【実施例】
【0049】
[試料]
発明者は、各表中の酸触媒を使用し、植物系原料よりマンノースの抽出を試行した。市販の粉末状(ミル粉砕)のコーヒー豆にイオン交換水を添加してスラリー濃度を5重量%とし、これを30分間煮沸した。煮沸後濾過を3回以上繰り返してコーヒー豆抽出残渣を分離した。コーヒー豆抽出残渣を105±5℃に保温した乾燥機内で一晩乾燥し、粉砕機により0.3mm以下に粉砕した。こうして、植物系原料の試料となるコーヒー豆抽出残渣を得た。このコーヒー豆抽出残渣が各試作例の試料となる。
【0050】
<試作例1>
15mL
耐圧反応容器に、コーヒー豆抽出残渣0.5g(乾燥重量)に対し、第1酸触媒として1.0重量%のクエン酸0.05g、及びイオン交換水5.0gを添加して120℃を維持しながら20時間反応させた(第1加水分解工程S1)。反応終了後、反応生成物をメンブレンフィルター(孔径:0.2μm)を用いて分離し回収し、イオン交換水を過剰量通水して洗浄した(分離工程S2)。回収した反応生成物0.3gに対し、第2酸触媒として10%(v/v)の希硫酸0.3g、及びイオン交換水4.2gを添加し、140℃を維持しながら1時間反応させた(第2加水分解工程S3)。反応終了後氷温に冷却するとともに、反応容器内にイオン交換水9.3gを添加して希釈した。そして、シリンジフィルター(孔径:0.2μm)を用いて反応液を濾過し試作例1の抽出液を得た。
【0051】
<試作例2>
試作例1と同様の第1加水分解工程を経て得た反応生成物を分離回収し、該反応生成物0.3gに対し、第2酸触媒として10%(v/v)の希硫酸0.3g、及びイオン交換水4.2gを添加し、120℃を維持しながら3時間反応させた。反応終了後氷温に冷却するとともに、反応容器内にイオン交換水9.3gを添加して希釈した。そして、シリンジフィルター(前記同様)を用いて反応液を濾過し試作例2の抽出液を得た。
【0052】
<試作例3>
試作例1と同様の第1加水分解工程を経て得た反応生成物を分離回収し、該固形物0.3gに対し、第2酸触媒として木質固体酸触媒(フタムラ化学株式会社製、ZP150DH)0.3g、及びイオン交換水4.2gを添加し、140℃を維持しながら1時間反応させた。反応終了後氷温に冷却するとともに、反応容器内にイオン交換水9.3gを添加して希釈した。そして、シリンジフィルター(前記同様)を用いて反応液を濾過し試作例3の抽出液を得た。
【0053】
<試作例4>
第2加水分解工程の反応時間を3時間とする以外は試作例3と同じ方法で試作例4の抽出液を得た。
【0054】
<試作例5>
第2加水分解工程の反応温度を120℃とする以外は試作例4と同じ方法で試作例5の抽出液を得た。
【0055】
<試作例6>
第2加水分解工程の反応時間を6時間とする以外は試作例5と同じ方法で試作例6の抽出液を得た。
【0056】
<試作例7>
第1加水分解工程の第1酸触媒として10.0重量%のクエン酸0.05g、及びイオン交換水5.0gを添加し、90℃を維持しながら24時間反応させた以外は試作例4と同じ方法で試作例7の抽出液を得た。
【0057】
<試作例8>
第1加水分解工程の反応時間を48時間とする以外は試作例7と同じ方法で試作例8の抽出液を得た。
【0058】
<試作例9>
第1加水分解工程の反応時間を72時間とする以外は試作例7と同じ方法で試作例9の抽出液を得た。
【0059】
<試作例10>
第1加水分解工程の第1酸触媒として20.0重量%のクエン酸0.10g、及びイオン交換水5.0gを添加した以外は試作例7と同じ方法で試作例10の抽出液を得た。
【0060】
<試作例11>
第1加水分解工程の第1酸触媒として30.0重量%のクエン酸0.15g、及びイオン交換水5.0gを添加した以外は試作例7と同じ方法で試作例11の抽出液を得た。
【0061】
<試作例12>
第1加水分解工程の反応温度を140℃とし、反応時間を3時間とする以外は試作例4と同じ方法で試作例12の抽出液を得た。
【0062】
<試作例13>
第1加水分解工程の反応温度を160℃とし、反応時間を3時間とする以外は試作例4と同じ方法で試作例12の抽出液を得た。
【0063】
<試作例14>
第1加水分解工程の第1酸触媒として3.7重量%の硫酸0.0185g、及びイオン交換水5.0gを添加した以外は試作例4と同じ方法で試作例14の抽出液を得た。
【0064】
<試作例15>
第1加水分解工程の第1酸触媒として、1.8重量%の硫酸0.009g、及びイオン交換水5.0gを添加した以外は試作例4と同じ方法で試作例15の抽出液を得た。
【0065】
<試作例16>
第1加水分解工程の第1酸触媒として、10.0重量%の硫酸0.05g、及びイオン交換水5.0gを添加した以外は試作例4と同じ方法で試作例16の抽出液を得た。
【0066】
<試作例17>
第1加水分解工程の第1酸触媒として2.4重量%の塩酸0.012g、及びイオン交換水5.0gを添加した以外は試作例4と同じ方法で試作例17の抽出液を得た。
【0067】
<試作例18>
第1加水分解工程の第1酸触媒として1.2重量%の塩酸0.006g、及びイオン交換水5.0gを添加した以外は試作例17と同じ方法で試作例18の抽出液を得た。
【0068】
<試作例19>
第1加水分解工程の第1酸触媒として1.0重量%の酢酸0.005g、及びイオン交換水5.0gを添加して反応温度を140℃とした以外は試作例4と同じ方法で試作例19の抽出液を得た。
【0069】
<試作例20>
第1加水分解工程の第1酸触媒として10.0重量%の酢酸0.05g、及びイオン交換水5.0gを添加した以外は試作例19と同じ方法で試作例20の抽出液を得た。
【0070】
<試作例21>
第1加水分解工程の第1酸触媒として1.0重量%のシュウ酸0.005g、及びイオン交換水5.0gを添加した以外は試作例4と同じ方法で試作例21の抽出液を得た。
【0071】
<試作例22>
第1加水分解工程の第1酸触媒として10.0重量%のシュウ酸0.05g、及びイオン交換水5.0gを添加した以外は試作例21と同じ方法で試作例14の抽出液を得た。
【0072】
比較例として、第1加水分解工程S1を行わずにマンノース抽出処理を行った。第1加水分解工程S1を省略しているため、分離工程S2も省略される。
【0073】
<比較例1>
15mL耐圧反応容器に、コーヒー豆抽出残渣0.3g(乾燥重量)に対し、(第2)酸触媒として木質固体酸触媒(フタムラ化学株式会社製、ZP150DH)0.3g、及びイオン交換水4.2gを添加し、140℃を維持しながら3時間反応させた。反応終了後氷温に冷却するとともに、反応容器内にイオン交換水9.3gを添加して希釈した。そして、シリンジフィルター(前記同様)を用いて反応液を濾過し抽出液を得た。つまり、試作例4の第1加水分解工程と分離工程を省略して比較例1の抽出液を得た。
【0074】
<比較例2>
反応温度を120℃とし、反応時間を6時間とする以外は比較例1と同じ方法で比較例2の抽出液を得た。
【0075】
<比較例3>
酸触媒として10%(v/v)の希硫酸0.3g、及びイオン交換水4.2gを添加した以外は比較例1と同じ方法で比較例3の抽出液を得た。
【0076】
<比較例4>
酸触媒として10%(v/v)の希硫酸0.3g、及びイオン交換水4.2gを添加した以外は比較例2と同じ方法で比較例4の抽出液を得た。
【0077】
[マンノース生成量及びガラクトース生成量の測定]
分離工程S2により反応生成物M2と分離された溶液M3及び第2加水分解工程S3を含む全工程を経て得た抽出液M4中それぞれのマンノース量及びガラクトース量について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(株式会社島津製作所製、RID−10A)、カラム(昭和電工株式会社、品名:Shodex SUGAR SC1011、Shodex SUGAR SC0810連結)、オーブン(株式会社島津製作所製、CTO−20AC)、デガッサ(株式会社島津製作所製、DGU−20A3)を使用して測定した。はじめにマンノース、ガラクトースを各々2重量%ずつ添加した検量線溶液を調製してHPLCに装填した。そして、HPLCの対応するリテンションタイムに出現したピーク面積比から、測定対象のマンノース及びガラクトースの生成量を測定した。マンノースの生成量は残渣物0.1gから生成したマンノース重量(mg)として換算した(mg/0.1g)。
【0078】
植物系原料であるコーヒー豆抽出残渣に対し、マンノース抽出操作を行った結果を表1〜6に示す。第1加水分解工程における第1酸触媒の種類、添加量(重量%)、反応温度(℃)、反応時間(h)を示した。さらに、分離工程において分離された溶液M3内に含まれるマンノース量(mg/0.1g)とガラクトース量(mg/0.1g)及びガラクトース比率(%)を示した。ガラクトース比率(%)は、溶液M3中のガラクトース量とマンノース量の和に対するガラクトース量の比率であって、溶液M3中のガラクトース量をマンノース量とガラクトース量の和により除し、百分率とした。また、第2加水分解工程における第2酸触媒の種類、反応温度(℃)、反応時間(h)と、反応結果として第2加水分解工程終了後の抽出液に含まれるマンノース量(mg/0.1g)とガラクトース量(mg/0.1g)及びマンノース比率(%)を示した。マンノース比率(%)は、第2加水分解工程終了後の抽出液M4中のマンノース量とガラクトース量の和に対するマンノース量の比率であって、抽出液M4中のマンノース量をマンノース量とガラクトース量の総量で割った割合である。さらに、第2加水分解工程終了後の抽出液M4中のマンノースの純度を評価した純度評価(A,B,C及びF)と、該抽出液M4に含まれるマンノースの量について評価した収量評価(A,B,C及びF)である。最後に、純度評価と収量評価に基づいて総合評価(最優、優、良、可及び不良)を行った。
【0079】
ここで、コーヒー豆抽出残渣100gを高速液体クロマトグラフ法で分析試験したところ、マンノースは26.2g、ガラクトースは9.3gであった。つまり、コーヒー豆抽出残渣中のマンノースとガラクトースの成分比は約74:26である。このことから、純度評価において、マンノース比率が95%以上のものを「A」とした。マンノース比率が90%以上95%未満のものを「B」とした。マンノース比率が80%以上90%未満のものを「C」とした。マンノース比率が80%未満のものを「F」とした。
【0080】
収量評価においては、抽出液M4に含まれるマンノース生成量が10mg/0.1g以上のものを「A」とした。5mg/0.1g以上10mg/0.1g未満のものを「B」とした。5mg/0.1g未満のものを「C」とした。
【0081】
総合評価においては、純度評価と収量評価の両方が「A」のものを「最優」とした。純度評価と収量評価のどちらか一方が「A」で他方が「B」のものを「優」とした。純度評価と収量評価のどちらか一方が「A」で他方が「C」のものを「良」とした。純度評価と収量評価の両方が「C」のもの、及びどちらか一方が「B」で他方が「C」のものを「可」とした。純度評価と収量評価のどちらかに「F」があるものは「不可」とした。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
【表6】
【0088】
[結果と考察]
〈第1加水分解工程、分離工程について〉
全試作例と比較例1ないし4との比較から、第1加水分解工程及び分離工程を含む本発明の製造方法によって、最終的に得られるマンノースの純度は大幅に向上していることがわかる。第1加水分解工程における加水分解反応によって、原料であるコーヒー豆抽出残渣に含まれるガラクトース構造部が分解され溶出されることによって、最終的な抽出液に含まれるガラクトースの量が減少し、マンノースの比率(純度)が高くなると考えられる。このため、第1加水分解工程終了後には第1加水分解工程における加水分解反応後の反応生成物を分離回収し、反応液(溶液)を除去することがマンノースの純度を高めるために重要であることがわかった。
【0089】
〈第1加水分解工程における反応温度、反応時間について〉
試作例4と12を比較する。試作例4に対して、試作例12は反応温度を高く、反応時間を短く設定したところ、両者とも最終的に得られるマンノースの純度、収率ともに評価が良くなった。次に、試作例12と試作例13を比較する。試作例13の反応温度を試作例12よりも高温とすると、最終的に得られるマンノースの収量は減少した。これは、反応温度を高温にしすぎたために、コーヒー豆抽出残渣に含まれるマンノース構造部まで分解されてしまったことが理由であると考えられる。高温で加水分解処理を施したとしても、高純度のマンノース抽出液を得ることができるものの、適宜加水分解処理の反応温度や反応時間を調整すると、マンノースの収量も上がることがわかった。
【0090】
次に、試作例7〜9を比較する。試作例7〜9は、反応温度を低温の90℃として反応時間を変化させた例である。クエン酸は弱酸であって加水分解性能が低いため、反応温度が低温の90℃にあっては反応時間が長い試作例9がより良い結果を示した。また、試作例7,10,11を比較すると、クエン酸の添加量の多い試作例11がより良い結果を示した。反応温度が90℃、反応時間を24時間とした場合にあってはクエン酸の添加量を増やして加水分解性能を高めた方が良い結果となったと考えられる。
【0091】
これらの傾向から、マンノースの純度及び収量の評価を鑑みると、第1加水分解工程における、反応温度と反応時間の関係はおおよそ反比例していると考察することができる。第1酸触媒にクエン酸を採用すれば、反応温度と反応時間の条件を120℃で20時間ないし140℃で3時間とすると、マンノースの純度及び収量ともに良好な結果が得られることが分かった。また、第1酸触媒であるクエン酸の添加量を増やして加水分解性能を高めたところ、反応温度を低くしたり、反応時間を短くすることができることが分かった。
【0092】
〈第1酸触媒の種類について〉
第1加水分解工程における第1酸触媒について考察する。第2加水分解工程での第2酸触媒、反応温度及び反応時間が同一の試作例4,7〜22を比較すると、用いられる第1酸触媒は、弱酸であるクエン酸、酢酸若しくはシュウ酸又は強酸である硫酸若しくは塩酸でも高純度のマンノース抽出液が得られることがわかり、第1酸触媒は、クエン酸の他、様々な酸類を採用することができることがわかった。また、試作例14〜16、試作例17と18、試作例19と20、試作例21と22をそれぞれ比較すると、酸触媒の添加量が少ない方が最終的に得られるマンノースの生成量が増加する傾向があることがわかった。これは第2酸触媒に加水分解性能の高い強酸を使用したため、添加量を増やす(使用される酸触媒の加水分解性能がさらに高まる)ことによって、第1加水分解工程における加水分解でコーヒー豆抽出残渣に含まれ、反応生成物に残存させる予定であったマンノース構造部の一部まで分解されてしまったためであると考えられる。
【0093】
〈第1加水分解工程のまとめ〉
第1加水分解工程の目的は、原料に含まれる糖のガラクトマンナン構造のうち、ガラクトース構造部が分解、溶出されることである。そうすれば最終的に得られるマンノースの純度が高くなると考えられるからである。このことから、第1加水分解工程で使用される酸触媒は弱酸でも強酸でも構わない。第1加水分解工程の段階でマンノース構造部が分解、溶出されてしまうと最終的に得られるマンノースの量が減少してしまう。このため、用いられる第1酸触媒の種類によって、添加量や反応温度、反応時間を適宜調整するのが良い。第1酸触媒の添加量を増加させれば、反応温度を低くしたり、反応時間を短く調整するのが良い。同様に、反応温度を高くすれば、反応時間を短くしたり、第1酸触媒の添加量を少なく調整するのが良い。反応時間を長くすれば、反応温度を低くしたり添加量を少なく調整するのが良い。つまり、原料に含まれるガラクトマンナン中のガラクトース構造部が分解され、マンノース構造部が分解されない条件で、第1酸触媒の種類、添加量、反応温度及び反応時間を決定すれば、最終的に得られるマンノースの純度及び収量が上がることがわかった。これら第1加水分解工程の条件は、第2加水分解工程終了後の抽出液中のマンノース量とガラクトース量の和に対するマンノース量の比率が80%以上の範囲で、第1加水分解工程で得られる溶液中のガラクトース量とマンノース量の和に対する該ガラクトース量の比率が38%以上となるように、第1酸触媒の種類、添加量を調整し、90〜160℃の温度条件下で3〜72時間加熱されるのがよいと考えられる。
【0094】
〈第2加水分解工程の第2酸触媒の種類について〉
第2加水分解工程においては、原料からガラクトース構造部が分解、除去された反応生成物が加水分解処理される工程であることから、使用される第2酸触媒は特に限定されない。試作例1と3、試作例2と5を比較すると、反応温度の高い試作例1と3ではマンノースの比率はほぼ同等で、マンノースの生成量は試作例1の方が多く、試作例2と5では試作例2の方がマンノースの純度及び収量の両者とも優れている。これは、用いられた第2酸触媒の加水分解性能の差によるものであると考えられる。第2酸触媒が加水分解性能が高い強酸であれば、低い反応温度で短時間でマンノースを十分に分解、抽出することができることがわかった。第2酸触媒が加水分解性能が低い弱酸であっても反応温度を高くしたり、反応時間を長くすればマンノースを十分に分解、抽出することができると考えられる。前述の通り、固体酸が第2酸触媒として用いられると、抽出液の分離が容易であるため、マンノースの抽出環境や使用目的等に応じて任意の酸触媒を選択することが可能である。
【0095】
〈第2加水分解工程における反応温度、反応時間について〉
次に、試作例3と4、試作例5と6を比較する。反応時間が高い方がマンノースの純度及び収量がより向上している。そして、試作例4と5を比較すると、反応温度が高い方がマンノースの純度及び収量がより向上している。第1加水分解反応により得た反応生成物に含まれるマンノース構造部がしっかりと分解されてマンノースがより多く溶出されたと考えられる。また、反応温度が低くとも反応時間を長くすることによって、マンノースの生成量及び比率を向上させることができることがわかった。第1加水分解工程より得た反応生成物に対して加水分解反応を生ぜしめればマンノースが生成される。このため、第2加水分解工程でも、第1加水分解工程と同様に、使用される酸触媒の種類に応じて反応温度の温度域と反応時間を適宜調整するのが良い。第2加水分解工程に用いられる第2酸触媒が希硫酸の場合は高温の140℃で1時間程度の短い時間反応させるのが良いし、木質系固体酸の場合は高温の140℃で3時間反応させるのが良い。弱酸の酸触媒が用られる場合であっても高温で長時間反応させることで、マンノースの生成量(収量)と比率(純度)を向上させることができると考えられる。
【0096】
〈まとめ〉
第1加水分解工程によって、原料に含まれるガラクトースを事前に分解し、分離、除去することによって、第2加水分解工程ではマンノースが高純度で抽出されることとなる。第1加水分解工程では、加水分解速度の速いガラクトースとマンノースを結合するα−1,6−グリコシド結合を主に分解することによって、ガラクトースが極めて少量であってマンノースを多く含む反応生成物が得られる。第1加水分解工程において用いられる第1酸触媒は特に限定されないが、加水分解速度の遅いβ−1,4−グリコシド結合を分解せずに加水分解速度の速いα−1,6−グリコシド結合を分解する観点から、弱酸の酸触媒を使用した方がとりまわしが良いと考えられる。
【0097】
分解されたガラクトース等は溶液中に溶出される。このため、分離工程により溶液を分離、除去することによって、既に分解されたガラクトースを反応生成物から分離することができるのである。第2加水分解工程では、反応生成物に含まれるマンノース構造部のマンノース同士を結合するβ−1,4−グリコシド結合を加水分解することによって、高純度のマンノースを抽出することができる。第2加水分解工程についても、使用される第2酸触媒は特に限定されない。特には、固体酸触媒を使用すると、マンノース抽出液との分離が非常に容易であるため、好適である。
【0098】
前述の通り、第1加水分解工程において溶出されるマンノース量とガラクトース量の和に対するガラクトース量の比率が38%以上となるように調整されると最終的に得られるマンノースの収量及び純度評価が高い傾向にある。例えば、試作例4,16,22を比較する。第1加水分解工程における溶液中のガラクトース比率が約49%の試作例4は最終的なマンノースの純度及び収量の評価はともに優れている。ガラクトース比率が約32%の試作例16と、約30%の試作例22は、マンノースの収量が試作例4と比較して少なくなった。また、マンノースの収量が減少したため、ガラクトースの溶出量が少なくともマンノースの純度評価が下がったと考えられる。
【0099】
これまで述べた通り、植物系原料に対して第1酸触媒を混合、加熱する第1加水分解工程と、該第1加水分解工程により得られた反応生成物と第1加水分解工程により溶出した成分を含む溶液とを分離する分解工程と、該反応生成物に第2酸触媒を添加し加熱する第2加水分解工程を経ることによって高純度のマンノースを得ることができる。特に、第1加水分解工程が、90〜160℃の温度条件下で反応時間を3〜72時間適宜加熱されることにより、最終的に得られるマンノースの比率が80%を超え、高純度のマンノースを得ることができる。また、第1加水分解工程で得られる溶液中のガラクトース量とマンノース量の和に対する該ガラクトース量の比率が38%以上とすると、最終的に得られるマンノースの収量も増加する傾向があることが分かった。
【0100】
高純度のマンノースは医薬等に用いられるため需要が高い。マンノースとガラクトースは構造が非常に近似しているため、分離が容易ではなく、分離する際にはコストと手間が非常にかかってしまう。従って、極めて容易に植物系食品残渣物から高純度のマンノースを抽出することができる本発明のマンノース抽出方法は、非常に有用である。