1光散乱体Sの含有量よりも多いことが好ましい。被覆層13における第2光散乱体Sの含有量は、例えば0.01質量%以上50質量%以下である。
【0049】
実施形態2に係る側面発光型光ファイバ10では、クラッド12の第1光散乱体Sの平均粒径が、被覆層13の第2光散乱体Sの平均粒径よりも大きく、前者の後者に対する比は、好ましくは1以上10,000以下、より好ましくは10以上50以下である。
【0050】
クラッド12及び/又は被覆層13は、第1及び第2光散乱体S,S以外に、蛍光体や蓄光体を含んでいてもよい。例えば、黄色を発光する蛍光体のYAl12:Ce3+(YAG)では、波長440nm付近の青色光を入力すると、それを励起光として黄色を発光し、青色と黄色とを混合した疑似白色の側面発光を得ることができる。また、緑色を発光する蓄光体のアルミン酸ストロンチウム(SrAl)や硫化亜鉛(ZnS)では、光の入力が途絶えても、暫くの間は燐光により側面発光するので、避難表示用装置として利用することができる。
【0051】
なお、コア11、クラッド12、及び被覆層13の断面外郭形状は、円形の他、楕円形、矩形などの多角形であってもよい。
【0052】
その他の構成及び作用効果は実施形態1と同一である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、側面発光型光ファイバの技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0054】
10 側面発光型光ファイバ
11 コア
12 クラッド
13 被覆層
S,S1,S2 (第1,第2)光散乱体
図1A
図1B
図2
図3A
図3B