特許第6902600号(P6902600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6902600レオロジー調整剤としてアルカリ土類ダイヤモンドイド化合物を含有する油系掘削流体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902600
(24)【登録日】2021年6月23日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】レオロジー調整剤としてアルカリ土類ダイヤモンドイド化合物を含有する油系掘削流体
(51)【国際特許分類】
   C09K 8/36 20060101AFI20210701BHJP
   E21B 21/00 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   C09K8/36
   E21B21/00 A
【請求項の数】15
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2019-500218(P2019-500218)
(86)(22)【出願日】2017年3月9日
(65)【公表番号】特表2019-515122(P2019-515122A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】US2017021478
(87)【国際公開番号】WO2017160570
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2020年3月9日
(31)【優先権主張番号】62/309,662
(32)【優先日】2016年3月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(73)【特許権者】
【識別番号】518327936
【氏名又は名称】ダラム ユニヴァーシティ
【氏名又は名称原語表記】Durham University
(73)【特許権者】
【識別番号】518327947
【氏名又は名称】エム−アイ ドリリング フルイズ ユーケイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】M−I Drilling Fluids UK Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】モハメッド ,マサラット エイチ
(72)【発明者】
【氏名】グリーンウェル,ヒュー クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェアーブハドラッパ,マノハラ グディヤー
(72)【発明者】
【氏名】ホール,ジョン エイドリアン
(72)【発明者】
【氏名】アラベディ,ガサン セルマン
(72)【発明者】
【氏名】ホワイティング ,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ホッダー,マイケル ヘイワード
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−182987(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第105017485(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0027710(US,A1)
【文献】 米国特許第02588808(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K8/00−8/94、
E21B1/00−49/10、
C07C61/125
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油系掘削流体であって、
基油連続相と、
水性不連続相と、
マグネシウムアダマンタンカルボキシレート化合物を含む少なくとも1つのレオロジー調整剤と、
を含む、油系掘削流体。
【請求項2】
前記油系掘削流体が、前記油系掘削流体の総重量に基づいて、0.1重量%〜1.0重量%のレオロジー調整剤を含む、請求項1に記載の油系掘削流体。
【請求項3】
前記油系掘削流体が、掘削作業中の高圧高温条件下での前記油系掘削流体の使用に好適な物理的特徴を呈し、掘削作業中の高圧高温条件が、10,000psiを超える坑井圧力及び300°Fを超える坑井温度を含む、請求項1に記載の油系掘削流体。
【請求項4】
前記レオロジー調整剤を有する前記油系掘削流体が、前記油系掘削流体と同一の比重及び油対水比ならびに同一の比率で同一の成分を有するが、前記レオロジー調整剤を欠いている掘削流体と比較して、100rpmでの高温回転前及び高温回転後の両方でより低い粘度を有する、請求項1に記載の油系掘削流体。
【請求項5】
前記レオロジー調整剤を有する前記油系掘削流体が、前記油系掘削流体と同一の比重及び油対水比ならびに同一の比率で同一の成分を有するが、前記レオロジー調整剤を欠いている掘削流体と比較して、350°F(177℃)及び500psiでのより少ない高温回転後流体損失を有する、請求項1に記載の油系掘削流体。
【請求項6】
前記レオロジー調整剤を有する前記油系掘削流体が、前記油系掘削流体と同一の比重及び油対水比ならびに同一の比率で同一の成分を有するが、前記レオロジー調整剤を欠いている掘削流体と比較して、より高い電気的安定性を有する、請求項1に記載の油系掘削流体。
【請求項7】
油系掘削流体を調製する方法であって、
基油と、少なくとも1つの乳化剤と、少なくとも1つの湿潤剤とを混合して、第1の混合物を形成する工程と、
少なくとも1つのレオロジー調整剤を前記第1の混合物に添加し、混合して、第2の混合物を形成する工程であって、前記少なくとも1つのレオロジー調整剤が、マグネシウムアダマンタンカルボキシレート化合物を含むものである、工程と、
少なくとも1つの流体損失制御添加剤を前記第2の混合物に添加し、混合して、第3の混合物を形成する工程と、
ブライン溶液を前記第3の混合物に添加し、混合して、第4の混合物を形成する工程と、
増量添加剤を前記第4の混合物に添加し、混合して、前記油系掘削流体を形成する工程と、
を含む方法。
【請求項8】
前記マグネシウムアダマンタンカルボキシレート化合物が、
マグネシウム塩及び少なくとも1つのカルボン酸部分を有する、アダマンタンを含むダイヤモンドイド化合物を混合して、反応混合物を形成する工程と、
前記反応混合物を反応温度で反応時間にわたって水熱処理して、マグネシウムアダマンタンカルボン酸塩を形成する工程と、によって調製されるものである、請求項7に記載の方法
【請求項9】
前記マグネシウム塩及び前記ダイヤモンドイド化合物が、0.5:1〜1.0:1の前記反応混合物中のMg2+対ダイヤモンドイド化合物の比を提供する量で混合される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記マグネシウム塩が、Mg(OH)である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記反応温度が、100℃〜180℃である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記マグネシウムアダマンタンカルボン酸塩が、層状形態を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記油系掘削流体が、前記油系掘削流体の総重量に基づいて、0.1重量%〜1.0重量%のレオロジー調整剤を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
高圧高温条件下で地下層を掘削する方法であって、
前記地下層への坑井の前記掘削において、油系掘削流体を提供または使用する工程を含み、
前記油系掘削流体が、
基油連続相と、
水性不連続相と、
マグネシウムアダマンタンカルボキシレート化合物を含む少なくとも1つのレオロジー調整剤と、を含むものである方法。
【請求項15】
前記高圧高温条件が、10,000psiを超える坑井圧力及び300°Fを超える坑井温度を含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2016年3月17日に出願された米国仮特許出願第62/309,662号の利益を主張する。
背景
【技術分野】
【0002】
本明細書は一般に、石油工学において使用するための掘削流体及びこの掘削流体を組み込む掘削方法、ならびにより具体的には、掘削流体のためのレオロジー調整剤及び関連する掘削方法に関する。
【0003】
略語
Å=オングストローム
ACA=1−アダマンタンカルボン酸
AC=アダマンタンカルボキシレート
AHR=熱間圧延後
℃=摂氏度
cm=センチメートル(10−2メートル)
cm−1=波数
cP=センチポアズ
BHR=熱間圧延前
EDX=エネルギー分散型X線
ES=電気的安定性
°F=華氏度
FL=流体損失
FWHM=半値全幅
g=グラム
h=時間
HRTEM=高解像度透過型電子顕微鏡
IR=赤外線
lbf/100ft=100平方フィート当たりのポンド力(1lbf/100ft=0.4788Pa)
LDH=層状複水酸化物
μm=マイクロメートル(10−6メートル)
mL=ミリリットル(10−3リットル)
MPa=メガパスカル(10パスカル)
nm=ナノメートル(10−9メートル)
OBM=油性泥
Pa=パスカル
psi=平方インチ当たりのポンド
PV=塑性粘度
PXRD=粉末X線回折
rpm=毎分回転数
s=秒
SEM=走査型電子顕微鏡
SG=比重
TEM=透過型電子顕微鏡
TGA=熱重量分析
TMO=遷移金属酸化物
V=ボルト
YP=降伏点
wt.%=重量%
【背景技術】
【0004】
掘削流体または掘削泥は、坑井が掘削されている間、掘削作業を容易にするために坑井を通して循環される組成物である。一般に、掘削流体は、坑井からの掘削切削物の除去を容易にし得るか、ドリルビットを冷却し、潤滑し得るか、ドリルパイプ及びドリルビットの支持を補助し得るか、または坑井壁の統合性を維持するための静水頭を提供し、坑井の噴出を防ぎ得る。特定の掘削流体系は、特定の地層の特徴に従って掘削作業を最適化するように選択される。掘削流体または掘削泥がその機能を果たすためには、その最適な化学的及びレオロジー的特性を制御しなければならない。
【0005】
掘削に使用される油性泥(OBM)は典型的には、エマルジョンの連続相を構成する基油(または合成流体)と、エマルジョンの不連続相を構成する生理食塩水/水溶液などの水性溶液と、任意の乳化剤と、懸濁、重量または密度、油湿潤、流体損失または濾過制御、及びレオロジー調整剤のための他の任意の薬剤または添加剤とを含む。レオロジー調整剤は一般に、親有機性粘土または親有機性褐炭を含む。油系掘削流体は一般に、約50:50〜約95:5の体積の連続相対不連続相を含有し得る。
【0006】
深い坑井での掘削は、高圧及び高温(HPHT)を伴う地質条件によって複雑化する。当該産業で定義されたHPHT条件の定義は一般に、300°F(149℃)を超える坑井温度及び10,000psi(68.9MPa)を超える坑井圧力を含む。既知の掘削流体は典型的には、HPHT条件下で分解するためにHPHT掘削には好適ではない粘土系レオロジー調整剤を含有する。したがって、HPHT条件下で熱的に安定であり、かつ好適なレオロジー特性を有する、掘削流体及び掘削流体のためのレオロジー調整剤に対する継続的な必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
いくつかの実施形態に従うと、油系掘削流体が提供される。油系掘削流体は、基油連続相と、水性不連続相と、少なくとも1つのレオロジー調整剤とを含む。少なくとも1つのレオロジー調整剤は、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物を含む。
【0008】
いくつかの実施形態に従うと、油系掘削流体を調製するための方法が提供される。この方法は、基油と、少なくとも1つの乳化剤と、少なくとも1つの湿潤剤とを混合して、第1の混合物を形成することを含む。さらに、この方法は、第1の混合物に少なくとも1つのレオロジー調整剤を添加し、混合して、第2の混合物を形成することを含む。少なくとも1つのレオロジー調整剤は、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物を含む。加えて、この方法は、少なくとも1つの流体損失制御添加剤を第2の混合物に添加し、混合して、第3の混合物を形成することを含む。この方法はまた、ブライン溶液を第3の混合物に添加し、混合して、第4の混合物を形成することも含む。最後に、この方法は、増量添加剤を第4の混合物に添加し、混合して、油系掘削流体を形成することを含む。
【0009】
いくつかの実施形態に従うと、高圧高温条件下で地下層を掘削する方法が提供される。この方法は、地下層への坑井の掘削において、本開示の実施形態に従う油系掘削流体または本開示の実施形態の方法に従って調製された油系掘削流体を提供または使用することを含む。
【0010】
本明細書に記載される実施形態の追加の特徴及び利点は、以下の発明を実施するための形態に記載され、かつ一部はその説明から当業者に容易に明らかになるか、または発明を実施するための形態、特許請求の範囲、及び添付の図面を含む、本明細書に記載される実施形態を実施することによって認識されるだろう。
【0011】
前述の一般的な説明及び以下の発明を実施するための形態の両方は、様々な実施形態を説明し、特許請求される主題の性質及び特徴を理解するための概要または枠組みを提供することが意図されることを理解されたい。添付の図面は、様々な実施形態の追加の理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本明細書に記載される様々な実施形態を示し、説明とともに、特許請求される主題の原理及び操作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】0.5:1のモル比のMg2+対ACAを有する、Mg(OH)及び1−アダマンタンカルボン酸(ACA)から形成されたMg(0.5)−ACマグネシウムアダマンタンカルボン酸塩の粉末X線回折(PXRD)パターンである。
図2】0.5:1のモル比のMg2+対ACAを有する、Mg(OH)及び1−アダマンタンカルボン酸(ACA)から形成されたMg(0.5)−ACマグネシウムアダマンタンカルボン酸塩の赤外線(IR)スペクトルである。
図3】Mg(OH)−ACA、及びMg(0.5)−ACの積み重ねIRスペクトルを含む。
図4】(a)ACA、(b)Mg(0.5)−ACの積み重ね熱重量分析を含む。
図5A】本明細書の実施形態に従って調製されたMg(0.5)−ACのある倍率でのSEM顕微鏡写真である。
図5B】本明細書の実施形態に従って調製されたMg(0.5)−ACの別の倍率でのSEM顕微鏡写真である。
図5C】本明細書の実施形態に従って調製されたMg(0.5)−ACの別の倍率でのSEM顕微鏡写真である。
図5D】本明細書の実施形態に従って調製されたMg(0.5)−ACの別の倍率でのSEM顕微鏡写真である。
図6A】コロイド懸濁液から除去した、剥離されたMg(0.5)−AC粒子の選択領域の原子間力顕微鏡写真である。
図6B図6Aの顕微鏡写真におけるピーク力誤差の表示である。
図6C図6Aに示される経路を横切って測定した、剥離された粒子中の高さプロファイルのグラフである。
図7】1.0:1のモル比のMg2+対−ACAを有する、Mg(OH)及び1−アダマンタンカルボン酸(ACA)から形成されたMg(1.0)−ACマグネシウムアダマンタン塩のPXRDパターンである。
図8A】本明細書の実施形態に従って調製されたMg(1.0)−ACナノ複合材料のある倍率でのSEM顕微鏡写真である。
図8B】本明細書の実施形態に従って調製されたMg(1.0)−ACナノ複合材料の別の倍率でのSEM顕微鏡写真である。
図8C】本明細書の実施形態に従って調製されたMg(1.0)−ACナノ複合材料の別の倍率でのSEM顕微鏡写真である。
図8D】本明細書の実施形態に従って調製されたMg(1.0)−ACナノ複合材料の別の倍率でのSEM顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
油系掘削流体を、坑井作業における高圧高温(HPHT)条件での使用にとって好適にする、350°F及び500psiの圧力でのレオロジー的特性、熱間圧延後の電気的安定性、ゲル強度、及び流体損失特性を有する、本明細書における様々な実施形態に従う油系流体が説明される。油系流体は、レオロジー調整剤としてアルカリ土類金属ダイヤモンドイド化合物を含有する。したがって、油系流体を調製するための方法は、混合手順中にアルカリ土類金属ダイヤモンドイド化合物を添加することを含む。高圧高温条件下で地下層を掘削するための方法は、アルカリ土類金属ダイヤモンドイド化合物レオロジー調整剤を含有する油系掘削流体を使用することを含む。
【0014】
本明細書で使用される場合、「ダイヤモンドイド」という用語は、少なくとも1つのアダマンタン部分を含有する任意の化学化合物を指す。本明細書で使用される場合、「アルカリ土類金属ダイヤモンドイド化合物」という用語は、少なくとも1つのアダマンタン部分をさらに含有する、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、またはベリリウムの化合物を指す。
【0015】
ここで、油系掘削流体の実施形態を説明する。油系掘削流体を調製するための方法の実施形態、及び油系掘削流体を使用して高圧高温条件下で地下層を掘削するための方法の実施形態を以下に説明する。
【0016】
様々な実施形態に従う油系掘削流体は、基油連続相と、水性不連続相と、少なくとも1つのレオロジー調整剤とを含有し得る。少なくとも1つのレオロジー調整剤は、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物を含む。
【0017】
油系掘削流体の基油連続相は、エステルまたはオレフィンを含む合成油で構成されても、ディーゼル油または鉱油などの天然石油由来生成物であってもよい。合成油または天然石油生成物は、n−パラフィン、イソパラフィン、環状アルカン、分枝アルカン、またはこれらの混合物などの炭化水素で構成され得る。油系掘削流体は、油系掘削流体の総重量に基づいて、約10.0重量%〜20.0重量%の基油を含有し得る。追加の実施形態において、油系掘削流体は、油系掘削流体の総重量に基づいて、約13.0重量%〜17.0重量%の基油を含有し得る。
【0018】
油系掘削流体の水性不連続相は、水及び塩源を含み得る。いくつかの実施形態において、水性不連続相は、例えば、水と、塩化カルシウム、臭化カルシウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、及びこれらの組み合わせから選択される塩とからなる塩ブラインで構成され得る。油系掘削流体は、油系掘削流体の総重量に基づいて、約3.0重量%〜約6.0重量%の水性不連続相を含有し得る。いくつかの実施形態において、油系掘削流体は、50:50〜95:5、75:20〜95:5、85:15〜95:5、または例えば、90:10〜95:5の体積の油対水比を有し得る。油系掘削流体の油対水比は、油:水=基油Saraline185V+界面活性剤(複数可)+乳化剤(複数可)+湿潤剤(複数可):(ブライン×0.64)+水として計算される体積比である。ブラインは64体積%の水であるため、ブラインの体積の64%が水の体積として含まれる。
【0019】
油系掘削流体は、少なくとも1つのレオロジー調整剤を含有する。レオロジー調整剤は、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物を含む。レオロジー調整剤は一般に、例えば、粘度などの油系掘削流体のレオロジー的特性を調整する油系掘削流体の構成要素である。レオロジー調整剤は、掘削流体が坑井から切削物を除去し、非循環期間中に切削物及び増量材料を懸濁する能力を改善し得る。少なくとも1つのレオロジー調整剤はまた、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物に加えて、1つ以上のレオロジー調整剤も含み得る。追加のレオロジー調整剤は、掘削作業が実行される温度及び圧力での掘削作業において油系掘削流体の使用がより有利である様式で、油系掘削流体のレオロジーを調節することが知られているか、または決定されている任意の化合物であり得る。適切な追加のレオロジー調整剤の例としては、粘土またはポリマー、例えば、ヘクトライト、ベントナイト、セピオライト、アタパルジャイト、及びこれらの混合物などの親有機性粘土が挙げられる。親有機性粘土は粘土鉱物であり、粘土鉱物の表面にはそれらを油分散性にする化学薬品がコーティングされている。いくつかの実施形態において、油系掘削流体は、油系掘削流体の総重量に基づいて、合計約0.3重量%〜約1.0重量%のレオロジー調整剤を含有し得る。したがって、追加のレオロジー調整剤が存在しない場合、油系掘削流体は、油系掘削流体の総重量に基づいて、合計約0.2重量%〜約0.8重量%のアルカリ土類ダイヤモンドイド化合物を含有し得る。
【0020】
アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物の例としては、マグネシウムダイヤモンドイド化合物、カルシウムダイヤモンドイド化合物、ストロンチウムダイヤモンドイド化合物、バリウムダイヤモンドイド化合物、及びベリリウムダイヤモンドイド化合物が挙げられる。いくつかのそのようなダイヤモンドイド化合物において、ダイヤモンドイド構成成分は、アダマンタン部分であり得る。したがって、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物のさらなる例としては、マグネシウムアダマンタン化合物、カルシウムアダマンタン化合物、ストロンチウムアダマンタン化合物、バリウムアダマンタン化合物、及びベリリウムアダマンタン化合物が挙げられる。例示的な実施形態において、油系掘削流体のアルカリ土類ダイヤモンドイドレオロジー調整剤は、マグネシウムアダマンタン化合物、カルシウムアダマンタン化合物、またはバリウムアダマンタン化合物を含み得る。
【0021】
様々な実施形態に従うこれまでに記載された油系掘削流体は、レオロジー調整剤としてアルカリ土類ダイヤモンドイド化合物を含有し得る。ここで、マグネシウムアダマンタンカルボキシレート化合物を含むアルカリ土類ダイヤモンドイド化合物が調製され得る方法を、化合物の構造的特徴とともに記載する。油系掘削流体のアルカリ土類ダイヤモンドイド化合物は、例示的な合成技術によって調製されるアルカリ土類ダイヤモンドイド化合物に限定されないことを理解されたい。むしろ、油系掘削流体のアルカリ土類ダイヤモンドイド化合物は、その化合物がどのように合成されるかに関わらず、アルカリ土類金属及びダイヤモンドイド部分を含む、任意のアルカリ土類ダイヤモンドイド化合物であり得る。
【0022】
アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物を調製するための例示的な方法は、アルカリ土類金属塩及び少なくとも1つのカルボン酸部分を有するダイヤモンドイド化合物を混合して、反応混合物を形成することを含み得る。反応混合物中、アルカリ土類金属塩は、M2+と、酸または塩基に由来する対アニオンとを含有する任意のアルカリ土類金属化合物であり得、M2+は例えば、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、またはBe2+である。したがって、アルカリ土類金属塩の非限定的な例としては、M(OH)、MCl、MBr、M(NO、及びMSOが挙げられる。いくつかの合成経路において、アルカリ土類金属塩は、M(OH)であり得る。マグネシウム塩の非限定的な例としては、例えば、Mg(OH)、MgCl、MgBr、Mg(NO、及びMgSOが挙げられる。いくつかの合成経路において、アルカリ土類金属塩は、Mg(OH)であり得る。
【0023】
アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物を調製するために使用される反応混合物中、ダイヤモンドイド化合物は、少なくとも1つのカルボン酸部分を有する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのカルボン酸は、ダイヤモンドイド化合物の任意の非橋頭炭素原子に結合される。いくつかの合成経路において、ダイヤモンドイド化合物は、アダマンタン、ジアマンタン、またはトリアマンタンのカルボン酸から選択され得る。いくつかの合成経路において、ダイヤモンドイド化合物は、アダマンタン1−カルボン酸(ACA)であり得る。
【0024】
アルカリ土類金属塩及びダイヤモンドイド化合物の混合は、任意の好適な装置を使用して任意の好適な方法で実行して、密な混合を達成することができる。例えば、この混合は、乾燥粉末のブレンドまたは粉砕などの固相技術を使用して実行されてもよい。この混合は、水性溶媒または有機溶媒の補助によって、粉末と溶媒とを組み合わせ、続いて得られた溶液を撹拌することによって実行されてもよい。任意で、そのような湿式混合手順の後、マグネシウム塩及びダイヤモンドイド化合物をそれらの化学反応に好適な条件下に置く前に、溶媒の一部または全部をデカントまたは濾過してもよい。
【0025】
アルカリ土類金属アダマンタン塩を調製するための方法は、アルカリ土類金属塩とダイヤモンドイド化合物との反応混合物を反応温度で反応時間にわたって水熱処理して、アルカリ土類金属アダマンタンカルボン酸塩を形成することをさらに含み得る。水熱処理は一般に、反応混合物に水などの水性溶媒を添加することと、反応混合物をオートクレーブなどの反応容器に封入することと、反応容器を反応温度まで加熱して、高圧環境においてマグネシウムアダマンタンカルボン酸塩の結晶化を発生させることとを含み得る。
【0026】
反応温度は、アルカリ土類金属アダマンタンカルボン酸塩の結晶化も可能としながら、アルカリ土類金属塩とダイヤモンドイド化合物との反応が反応容器内で進行するのに十分な熱力学的エネルギーを提供するように選択され得る。反応温度は、反応の進行を可能にするのに十分に高くあるべきであるが、アダマンタンカルボン酸塩の分解または微結晶の溶媒和を避けるために十分に低くもなければならない。いくつかの合成経路において、反応温度は100℃〜200℃(100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃など)、または100℃〜200℃の間の任意の他の温度であり得る。いくつかの合成経路において、反応温度は100℃〜200℃であり得るが、他の反応は100℃より低い温度または200℃より高い温度で最適に発生し得ることが企図される。他の合成経路において、反応温度は100℃〜150℃または110℃〜150℃であり得る。一例において、アルカリ土類金属塩がMg(OH)である場合、反応温度は150℃±10℃であり得る。
【0027】
反応時間は、アルカリ土類金属アダマンタンカルボン酸塩がその反応温度で形成されるときに、結晶成長及び明確な形態が発生するのに十分な時間を提供するように選択され得る。いくつかの合成経路において、反応時間は12時間より長く(例えば、12時間〜72時間、24時間〜72時間、12時間〜48時間、または24時間〜48時間)あり得る。いくつかの合成経路において、反応時間は12時間より長くあり得るが、例えば、150℃より高い反応温度が選択される場合、反応時間が12時間より短くあり得ることが企図される。
【0028】
アルカリ土類金属アダマンタンカルボン酸塩を調製するための方法は、反応容器を冷却または減圧する工程、反応混合物を反応容器から除去する工程、濾過または任意の他の好適な技術によって反応混合物から溶媒を除去する工程、アルカリ土類金属アダマンタンカルボン酸塩を溶解しない水性または有機溶媒でアルカリ土類金属アダマンタンカルボン酸塩を洗浄する工程、アルカリ土類金属アダマンタンカルボン酸塩を乾燥させる工程などの慣例的な単離工程、またはこれらの工程の任意の組み合わせをさらに含み得る。いくつかの合成において、アルカリ土類金属アダマンタンカルボン酸塩は、反応容器中に存在するあらゆる溶媒からも真空濾過され、水で洗浄され、好適な温度で好適な時間乾燥されてもよい。例えば、アルカリ土類金属アダマンタンカルボン酸塩を、65℃で24時間乾燥させて、水熱処理による残留溶媒を除去してもよい。
【0029】
油系掘削流体のいくつかの実施形態において、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物は、前述のように調製されたマグネシウムアダマンタンカルボン酸塩であり得る。その後、マグネシウム塩及びACAを使用して調製されたマグネシウムアダマンタンカルボン酸塩は、Mg(x)−ACという簡略表記によって記載され、式中、xは、マグネシウムアダマンタンカルボン酸塩を調製するために使用される反応混合物中のMg2+対ACAの比であり、ACは、ACAのアダマンタン部分に由来する炭素支持体を表す。例えば、Mg(0.5)−ACは、0.5:1のMg2+対ACAのモル比のMg(OH)とACAとを反応させることによって調製される、マグネシウムアダマンタンカルボン酸塩を表す。同様に、Mg(1.0)−ACは、1.0:1のMg2+対ACAのモル比のMg(OH)とACAとを反応させることによって調製される、マグネシウムアダマンタンカルボン酸塩を表す。
【0030】
Mg(0.5)−ADなどのマグネシウムアダマンタン塩を調製するための例示的な方法において、反応混合物は、例えば、Mg(OH)などのマグネシウム塩とACAとを、0.5:1〜1.0:1の反応混合物中のMg2+対ACAの量で混合することによって調製され得る。反応混合物中のMg2+対ACAの具体的な比は、マグネシウムアダマンタンカルボン酸塩の全体的結晶形態を所望される形態へと影響を及ぼすように選択され得る。理論によって拘束されることを意図するものではないが、マグネシウムアダマンタンカルボン酸塩の結晶形態は、反応混合物中のMg2+対ACAの比を増加または減少させることによって調整することができると考えられる。Mg2+対ACAの比は0.5:1〜1.0:1から選択され得るが、マグネシウムアダマンタンカルボン酸塩の結晶形態は、Mg2+対ACAの比を0.5:1未満に減少させることによって、またはMg2+対ACAの比を1.0:1超に増加させることによってさらに調整することができることが企図される。それでもなお、飽和点が存在すると考えられ、それを超えて追加のマグネシウムイオンをマグネシウムアダマンタンカルボン酸塩に組み込むことはできない。
【0031】
一般に、Mg−AC化合物は、層状構造または形態を呈し得る。層状構造または形態のMg−AC化合物は、端対面の接続を欠く複数の層として現れ得る。複数の層は、各々が500よりも大きいか、または1000よりも大きいアスペクト比を有する個々の層で構成され得る。すなわち、個々の層の各々は、同じ層の厚さ測定値の少なくとも500倍または少なくとも1000倍の長さ測定値を有し得る。例えば、層は、10μm〜20μmの長さ及び10nm〜20nmの厚さを有し得る。これらの非常に薄い層は、転じて、特に特定の溶媒の存在下で剥離を呈し得る。Mg−AC材料はまた、極性有機溶媒などの様々な溶媒中で安定した分散液またはゲルを形成し得る。例えば、Mg−AC層は、エタノール及びアセトンなどの有機溶媒中で剥離し得る。理論よって拘束されることを意図するものではないが、Mg−ACにおいて剥離する高アスペクト比の層の存在は、Mg−ACがレオロジー調整剤として使用される掘削流体の全体的な特性に有益であり得ると考えられる。
【0032】
油系連続相、水性不連続相、及びアルカリ土類金属ダイヤモンドイド化合物を含むレオロジー調整剤に加えて、油系掘削流体は、油系掘削流体の特性をそれが意図されている用途に調整する1つ以上の任意の成分を含み得る。任意の成分としては、例えば、乳化剤、湿潤剤、アルカリ性制御剤、流体損失制御剤、懸濁剤、重量調整剤、密度調整剤、またはこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの添加剤が挙げられる。いくつかの実施形態において、油系掘削流体は、少なくとも1つの乳化剤、少なくとも1つの湿潤剤、少なくとも1つのアルカリ性制御剤、少なくとも1つの流体損失制御剤、少なくとも1つの懸濁剤、及び少なくとも1つの密度調整剤を含有し得る。
【0033】
任意の乳化剤を油系掘削流体に添加して、エマルジョンの形成を容易にし、油系掘削流体の基油連続相と油系掘削流体の水性不連続相との間の界面張力を低減することができる。乳化剤の例としては、界面活性剤、洗剤、リグノスルフェート(lignosulfate)、及び褐炭化合物が挙げられる。
【0034】
任意の湿潤剤を油系掘削流体に添加して、粘土及び頁岩などの材料が、球状化、ブーティングオフ、または泥のリングの形成などによって掘削装置に付着する傾向を低減することができる。湿潤剤の例としては、アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。湿潤剤が使用される場合、それらは、掘削流体の総重量に基づいて、油系掘削流体の約0.1重量%〜約1.0重量%を構成し得る。
【0035】
任意の流体損失制御剤を油系掘削流体に添加して、掘削流体から地下層内に失われる濾液の量を低減することができる。流体損失制御剤の例としては、親有機性(例えば、アミン処理された)褐炭、ベントナイト、製造されたポリマー、及びシンナーまたは解膠剤が挙げられる。流体損失制御剤が使用される場合、それらは、掘削流体の総重量に基づいて、油系掘削流体の約0.5重量%〜約1.5重量%を構成し得る。
【0036】
任意の懸濁剤を油系掘削流体に添加して、掘削流体の粘度を調節して、掘削流体構成成分の全てを懸濁させるのに十分に低い剪断速度で降伏点を有するようにしてもよく、これにより、掘削流体の構成成分の沈降を避けることができる。懸濁剤の例としては、脂肪酸及び繊維状材料が挙げられる。懸濁剤が使用される場合、それらは、掘削流体の総重量に基づいて、油系掘削流体の約0.01重量%〜約1.0重量%を構成し得る。
【0037】
任意の重量調整剤または密度調整剤を油系掘削流体に添加して、油系掘削流体の重量、密度、またはその両方を増加させてもよい。重量調整剤を使用して、形成圧力を制御し、応力が与えられる領域で引き起こされ得る頁岩の剥離または隆起の効果に対抗するのを助けることができる。水より密度が高く、掘削流体の他の特性に悪影響を及ぼさない任意の物質を、増量材料として使用することができる。重量調整剤または密度調整剤の例としては、重晶石(BaSO方鉛鉱(PbS)、赤鉄鉱(Fe)、磁鉄鉱(Fe製造された酸化鉄、チタン鉄鉱(FeO・TiO菱鉄鉱(FeCo天青石(celesite)(SRSO)、苦灰石(CaCO・MgCO)、及び方解石(CaCO)が挙げられる。重量調整剤または密度調整剤が使用される場合、それらは、掘削流体の総重量に基づいて、油系掘削流体の約65重量%〜約75重量%を構成し得る。
【0038】
したがって、いくつかの実施形態において、油系掘削流体は、13重量%〜17重量%の基油と、0重量%〜1.0重量%の乳化剤と、0重量%〜0.6重量%の湿潤剤と、0.3重量%〜0.8重量%のレオロジー調整剤と、0重量%〜1.5重量%の流体損失制御添加剤と、3.0重量%〜5.0重量%のブライン溶液と、0重量%〜75重量%の増量添加剤とを含有し得る。油系掘削流体は一般に、0.9〜2.2の比重を有し得る。
【0039】
前述の様々な実施形態のいずれかに従う油系掘削流体は、油系掘削流体を掘削作業中に高圧高温(HPHT)条件下で使用するのに好適にする物理的特性を呈するすように配合され得る。掘削作業中のHPHT条件は、10,000psiを超える坑井圧力及び300°F(149℃)を超える坑井温度を含み得る。例えば、アルカリ土類金属ダイヤモンドイド化合物レオロジー調整剤を含む油系掘削流体は、油系掘削流体と同一の比重及び油対水比ならびに同一の比率で同一の成分を有するが、レオロジー調整剤を欠いている掘削流体と比較して、100rpmでの熱間圧延前及び熱間圧延後の両方で、より低い粘度を有し得る。同様に、アルカリ土類金属ダイヤモンドイド化合物レオロジー調整剤を含む油系掘削流体は、油系掘削流体と同一の比重及び油対水比ならびに同一の比率で同一の成分を有するが、レオロジー調整剤を欠いている掘削流体と比較して、350°F(177℃)及び500psiでより少ない熱間圧延後の流体損失を有し得る。アルカリ土類金属ダイヤモンドイド化合物レオロジー調整剤を含む油系掘削流体は、油系掘削流体と同一の比重及び油対水比ならびに同一の比率で同一の成分を有するが、レオロジー調整剤を欠いている掘削流体と比較して、より高い電気的安定性を有し得る。
【0040】
様々な実施形態に従う油系掘削流体を前述したが、ここで、油系掘削流体を調製するための例示的な方法を説明する。油系掘削流体を調製するための方法は、標準混合技術を使用して、基油と、任意で少なくとも1つの乳化剤と、任意で少なくとも1つの湿潤剤とを混合して、第1の混合物を形成することを含み得る。第1の混合物の成分は、油系掘削流体の実施形態に関して前述した量を提供するように添加され得る。油系掘削流体を調製するための方法は、標準技術によって、少なくとも1つのレオロジー調整剤を第1の混合物に添加し、混合して、第2の混合物を形成することをさらに含み得、少なくとも1つのレオロジー調整剤は、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物を含む。繰り返すが、第2の混合物の成分は、油系掘削流体の実施形態に関して前述した量を提供するように添加され得る。レオロジー調整剤は、例えば、マグネシウムアダマンタンカルボキシレート化合物などの少なくとも1つのアルカリ土類ダイヤモンドイド化合物を含む。少なくとも1つのアルカリ土類ダイヤモンドイド化合物は、本明細書に従って記載される任意のアルカリ土類ダイヤモンドイド化合物であり得る。
【0041】
油系掘削流体を調製するための方法は、少なくとも1つの流体損失制御添加剤を第2の混合物に添加し、混合して、第3の混合物を形成することと、ブライン溶液を不連続相として第3の混合物に添加し、混合して、第4の混合物を形成することと、任意で、第4の混合物に増量添加剤を添加し、混合して、油系掘削流体を形成することとをさらに含み得る。
【0042】
前述のように調製されるか、または当業者によって理解される他の当該産業で許容される技術によって調製される油系掘削流体を含む、前述の油系掘削流体は、地下層の掘削作業、特に10,000psiを超える坑井圧力及び300°F(149℃)を超える坑井温度のHPHT条件下で実行される掘削作業での使用に非常に適切であり得る。したがって、高圧高温条件下で地下層を掘削するための方法の実施形態は、地下層への坑井の掘削において、本明細書に記載される任意の実施形態に従う油系掘削流体、または本明細書に記載される任意の実施形態に従って調製された油系掘削流体を提供または使用することを含み得る。
【0043】
高圧高温条件下で地下層を掘削するための方法において、アルカリ土類金属ダイヤモンドイド化合物レオロジー調整剤を含む油系掘削流体は、高圧高温条件下で、油系掘削流体と同一の比重及び油対水比ならびに同一の比率で同一の成分を有するが、アルカリ土類金属ダイヤモンドイド化合物レオロジー調整剤を欠いている掘削流体と比較して、より低い粘度を有し得る。同様に、アルカリ土類金属ダイヤモンドイド化合物レオロジー調整剤を含む油系掘削流体は、高圧高温条件下で、油系掘削流体と同一の比重及び油対水比ならびに同一の比率で同一の成分を有するが、アルカリ土類金属ダイヤモンドイド化合物レオロジー調整剤を欠いている掘削流体と比較して、より少ない流体損失を有し得る。同様に、アルカリ土類金属ダイヤモンドイド化合物レオロジー調整剤を含む油系掘削流体は、高圧高温条件下で、油系掘削流体と同一の比重及び油対水比ならびに同一の比率で同一の成分を有するが、アルカリ土類金属ダイヤモンドイド化合物レオロジー調整剤を欠いている掘削流体と比較して、より高い電気的安定性を有し得る。
【実施例】
【0044】
本明細書に記載される実施形態は、以下の実施例によってさらに明らかになるであろう。以下の実施例は、本開示の範囲またはその特許請求の範囲をいかなる特定の実施形態にも限定することは意図されないことを理解されたい。
【0045】
実施例1
Mg(0.5)−アダマンタンカルボン酸塩の合成及び物理的特性評価
Mg(OH)及び1−アダマンタンカルボン酸(ACA)を、1:2のモル比のMg2+対ACAをもたらすように混合して、反応混合物を形成し、その後、反応混合物をTeflon内張りのステンレス鋼製オートクレーブに移し、反応混合物を150℃で24時間加熱することによって、Mg−アダマンタンカルボキシレート(Mg−AC)化合物を水熱合成した。磁性撹拌機で1時間撹拌することによって、反応体を混合した。得られた生成物であるMg(0.5)−AC(式中、0.5は元のMg2+対ACA混合比を指し、「AC」はアダマンタンカルボキシレートを指す)を真空濾過し、多量の水で洗浄し、65℃で24時間乾燥させた。粉末X線回折(PXRD)、赤外線(IR)分光法、走査型電子顕微鏡(SEM)、熱重量分析(TGA)、原子間力顕微鏡(AFM)、及び透過型電子顕微鏡(TEM)によって、生成物を特性評価した。
【0046】
Mg(0.5)−ACをPXRDによって分析した。図1のPXRDスペクトルはそれぞれ、15.41Å、13.3Å、11.0Å、9.6Å、及び7.7Åのd−間隔に対応して、5.7°、6.6°、8.0°、9.2°、及び11.5°の2θ角度で一連の基底反射を呈した。強い反射は、15°〜17°の2θ角度を中心に発生し、2θ範囲30°〜50°でいくつかの低〜中強度の反射が現れた。加えて、2θ範囲57°〜60°で低強度の双晶反射が発生した。PXRDパターンにおけるこれらの特徴の全ては、層状構造を有する材料の形成を示す。
【0047】
Mg(0.5)−ACを、IR分光法でさらに特性評価した。図2のIRスペクトルは、1411cm−1及び1550cm−1でそれぞれ、COO基の対称及び非対称伸縮振動を示す。2900cm−1及び2847cm−1での振動は、アダマンタンカルボキシレートイオンのC−H結合から生じる。3200cm−1〜3400cm−1の範囲の広い振動は、水素結合ヒドロキシルイオンから生じる。約3600cm−1の小さな肩部は、非水素結合ヒドロキシルイオンから生じ、不純物として得られた生成物中の少量の前駆体Mg(OH)を示すと考えられる。1000cm−1未満の中強度の振動は、金属−酸素結合の屈曲及び伸縮から生じる。
【0048】
出発材料とMg(0.5)−ACとの比較を行って、不純物及び未反応出発物質の可能性を確認した。図3は、Mg(0.5)−AC、ACA、及びMg(OH)の積み重ねPXRDパターンを示す。Mg(0.5)−ACは、IR分析によっても確認された、出発Mg(OH)から生じる37.9°での低強度の反射を除いて、出発材料の反射に対応しない一連の反射を有する。15°〜17°の2θ範囲のACAの双晶ピーク(100%強度)もまた、Mg(0.5)−ACにある。ピーク位置及び半値全幅(FWHM)は、ピークがMg(0.5)−ACで1°を超えて移動し、広がっていることを示す。これは、出発ACAがMg(0.5)−ACに存在する可能性を排除する。
【0049】
10℃/分の加熱速度、30℃〜800℃のヘリウムガス雰囲気中での熱重量分析(TGA)によって、Mg(0.5)−ACの熱分解挙動を研究した。Mg(0.5)−ACは、図4のプロット(b)に示されるように、2段階の質量損失を示す。60℃付近の5重量%〜6重量%の質量損失は、吸着された水に起因し得る。TGAは、化合物が最大で450℃まで安定しており、450℃〜600℃の範囲でその質量の約85重量%が損失することを証明している。この範囲での質量損失は、アダマンタンカルボキシレート部分及びヒドロキシルイオンの損失に起因する。残渣はわずか約10重量%であり、これは高度に多孔性のナノスケールMgOの形成を示す。吸着された水の損失を除く、一段階の質量損失は、Mg(0.5)−ACの単相性を確認する。対照的に、かつ図4のプロット(a)に示されるように、出発ACAは全く異なる熱挙動を示す。アダマンタンカルボン酸は最大で100℃まで安定しており、120℃〜300℃において一段階で完全に分解することが見出された。理論によって拘束されることを意図するものではないが、Mg(0.5)−ACの異常に高い熱安定性は、Mg2+−アダマンタンカルボキシレートイオン結合の形成から生じ得ると考えられる。
【0050】
Mg(0.5)−ACの形態及び性質をSEMによってさらに特性評価した。図5A〜5DのMg(0.5)−ACの様々な倍率でのSEM画像は、層状形態を証明している。層は、数ミクロンの長さの寸法及び数ナノメートルの厚さで、非常に大きなアスペクト比を有する。層は、上下に積み重ねられ、多くの種類の層状固体に共通する端対面の共有接続を有するようには見えない。Mg(0.5)−ACにおける端対面の共有接続の欠如は、Mg(0.5)−ACが容易に剥離され得ることを示し得る。
【0051】
実施例2
Mg(0.5)−アダマンタンカルボン酸塩の分散及び剥離
その物理的特性に基づいて、Mg(0.5)−ACは、高アスペクト比及び高い熱安定性を有する層状構造であることが見出されている。したがって、Mg(0.5)−ACは、掘削流体のレオロジー調整剤としてMg(0.5)−ACを使用するのに適切な品質を有すると考えられる。Mg(0.5)−ACが様々なポリマーとブレンドする適合性、及び分散液を形成する能力を確認するために、様々な極性及び非極性溶媒を使用した。様々な物理的性質を有する6つの異なる溶媒を使用することによって、分散研究を実行した。100mLの様々な溶媒中の100mgのMg(0.5)−ACに、様々な溶媒中の生成物の分散研究を実行して、懸濁液を形成し、これを磁性撹拌機で24時間撹拌した。この研究の結果を表1に提供する。
【表1】
【0052】
Mg(0.5)−ACは、いかなる剥離も、または水によるいかなる種類の分散も示さず、これは、この化合物の疎水性を示す。エタノールなどの極性有機溶媒を使用した場合、Mg(0.5)−ACは、30分以内に分散液を形成した。Mg(0.5)−ACは、1,4−ジオキサン中に分散し、N,N−ジメチルホルムアミドで安定したゲルを形成した。Mg(0.5)−ACは、広く使用されているテトラヒドロフラン(THF)で安定した分散体を形成することが見出された。これは、Mg(0.5)−ACが極性有機溶媒との安定した分散液を形成する能力を有し、有機ポリマーを含む様々なナノ複合材料中で充填剤として使用できることを示す。一方、Mg(0.5)−ACは、非極性ペンタンでいかなる剥離も示さなかった。
【0053】
剥離されたMg(0.5)−ACコロイド状懸濁液をAFMによって特性評価して、剥離の程度を調べた。図6Aは、Mg−AC粒子のコロイド状エタノール懸濁液から除去した、剥離されたMg(0.5)−AC粒子の選択領域の位相幾何学的プロファイルを示す。図6Bは、同じ測定におけるピーク力誤差を示す。図6Cは、図6Aに示される経路に沿って測定された粒子の高さプロファイルである。剥離された試料は、10nm〜20nmの厚さ及び10μmを超える横方向寸法を有する層を示す。これらの寸法は、500〜1000のアスペクト比に相当する。
【0054】
実施例3
相形成及び形態に対するMgの過飽和の効果
初期反応混合物の過飽和は、いかなる材料の相形成においても重要な役割を果たす。実施例1で調整したMg(0.5)−ACは、1:2のMg2+−ACA比を有した。Mg−アダマンタン相形成に対するMg2+−ACA比の効果を特性評価するために、1:1のMg2+−ACA比をもたらすように初期反応体を混合したことを除いて、実施例1に記載されるものと同じ合成経路でマグネシウム(1.0)−ACを調整した。したがって、Mg(1.0)−ACは、実施例1のMg(0.5)−ACと比較して、より高いモル分率のMg2+で調製した。
【0055】
図7のMg(1.0)−ACのPXRDパターンは、Mg(0.5)−ACのPXRDと比較して、Mg−ACに対応する全ての反射を保持する(図1)。加えて、Mg(1.0)−AC PXRDスペクトルは、未反応のMg(OH)から生じると考えられるいくつかの高強度反射(*印で標識)を示す。Mg(1.0)−AC中の未反応出発材料の出現は、出発材料であるMg(OH)及びACAの化学量論比が、得られるMg−AC材料が単相材料であるかどうかに影響を与えることを示している。
【0056】
材料の形態に対するMg2+/ACAの効果を確認するために、Mg(1.0)−ACをSEMでさらに特性評価した。図8A〜8Dは、様々な倍率でのMg(1.0)−ACのSEM画像である。Mg(1.0)−ACの形態は、Mg(0.5)−ACの形態とは異なるようである。Mg(1.0)−ACのSEMは、Mg(0.5)−ACのように大きな層を有する層状形態を示すが、Mg(1.0)−ACの微結晶は、端対面の共有によって接続され、砂の花の形態を生じさせているように見える。したがって、出発反応混合物中のMg2+及びACAの濃度を変更することによって、Mg−ACに異なる形態及び配向を提供することが可能である。Mg−AC相に加えて、Mg(1.0)−ACのSEMはまた、未反応のMg(OH)の凝集した特徴のない粒子も示す。
【0057】
実施例4
掘削流体の配合及び特性評価
マグネシウムアダマンタン化合物を含有する掘削流体の物理的及びレオロジー的特性と、粘土調整剤を含有する掘削流体の物理的及びレオロジー的特性とを比較するために、2つの掘削流体を調製した。2つの掘削流体は、3つの独自の乳化剤及び油系流体配合物に特化した流体損失制御剤を含む、M−I SWACO RHADIANT(商標)系に基づいた。レオロジー調整剤としてBENTONE(登録商標)42を使用して、比較の基礎として理想的な掘削流体を調製した。BENTONE(登録商標)42は、合成基油系用に最適化されたヘクトライト有機粘土であり、Elementis Specialtiesから入手可能である。レオロジー調整剤として、比較掘削流体中のBENTONE(登録商標)42を、実施例1に従って調製した等重量のMg(0.5)−ACで置き換えることによって、第2の掘削流体を調製した。
【0058】
2つの掘削流体を、以下の成分、Shell(Houston,Texas)から入手可能な合成油掘削基流体であるSaraline185V、M−I SWACO,LLC(Houston,Texas)から入手可能なアミドアミン界面活性剤であるSUREMUL(登録商標)、M−I SWACO,LLC(Houston,Texas)から入手可能な湿潤剤であるSUREWET(登録商標)、M−I SWACO,LLC(Houston,Texas)から入手可能な非水性流体系での使用のための乳化剤であるMUL XT、M−I SWACO,LLC(Houston,Texas)から入手可能な濾過ケーク形成及び濾過制御を補助するためのヘクトライト粘土増粘剤であるVERSAGEL HT、M−I SWACO,LLC(Houston,Texas)から入手可能な油及び合成系掘削流体系での使用のために設計されたアミン処理タンニン濾過制御添加剤であるONE−TROL(商標)HT、M−I SWACO,LLC(Houston,Texas)から入手可能な油及び合成系掘削流体系での使用のために設計された濾過制御添加剤ECOTROL RD、ならびにM−I SWACO,LLC(Houston,Texas)から入手可能な重晶石(BaSO)増量剤であるM−I BARを使用して配合した。
【0059】
Hamilton Beach Mixerを使用して、772g(351mL)の量で両方の掘削流体を調製した。両方の掘削流体の配合を表2に提供する。掘削流体を調製するために、基油、乳化剤、及び湿潤剤をまず段階1の間に5分間混合し、その後段階2の間に粘度調整剤及びレオロジー調整剤を添加し、さらに10分間混合した。次に、段階3において、流体損失制御添加剤を添加し、10分間混合し、続いて段階4においてブライン及び段階5において重晶石をそれぞれ15分間及び20分間混合した。使用された基油及びバライトの量は、比較掘削流体のそれぞれの特性と同一である2.20の比重及び90.0の油/水比を提供するために、Mg(0.5)−AC配合物ではわずかに異なった。
【表2】
【0060】
Fann35粘度計を使用して、OBMの粘度を試験した。掘削流体を、それらの調製後にFann35加熱カップに入れ、流体が120°F(49℃)の温度に達するまで毎分600回転(rpm)で撹拌した。600rpm、300rpm、200rpm、100rpm、6rpm、及び3rpmの剪断速度で、熱間圧延前(BHR)及び熱間圧延後(AHR)の両方で粘度を測定した。熱間圧延は、エージングセルで350°F(177℃)及び150psiで16時間実行した。カップ内の掘削流体を600rpmで毎回撹拌した後、2回の読み取りを行い、その後それぞれ(1)10秒間及び(2)10分間静止させることによって、掘削流体のBHR及びAHRのゲル強度を測定した。
【0061】
各掘削流体を底部に開口部を有するステンレス鋼チャンバ内に置くことによって、濾過装置(API加圧濾過器OFITE(登録商標)装置)を使用することによって、熱間圧延掘削流体に対して各掘削流体の流体損失(FL)試験を実行した。濾紙をチャンバの底部に置き、掘削流体を350°F(177℃)で500psiの圧力に30分間曝露した。比較掘削流体の泥及びMg(0.5)−ACを含有する掘削流体の両方から回収した流体中に、水は存在しなかった。BHRとAHRの両方で、電気的安定度計を使用して、両方の流体の電気的安定性(ES)を測定した。
【0062】
粘度試験、流体損失試験、及び電気的安定性試験の結果を表3に提供する。
【表3】
【0063】
粘度調整剤としてマグネシウムアダマンタンを含有する掘削流体は、レオロジー調整剤としてBENTONE42を含有する比較掘削流体のそれよりも低い、100rpmでのBHR及びAHRの両方のその粘度のため、HPHT掘削流体として有望な結果を示した。100rpmでの粘度値は、坑井の環状部内の掘削流体中の粘度を反映する。したがって、数がより小さいほど掘削流体の性能がより高いことを示す。Mg−AD掘削流体のレオロジーは、熱間圧延後の6rpmでの比較掘削流体のレオロジーと類似しており、比較流体中よりもMg−AD流体中の熱分解が少ないことを示している。Mg−AC含有流体の350°F(177℃)及び500psiでのAHR流体損失(FL)は、AHR比較流体のそれよりも低かった。Mg−AC掘削流体のAHR電気的安定性(ES)もまた、比較流体のそれよりも大きく、これは、熱間圧延後に保持されたMg−AC掘削流体のより良好なエマルジョン安定性を示している。比較流体の塑性粘度とは異なり、Mg−AC掘削流体の塑性粘度はAHRを減少させ、高温では粘稠にならなかった。Mg−AC掘削流体の塑性粘度の減少は、掘削作業中に余分な動力を必要とせずに掘削する能力を維持する。反対に、比較流体中のように、高温への曝露後のより高いPVは、粘性流体を循環させるのに必要な余分な動力を意味する。
【0064】
したがって、2つの掘削流体からのレオロジーデータは、同等量のMg(0.5)−ACでの比較流体中のBENTONE42の置換が、許容される性能特徴だけでなく、改善された特徴も有する掘削流体配合物をもたらしたことを示す。したがって、マグネシウムアダマンタンカルボキシレート化合物は、とりわけ、HPHT掘削作業中に静的状態で掘削切削物を懸濁することができる掘削流体中で使用するのに高度に好適なレオロジー調整剤であると考えられる。
【0065】
ここで、油系掘削流体の様々な態様、その製造方法、及びそれを利用する高圧高温条件下での地下層への掘削方法が記載され、そのような態様は、他の様々な態様と組み合わせて利用され得ることを理解されたい。
【0066】
第1の態様において、本開示は、油系掘削流体を提供する。油系掘削流体は、基油連続相と、水性不連続相と、少なくとも1つのレオロジー調整剤とを含む。少なくとも1つのレオロジー調整剤は、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物を含む。
【0067】
第2の態様において、本開示は、第1の態様に記載の油系掘削流体を提供し、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物は、マグネシウムダイヤモンドイド化合物、カルシウムダイヤモンドイド化合物、ストロンチウムダイヤモンドイド化合物、バリウムダイヤモンドイド化合物、またはベリリウムダイヤモンドイド化合物から選択される。
【0068】
第3の態様において、本開示は、第1の態様に記載の油系掘削流体を提供し、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物は、マグネシウムアダマンタン化合物、カルシウムアダマンタン化合物、ストロンチウムアダマンタン化合物、バリウムアダマンタン化合物、またはベリリウムアダマンタン化合物から選択される。
【0069】
第4の態様において、本開示は、第1の態様に記載の油系掘削流体を提供し、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物は、マグネシウムアダマンタンカルボキシレート化合物である。
【0070】
第5の態様において、本開示は、第1の態様に記載の油系掘削流体を提供し、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物は、マグネシウム塩及び少なくとも1つのカルボン酸部分を有するダイヤモンドイド化合物を混合して、反応混合物を形成することと、この反応混合物を反応温度で反応時間にわたって水熱処理して、マグネシウムアダマンタンカルボン酸塩を形成することとによって調製される、マグネシウムアダマンタンカルボキシレート化合物である。
【0071】
第6の態様において、本開示は、第5の態様に記載の油系掘削流体を提供し、マグネシウム塩及びダイヤモンドイド化合物は、0.5:1〜1.0:1の反応混合物中のMg2+対ダイヤモンドイド化合物の比を提供する量で混合される。
【0072】
第7の態様において、本開示は、第5または第6の態様に記載の油系掘削流体を提供し、マグネシウム塩は、Mg(OH)である。
【0073】
第8の態様において、本開示は、第5〜第7の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、ダイヤモンドイド化合物は、1−アダマンタンカルボン酸である。
【0074】
第9の態様において、本開示は、第5〜第8の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、反応温度は、100℃〜180℃である。
【0075】
第10の態様において、本開示は、第5〜第9の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、反応温度は、140℃〜160℃である。
【0076】
第11の態様において、本開示は、第5〜第10の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、反応時間は、少なくとも12時間である。
【0077】
第12の態様において、本開示は、第5〜第11の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、マグネシウムアダマンタンカルボン酸塩は、層状形態を含む。
【0078】
第13の態様において、本開示は、第12の態様に記載の油系掘削流体を提供し、層状形態は、端対面の接続を欠く複数の層を含む。
【0079】
第14の態様において、本開示は、第12または第13の態様に記載の油系掘削流体を提供し、層状形態は、各々が500を超えるアスペクト比を有する複数の層を含む。
【0080】
第15の態様において、本開示は、第1〜第14の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、基油連続相は、エステルもしくはオレフィンを含む合成油、ディーゼル油、または鉱物油から選択される基油を含み、合成油、ディーゼル油、または鉱物油は、n−パラフィン、イソパラフィン、環状アルカン、分枝アルカン、またはこれらの混合物から選択される炭化水素を含む。
【0081】
第16の態様において、本開示は、第1〜第15の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、油系掘削流体は、50:50〜95:5の体積の油対水比を有する。
【0082】
第17の態様において、本開示は、第1〜第16の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、油系掘削流体は、乳化剤、湿潤剤、アルカリ性制御剤、流体損失制御剤、懸濁化剤、重量調整剤、密度調整剤、またはこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む。
【0083】
第18の態様において、本開示は、第1〜第16の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、油系掘削流体は、少なくとも1つの乳化剤、少なくとも1つの湿潤剤、少なくとも1つのアルカリ性制御剤、少なくとも1つの流体損失制御剤、少なくとも1つの懸濁化剤、及び少なくとも1つの密度調整剤をさらに含む。
【0084】
第19の態様において、本開示は、第1〜第18の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、水性不連続相は、塩化カルシウム、臭化カルシウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、及びこれらの組み合わせから選択されるブラインを含有する。
【0085】
第20の態様において、本開示は、第1〜第19の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、油系掘削流体は、油系掘削流体の総重量に基づいて、0.1重量%〜1.0重量%のレオロジー調整剤を含む。
【0086】
第21の態様において、本開示は、第1〜第20の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、油系掘削流体は、油系掘削流体の総重量に基づいて、
10重量%〜17重量%の基油と、
0.5重量%〜2.0重量%の乳化剤と、
0.2重量%〜0.6重量%の湿潤剤と、
0.2重量%〜1.0重量%のレオロジー調整剤と、
0.5重量%〜1.5重量%の流体損失制御添加剤と、
2.5重量%〜5.0重量%のブライン溶液と、
65.0重量%〜78.0重量%の増量添加剤と、を含む。
【0087】
第22の態様において、本開示は、第1〜第21の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、油系掘削流体は、掘削作業中の高圧高温条件下での油系掘削流体の使用に好適な物理的特徴を呈する。
【0088】
第23の態様において、本開示は、第1〜第22の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、掘削作業中の高圧高温条件は、10,000psiを超える坑井圧力及び300°Fを超える坑井温度を含む。
【0089】
第24の態様において、本開示は、第1〜第23の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、レオロジー調整剤を有する油系掘削流体は、油系掘削流体と同一の比重及び油対水比ならびに同一の比率で同一の成分を有するが、レオロジー調整剤を欠いている掘削流体と比較して、100rpmでの熱間圧延前及び熱間圧延後の両方でより低い粘度を有する。
【0090】
第25の態様において、本開示は、第1〜第24の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、レオロジー調整剤を有する油系掘削流体は、油系掘削流体と同一の比重及び油対水比ならびに同一の比率で同一の成分を有するが、レオロジー調整剤を欠いている掘削流体と比較して、350°F(177℃)及び500psiでより少ない熱間圧延後の流体損失を有する。
【0091】
第26の態様において、本開示は、第1〜第25の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、レオロジー調整剤を有する油系掘削流体は、油系掘削流体と同一の比重及び油対水比ならびに同一の比率で同一の成分を有するが、レオロジー調整剤を欠いている掘削流体と比較して、より高い電気的安定性を有する。
【0092】
第27の態様において、本開示は、油系掘削流体を調製するための方法を提供する。この方法は、基油と、少なくとも1つの乳化剤と、少なくとも1つの湿潤剤とを混合して、第1の混合物を形成する工程と、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物を含む少なくとも1つのレオロジー調整剤を第1の混合物に添加し、混合して、第2の混合物を形成する工程と、少なくとも1つの流体損失制御添加剤を第2の混合物に添加し、混合して、第3の混合物を形成する工程と、ブライン溶液を第3の混合物に添加し、混合して、第4の混合物を形成する工程と、増量添加剤を第4の混合物に添加して、油系掘削流体を形成する工程とを含む。
【0093】
第28の態様において、本開示は、第27の態様に記載の方法を提供し、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物は、マグネシウムダイヤモンドイド化合物、カルシウムダイヤモンドイド化合物、ストロンチウムダイヤモンドイド化合物、バリウムダイヤモンドイド化合物、またはベリリウムダイヤモンドイド化合物から選択される。
【0094】
第29の態様において、本開示は、第27の態様に記載の方法を提供し、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物は、マグネシウムアダマンタン化合物、カルシウムアダマンタン化合物、ストロンチウムアダマンタン化合物、バリウムアダマンタン化合物、またはベリリウムアダマンタン化合物から選択される。
【0095】
第30の態様において、本開示は、第27の態様に記載の方法を提供し、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物は、マグネシウムアダマンタン化合物である。
【0096】
第31の態様において、本発明は、第27の態様に記載の方法を提供し、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物は、マグネシウム塩と、少なくとも1つのカルボン酸部分を有するダイヤモンドイド化合物とを混合して、反応混合物を形成することと、この反応混合物を反応温度で反応時間にわたって水熱処理して、マグネシウムアダマンタンカルボン酸塩を形成することとによって調製されるマグネシウムアダマンタンカルボキシレート化合物である。
【0097】
第32の態様において、本開示は、第31の態様に記載の方法を提供し、マグネシウム塩及びダイヤモンドイド化合物は、0.5:1〜1.0:1の反応混合物中のMg2+対ダイヤモンドイド化合物の比を提供する量で混合される。
【0098】
第33の態様において、本開示は、第31または第32の態様に記載の方法を提供し、マグネシウム塩は、Mg(OH)である。
【0099】
第34の態様において、本開示は、第31〜第33の態様のいずれかに記載の方法を提供し、ダイヤモンドイド化合物は、1−アダマンタンカルボン酸である。
【0100】
第35の態様において、本開示は、第31〜第34の態様のいずれかに記載の方法を提供し、反応温度は、100℃〜180℃である。
【0101】
第36の態様において、本開示は、第31〜第35の態様のいずれかに記載の方法を提供し、反応温度は、140℃〜160℃である。
【0102】
第37の態様において、本開示は、第31〜第36の態様のいずれかに記載の方法を提供し、反応時間は、少なくとも12時間である。
【0103】
第38の態様において、本開示は、第31〜第37の態様のいずれかに記載の方法を提供し、マグネシウムアダマンタンカルボン酸塩は、層状形態を含む。
【0104】
第39の態様において、本開示は、第38の態様に記載の方法を提供し、層状形態は、端対面の接続を欠く複数の層を含む。
【0105】
第40の態様において、本開示は、第38または第39の態様に記載の方法を提供し、層状形態は、各々500を超えるアスペクト比を有する複数の層を含む。
【0106】
第41の態様において、本開示は、第27〜第40の態様のいずれかに記載の方法を提供し、基油連続相は、エステルもしくはオレフィンを含む合成油、ディーゼル油、または鉱物油から選択される基油を含み、合成油、ディーゼル油、または鉱物油は、n−パラフィン、イソパラフィン、環状アルカン、分枝アルカン、またはこれらの混合物から選択される炭化水素を含む。
【0107】
第42の態様において、本開示は、第27〜第41の態様のいずれかに記載の方法を提供し、油系掘削流体は、50:50〜95:5である。
【0108】
第43の態様において、本開示は、第27〜第42の態様のいずれかに記載の方法を提供し、油系掘削流体は、油系掘削流体の総重量に基づいて、0.1重量%〜1.0重量%のレオロジー調整剤を含む。
【0109】
第44の態様において、本開示は、第27〜第43の態様のいずれかに記載の方法を提供し、ブライン溶液は、塩化カルシウム、臭化カルシウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0110】
第45の態様において、本開示は、第27〜第44の態様のいずれかに記載の方法を提供し、油系掘削流体は、油系掘削流体の総重量に基づいて、
13重量%〜17重量%の基油と、
0.2重量%〜2.0重量%の乳化剤と、
0.1重量%〜1.0重量%の湿潤剤と、
0.2重量%〜1.0重量%のレオロジー調整剤と、
0.5重量%〜1.5重量%の流体損失制御添加剤と、
2.0重量%〜6.0重量%のブライン溶液と、
65重量%〜78重量%の増量添加剤と、を含む。
【0111】
第46の態様において、本開示は、高圧高温条件下で地下層を掘削するための方法を提供する。この方法は、地下層への坑井の掘削において、第1〜第26の態様のいずれか1つに従う油系掘削流体または第27〜第45の態様のいずれか1つに記載の方法に従って調製された油系掘削流体を提供または使用することを含む。
【0112】
当業者には、特許請求される主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される実施形態に対して様々な修正及び変更がなされ得ることが明らかであろう。したがって、本明細書は、本明細書に記載される様々な実施形態の修正及び変更を包含することが意図されるが、そのような修正及び変更が、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内に入ることを条件とする。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図8D