特許第6902784号(P6902784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902784
(24)【登録日】2021年6月24日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】遊技機のヒンジ装置
(51)【国際特許分類】
   A63F 7/02 20060101AFI20210701BHJP
【FI】
   A63F7/02 326E
   A63F7/02 326A
   A63F7/02 326C
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-130317(P2017-130317)
(22)【出願日】2017年7月3日
(65)【公開番号】特開2019-13267(P2019-13267A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】592113865
【氏名又は名称】株式会社新太陽
(74)【代理人】
【識別番号】100112531
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】江場 登
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚也
【審査官】 渡辺 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−043398(JP,A)
【文献】 特開2004−121365(JP,A)
【文献】 特開2015−182616(JP,A)
【文献】 特開2007−138567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体に対し被支持体を開閉可能にする遊技機のヒンジ装置であって、
前記枠体の一側辺の内側に前後方向に摺動自在となるように設けた摺動部材と、前記枠体の一側辺の内側に前記摺動部材の摺動方向と平行になるように設けられたラック歯と、前記摺動部材に立設されたヒンジ軸と、前記ヒンジ軸を中心とする曲率の円弧状歯部を有し前記ラック歯に対して噛合する歯車体と、前記被支持体と前記歯車体とを連結する連結手段とを備え、
前記ヒンジ軸に前記被支持体と前記歯車体を枢着し、前記歯車体が前記被支持体と一緒に前記ヒンジ軸を支点として回転するのに伴い該被支持体が該ヒンジ軸と共に前記ラック歯に沿って前後方向に移動するようにしたことを特徴とする遊技機のヒンジ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機、スロットマシン等の遊技機において、機枠に対し被支持体を開閉可能に支持する遊技機のヒンジ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、遊技場の島台に隣接状に多数固設されるパチンコ遊技機は、前面が開口した方形枠状の機枠(枠体)に被支持体としての本体枠を開閉可能にヒンジすると共に、本体枠(枠体)に被支持体としての前面扉を開閉可能にヒンジして構成されている。
【0003】
ところで、一般的に本体枠の前面に開閉可能に軸支された前面扉の前面両側縁部には、装飾体や種々の演出装置が前方へ突出するように設けられているが、近年、それら装飾体や演出装置が巨大化する傾向にある。そのため、前面扉を前方に開いたり、或いは前面扉と一緒に本体枠を前方に開く際、装飾体や演出装置が遊技機の左側に設置された他の遊技機や球貸装置と衝突してしまうおそれがあり、また、こうした干渉を避けようとすると前方に開く際の開角度が制限され、遊技機内を点検しメンテナンス作業等をするのに支障が生じるおそれがあった。
【0004】
なお、下記特許文献1,2に示された発明は、機枠に横方向に延びるガイド溝を設け、本他枠を開いた際に該本体枠の軸支部が該ガイド溝にそって内方に移動することで、本体枠を開く際の干渉、衝突が避けられるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4665407号公報
【特許文献2】特許第4320460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に示された構造では、本体枠を開いても該本体枠の軸支部が機枠から離れることなくガイド溝に沿って横方向に移動するだけであるので、本体枠の軸支部の裏側等の細部が点検し難く、メンテナンス作業等もし難いことがあった。
【0007】
そこで本発明は、前記課題を解決すべく、被支持体を開くと、被支持体がその軸支部と共に前方へ移動するようにして、被支持体の前側に膨出する装飾体等が隣接する遊技機等に衝突してしまうという弊害を回避できると共に、被支持体を開放して内部を点検、メンテナンス等をする場合においても当該作業を容易に行うことができる遊技機のヒンジ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するために本発明に係る遊技機のヒンジ装置は、枠体に対し被支持体を開閉可能にする遊技機のヒンジ装置であって、前記枠体の一側辺の内側に前後方向に摺動自在となるように設けた摺動部材と、前記枠体の一側辺の内側に前記摺動部材の摺動方向と平行になるように設けられたラック歯と、前記摺動部材に立設されたヒンジ軸と、前記ヒンジ軸を中心とする曲率の円弧状歯部を有し前記ラック歯に対して噛合する歯車体と、前記被支持体と前記歯車体とを連結する連結手段とを備え、前記ヒンジ軸に前記被支持体と前記歯車体を枢着し、前記歯車体が前記被支持体と一緒に前記ヒンジ軸を支点として回転するのに伴い該被支持体が該ヒンジ軸と共に前記ラック歯に沿って前後方向に移動するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のヒンジ装置によれば、被支持体を前方へ大きく繰り出すように開放することができるため、遊技機の前面に前方へ膨出する大型の装飾部材等を装着したとしても、それが隣接する遊技機や球貸し機等に衝突するといった弊害を解消することができる。また、被支持体を広く開放することができるため、遊技機内の点検やメンテナンス作業も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】パチンコ遊技機の斜視図。
図2】前面扉を外したパチンコ遊技機の斜視図。
図3】パチンコ遊技機の左側面図。
図4】ヒンジ装置の分解斜視図。
図5】ヒンジ装置の要部拡大図。
図6図7(a)のA−A線断面図。
図7】ヒンジ装置の作動状態図。
図8】ヒンジ装置の要部拡大図。
図9】ヒンジ装置の要部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明に係る遊技機のヒンジ装置は、例えば、パチンコ遊技機、スロットマシン、雀球機、アレパチ機等の種々の遊技機に適用可能であるが、本実施の形態では、パチンコ遊技機に適用した例を説明する。そこで、まず、パチンコ遊技機についてあらかじめ説明しておく。図1は、パチンコ遊技機の斜視図、図2は前面扉を外したパチンコ遊技機の斜視図である。パチンコ遊技機は、縦長な方形状に枠組み形成される機枠1と、機枠1の一側に設けられたヒンジ装置hと、機枠1の前側にヒンジ装置hを介して開閉自在に装着されている被支持体としての本体枠2と、本体枠2の前側にヒンジ装置hを介して開閉自在に装着されている前面扉3とによって概略構成されている。なお、この実施の形態において「前側」とはパチンコ遊技機の正面側、「後側」とはパチンコ遊技機の背面側、「右側」「左側」とはパチンコ遊技機を正面から見た場合の右側、左側をそれぞれ指すこととする。
【0012】
前記機枠1は、上下に配置される上枠板10及び下枠板11、左右に配置される側枠板12,13を組み合わせることで縦長な方形枠状に形成されている。具体的には、上枠板10の右端上面と右側枠板12の上端外側面、下枠板11の右端下面と右側枠板12の下端外側面、上枠板10の左端上面と左側枠板13の上端外側面、下枠板11の左端下面と左側枠板13の下端外側面のそれぞれに連結部材14,15,16,17を配置してビス止めすることによって縦長な方形枠状に形成されている。そして、機枠1の左端部分に本発明に係るヒンジ装置hが形成されている。このヒンジ装置hについての詳細は後述する。なお、図示はしないが下枠板11の前方に、合成樹脂製の装飾カバーが装着されることになる。
【0013】
前記本体枠2は、上下に配置される上囲繞部材18及び下囲繞部材19、左右に配置される側部囲繞部材20,21を組み合わせることで縦長な方形枠状に形成されており、そのサイズは、機枠1の下端部分を除く前面を略覆うサイズになっている。また、本体枠2の左側の上下隅角部、具体的には、上囲繞部材18の左端上端部と下囲繞部材19の左端下端部のそれぞれに機枠1に形成されたヒンジ装置hにヒンジする受け板22,23が形成されている。この受け板22,23は、上囲繞部材18の上端部と下囲繞部材19の下端部のそれぞれから前方へ張り出すように延出させた略正方形状の板材で、後述するヒンジ軸33,34が挿通される軸挿通孔22a,23aと連結ピン37,38が挿通されるピン挿通孔22b,23bが穿設されている。さらに、本体枠2の下囲繞部材19の上側に、方形状の遊技盤収納凹部24が形成されており、この遊技盤収納凹部24に図示はしないが遊技球を流下させる遊技盤が配設されることになる。そして、この遊技盤の前面には、入賞装置、遊技釘、球誘導レール等が配設され、遊技盤の後側には、球タンク、通路部材、球払出装置、各種制御基板等が配設されることになる。また、下囲繞部材19には、図示はしないが打球発射装置等が配設されることになる。さらに、右側部囲繞部材20に施錠装置25が配設されている。
【0014】
前記前面扉3は、上下に配置される上枠部材26及び下枠部材27、左右に配置される側枠部材28,29を組み合わせることで縦長な方形枠状に形成されており、そのサイズは、本体枠2の前面を略覆うサイズになっている。このうち、下枠部材27は、本体枠2の下囲繞部材19の前面全体を覆う板状に形成されている。また、前面扉3の下枠部材27を除く部分は開放部になっており、図示はしないが該開放部を後方から塞ぐようにして一対の透明板ユニットが装着されることになる。さらに、前面扉3の下枠部材27の前面には、図示はしないが球受皿、操作ハンドル等が装着されることになり、また、前面扉3の周囲前面には、前側に膨出する大型の装飾用の合成製樹脂カバーが装着されることになる。
【0015】
次に、パチンコ遊技機に形成されているヒンジ装置hについて図4を参照しながら説明する。ヒンジ装置hは、機枠1の左側部分、すなわち、機枠1の左側辺を形成する左側枠板13の内側部分、及び左側枠板13の上下のそれぞれに配置される左上連結部材16及び左下連結部材17の内側部分に形成されている。具体的には、左側枠板13の内側に前後方向に摺動自在となるように設けられた摺動部材を備えたスライド手段30と、左上連結部材16及び左下連結部材17のそれぞれの内側面に設けられ複数のラック歯が形成されたラック部材31,32と、摺動部材に立設されたヒンジ軸33,34と、ヒンジ軸33,34に枢着されている歯車体35,36と、本体枠2と歯車体35,36とを連結する連結手段としての連結ピン37,38とによって概略構成されている。
【0016】
前記左上連結部材16は、機枠1の上枠板10の左端上面に取り付けられる上水平板部16aと、上水平板部16aの左端部から下側に直角に屈曲され左側枠板13の上端外面に取り付けられる上垂直板部16bとによって形成されている。そして、上水平板部16aには、その前後方向の後よりの位置であり且つ右端部に上枠板10に螺着するための上枠用ネジ孔40,40が穿設されていると共に、その前後方向の前寄りの位置であり且つ上枠用ネジ孔40,40よりもやや中央よりに上ラック部材31を螺着するためのラック部材用ネジ孔41,41が穿設されている。他方、上垂直板部16bには、その前後方向の後よりの位置に前後方向に所定の長さを有する2つの外側長孔42,43が上下に並べて穿設されており、上側の外側長孔42には、その上端であり且つ前後両端に上方へ延長する縦長半円状の縦孔42a,42aが外側長孔42に連続して穿設されている。また、上垂直板部16bの下端には縦長半円状の切欠44,44が形成されている。さらに、上垂直板部16bの縦孔42a,42a、及び切欠44,44のそれぞれの間に左側枠板13に螺着するための左側枠板用ネジ孔45,45・・・が穿設されている。また、上垂直板部16bの前後方向前寄りの上端部に上ラック部材31を螺着するためのラック部材用ネジ孔46,46が穿設されている。なお、左上連結部材16は、図1乃至図3に示されているように、上枠板10及び左側枠板13に取り付けた状態において、前後方向の前半部が上枠板10及び左側枠板13よりも前方に突出するようになっている。
【0017】
そして、左上連結部材16の前方へ突出した部分の内側に上ラック部材31が装着されている。この上ラック部材31は、左上連結部材16の上水平板部16aの下面に当接して螺着される略正方形のベース板部31aと、ベース板部31aの左端部から直角に延出し左上連結部材16の上垂直板部16bの内面に当接して螺着される延出板部31bとによって形成されており、上ラック部材31のベース板部31aと延出板部31bの境界部分にその歯先が内側を向くように複数のラック歯48,48・・・が形成されている。また、上ラック部材31のベース板部31a下面の右端寄りの位置にラック歯48と対向するようにガイド片49が立設されている。さらに、ベース板部31aの右端に螺子挿通孔50,50が穿設されていると共に、延出板部31bの下端部に螺子挿通孔51,51が穿設されている。そして、ベース板部31aの螺子挿通孔50,50から左上連結部材16の上水平板部16aのラック部材用ネジ孔41,41にネジ止めすることで、上ラック部材31のベース板部31aが上水平板部16aに固着され、延出板部31bの螺子挿通孔51,51から左上連結部材16の上垂直板部16bのラック部材用ネジ孔46,46にネジ止めすることにより、上ラック部材31の延出板部31bが上垂直板部16bに固着される。これにより、機枠1の内側面、具体的には、左上連結部材16の内側面にラック歯48,48・・・の複数の歯が前後方向に連なるように存在することになる。
【0018】
前記左下連結部材17は、機枠1の下枠板11の左端下面に取り付けられる下水平板部17aと、下水平板部17aの左端部から上側に直角に屈曲され左側枠板13の下端外面に取り付けられる下垂直板部17bと、下枠板11の後側面及び左側枠板13の後側面に当接される後当接板部17cとによって形成されている。また、下垂直板部17bの上下方向の上半部は、下半部よりも前方に延長されており、その延長部分の下端部に内側へ水平に延出する前方張出板部17dが形成されている。そして、下水平板部17aには、その前後方向の後よりの位置であり且つ右端部に下枠板11及び後述する台座部材55に螺着するための下枠用ネジ孔56,56が穿設されている。他方、下垂直板部17bには、その上半部であり前後方向の後よりの位置に前後方向に所定の長さを有する2つの外側長孔57,58が上下に並べて穿設されており、下側の外側長孔58には、その下端であり且つ前後両端に下方へ延長する縦長半円状の縦孔58a,58aが外側長孔58に連続して穿設されている。また、下垂直板部17bの上端には縦長半円状の切欠59,59が形成されている。さらに、下垂直板部17bの縦孔58a,58a、及び切欠59,59のそれぞれの間に左側枠板13に螺着するための左側枠板用ネジ孔60,60・・・が穿設されている。また、下垂直板部17bの下半部に台座部材55に螺着する台座部材用ネジ孔61,61・・・が4つ穿設されている。さらに、下垂直板部17bの前方に延長されている部分に下ラック部材32を螺着するためのラック部材用ネジ孔63,63が穿設されており、前方張出板部17dの右端寄りの位置に下ラック部材32を螺着するためのラック部材用ネジ孔64,64が穿設されている。また、後当接板部17cに台座部材55を螺着するための台座部材用ネジ孔65が穿設されている。そして、左下連結部材17の下側に台座部材55が固着されている。この台座部材55は、底板55aと左側板55bと天板55cと後側板55dによって形成されており、底板55aに2箇所、左側板55bに4箇所、後側板55dに1箇所の固着用ネジ孔66,66・・・が穿設されている。そして、台座部材55の底板55aが左下連結部材17の下水平板部17a上に配置された下枠板11上に載置されて、下水平板部17aの下枠用ネジ孔56,56から挿通されたネジにより底板55aのネジ孔66,66に下枠板11と共に螺着されている。また、台座部材55の左側板55bが左下連結部材17の下垂直板部17bに当接され、下垂直板部17bの台座部材用ネジ孔61,61・・・から挿通されたネジにより左側板55bのネジ孔66,66に螺着され、台座部材55の後側板55dが左下連結部材17の後当接板部17cの台座部用ネジ孔65から挿通されたネジにより後側板55dのネジ孔66に螺着されている。なお、左下連結部材17の下垂直板部17b及び前方張出板部17dは、図1乃至図3に示されているように、左下連結部材17を下枠板11及び左側枠板13に取り付けた状態において、下枠板11及び左側枠板13よりも前方に突出するようになっている。
【0019】
そして、左下連結部材17の前方へ突出した部分の内側に下ラック部材32が装着されている。この下ラック部材32は、左下連結部材17の前方張出板部17dの上面に当接して螺着される略正方形のベース板部32aと、ベース板部32aの左端部から直角に延出し左下連結部材17の下垂直板部17bの内面に当接して螺着される延出板部32bとによって形成されており、下ラック部材32のベース板部32aと延出板部32bの境界部分にその歯先が内側を向くように複数のラック歯67,67・・・が形成されている。また、下ラック部材32のベース板部32aの右端寄りの位置にラック歯67と対向するようにガイド片68が立設されている。さらに、ベース板部32aの右端に螺子挿通孔69,69が穿設されていると共に、延出板部32bの上端部に螺子挿通孔70,70が穿設されている。そして、ベース板部32aの螺子挿通孔69,69から左下連結部材17の前方張出板部17dのラック部材用ネジ孔64,64にネジ止めすることで、下ラック部材32のベース板部32aが前方張出板部17dに固着され、延出板部32bの螺子挿通孔70,70から左下連結部材17の下垂直板部17bのラック部材用ネジ孔63,63にネジ止めすることにより、下ラック部材32の延出板部32bが下垂直板部17bに固着される。これにより、機枠1の内側、具体的には、左下連結部材17の内側面にラック歯67,67・・・の複数の歯が前後方向に連なるように存在することになる。
【0020】
前記左上連結部材16に固着された上ラック部材31と前記左下連結部材17に固着された下ラック部材32のそれぞれに円形形状であり且つ外周に複数の歯部が形成された上歯車体35と下歯車体36が配設されており、上ラック部材31のラック歯48に上歯車体35が噛合し、下ラック部材32のラック歯67に下歯車体36が噛合している。また、これら上歯車体35と下歯車体36には、その中心に上ヒンジ軸33と下ヒンジ軸34のそれぞれを挿通するためのヒンジ軸孔35a,36aが形成されており、また、ヒンジ軸孔35a,36aの側方(図4では右側)に上連結ピン37と下連結ピン38のそれぞれを挿通するためのピン用孔35b,36bが形成されている。
【0021】
前記左側枠板13は、縦長の平板からなる縦板部13aと、縦板部13aの上下端部のそれぞれを内側へ直角に折曲して形成した横板部13b,13cとで正面視逆コ字型に形成されている。このうち、横板部13b,13cは、その先端側が縦板部13aの前端よりも前方へ延出しており、全体として前後方向が長い矩形状になっている。また、上側の横板部13bの右端部分は下方へ直角に屈曲させた折返案内片13dが、下側の横板部13cの右端部分は上方へ直角に屈曲させた折返案内片13eが形成されている。さらに、上側の横板部13bと下側の横板部13cには、後述する摺動板101,102及び被覆板116,117を螺着するネジ孔72,73が2つずつ穿設されている。また、上側の横板部13bの下面と下側の横板部13cの上面には、前後方向に所定の長さを有する細幅の円弧状膨出部74,75が横並びに2つずつ形成されている。他方、縦板部13aには、その上端部に前後方向に所定長さを有する2つの内側長孔76,77が上下に並んで穿設されていると共に、縦板部13aの下端部に前後方向に所定長さを有する2つの内側長孔78,79が上下に並んで穿設されている。他方、縦板部13aの上端部の上側の内側長孔76の上方と下側の内側長孔77の下方のそれぞれに後述するギア体移動板80を固着するためのギア体移動板用ネジ孔81,81・・・が各々4つずつ穿設されている。同様に、縦板部13aの下端部の上側の内側長孔78の上方と下側の内側長孔79の下方のそれぞれにギア体移動板82を固着するためのギア体移動板用ネジ孔83,83・・・が各々4つずつ穿設されている。さらに、ギア体移動板用ネジ孔81のうち下側に位置するものの下方であり左側枠板13の前端部にスライド部材用ネジ孔89が穿設されており、ギア体移動板用ネジ孔83のうち下側に位置するものの上方であり左側枠板13の前端部にスライド部材用ネジ孔90が穿設されている。そして、左側枠板13の縦板部13aの上端部と下端部のそれぞれにギア体移動板80,82が装着されている。このギア体移動板80,82は、矩形状の板材であり、後述する移動補助ギア体92,93の小径ギア96,97を移動させるための横長長方形のギア用矩形孔85〜88が上下に2つずつ並んで穿設されている。また、各々のギア体移動板80,82の上側のギア用矩形孔85,87の下辺部には歯先が上向きのラック歯85a,85a・・・、87a,87a・・・が形成されており、各々のギア体移動板80,82の下側のギア用矩形孔86,88の上辺部には歯先が下向きのラック歯86a,86a・・・、88a,88a・・・が形成されている。そして、上側のギア体移動板80は、左側枠板13の上端外側面に当接させた左上連結部材16の上水平板部16aの左側枠板用ネジ孔45,45から左側枠板13のギア体移動板用ネジ孔81,81・・・とギア体移動板80のネジ孔にネジを挿通して螺着されている。また、下側のギア体移動板82は、左側枠板13の下端外側面に当接させた左下連結部材17の下水平板部17aの左側枠板用ネジ孔60,60から左側枠板13のギア体移動板用ネジ孔83,83とギア体移動板82のネジ孔にネジを挿通して螺着されている。
【0022】
前記ギア体移動板80,82には、移動補助ギア体92,93が装着されている。この移動補助ギア体92,93の各々は、図9に示されているように、周囲に歯部が形成された円形であり且つ同径の大径ギア94a,94b、95a,95bを上下に並べて互いに噛合させると共に、これら大径ギア94a,94b、95a,95bのそれぞれの左側に該大径ギア94a,94b、95a,95bよりも径の小さな円形の小径ギア96a,96b、97a,97bを固着して形成されている。そして、上側の小径ギア96a,97aの歯部をギア体移動板80,82のギア用矩形孔85,87の下辺部に形成されたラック歯85a,87aに噛合させ、下側の小径ギア96b,97bの歯部をギア体移動板80,82のギア用矩形孔86,88の上辺部に形成されたラック歯86a,88aに噛合させている。
【0023】
前記スライド手段30は、左側枠板13の内側に配置される部材で、縦長の平板からなるスライド縦板100と、スライド縦板100の上下端部のそれぞれを内側へ直角に折曲して形成したスライド部材としての摺動板101,102とによって正面視略逆コ字型に形成されている。そして、スライド縦板100の上端部100aと下端部100b、具体的には、スライド手段30を左側枠板13に装着した際、左側枠板13に固着されたギア体移動板80,82に臨む部分が段差を介して若干内側に位置するようにして左側枠板13の縦板部13aとの間に間隙ができるようにし、この間隙部分に移動補助ギア体92,93を配置し得るようにしてある。また、スライド縦板100の上端部100aと下端部100bのそれぞれにギア体用ネジ孔95,96が穿設されている。さらに、スライド縦板100の上端部100aの下方と下端部100bの上方のそれぞれに前後方向に所定の長さを有するスライド長孔105,106が穿設されている。他方、摺動板101,102は、その先端側がスライド縦板100の前端よりも前方へ延出しており、全体として前後方向が長い矩形状になっている。また、摺動板101,102のそれぞれの前端左側には半円弧状に延出する軸挿通部107,108が形成されており、これら軸挿通部107,108にヒンジ軸33,34を挿通する軸孔110,111が穿設されている。さらに、摺動板101,102のそれぞれには、その前後方向の前寄りの位置であり且つ右端部に前後方向に所定の長さを有する第1長孔112,113が穿設されていると共に、その前後方向の後寄りの位置であり且つ幅方向の略中央部に第2長孔114,115が穿設されている。また、上下の摺動板101,102の上側に該摺動板101,102と同一形状の被覆板116,117がそれぞれ螺着されている。そして、この被覆板116,117には、その前端左側の軸挿通部118,119にヒンジ軸33,34を挿通する軸孔120,121が穿設されている。また、被覆板116,117には、摺動板101,102と同じように第1長孔122,123、第2長孔124,125が穿設されているが、被覆板116,117の第1長孔122,123及び第2長孔124,125は、摺動板101,102の第1長孔112,113及び第2長孔114,115よりも幅広になっている。ちなみに、本実施形態において、摺動板に被覆板が固着されて摺動部材として機能することになる。
【0024】
なお、スライド手段30を左側枠板13に装着するにあたっては、まず、スライド手段30をその摺動板101,102が左側枠板13の横板部13b,13cの内側に位置するように左側枠板13に接近させる。この時、左上連結部材16の内側に固着されている上ラック部材31に上歯車体35を配置しておき、上歯車体35のヒンジ軸孔35aに挿通され下方に突出する上ヒンジ軸33に摺動板101の軸孔110を遊嵌させる。同様に左下連結部材17の内側に固着されている下ラック部材32に下歯車体36を配置しておき、下歯車体36のヒンジ軸孔36aに挿通され上方に突出する下ヒンジ軸34に摺動板102の軸孔111を遊嵌させる。また、スライド縦板100の上端部100aのギア部材用ネジ孔103,103と、下端部100bのギア部材用ネジ孔104,104からネジ130,131を挿通して左側枠板13のギア体移動板80,82に配置した移動補助ギア体92,93を取着する。具体的には、左上連結部材16の外側長孔42,43の双方に外側から雌螺子部材132,132の軸筒を挿入し、該雌螺子部材132,132の軸筒を左側枠板13の内側長孔76,77、ギア体移動板82のギア用矩形孔85,86、及び移動補助ギア体92の軸孔を貫通させる。そして、スライド縦板100のギア部材用ネジ孔103,103に臨む雌螺子部材132,132の雌螺子部分にネジ130,130を螺着する。同様に、左下連結部材17の外側長孔57,58の双方に外側から雌螺子部材133,133の軸筒を挿入し、該雌螺子部材133,133の軸筒を左側枠板13の内側長孔78,79、ギア体移動板82のギア用矩形孔87,88、及び移動補助ギア体93の軸孔を貫通させる。そして、スライド縦板100のギア部材用ネジ孔104、104に臨む雌螺子部材133,133の雌螺子部分にネジ131,131を螺着する。さらに、スライド縦板100の上方と下方のそれぞれに穿設されているスライド長孔105,106に内側(右側)から雌螺子部材134,135を挿通し、この雌螺子部材134,135の雌螺子部分に左側枠板13の外側(左側)からスライド部材用ネジ孔89,90に挿入したネジ136,137によって螺着する。また、スライド手段30の上下の被覆板116,117の第1長孔122,123及び第2長孔124,125にネジ138,138、139,139を挿通し、左側枠板13の横板部13b,13cのネジ孔72,73に螺着する。最後に、本体枠2をヒンジ装置hに装着する。すなわち、上ラック部材31に配設され下方へ突出する上ヒンジ軸33と上連結ピン37、及び下ラック部材32に配設され上方へ突出する下ヒンジ軸34と下連結ピン38のそれぞれに、本体枠2の左側隅角部に形成された受け板22,23の軸挿通孔22a,23aとピン挿通孔22b,23bを遊嵌させる。これにより、スライド手段30は、左側枠板13に対して、前後方向へ摺動自在に装着される。
【0025】
次に上記のように構成された本実施形態のヒンジ装置hの作用について図7を参照しながら説明する。なお、図7では、説明の便宜上、機枠1に本体枠2のみを装着し、前面扉3を装着していないパチンコ遊技機を示している。また、上側の摺動部材と下側の摺動部材は、同じ動作をするので下側の摺動部材を例として説明する。また、本実施の形態で摺動部材は、摺動板101と該摺動板101に固着された被覆板117とで構成されているが、説明の便宜上、符号は117とのみ記載する。図7(a)は、機枠1に対して本体枠2を閉止している状態である。この状態では、摺動部材117の後端が機枠1の後端に位置していると共に、下歯車体36は左下連結部材17の前方張出板部17d上に位置している。そして、図7(b)に示されているように、本体枠2を開放すべく本体枠2について下ヒンジ軸34を支点として前方へ回動させると、下歯車体36と本体枠2の受け板23が連結ピン38によって連結されていることから下歯車体36も一緒に回動する。そして、下歯車体36の歯部が下ラック部材32のラック歯67,67・・・に噛合していると共に、ヒンジ軸34は、下歯車体36と受け板23のみならず、摺動部材117にも貫通していることから下歯車体36が回動するのに伴い、下歯車体36がラック歯67,67・・・に沿って前進し、且つ摺動部材117及びヒンジ軸34も一緒に前進する。ちなみに、摺動部材117は、横板部13cの折返案内片13dに沿って移動するので、左右にぶれることなく真っ直ぐに移動することになる。そして、図7(c)に示されているように、本体枠2を完全に開放した状態にすると、下ヒンジ軸34は、左下連結部材17の前方張出板部17dの前端よりも前方に位置するところまで移動し、これに伴って、本体枠2はかなり前方へ移動した状態で開放されることになる。この結果、本体枠2を開放した際、本体枠2の前面にヒンジされる前面扉3も必然的に前方へ移動することになり、仮に前面扉3の周囲前面に前側に膨出する大型の装飾用の合成樹脂製カバー等が装着されていたとしても、当該合成樹脂製カバー等が隣接する機器等と衝突してしまうことを回避することができる。なお、本体枠2を機枠1に対して閉止する場合、前述した開放する場合と逆に作用する。すなわち、図7(c)の状態から、本体枠2を閉止すべく下ヒンジ軸34を支点として後方へ回動させると、下歯車体36がラック歯67,67・・・に沿って後進すると共に、摺動部材117及び下ヒンジ軸34も後進し、本体枠2は機枠1に対しスムーズに閉止状態へと移行する。
【0026】
なお、本実施の形態におけるヒンジ装置hは、摺動部材を円滑に前後進させるために種々の機能を付加している。まず、上側の摺動板101と下側の摺動部材102は、スライド縦板100によって一体的に連結されている。そのため、上側の摺動板101と下側の摺動板102が同時に前後進することになり、より円滑に動作するようになっている。さらに、図9に示されているように、左側枠板13の縦板部13aとスライド縦板100の間に移動補助ギア体92,93を設けているので、スライド縦板100自体も円滑に前後進するように構成されている。すなわち、移動補助ギア体92,93は、その小径ギア96a,96b,97a,97bが縦板部13aに固着されたギア体移動板80,82のラック歯85a,86a,87a,88aに沿って移動し、これを大径ギア95a,95b、96a,96bに伝達してスライド縦板100を移動させるため、スライド縦板100は上下左右にぶれることなく円滑に移動することになる。
【0027】
なお、前記実施の形態において、摺動部材を摺動板と該摺動板に固着した被覆板によって構成した例を示したが、必ずしも被覆板を設ける必要はなく、摺動板のみで構成しても良い。また、前記実施の形態において、上下の摺動板をスライド縦板によって一体的に連結した例を示したが、必ずしも上下の摺動板を連結する必要はない。さらに、前記実施の形態において、摺動部材や歯車体を上下両方に設けた例を示したが、必ずしも上下に設けなくてもよく、上下のいずれか一方に設け、他方はもっと簡素な構成にすることも可能である。また、前記実施の形態では、歯車体の例として、外周全体に歯部が形成された円形のものを示したが、これに限られず、ヒンジ軸を中心とする曲率の円弧状の歯部が必要数形成されていれば、必ずしも円形のものである必要はない。
【符号の説明】
【0028】
1 機枠
2 本体枠(被支持体)
33 上ヒンジ軸
34 下ヒンジ軸
35 上歯車体
36 下歯車体
37 上連結ピン(連結手段)
38 下連結ピン(連結手段)
48 ラック歯
67 ラック歯
101 摺動板(摺動部材)
102 摺動板(摺動部材)
116 被覆板(摺動部材)
117 被覆板(摺動部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9