【実施例】
【0044】
本明細書に記載される実施形態は、以下の実施例によってさらに明らかになるであろう。以下の実施例は、本開示の範囲またはその特許請求の範囲をいかなる特定の実施形態にも限定することは意図されないことを理解されたい。
【0045】
実施例1
Mg(0.5)−アダマンタンカルボン酸塩の合成及び物理的特性評価
Mg(OH)
2及び1−アダマンタンカルボン酸(ACA)を、1:2のモル比のMg
2+対ACAをもたらすように混合して、反応混合物を形成し、その後、反応混合物をTeflon内張りのステンレス鋼製オートクレーブに移し、反応混合物を150℃で24時間加熱することによって、Mg−アダマンタンカルボキシレート(Mg−AC)化合物を水熱合成した。磁性撹拌機で1時間撹拌することによって、反応体を混合した。得られた生成物であるMg(0.5)−AC(式中、0.5は元のMg
2+対ACA混合比を指し、「AC」はアダマンタンカルボキシレートを指す)を真空濾過し、多量の水で洗浄し、65℃で24時間乾燥させた。粉末X線回折(PXRD)、赤外線(IR)分光法、走査型電子顕微鏡(SEM)、熱重量分析(TGA)、原子間力顕微鏡(AFM)、及び透過型電子顕微鏡(TEM)によって、生成物を特性評価した。
【0046】
Mg(0.5)−ACをPXRDによって分析した。
図1のPXRDスペクトルはそれぞれ、15.41Å、13.3Å、11.0Å、9.6Å、及び7.7Åのd−間隔に対応して、5.7°、6.6°、8.0°、9.2°、及び11.5°の2θ角度で一連の基底反射を呈した。強い反射は、15°〜17°の2θ角度を中心に発生し、2θ範囲30°〜50°でいくつかの低〜中強度の反射が現れた。加えて、2θ範囲57°〜60°で低強度の双晶反射が発生した。PXRDパターンにおけるこれらの特徴の全ては、層状構造を有する材料の形成を示す。
【0047】
Mg(0.5)−ACを、IR分光法でさらに特性評価した。
図2のIRスペクトルは、1411cm
−1及び1550cm
−1でそれぞれ、COO
−基の対称及び非対称伸縮振動を示す。2900cm
−1及び2847cm
−1での振動は、アダマンタンカルボキシレートイオンのC−H結合から生じる。3200cm
−1〜3400cm
−1の範囲の広い振動は、水素結合ヒドロキシルイオンから生じる。約3600cm
−1の小さな肩部は、非水素結合ヒドロキシルイオンから生じ、不純物として得られた生成物中の少量の前駆体Mg(OH)
2を示すと考えられる。1000cm
−1未満の中強度の振動は、金属−酸素結合の屈曲及び伸縮から生じる。
【0048】
出発材料とMg(0.5)−ACとの比較を行って、不純物及び未反応出発物質の可能性を確認した。
図3は、Mg(0.5)−AC、ACA、及びMg(OH)
2の積み重ねPXRDパターンを示す。Mg(0.5)−ACは、IR分析によっても確認された、出発Mg(OH)
2から生じる37.9°での低強度の反射を除いて、出発材料の反射に対応しない一連の反射を有する。15°〜17°の2θ範囲のACAの双晶ピーク(100%強度)もまた、Mg(0.5)−ACにある。ピーク位置及び半値全幅(FWHM)は、ピークがMg(0.5)−ACで1°を超えて移動し、広がっていることを示す。これは、出発ACAがMg(0.5)−ACに存在する可能性を排除する。
【0049】
10℃/分の加熱速度、30℃〜800℃のヘリウムガス雰囲気中での熱重量分析(TGA)によって、Mg(0.5)−ACの熱分解挙動を研究した。Mg(0.5)−ACは、
図4のプロット(b)に示されるように、2段階の質量損失を示す。60℃付近の5重量%〜6重量%の質量損失は、吸着された水に起因し得る。TGAは、化合物が最大で450℃まで安定しており、450℃〜600℃の範囲でその質量の約85重量%が損失することを証明している。この範囲での質量損失は、アダマンタンカルボキシレート部分及びヒドロキシルイオンの損失に起因する。残渣はわずか約10重量%であり、これは高度に多孔性のナノスケールMgOの形成を示す。吸着された水の損失を除く、一段階の質量損失は、Mg(0.5)−ACの単相性を確認する。対照的に、かつ
図4のプロット(a)に示されるように、出発ACAは全く異なる熱挙動を示す。アダマンタンカルボン酸は最大で100℃まで安定しており、120℃〜300℃において一段階で完全に分解することが見出された。理論によって拘束されることを意図するものではないが、Mg(0.5)−ACの異常に高い熱安定性は、Mg
2+−アダマンタンカルボキシレートイオン結合の形成から生じ得ると考えられる。
【0050】
Mg(0.5)−ACの形態及び性質をSEMによってさらに特性評価した。
図5A〜5DのMg(0.5)−ACの様々な倍率でのSEM画像は、層状形態を証明している。層は、数ミクロンの長さの寸法及び数ナノメートルの厚さで、非常に大きなアスペクト比を有する。層は、上下に積み重ねられ、多くの種類の層状固体に共通する端対面の共有接続を有するようには見えない。Mg(0.5)−ACにおける端対面の共有接続の欠如は、Mg(0.5)−ACが容易に剥離され得ることを示し得る。
【0051】
実施例2
Mg(0.5)−アダマンタンカルボン酸塩の分散及び剥離
その物理的特性に基づいて、Mg(0.5)−ACは、高アスペクト比及び高い熱安定性を有する層状構造であることが見出されている。したがって、Mg(0.5)−ACは、掘削流体のレオロジー調整剤としてMg(0.5)−ACを使用するのに適切な品質を有すると考えられる。Mg(0.5)−ACが様々なポリマーとブレンドする適合性、及び分散液を形成する能力を確認するために、様々な極性及び非極性溶媒を使用した。様々な物理的性質を有する6つの異なる溶媒を使用することによって、分散研究を実行した。100mLの様々な溶媒中の100mgのMg(0.5)−ACに、様々な溶媒中の生成物の分散研究を実行して、懸濁液を形成し、これを磁性撹拌機で24時間撹拌した。この研究の結果を表1に提供する。
【表1】
【0052】
Mg(0.5)−ACは、いかなる剥離も、または水によるいかなる種類の分散も示さず、これは、この化合物の疎水性を示す。エタノールなどの極性有機溶媒を使用した場合、Mg(0.5)−ACは、30分以内に分散液を形成した。Mg(0.5)−ACは、1,4−ジオキサン中に分散し、N,N−ジメチルホルムアミドで安定したゲルを形成した。Mg(0.5)−ACは、広く使用されているテトラヒドロフラン(THF)で安定した分散体を形成することが見出された。これは、Mg(0.5)−ACが極性有機溶媒との安定した分散液を形成する能力を有し、有機ポリマーを含む様々なナノ複合材料中で充填剤として使用できることを示す。一方、Mg(0.5)−ACは、非極性ペンタンでいかなる剥離も示さなかった。
【0053】
剥離されたMg(0.5)−ACコロイド状懸濁液をAFMによって特性評価して、剥離の程度を調べた。
図6Aは、Mg−AC粒子のコロイド状エタノール懸濁液から除去した、剥離されたMg(0.5)−AC粒子の選択領域の位相幾何学的プロファイルを示す。
図6Bは、同じ測定におけるピーク力誤差を示す。
図6Cは、
図6Aに示される経路に沿って測定された粒子の高さプロファイルである。剥離された試料は、10nm〜20nmの厚さ及び10μmを超える横方向寸法を有する層を示す。これらの寸法は、500〜1000のアスペクト比に相当する。
【0054】
実施例3
相形成及び形態に対するMgの過飽和の効果
初期反応混合物の過飽和は、いかなる材料の相形成においても重要な役割を果たす。実施例1で調整したMg(0.5)−ACは、1:2のMg
2+−ACA比を有した。Mg−アダマンタン相形成に対するMg
2+−ACA比の効果を特性評価するために、1:1のMg
2+−ACA比をもたらすように初期反応体を混合したことを除いて、実施例1に記載されるものと同じ合成経路でマグネシウム(1.0)−ACを調整した。したがって、Mg(1.0)−ACは、実施例1のMg(0.5)−ACと比較して、より高いモル分率のMg
2+で調製した。
【0055】
図7のMg(1.0)−ACのPXRDパターンは、Mg(0.5)−ACのPXRDと比較して、Mg−ACに対応する全ての反射を保持する(
図1)。加えて、Mg(1.0)−AC PXRDスペクトルは、未反応のMg(OH)
2から生じると考えられるいくつかの高強度反射(*印で標識)を示す。Mg(1.0)−AC中の未反応出発材料の出現は、出発材料であるMg(OH)
2及びACAの化学量論比が、得られるMg−AC材料が単相材料であるかどうかに影響を与えることを示している。
【0056】
材料の形態に対するMg
2+/ACAの効果を確認するために、Mg(1.0)−ACをSEMでさらに特性評価した。
図8A〜8Dは、様々な倍率でのMg(1.0)−ACのSEM画像である。Mg(1.0)−ACの形態は、Mg(0.5)−ACの形態とは異なるようである。Mg(1.0)−ACのSEMは、Mg(0.5)−ACのように大きな層を有する層状形態を示すが、Mg(1.0)−ACの微結晶は、端対面の共有によって接続され、砂の花の形態を生じさせているように見える。したがって、出発反応混合物中のMg
2+及びACAの濃度を変更することによって、Mg−ACに異なる形態及び配向を提供することが可能である。Mg−AC相に加えて、Mg(1.0)−ACのSEMはまた、未反応のMg(OH)
2の凝集した特徴のない粒子も示す。
【0057】
実施例4
掘削流体の配合及び特性評価
マグネシウムアダマンタン化合物を含有する掘削流体の物理的及びレオロジー的特性と、粘土調整剤を含有する掘削流体の物理的及びレオロジー的特性とを比較するために、2つの掘削流体を調製した。2つの掘削流体は、3つの独自の乳化剤及び油系流体配合物に特化した流体損失制御剤を含む、M−I SWACO RHADIANT(商標)系に基づいた。レオロジー調整剤としてBENTONE(登録商標)42を使用して、比較の基礎として理想的な掘削流体を調製した。BENTONE(登録商標)42は、合成基油系用に最適化されたヘクトライト有機粘土であり、Elementis Specialtiesから入手可能である。レオロジー調整剤として、比較掘削流体中のBENTONE(登録商標)42を、実施例1に従って調製した等重量のMg(0.5)−ACで置き換えることによって、第2の掘削流体を調製した。
【0058】
2つの掘削流体を、以下の成分、Shell(Houston,Texas)から入手可能な合成油掘削基流体であるSaraline185V、M−I SWACO,LLC(Houston,Texas)から入手可能なアミドアミン界面活性剤であるSUREMUL(登録商標)、M−I SWACO,LLC(Houston,Texas)から入手可能な湿潤剤であるSUREWET(登録商標)、M−I SWACO,LLC(Houston,Texas)から入手可能な非水性流体系での使用のための乳化剤であるMUL XT、M−I SWACO,LLC(Houston,Texas)から入手可能な濾過ケーク形成及び濾過制御を補助するためのヘクトライト粘土増粘剤であるVERSAGEL HT、M−I SWACO,LLC(Houston,Texas)から入手可能な油及び合成系掘削流体系での使用のために設計されたアミン処理タンニン濾過制御添加剤であるONE−TROL(商標)HT、M−I SWACO,LLC(Houston,Texas)から入手可能な油及び合成系掘削流体系での使用のために設計された濾過制御添加剤ECOTROL RD、ならびにM−I SWACO,LLC(Houston,Texas)から入手可能な重晶石(BaSO
4)増量剤であるM−I BARを使用して配合した。
【0059】
Hamilton Beach Mixerを使用して、772g(351mL)の量で両方の掘削流体を調製した。両方の掘削流体の配合を表2に提供する。掘削流体を調製するために、基油、乳化剤、及び湿潤剤をまず段階1の間に5分間混合し、その後段階2の間に粘度調整剤及びレオロジー調整剤を添加し、さらに10分間混合した。次に、段階3において、流体損失制御添加剤を添加し、10分間混合し、続いて段階4においてブライン及び段階5において重晶石をそれぞれ15分間及び20分間混合した。使用された基油及びバライトの量は、比較掘削流体のそれぞれの特性と同一である2.20の比重及び90.0の油/水比を提供するために、Mg(0.5)−AC配合物ではわずかに異なった。
【表2】
【0060】
Fann35粘度計を使用して、OBMの粘度を試験した。掘削流体を、それらの調製後にFann35加熱カップに入れ、流体が120°F(49℃)の温度に達するまで毎分600回転(rpm)で撹拌した。600rpm、300rpm、200rpm、100rpm、6rpm、及び3rpmの剪断速度で、熱間圧延前(BHR)及び熱間圧延後(AHR)の両方で粘度を測定した。熱間圧延は、エージングセルで350°F(177℃)及び150psiで16時間実行した。カップ内の掘削流体を600rpmで毎回撹拌した後、2回の読み取りを行い、その後それぞれ(1)10秒間及び(2)10分間静止させることによって、掘削流体のBHR及びAHRのゲル強度を測定した。
【0061】
各掘削流体を底部に開口部を有するステンレス鋼チャンバ内に置くことによって、濾過装置(API加圧濾過器OFITE(登録商標)装置)を使用することによって、熱間圧延掘削流体に対して各掘削流体の流体損失(FL)試験を実行した。濾紙をチャンバの底部に置き、掘削流体を350°F(177℃)で500psiの圧力に30分間曝露した。比較掘削流体の泥及びMg(0.5)−ACを含有する掘削流体の両方から回収した流体中に、水は存在しなかった。BHRとAHRの両方で、電気的安定度計を使用して、両方の流体の電気的安定性(ES)を測定した。
【0062】
粘度試験、流体損失試験、及び電気的安定性試験の結果を表3に提供する。
【表3】
【0063】
粘度調整剤としてマグネシウムアダマンタンを含有する掘削流体は、レオロジー調整剤としてBENTONE42を含有する比較掘削流体のそれよりも低い、100rpmでのBHR及びAHRの両方のその粘度のため、HPHT掘削流体として有望な結果を示した。100rpmでの粘度値は、坑井の環状部内の掘削流体中の粘度を反映する。したがって、数がより小さいほど掘削流体の性能がより高いことを示す。Mg−AD掘削流体のレオロジーは、熱間圧延後の6rpmでの比較掘削流体のレオロジーと類似しており、比較流体中よりもMg−AD流体中の熱分解が少ないことを示している。Mg−AC含有流体の350°F(177℃)及び500psiでのAHR流体損失(FL)は、AHR比較流体のそれよりも低かった。Mg−AC掘削流体のAHR電気的安定性(ES)もまた、比較流体のそれよりも大きく、これは、熱間圧延後に保持されたMg−AC掘削流体のより良好なエマルジョン安定性を示している。比較流体の塑性粘度とは異なり、Mg−AC掘削流体の塑性粘度はAHRを減少させ、高温では粘稠にならなかった。Mg−AC掘削流体の塑性粘度の減少は、掘削作業中に余分な動力を必要とせずに掘削する能力を維持する。反対に、比較流体中のように、高温への曝露後のより高いPVは、粘性流体を循環させるのに必要な余分な動力を意味する。
【0064】
したがって、2つの掘削流体からのレオロジーデータは、同等量のMg(0.5)−ACでの比較流体中のBENTONE42の置換が、許容される性能特徴だけでなく、改善された特徴も有する掘削流体配合物をもたらしたことを示す。したがって、マグネシウムアダマンタンカルボキシレート化合物は、とりわけ、HPHT掘削作業中に静的状態で掘削切削物を懸濁することができる掘削流体中で使用するのに高度に好適なレオロジー調整剤であると考えられる。
【0065】
ここで、油系掘削流体の様々な態様、その製造方法、及びそれを利用する高圧高温条件下での地下層への掘削方法が記載され、そのような態様は、他の様々な態様と組み合わせて利用され得ることを理解されたい。
【0066】
第1の態様において、本開示は、油系掘削流体を提供する。油系掘削流体は、基油連続相と、水性不連続相と、少なくとも1つのレオロジー調整剤とを含む。少なくとも1つのレオロジー調整剤は、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物を含む。
【0067】
第2の態様において、本開示は、第1の態様に記載の油系掘削流体を提供し、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物は、マグネシウムダイヤモンドイド化合物、カルシウムダイヤモンドイド化合物、ストロンチウムダイヤモンドイド化合物、バリウムダイヤモンドイド化合物、またはベリリウムダイヤモンドイド化合物から選択される。
【0068】
第3の態様において、本開示は、第1の態様に記載の油系掘削流体を提供し、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物は、マグネシウムアダマンタン化合物、カルシウムアダマンタン化合物、ストロンチウムアダマンタン化合物、バリウムアダマンタン化合物、またはベリリウムアダマンタン化合物から選択される。
【0069】
第4の態様において、本開示は、第1の態様に記載の油系掘削流体を提供し、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物は、マグネシウムアダマンタンカルボキシレート化合物である。
【0070】
第5の態様において、本開示は、第1の態様に記載の油系掘削流体を提供し、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物は、マグネシウム塩及び少なくとも1つのカルボン酸部分を有するダイヤモンドイド化合物を混合して、反応混合物を形成することと、この反応混合物を反応温度で反応時間にわたって水熱処理して、マグネシウムアダマンタンカルボン酸塩を形成することとによって調製される、マグネシウムアダマンタンカルボキシレート化合物である。
【0071】
第6の態様において、本開示は、第5の態様に記載の油系掘削流体を提供し、マグネシウム塩及びダイヤモンドイド化合物は、0.5:1〜1.0:1の反応混合物中のMg
2+対ダイヤモンドイド化合物の比を提供する量で混合される。
【0072】
第7の態様において、本開示は、第5または第6の態様に記載の油系掘削流体を提供し、マグネシウム塩は、Mg(OH)
2である。
【0073】
第8の態様において、本開示は、第5〜第7の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、ダイヤモンドイド化合物は、1−アダマンタンカルボン酸である。
【0074】
第9の態様において、本開示は、第5〜第8の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、反応温度は、100℃〜180℃である。
【0075】
第10の態様において、本開示は、第5〜第9の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、反応温度は、140℃〜160℃である。
【0076】
第11の態様において、本開示は、第5〜第10の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、反応時間は、少なくとも12時間である。
【0077】
第12の態様において、本開示は、第5〜第11の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、マグネシウムアダマンタンカルボン酸塩は、層状形態を含む。
【0078】
第13の態様において、本開示は、第12の態様に記載の油系掘削流体を提供し、層状形態は、端対面の接続を欠く複数の層を含む。
【0079】
第14の態様において、本開示は、第12または第13の態様に記載の油系掘削流体を提供し、層状形態は、各々が500を超えるアスペクト比を有する複数の層を含む。
【0080】
第15の態様において、本開示は、第1〜第14の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、基油連続相は、エステルもしくはオレフィンを含む合成油、ディーゼル油、または鉱物油から選択される基油を含み、合成油、ディーゼル油、または鉱物油は、n−パラフィン、イソパラフィン、環状アルカン、分枝アルカン、またはこれらの混合物から選択される炭化水素を含む。
【0081】
第16の態様において、本開示は、第1〜第15の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、油系掘削流体は、50:50〜95:5の体積の油対水比を有する。
【0082】
第17の態様において、本開示は、第1〜第16の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、油系掘削流体は、乳化剤、湿潤剤、アルカリ性制御剤、流体損失制御剤、懸濁化剤、重量調整剤、密度調整剤、またはこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む。
【0083】
第18の態様において、本開示は、第1〜第16の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、油系掘削流体は、少なくとも1つの乳化剤、少なくとも1つの湿潤剤、少なくとも1つのアルカリ性制御剤、少なくとも1つの流体損失制御剤、少なくとも1つの懸濁化剤、及び少なくとも1つの密度調整剤をさらに含む。
【0084】
第19の態様において、本開示は、第1〜第18の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、水性不連続相は、塩化カルシウム、臭化カルシウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、及びこれらの組み合わせから選択されるブラインを含有する。
【0085】
第20の態様において、本開示は、第1〜第19の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、油系掘削流体は、油系掘削流体の総重量に基づいて、0.1重量%〜1.0重量%のレオロジー調整剤を含む。
【0086】
第21の態様において、本開示は、第1〜第20の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、油系掘削流体は、油系掘削流体の総重量に基づいて、
10重量%〜17重量%の基油と、
0.5重量%〜2.0重量%の乳化剤と、
0.2重量%〜0.6重量%の湿潤剤と、
0.2重量%〜1.0重量%のレオロジー調整剤と、
0.5重量%〜1.5重量%の流体損失制御添加剤と、
2.5重量%〜5.0重量%のブライン溶液と、
65.0重量%〜78.0重量%の増量添加剤と、を含む。
【0087】
第22の態様において、本開示は、第1〜第21の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、油系掘削流体は、掘削作業中の高圧高温条件下での油系掘削流体の使用に好適な物理的特徴を呈する。
【0088】
第23の態様において、本開示は、第1〜第22の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、掘削作業中の高圧高温条件は、10,000psiを超える坑井圧力及び300°Fを超える坑井温度を含む。
【0089】
第24の態様において、本開示は、第1〜第23の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、レオロジー調整剤を有する油系掘削流体は、油系掘削流体と同一の比重及び油対水比ならびに同一の比率で同一の成分を有するが、レオロジー調整剤を欠いている掘削流体と比較して、100rpmでの熱間圧延前及び熱間圧延後の両方でより低い粘度を有する。
【0090】
第25の態様において、本開示は、第1〜第24の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、レオロジー調整剤を有する油系掘削流体は、油系掘削流体と同一の比重及び油対水比ならびに同一の比率で同一の成分を有するが、レオロジー調整剤を欠いている掘削流体と比較して、350°F(177℃)及び500psiでより少ない熱間圧延後の流体損失を有する。
【0091】
第26の態様において、本開示は、第1〜第25の態様のいずれかに記載の油系掘削流体を提供し、レオロジー調整剤を有する油系掘削流体は、油系掘削流体と同一の比重及び油対水比ならびに同一の比率で同一の成分を有するが、レオロジー調整剤を欠いている掘削流体と比較して、より高い電気的安定性を有する。
【0092】
第27の態様において、本開示は、油系掘削流体を調製するための方法を提供する。この方法は、基油と、少なくとも1つの乳化剤と、少なくとも1つの湿潤剤とを混合して、第1の混合物を形成する工程と、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物を含む少なくとも1つのレオロジー調整剤を第1の混合物に添加し、混合して、第2の混合物を形成する工程と、少なくとも1つの流体損失制御添加剤を第2の混合物に添加し、混合して、第3の混合物を形成する工程と、ブライン溶液を第3の混合物に添加し、混合して、第4の混合物を形成する工程と、増量添加剤を第4の混合物に添加して、油系掘削流体を形成する工程とを含む。
【0093】
第28の態様において、本開示は、第27の態様に記載の方法を提供し、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物は、マグネシウムダイヤモンドイド化合物、カルシウムダイヤモンドイド化合物、ストロンチウムダイヤモンドイド化合物、バリウムダイヤモンドイド化合物、またはベリリウムダイヤモンドイド化合物から選択される。
【0094】
第29の態様において、本開示は、第27の態様に記載の方法を提供し、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物は、マグネシウムアダマンタン化合物、カルシウムアダマンタン化合物、ストロンチウムアダマンタン化合物、バリウムアダマンタン化合物、またはベリリウムアダマンタン化合物から選択される。
【0095】
第30の態様において、本開示は、第27の態様に記載の方法を提供し、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物は、マグネシウムアダマンタン化合物である。
【0096】
第31の態様において、本発明は、第27の態様に記載の方法を提供し、アルカリ土類ダイヤモンドイド化合物は、マグネシウム塩と、少なくとも1つのカルボン酸部分を有するダイヤモンドイド化合物とを混合して、反応混合物を形成することと、この反応混合物を反応温度で反応時間にわたって水熱処理して、マグネシウムアダマンタンカルボン酸塩を形成することとによって調製されるマグネシウムアダマンタンカルボキシレート化合物である。
【0097】
第32の態様において、本開示は、第31の態様に記載の方法を提供し、マグネシウム塩及びダイヤモンドイド化合物は、0.5:1〜1.0:1の反応混合物中のMg
2+対ダイヤモンドイド化合物の比を提供する量で混合される。
【0098】
第33の態様において、本開示は、第31または第32の態様に記載の方法を提供し、マグネシウム塩は、Mg(OH)
2である。
【0099】
第34の態様において、本開示は、第31〜第33の態様のいずれかに記載の方法を提供し、ダイヤモンドイド化合物は、1−アダマンタンカルボン酸である。
【0100】
第35の態様において、本開示は、第31〜第34の態様のいずれかに記載の方法を提供し、反応温度は、100℃〜180℃である。
【0101】
第36の態様において、本開示は、第31〜第35の態様のいずれかに記載の方法を提供し、反応温度は、140℃〜160℃である。
【0102】
第37の態様において、本開示は、第31〜第36の態様のいずれかに記載の方法を提供し、反応時間は、少なくとも12時間である。
【0103】
第38の態様において、本開示は、第31〜第37の態様のいずれかに記載の方法を提供し、マグネシウムアダマンタンカルボン酸塩は、層状形態を含む。
【0104】
第39の態様において、本開示は、第38の態様に記載の方法を提供し、層状形態は、端対面の接続を欠く複数の層を含む。
【0105】
第40の態様において、本開示は、第38または第39の態様に記載の方法を提供し、層状形態は、各々500を超えるアスペクト比を有する複数の層を含む。
【0106】
第41の態様において、本開示は、第27〜第40の態様のいずれかに記載の方法を提供し、基油連続相は、エステルもしくはオレフィンを含む合成油、ディーゼル油、または鉱物油から選択される基油を含み、合成油、ディーゼル油、または鉱物油は、n−パラフィン、イソパラフィン、環状アルカン、分枝アルカン、またはこれらの混合物から選択される炭化水素を含む。
【0107】
第42の態様において、本開示は、第27〜第41の態様のいずれかに記載の方法を提供し、油系掘削流体は、50:50〜95:5である。
【0108】
第43の態様において、本開示は、第27〜第42の態様のいずれかに記載の方法を提供し、油系掘削流体は、油系掘削流体の総重量に基づいて、0.1重量%〜1.0重量%のレオロジー調整剤を含む。
【0109】
第44の態様において、本開示は、第27〜第43の態様のいずれかに記載の方法を提供し、ブライン溶液は、塩化カルシウム、臭化カルシウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0110】
第45の態様において、本開示は、第27〜第44の態様のいずれかに記載の方法を提供し、油系掘削流体は、油系掘削流体の総重量に基づいて、
13重量%〜17重量%の基油と、
0.2重量%〜2.0重量%の乳化剤と、
0.1重量%〜1.0重量%の湿潤剤と、
0.2重量%〜1.0重量%のレオロジー調整剤と、
0.5重量%〜1.5重量%の流体損失制御添加剤と、
2.0重量%〜6.0重量%のブライン溶液と、
65重量%〜78重量%の増量添加剤と、を含む。
【0111】
第46の態様において、本開示は、高圧高温条件下で地下層を掘削するための方法を提供する。この方法は、地下層への坑井の掘削において、第1〜第26の態様のいずれか1つに従う油系掘削流体または第27〜第45の態様のいずれか1つに記載の方法に従って調製された油系掘削流体を提供または使用することを含む。
【0112】
当業者には、特許請求される主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される実施形態に対して様々な修正及び変更がなされ得ることが明らかであろう。したがって、本明細書は、本明細書に記載される様々な実施形態の修正及び変更を包含することが意図されるが、そのような修正及び変更が、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内に入ることを条件とする。