特許第6902662号(P6902662)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902662
(24)【登録日】2021年6月23日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】ガス分離方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20210701BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20210701BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20210701BHJP
   C01B 39/54 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   B01D53/22
   B01D71/02 500
   C01B32/50
   C01B39/54
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-125797(P2020-125797)
(22)【出願日】2020年7月22日
(62)【分割の表示】特願2019-509263(P2019-509263)の分割
【原出願日】2018年3月15日
(65)【公開番号】特開2020-175392(P2020-175392A)
(43)【公開日】2020年10月29日
【審査請求日】2020年7月27日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/008312
(32)【優先日】2018年3月5日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-71566(P2017-71566)
(32)【優先日】2017年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】萩尾 健史
(72)【発明者】
【氏名】野田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】宮原 誠
(72)【発明者】
【氏名】清水 克哉
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/121889(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/121888(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/121887(WO,A1)
【文献】 特開2016−169139(JP,A)
【文献】 特開2016−147801(JP,A)
【文献】 特開2016−204245(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0137518(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00 − 71/82
C01B 39/00 − 39/54
C01B 32/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜表面にX線を照射して得られるX線回折パターンにおける(004)面のピーク強度が(110)面のピーク強度の3倍以上であるAFX構造のゼオライト膜を用いて、二酸化炭素とメタンを含む混合ガスから二酸化炭素を分離する、
ガス分離方法。
【請求項2】
膜表面にX線を照射して得られるX線回折パターンにおける(004)面のピーク強度が(110)面のピーク強度の3倍以上であるAFX構造のゼオライト膜を用いて、窒素とメタンを含む混合ガスから窒素を分離する、
ガス分離方法。
【請求項3】
前記AFX構造のゼオライト膜において、(004)面のピーク強度が、(110)面のピーク強度の3.5倍以上である、
請求項1又は2に記載のガス分離方法。
【請求項4】
前記AFX構造のゼオライト膜は、Si、Al、Pのうちいずれか2つ以上を含有する、
請求項1乃至3のいずれかに記載のガス分離方法。
【請求項5】
前記AFX構造のゼオライト膜は、少なくともSi、Al、P、及びOを含有する、
請求項4に記載のガス分離方法。
【請求項6】
前記AFX構造のゼオライト膜は、少なくともSi、Al、及びOを含有する、
請求項4に記載のガス分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゼオライト膜を用いて気体混合物または液体混合物から所望成分を分離、濃縮する手法が提案されている。
【0003】
具体的に、気体分離用のゼオライト膜としては、例えばDDR構造のゼオライト膜、LTA構造のゼオライト膜、FAU構造のゼオライト膜、MFI構造のゼオライト膜、CHA構造のゼオライト膜などが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、液体分離用のゼオライト膜としては、例えばLTA構造のゼオライト膜、MOR構造のゼオライト膜、FER構造のゼオライト膜、CHA構造のゼオライト膜などが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/125660号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、AFX構造のゼオライトの膜化に成功したことを示す報告例はなく、実用可能なAFX構造のゼオライト膜の開発が期待されていた。
【0007】
本発明は、上述の状況に鑑みてなされたものであり、実用可能なAFX構造のゼオライト膜を用いたガス分離方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1側面に係るガス分離方法では、AFX構造のゼオライト膜の膜表面にX線を照射して得られるX線回折パターンにおける(004)面のピーク強度が(110)面のピーク強度の3倍以上であるAFX構造のゼオライト膜を用いて、二酸化炭素とメタンを含む混合ガスから二酸化炭素を分離する。
【0009】
本発明の第2側面に係るガス分離方法では、AFX構造のゼオライト膜の膜表面にX線を照射して得られるX線回折パターンにおける(004)面のピーク強度が(110)面のピーク強度の3倍以上であるAFX構造のゼオライト膜を用いて、窒素とメタンを含む混合ガスから窒素を分離する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、実用可能なAFX構造のゼオライト膜を用いたガス分離方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】AFX構造のゼオライト膜の断面図
図2】AFX構造のゼオライト膜の平面図
図3】AFX構造のゼオライト膜の製造方法を説明するための図
図4】AFX構造のゼオライト膜の製造方法を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(膜構造体1)
図1は、膜構造体1の断面図である。図2は、AFX構造のゼオライト膜10の平面図である。
【0013】
膜構造体1は、多孔質支持体10と、AFX構造のゼオライト膜20とを備える。AFX構造のゼオライト膜20は、AFX構造のゼオライト結晶30によって構成される。
【0014】
以下の説明では、AFX構造のゼオライト膜20を「AFX膜20」と略称し、AFX構造のゼオライト結晶30を「AFX結晶30」と略称する。
【0015】
1.多孔質支持体10
多孔質支持体10は、AFX膜20を支持する。多孔質支持体10は、その表面にAFX膜20を膜状に形成(結晶化、塗布、或いは析出)できる程度の化学的安定性を有する。
【0016】
多孔質支持体10は、セラミックスの焼結体である。多孔質支持体10の骨材には、アルミナ、シリカ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、セルベン、及びコージェライトなどを用いることができる。多孔質支持体10は、結合材を含有していてもよい。結合材としては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)などを含むガラス材料を用いることができる。結合材の含有率は、20体積%以上40体積%以下とすることができるが、これに限られるものではない。
【0017】
多孔質支持体10は、分離対象である流体混合物(気体混合物又は液体混合物)をAFX膜20に供給できる形状であればよい。多孔質支持体10の形状としては、例えば、モノリス状、平板状、管状、円筒状、円柱状、及び角柱状などが挙げられる。モノリス状とは、長手方向に形成された複数のセルを有する形状であり、ハニカム状を含む概念である。多孔質支持体10がモノリス状である場合、長手方向の長さは150〜2000mmとすることができ、径方向の直径は30〜220mmとすることができるが、これに限られるものではない。多孔質支持体10がモノリス状である場合、多孔質支持体10には、直径1〜5mmのセルを30〜2500個形成することができる。
【0018】
多孔質支持体10は、多数の開気孔を有する多孔質体である。多孔質支持体10の平均細孔径は、流体混合物のうちAFX膜20を透過した透過成分を通過させられる大きさであればよい。多孔質支持体10の平均細孔径を大きくすることによって、透過成分の透過量を増加させることができる。多孔質支持体10の平均細孔径を小さくすることによって、多孔質支持体10の強度を増大させることができる。多孔質支持体10の平均細孔径は特に制限されないが、例えば0.01μm以上5μm以下とすることができる。多孔質支持体10の平均細孔径は、細孔径の大きさに応じて、水銀圧入法、ASTM F316に記載のエアフロー法、パームポロメトリー法によって測定できる。多孔質支持体10の気孔率は特に制限されないが、例えば25%〜50%とすることができる。
【0019】
多孔質支持体10の平均粒径は特に制限されないが、例えば0.1μm以上100μm以下とすることができる。多孔質支持体10の平均粒径とは、SEM(Scanning Electron Microscope)を用いた断面観察によって測定される30個の粒子それぞれの最大直径の算術平均値である。測定対象である30個の粒子は、SEM画像上において無作為に選出すればよい。
【0020】
多孔質支持体10は、細孔径が一様な単層構造であってもよいし、細孔径が異なる複層構造であってもよい。多孔質支持体10が複層構造である場合、AFX膜20に近い層ほど平均細孔径が小さくなっていることが好ましい。多孔質支持体10が複層構造である場合、多孔質支持体10の平均細孔径とは、AFX膜20と接触する最表層の平均細孔径を意味するものとする。多孔質支持体10が複層構造である場合、各層は上述した材料から選択される少なくとも一つの材料によって構成することができ、各層の構成材料は異なっていてもよい。
【0021】
2.AFX膜20
AFX膜20は、多孔質支持体10の表面に形成される。AFX膜20の厚みは特に制限されないが、0.1μm以上10μm以下とすることができる。AFX膜20の厚みは、結晶どうしを十分に結合させることを考慮すると、0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。AFX膜20の厚みは、熱膨張によるクラックを抑制することを考慮すると、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。
【0022】
AFX膜20は、複数のAFX結晶30同士が連結することにより膜状に形成されている。各AFX結晶30は、AFX構造のゼオライトによって構成される結晶である。AFX構造とは、国際ゼオライト学会(International ZeoliteAssociation)のStructure Commissionが定めているIUPAC構造コードでAFX型となる構造である。
【0023】
各AFX結晶30を構成するゼオライトとしては、ゼオライトを構成する酸素四面体(TO)の中心に位置する原子(T原子)がSiとAlからなるゼオライト、T原子がAlとP(リン)からなるAlPO型のゼオライト、T原子がSiとAlとPからなるSAPO型のゼオライト、T原子がマグネシウム(Mg)とSiとAlとPからなるMAPSO型のゼオライト、T原子が亜鉛(Zn)とSiとAlとPからなるZnAPSO型のゼオライトなどが挙げられる。T原子の一部は、他の元素に置換されていてもよい。
【0024】
各AFX結晶30は、複数の酸素8員環細孔を内部に有する。酸素8員環細孔とは、酸素8員環の環からなる細孔である。酸素8員環とは、単に8員環とも称され、細孔の骨格を構成する酸素原子の数が8個であって、酸素原子が前述のT原子と結合して環状構造をなす部分のことである。
【0025】
各AFX結晶30は、特定成分に対する吸着性を付与するなどの目的のため、金属や金属イオンを含有していてもよい。このような金属や金属イオンとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属からなる群から選択される1種以上の金属を挙げることができる。遷移金属としては、具体的には、例えば白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、銀(Ag)、鉄(Fe)、銅(Cu)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)及びインジウム(In)などが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0026】
各AFX結晶30は、板状に形成されている。各AFX結晶30の平面形状は特に制限されず、三角形以上の多角形又は不定形とすることができるが、六角形が特に好ましい。各AFX結晶30が六角板状である場合、例えば不定形状、球状、又は楕円球状のAFX結晶に比べて結晶性が高く、耐久性に優れた膜を得ることができる。
【0027】
図1及び図2に示すように、板状のAFX結晶30は、多孔質支持体10の表面に横設されている。AFX結晶30は、AFX膜20の厚み方向に垂直な面方向沿って寝かされた状態で配置されている。
【0028】
ここで、各AFX結晶30の両主面にはc面があらわれており、側面にはa面があらわれている。上述のとおり、各AFX結晶30は、多孔質支持体10の表面に横設されているため、AFX膜20の膜表面には、主面であるc面が露出している。
【0029】
X線回折(XRD:X−ray diffraction)法を用いて、AFX膜20の膜表面にX線を照射して得られるX線回折パターンにおいて、(004)面のピーク強度は、(110)面のピーク強度の3倍以上である。このことは、多孔質支持体10の表面に横設しているAFX結晶30の存在割合が多いことを意味している。そのため、(004)面のピーク強度を(110)面のピーク強度の3倍以上とすることによって、隣接するAFX結晶30を主面であるc面どうしで接合させることができるため、隣接するAFX結晶30どうしの接続性を高めることができる。そのため、AFX結晶30間に隙間が生じることを抑制できるため、AFX膜20の分離性能を実用可能な程度にまで向上させることができる。
【0030】
X線回折パターンにおいて、(004)面のピーク強度は、(110)面のピーク強度の3.5倍以上であることが好ましく、4倍以上であることがより好ましい。これによって、AFX膜20の分離性能をより向上させることができる。
【0031】
ピーク強度とは、測定値からバックグラウンドの値を引いた値を意味する。X線回折パターンは、X線回折装置(リガク社製、型式MiniFlex600)を用いて、AFX膜20の膜表面にCuKα線を照射することによって得られる。X線出力:600W(管電圧:40kV、管電流:15mA)、走査速度:0.5°/min、走査ステップ:0.02°、CuKβ線フィルタ:0.015mm厚Ni箔とする。(004)面のピークは2θ=18°付近に、(110)面のピークは2θ=13°付近に観察される。
【0032】
(膜構造体1の製造方法)
1.多孔質支持体10の作製
押出成形法、プレス成形法又は鋳込み成形法などを用いて、セラミックス原料を所望の形状に成形することによって成形体を形成する。
【0033】
次に、多孔質支持体10を多層構造とする場合には、ろ過法を用いて、セラミックス原料を含むスラリーを成形体の表面に塗布する。
【0034】
次に、成形体を焼成(例えば、900℃〜1450℃)することによって、多孔質支持体10を形成する。多孔質支持体10の平均細孔径は、0.01μm以上5μm以下とすることができる。
【0035】
2.種結晶の作製
国際公開第2010/90049号に記載の手法に従って、DDR結晶を合成する。
【0036】
次に、ケイ素源、アルミニウム源、リン源などのT原子源、及び構造規定剤(SDA)を純水に溶解・分散させることによって原料混合液を調製する。AFXの結晶性を向上させることができることから、T原子としては、Si、Al、Pのうちいずれか2つ以上を含有することが好ましく、少なくともAl、P及びOを含有することがより好ましい。ケイ素源としては、例えばコロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、テトラエトキシシラン、ケイ酸ナトリウムなどを用いることができる。アルミニウム源としては、例えばアルミニウムイソプロポキシド、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミナゾルなどを用いることができる。リン源としては、例えばリン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素アンモニウムなどを用いることができる。構造規定剤としては、例えばN,N,N’,N’−テトラメチルジアミノヘキサン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン−C4−ジクワットジブロミド、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリウムジブロミドなどを用いることができる。
【0037】
次に、合成したDDR結晶を原料混合液に少量添加した後、圧力容器に投入して水熱合成(180〜200℃、10〜100時間)することによって、六角板状のAFX種結晶を合成する。この際、AFX種結晶が多孔質支持体10の表面に形成された細孔の開口部に立設した状態で係止されない程度に、AFX種結晶のサイズを調整する。AFX種結晶のサイズは、添加するDDR結晶の量、原料混合液の組成、合成時間などの変更によって調整することができる。六角板状のAFX種結晶の平面視において対角を結ぶ直線の長さは、例えば0.15μm〜5μmとすることができる。
【0038】
3.AFX膜20の形成
AFX種結晶を水、エタノールやイソプロパノールなどアルコール、あるいはそれらの混合溶媒に分散させた種結晶分散溶液を調製する。
【0039】
次に、多孔質支持体10の表面に種結晶分散溶液を多孔質支持体表面上に流通させることによって、AFX種結晶を多孔質支持体10の表面に付着させる。この際、図3に示すように、AFX種結晶が、多孔質支持体10の表面に形成された細孔の開口部に立設した状態で係止されないため、AFX種結晶は多孔質支持体10の表面に横設した状態で配置される。AFX種結晶を多孔質支持体10の表面に横設した状態で付着させるためには、分散液を流通させる速さが30mm/s以上であることが好ましく、50mm/sであることが更に好ましい。
【0040】
次に、ケイ素源、アルミニウム源、リン源などのT原子源、及び構造規定剤(SDA)を純水に溶解・分散させることによって原料混合液を調製する。
【0041】
次に、AFX種結晶が付着した多孔質支持体10を原料混合液に浸漬して水熱合成(150〜190℃、5〜60時間)する。この際、多孔質支持体10の表面に横設した状態のAFX種結晶がそのまま結晶成長するため、図4に示すように、多孔質支持体10の表面上に横設したAFX結晶30どうしが成長し、接合することによってAFX膜20が形成される。
【実施例】
【0042】
以下において本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
1.多孔質支持体の作製
アルミナ原料を含む坏土を用いて、押出成形法により複数の貫通孔をもつモノリス形状の成形体を形成し、焼結した。
【0044】
次に、焼成した成形体の、貫通孔の表面にアルミナを主とした多孔質層を形成し、再度焼成することによって、多孔質支持体を形成した。多孔質支持体の膜を形成する部分の表面における平均細孔径は、65〜110nmの範囲であった。
【0045】
2.種結晶の作製
上記した国際公開第2010/90049号に記載の手法に従って水熱合成(160℃、16時間)することによってDDR結晶を合成し、それを十分に洗浄した。DDR結晶の平均粒子径は、196nmであった。
【0046】
次に、ケイ素源であるコロイダルシリカ、アルミニウム源であるアルミニウムイソプロポキシド、リン源である85%リン酸、及び構造規定剤であるN,N,N’,N’−テトラメチルジアミノヘキサンを純水に溶解させることによって、組成が4.1SDA:1.7SiO:1Al:2.1P:1525HOの原料混合液を調製した。
【0047】
次に、原料溶液にDDR結晶を少量添加して圧力容器に投入した後、水熱合成(190℃、20時間)した。
【0048】
次に、水熱合成によって得られた種結晶を回収して純水で十分に洗浄した後、65℃で完全に乾燥させた。
【0049】
その後、X線回折測定によって結晶相を確認するとともに、SEMによって種結晶の外形を確認したところ、得られた種結晶は六角板状のAFX結晶であった。AFX結晶の平面視において対角を結ぶ直線の長さは2〜6μmであった。
【0050】
3.AFX膜の形成
AFX種結晶をエタノールに分散させた種結晶分散溶液を調製した。
【0051】
次に、多孔質支持体のセルに種結晶分散溶液を50mm/sの速さで流通させることによって、AFX種結晶を多孔質支持体のセル内表面に付着させた。上述のとおり、多孔質支持体の平均細孔径は約100nmであり、かつ、板状のAFX種結晶の対角長さは2〜6μmであるため、各AFX種結晶は、多孔質支持体の細孔の開口部に係止されずに横設された。
【0052】
次に、ケイ素源であるコロイダルシリカ、アルミニウム源であるアルミニウムイソプロポキシド、リン源である85%リン酸、及び構造規定剤であるN,N,N’,N’−テトラメチルジアミノヘキサンを純水に溶解させることによって、組成が2.5SDA:0.75SiO:1Al:1.25P:165HOの原料混合液を調製した。
【0053】
次に、AFX種結晶が付着した多孔質支持体を原料混合液に浸漬して水熱合成(170℃、50時間)することによって、AFX膜を合成した。
【0054】
次に、合成したAFX膜を純水で十分に洗浄した後、90℃で完全に乾燥させた。乾燥後、AFX膜のN透過量を測定したところ、0.9nmol/m・s・Pa以下であった。これにより、実施例1に係るAFX膜は、実用可能な程度の緻密性を有していることが確認された。
【0055】
次に、AFX膜を500℃で20時間加熱処理することによってSDAを燃焼除去して、AFX膜内の細孔を貫通させた。
【0056】
次に、多孔質支持体の両端部をシール材で封止した状態で、0.15MPaGでCO/CH(50:50)の混合ガスの分離試験を実施したところ、CO/CHのPerm.比は78であった。同様に、多孔質支持体の両端部をシール材で封止した状態で、0.3MPaGでN/CH(50:50)の混合ガスの分離試験を実施したところ、N/CHのPerm.比は2.5であった。これにより、実施例1に係るAFX膜は、十分に実用可能な分離性能を有していることが確認された。
【0057】
そして、AFX膜の膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて、(004)面のピーク強度は、(110)面のピーク強度の3.7倍であった。これにより、実施例1に係るAFX膜では、AFX結晶のc面が膜表面に配向していることが確認された。
【0058】
(実施例2)
1.多孔質支持体の作製
実施例1と同じ工程で多孔質支持体を作製した。
【0059】
2.種結晶の作製
実施例1と同じ工程でAFX種結晶を作製した。
【0060】
3.AFX膜の形成
原料混合液の組成を1Al:2.1P:2.8SDA:850HOに変更し、かつ、水熱合成条件を170℃×45hに変更した以外は、実施例1と同様の工程にてAFX膜を合成した。
【0061】
次に、合成したAFX膜を純水で十分に洗浄した後、90℃で完全に乾燥させた。乾燥後、AFX膜のN透過量を測定したところ、0.2nmol/m・s・Pa以下であった。これにより、実施例2に係るAFX膜は、十分に実用可能な緻密性を有していることが確認された。
【0062】
次に、AFX膜を450℃で50時間加熱処理することによってSDAを燃焼除去して、AFX膜内の細孔を貫通させた。
【0063】
次に、多孔質支持体の両端部をシール材で封止した状態で、0.15MPaGでCO/CH(50:50)の混合ガスの分離試験を実施したところ、CO/CHのPerm.比は147であった。同様に、多孔質支持体の両端部をシール材で封止した状態で、0.3MPaGでN/CH(50:50)の混合ガスの分離試験を実施したところ、N/CHのPerm.比は5.8であった。これにより、実施例2に係るAFX膜は、十分に実用可能な分離性能を有していることが確認された。
【0064】
そして、AFX膜の膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて、(004)面のピーク強度は、(110)面のピーク強度の4.1倍であった。これにより、実施例2に係るAFX膜では、AFX結晶のc面が膜表面に配向していることが確認された。
【符号の説明】
【0065】
1 膜構造体
10 多孔質支持体
20 AFX構造のゼオライト膜(AFX膜)
30 AFX構造のゼオライト結晶(AFX結晶)
図1
図2
図3
図4