(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記排気ダクトは前記室内の下部の空気を前記室外に排出可能であること、並びに/或いは、前記給気ダクトは前記室外の空気を前記室内の下部に供給可能であることを特徴とする請求項1記載の換気システム。
前記防音室は、ベタ基礎と、このベタ基礎上に立設され、第一の防音材を内包する多重壁と、前記第一の多重壁にほぼ切れ目なく連なり、第二の防音材を内包する多重天井とを備え、前記ベタ基礎上に、第三の防音材を挟み込んだ状態で床材が載置きされ、前記ベタ基礎の周囲を立ち上げるとともに、該立ち上がり部内に前記第三の防音材を延長して挟みこんだ状態で床材の周囲が当接するように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の換気システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、最近、貸音楽スタジオなどと称して、不特定多数の者が手軽に利用できる防音室が出回るようになってきた。例えば空き部屋を改装して防音室をつくり、そこにできるだけ大勢の利用者を詰め込むような場合には、温湿度の調整のためにエアコンをフル活動させている。ここでピアノ演奏会などを開催すると、大人と子供とが防音室内に長時間閉じ籠ることになるが、エアコンにはほとんど換気機能がないので、酸欠や二酸化炭素中毒を引き起こすことが懸念される。一方、大人と子供とでは、酸素消費量や二酸化炭素の排出量や身長などが大きく異なる。そこで、防音室をだれでも安心して利用できるようにするには、かかる大人と子供の異なる点を考慮した換気システムの構築が必須となる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、だれでも安心して利用できるようにし
た換気システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エアーロック式の二重扉を備えた防音室の換気システムであって、室外から吸引された空気を室内に供給する給気ダクトと、前記室内の空気を前記室外に排出する排気ダクトと、前記二重扉
内に設けられ、該二重扉から出入して前記室内に収容される大人と子供との人数構成
を検出するセンサと、前記センサで検出された前記大人と子供との人数構成に応じて、前記給気ダクトから供給される空気量と前記排気ダクトから排出される空気量とを調整可能に該室内を換気する換気装置とを備え、かつ、前記給気ダクトと前記排気ダクトとを少なくとも二回は屈曲させることを特徴とするものである。
【0007】
本発明によれば、室外から吸引された空気を室内に供給する給気ダクトと、前記室内の空気を前記室外に排出する排気ダクトと、前記二重扉
内に設けられ、該二重扉から出入して前記室内に収容される大人と子供との人数構成
を検出するセンサと、前記センサで検出された前記大人と子供との人数構成に応じて、前記給気ダクトから供給される空気量と前記排気ダクトから排出される空気量とを調整可能に該室内を換気する換気装置とを備え、かつ、前記給気ダクトと前記排気ダクトとを少なくとも二回は屈曲させたので、音漏れを防止したまま、十分な換気を行うことができる。その結果、酸欠や二酸化炭素中毒を引き起こすおそれをなくして、だれでも安心して利用できる。
【0010】
請求項
2記載の発明のように、前記排気ダクトは前記室内の下部の空気を前記室外に排出可能であること、並びに/或いは、前記給気ダクトは前記室外の空気を前記室内の下部に供給可能であることが好ましい。
【0011】
請求項
2記載の発明によれば、前記排気ダクトは前記室内の下部の空気を前記室外に排出可能であり、並びに/或いは、前記給気ダクトは前記室外の空気を前記室内の下部に供給可能であるので、特に子供の安全を確保できる。
【0012】
停止時や風の強いときなどには外気の侵入が懸念されるため、電動シャッターを設けることがあるが、停電時には有効でない。そこで、請求項3記載の発明のように、前記排気ダクトは
、前記空気の逆流時に順流時よりもライン抵抗を大きくするボルテックスダイオードを
、該ボルテックスダイオードの円筒形の本体を縦向けにして、かつ、前記本体の中心軸方向に前記順流時の空気入口を接続するとともに、前記本体の周面上部の接線方向に前記順流時の空気出口を接続するようにして介装可能であることが好ましい。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、前記排気ダクトは
、前記空気の逆流時に順流時よりもライン抵抗を大きくするボルテックスダイオードを
、該ボルテックスダイオードの円筒形の本体を縦向けにして、かつ、前記本体の中心軸方向に前記順流時の空気入口を接続するとともに、前記本体の周面上部の接線方向に前記順流時の空気出口を接続するようにして介装可能であるので、停電時や強風時であっても外気の侵入を確実に防止できる。
【0014】
請求項4記載の発明のように、防音室は、ベタ基礎と、このベタ基礎上に立設され、第一の防音材を内包する多重壁と、前記第一の多重壁にほぼ切れ目なく連なり、第二の防音材を内包する多重天井とを備え、前記ベタ基礎上に、第三の防音材を挟み込んだ状態で床材が載置きされ、前記ベタ基礎の周囲を立ち上げるとともに、該立ち上がり部内に前記第三の防音材を延長して挟みこんだ状態で床材の周囲が当接するように構成することが好ましい。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、前記防音室は、ベタ基礎と、このベタ基礎上に立設され、第一の防音材を内包する多重壁と、前記第一の多重壁にほぼ切れ目なく連なり、第二の防音材を内包する多重天井とを備え、前記ベタ基礎上に、第三の防音材を挟み込んだ状態で床材が載置きされ、前記ベタ基礎の周囲を立ち上げるとともに、該立ち上がり部内に前記第三の防音材を延長して挟みこんだ状態で床材の周囲が当接するように構成したので、音源が重量物であっても対応できる。
【0016】
この音源からの音漏れの心配がなくなる結果、たとえ深夜においてさえも、大音響の楽器を存分に演奏することができる。
【0017】
また、前記ベタ基礎の周囲を立ち上げるとともに、該立ち上がり部内に前記第三の防音材を延長して挟みこんだ状態で床材の周囲が当接するので、地震の際の縦揺れ、横揺れの両方に対応できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、室外から吸引された空気を室内に供給する給気ダクトと、前記室内の空気を前記室外に排出する排気ダクトと、前記二重扉
内に設けられ、該二重扉から出入して前記室内に収容される大人と子供との人数構成
を検出するセンサと、前記センサで検出された前記大人と子供との人数構成に応じて、前記給気ダクトから供給される空気量と前記排気ダクトから排出される空気量とを調整可能に該室内を換気する換気装置とを備え、かつ、前記給気ダクトと前記排気ダクトとを少なくとも二回は屈曲させたので、音漏れを防止したまま、十分な換気を行うことができる。その結果、酸欠や二酸化炭素中毒を引き起こすおそれをなくして、だれでも安心して利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係る防音室1の外観を示す斜視図、
図2は本実施形態1に係る防音室1の詳細構造を示す縦断面図である。ただし、
図1の紙面に向かって左側が防音室1の北側に対応しており、右側が防音室1の西側に対応している。本発明者は、プラントメーカーのエンジニアとして、長年にわたり、防音対策などに従事してきた経験を生かして、自宅の敷地内に、実際に防音室1を作り、そこで得られた成果を以下に記す。
【0021】
図1,
図2に示すように、この防音室1は、地上に独立して建てた木造家屋であって、基本的には、コンクリート製のベタ基礎上に、木製の柱や梁などの主要な構造部分がつくられているが、その内部に重量物である音源9を収容可能なものである。音源9としては、重さが500kgを超えるようなグランドピアノや大型自動演奏楽器などが挙げられる。なお、全体がコンクリート製の建屋としなかったのは、そこにグランドピアノなどを保管する場合に、カビの発生を防止するためにエアコンでの連続除湿が必要となるおそれがあるからである。これに対して、地上に独立して建てた木造家屋では、かかる問題が少なく、床下に限定されるコンクリート製のベタ基礎の場合は、むしろ夏場には地中から湿気が室内に入ってくるのを防ぐ一方、冬場には室内を適度に加湿する役目を果たすものと考えられる。
【0022】
そこで、この防音室1では、砕石21上に打設したコンクリート製のベタ基礎2と、このベタ基礎2上に立設され、グラスウール(第一の防音材に相当する。)31を二層にしてパネルボードに内包する二重壁3と、屋根10から防振ハンガー42で吊設され、これもグラスウール(第二の防音材に相当する。)41を二層にしてパネルボードに内包する二重天井4と、を備え、二重壁3と、二重天井4とが、ほぼ切れ目なく連なるとともに、ベタ基礎2上に、ロックウール(第三の防音材に相当する。)22を二層にして挟みこんだ状態でコンクリート製の床材5が載置されている。
【0023】
グラスウールは各層でそれぞれ100mm程度の厚みをなしており、ロックウールは各層でそれぞれ25mm程度の厚みをなしている。また、ベタ基礎2と二重壁3との間と、二重壁3と二重天井4との間とは、パッキンやシーラーなどで有意な隙間をなくしている。
【0024】
ベタ基礎2は、地震の際の縦揺れには強いが、横揺れまでを阻止するものではない。そこで、ベタ基礎2の周囲を立ち上げるとともに、この立ち上がり部内にロックウール22を延長して挟みこんだ状態で床材5の周囲が当接するようになっている。これにより、地震の際の縦揺れのみならず、横揺れにも対応できるようになっている。
【0025】
また、室内平面での対称性を少なくするとともに、その縦横比を大きく変えており、これにより音源9から発せられる音波が壁反射しても干渉しにくくなっている。これに加えて、二重壁3の北側内面のパネルボードに例えばフェルト製の遮音シート(遮音材)32を貼り付けるとともに、二重天井4の下側内面のパネルボードには例えば吸音パネルを採用しており、これにより前記壁反射そのものを少なくしている。
【0026】
前記二重壁3の周囲のうち、北側及び西側の下部から中間部にかけて、その厚み方向にわずかな段部を設けることで外広がりに切り欠いた開口部を設けるとともに、そこにグラスウールなどを内包する二重扉6a,6bを開閉自在に備えている。
【0027】
二重扉6a,6bとそれに対応する前記開口部との間には、音波のすり抜けをなくすためにパッキンを介在させている。二重扉6aは音源9の搬出入のために設けた、比較的大型の扉であって、互いに対向するように配置された内扉と外扉との間に、空間を少しだけ設けて、演奏中は閉状態としているものである。二重扉6bは人の出入りのために設けた、比較的小型の扉であって、互いに直角に設けた内扉と外扉との間に、人がとどまることのできる程度の空間を設けた、いわゆるエアーロック式を採用することで、演奏中でも開閉できるようになっている。
【0028】
前記二重壁3の周囲のうち、前記二重扉6bの横側の中間部にかけて、その厚み方向にわずかな段部を設けて外広がりに切り欠いた開口部を設けるとともに、そこに三重のガラス窓7を着脱可能に取り付けている。これにより、いわゆる明り取りができるようになっている。また、図示はしていないが、同様のガラス窓を東側にも設けている。
【0029】
前記二重壁3の周囲のうち、前記二重扉6bの上部を貫通する給気ダクト82と排気ダクト84とを設けるとともに、二重天井4に換気装置14を設けて、給気ダクト82と排気ダクト84とを少なくとも二回は屈曲させた状態で、前記換気装置14に接続している(
図3参照)。給気ダクト82と排気ダクト84とは、いずれも防露用の断熱材を施工している。これにより、給気ダクト82と排気ダクト84とからの音漏れを少なくして、室内の換気ができるとともに、その室内の湿度上昇を抑えるようにもなっている。
【0030】
ここで、給気ダクト82と排気ダクト84とを屈曲させる具体的な方法としては、それぞれ同一方向に45度ずつ二回以上屈曲させることが好ましい。これにより、給気ダクト82と排気ダクト84とを通過する空気による管路抵抗の増大をできるだけ少なくして、換気性能を確保する一方、前記給気ダクト82と排気ダクト84との内部を音波がすり抜けることによる音漏れを減少させることができる。
【0031】
前記二重壁3の下部の木造部分33に、略0.3〜1mの間隔でもって小穴を開けておき、そこに防虫剤の薬液を注入した上で、各小穴をパテなどで埋め戻すことにより、いわゆるシロアリ対策を施している。ただし、前記二重壁3の上部の木造部分34と、両木造部分33,34間の図示しない柱については、シロアリ対策は特に施していないが、建設段階で使用するすべての木造部分を予め防虫処理しておくことが好ましい。
【0032】
図3は本実施形態1に係る防音室1の換気システム8を示す模式図である。なお、
図3中の実線でダクトを示し、破線で電気系統を示している。
図3に示すように、換気システム8は、防音室1内に収容される大人M1と子供M2との人数構成に応じて、エアフィルタ81から給気ダクト82を通じて給気ファン14aで防音室1内に供給される空気量と、防音室1内から排気ダクト84を通じて排気ファン14bで排気口83に排出される空気量とを調整可能に防音室1内を換気するようになっており、給気ファン14aと排気ファン14bとが一体となって換気装置14を構成している。エアフィルタ81は花粉症の原因物質であるスギ花粉や大気汚染の原因物質であるPM2.5などのパーティクルを除去するものである。以下、最も基本的なグレードの換気システム8を説明する。
【0033】
ここでは、換気装置14の電源スイッチ601とは別個に「強」「弱」選択スイッチ602を設けている。電源スイッチ601と選択スイッチ602とは、制御盤600を通じて給気ファン14aと排気ファン14bとに電気的に接続されている。そして、図外の防音室1の利用者又はオーナーが、表1に示すような選択表を見て、選択スイッチ602を「強」「弱」のいずれかに切り替えるようになっている。表1中の子供は幼稚園児か小学校低学年程度の児童を想定している。最初は利用者が防音室1内には入っていないので、電源スイッチ601は「オフ」、選択スイッチ602は「弱」になっている。
【表1】
【0034】
いま防音室1の利用者が教師(大人)1人、児童(子供)3人であるときには、教師が換気装置14の電源スイッチ601を押して「オン」とするとともに、表1の選択表をみて、選択スイッチ602は「弱」のままとしておく。すると、給気ファン14aと排気ファン14bとが低速回転して、外気がエアフィルタ81と給気ダクト82を通じて防音室1内に給気されるとともに、防音室1内の空気が排気ダクト84と排気口83を通じて防音室1外に排気される。このときの給気量と排気量とは比較的少なくなるように設定されている(表1の換気「弱」レンジの最大値となる設定値1である)が、表1の右下がりの斜線の領域で示す大人1人の場合は、同右上がりの斜線の領域で示す子供6人までOKであることがわかる。
【0035】
二重扉6bの外扉6b2と内扉6b1とを通じて、児童(子供)を2人つれた母親(大人)が防音室1内に入ってくる。すると、防音室1内は大人2人と子供5となるので、教師は選択スイッチ602を「強」に切り替える。すると、給気ファン14aと排気ファン14bとが高速回転して、外気がエアフィルタ81と給気ダクト82を通じて防音室1内に給気されるとともに、防音室1内の空気が排気ダクト84と排気口83を通じて防音室1外に排気される。このときの給気量と排気量とは比較的多くなるように設定されている(表1の「強」レンジの最大値となる設定値2である)が、表1の右下がりの斜線の領域で示す大人2人の場合は、同右上がりの二重斜線の領域で示す子供10人までOKであることがわかる。
【0036】
最初の児童(3人)のレッスンが終わると、防音室1から内扉6b1と外扉6b2とを通じて出ていくので、防音室1内は大人2人と子供2となるので、教師は選択スイッチ602を「弱」に切り替える。すると、給気ファン14aと排気ファン14bとが低速回転に戻り、外気がエアフィルタ81と給気ダクト82を通じて防音室1内に給気されるとともに、防音室1内の空気が排気ダクト84と排気口83を通じて防音室1外に排気される。このときの給気量と排気量とは設定値1に戻る。そして、利用者が最大人数を超えると、要求される空気量が設定値2を超えるので、教師は防音室1に入る人数を制限する。以下同様である。
【0037】
このときは、教師(大人)がレッスンの区切りごとに選択スイッチ602を切り替えているが、いちいち煩わしいと考える場合は、「強」のままとしてもよい。ただし、利用者が最大人数を超えると、防音室1に入る人数を制限する点は同じである。全員が退去するときは、教師が電源スイッチ601をオフにするとともに、選択スイッチを「弱」にしておく。すると、給気ファン14aと排気ファン14bとのいずれもが回転停止する。このような手動操作だけにより、防音室1内の換気不足による酸欠や二酸化炭素中毒を簡単かつ確実に回避できるようになっている。
【0038】
防音室1の完成後に、その室内のほぼ中央に音源9を配置した。この音源9は、ピアノやドラムの音などを組み合わせて、高音域から低音域にわたるものとした。しかる後に、音源9をオンオフしながら、騒音計を使用して、そのA特性を実際に測定してみた。その結果、音源9の騒音レベルが最大110dbであった場合でも、室外の騒音レベルは30〜40db程度となり、実に70〜80db程度もの減音効果があった。
【0039】
ここで、音源9をオン状態としたとき、その音源9から1m離れた位置での測定値は最大110dbであり、このときの二重壁3の外壁面から1m離れた位置での測定値は30db程度であり、三重ガラス窓7の直ぐ外側での計測値は40db程度であった。音源9をオフ状態としたとき、その音源9から1m離れた位置での測定値は30db程度、二重壁3の外壁面から1m離れた位置での測定値は30db程度、三重ガラス窓7の直ぐ外側での計測値は30db程度であった。なお、30dbは室外の環境音(雨音など)と同じ騒音レベルである。
【0040】
したがって、この防音室1では、ほぼ完全に音漏れがなくなることがわかった。市販の防音室では20〜40db程度の減音効果しかないことから、せっかく防音室を設けても多少の音漏れがあることに比べて、画期的な成果であるといえる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態1の防音室1によれば、ベタ基礎2と、このベタ基礎2上に立設され、グラスウール31を内包する二重壁3と、屋根10から吊設され、グラスウール41を内包する二重天井4とを備え、前記二重壁3と、前記二重天井4とが、ほぼ切れ目なく連なるとともに、前記ベタ基礎2上に、ロックウール22を挟みこんだ状態で床材5が載置されたので、内部に重量物である音源9を収容できる。
【0042】
この音源9からの音漏れの心配がなくなる結果、たとえ深夜においてさえも、大音響の楽器を存分に演奏することができる。
【0043】
(実施形態2)
本実施形態2は、主として上記実施形態1の換気システム8をグレードアップしたものである。防音室1の基本構造は、上記実施形態1と同様であるので、その詳細説明は省略する。
図4は本実施形態2に係る防音室1の換気システム8aを示す模式図、
図5は本実施形態2に係るボルテックスダイオード83aの概念図である。なお、
図4中の実線でダクトを示し、破線で電気系統を示している。
【0044】
図4に示すように、本実施形態2では、実施形態1とは異なり、給気ファン14aと排気ファン14bとからなる換気装置14を二重壁3の下部に設けている。大人に比べて子供は低身長であるため、酸欠や二酸化炭素中毒になりやすいことを考慮してものである。これにより、排気ダクト84は防音室1内の床5付近の空気を防音室1外に排出可能となり、給気ダクト82は外気を防音室1内に給気可能となるので、特に子供の安全を確保できる。
【0045】
また、換気システム8aの停止時や、その運転中であっても風の強いときなどには、排出ダクト84を通じて防音室1内に外気が侵入することがあるため、従来は電動シャッターを設けていたが、停電時には有効でない。そこで、本実施形態2の排気ダクト84は、空気の逆流時に順流時よりもライン抵抗を大きくするボルテックスダイオード83aを介装可能としている。これによれば、換気システム8aの停止時や停電時であっても防音室1内への外気の侵入を確実に防止できる。
【0046】
ボルテックスダイオード83aは、流体素子の一種であるが、その構成要素としては、
図5に示すように、円筒形の本体831と、本体831の側面において中心軸方向に接続された入口ノズル832と、本体831の周面において接線方向に接続された出口ノズル833とを備えている。
【0047】
このボルテックスダイオード83aでは、
図5中のA→Bで示すように、本体831の側面の中心軸方向に接続された入口ノズル832から空気が流入すると、渦はほとんど形成されずに、小さな形状抵抗が生じるだけである。その逆に、
図5中のB→Aで示すように、円筒形の本体671の周面における接線方向に接続された出口ノズル833から空気が流入すると、渦が確実に形成され、それによる遠心力が作用して、中心の圧力が低下するので、大きな抵抗を生じる。このように、ボルテックスダイオード83aは、その一方から流体が流入すると抵抗が小さくなり、他方から流体が流入すると抵抗が大きくなるので、いわば電気系におけるダイオードに類似した機能を果たすものである。
【0048】
本実施形態2の換気システム8aについて、以下説明をする。
【0049】
ここでは、
図4に示すように、二重扉6bの内扉6b2と外扉6b1との間の空間に、例えば発光部と受光部との対からなるフォトインタラプタであるセンサ603〜606を、高位と低位とでそれぞれ2対ずつ設けている。高位のセンサ603,605は、大人M1の身長に基づいて位置設定され、低位のセンサ604,606は、幼稚園児や小学校低学年の子供M2の身長に基づいて位置設定されるが、ともに高さ調整できるようになっている。本実施形態2の換気システム8aは、防音室1内に収容される大人M1と子供M2との人数構成に応じて、エアフィルタ81から給気ダクト82を通じて給気ファン14aで防音室1内に供給される空気量と、防音室1内から排気ダクト84を通じて排気ファン14bでボルテックスダイオード83aに排出される空気量とを調整可能に防音室1内を換気するようになっており、給気ファン14aと排気ファン14bとが一体となって換気装置14を構成している。エアフィルタ81は花粉症の原因物質であるスギ花粉や大気汚染の原因物質であるPM2.5などのパーティクルを除去するものである。
【0050】
ここでも、換気装置14の電源スイッチ601とは別個に「強」「弱」選択スイッチ602を設けている。電源スイッチ601と選択スイッチ602とセンサ603〜606とは、制御盤600を通じて給気ファン14aと排気ファン14bとに電気的に接続されている。
【0051】
ここでの制御盤600は、上記実施形態1のものと異なり、メモリ、演算機能、判定機能などを備えている。そして、センサ603〜606のカウント値から二重扉6bを通過する大人と子供との人数構成を算出し、この算出値が上記実施形態1の設定値1(第一の設定値に相当する。)に達したとき、選択スイッチ602を「弱」から「強」に自動的に切り替えるようになっている。一方、その算出値が再度設定値1を下回ったとき選択スイッチ602を「強」から「弱」に自動的に切り替えるようになっている。前記算出値が上記実施形態1の設定値2(第二の設定値に相当する。)に達したとき、図示しないロック機構により、ブザーが鳴るとともに、二重扉6bの閉止を自動的に禁止するようになっている。
【0052】
図6,
図7は本実施形態2の換気システム8aの動作例を示すフローチャートである。
図6において、利用者又はオーナーが電源スイッチ601を「オン」にすると、制御盤600の動作により、選択スイッチ602、センサ603〜606及び前記メモリに記憶された大人の人数と子供の人数とがそれぞれリセットされる(ステップS1)。すなわち、電源スイッチ601は「オフ」、選択スイッチ602は「弱」、センサ603〜606はすべて「オフ」になる。メモリに記憶された大人の人数と子供の人数とはいずれも0となる。
【0053】
ついで、防音室1に出入りする大人と子供の各人数を検出する(ステップS2)。
図7において、二重扉6bの外扉6b2側の高位にあるセンサ603が「オン」となっているか判定される(ステップS201)。そして、センサ603が「オン」になると、内扉6b1側の高位にあるセンサ605が「オン」になっているかが判定される(ステップ202)。センサ605が「オン」になると、大人1人が加算される(ステップS203)。その逆順で大人1人が減算される(ステップS211〜S213)。
【0054】
二重扉6bの外扉6b2側の低位にあるセンサ604が「オン」となっているか判定される(ステップS221)。そして、センサ604が「オン」になると、内扉6b1側の低位にあるセンサ606が「オン」になっているかが判定される(ステップ222)。センサ606が「オン」になると、子供1人が加算される(ステップS223)。その逆順で子供1人が減算される(ステップS231〜S233)。
【0055】
図6に戻り、必要とされる換気量Qが次式で演算される(ステップS3)。
換気量Q=20*大人の人数N1+10*子供の人数N2
である。根拠は、文部科学省「学校施設の排気設備に関する調査研究報告書」による。そして、換気量Qが前記設定値1より大となっているかが判定される(ステップS4)。換気量Qが前記設定値1より大になると、選択スイッチ602が「弱」から「強」に自動的に切り替わる(ステップS5)。さらに、換気量Qが前記設定値2より大となっているかが判定される(ステップS6)。換気量Qが前記設定値2より大になると、ブザーが鳴って、二重扉6bが閉じなくなり、いわゆる入室制限がなされる(ステップS7)。利用者又はオーナーが、電源スイッチ601を「オフ」にして、制限解除となったかが判定される(ステップS8)。電源スイッチ601が「オフ」になり、制限解除となると、自動運転はその時点で終了する。これにより、換気不足による酸欠や二酸化炭素中毒をさらに確実に回避できるようになる。
【0056】
前記防音室1ではないが、本発明者は、同様の木造家屋で、前記屋根10上に太陽光発電パネル11を配置した経験をもっており、その発電効率を向上するために、太陽光発電パネル11の水洗浄をすることを考えた。具体的には、屋根10からの雨水は天水桶12を介して太陽光発電パネル11の洗浄水として利用できるようにする。その場合の電気系統と水系統とを示す模式図を
図8に示した。なお、
図8中の破線が電気系統、二点鎖線が水系統を示す。
【0057】
図8に示すように、太陽光発電パネル11で発生した直流(DC)は、インバータ501で交流(AC)に変換されて、配電盤502で散水装置13、換気装置14、その他の電気機器(エアコン、照明、楽器など)に給電される。ここで、余った電力は蓄電池503に蓄電されるか、電力量計504を経由して系統に戻されて売電される一方、不足電力は蓄電池503から給電されるか、電力量計504を経由して系統から給電されることとなる。
【0058】
屋根10から図示しない樋で集められた雨水は、地面GL付近に設けられた天水桶12に一旦蓄えられ、所定のタイミングにて前記散水装置13で太陽光発電パネル11の洗浄水として散水されるようにする。所定のタイミングは、黄
砂や鳥糞などで太陽光発電パネル11が汚れたときなど不定期なものであってもよいし、定期的なものであってもよい。
【0059】
この散水は、夏場において、ある程度は、室内の保冷効果を奏するものであり、冬場において、ある程度は、積雪を融解させる効果を奏するものである。天水桶12の貯水だけでは散水量が追い付かない場合は、水道水や井戸水を利用することができるようにし、天水桶12の貯水が余る場合は、庭園への散水などに利用することもできるようにしている。太陽光発電パネル11は屋根10上に載置しており、その屋根10の修理時などには簡単に取り外しでき、その修復も簡単にすることができるようになっている。
【0060】
なお、上記実施形態1,2では、防音室1として、貸音楽スタジオなどを例示しているが、その他大型インコや犬などの鳴き声の大きいペットを飼育する目的を有する防音室、自家用ディーゼル発電機や工作機械のように騒音を発する機械設備を内蔵する目的を有する防音室などであってもよい。
【0061】
また、上記実施形態1,2では、独立家屋で防音室1を構成しているが、必ずしも完全に独立した家屋でなくてもよく、例えば母屋の1階部分を防音室1としてもよい。また、木造家屋に代えて、コンクリート製の住宅やアパート・マンションの一室であってもよい。その場合には、夏場の防湿対策と冬場の乾燥対策とが必要となる。
【0062】
また、上記実施形態1,2では、第一、第二の防音材としてグラスウールを使用し、第三の防音材としてロックウールを使用しているが、そのいずれであってもよいし、その他同等の性能を有する材料であってもよい。ただし、作業員の健康と環境とに悪影響を与えかねない鉛などの高比重材料は一切使用しないものとする。
【0063】
また、グラスウールやロックウールなどは優れた断熱性能を有することから、外気温度が多少変動したとしても、室内温度はほぼ一定に維持できるので、楽器等の保管に有利であるといえる。
【0064】
ただし、外気温度がさらに高温或いは低温となった場合や、楽器や照明からの発熱量がある場合や、人間が入室している場合などの条件によっては、換気装置14だけでは十分とはいえないこともあり、その場合は、図示しないエアコンなどで対応すればよい。ただし、エアコンは換気機能がほとんどないことから、防音室1の換気システム8,8aは必須となる。
【0065】
また、上記実施形態1,2では、三重のガラス窓7を設けているが、少なくとも単層のガラス窓7であればよい。このガラスに代えて、透明なアクリルを採用してもよい。二重壁3や二重天井4は、防音性能によっては、さらに多重化してもよいし、その逆に単層の壁や天井としてもよい。
【0066】
また、上記実施形態1では、大人と子供との2種類の者に分けているが、大人と子供との中間を含めた3種類の者以上に分けてもよい。また電源スイッチ601と選択スイッチ602との操作を利用者又はオーナーがするとしているが、室内外に防犯用の監視カメラ607(実施形態2の
図4参照。)を装備する場合には、それを利用して室外から室内にいる大人に操作を指示するようにしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態2でも、大人と子供との中間を含めた3種類以上の者に分けてもよいが、センサが多くなり、その設定や動作が複雑化することがある。その場合は、監視カメラ607による画像パタンを、ディープラーニングなどのAI技術で解析することとしてもよい。また、センサはフォトインタラプタに限定されず、例えばロードセルを利用して大人と子供とを体重差で判断してもよい。さらに、超音波センサ、磁気センサなどを利用してもよい。
【0068】
また、上記実施形態1,2では、換気装置14を給気ファン14aと排気ファン14bとが一体化されたものとしているが、別個に設けてもよい。その場合には、例えば給気ファン14aの取り付け位置を二重壁3又は二重天井4とするとともに、排気ファン14bの取り付け位置を二重壁3の下部としてもよいし、その逆配置でもよい。また、換気装置14を複数設けて、パラレル運転又はシリーズ運転することとしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態1,2では、換気システム8,8aを防音室1の新築時に組み込んだものを例示しているが、この換気システム8,8aを既設の防音室に後付けするようにしてもよい。また、換気システム8,8aをコンプリートで装備する必要性はなく、その一部を装備することとしてもよいし、さらにオプションを追加装備することもできる。例えばペット用の防音室のように、要求される防音性能との関係ではあるが、給気ファンと排気ファンとの一方のみを備えることとしてもよい。また、環境によっては、給気ダクトのエアフィルを省略することとしてもよい。さらに、排気ファンの延長ダクトを設けて、子供のいる部位に開口することで、より安全なシステムを構築することもできる。