特許第6902690号(P6902690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6902690-パッケージ形の燃料電池発電装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902690
(24)【登録日】2021年6月24日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】パッケージ形の燃料電池発電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20210701BHJP
   F17C 13/00 20060101ALN20210701BHJP
【FI】
   H01M8/04 Z
   !F17C13/00 301Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-197664(P2016-197664)
(22)【出願日】2016年10月6日
(65)【公開番号】特開2018-60696(P2018-60696A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】509311252
【氏名又は名称】株式会社共立電照
(74)【代理人】
【識別番号】240000039
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 博志
(72)【発明者】
【氏名】船ヶ山 保幸
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−156116(JP,A)
【文献】 特開平11−257600(JP,A)
【文献】 特開2005−259692(JP,A)
【文献】 特開平10−321248(JP,A)
【文献】 特開平11−283644(JP,A)
【文献】 特開2001−317698(JP,A)
【文献】 特開2005−129491(JP,A)
【文献】 特表2005−523568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04−8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外等に独立して設置され、水素ガスを燃料として発電するパッケージ形の燃料電池発電装置であって、地面に配置された支持ベースに載置されたパッケージ内に、複数の水素ガスボンベと、複数の水素ガスボンベが連結されるカードルと、該カードルを介して供給された水素の流量及び圧力を調整する水素発生機器と、該水素発生機器から供給される水素と空気を反応させて発電する発電ユニットと、該発電ユニットで発電された電力を外部へ送電可能とする配電盤を備え、前記パッケージ内が、前記水素ガスボンベが設置される貯蔵室と、前記水素発生機器、前記発電ユニット、前記配電盤が設置される機器室に区画されるとともに、前記機器室に複数の開閉扉が設けられ、前記貯蔵室に外部から開閉可能な扉が設けられ、前記貯蔵室に床面が設けられていないことを特徴とするパッケージ形の燃料電池発電装置。
【請求項2】
前記水素発生機器が、水素の流量及び/又は圧力を制御する水素ガス調節弁と、水素ガスの流路をON−OFFする遮断弁と、これらの作動を制御する制御装置を備えたことを特徴とする請求項1に記載のパッケージ形の燃料電池発電装置。
【請求項3】
前記制御装置が、タイマ機能を有し、あらかじめ設定された時刻に基づき、水素ガス調節弁を作動させるよう構成されたことを特徴とする請求項2に記載のパッケージ形の燃料電池発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガスを燃料として用いるパッケージ形の燃料電池発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、NOXやSOX等の有害物質を発生することなく大気汚染や二酸化炭素による地球温暖化の問題に対策を講じることができる点、低騒音で運転可能な点から、燃料電池を用いた発電装置が注目されている。この燃料電池発電装置は、燃料の有している化学エネルギーを直接電気に変換するシステムで、とくに水素ガスを燃料とする燃料電池発電装置は、地球上に無尽蔵に存在する水や化合物から精製でき、高いエネルギー効率を可能し、電気に変換する際にCO2や有害物質を排出しないという優れた特徴を有している。さらに、水素ガスは、液化水素に比べて低コストなため、高圧水素ガスをボンベに充填して安価に水素ガスを供給できるオフサイトステーション型の燃料電池発電装置が実用化されている。
【0003】
このような水素ガスを燃料とした燃料電池発電装置として、例えば、特許文献1に記載されたパッケージ形の燃料電池発電装置が知られている。これらのパッケージ形の燃料電池発電装置は、発電に必要な構成機器や補機類をパッケージの内部に収納し、需要地に配置するだけで発電装置を稼働でき、据付が容易な構造となっている。また、特許文献2には、構成機器を分割して、分割した両者間に配線や配管を接続することで、可搬性を向上させた燃料電池システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−31436号公報
【特許文献2】特開2002−203584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された燃料電池発電装置は、水素ガスボンベの交換やメンテナンスにおいて着目されておらず、未だ改良の余地が残るものであった。また、特許文献2に記載された燃料電池発電装置は、可搬性を求めるため、装置の堅牢性が低下し、恒久的に使用できるものではなかった。また実用化されているパッケージ形の燃料電池発電装置は、燃料自体をパッケージ内部に密閉搭載されており、燃料の交換に労力を要する。
【0006】
上記の問題点に鑑み本発明者らは、需要地での設置性に優れ、燃料の交換を容易に行える水素ガスを燃料として用いるパッケージ形の燃料電池発電装置を提供するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため本発明の燃料電池発電装置は、屋外等に独立して設置され、水素ガスを燃料として発電するパッケージ形の燃料電池発電装置であって、パッケージ内に、複数の水素ガスボンベと、複数の水素ガスボンベが連結されるカードルと、該カードルを介して供給された水素の流量及び圧力を調整する水素発生機器と、該水素発生機器から供給される水素と空気を反応させて発電する発電ユニットと、該発電ユニットで発電された電力を外部へ送電可能とする配電盤を備え、前記パッケージ内が、前記水素ガスボンベが設置される貯蔵室と、前記水素発生機器、前記発電ユニット、前記配電盤が設置される機器室に区画されるとともに、前記貯蔵室に外部から開閉可能な扉が設けられ、前記貯蔵室に床面が設けられていないことを第一の特徴とする。
【0008】
また、記水素発生機器が、水素の流量及び/又は圧力を制御する水素ガス調節弁と、水素ガスの流路をON−OFFする遮断弁と、これらの作動を制御する制御装置を備えたことを第二の特徴とする。
【0009】
さらに、前記制御装置が、タイマ機能を有し、あらかじめ設定された時刻に基づき、水素ガス調節弁を作動させるよう構成されたことを第三の特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る燃料電池発電装置によれば、下記の効果を有する。
(1)水素ガスボンベが設置される貯蔵室と機器類が設置される機器室に区画され、貯蔵室を外部からの開閉扉によって開閉できるため、水素ガスボンベの交換作業が容易に行える。また、交換時に機器等に衝突、もしくは接触することを防止でき、安全性を向上させる。
(2)貯蔵室に床面を設けず、水素ガスボンベを地面に直接設置される構造としているため、車台等で運搬した水素ガスボンベを持ち上げることなく交換できる。
(3)需要地に設置する際に、基礎工事などが不要なため、短期間かつ低コストで設置できる。
(4)水素ガスの流路に遮断弁を設けているため、水素ガスボンベの交換作業時に水素が漏出することを防ぐことができる。
(5)タイマ機能を有し、時限的に発電を制御できるため、タイマ設定を行うだけで計画的に発電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るパッケージ形燃料電池発電装置1を示す斜視図である。
図2図1の平面図である。
図3図1に示すパッケージ形燃料電池発電装置1の水素ガスの流量制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るパッケージ形燃料電池発電装置1について、各図面を参照しながら説明するが、本発明が本実施例に限定されないことは言うまでもない。図1は、本発明に係るパッケージ形燃料電池発電装置1を示す斜視図、図2図1の平面図、図3図1に示すパッケージ形燃料電池発電装置1の水素ガスの流量制御を説明するフローチャートである。本発明に係るパッケージ形燃料電池発電装置1は、図1に示すように、屋外等に独立して設置されるオフサイトステーション型の燃料電池発電装置である。
【0013】
パッケージ形燃料電池発電装置1の外装は、複数連結された金属製の屋根付筐体を、地面に配置された金属製の支持ベース19に載置して構成されている。パッケージ形燃料電池発電装置1の側面には、複数の開閉扉11,12が設けられている。各開閉扉11,12の上部には、複数の換気口15と換気扇(図示せず)が設けられており、パッケージ形燃料電池発電装置1内に水素ガスが滞留しないよう構成されている。
【0014】
パッケージ形燃料電池発電装置1内は、図2に示すように、壁体16により両側面に設けられた貯蔵室13と機器室14に区画されており、貯蔵室13には複数の水素ガスボンベ2が、機器室14には水素発生機器3、発電ユニット4、及び配電盤5が収納されている。パッケージ形燃料電池発電装置1は、水素ガスボンベ2内の水素ガスを水素発生機器3で適正な流量及び圧力に変換して発電ユニット4へ送り、発電ユニット4で大気中の酸素と水素ガスを反応させて発電し、発電された電力を配電盤5から外部へ送電可能に構成されている。
【0015】
水素ガスボンベ2は、金属製の筒体で、圧力が14.7MPaに高圧圧縮された水素ガスが充填されており、可搬可能な燃料電池の燃料として一般的に使用されるものである。本実施例においては、この水素ガスボンベ2が、各貯蔵室13内に9本ずつ、すなわちパッケージ形燃料電池発電装置1内に二系統分で合計18本収納されている。複数の水素ガスボンベ2は、配管22aと着脱自在に接続されており、開閉扉11を開閉し、使用済みの水素ガスボンベ2自体を交換可能とされている。尚、水素ガスボンベ2の底面、すなわち貯蔵室13の底面には床材が設けられておらず、半屋外構造とされており、台車等で運搬された水素ガスボンベ2を持ちあげることなく容易に交換できる。
【0016】
各水素ガスボンベ2に接続された配管22aは、集合し各配管22aのシリンダーを集結させた、いわゆるカードル21に接続されている。カードル21と水素発生機器3間は、配管22bで接続されており、二系統の水素ガスが水素発生機器3へ供給されている。
【0017】
水素発生機器3は、図2に示すように、水素ガス調整弁31と遮断弁32と制御装置(図示せず)から構成されている。水素発生機器3は、配管22及びカードル21を介して接続された複数の水素ガスボンベ2から水素ガスを取り入れ、この水素ガスを発電に最適な流量及び圧力に調整する役割を担う。そのため制御装置には、効率良く発電するための適切な水素ガスの流量及び圧力を発電ユニット4へ常時供給できるよう、水素ガス調整弁31から流量情報をフィードバックして水素ガスの流量及び圧力を制御する制御ソフトウェアが搭載されている。
【0018】
水素ガス調整弁31は、水素ガスの流量を計測するとともに、効率良く発電するための適切な水素ガスの流量及び圧力に調節するものである。計測した流量は、接続された通信ケーブル(図示せず)を介して制御装置へ送信される。また、接続された通信ケーブル(図示せず)を介して、制御装置からの流量指示を受信して流量及び圧力を調節する。
【0019】
遮断弁32は、内蔵された電磁弁の開閉により発電ユニット4への水素ガスの供給を遮断する役割を担う。遮断弁32は、制御装置と通信ケーブルを介して接続されており、制御装置から開閉指令を受信して作動するよう構成されている。例えば、水素ガスボンベ2を交換作業時に、当該系統の遮断弁32を閉じ、別系統からの水素漏洩を防止することができる。
【0020】
制御装置は、タイマ機能を有する制御ソフトウェアを備えており、あらかじめ設定した流量調節開始又は流量調節終了の指定時間に基づき、及び/又は発電に適切な流量を演算し、水素ガス調整弁31を制御して水素ガスの流量を調整する。より具体的には、図3に示すステップにより水素ガスの流量制御を行う。まず、流量調節を開始する指定時間であるか否かを判断(ステップS1)し、指定時間であれば、水素ガス調整弁31へ流量調節の指示を送信(ステップS2)し、指定時間でなければ(ステップS1でN)、流量調節を終了する指定時間か否かを判断(ステップS3)、指定時間であれば、水素ガス調整弁31へ流量調節を戻すよう指示を送信(ステップS4)する。したがって、例えば夜間の水素ガス流量を昼間より減じ、発電量自体を減ずることが可能となる。
【0021】
発電ユニット4は、水素発生機器3から供給された水素ガスに、パッケージ形燃料電池発電装置1中及び/又は外気中の空気を反応させて電力を生成する。発電ユニット4は、例えば、高分子型の燃料電池スタック、燃料電池に空気を送る空気ブロワー、発電された電圧を調整するコンバーター、燃料電池スタックで発生した熱を放出するラジエーター、電力の取り出しケーブル等のほか、これらの機器の動作を制御するための制御装置や操作パネルとその電源となる内蔵バッテリー等が搭載され、水素と空気を反応させて電力を生成することができれば良く、その装置構成はとくに限定されるものではない。発電ユニット4に操作パネルが搭載されている場合は、その操作面が開閉扉12を開いた際にパッケージ形燃料電池発電装置1の外部から操作できる位置に設けられることが好ましい。
【0022】
配電盤5は、発電ユニット4と電気ケーブル等を介して電気的に接続されており、生成された電力をパッケージ形燃料電池発電装置1の外部へ送電する。そのため配電盤5は、少なくとも、発電ユニット4から送電された直流電流を交流電流に変換するインバーター回路、外部機器が接続可能な100V及び/又は200Vのコンセント、パッケージ形燃料電池発電装置1内の換気扇を制御する制御装置等を備えていることが好ましい。また、パッケージ形燃料電池発電装置1内に水素が漏出した場合に、発電ユニット4の運転を停止できるよう水素検知手段や、検知された水素濃度に基づきパッケージ形燃料電池発電装置1の運転停止指令を送信する回路等が設けられていることがより好ましい。
【0023】
以上の構成からなる本発明のパッケージ形燃料電池発電装置1は、建屋構造物に代わるパッケージ内に機器を据え付けるため、建屋構造の基礎工事は不要で需要地での設置性に優れる。また、パッケージ内を貯蔵室13と機器室14の空間に区画し、貯蔵室13内に床材を設けず半屋外構造としているため、水素ガスボンベ2を床上に持ち上げることなく交換を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0024】
1 パッケージ形燃料電池発電装置
2 水素ガスボンベ
3 水素発生機器
4 発電ユニット
5 配電盤
11,12 開閉扉
13 貯蔵室
14 機器室
15 換気口
16 壁体
19 支持ベース
21 カードル
22 配管
31 水素ガス調整弁
32 遮断弁
図1
図2
図3