特許第6902674号(P6902674)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902674
(24)【登録日】2021年6月23日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】ガス状媒体を制御するための調量装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/36 20060101AFI20210701BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20210701BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20210701BHJP
   H01M 8/04089 20160101ALI20210701BHJP
【FI】
   F16K1/36 E
   F16K31/06 305L
   F16K31/06 305N
   H01M8/04 N
   H01M8/04089
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-513913(P2020-513913)
(86)(22)【出願日】2018年7月16日
(65)【公表番号】特表2020-532695(P2020-532695A)
(43)【公表日】2020年11月12日
(86)【国際出願番号】EP2018069263
(87)【国際公開番号】WO2019052717
(87)【国際公開日】20190321
【審査請求日】2020年3月5日
(31)【優先権主張番号】102017216132.9
(32)【優先日】2017年9月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヴェスナー,ヨッヘン
(72)【発明者】
【氏名】カッツ,マルティン
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102012211575(DE,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0223088(US,A1)
【文献】 特表2011−526990(JP,A)
【文献】 特開2013−194918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06−31/11
F16K 1/00− 1/54
F16K 25/00
H01M 8/04− 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間(18)が形成された弁ハウジング(2)と、前記弁ハウジング内に配置された上下運動可能なアーマチュア(10)と、前記アーマチュアに配置され、少なくとも1つの通流開口(3)を開放または閉鎖するために弁座(14)と協働する弾性シール部材(12)とを備える、ガス状媒体を制御するための調量装置(1)において、前記アーマチュア(10)にフレーム部材(11)が配置され、前記アーマチュアと堅固に接続されており、前記弾性シール部材(12)は、接触面(30)において前記弾性シール部材(12)の熱膨張と前記フレーム部材(11)の熱膨張とが同じであるように、前記フレーム部材(11)の切欠き(27)に収容されており、前記フレーム部材(11)は、前記調量装置(1)の長手軸(15)に対して径方向(20)に、前記調量装置(1)の前記長手軸(15)に対して軸方向(21)によりも高い熱膨張係数を有することを特徴とする、調量装置。
【請求項2】
前記フレーム部材は、炭素繊維強化プラスチックから形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の調量装置(1)。
【請求項3】
前記アーマチュア(10)は、電磁石(50)によって上下運動可能であり、閉鎖ばね(8)によって前記弁座(14)の方向に力が印加されることを特徴とする、請求項1または2に記載の調量装置(1)。
【請求項4】
前記閉鎖ばね(8)は、前記弁ハウジング(2)と前記アーマチュア(10)との間に配置され、かつ前記電磁石(50)の切欠き(9)に収容されていることを特徴とする、請求項3に記載の調量装置(1)。
【請求項5】
前記弁座(14)は、前記弁ハウジング(2)の凸部(16)に平面座として形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の調量装置(1)。
【請求項6】
前記弁ハウジング(2)に通流路(4)が形成されており、前記通流路を通じて前記内部空間(18)に前記ガス状媒体を充填可能であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の調量装置(1)。
【請求項7】
前記ガス状媒体は水素であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の調量装置(1)
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の、燃料電池への水素供給を制御するための調量装置(1)を備える燃料電池アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池駆動装置を備える車両に使用するための、ガス状媒体、特に水素を制御するための調量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ガス状媒体、特に水素を制御するための、ここでは比例弁として形成されている調量装置を記載し、比例弁は、ノズル体と閉鎖部材と弾性シール部材とを備えている。ノズル体には、弁座において閉鎖部材によって開放または閉鎖することができる少なくとも1つの通流開口が形成されている。その際、弾性シール部材が弁座をシールする。
【0003】
しかし調量装置において生じる温度変化が弾性シール部材の変形に影響を及ぼす。それにより、閉鎖部材の上下運動(Hubbewegung)を正確に調整できなくなるので調量装置の開放過程が妨げられる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102012204565号明細書
【発明の概要】
【0005】
これに関して、ガス状媒体、特に水素を制御するための本発明による調量装置は、弾性シール部材の温度依存性にもかかわらず、調量装置の最適な動作が得られるという利点を有する。
【0006】
そのために、ガス状媒体、特に水素を制御するための調量装置は、内部空間が形成された弁ハウジングを有している。内部空間には、上下運動可能(hubbeweglich)なアーマチュアが、少なくとも1つの通流開口を開放または閉鎖するために弁座と協働する弾性シール部材とともに配置されている。さらに、アーマチュアにフレーム部材が配置され、アーマチュアと堅固に接続されており、弾性シール部材は、接触面において弾性シール部材の熱膨張とフレーム部材の熱膨張とが同じであるように、フレーム部材の切欠きに収容されており、フレーム部材は、調量装置の長手軸に対して径方向に、調量装置の長手軸に対して軸方向によりも高い熱膨張係数を有する。
【0007】
それにより、軸方向および径方向の熱膨張の重畳(Ueberlagerung)によって、弾性シール部材の軸方向膨張の低下が得られ、それにより弾性シール部材のリフト方向(Hubrichtung)に変化が生じない。そのため弾性シール部材の熱膨張にもかかわらず、調量装置の開放リフト(Oeffnungshub)の正確な調整が可能であり、そのことにより燃料電池のアノード領域におけるガス状媒体の必要に即した調整が保証されている。
【0008】
第1の有利な展開形態では、フレーム部材が炭素繊維強化プラスチックから製造されていることが予定されている。それにより、弾性シール部材をフレーム部材に簡単に収容し、接触面においてフレーム部材の熱膨張に適合させることができる。
【0009】
本発明の別の実施形態では、有利にも、アーマチュアが電磁石によって上下運動可能(hubbewegbar)であり、閉鎖ばねによって弁座の方向に力が印加されることが予定されている。閉鎖ばねが弁ハウジングとアーマチュアとの間に配置され、電磁石の切欠きに収容されていることが有利である。それにより閉鎖ばねを簡単な組立てで調量装置に配置することができる。
【0010】
有利な展開形態では、弁座は、弁ハウジングの凸部に平面座として形成されている。平面弁座を弾性シール部材と組み合わせて使用することによって、簡単に、かつ大きな設計上の変更なしに調量装置のシール性を確保することができ、それにより調量装置から例えば水素が流出し得ない。
【0011】
本発明の別の実施形態では、有利にも、弁ハウジングに通流路が形成されており、この流通路を通じて内部空間にガス状媒体を充填可能であることが予定されている。
【0012】
上記の調量装置は、殊に燃料電池アセンブリにおいて燃料電池のアノード領域への水素供給を制御するのに適している。アノード路におけるわずかな圧力変動および静音運転が有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施例による、フレーム部材を有する調量装置の縦断面図である。
図2図1のフレーム部材の横断面図であり、右半分のみが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ガス供給、特に燃料電池への水素を制御するための本発明による調量装置の実施例が図面に示されている。
【0015】
図1は、本発明の一実施例による調量装置1の縦断面図を示す。調量装置2は、内部空間18が形成された弁ハウジング2を有する。内部空間18にはマグネットコイルハウジング6を有するマグネットコイル5とマグネットコア7とを備える電磁石50が配置されている。
【0016】
さらに、内部空間18には上下運動可能なアーマチュア10が配置され、アーマチュアにフレーム部材11が配置され、このアーマチュアと堅固に接続されている。フレーム部材11において、弾性シール部材12が切欠き27に配置されている。弾性シール部材12は、通流開口3を開閉するための弁座14と協働する。その際、シール座(Dichtsitz)14は、弁ハウジング2の凸部16に平面座として形成されている。
【0017】
弁ハウジング2において、調量装置1の長手軸15に対して径方向に、通流路4が形成されており、そこを通じて調量装置1の内部空間18にガス状媒体、例えば水素を充填可能である。ガス状媒体は、通流開口3を介して調量装置1から燃料電池アセンブリのアノード領域の方向に流出することができる。
【0018】
弁ハウジング2とアーマチュア10との間でマグネットコア7の切欠き9に閉鎖ばね8が配置されており、閉鎖ばねは、アーマチュア10に弁座14の方向に力を印加し、それにより調量装置1が閉位置にあるときに、弾性シール部材12が弁座14に押し付けられる。その際、アーマチュア10は、例えば弁ハウジング2を介して調量装置1に案内されていてもよく、それによりシール座14に対する傾動が最小化される。
【0019】
調量装置1の動作は次のとおりである。
マグネットコイル5の非通電時には、弾性シール部材12が閉鎖ばね8を介して弁座14に押し付けられ、それにより調量装置1からのガス状媒体が通流開口3の方向に生じない。
【0020】
磁気コイル5に通電されると、閉鎖ばね8の閉鎖力と逆向きの磁力がアーマチュア10に向かって生成され、閉鎖力が過補償される。弾性シール部材12は、弁座14から持ち上がる。調量装置1を通るガスの流れが解放される。
【0021】
アーマチュア10のリフト(Hub)は、マグネットコイル5の電流強度の高さにより調整することができる。閉鎖ばね8の力がリフトに依存するので、マグネットコイル5の電流強度が高ければ高いほど、アーマチュア10のリフトがそれだけ大きくなり、調量装置1におけるガス流量もそれだけ大きくなる。マグネットコイル5の電流強度が低減されると、アーマチュア10のリフトも低減され、それによりガス流量が絞られる。
【0022】
マグネットコイル5の電流が遮断されると、アーマチュア10への磁力が解除される。弾性シール部材12は、弁座14の方向に移動し、弁座において再びシールする。調量装置1におけるガスの流れは遮断される。
【0023】
調量装置1において生じる温度変化は、弾性シール部材12の熱膨張につながる。それにより、アーマチュア10のリフトに影響が及ぼされ、このことが不正確なリフト調整につながる可能性がある。フレーム部材11を使用し、フレーム部材に弾性シール部材12を収容することによって、この熱膨張を補償することができる。
【0024】
図2は、図1の本発明による調量装置1の実施例のフレーム部材11の横断面を示し、右半分のみが示されている。弾性シール部材12は、フレーム部材11の切欠き27に配置されている。その際、弾性シール部材12は、接触面30においてフレーム部材11と堅固に接続されている。
【0025】
さらに、フレーム部材11は、径方向20に、調量装置1の長手軸15に対して軸方向21によりも高い熱膨張係数を有する。弾性シール部材12を、接触面30を介してフレーム部材11と堅固に接続することによって、弾性シール部材12が径方向24に、フレーム部材11と同じ熱膨張を有する。それでも弾性シール部材12が調量装置1の長手軸15に対して軸方向25に、径方向24によりも高い熱膨張係数を有する場合、接触面30と、それにより生じる弾性シール部材12の軸方向および径方向の熱膨張の重畳が、長手軸15に対して軸方向25に弾性シール部材12の熱膨張の低減をもたらす。
【0026】
本発明による調量装置1は、例えば燃料電池アセンブリに使用することができる。調量装置1によって、燃料電池のアノード領域にタンクからの水素を供給することができる。したがって、燃料電池に供給されるガス流の必要に即した調整が連続的に行われるように、弾性シール部材12のリフトを操作する調量装置1のマグネットコイル5の電流強度の高さに応じて通流開口3の流れ断面が変化する。
【0027】
したがって、ガス状媒体を制御するための調量装置1は、第1ガス状媒体の供給と、燃料電池のアノード領域への水素の調量供給(Zudosierung)とを、通流開口3の流れ断面を電子的に制御して適合させ、同時にアノード圧力を制御した場合にはるかに正確に行うことができるという利点を有する。これによって、連結された燃料電池の運転安全性および耐久性が著しく向上する。なぜなら水素が常に化学量論的に過剰な割合で(in einem ueberstoechiometrischen Anteil)供給されるからである。これに加えて、例えば後置された触媒の損傷など、結果として生じる損害も防ぐことができる。
【符号の説明】
【0028】
1 調量装置
2 弁ハウジング
3 通流開口
4 通流路
5 マグネットコイル
6 マグネットコイルハウジング
7 マグネットコア
8 閉鎖ばね
9 切欠き
10 アーマチュア
11 フレーム部材
12 弾性シール部材
14 弁座
15 長手軸
16 凸部
18 内部空間
20 径方向
21 軸方向
24 径方向
25 軸方向
27 切欠き
30 接触面
50 電磁石
図1
図2