(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902800
(24)【登録日】2021年6月24日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】衛生マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20210701BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
A41D13/11 H
A62B18/02 C
A41D13/11 B
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-120354(P2019-120354)
(22)【出願日】2019年6月27日
(65)【公開番号】特開2021-4435(P2021-4435A)
(43)【公開日】2021年1月14日
【審査請求日】2021年1月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519235298
【氏名又は名称】大西 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100212587
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 和哉
(72)【発明者】
【氏名】大西 一成
【審査官】
塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3125147(JP,U)
【文献】
特開2018−044269(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3157841(JP,U)
【文献】
特表2017−535686(JP,A)
【文献】
中国実用新案第207252843(CN,U)
【文献】
特表2009−531087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口と鼻とを覆う四つの隅を備える繊維部と、
弾性を有する紐部と前記紐部の両端部の幅が拡大した非変形性の掛け止め部とを備える左右の耳にかける第1及び第2の耳かけ部と、を備える衛生マスクであって、
前記繊維部は、四隅に前記衛生マスクの着用時において使用者の顔面の概略上下方向に延在する切れ込みを有し、
前記掛け止め部が前記切れ込みに差し込まれており、前記衛生マスクを着用することで前記掛け止め部が前記切れ込みの任意の位置に固定され、前記衛生マスクが前記顔面の任意の位置に固定され、
前記切れ込みは、前記繊維部の一部と袋部を備え、
前記切れ込みの前記掛け止め部が差し込まれる側の反対側は、前記袋部で接続されている、衛生マスク。
【請求項2】
口と鼻とを覆う四つの隅を備える繊維部と、
弾性を有する紐部と前記紐部の両端部の幅が拡大した非変形性の掛け止め部とを備える左右の耳にかける第1及び第2の耳かけ部と、を備える衛生マスクであって、
前記繊維部は、四隅に前記衛生マスクの着用時において使用者の顔面の概略上下方向に延在する切れ込みを有し、
前記掛け止め部が前記切れ込みに差し込まれており、前記衛生マスクを着用することで前記掛け止め部が前記切れ込みの任意の位置に固定され、前記衛生マスクが前記顔面の任意の位置に固定され、
前記繊維部は、可視光を透過せず、赤外光を透過する赤外線透過繊維が用いられる、衛生マスク。
【請求項3】
前記繊維部は、内周に熱可塑性樹脂を含むシール領域が形成され、
前記使用者の体温により、前記シール領域が軟化して変形する、請求項1または2に記載の衛生マスク。
【請求項4】
前記シール領域は、前記切れ込みの内側の接顔部の領域に含まれる、請求項3に記載の衛生マスク。
【請求項5】
前記繊維部は、前記繊維部の形状を顔面に合わせて変形させるひだを備え、
前記シール領域は、前記ひだを含む領域に含まれる、請求項3または4に記載の衛生マスク。
【請求項6】
前記繊維部は、前記繊維部の内側に向かい、接顔部を囲う周縁部を備え、
前記周縁部は、熱可塑性樹脂を含む、請求項1または2に記載の衛生マスク。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、シリコン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、またはポリビニルアセテート(PVA)、リノルボルネン樹脂、トランスポリイソプレン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体を含む、請求項3乃至6のいずれか1項に記載の衛生マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多くの人にフィットする衛生マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
衛生マスクは、着用において負担がないようにしつつ防じん効果を得られるように開発されてきた。特許文献1には、台形状のマスク本体を形成し、耳掛け紐調整具により耳掛け紐の張力を適度に調節する衛生マスクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3114181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、個人の骨格によって、顔にフィットする衛生マスクの形は異なるため、マスクの形状を顔に合わせるだけで顔にフィットする衛生マスクを作ることは、困難であった。そのため、衛生マスクによる防じん効果が人ごとに異なり、防じん効果が十分に得られない可能性があった。
【0005】
そこで、本発明は、個人の骨格に依存しないで多くの人の顔にフィットし、十分な防じん効果が得られる衛生マスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の衛生マスクは、口と鼻とを覆う四つの隅を備える繊維部と、
弾性を有する紐部と前記紐部の両端部の幅が拡大した非変形性の掛け止め部とを備える左右の耳にかける第1及び第2の耳かけ部と、を備える衛生マスクであって、
前記繊維部は、四隅に前記衛生マスクの着用時において使用者の顔面の概略上下方向に延在する切れ込みを有し、
前記掛け止め部が前記切れ込みに差し込まれており、前記衛生マスクを着用することで前記掛け止め部が前記切れ込みの任意の位置に固定され、前記衛生マスクが前記顔面の任意の位置に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、個人の骨格に依存しないで多くの人の顔にフィットし、十分な防じん効果が得られる衛生マスクが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る衛生マスクの概略図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る口と鼻を覆う繊維部の概略図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る耳かけ部の概略図である。
【
図4】
図2のA−Aで示される本発明の第1の実施形態に係る繊維部の切れ込みの概略断面図である。
【
図5】切れ込みに耳かけ部の掛け止め部を差し込んだ概略断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る衛生マスクの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための様々な実施の形態を、図面を参照して説明する。要点の説明または理解の容易性を考慮して、異なる図面で便宜上符号を同一にして示す。第2の実施形態は、第1の実施形態と要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施の形態を分けて示すが、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせは可能である。
【0010】
[第1の実施形態]
(衛生マスクの構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る衛生マスクの概略図である。
図1を参照しながら、本発明の衛生マスクの構成を説明する。
【0011】
図1に示すように、本発明の衛生マスク101は、四つの隅を備える口と鼻とを覆う繊維部103を備える。繊維部103は、花粉や工事現場での建材塵等を通さないように十分防じん効果があるものとして、使い捨て式防じんマスクの使用区分(平成12年労働省告示第88号)でDS1からDS3、またはDL1からDL3のものを使うことができる。また、さらには、毒ガスからの防毒効果があるようなものも使うことができる。繊維部103の材質としては、ポリプロピレン、ポリエステルをはじめとする既知の任意の材料を用いることができる。
【0012】
本発明の繊維部103は、赤外線を用いた顔認証システムに対応できるように、赤外線を透過する構成とすることもできる。通常、マスクで顔を覆うと、顔認証システムでの顔認証が困難になるため、マスクを外す必要があった。そこで、赤外線を透過する繊維部103を用いることにより、マスクを外さず顔認証を受けることができる。これにより煩雑さが減るとともに、衛生上も良好な状態を保てる。
【0013】
繊維部103を赤外線を透過する構成とするため、例えば繊維部103を、可視光を透過しないが、赤外光を透過する黒色のポリエステル繊維で形成することができる。さらに、可視光を透過しないが、赤外光を透過する既知の赤外線透過染料を用いた繊維等で形成することもできる。
【0014】
本明細書では、この衛生マスク101を顔面に着用したときに水平方向を横方向、上下方向を縦方向として説明する。繊維部103には、横方向に延在する複数のひだ105が設けられてもよい。ひだ105は、繊維部103の周縁の縦方向の長さを小さくしながら凸部の多い顔面の中心に合わせて広げる。このように、繊維部の形状を顔面に合わせて変形させることで、繊維部103を顔面によくフィットさせることができる。また、口と繊維部103の間に十分な空間を設けられる。
【0015】
また、本発明の衛生マスク101は、耳かけ部107を備える。繊維部の四隅に接続された耳かけ部107を左右の耳にかけることで、繊維部及び顔面の間の隙間から入ってくる空気を減らすことができる。耳かけ部107は、弾性を有するため、衛生マスクは多くの人にフィットすることができる。また、口を動かしたとしても状況に応じてフィットすることができる。
【0016】
(口と鼻とを覆う繊維部)
図2は、本発明の一実施形態に係る口と鼻を覆う繊維部の概略図である。
図2を参照しながら、本発明の口と鼻とを覆う繊維部を説明する。
【0017】
本発明の口と鼻とを覆う繊維部103は、4つの隅に縦方向に切れ込み109を有する。切れ込み109は縦方向のみならず、横方向に傾いていてもよい。切れ込みは、顔面の概略上下方向である概略縦方向に延在すればよい。切れ込み109は、長さに渡る任意の位置で耳かけ部107と接続されている。更に詳細に述べれば、切れ込み109に耳かけ部107に形成された掛け止め部を差し込むことで、耳かけ部107が、繊維部103に接続される。
【0018】
そのため、切れ込み109の長さが長いほど、顔に合わせて調節がきく。しかしながら、切れ込み109の長さが長いと、穴が広がりすぎて耳かけ部107を保持する強度が低下するため切れ込み109の長さは、1〜2cmほどが好ましい。
【0019】
(シール領域の説明)
繊維部103の顔面と接する領域である接顔部には、熱可塑性樹脂を含むシール領域111が形成される。シール領域111は、軟化点が25℃から45℃程度の熱可塑性樹脂を塗布、付着等により繊維部103に形成される。さらに、熱可塑性樹脂を繊維に含浸させて、熱可塑性樹脂が含浸された繊維を織り込むことによって、シール領域111を形成することもできる。このような熱可塑性樹脂は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、シリコン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂(硬化済みのもの)、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、またはポリビニルアセテート(PVA)を含むことができる。
【0020】
熱可塑性樹脂が使用者の体温で軟化して、衛生マスクが変形することで、衛生マスクを顔にフィットできる。このようにすることで、多くの人の顔面にフィットする衛生マスクが得られる。
【0021】
また、シール領域111に、既知の形状記憶樹脂を用いてもよい。形状記憶樹脂としては、ポリノルボルネン樹脂、トランスポリイソプレン樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、シリコン樹脂を例示できる。
【0022】
ガラス転移点が25℃から45℃の形状記憶樹脂を用いると、衛生マスクを使用者の体温でガラス転移点以上の温度にして顔にフィットさせ、その形状のままで固定できる。
【0023】
このような樹脂は、長時間皮膚に接触してもかぶれない。また、このような樹脂は、口紅、ファンデーション等のメイクが付着しにくいため、マスクを着用した際にメイクを直す必要がなくなる。したがって、接顔部に樹脂を含むシール領域111が設けられることが好ましい。
【0024】
シール領域111は、少なくとも切れ込み109の内側の領域に配置されることが好ましい。繊維部103の上下とくに鼻に掛かる上部は、繊維部の上限から1mm以内の領域に熱可塑性樹脂が含まれることが衛生マスクを顔面にフィットさせるために好ましい。
【0025】
繊維部103の切れ込み109の内側の接顔部に、ぐるりと一周つながるように(ここでは繊維部103の外形に合わせたロの字状に)シール領域111が配置されることが好ましい。鼻の頭や唇の先などの一点で接触する領域には含まれないことが好ましい。また、シール領域111の領域が大きいと、空気が透過する領域が減るため、シール領域111は、あまり大きくないことが好ましい。
【0026】
また、シール領域111は、ひだ105を含む領域に含まれてもよい。ひだ105は、上記で説明したように、繊維部103の形状を顔面に合わせて変形させる。その場合、シール領域111の一部は、ひだ105と重なることが好ましい。シール領域111がひだ105を含む領域に含まれることで、繊維部103の形状を顔面にフィットした状態で固定できる。
【0027】
(耳かけ部の説明)
図3は、本発明の一実施形態に係る耳かけ部の概略図である。
図3を参照しながら、本発明の耳かけ部を説明する。
【0028】
耳かけ部107は、弾性を有する紐部113を備える。紐部113は、耳に掛かけるための十分な長さを有する。紐部113は、長さを調整する機構を備えてもよい。例えば、紐止めなどを備えることで、紐の長さを自由に調整できる。
【0029】
耳かけ部107は、紐部113の両端に、両端部の幅が拡大した非変形性の掛け止め部115を備える。掛け止め部115は返しがついていてもよい。後述するように、この掛け止め部115により、繊維部103の切れ込み109の任意の位置に、耳かけ部107を固定できる。
【0030】
(切れ込みに耳かけ部を固定する構造の説明)
図4は、
図2のA−Aで示される本発明の一実施形態に係る繊維部の切れ込みの概略断面図である。
図5は、切れ込みに耳かけ部の掛け止め部を差し込んだ概略断面図である。
図4及び
図5を参照しながら、切れ込みに耳かけ部を固定する構造について説明する。
【0031】
図4に示すように、繊維部103の切れ込み109は、繊維部の一部117と袋部119を備える。すなわち、切れ込み109の下部は、袋部119で接続されている。
【0032】
図5に示すように、切れ込み109に耳かけ部107の掛け止め部115を差し込むことで、紐部113は、繊維部103に接続される。衛生マスク101の製造過程でこの差し込みがなされる。
【0033】
この状態では、任意に切れ込みの方向に耳かけ部107は動くことができる。次に、衛生マスクが使用者に着用されることで、耳かけ部107が引っ張られ、掛け止め部が切れ込みの任意の位置で固定される。このようにすることで、着用時に衛生マスクが使用者の顔面の任意の位置に固定される。したがって、多くの人の顔面にフィットする衛生マスクを提供できる。
【0034】
本発明により、個人の骨格に依存しないで顔にフィットし、十分な防じん効果が得られる衛生マスクが得られる。したがって、本発明は、多くの人の顔面にフィットする衛生マスクを提供できる。また、本発明により、マスクをつけて顔が見えなくても赤外線センサで検知し顔認証することができる。
【0035】
[第2の実施形態]
図6は、本発明の第2の実施形態に係る衛生マスクの概略図である。
図6を参照して、本発明の第2の実施形態に係る衛生マスクを説明する。
【0036】
第2の実施形態に係る衛生マスクは、第1の実施形態と、繊維部が繊維部の内側に向かい、着用したときに顔面と接する周縁部を備える点で異なる。さらに、この周縁部に熱可塑性樹脂が含まれ、繊維部には熱可塑性樹脂が含まれない点で異なる。
【0037】
図6を参照しながら、第2の実施形態に係る衛生マスクは、繊維部121に内側に向かう左周縁部123、下周縁部125、右周縁部127を備える。これら周縁部123、125、127は、マスクを着用したとき顔面に接して繊維部121の側面から入る空気すなわち、繊維部121を通さないで入る空気を防ぐ。
【0038】
この周縁部123、125、127に熱可塑性樹脂を含ませ、形状を顔面にフィットするように変形させる。また、繊維部121の上部の内周129にも熱可塑性樹脂を含ませる。このようにすることで、顔面の形状にフィットして、側面からの空気の取り入れを防ぎ防じんに優れた衛生マスクが得られる。
【0039】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の衛生マスクは、多くの人に広く防じん、防毒が必要な場所で用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
101 衛生マスク
103 繊維部
105 ひだ
107 耳かけ部
109 切れ込み
111 シール領域
113 紐部
115 掛け止め部
117 繊維部の一部
119 袋部
121 繊維部
123 左周縁部
125 下周縁部
127 右周縁部
129 上部の内周