(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902689
(24)【登録日】2021年6月24日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】指濡らし器
(51)【国際特許分類】
B43M 11/00 20060101AFI20210701BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20210701BHJP
B05B 12/08 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
B43M11/00 B
F16K31/06 310Z
F16K31/06 385Z
B05B12/08
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-4910(P2018-4910)
(22)【出願日】2018年1月16日
(65)【公開番号】特開2019-123140(P2019-123140A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2020年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】317019889
【氏名又は名称】吉田 哲男
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲男
【審査官】
中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】
特許第6161842(JP,B1)
【文献】
登録実用新案第3159252(JP,U)
【文献】
特開2017−196737(JP,A)
【文献】
特開2011−177321(JP,A)
【文献】
特開平9−173925(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3026802(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43M 11/00
B05B 12/08
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水ボトルと受け皿、および前記給水ボトルと前記受け皿を接続する接続アタッチメントからなるカップ型自動給水器と、前記受け皿の底部に設けた鉛直向きの導水細管と、前記導水細管に設けた電磁駆動型止水栓と、人の指の有無を検出するための指センサと、前記指センサの検出信号に基づいて、前記電磁駆動型止水栓を開閉するための駆動回路と、前記駆動回路用の電源から構成される指濡らし器であって、前記受け皿の開口部を通気性の部材で覆い、前記導水管の内径を前記止水栓が開の状態で前記受け皿の水が自然に落下する太さにするとともに、前記電磁駆動型止水栓を、通常はバネにより付勢された止水棒が前記導水細管を閉じた状態に保持し、前記指センサが人の指を検出したときにのみ、前記電磁駆動型止水栓の電磁石を駆動して所定の時間だけ、前記バネにより付勢された止水棒を吸引して前記電磁駆動型止水栓を開き、前記導水細管の下部先端より、微量の水滴を滴下するように構成したこと特徴とする指濡らし器
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、どこにも触れることなく指先を微量の清潔な水で湿らせるために用いられる指濡らし器に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパー等での買い物で購入品を袋詰めする薄いポリ袋の口を開こうとした場合、指先が乾燥していてうまく開けられない場合が多い。スーパー等では、サービスとして、購入品を袋詰めする台の上に濡れたタオルなどを置いている場合が多いが、不特定多数の人がその濡れたタオルなどに指を付けて使用するため衛生上問題であった。また、濡れているはずのタオルが乾燥してしまっている場合も多く、その場合には自分の指先を舐めるなどして指先を湿らせることもあり、これも不衛生であった。
ポリ袋を開くために、指を濡らす場合、直径3mm〜4mmの水滴、すなわち約10μlの水があれば十分であり、あまり水の量が多いと、手や台が水に濡れてしまって返って不都合である。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば、特許文献1に記載された指先濡らし器具では、上面を開放とする容器に水溶液を充填して、ボール状体をその水溶液に浮かせて蓋体によりボール状体の一部が円弧状に突出するように回転可能に形成し、このボール状体を回転させてその湿潤部分を指で触れることで、指先を適度に濡らすように構成されている。
【0004】
また、特許文献2に記載された指先濡らし器具では、台座にアトマイザを、ノズルを上向きにして横置きに装着し、ノズルの位置に指先をかざした状態で、手のひらでアトマイザのレバーを押すことにより、テコの働きでアトマイザのノズルより水が霧状になって吹き出して指先を適度に濡らすように構成されている。
【0005】
また、特許文献3記載された指先濡らし器具では、水を入れる容器と、容器に被さる蓋と、蓋を貫通して上方に付勢される押圧部材とを有し、押圧部材には吐水口が設けられており、押圧部材の上部には手の指幅より狭い溝が設けられ、溝内に 吐水口が設けられて、押圧部材を押すことによって、容器内の水の一部が吐水口から噴出し、指先を濡らすように構成されている。
【0006】
しかし、特許文献1, 特許文献2,および特許文献3で開示されている指濡らし器は、いずれも、指先あるいは手のひらが指濡らし器に直接触れ、不特定多数の人がこれらを使用するために、細菌やウイルスの感染の危険があった。
【0007】
以上に示した従来の手濡らし器とは別に、最近、適量の食器洗い用液体洗剤を、食器洗い用スポンジをかざすだけで自動的に滴下する装置が販売されている。しかしながら、食器洗い用液体洗剤の適量は1〜2ml程度と、指濡らし用に使用するのには約100倍〜200倍多く、同じ方式で、約10μl程度の微量の水滴を滴下させるのは原理的にほぼ不可能である。
【0008】
一方、極微量の液体あるいは粘性流体を吐出させることが可能な業務用のディスペンサーも広く使用されている。業務用のディスペンサーは、水のように低粘度の液体から接着剤などの高粘度の液体までのいろいろな液体を、最少で数百pl(ピコリットル)からの吐出が可能であり、液体の量としては、指濡らし用としても適しているが、装置の価格が格段に高く、スーパーの各買い物袋詰め台に設置することは設置コストの面から不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006-150933号公報
【特許文献2】特開2009-072748号公報
【特許文献3】特開2012-250427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、1回の水滴の滴下量が10μl程度で、人がどこにも触れることなく指先を微量の清潔な水で湿らせることが可能で、さらに、原理および機構、構造が簡単で、スーパーなどの各買い物袋詰め台に設置が可能な低価格の指濡らし器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、給水ボトルと受け皿、および前記給水ボトルと前記受け皿を接続する接続アタッチメントからなるカップ型自動給水器と、前記受け皿の底部に設けた鉛直向きの導水細管と、前記導水細管に設けた電磁駆動型止水栓と、人の指の有無を検出するための指センサと、前記指センサの検出信号に基づいて、前記電磁駆動型止水栓を開閉するための駆動回路と、前記駆動回路用の電源から構成される指濡らし器であって、前記受け皿の開口部を通気性の部材で覆い、前記導水管の内径を前記止水栓が開の状態で前記受け皿の水が自然に落下する太さにするとともに、前記電磁駆動型止水栓を、通常はバネにより付勢された止水棒が前記導水細管を閉じた状態に保持し、前記指センサが人の指を検出したときにのみ、前記電磁駆動型止水栓の電磁石を駆動して所定の時間だけ、前記バネにより付勢された止水棒を吸引して前記電磁駆動型止水栓を開き、前記導水細管の下部先端より、微量の水滴を滴下するように構成した指濡らし器が得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、清潔な水が入った給水ボトルを指濡らし器にセットし、濡らしたい指1本か2本を指濡らし器の所定の場所にかざすだけで、一滴あるいは数滴の水が指先を濡らすため、人は、手濡らし器のどこにも触れることなく、指先を濡らすことができ、容易にポリ袋などを開けることができる。
【0013】
また、本発明によれば、指先を濡らす水は、清潔な水を入れた専用の給水ボトルを用いて、カップ型自動給水器を構成し、定量の水を溜めることができる受け皿の開口部を通気性のシートなどの部材で覆っているため、外部からごみやほこりが入り込むのを防いでおり、水の汚染を防ぐことができる。そのため、インフルエンザや感染性胃腸炎などの感染症の予防に大いに期待できる。
【0014】
また、本発明によれば、バネと電磁石により止水棒を動かして止水栓を開閉する構造としているため、安価な部材を使用した簡単な構造で微量の水滴を滴下する装置を構成することが可能になるとともに、指をかざした時の所定の短い時間だけ、電磁石に電流が流れる構成としているため、前記電磁駆動型止水栓を開閉するための駆動回路の電源として乾電池を用いても長時間使用することができる。
【0015】
また、ポリ袋などを開くために必要な一回の水滴の滴下量は約10μlあれば十分なので、例えば50mlの給水ボトルを使用した場合でも、単純計算で、5,000回の水滴の滴下が可能となり、一人が平均5回指先を濡らしたと仮定した場合でも、1,000人が使用可能となり、ボトルの交換作業量は、1日に少なくとも数回行っている従来の濡れた布などの交換作業量に比較して大幅に改善される。
【0016】
また、本発明によれば、1回の水滴の滴下量が10μl程度で、人がどこにも触れることなく指先を微量の清潔な水で湿らせることが可能で、さらに、原理および機構、構造が簡単で、スーパーなどの各買い物袋詰め台に設置が可能な低価格の指濡らし器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】は、本発明の指濡らし器の全体の構造例を示す断面図
【
図2】は、本発明で利用しているカップ型自動給水器の原理を説明するための断面図
【
図3】は、
図1に示した本発明の指濡らし器の全体の構造例のカップ型自動給水機構部の拡大断面図
【
図4】は、実験を行った導水細管の構造を示す断面図
【
図5】は、受け皿部の底部に形成された導水細管、および電磁駆動型止水栓の構造例を示す断面図
【
図6】は、給水ボトルとの接続アタッチメントの別の構造例を示す断面図
【
図7】は、給水ボトルとの接続アタッチメントのさらに別の構造例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の指濡らし器の全体の構造例を示す断面図であり、1は給水ボトル、2は接続アタッチメント、3は受け皿、4は受け皿3の底部に形成したノズル、5は、ノズル4に設けた電磁駆動型止水栓、6は指センサ、7は電磁駆動型止水栓を開閉するための駆動回路、8は指濡らし器の筐体である。給水ボトル1、接続アタッチメント2、および受け皿3により、
図2で説明するカップ型自動給水器を構成している。
【0019】
図2は、本発明で利用しているカップ型自動給水器の原理を説明するための断面図であり、カップ状容器21の下部には小さな開口部22が形成され、開口部22には、開口部22の上側よりも高い縁で囲まれた水溜め部23が形成されている。
図2に示したカップ型自動給水器では、まず、カップ状容器21を、開口部を上向きにして水の中に入れ、開口部22からカップ状容器21に水を入れるか、あるいは、開口部から、ホースなどを用いてカップ状容器21に水を入れ、カップ状容器21に十分水が入った状態で開口部22を下側にして平らな面に設置する。この場合、カップ状容器21の中の水24は、カップ状容器21の開口部22から水溜め部23に漏れ出るが、水溜め部23の水位が、開口部22の上側まで達して開口部22を塞ぐ状態になると、カップ状容器21の内部の上部の空気25の気圧が低下し開口部22からの水の漏れ出しは停止する。しかし、水溜め部23の水位が開口部22の上側より低下すると、その隙間からカップ状容器21の内部に空気が流入し、再び、水溜め部23から水が漏れ出し、水溜め部23の水位が開口部22の上側に達すると、開口部22からの水の漏れ出しは自動的に停止する。
カップ型自動給水器は以上に説明したように、無電源の簡単な構造で、常に定量の水を供給することが可能な自動給水器を実現することが出来ることから、古くから家畜用の給水器として使用され、最近でも加湿器やファンヒータなどでその原理が広く使用されている。
【0020】
図3は、
図1に示した本発明の指濡らし器の全体の構造例のカップ型自動給水機構部の拡大断面図であり、
図3を用いて接続アタッチメント2および受け皿3の構造をより詳しく説明する。接続アタッチメント2は円筒形状をしており、上側の開口部には給水ボトル1を固定するためのネジ部31が形成され、下側の開口部には接続アタッチメント2を受け皿3に固定するためのネジ部32が形成されている。また、接続アタッチメント2の上方開口部には、円筒状の遮蔽壁33が形成され、中央部には摺動軸34を摺動させるための摺動軸用ガイド35が形成されている。摺動軸34の上方端部にはゴムパッキン36が形成され、摺動軸34の下方端部には、コイルバネ37を押さえるための鍔38が形成されている。コイルバネ37は通常は摺動軸34を下側に押し下げるように作用し、摺動軸34の上方端部に設けられたゴムパッキン36が前記円筒状の遮蔽壁33の縁に押し付けられるため、接続アタッチメント2を給水ボトル1に取り付けた状態で給水ボトル1を逆さまにしても、給水ボトル1から水が漏れることはない。
【0021】
図3では、接続アタッチメント2を装着した給水ボトル1を、受け皿3に取り付けた状態を示しており、接続アタッチメント2のネジ部32は、受け皿3に設けたネジ部301に締め付け固定されている。接続アタッチメント2が、受け皿3に固定されると、受け皿3の底部に形成されている突起部303より、接続アタッチメント2の摺動軸34の下方端部に形成された鍔38が押し上げられ、その結果、摺動軸34の上方端部に設けられたゴムパッキン36が前記円筒状の遮蔽壁33から離れ、その隙間から給水ボトル1の水が接続アタッチメント2に流れ出す。給水ボトル1から流れ出た水は、
図3に点線で示した水の流れるルート39を通って、受け皿3に流れ込む。接続アタッチメント2のネジ部32と受け皿3に設けたネジ部301の下方端部には、受け皿3の底面から、
図2のA-A’ラインの位置に受け皿3に続く孔が形成されており、受け皿3に流れ込んだ水の水位は、前述のカップ型自動給水器の原理で説明したように、ほぼA-A’ラインの位置で一定になる。
【0022】
図3に示した受け皿3においては、底面のほぼ中央部に鉛直方向に向けた導水細管302が形成されており、導水細管302を囲むように、前記接続アタッチメント2の摺動軸34の下方端部に形成された鍔38を押し上げるための突起部303が形成されている。突起部303は、離散した突起で形成され、突起部303が鍔38と接触している場合でも、これらの突起の間から、受け皿3の水は導水細管302に流れる込むことができる。
【0023】
図3に示した受け皿3においては、受け皿3の上側開口部が通気性の膜状部材304で覆われている。膜状部材304には通気性があるため、受け皿3の上側開口部が膜状部材304で覆われていても、実効的にカップ型自動給水器の原理に従い、しかも上側開口部を膜状部材で覆っているため、受け皿3へのゴミやほこりの侵入を防ぐことができ、水の汚染を防ぐことができる。
【0024】
本発明では、鉛直方向の細い管を自然落下する水を利用して微量の水滴を得るため、どの程度の細い管を水が自然落下するのかを知ることが重要である。実験によりこれを確認するために、
図4に示す断面構造の導水細管を用いて実験を行った。実験に用いた導水管41は、直径10mm、長さ30mmのアクリル棒の上部に直径8mm、深さ(L1)約5mmの水溜め部42が形成され、水溜め部42の底から鉛直方向に向けて貫通する、長さ(L2)約25mmの導水細管43が形成されており、導水細管43の内径は、1.0mm、1.5mmの2種類について行った。導水管41を鉛直に保持した状態で、導水細管43の下部を指で塞ぎ、水溜め部42に水を満たした状態で、導水細管43の下部を塞いでいた指を外して、そのときに、水が流れ落ちるかどうかを確認した。その結果、いずれの場合も、水溜め部42の水は、導水細管43を流れ落ち、水溜め部42の水の高さが5mmでも、内径1.0mmおよび、1.5mmの管を流れ落ちることが確認でき、本発明において用いるカップ型自動給水器においても、受け皿の縁の高さを5mm以上とすれば、内径1.0mm〜1.5mmの導水細管43を使用しても水を自然落下させることが出来ることが確認できた。
【0025】
本発明では、
図3を用いて説明したように、水の滴下に細い管の中を自然落下する水を利用しているため、流れ落ちる水の量を一定にするためには、止水栓を開く時間を一定にした場合でも、水圧、すなわち、菅の入り口の孔の位置から水面までの高さ、すなわち水位を一定にする必要がある。本発明では、カップ型自動給水器の原理を利用することにより、水位を常に一定に保つことができるので、水の滴下量を一定に保つことができる。
【0026】
図5は、
図1に示した本発明の指濡らし器の受け皿部3に形成した電磁駆動型止水栓5の構造例を示す断面の拡大図である。電磁駆動型止水栓5は、止水棒51、可動軸52を有する電磁ソレノイド53からなり、前記止水棒51は前記可動軸52と接合され、これらを含む電磁ソレノイド53は、受け皿部3の底部に固定されている。受け皿部3のほぼ中央には鉛直方向に向いた導水細管302を有するノズル305が形成され、その途中に、前記導水細管302を開閉するためにノズル305に形成された横穴306に、前記止水棒51が挿入される構造となっている。
前記止水棒51は、通常は電磁ソレノイドに付加したコイルバネ54により付勢されて前記導水細管302を開閉するために形成した前記横穴306に前記止水棒51を挿入して前記導水細管302を閉じた状態に保持しており、前記指センサ6が人の指を検出したときにのみ、前記電磁石駆動回路7により前記電磁石を駆動して所定の時間だけ、前記電磁ソレノイド53が前記止水棒と接続された可動軸52を吸引することにより前記止水棒51を引き抜いて止水栓を開き、前記導水細管302の下部先端より、水滴を滴下するように構成されている。
【0027】
図6は、給水ボトル1と受け皿3の接続アタッチメントの別の構造例を示す断面図である。
図6に示した接続アタッチメント20は、基本的に
図3に示した接続アタッチメント2から、コイルバネを無くした構造となっており、接続アタッチメント20の上側の開口部には給水ボトル1を固定するためのネジ部61が形成され、下側の開口部には接続アタッチメント20を受け皿3に固定するためのネジ部62が形成されている。また、接続アタッチメント20の上方開口部には、円筒状の遮蔽壁63が形成され、中央部には摺動軸64を摺動させるための摺動ガイド65が形成されている。摺動軸64の上方端部にはゴムパッキン66が形成され、摺動軸64の下端部には、鍔68が形成されている。
【0028】
図6は、水が入った給水ボトル1に、接続アタッチメント20を取り付けて、給水ボトルを逆さまにした状態を示している。この状態では、給水ボトルの水の重量および摺動軸64とゴムパッキン66の自重により摺動軸64を下側に押し下げるように作用し、摺動軸64の上方端部に設けられたゴムパッキン66が前記円筒状の遮蔽壁63の縁に押し付けられるため、給水ボトル1から水が漏れることはない。接続アタッチメント20を、受け皿3に固定すると、接続アタッチメント20の摺動軸64の下端部の鍔68が受け皿3の底部に当たり、摺動軸64が押し上げられるため、給水ボトル1から水が流れ出し受け皿3に流れ込む。受け皿3の水位を一定に保つ原理は、
図3の接続アタッチメント2を用いた場合と同じであるので、ここでは省略する。
【0029】
図7は、給水ボトル1と受け皿3の接続アタッチメントのさらに別の構造例を示す断面図である。
図7において、接続アタッチメント200の上側の開口部には給水ボトル10を固定するためのネジ部71が形成され、接続アタッチメント200の下側の開口部には接続アタッチメント200を受け皿3に固定するためのネジ部72が形成されている。また、接続アタッチメント200の中央部には先端が尖っている穿孔軸73が形成され、穿孔軸73と接続アタッチメント200との接続部には、接続アタッチメント200の上下の開口部を繋ぐ導水路74が形成されている。
【0030】
図7に示した接続アタッチメント200を使用する場合は、水が入った給水ボトル10は、乳酸菌飲料などに広く使用されているような膜状のシール材11であらかじめ蓋をされている必要がある。このような状態の給水ボトル10を接続アタッチメント200に取り付けると、前記穿孔軸73が前記膜状のシール材11を破るため、給水ボトル10の水は、前記導水路74を通って受け皿3に流れ込む。給水ボトル10から水が流れ出し、受け皿3の水位を一定に保つ原理は、
図3の接続アタッチメント2を用いた場合と同じであるので、ここでは省略する。
【0031】
以上に説明した本発明の手濡らし器において、
図5に示した止水棒51の代わりに板状の止水板を用いても良い。また、止水栓に用いる電磁ソレノイド52の代わりに、板バネと電磁石を組み合わせた構成としても良い。また、
図5に示した実施例では、電磁駆動型止水栓5を導水細管302の途中に形成したが、電磁駆動型止水栓を導水細管の最上部に形成しても良い。
【0032】
また、本発明の手濡らし器において、
図1に示した指センサ6は、指あるいは手のひらの温度により検出する焦電センサでも良いし、LEDとフォトダイオードを対向させて、指が光路を遮るのを検出する方式でも良いし、空中超音波センサを用いても良い。
【0033】
また、
図3に示した導水細管302の先端の断面積が大きい場合、水の表面張力により、多量の水が導水細管303の端面に付着するため、水滴が大きくなってしまう。そのため、導水細管302の先端は尖っていて、先端部の肉厚は、管の形状を保つ限り出来るだけ薄いことが望ましい。
【0034】
また、導水細管302を流れる水の流れやすさは、導水細管302の内径が同じ場合でも材質や管の内側の表面粗さによっても変化することが考えられるため、導水細管302の内径は、実際に使用する材料を用いて、
図4に示した実験を行って決めるのが良い。この状態で、前記電磁石駆動回路7により前記電磁石を駆動する時間を可変して、適切な水滴の量が滴下するように調整するのが良い。
【0035】
なお、
図3、
図6、および
図7に示した、給水ボトル1と受け皿3の接続アタッチメント、2、20、および200の構造は、それぞれ、実施例の構造を示したもので、必ずしも、これらの構造に限定されるものではなく、給水ボトル1あるいは10と受け皿3を接続して、カップ型自動給水器の機能を発揮する構造であれば良い。
【0036】
さらに、以上の説明では、接続アタッチメント、2、20、および200と、受け皿3との接続を、接続アタッチメント、2、20、および200に設けたネジ部32、62、72により接続する例について説明したが、これらの接続は、必ずしもネジによる必要は無く、これらの接続アタッチメントおよび受け皿のいずれか一方に凸部、他方にこの凸部とかみ合う凹部を形成し、接続アタッチメントを回転させて固定する機構など、ほかの接続機構を用いても良い。
【0037】
本発明で用いる清潔な水としては、蒸留水などの精製水に加え、これらに微量のエチルアルコールなどの消毒、あるいは殺菌性液体を添加した液体を用いることができる。こうすることで、より長期間、これらの水の変質を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0038】
1,10:給水ボトル
2,20,200:接続アタッチメント
3:受け皿
5:電磁駆動型止水栓
6:指センサ
7:電磁駆動型止水栓を開閉するための駆動回路
8:指濡らし器の筐体
21:カップ状容器
22:小さな開口部
23,42:水溜め部
24:カップ状容器21の中の水
25:カップ状容器21の内部の上部の空気
31:給水ボトル1を接続アタッチメント2に固定するためのネジ部
32:接続アタッチメント2を受け皿3に固定するためのネジ部
33,63:円筒状の遮蔽壁
34,64:摺動軸
35,65:摺動軸用ガイド
36,66:ゴムパッキン
37,54:コイルバネ
38,68:摺動軸の下端部の鍔
39:水の流れるルート
302,43:導水細管
303:受け皿3の底部に形成した突起部
304:通気性シート
305,4:ノズル
306:ノズル305に形成した横穴
41:導水管
51:止水棒
52:可動軸
53:電磁ソレノイド
61:給水ボトル1を接続アタッチメント20に固定するためのネジ部
62:接続アタッチメント20を受け皿3に固定するためのネジ部
11:シール材
71:給水ボトル10を固定するためのネジ部
72:接続アタッチメント200を受け皿3に固定するためのネジ部
73:穿孔軸
74:接続アタッチメント200の上下の開口部を繋ぐ導水路