(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902798
(24)【登録日】2021年6月24日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】ルアー
(51)【国際特許分類】
A01K 85/16 20060101AFI20210701BHJP
【FI】
A01K85/16
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-16717(P2019-16717)
(22)【出願日】2019年2月1日
(65)【公開番号】特開2020-124120(P2020-124120A)
(43)【公開日】2020年8月20日
【審査請求日】2020年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】591199062
【氏名又は名称】株式会社ジャクソン
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】河西 幸彦
【審査官】
竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3159455(JP,U)
【文献】
特開平10−117636(JP,A)
【文献】
特開平10−165050(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3160505(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 85/00 − 85/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尾部側と頭部側との間にガイドレールが架設されたボディと、前記ガイドレールに沿って移動可能且つ自軸回りに回転可能に取付けられる取付け部を有するフックを備え、
前記フックが頭部側の移動限界位置に到達すると、ラインアイよりも先方に突出可能になっていることを特徴とするルアー。
【請求項2】
請求項1に記載したルアーにおいて、
ガイドレールはガイド軸で構成され、取付け部は前記ガイド軸に摺動可能に取付けられたリングと前記リングに通されたフック用ハリスで構成されていることを特徴とするルアー。
【請求項3】
請求項2に記載したルアーにおいて、
ガイド軸はワイヤーで構成されており、その両端部が尾部側と頭部側にそれぞれ固定されていることを特徴とするルアー。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載したルアーにおいて、
フックの頭部側の移動限界位置は鼻先になっていることを特徴とするルアー。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載したルアーにおいて、
アシストフックがラインアイに取付けられていることを特徴とするルアー。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載したルアーにおいて、
メタルジグタイプで構成されていることを特徴とするルアー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣りに用いるルアーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ルアーは魚等に似せて形成されたものであり、金属製、プラスチック製、木製のものがあるが、このうち、金属製のルアー、すなわちメタルジグは比重が大きく沈み込み易いことから、アクションを比較的加え易く、ジギング(釣法)にはよく利用されている。
このメタルジグは、通常、尾部にフックが連結されており、後方から魚が捕食しようとする場合に備えて設けられている。
しかしながら、ルアーに激しくアクションを加えると、フックがラインを拾ってしまうことが多々ある。尾部に連結されたフックが一旦ラインを拾ってしまうと、ラインは引っ掛かった状態のまま外れ難いため、キャスティングが無駄になってしまう。このラインが引っ掛かった状態は「エビになる」と言われている。フックをトレブルフックからシングルフックに代えても外れ難いことには変わりない。
【0003】
その欠点を解消するものとして、特許文献1では、ラインアイに紐材を介してフックが連結されたタイプが記載されている。これは「アシストフック」と言われており、フックがラインを拾ってしまっても外れ易くなっている。また、紐材を介することにより、ルアーをくわえた魚の動きがルアーに伝わり難くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−321023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、特許文献1では、魚がルアーの腹部、目玉部分等を狙って食い付くことが多いとの前提で上記したようにフックの連結位置が変えられているが、魚の種類によっては、後ろから追い食いするので、尾部にフックを連結しないとフッキングし難いことがあり、フックの連結位置を変更することでの対処では、ルアーに期待される疑似餌としての役割が十分に果たせない。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、フックを尾部に連結する利点をそのまま生かしつつ、フックがラインを拾ってもラインが外れ易くなるよう工夫された、新規且つ有用なルアーを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、尾部側と頭部側との間にガイドレールが架設されたボディと、前記ガイドレールに沿って移動可能且つ自軸回りに回転可能に取付けられる取付け部を有するフックを備え、前記フックが頭部側の移動限界位置に到達すると、ラインアイよりも先方に突出可能になっていることを特徴とするルアーである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載したルアーにおいて、ガイドレールはガイド軸で構成され、取付け部は前記ガイド軸に摺動可能に取付けられたリングと前記リングに通されたフック用ハリスで構成されていることを特徴とするルアーである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載したルアーにおいて、ガイド軸はワイヤーで構成されており、その両端部が尾部側と頭部側にそれぞれ固定されていることを特徴とするルアーである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載したルアーにおいて、フックの頭部側の移動限界位置は鼻先になっていることを特徴とするルアーである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載したルアーにおいて、アシストフックがラインアイに取付けられていることを特徴とするルアーである。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載したルアーにおいて、メタルジグタイプで構成されていることを特徴とするルアーである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のルアーによれば、フックを尾部に連結する利点をそのまま生かしつつ、フックがラインを拾ってもラインが外れ易くなっている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るメタルジグタイプのルアーの斜視図である。
【
図4】
図1のルアーにおけるフックが拾ったラインの外れ動作のイメージ図である。
【
図5】
図4に続くラインの外れ動作のイメージ図である。
【
図6】
図5に続くラインの外れ動作のイメージ図である。
【
図7】
図6に続くラインの外れ動作のイメージ図である。
【
図8】第2の実施の形態に係るメタルジグタイプのルアーの斜視図である。
【
図10】第3の実施の形態に係るメタルジグタイプのルアーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の実施の形態に係るルアー1について、図面にしたがって説明する。
このルアー1はメタルジグタイプになっており、
図1〜
図3に示すように、ボディ3は鉛等の比重の大きい金属製で小魚の形状に似せて細長く成形されている。
図2の左側が頭部5側であり、目玉7が形成されている。反対側の右側が尾部9である。そして、上側が背側11で、下側が腹側13となっている。
【0015】
このボディ3には、ガイド軸15が固定されている。このガイド軸15は断面円形の金属製の剛性ワイヤーで構成されており、その両端部17、19がほぼ垂直に同じ方向に折り曲げられている。両端部17、19がボディ3の背側11に固定されており、頭部5側の端部17は鼻先21に固定されている。上記の固定により、ガイド軸15は背側11に沿って頭部5と尾部9の間で架設されており、直状の中間部23が背側11より上方で背側11に沿って延びた状態となっている。
【0016】
符号25はフック(釣針)を示す。このフック25はシングルフックになっている。フック25にフック用ハリス27が接続され、結束具29によって結束されている。フック用ハリス27は結束されて環状になっており、スプリットリング31に連結されている。このスプリットリング31はガイド軸15にも連結されている。
スプリットリング31はガイド軸15に対して遊嵌状態になっており、ガイド軸15の(端部17〜中間部23〜端部19)の全体にわたって摺動可能なだけでなく、ガイド軸15の軸回りに回転することも、ガイド軸15に対して傾斜することも可能となっている。
【0017】
従って、フック25は、フック用ハリス27と一体となって、ボディ3に対して頭部5と尾部9との間で移動して、フック25の向きを円弧部26が先方にくるように変えることも可能になっている。また、フック用ハリス27とスプリットリング31との連結により、フック25は、フック用ハリス27と一体となって、自軸回りに回転させることも可能となっている。このように、フック25の動きの自由度が確保されている。
ガイド軸15の中間部23は、キャスティングの際に空気抵抗にならないように、ボディ3の背側11にできるだけ近づけるのが好ましく、上記ではスプリットリング31が自由に動けるようある程度の間隔を残して近づいている。
【0018】
このフック25を、別のフックと区別するために、以下では、「テールフック25」と記載する。
ルアー1にアクションを加えることで、ターゲットとする魚を誘って、ルアー1を捕食するように仕向けることが可能となっている。なお、テールフック25は上記したように頭部5側と尾部9側との間で移動可能になっているが、水中では水流抵抗を受けるので頭部5側に一旦は移動しても尾部9側に戻るようになっており、テールフックとしての機能を果たす。
【0019】
また、ボディ3の頭部5にはラインアイ(止め輪)33が固定されている。
図4に示すように、このラインアイ33はラインLが接続されるループ部35を有しており、基部37がボディ3の長手方向にほぼ沿うように固定されて、ループ部35がボディ3の先方に突設されている。
ラインアイ33には、ラインLがスイベル39を介して接続されている。また、フッキングし易いように、アシストフック(釣針)41も連結されている。アシストフック41はテールフック25と同じタイプのシングルフックになっている。このアシストフック41もテールフック25と同様に、フック用ハリス43および結束具45を介して、ラインアイ33に連結されている。
【0020】
ルアー1は上記のように構成されており、テールフック25側のスプリットリング31がガイド軸15の頭部5側の端部17に当たると、すなわちテールフック25が移動限界位置に到達すると、それ以上の頭部5側への移動は阻止される。
この移動限界位置に到達したときに、テールフック25をボディ3の頭部5より先側に引き出すと、ラインアイ33よりも先方に突出する。なお、ラインアイ33からの突出度合であるが、テールフック25の露出部分全体(すなわち、結束具29で隠れた部分を除いた部分)という意味ではなく、後述するように、テールフック25からラインLが外れるのに十分な程度という意味である。
【0021】
ルアー1の通常の使用中は、テールフック25はフック機能が維持され、ガイド軸15の存在によるルアー1のアクションへの悪影響は抑制される。
【0022】
次に、このルアー1のテールフック25からのラインLの外れ動作について、
図4〜
図7にしたがって説明する。
図4に示すように、テールフック25がラインLを拾ったときに、
図5に示すように、ラインLにテンションをかけると、テールフック25の円弧部26がラインLを折り曲げるように強制的に当たるので、テールフック25がラインLに引き摺られて、テールフック25の円弧部26が先方を向く方向に回動しながら、頭部5側に移動していく。その際には、ボディ3側のガイド軸15の中間部23に対してテールフック25側のスプリットリング31がガイド摺動される。
【0023】
そして、テールフック25が頭部5側の移動限界位置の近傍に到達すると、すなわち、ボディ3側のガイド軸15の端部17にテールフック25側のスプリットリング31が当たると、
図6に示すように、テールフック25の円弧部26がラインアイ33よりも先方に突出する。この状態では、テールフック25はラインLに対して動けるようになっており、
図7に示すように、テールフック25はラインLから容易に外れる。
ラインLにテンションを与えるだけで、
図4から
図7までの動作は瞬時に進行する。
【0024】
上記したようにラインアイ33にはアシフトフック41も連結されており、テールフック25が頭部5側にくると、アシストフック41と絡み合うこともあるが、いずれも、自軸回りに回転可能な上に、フック用ハリス27、43の弛みを利用した動きも可能になっており、ルアー1にアクションを適当に与えれば容易に外れる。
【0025】
なお、このルアー1は上記ではテールフック25を連結した状態のものが示されているが、状況によってフックを使い分けることは常識であり、テールフック25を連結せずに使用することを排除するものではない。
【0026】
本発明の第2の実施の形態に係るルアー49について、
図8、
図9にしたがって説明する。
このルアー49は、ルアー1と同じ形状のボディ3に、ガイド軸15が固定されているが、このガイド軸15の両端部17、19はボディ3の腹側13に固定されている。
このように、ガイド軸15の固定位置を変えても、ルアー1と同様に
図4〜
図7に示すように、ラインLからテールフック25が外れる。
【0027】
本発明の第3の実施の形態に係るルアー51について、
図10、
図11にしたがって説明する。
このルアー51は、ルアー1と同じ形状のボディ3に、ガイド軸15が固定されているが、このガイド軸15の両端部17、19はボディ3の背側11と腹側13の中間に固定されている。
このように、ガイド軸15の固定位置を変えても、ルアー1と同様に
図4〜
図7に示すように、ラインLからテールフック25が外れる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、ボディ側のガイドレールと、テールフック側の取付け部は、取付け部を尾部側から頭部側へ移動させることが可能なものであればよく、素材としての強度を確保できるのであればプレートに長穴を打抜いて形成したものをガイドレールとし、そこに取付け部のリングを摺動させる構成にすることも考えられる。
また、ボディに連結するフックのタイプもシングルフックに限定されない。更に、フックは、テールフックとアシストフックに限定されず、例えば、ルアーに第3のフックとして腹側に別のフックを連結させることも可能である。
【0029】
また、本発明のルアーは、上記の実施の形態では、メタルジグタイプのボディを有するものに適用されているが、これに限定されず、素材、形状等の点からテールフックへのラインの絡みが問題になるタイプのルアーがあるならば、または将来案出されるならば、そのタイプのルアーにも適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1…ルアー(第1の実施の形態)
3…ボディ 5…頭部 7…目玉 9…尾部 11…背側
13…腹側 15…ガイド軸 17…頭部側の端部 19…尾部側の端部
21…鼻先 23…中間部 25…テールフック 26…円弧部
27…フック用ハリス 29…結束具 31…スプリットリング
33…ラインアイ 35…ループ部 37…基部 39…スイベル
41…アシストフック 43…フック用ハリス 45…結束具
49…ルアー(第2の実施の形態)
51…ルアー(第3の実施の形態)
L…ライン