【文献】
伊藤貢,目指せ、生産性ボトムアップ,産子数に影響を及ぼす繁殖関連の要因とは?,日本,Pig Journal,2006年03月,p.58-61
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記繁殖用家畜基礎情報と、前記管理会計部が算出した前記繁殖用家畜の飼養から生じる利益に関する情報を含む前記管理会計情報と、前記産子数推定部が推定した産子数と、を用いて、
所定のタイミングにおける、少なくとも農場の総産子数又は前記繁殖用家畜の飼養から生じる利益のいずれかを最適化するための、複数の前記繁殖用家畜から構成される産歴の組み合わせについて示す最適産歴構成情報を生成する構成最適化部、をさらに備える、請求項2に記載の畜産情報管理システム。
前記構成最適化部は、前記繁殖用家畜基礎情報と、前記最適産歴構成情報に応じて、所定のタイミングにおける、少なくとも農場の総産子数又は前記繁殖用家畜の飼養から生じる利益のいずれかを最適化するために廃用すべき家畜候補について提案する廃用候補家畜情報を生成する、請求項3に記載の畜産情報管理システム。
前記廃用候補家畜情報に基づき選択された廃用家畜選択情報と、前記家畜情報記憶部に記憶されている候補家畜数情報とを用いて、新たに繁殖用家畜の候補家畜として用意すべき準備候補家畜数を算出する、候補家畜数算出部をさらに備える、請求項4に記載の畜産情報管理システム。
前記繁殖数理モデルは、前記飼養環境情報に含まれる、少なくともさらに前記飼養履歴情報に含まれる体重情報、及び/又は体調に関する情報が学習データとして付加されて生成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の畜産情報管理システム。
前記繁殖数理モデルは、前記気温に関する情報に加えて、さらに前記測定装置より取得された、前記農場の湿度、風量、光量、音、及び臭気のうち少なくとも一つを含む情報が学習データとして付加されて生成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の畜産情報管理システム。
前記繁殖数理モデルは、前記繁殖用家畜基礎情報として、さらに繁殖用家畜の出所に関する情報、及び繁殖用家畜の日齢に関する情報のうち少なくとも一つの情報が学習データとして付加されて生成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の畜産情報管理システム。
前記繁殖数理モデルは、前記飼養履歴情報として、さらに繁殖用家畜に対する給餌種類及び/又は給餌量の情報、及び繁殖用家畜に対する給水量の情報、繁殖用家畜に対する投薬履歴(生殖の促進に用いるもの)のうち少なくとも一つの情報が学習データとして付加されて生成されている請求項1から5のいずれか一項に記載の畜産情報管理システム。
前記繁殖数理モデルは、前記飼養履歴情報として、さらに繁殖用家畜の疾病罹患履歴、繁殖用家畜に対するワクチン投与履歴、繁殖用家畜に対する投薬履歴(疾病の治療又は予防に用いるもの)、繁殖用家畜の出産の正常又は異常の履歴、のうち少なくとも一つの情報が学習データとして付加されて生成されている請求項1から5のいずれか一項に記載の畜産情報管理システム。
前記繁殖数理モデルは、前記飼養履歴情報として、さらに繁殖用家畜に対する種付日、種付を実施した精液、精液性状情報、のうち少なくとも一つの情報が学習データとして付加されて生成されている請求項1から5のいずれか一項に記載の畜産情報管理システム。
前記産子数推定部は、農場内で管理する複数の繁殖用家畜について、前記複数の繁殖用家畜の各産子数を、個々の繁殖用家畜に適用され補正された繁殖数理モデルにより推定することにより、農場の総産子数を算出する請求項1から5のいずれか一項に記載の畜産情報管理システム。
複数の繁殖用家畜の産子数の履歴情報と、前記複数の繁殖用家畜の飼養環境情報の履歴情報と、を学習データとして用いて生成される前記繁殖数理モデルに対して、前記繁殖用家畜の飼養環境情報と、前記繁殖用家畜の飼養履歴情報と、前記繁殖用家畜の産子数の実績値を用いて、前記繁殖数理モデルを更新するための数理モデル管理部と、を更に備える請求項1から5のいずれか一項に記載の畜産情報管理システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、各実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下で説明する本開示の実施形態における家畜豚である。実施形態において、畜産物である豚は農場で飼養されている。農場の中には畜産物が飼養される複数の畜舎が存在する。畜舎は、特に豚の場合は豚舎ともいう。畜舎内の仕切られた区画の単位である畜房は、特に豚の場合は豚房ともいう。繁殖用家畜は、豚が雌の場合は母豚(又は繁殖母豚)、豚が雄の場合はそのまま雄豚(又は繁殖雄豚)又は種豚、種雄豚ともいう。
【0014】
また、農家は、家畜を飼養する農業経営者である個人、又は法人であり、畜産農家、畜産家ともいう。基本的に養豚業を行う者であり、養豚家ともいう。これらの農家及び農業従事者は畜産情報管理システムのユーザである。
【0015】
はじめに、本開示の実施形態を用いて実施される、繁殖用家畜としての母豚の生産性管理の概要と有用性について説明する。養豚業において、母豚は肉豚となる子豚を生むという重要な役割を担っている。海外では品種改良を重ねて、1回の分娩で多数の子豚を生み、1年間に効率の良い分娩を実施することで、繁殖能力を改善している。しかしながら、日本国内においては、海外で改良された種豚を導入し、欧米と同等の生産ポテンシャルを有しているにも関わらず、繁殖成績が低いという事態が発生している。したがって、母豚の品種が元来保有している繁殖能力を引き出すことが求められている。
【0016】
また、母豚は一定回数の分娩を実施すると、更新(母豚としての役割を終えて廃用され、新しい母豚を入れ替える)される。この更新を適切に実施しないと、高産歴母豚は産子数が低産歴母豚に比して少なくなる傾向にあるため、農家の収益を悪化させることに繋がる。但し、母豚には税法で規定される減価償却期間が設定されているため、その期間を消化せずに廃用すると損金算入できる期間が短くなるため、農家の実質的な収益を悪化させることに繋がる。
【0017】
本開示の実施形態においては、測定装置等を用いて飼養環境情報、飼養履歴情報を併せて入手し、これらを学習データとして統計モデルや機械学習モデルに代表される数理モデルに学習することにより、母豚が産出することができる産子数を予測する。また、母豚の体重、体調状態等の飼養工程の状態を指し示す中間指標として、繁殖成績を上げるそれら中間指標の組み合わせを人工知能、機械学習等により推計させる。すなわち、この中間指標を農家に提供することは、中間指標をコントロールして、最終的指標である繁殖成績、具体的には例えば産子数を向上させることに繋がる。
【0018】
更に、母豚の産歴数や、過去の繁殖成績情報を用いて、将来における出産数、繁殖サイクルの回転数を母豚単位で推計し、豚舎、農場単位での今後の出産数、母豚の産歴構成を予測する。また、過去の繁殖成績情報から産歴における標準的な母豚の産子数を推定して比較対象とする。
【0019】
これを用いて、産歴数において産子数が標準的な範囲より低水準に位置する母豚の特定を個体ごとに行うとともに、その代替となる繁殖用家畜として新規導入する候補豚の必要育成数を推計し、将来における産子数と利益が最適となる産歴構成を推計して、その情報を農家に対して提供できる。これにより、母豚の更新を適切に行い、農家の経営効率を向上させることができる。
【0020】
<構成>
図1は、本開示の実施形態に係る畜産情報管理サーバ101を含む畜産情報管理システム1を示すシステム構成図である。
図1で示すように、本開示の実施形態に係る畜産情報管理システム1は、畜産情報管理サーバ101と、ユーザが使用する端末装置201とが、ネットワークNWを介して通信可能に接続されている。ネットワークNWは、例えばインターネット、VPN(Virtual Private Network)等のネットワークである。説明の簡略化のため
図1では1人のユーザを想定して端末装置201のみを示しているが、畜産情報管理サーバ101はネットワークNWを介して2以上の端末装置、2人以上のユーザと接続可能である。また、一台の端末装置を複数のユーザが使用しても構わない。
【0021】
畜産情報管理システム1は、主に農家が、家畜情報の管理を支援するためのシステムである。畜産情報管理システム1の運営業者は、当該システムを用いて農家に家畜情報の管理を支援するサービスを提供する。運営者は、複数の農家に対してサービスを提供することができる。畜産情報管理サーバ101は、畜産情報管理システム1の運営者が管理を行い、農家が端末装置201を使用するものである。なお、畜産情報管理サーバ101は、農家自身が管理を行っても構わない。
【0022】
畜産情報管理システム1は、主に農家が、家畜情報の管理を支援するためのシステムである。畜産情報管理システム1の運営業者は、当該システムを用いて農家に家畜情報の管理を支援するサービスを提供する。運営者は、複数の農家に対してサービスを提供することができる。畜産情報管理サーバ101は、畜産情報管理システム1の運営者が管理を行い、農家が端末装置201を使用するものである。なお、畜産情報管理サーバ101は、農家自身が管理を行っても構わない。
【0023】
畜産情報管理システム1の構成は、大きく分けて4つの系統がある。畜産情報を入手するためのセンサ系、センサによって生成された情報、及びその記憶部であるデータ系、入手及び記憶している情報を加工して新たな情報を生成する処理を行う処理系、処理系による出力を農家、農業従事者が確認、入力するための端末系、である。なお、この4つの系統は本開示の理解のために提示しただけであって、すべての構成がこの4つの系統のいずれかに属するというものではない。
【0024】
(端末系)
端末装置201は、例えばPCや、スマートフォン、タブレットPC、及び携帯電話のような装置である。端末装置201は、端末にインストールされた専用のアプリケーションソフトウェアによって畜産情報管理サーバ101にアクセスしてもよい。また、畜産情報管理サーバ101が提供する動作環境(API(アプリケーションプログラミングインタフェース)、プラットフォーム等)を利用して畜産情報管理サーバ101にアクセスしてもよい。
【0025】
入力部211は、例えば、キーボードや、マウス、タッチパッド等のユーザが操作することにより情報の入力や選択が可能な装置である。情報の入力と選択とは、例えば数値や文字や記号の記入による入力、項目の選択、処理を決定する入力などである。また、スマートフォンやタブレット、PCにおける液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示部212と一体であるタッチパネルでもよい。また、入力部211は、音声入力装置であっても構わない。
【0026】
表示部212は、情報等をユーザに表示するディスプレイ装置等である。端末装置201と独立したディスプレイ装置であっても構わないし、スマートフォンやタブレットにおける液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置であっても構わない。
【0027】
なお端末装置201は、畜産情報管理サーバ101とネットワークNWを介さず、サーバと一体として構成されていても構わない。
【0028】
(センサ系)
畜舎301には、畜舎内の飼養環境情報を入手するための測定装置310と、家畜に餌を与えるための給餌装置312等が設けられており、これらはネットワークNWを通じて各種の飼養環境情報を畜産情報管理サーバ101へと送信する。
【0029】
母豚は、農場の中の建造物である畜舎の中に構成される複数に区画されたストールで飼養されることが一般的である。ストールは、母豚1頭を飼養する環境、場所である。
【0030】
畜舎301は、例えば豚舎であり、ストールごとに給餌装置320が設けられている。フリーストール豚舎の場合は、豚舎内の既知の位置に一又は複数の給餌装置320が設けられている。給餌装置320は、豚に餌や水を与えるための装置である。当該給餌装置320は、ストールごとに定められた時期に、所定の種類の餌及び水を所定量、自動的に供給可能である。なお、制限給餌に限らず、不断給餌の場合であっても累積給与量等を計量可能である。また、給餌装置320は、ストールごとに供給した、餌の種類及び量(給餌量:重量(g)、又は体積(l))、水の量(給水量:(l))、供給時期(年月日、時間)、等の情報を含む給餌、給水情報を生成可能である。生成された給餌、給水情報は、ネットワークNWを通じて各種飼養環境情報を畜産情報管理サーバ101へと送信される。
【0031】
画像撮影部311は測定装置310の一種であり、例えば畜舎内の画像を入手することができるカメラである。カメラは、例えば、可視光カメラであり、被写体から反射される光を検出して画像(静止画又は動画)情報を生成する機能を有している。なお、カメラは、夜間撮像や日中での体表面温度の測定も可能なように、上記可視光カメラに加えて、赤外線カメラ(サーマルカメラ)と赤外線ライトの組み合わせを併用してもよい。
【0032】
その他の測定装置310としては、マイク、臭気センサ、温湿度センサ、空気流量センサ、気圧センサ、照度センサ等の環境情報取得器を用いることができる。
【0033】
マイクは、設置場所近辺で発生する音を集音して電気信号に変換し音情報を生成する機能を有している。マイクは、豚のいる空間にて発せられる音を検出できる位置(母豚の日常生活高さ)に設けられる。マイクにより検出される音としては、豚の鳴き声、呼吸音、咳、くしゃみ、動きに伴う音等がある。音はデシベル(dB)単位で計測することができ、音が所定の音声波形パターンや所定のdB値以上となった回数/累積時間/連続時間を集計することができる。
【0034】
臭気センサは、臭気の原因となるアンモニアやメチルメルカプタン等を検出して臭気情報を生成する。臭気センサにより検出される臭気としては、豚自体から発せられる臭いや、豚の排泄物の臭い、畜舎の臭い等がある。臭いは例えば臭気センサのセンサ指示値によって定量的(ppm)に測定することができる。
【0035】
温湿度センサは、設置されている場所の温度及び湿度を検出して温湿度情報を生成する機能を有している。温湿度センサは、温度及び湿度をそれぞれ測定することができる、温度センサと湿度センサであってよい。温度センサは設置されている場所の気温を摂氏(度)又は華氏(度)で測定することができる。湿度センサは、例えば相対湿度を(%)や(%RH)として測定することができる。
【0036】
空気流量センサは、設置される空間内を出入りする空気流量を検出して空気流量情報を生成する機能を有している。例えば風速計であり、畜舎の屋内や屋外に設置することができ、風量(m/s)を測定することができる。
【0037】
気圧センサは、設置される空間内の気圧を検出して気圧情報を生成する機能を有している。気圧センサは、例えば畜舎周辺の気圧(Pa)を測定することができる。
【0038】
照度センサは、畜舎内の所定の場所、例えば繁殖用家畜が生活をしている畜舎、ストールの明るさ、輝度(cd/m2)、照度(W/cm2、lx、lm/m2)を測定することができる。また、これらの平均値や累積値を計測、記憶することもできる。
【0039】
畜舎301は、農場内に一又は複数存在し、説明の簡略化のため
図1では1棟の畜舎301のみを示しているが、畜産情報管理サーバ101はネットワークNWを介して2棟以上の畜舎、2か所以上の農場とも接続可能である。
【0040】
畜産情報管理サーバ101は、産子数推定部111、家畜状態推定部112、アラート生成部113、数理モデル構築部114、数理モデル管理部115、管理会計部116、構成最適化部117、候補家畜数算出部118、情報取得部119、情報記憶部120を備えている。
【0041】
(データ系)
情報記憶部120は、畜産情報管理システム1による管理を実行するのに用いる情報を記憶する記憶装置である。
図1では畜産情報管理サーバ101と一体に記載しているが、畜産情報管理サーバ101と物理的に独立した記憶装置であっても構わない。以下、情報記憶部120に記憶されている情報について説明する。
【0042】
情報記憶部120は、主に、家畜情報記憶部121と、数理モデル記憶部122と、財務基礎情報記憶部123と、アラート条件記憶部124と、を備えている。情報記憶部120は、これらの記憶部に属さないその他の情報についても記憶している。
【0043】
家畜情報記憶部121は、繁殖用家畜基礎情報と、飼養環境情報と、飼養履歴情報とを記憶している。
【0044】
繁殖用家畜基礎情報とは、農場で飼養している繁殖用家畜である、母豚及び雄豚(又は精液)に関する基礎的な情報である。例えば、各個体を識別するための電子的な識別である繁殖用家畜の識別ID、及びこの繁殖用家畜の識別IDに紐づけられる、繁殖用家畜の品種、繁殖用家畜の出所に関する情報、及び繁殖用家畜の日齢(年齢、月齢であってもよい)に関する情報、産子の出荷成績に関する情報等である。なお、個々の母豚は、耳標、ICタグや入墨などの物理的な母豚識別子や飼養されているストールに付与される識別子と、情報記憶部120に記憶されている上記識別IDのような電子的な識別子とが対応するという前提で管理されている。これらの繁殖用家畜基礎情報は、例えば端末装置201を用いて、ユーザである農家により入力され、家畜情報記憶部121に記憶される。
【0045】
繁殖用家畜情報の技術的意義について基本的なものを説明する。繁殖用家畜の識別IDは、各種の解析や数理モデルを構築する際の学習データとして繁殖用家畜の種々の情報が用いられる際に個別の繁殖用家畜を識別、区別する際のデータとして用いられる。繁殖用家畜の品種の情報は、品種については後述するが、個々の品種によって特性が異なるために産子数に影響する遺伝的要因の一種として学習の用に供するために記憶されている。繁殖用家畜の日齢(年齢・月齢)については、加齢によって繁殖能力が変化するために、産子数に影響する要因の一種として学習の用に供するために記憶されている。
【0046】
産子の出荷成績に関する情報とは、過去に食肉用として出荷された産子、いわゆる肉豚の出荷頭数、出荷時期、売価等の情報を含んでいてもよいものである。
【0047】
品種とは、家畜の品種、血統のことであり、牛、豚、羊などの畜種よりも下位概念に相当するものである。具体的には、例えばランドレース種、デュロック種、大ヨークシャー種、バークシャー種、ハンプシャー種等の品種に加えて、これらの純粋種を掛け合わせた交配種を含む。例えば、ランドレース種(L)、大ヨークシャー種(W)、デュロック種(D)をかけ合わせた交配種を含む。交配種について、産子としては、例えばLWD等の3元交配種、いわゆる3元豚といった肥育豚が知られているが、母豚としては、2元豚である場合が多い(産子が3元豚である場合)。交配種の品種情報としては、血統割合(%)や血統表を用いてもよい。また、交配種についてはLW、WLといった雌豚、交配した代の別を識別できる品種情報であってもよい。例えば、繁殖力に優れ生育が早い「ランドレース種」、赤身と脂肪のバランスが良い「大ヨークシャー種」の白毛大型品種を掛け合わせて生まれた「二元豚」の母豚等がある。このような母豚に対して肉質面としてサシ(霜降り)ができやすい赤豚「デュロック種」の雄豚を掛け合わせるということが考えられる。
【0048】
飼養環境情報とは、例えば、温度、湿度、風量、光量、音、及び臭気等である。また、農場、畜舎である。温度、湿度、風量、光量、音、及び臭気は、上記した各種測定装置310より定量的な値を取得することができる。これらの取得頻度については、情報記憶部120に記憶されている取得頻度情報によって定められ、後述する情報取得部119によって定期的に取得される。なお、飼養環境情報は基本的に自動で取得され記憶されるが、例えば端末装置201を用いて、ユーザである農家により入力され、記憶されてもよい。農場、畜舎については、農場IDと畜舎IDとして取得することができる。
【0049】
飼養環境情報の技術的意義について基本的なものを説明する。温度、具体的には気温は、繁殖用家畜の飼養環境を表すことができる代表的なものである。畜舎の内部の温度が所定の範囲を逸脱すると、最終的に産子数に影響を及ぼすことになる。例えば気温が所定以上の場合は母豚にとって暑熱ストレスが発生しうる状況となる。豚は汗腺の発達が悪く、厚い脂肪に覆われているために代謝熱を体外に拡散する能力に劣り、暑熱に弱い傾向にある。暑熱ストレスは、生産性や生理機能に影響があり、現象としては飼料摂取量の減少や、妊娠期間中の体重の減少、授乳期間中の乳量の低下、発情再帰の遅れ、受胎率の低下等が生じて、最終的に産子数に影響がある。また、気温が所定量を下回る場合でも代謝エネルギー維持のために飼料摂取量が増加、飲水量の減少、過度な緊張となったりする。飲水量は流産、異常分娩についても影響がある。
【0050】
湿度は、気温と同様に暑熱ストレスの一要因である。上記した代謝熱は外気温と湿度との関係において脳下垂体にある体温中枢によってコントロールされている。気化熱により熱の放出をする際にも空気の相対湿度が影響する。
【0051】
風量については、血流量の減少を起こす要因の1つになりうる。例えば、冷たい乾燥した風が寝ている母豚に直接当たることにより、腹冷えし、飲水量が低下し、排尿量が低下し、循環血量が減少し、胎児など産子への栄養補給が不足する一因となり、異常分娩や産子の体重減少に影響がある。
【0052】
光量については、プロジェステロン等の黄体ホルモンの内分泌機能への影響があり、受胎率等に影響する。音については、光量と同様に、騒音の負荷により内分泌機能への影響がある。
【0053】
臭いについては、豚の呼吸、放射体熱、糞尿から発生する水蒸気、アンモニアガスなどによって発生し、疾病罹患に繋がり、繁殖成績に影響を及ぼす。具体的には、アンモニアに代表される空気不衛生環境物質が、粘膜を刺激し呼吸器系疾患(豚繁殖・呼吸障害症候群:PRRSなど)を引き起こす。したがって、豚舎内の空気の汚染は、呼吸器病の発生の原因となるので、臭い値を測定して、適切な換気がなされているかどうかを定量的に得ることは重要である。
【0054】
このような農場の測定装置から取得できる飼養環境情報について、温度(気温)は重要なものであるがさらに湿度、風量、光量、音、及び臭気から1つを要素として加えるだけでも予測の精度は向上する。
【0055】
飼養履歴情報とは、繁殖用家畜の疾病罹患履歴(例えば年月日と病名)、繁殖用家畜に対する投薬履歴(例えば年月日と投薬種別、投薬種別に関しては疾病の治療又は予防に用いるもの、又は性腺刺激ホルモン剤等の生殖の促進に用いるもの各々を含む)、繁殖用家畜に対するワクチン投与履歴(例えば年月日とワクチン種別)、繁殖用家畜の出産回数に関する情報、繁殖用家畜の産子数の履歴情報(例えば産子数、生存産子数、直近産次の産子平均体重・分散、離乳産子頭数、及びこれらの累計)、繁殖用家畜の出産の正常又は異常の履歴(例えば白子、黒子、ミイラ胎児、虚弱子の異常分娩)、無発情、再発率、分娩率、繁殖用家畜に対する種付日、種付を実施した精液、精液性状(例えば精子活力、精子濃度、精液量、総精子数等)情報、繁殖用家畜の体重、繁殖用家畜の体調に関する情報(例えば繁殖用家畜の背脂肪厚(cm)、体色(RGB)、及び、ボディコンディションスコアの情報)、繁殖用家畜に対する給餌種類及び/又は給餌量(飼料給与(g))の情報、及び繁殖用家畜に対する給水量(l)の情報等である。これらの情報については、その情報が発生したタイミングが紐づけられて記憶されている。タイミングとは、時間、日付である。
【0056】
繁殖用家畜の疾病罹患履歴や、繁殖用家畜に対するワクチン投与履歴は、母豚の健康状態に関するものであり、産子数や受胎率等様々な影響がある。
【0057】
投薬については、例えばホルモン製剤の投与は暑熱ストレスによる繁殖成績の低減手段として用いることができる。また、給餌の種類によっても、投薬と同様の各効能を謳っているものがあり、これらの投与、給与の有無は産子数に影響があるとも考えられる。
【0058】
繁殖用家畜の出産回数に関する情報については、上記したように産子数への影響がある。繁殖用家畜の産子数の履歴情報(例えば産子数、生存産子数、直近産次の産子平均体重・分散、離乳産子頭数、及びこれらの累計)については、過去の実績値として、今後の産子数を予測するにあたり重要である。繁殖用家畜の出産の正常又は異常の履歴(例えば白子、黒子、ミイラ胎児、虚弱子等の異常分娩)分娩率、については、過去に異常分娩となった母豚について今後の出産が異常となる可能性について参考となる。
【0059】
繁殖用家畜に対する種付日については、母豚が種付けされた時期と妊娠期間における環境等を考慮する上で重要となる。種付を実施した精液、精液性状(例えば精子活力、精子濃度、精液量、精子数等)情報については、母豚ではなく雄豚側の生殖能力の要因として重要である。
【0060】
繁殖用家畜の体重、繁殖用家畜の体調に関する情報は、母豚の健康状態を考慮するものとして重要な情報となる。
【0061】
繁殖用家畜に対する給餌種類及び/又は給餌量の情報、及び繁殖用家畜に対する給水量の情報は、母豚の体重や健康状態に影響を及ぼし、重要な情報となる。
【0062】
また、繁殖用家畜の繁殖サイクルに関する情報が記憶されていてもよい。繁殖用家畜の繁殖サイクルに関する情報とは、主に種付、妊娠、分娩、離乳という繰り返す繁殖イベントに要した期間、そのイベントが発生したタイミングの履歴を含む情報である。例えば、ある品種の繁殖用家畜は種付から分娩までが114日、分娩から離乳までが21日、離乳から次の種付までが5日である場合は、その期間と日付等のタイミングの情報を含む。繁殖サイクルに関する情報は、個体差だけでなくそのときの季節、体重、体調、そして品種によっても大きく異なるものである。
【0063】
図2は、母豚の繁殖サイクルについて概略的に説明するための模式である。この図において、横軸に日数をとって時間の間隔を表している。例えば母豚1においては、種付から分娩までの妊娠期間、分娩から産子の離乳までの授乳期間、離乳から次の種付までの空期間が示されている。そして、種付から発情再帰した次の種付けまでで繁殖サイクルが1サイクルとする。1サイクル目における予測産子数p11は産子数予測部によって予測可能である。また同様に2サイクル目における予測産子数p12も予測可能である。ここで1サイクル目と2サイクル目とでは、各期間が品種や産次・産歴、加齢、季節(年月日)によって変動するように補正可能である。そして、母豚が繁殖用家畜として活動可能な期間と、これらの繁殖サイクル(例えば日数)を用いれば、例えば生涯(合計)産子数のような将来的、及び総合的な繁殖成績の見積もりを取得することができる。一方で、母豚2については、例えば品種(組み合わせを含む)が異なる、農場が異なる等の理由により繁殖サイクルが母豚1と異なると仮定する。その中で母豚1とは異なる1サイクル目の予測産子数p21、2サイクル目の予測産子数p22が産出され、同様に生涯産子数等の繁殖成績の見積もりを取得することができるようになる。なお、この図においては、わかりやすさのために各期間を模式図的に描画しており、実際の日数とは必ずしも一致しない。
【0064】
繁殖用家畜の体重とは、各種測定装置により入手した繁殖用家畜の体重である。一般的には体重計により重量を直接測定した体重(kg)を用いることができる。その他、画像撮影部311が得た繁殖用家畜の画像情報を用いて、家畜状態推定部112により推定された体重の情報も用いることができる。体重情報については測定のタイミングと紐づけて記憶することができる。個々の繁殖用家畜について、一日増体重と日付とを紐づけて記憶していてもよい。
【0065】
繁殖用家畜の体重情報、体調に関する情報は、繁殖用家畜の最終的指標、例えば産子数に対する飼養中間指標情報として用いることができる。
【0066】
繁殖用家畜の体調に関する情報とは、例えば、画像撮影部311により得られた画像情報を用いて家畜状態推定部112が画像解析により生成することができる、繁殖用家畜の体色、背脂肪厚、背中の丸まり、特定部位の状態(耳、腹のへこみ、乳房の張り、乳房の周囲のむくみ、外陰部の形状等)、ボディコンディションスコア等といった画像から推定可能な母豚の形状の変化である。これらを名称とともに質的データとして用いてよい。また、測定装置が飼養環境情報から得られる音や臭気の情報等の情報を、上記の画像から推定可能な母豚の形状変化とを組み合わせて、健康状態を推定する体調パラメータとしてもよい。家畜状態推定部112により生成された情報は飼養履歴情報として家畜情報記憶部121に記憶されていてもよい。
【0067】
数理モデル記憶部122は、数理モデル構築部114によって構築された、標準繁殖数理モデル、補正係数、個別繁殖数理モデル等の、数理モデルを記憶している。また、これらの数理モデルについて、家畜の品種に応じた数理モデルを記憶している。なお、これらの数理モデルの詳細については、後述する。
【0068】
財務基礎情報記憶部123は、財務基礎情報を記憶している。
【0069】
財務基礎情報とは、農場の経営に関する財務基礎情報である。例えば、候補豚から母豚として繁殖活動を開始するまでに掛かったコスト、及び、ワクチン投与などの疾病罹患対策に係る個体別に発生するコスト、設備設置や光熱費、人件費などの全体に掛かるコストを繁殖用家畜の個体数で按分した配布コスト等の経費、及び、減価償却に関する情報を繁殖用家畜の個体に紐付けているもの、を含む。そのために、例えば給餌量、給水量、出荷体重、飼料要求率、飼料単価等は財務基礎情報として記憶していてもよい。簡単にいえば、この財務基礎情報には個々の繁殖用家畜の収支算定を実施する際に用いる飼養に必要な費用算出するための情報が含まれている。なお、費用は、税務会計上は損金ともいう。
【0070】
繁殖用家畜の減価償却に関する情報とは、個々の繁殖用家畜の取得価額、用途及び細目に応じた耐用年数、償却額、減価償却費、償却を開始したタイミング等を含んだ情報である。
【0071】
また、財務基礎情報記憶部123は、農場の施設、設備情報等の情報を記憶している。これらの情報は、農場における家畜の飼養可能頭数についての制約条件としても用いることができる。例えば、畜舎の数、各畜舎の面積、母豚のストールの種類、寸法、数、豚房の数、面積等である。これらの設備情報を用いて家畜の使用可能頭数の上限を算出することもできる。
【0072】
また、財務基礎情報記憶部123は、家畜のうち食肉として出荷され販売される食肉家畜、いわゆる肉豚の販売記録として、出荷頭数、出荷量、出荷時期、売価額を記憶していてもよい。売価額は、例えば実績値に加えて日、週、月のような単位時間における平均売価額を記憶していてもよい。売価額は例えば、(円/kg)のような、単位重量当たり価格で表される指標であってもよい。食肉用家畜1頭当たり売価額を推定できるように、1頭当たり平均売価額を記憶していてもよい。食肉家畜の飼養に費やした費用を控除した利益額を記憶していてもよい。食肉用家畜1頭当たり利益額を推定できるように、1頭当たり平均利益額を記憶していてもよい。このような売価額、利益額に関する情報は、食肉家畜の販売によって得られる農家の収益の算出に用いることができる。
【0073】
アラート条件記憶部124は、繁殖用家畜に関する飼養中間指標及び/又は最終的指標についてアラートを出すべき場合の条件である、アラート条件情報を記憶している。飼養中間指標に基づくアラート条件情報は具体的には、例えば繁殖用家畜の所定のタイミングにおける、体重情報、及び/又は体調に関する情報、である。体調に関する情報、の一例は、産子数をマイナス方向に仕向ける要素が強い因子であり、例えば腹部のへこみや咳である。また、最終的指標に基づくアラート条件情報は、例えば後述する数理モデルにより推定される産子数に関する情報である。すなわち、飼養中間指標及び/又は最終的指標について、これらのアラート条件と比較するための基準が記憶されているものである。また、本実施形態のアラート条件記憶部124は、一度アラート発報した対象に対して再度アラートを発報するための再アラート条件も記憶している。再アラート条件の内容は、アラート条件と同じであってもよいし、アラート条件よりも厳しい条件であったり、緩和した条件であってもよい。
【0074】
(処理系)
情報取得部119は、以下の処理に必要な情報の取得を情報記憶部120及びこれらに属する記憶部より行う機能を有する。また、測定装置310より、情報記憶部120に記憶された測定装置マスタ情報に定められた頻度で飼養環境情報の取得を行う機能を有する。
【0075】
数理モデル構築部114は、繁殖用家畜基礎情報、飼養環境情報、飼養履歴情報等の情報を学習データとして数理モデルにて処理させることにより、繁殖用家畜の産子数を推定するための繁殖数理モデルを生成する機能を有する。繁殖数理モデルは、複数の繁殖用家畜の情報、例えば過去の繁殖実績、に基づき、標準的な産子数を推定するための標準繁殖数理モデルと、産子数に影響のある因子を数理モデルに適用できるように生成した補正係数と、標準繁殖数理モデルに補正係数等個別の要因を適用し、個別の繁殖用家畜の産子数を推定するための個別繁殖数理モデルを含んでいる。これらの繁殖数理モデルは、例えば、決定木、回帰分析、主成分分析等の任意の手法、アルゴリズムを用いて生成することができる。また、これらの数理モデルを機械学習等(DNN:ディープニューラルネットワーク、RNN:リカレントニューラルネットワーク、SVM:サポートベクターマシン、ランダムフォレストなど)によって生成した学習済モデルを用いることもできる。
【0076】
上記したように、母豚の産子数に影響を及ぼす要因は多岐にわたり、また1つ1つが独立した影響を及ぼすものとも限らず、相互作用的に機能する。したがって、単に過去の繁殖成績から予想するだけでなく多くの要因を考慮した予想を行うほうが精度は高い。ただし、ただ説明要素を多くしていくだけであると多重共線性のような問題が発生するおそれもある。それゆえ、繁殖用家畜基礎情報、飼養環境情報、飼養履歴情報等から適切なパラメータを選んで機械学習させることにより学習済の数理モデルを構築することが有用である。
【0077】
限定ではなく例として、母豚及びその産子数に加えてモデルを構築する際の学習データの組合せ例を1つ挙げると、農場、品種、産歴、気温である。農場については、繁殖サイクルの内容(授乳期間、発情再帰期間や妊娠期間における飼料配合やホルモン剤投与など)が異なる人為的な変数として数理モデルに組み込まれることになる。また、品種と産歴は、繁殖家畜(母豚)の個体が内因的に保有する遺伝的な繁殖能力に由来する母豚内部繁殖変数として数理モデルに組み込まれることになる。気温は、エネルギー摂取や代謝に影響を与える環境変数として数理モデルに組み込まれることになる。また、これらの各変数は個別に作用するものではなく、交互作用の結果を内包する形にて学習データとして、繁殖成績と紐付ける。
【0078】
さらに好ましい学習データの組合せ例としては、母豚及びその産子数に加えて、農場、品種、産歴、気温、湿度である。湿度については、気温と組み合わせることで、いわゆる暑さ指数のように体内からの熱放出のしやすさを環境変数として数理モデルに組み入れることが可能となるため、母豚の飼養されている環境をより表しやすくなる。
【0079】
また、母豚及びその産子数、品種、気温に加えて、体重又は体調を学習データとして組み合わせることにより、母体から胎児に対して必要な栄養素やミネラルが共有するに十分な状態であるか、また、体長変化による後期流産リスクや早産発生リスクの増加などの正常な胎児成長や分娩ができる状態であるかを把握する母豚内部繁殖変数として、数理モデルに組み入れることが可能となるため、母豚の状態をより表しやすくなる。
【0080】
また、母豚及びその産子数、品種、気温に加えて、母豚の出所、又は日齢を学習データとして組み合わせることにより、母豚が内因的に保有する遺伝的な性質や体質、及び、母豚の高齢化による妊娠がしにくくなることや流産率の高まり、様々な異常(運動機能、消化器疾患、生殖器疾患など)を含む老化による繁殖パフォーマンスの低下に関する母豚内部繁殖変数として、数理モデルに組み入れることが可能となるため、母豚の状態をより表しやすくなる。
【0081】
また、母豚及びその産子数、品種、気温に加えて、母豚への給餌種類、給餌量、投薬履歴(生殖の促進に用いるもの)を学習データとして組み合わせることにより、子豚を受胎し正常子として分娩すること、分娩後に体力を十分に回復し次の繁殖サイクルを迎えるための準備ができているか、また、種付け分娩時に子豚を出産するに必要なエネルギーや栄養素を十分に摂取できているのかなどを飼養変数として数理モデルに組みいれることが可能となるため、母豚の飼養されている環境をより表しやすくなる。
【0082】
また、母豚及びその産子数、品種、気温に加えて、母豚の疾病罹患履歴、母豚に対するワクチン投与履歴、母豚に対する投薬履歴(疾病の治療又は予防に用いるもの)、母豚出産の正常又は異常を学習データとして組みいれることにより、繁殖サイクルにおける母豚の疾病罹患有無、ワクチン等の対策有無などを母豚健康状態変数として数理モデルに組み入れることが可能となるため、母豚の健康状態をより表しやすくなる。
【0083】
また、母豚及びその産子数、品種、気温に加えて、母豚に対する種付日、種付を実施した精液、精液性状情報、を学習データとして組み合わせることにより、繁殖の対となる雄豚の繁殖パフォーマンスを母豚外部繁殖変数として数理モデルに組みいれることが可能となるため、繁殖に係る状況をより表しやすくなる。
【0084】
図3は、本実施形態に係る数理モデル構築部が行う処理を説明する図である。例えば、標準繁殖数理モデルについては、繁殖用家畜の集合について標準的な産子数のモデルを推定するために、飼養履歴情報に含まれる産歴別産子の実績値を目的変数とし、飼養環境情報、給餌、給水情報、体重、体調に関する情報、飼養履歴情報の産歴別産子数以外の指標を説明変数として入力する。このように数理モデル構築部114は、産子数を目的変数とし、それらの説明変数の選択、組み合わせ、重みづけ等の演算を行い、目的変数を最もよく説明できる数理モデルを出力する。
【0085】
数理モデル構築部114は、分析の結果、普遍的に産子数に影響を与える要因、個別の事情に関わらず共通して産子数に影響を与える要因を補正係数として切り出して生成することができる。補正係数は、例えば、季節的な要因、過去の正常、異常分娩による要因、給餌、給水量による要因などに関するものが挙げられ、これらの要因により推定される産子数が増加するか、減少するのかの補正を行う。季節的な要因としては、種付、分娩時期が、おおまかに夏、冬などの質的データとしての要因としてもよいし、気温、湿度などの量的データの要因としてもよい。過去の正常、異常分娩による要因としては、産子数の実績値のみに基づくものではなく、総産子数は多いが異常を示す子豚(黒子、ミイラ化胎子など)が多いなど、異常分娩率のような数値を用いることもできる。給餌、給水量による要因としては、種付、分娩時期の前後の所定の時期において繁殖用家畜がどの程度、餌を食べ、水を飲んだかなどのデータを要因としてもよい。補正係数は、産子数の変動(増加、減少)に直接補正を加えるもののみならず、結果として産子数に影響を与える間接的なものとして切り出して生成してもよい。例えば、分娩時期等の繁殖サイクルに関連したものとして、種付け時期や給餌量、給水量により授乳期間や空期間の短期化や長期化といった日数に係る補正も可能である。なお、これらの補正係数は機械学習の中に内包されるものとして取り扱うことも可能である。
【0086】
また、繁殖用家畜において品種が多数存在する場合に対応するため、品種に応じた標準繁殖数理モデルを生成して、複数の標準繁殖数理モデルを記憶していてもよい。品種は産子数や繁殖サイクルに大きな影響を与えるためである。品種に応じた標準繁殖数理モデルを用意することで、産子数を予測する際に適切なモデルを選択することができる。なお、品種については、品種に応じた数理モデルを構築するだけではなく、産子数を予測するための1パラメータとして用いてもよい。
【0087】
数理モデル構築部114は、これらの標準繁殖数理モデル、及び補正係数を用いて、個々の繁殖用家畜に個別的にあてはめた個別繁殖数理モデルを生成することができる。具体的には、例えば、まず、その繁殖用家畜の品種に応じた標準繁殖数理モデルが選択される。次に、その繁殖用家畜に適用可能な補正係数が選択されて付加されることで、標準繁殖数理モデルよりも、よりその繁殖用家畜の所定のタイミングにおける産子数を正確に推定できる個別繁殖数理モデルを構築できる。そのようにして構築された個別繁殖数理モデルに対しては、その繁殖用家畜に紐づけられた飼養履歴情報、例えば過去の繁殖実績や、飼養環境情報、与えている餌の内容などのデータを入力することにより、その繁殖用家畜が将来の任意のタイミングにおける産子数を推定することができる。
【0088】
標準繁殖数理モデル、個別繁殖数理モデル、いずれの繁殖数理モデルであっても、将来の任意のタイミングの産子数を推定することができる。たとえ初産であっても、既に構築された数理モデルをもとに、予測区間を持つ産子数を推定することができる。当然ながら産歴数と紐付く実績データが増えていけば、推定の精度はより高いものになる。将来の任意のタイミングとは、例えば3産までの産次の実績値のデータがある場合には、次の産歴である4産以降の産歴別の産子数、及び累計産子数を推定できるということである。産歴数の上限については任意に設定される。
【0089】
なお、個別繁殖数理モデルを得るために、標準繁殖数理モデルを構築してから補正係数を用いることは構築方法の一例であり、初めから個別繁殖数理モデルに相当する数理モデルを構築してもよい。
【0090】
構築された数理モデルは、適宜実績値のデータを再取得して定期的にモデルの再構築を実施し、数理モデル管理部115によって最新のデータ状態に呼応できる状態を維持される。
【0091】
図4は、標準繁殖数理モデルの一例について説明するための模式図である。この図において、縦軸に産子数、横軸に産歴数とした、産歴ごとの産子数の分布を表している。D1、D2、D3、D4、D5、D6、及びD7、は、それぞれ、初産、2産、3産、4産、5産、6産、7産における産子数の分布を表している。縦に配置された実線は、その産歴における母豚の最小産子数から最大産子数までの範囲を表している。矩形は、分布を表している。分布は、例えば点をプロットしたものでもよいし、確率密度分布であってもよいし、箱ひげ図のように第一四分位数から第三四分位数を表すものであってもよい。
【0092】
そして、点線で描かれている曲線は、これらの分布によってあらわすことができる標準総産子数値の中央値を結んだものである。なお、本来、産歴は離散値であるため曲線では表示できない性質のものであるが、理解を助ける意図にて模式的に表している。
【0093】
このように、数理モデル構築部114によって得られる繁殖数理モデルとは、品種や産歴などの諸条件に応じて、その繁殖用家畜が産出する産子数を推定するための数理モデルである。標準繁殖数理モデルとして、母豚産歴に基づく平均産子数モデル、産歴数を基にした標準総産子数値といったものもこれに含まれる。
【0094】
産子数推定部111は、家畜情報記憶部121に記憶される繁殖用家畜に紐づけられる繁殖用家畜基礎情報と、各種の測定装置310で取得された飼養環境情報と、家畜情報記憶部121に記憶される繁殖用家畜の飼養履歴に関する飼養履歴情報と、を用いて数理モデル記憶部122に記憶される繁殖数理モデルにより、所定のタイミングにおける繁殖用家畜の産子数を推定する機能を有する。
【0095】
図5は、本実施形態に係る産子数推定部が行う処理を説明する図である。すなわち、上記したように、産子数推定部111は、繁殖数理モデルを用いて、繁殖用家畜基礎情報や、飼養環境情報、飼養履歴情報を入力情報として入力することで、その繁殖用家畜の産子数を推定値として出力するものである。
【0096】
また、産子数推定部111は、飼養環境情報に含まれる、少なくとも飼育環境の温度の履歴情報と、飼養履歴情報に含まれる体重、及び/又は体調に関する情報、の推移を示す履歴情報及び、産子数の履歴情報を用いて、繁殖数理モデルにより、所定のタイミングにおける繁殖用家畜の産子数を推定する機能を有する。
【0097】
すなわち、産子数推定部111は、産子数の推定に必要な飼養環境情報としては、少なくとも飼育環境の温度の履歴情報を採用し、また、飼養履歴情報としては、体重、及び/又は体調に関する情報の推移を示す履歴情報、及び、過去の産子数の履歴情報を用いるということである。例えば温度(気温)の上昇による暑熱ストレスは受胎率の低下に影響があると考えられるため、これを考慮するものである。また、体重情報、や体調に関する情報、の推移も産子数に影響があると考えられるため、これらを考慮するものである。また、これまでの出産実績がその後の産子数も同様の傾向になる可能性があると考えられるところから、これらを考慮するものである。
【0098】
また、産子数推定部111は、繁殖用家畜の出産回数である産歴数毎の将来の産子数を推定する機能を有する。
【0099】
すなわち、上記の繁殖数理モデルで示したように、産子数は産歴数によって影響を及ぼされるものであるからこれを考慮するものである。なお、産暦は、受胎後の流産等の異常を含む出産暦を示すものであり、過去の種付時にカウントされる数である。これに対し、産次は、過去に正常分娩された時にその実績としてカウントされた数である。そのため、厳密にいえば産歴と産次は同じものではないが、産歴数に代わって産次数を用いることもできる。
【0100】
また、産子数推定部111は、農場内で管理する複数の繁殖用家畜について、複数の繁殖用家畜の各産子数を、個々の繁殖用家畜に適用され補正された繁殖数理モデルにより推定することにより、農場の総産子数を算出する機能を有する。
【0101】
すなわち、個々に推定してきた繁殖用家畜の産子数を、農場全体の繁殖用家畜に対して推定し、農場全体の総産子数を算出するということである。この農場全体の総産子数は、農場全体の繁殖パフォーマンスを評価することができ、また、農場に属する繁殖用家畜の構成を最適化するために役立てることができる。
【0102】
産子数推定部111は、家畜の繁殖用家畜基礎情報に含まれる品種に応じた繁殖数理モデルを数理モデル記憶部122より選択し、選択した繁殖数理モデルを用いて繁殖用家畜の産子数を推定する機能を有する。
【0103】
すなわち、品種によって産子数の傾向は異なるため、品種に応じた適切な繁殖パフォーマンス数理モデルを選択し、産子数を精度よく推定するものである。
【0104】
家畜状態推定部112は、画像撮影部311が取得した繁殖用家畜の画像を用いて、繁殖用家畜それぞれの体重情報、及び/又は体調に関する情報、を推定する機能を有する。
【0105】
すなわち、上記したように、繁殖用家畜の体重情報や体調に関する情報は、例えば体重計によって体重を測定することによって取得できる。しかし、毎日豚衡機などの物理的機器を介して体重を測定することは農家にも家畜にも負担がかかるために、画像撮影部311が取得した繁殖用家畜の画像から、推定される体重を算出するというものである。より具体的な説明はここでは省略するが、取得した画像を解析して繁殖用家畜の輪郭等の寸法や面積を算出し、過去の体重計による測定結果と比較して、体重を推定することができる。
【0106】
アラート生成部113は、繁殖用家畜の体重情報及び/又は体調に関する情報等の飼養中間指標、及び/又は産子数等の最終的指標が、所定条件を満たす場合ユーザに対するアラート情報を生成する機能を有する。
【0107】
すなわち、上記したように、アラート生成部113は、アラート条件記憶部124に記憶されている条件が発生したときにユーザに対してアラートを発報する。例えば、繁殖用家畜の飼養中間指標として、体重情報、及び/又は体調に関する情報、を常に把握し、所定のタイミングにおける体重情報、及び/又は体調に関する情報、がアラート条件に合致するときは、アラートを発報する。また、繁殖数理モデルを用いて産子数を推定し、所定のタイミングにおける推定された産子数がアラート条件に合致するときは、アラートを発報する。
【0108】
より具体的には、例えばある繁殖用家畜が所定の産後の所定の日齢において、標準的な体重よりも体重が所定量少ないといった場合や、その時点における各種の測定装置310で取得された飼養環境情報と、家畜情報記憶部121に記憶される繁殖用家畜の飼養履歴に関する飼養履歴情報とを用い、産子数推定部111により繁殖数理モデルを用いて予測させた産子数が平均産子数などの標準産子数よりも所定数少ないといった場合に、発生している繁殖用家畜の基礎的な情報、及び、アラート条件に合致した詳細情報を含めたアラートを発報させることが考えられる。通知は、事前に設定した手法、あて先により電子メール、及びこれに限らず、種々のメッセージアプリケーションを用いてテキストでの通知、URLなどリンクの通知を行うことができる。なお、アラート生成部113は、体重情報、体調情報、産子数、等に基づくアラート条件のうち少なくとも1つを用いてアラート発報を行ったり、複数のアラート条件を組み合わせて所定数のアラート条件を満たした場合にアラート発報を行ったりしてもよい。
【0109】
また、アラート生成部113は、アラート発報に関する情報に、アラート解除設定や、アラート解除後の再アラート設定に関するアラート管理情報を含めることも可能である。再アラート設定では、予め設定した異なる再アラート条件をユーザが選択可能に複数提示するようにしてもよい。
【0110】
数理モデル管理部115は、複数の繁殖用家畜の産子数の履歴情報と、複数の繁殖用家畜の飼養環境情報の履歴情報を用いて生成される繁殖数理モデルに対して、繁殖用家畜の飼養環境情報と、繁殖用家畜の飼養履歴情報と、繁殖用家畜の産子数の実績値を用いて、繁殖数理モデルを更新する機能を有する。
【0111】
すなわち、繁殖実績や飼養履歴情報、飼養環境情報は日々刻刻と変化するので、これらのデータに対応して繁殖数理モデルは最新の状態に維持される。
【0112】
管理会計部116は、財務基礎情報記憶部123が記憶する農場の経営に関する財務基礎情報と、繁殖用基礎情報に含まれる前記繁殖用家畜の情報と、を用いて、繁殖用家畜の飼養から生じる利益に関する情報等を含む、管理会計情報を算出する機能を有する。
【0113】
繁殖用家畜の飼養から生じる利益に関する情報とは、例えば繁殖用家畜に紐づけられた繁殖用家畜の飼養に要した経費、繁殖用家畜に紐づけられた減価償却に関する情報、食肉家畜の販売によって得られる収益に関する情報、食肉家畜の販売によって得られる利益に関する情報等である、
【0114】
上記したように、畜産経営を効率化するために、繁殖用家畜の飼養に関する費用情報を把握すること、資産として保有している繁殖用家畜の償却情報を把握することは重要である。畜産業として繁殖用家畜の飼養から生じる利益の主たるものは、産子である食肉家畜の販売によって得られる利益である。そのため、費用等のみならず、家畜を飼養しその販売によって得られる収益、利益を把握することも重要であり、管理会計部116は、食肉家畜の販売によって得られる収益、利益に関する情報を算出することで、総和的に繁殖用家畜の飼養から生じる利益に関する情報を算出する機能を有する。
【0115】
食肉家畜の販売によって得られる収益は、例えば、財務基礎情報として記憶されている過去の平均売価額や平均利益額の単位に、食肉家畜の頭数や重量を乗じて推定することによって算出してもよい。また、市場の売価額の実績値、いわゆる相場を用いて算出してもよい。すなわち、産子数推定部111によって推定された産子数は食肉家畜の販売によって得られる収益の見込みを算出するのに有用である。例えば将来の任意のタイミングにおける産子数と平均売価額と掛け合わせて、食肉家畜の販売によって得られる収益の見込み額を推定することができる。
【0116】
繁殖用家畜の飼養から生じる利益は、これらの食肉家畜の販売等の畜産業によって得られる収益から費用を差し引いたものとして算出されるものであってよく、一般的な会計用語として表される、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益であってもよい。すなわち、概略的に言えば、管理会計部116は、管理会計情報として、食肉家畜の販売によって得られる収益から、繁殖用家畜の飼養に要した経費等を差し引いて、繁殖用家畜の飼養から生じる利益を算出することができる。
【0117】
構成最適化部117は、繁殖用家畜基礎情報と、管理会計部116が算出した、繁殖用家畜の飼養から生じる利益に関する情報等を含む管理会計情報と、繁殖数理モデルにより推定される繁殖用家畜の所定の産歴数における産子数と、を用いて、所定のタイミングにおける農場の総産子数、繁殖用家畜の飼養から生じる利益のいずれか1つを最適化するための、複数の繁殖用家畜から構成される産歴の組み合わせについて示す最適産歴構成情報を生成する機能を有する。
【0118】
図6は、本実施形態に係る構成最適化部117が行う処理を説明する図である。すなわち、構成最適化部117は、繁殖用家畜基礎情報に記録されている飼養中の繁殖用家畜それぞれの品種や産歴などの情報に応じて推定された将来の産歴における産子数と、直接、間接的に掛かった経費及び将来の産次に係る経費、また、現在、将来の産歴における減価償却に関する情報、食肉家畜の販売によって得られる収益に関する情報、畜産業として繁殖用家畜の飼養から生じる利益に関する情報等が含まれる管理会計情報を、入力情報とし、更に、必要に応じて、制約条件として、例えば農家が飼養できる設備数(ストール数)の上限に関する情報を入力したときに、繁殖用家畜の最適産歴構成情報を出力情報として生成する。
【0119】
また、構成最適化部117は、繁殖用家畜基礎情報と、前記最適産歴構成情報に応じて、所定のタイミングにおける、少なくとも、農場の総産子数又は繁殖用家畜の飼養から生じる利益のいずれかを最適化するために廃用すべき家畜候補について提案する廃用候補家畜情報を生成する機能を有する。
【0120】
すなわち、繁殖用家畜基礎情報と、最適産歴構成情報と、を用いて、将来の所定のタイミングにおける、少なくとも農場の総産子数又は繁殖用家畜の飼養から生じる利益のいずれかが最適化されるために、どの繁殖用家畜を廃用すべきかの演算を行い、個別的にその廃用候補家畜の識別IDを提案することができる。実際に繁殖用家畜を廃用するか否かは農家が判断するため、構成最適化部117はその候補を提案する。
【0121】
同時に、将来の所定のタイミングにおける農場の総産子数、繁殖用家畜の飼養から生じる利益のいずれかが最適化されるために、どの繁殖用家畜を維持すべきかの演算を行い、個別の維持候補家畜の識別IDとして抽出することができる。実際に繁殖用家畜の飼養を維持するか否かは農家が判断するため、構成最適化部117はその候補を提案する。
【0122】
また、候補家畜数算出部118は、廃用候補家畜情報に基づき選択された廃用家畜選択情報と、家畜情報記憶部に記憶されている候補家畜数情報とを用いて、新たに繁殖用家畜の候補として用意すべき準備候補家畜数を算出する機能を有する。
【0123】
図7は、本実施形態に係る候補家畜数算出部が行う処理を説明する図である。すなわち、候補家畜数算出部118は、少なくとも廃用家畜選択情報と、維持家畜選択情報と、候補豚選別情報(選別率)、そして、必要に応じて、制約条件として例えば飼養中の繁殖用家畜候補家畜数、施設設備等の情報と、を入力して、新たに繁殖用家畜の候補として用意すべき家畜数(準備候補家畜数)を算出する。廃用家畜選択情報とは、構成最適化部117が提示した、廃用家畜候補を端末装置201の表示部212等を用いて表示し、その中からユーザである農家自身が端末装置201の入力部211を用いて選択し入力した、いずれの繁殖用家畜を廃用とするか選択した情報である。繁殖用家畜の候補家畜は、全てが繁殖工程に入るわけではなく、選別されて繁殖用家畜となることが通常である。その過去の選別率である候補家畜選別情報は、家畜情報記憶部121、又は財務基礎情報に含まれて記憶されている。繁殖用家畜の廃用によって不足する枠を埋めるために、廃用家畜候補情報を用いて、新たに補填すべき繁殖用家畜の数を算出する。その補填する繁殖用家畜の数を満たすために、既に飼養している候補家畜数、あるいは、選別率から逆算して、新規導入する繁殖用家畜として必要な準備候補家畜数を算出する。
【0124】
図8は、上記で説明した各構成の連携について示す概念図である。繰り返しになるが、これらの構成の役割についての概略を確認的に説明すると、産子数推定部111は、繁殖数理モデルを用いて産子数の予測を行う。産子数が予測できれば、管理会計部116がこの産子数に基づいて収益を概算することができ、既知の費用と合わせて事業の利益といった管理会計情報を算出することができる。管理会計情報を得ることができれば、構成最適化部117は、利益や総産子数を最大化するために、農場で飼養している母豚の構成を最適化するための最適産歴構成情報や、廃用候補家畜情報を生成することができる。これによって、生産性が低下した母豚を淘汰し、農場の運営を最適化することができる。
【0125】
図9は、構成最適化部117によって出力される最適産歴構成情報、廃用家畜候補、維持家畜候補、候補家畜数算出部118によって出力される新規導入する繁殖用家畜として必要な候補家畜数について、端末装置201の表示部212に表示する画面の一例を示したものである。
【0126】
この図において、上段及び中段には、構成最適化部117が算出した最適産歴構成情報が示されている。上段に示されたグラフは、構成最適化部117が提案する廃用候補家畜数が、農場全体の繁殖用家畜数に占める割合を産歴別に縦棒グラフで表したものである。このグラフにより、ユーザである農家は、どの産歴におけるどの程度の繁殖用家畜の廃用が提案されているかを認識することができる。ここで、廃用が提案されている繁殖用家畜は、例えば個別繁殖数理モデルによって推定される所定のタイミングにおける産子数が、標準繁殖数理モデルによって推定される産子数より低く、経費や減価償却、利益を加味して総合的にアンダーパフォームであると判断された繁殖用家畜である。
【0127】
この図の中段に一覧表形式で示されているのは、農場に所属する繁殖用家畜についての情報であり、左列から、維持家畜とするか廃用家畜とするかの選択情報を入力可能なチェックボックス、その選択の確定を決定するボタン、個別の繁殖用家畜を識別する識別ID、産歴を示す情報、分娩率を示す情報、累計産子数を示す情報、累計生存産子数を示す情報、直近の産歴における産子の平均体重及びその詳細について示す情報、産子の累計離乳頭数及びその詳細について示す情報、累計経費及びその詳細について示す情報、減価償却及びその詳細について示す情報を表示している。ユーザである農家は、この一覧表に示された各種情報を閲覧し検討しながら、いずれの繁殖用家畜を維持するのか、廃用するのか選択可能になっている。
【0128】
この図の下段左側に表示されているのは、廃用家畜、維持家畜の選択情報によって変動する農場全体の総産子数、飼養経費、減価償却、利益について示す棒グラフであり、中段に示したチェックボックスによる選択情報に応じて、いずれの繁殖用家畜の処分を行わない場合(既存)と比較して、これらの数値がどのように変動すると推定されるか(更新後(予測))を同時に示している。ユーザである農家は、廃用、維持の選択によって農場の総産子数、飼養経費、減価償却、利益がどのように変化すると推定されるのか確認しながら意思決定をすることができる。
【0129】
この図の下段右側に表示されているのは、新規導入する繁殖用家畜として必要な候補家畜数に関する情報である。新規導入する繁殖用家畜は、繁殖用候補家畜として飼養している候補家畜の中から選抜される。そのため、現在飼養している候補家畜数及びその詳細、そして、繁殖に適した日齢に達している候補家畜の数である150日齢以降候補家畜数及びその詳細、そして候補家畜が繁殖用家畜として導入される際の選抜率を示している。なお、150日齢に限らず日齢は適宜設定することができる。また、上記画面の中段の一覧表で選択されている廃用家畜選択情報に基づき、選択された廃用家畜数と選抜率から逆算して、必要候補家畜数を表示することができる。ユーザである農家は、この必要候補家畜情報を参照しながら、意思決定をすることができる。
【0130】
<処理の流れ>
図10は、本開示の実施形態に係る畜産情報管理システム1の畜産情報管理サーバ101において実行される数理モデルの構築の流れについて説明するフローチャートが示されており、以下、同フローチャートに沿って畜産情報管理方法を説明する。なお、当該フローチャートは一例であり、数理モデル構築は当該フローチャートの処理に限られるものではない。
【0131】
ステップS101において、数理モデル構築部114は、情報取得部119により、以下の処理に必要な情報の取得を行う。情報は、主に家畜情報記憶部121に記憶されている情報であり、繁殖用家畜基礎情報、測定装置310等から取得され記憶されている飼養環境情報、飼養履歴情報である。
【0132】
ステップS102において、数理モデル構築部114は、標準繁殖数理モデルの生成を行う。具体的には、入力情報として、繁殖用家畜基礎情報、飼養環境情報等を用いて、繁殖用家畜基礎情報の産歴別産子の実績値、及びその分布を目的変数とし、飼養環境情報、給餌、給水情報、及び、繁殖用家畜基礎情報の産歴別産子数以外の指標から、最も良く説明可能な説明変数を選択、組み合わせを行い、繁殖用家畜の標準的な産子数について推定することができる標準繁殖数理モデルを生成する。この標準繁殖数理モデルは、品種毎に生成されてよい。
【0133】
ステップS103において、数理モデル構築部114は、産子数に影響を与える要因を補正係数として抽出する処理を行う。補正係数は、標準繁殖数理モデルを基に、例えば、季節的な要因(夏、冬、温度、湿度など)、給餌、給水量による要因、過去の分娩の正常/異常による要因に起因して産子数に増加又は減少の補正を加えるものである。
【0134】
ステップS104において、数理モデル構築部114は、個別繁殖数理モデルの生成を行う。個別繁殖数理モデルは、標準繁殖数理モデルを基に、補正係数を用いて、繁殖用家畜基礎情報の産子数を目的変数とし、飼養環境情報、給餌、給水情報、及び、繁殖用家畜基礎情報の産歴別産子数以外の説明変数を用いて、よりその繁殖用家畜の所定のタイミングにおける産子数を正確に推定できる個別繁殖数理モデルを生成する。
【0135】
図11に産子数の予測の一例について示す。この図においては産子数推定部111が推定した予測産子数を示している。学習データとしては、サンプルの34506頭の母豚のうち7割とし、残りの3割の母豚に係る属性データをモデルに投入し次回の分娩における予測産子数を予測させ、産子数を階級とする母豚の度数ヒストグラムとして表したものである。機械学習モデルとしてはランダムフォレストを用いている。入力情報(説明変数)としては、飼養環境情報と品種と産歴数を用いた。より具体的には、飼養環境情報として農場、気温を用いており、ただし気温としては種付日の年及び月を代替的データとして用いている。実際には温度は測定装置から取得したものを使用した方が精度は向上するものであり、さらにはストレス負荷として、種付日から出産日までの累積温度や、日較差・最大寒暖差などの合成変数を用いると、環境ストレス要素をモデルに反映できるため、精度向上がより期待できる。
【0136】
この図において、横軸が次回の予測産子数であり、縦軸が母豚の頭数である。予測産子数は全て自然数によって算出されている。予測産子数はこのように算出することができる。これは全体の予測数であり、例えば農場ごと等、所定の条件での産子数も予測することができる。これによって、次回の分娩で横軸に示された頭数を産出すると予測される母豚数がどの程度いるか概ね把握することができる。
【0137】
図12は、本開示の実施形態に係る畜産情報管理システム1の畜産情報管理サーバ101において実行される飼養中間指標のコントロール、具体的にはアラート発報処理の流れについて説明するフローチャートが示されており、以下、同フローチャートに沿って畜産情報管理方法を説明する。なお、当該フローチャートは一例であり、アラート発報は当該フローチャートの処理に限られるものではない。
【0138】
ステップS201において、家畜状態推定部112は、情報取得部119により、以下の状態の推定に必要な情報の取得を行う。例えば、画像撮影部311が撮影した画像を取得する。
【0139】
ステップS202において、家畜状態推定部112は、飼養中間指標の算出を行う。具体的には、例えば取得した画像を基に、繁殖用家畜の推定体重を算出する。
【0140】
ステップS203において、算出した飼養中間指標とアラート条件の比較を行う。例えば、アラート生成部113は、家畜状態推定部112が推定した体重と、アラート条件記憶部124が記憶しているアラート条件である体重との比較を行う。ここでいうアラート条件である体重とは、例えば所定の産後、所定の日齢など所定のタイミングにおける繁殖用家畜が満たすべき体重の条件である。アラート条件は所定の体重以下、所定の体重以上の場合に条件に合致しているとしてもよいし、所定の範囲内を逸脱しているときに条件に合致しているとしてもよく、適宜設定され記憶されている。また、アラート生成部113は、産子数推定部111が推定した産子数と、アラート条件記憶部124が記憶しているアラート条件である平均産子数などの標準産子数との比較を行う。ここでいうアラート条件である標準産子数とは、例えば所定の産歴における繁殖用家畜の平均産子数である。アラート条件は標準産子数に対して所定数以下の場合に条件に合致しているとしてもよいし、標準産子数に対して所定の範囲内を逸脱しているときに条件に合致しているとしてもよく、適宜設定され記憶されている。また、産歴の産子数の分布状況に基づいて、1σや1.5σの範囲を標準産子数に対する閾値として設定し、その範囲(産子数を自然数に置き方ものとして)を逸脱した場合に条件に合致しているとしてもよい。なお、平均産子数は標準産子数の一例であり、他の基準となる産子数を標準産子数としてもよい。
【0141】
このように、アラート条件は、最終的に得る産子数をマイナス方向に押し下げる状況かどうかを統計的に設定することで、適切な閾値設定を実現している。繁殖用母豚の品種改良は継続的に実施されているため、産子数の中央値は高まる傾向にある。従い、品種の入れ替えを行っている農家においては、一度決めた閾値が必ずしも正しいとは限らず、経験も無い中で、なにを持って閾値を決めればよいかという所についても解がない状態になる。これを統計的に処理することで、状況に即した科学的な閾値設定が可能となる。例えば、産歴や品種が同じで、且つ、温度や湿度が同じ条件と考えられる近接した豚房(ストール)において、産子数(正常産子)が大きく異なる場合、差異発生要素が限定されることになる。そこで限定された再発生要素について、予測モデルに順次投入することで、産子数が一番小さくなるものを選別することなどして、産子数の改善に向けた変数管理を行っていくことが可能となる。
【0142】
ステップS204において、アラート生成部113は、上記のアラート条件との比較により、条件を満たさない場合(No)は、またステップS202の飼養中間指標の算出にもどる。条件を満たす場合(Yes)は、次のステップに進む。
【0143】
ステップS205において、アラート条件に合致した対象家畜についてアラートを発報する。アラートの発報は、具体的な通知手段としては、端末装置201の表示部212を用いて画面でアラートを表示してもよいし、事前に設定した手法、あて先により電子メール、及びこれに限らず、種々のメッセージアプリケーションを用いてテキストでの通知、URLなどリンクの通知を行うことができる。
【0144】
ここで
図13を参照すると、アラート発報管理画面の一例を示す図が示されている。同図に示すように、アラート生成部113がアラート発報を行うと、端末装置201の表示部212に、アラート発報対象となった繁殖用家畜のリストが表示される第1領域401、再アラートの要否を選択する第2領域402、再アラート条件を選択する第3領域403が表示される。
【0145】
第1領域401には、アラート対象である繁殖用家畜を識別するための識別ID(母豚ID)と、当該識別IDごとに、産次数、平均分娩率、詳細ボタン、アラート解除チェックボックスが表示される。ユーザが詳細ボタンを選択操作すると、選択した繁殖用家畜の詳細情報が表示される。ユーザがアラート解除チェックボックスにチェックを入れると、対応する繁殖用家畜へのアラートは解除され、チェックを入れないと対応する繁殖用家畜はアラート対象として維持され、次のアラート発報時にもリストアップされることになる。
【0146】
第2領域402には、アラート対象である繁殖用家畜ごとに再アラートを設定するか、しないかのいずれか一方を選択可能なボタン(いわゆるラジオボタン)が表示される。ユーザは、第2領域402において繁殖用家畜ごとに再アラートの設定の要否を選択する。
【0147】
第3領域403には、アラート解除後の再アラート条件として第1セットから第3セットの3つの条件セットのうちの少なくともいずれか1つを選択可能なチェックボックスと条件詳細ボタンが表示される。3つの条件セットはそれぞれ異なる再アラート条件に設定されており、ユーザが条件詳細ボタンを選択することで各条件セットの条件内容を表示可能である。例えば第1セットは体重に関する条件であり、第2セットは体調に関する条件であり、第3セットは産子数に関する条件である等、それぞれ種類の異なる条件が設定されている。又は、同じ種類の条件で閾値の設定が異なるように設定されていてもよい。そして、ユーザが選択した再アラート条件を満たすと、対応する繁殖用家畜が再びアラート発報管理画面にリストアップされる。又は図示しないが再アラート用の管理画面が表示されてもよい。
【0148】
図14は、本開示の実施形態に係る畜産情報管理システム1の畜産情報管理サーバ101において実行される、農場で飼養される繁殖用家畜の構成最適化の流れについて説明するフローチャートが示されており、以下、同フローチャートに沿って畜産情報管理方法を説明する。なお、当該フローチャートは一例であり、繁殖用家畜の構成最適化は当該フローチャートの処理に限られるものではない。
【0149】
ステップS301において、産子数推定部111は、構築された個別繁殖数理モデルを用いて、個別の繁殖用家畜の産子数の推定を行う。
【0150】
ステップS302において、産子数推定部111は、個別の繁殖用家畜の産子数を集計して、農場全体の産子数である農場産子数の推定を行う。
【0151】
ステップS303において、構成最適化部117は、繁殖用家畜基礎情報と、農場産子数と、管理会計部116が算出した、各繁殖用家畜に紐づけられた繁殖用家畜の飼養から生じる利益に関する情報と、を用いて、所定のタイミングにおける、少なくとも、農場で生産される産子数又は繁殖用家畜の飼養から生じる利益のいずれかを最適化するための、複数の繁殖用家畜から構成される産歴の組み合わせについて示す最適産歴構成情報を生成する。
【0152】
ステップS304において、構成最適化部117は、繁殖用家畜基礎情報と、最適産歴構成情報に応じて、所定のタイミングにおける、少なくとも、農場の総産子数又は繁殖用家畜の飼養から生じる利益のいずれかを最適化するために廃用すべき家畜候補について提案する廃用候補、維持候補の繁殖用家畜の抽出を行う。
【0153】
ステップS305において、ユーザである農家は、抽出された廃用候補より、いずれの繁殖用家畜を廃用するか選択する廃用家畜選択情報を入力する。補填すべき繁殖用家畜の数を算出し、その繁殖用家畜の導入のために必要な育成候補家畜数の算出を行う。
【0154】
ステップS306において、候補家畜数算出部118は、廃用家畜選択情報と、財務基礎情報に含まれる候補家畜選別情報とを用いて、新たに繁殖用家畜の候補として用意すべき候補家畜数を算出する。
【0155】
ステップS307において、構成最適化部117は、制約条件(例えば使用中候補家畜数と選抜率を参照した結果、必要な候補家畜数が確保できるかどうか等)を考慮した結果、制約条件により産歴構成最適化の再実施が必要かどうかを判断し、最適化の再実施が不要(No)の場合には処理を終了する。最適化の再実施が必要な場合は、ステップS303に戻り、制約条件を考慮して、再び最適産歴構成情報の生成を行う。
【0156】
以上説明したように、本開示の実施形態に係る畜産情報管理システム1では、繁殖用家畜が飼養される農場に設置された繁殖用家畜の飼養環境に関する飼養環境情報を取得するための測定装置310と、家畜情報記憶部121に記憶される繁殖用家畜に紐づけられる、繁殖用家畜の少なくとも品種情報を含む繁殖用家畜基礎情報と、測定装置310で取得された少なくとも農場の気温に関する情報を含む飼養環境情報と、家畜情報記憶部121に記憶される少なくとも繁殖用家畜の産子数の履歴情報を含む繁殖用家畜の飼養履歴に関する飼養履歴情報と、少なくとも飼養環境情報に含まれる農場の気温に関する情報と、繁殖用家畜基礎情報に含まれる品種情報と、飼養履歴情報に含まれる繁殖用家畜の産子数の履歴情報とを学習データとして数理モデルに学習にすることより、繁殖用家畜の産歴別産子数を推定するための繁殖数理モデルを生成する数理モデル構築部114と、数理モデル構築部114が生成した繁殖数理モデルを記憶する数理モデル記憶部122と、数理モデル記憶部122に記憶される繁殖数理モデルを用いて、将来の任意のタイミングにおける繁殖用家畜の産子数を推定する産子数推定部111と、を備え、産子数推定部111は、繁殖数理モデルを用いて繁殖用家畜の産子数を推定することにより、繁殖用家畜の現状の生産性を逐次把握し、目標とする生産性に向けて飼養管理することができる。
【0157】
また、農場の経営に関する財務基礎情報を記憶する財務基礎情報記憶部123と、財務基礎情報と、繁殖用家畜基礎情報に含まれる繁殖用家畜の情報と、産子数推定部111が推定した産子数とを用いて、繁殖用家畜に紐づけられた繁殖用家畜の飼養から生じる利益に関する情報を含む管理会計情報を算出する管理会計部116、を更に備えることにより、推定された産子数に基づいて繁殖用家畜の飼養から生じる利益に関する情報を認識し、畜産経営状態を把握することができるので、ユーザである農家が、それらの状態を改善するために飼養施策を打つ等の対処ができるようになる。
【0158】
また、繁殖用家畜基礎情報と、管理会計部116が算出した繁殖用家畜の飼養から生じる利益に関する情報を含む管理会計情報と、産子数推定部111が推定した産子数と、を用いて、所定のタイミングにおける、少なくとも農場の総産子数又は繁殖用家畜の飼養から生じる利益のいずれかを最適化するための、複数の繁殖用家畜から構成される産歴の組み合わせについて示す最適産歴構成情報を生成する構成最適化部117、をさらに備えることにより、農場の総産子数又は繁殖用家畜の飼養から生じる利益を向上させるために、農場で保有している母豚の産歴構成を改善することができる。
【0159】
また、構成最適化部117は、繁殖用家畜基礎情報と、最適産歴構成情報に応じて、所定のタイミングにおける、少なくとも農場の総産子数又は繁殖用家畜の飼養から生じる利益のいずれかを最適化するために廃用すべき家畜候補について提案する廃用候補家畜情報を生成することにより、ユーザである農家がどのような母豚を廃用すればよいか把握しやすくなり、農場で保有している母豚の構成を改善しやすくなる。
【0160】
また、廃用候補家畜情報に基づき選択された廃用家畜選択情報と、家畜情報記憶部121に記憶されている候補家畜数情報とを用いて、新たに繁殖用家畜の候補家畜として用意すべき準備候補家畜数を算出する、候補家畜数算出部118をさらに備えることにより、ユーザである農家が、将来必要となる候補豚を事前に用意することができる。
【0161】
また、数理モデル記憶部122は、少なくとも家畜の品種情報に応じた繁殖数理モデルを記憶し、産子数推定部111は、家畜の繁殖用家畜基礎情報に含まれる品種に応じた繁殖数理モデルを数理モデル記憶部122より選択し、選択した繁殖数理モデルを用いて繁殖用家畜の産子数を推定することにより、産子数の推定の精度が向上する。
【0162】
また、繁殖数理モデルは、飼養環境情報に含まれる、少なくともさらに飼養履歴情報に含まれる体重情報、及び/又は体調に関する情報が学習データとして付加されて生成されていることにより、母豚の状態を表す体重、体調等の情報を母豚の固体に由来する母豚内部繁殖変数として数理モデルに組み入れることが可能となり、産子数の推定の精度が向上する。
【0163】
また、繁殖数理モデルは、気温に関する情報に加えて、さらに測定装置より取得された、農場の湿度、風量、光量、音、及び臭気のうち少なくとも一つを含む情報が学習データとして付加されて生成されていることにより、母豚が飼養されている環境の要因を環境変数として数理モデルに組み入れることが可能となり、産子数の推定の精度が向上する。
【0164】
また、繁殖数理モデルは、繁殖用家畜基礎情報として、さらに繁殖用家畜の出所に関する情報、及び繁殖用家畜の日齢に関する情報のうち少なくとも一つの情報が学習データとして付加されて生成されていることにより、母豚の出自や加齢状況など母豚の固体に由来する母豚内部繁殖変数として数理モデルに組み入れることが可能となり、産子数の推定の精度が向上する。
【0165】
また、繁殖数理モデルは、飼養履歴情報として、さらに繁殖用家畜に対する給餌種類及び/又は給餌量の情報、及び繁殖用家畜に対する給水量の情報、繁殖用家畜に対する投薬履歴(生殖の促進に用いるもの)のうち少なくとも一つの情報が学習データとして付加されて生成されていることにより、子豚を出産するのに必要なエネルギーや栄養素を十分に摂取できているかを表す飼養変数として数理モデルに組み入れることが可能となり、産子数の推定の精度が向上する。
【0166】
また、繁殖数理モデルは、飼養履歴情報として、さらに繁殖用家畜の疾病罹患履歴、繁殖用家畜に対するワクチン投与履歴、繁殖用家畜に対する投薬履歴(疾病の治療又は予防に用いるもの)、繁殖用家畜の出産の正常又は異常の履歴、のうち少なくとも一つの情報が学習データとして付加されて生成されていることにより、疾病の治療や予防のために対策がなされているか、出産はこれまで正常におこなわれているかなど、母豚健康状態変数として数理モデルに組み入れることが可能となるため、産子数の推定の精度が向上する。
【0167】
また、繁殖数理モデルは、飼養履歴情報として、さらに繁殖用家畜に対する種付日、種付を実施した精液、精液性状情報、のうち少なくとも一つの情報が学習データとして付加されて生成されていることにより、雄豚の生殖能力も含めた繁殖パフォーマンスを母豚外部繁殖変数として数理モデルに組み入れることが可能となるため、産子数の推定の精度が向上する。
【0168】
また、産子数推定部111は、農場内で管理する複数の繁殖用家畜について、複数の繁殖用家畜の各産子数を、個々の繁殖用家畜に適用され補正された繁殖数理モデルにより推定することにより、農場の総産子数を算出することにより、個々の繁殖用母豚により適用された繁殖数理モデルを用いることができ、産子数の推定の精度が向上する。
【0169】
また、複数の繁殖用家畜の産子数の履歴情報と、複数の繁殖用家畜の飼養環境情報の履歴情報と、を学習データとして用いて生成される繁殖数理モデルに対して、繁殖用家畜の飼養環境情報と、繁殖用家畜の飼養履歴情報と、繁殖用家畜の産子数の実績値を用いて、繁殖数理モデルを更新するための数理モデル管理部115と、を更に備えることにより、数理モデルが最新のデータ状態に呼応できる状態を維持することができる。
【0170】
また、繁殖用家畜の画像を取得するための画像撮影部311をさらに備え、画像撮影部311が取得した繁殖用家畜の画像を用いて、繁殖用家畜の体重情報、及び/又は体調に関する情報、を推定するための家畜状態推定部112と、を更に備えることにより、ユーザである農家が実際に体重を計測する負担を軽減することができる。
【0171】
また、ユーザに対するアラート情報を生成するためのアラート生成部113を更に備え、アラート生成部113は、繁殖用家畜の体重情報、及び/又は体調に関する情報、が所定条件を満たす場合にアラート情報を生成することにより、母豚の状態が好ましくないと認識したユーザである農家が、それらの問題を解消するために飼養施策を打つ等の対処ができるようになる。
【0172】
また、ユーザに対するアラート情報を生成するためのアラート生成部113を更に備え、アラート生成部113は、産子数推定部111が推定した産子数が所定条件を満たす場合にアラート情報を生成することにより、今後産出される推定された産子数が、平均産子数などの標準産子数よりも少ないと予測される場合に、ユーザである農家がそれらの問題を解消するために飼養施策を打つ等の対処ができるようになる。
【0173】
(プログラム)
図15は、コンピュータ801の構成を示す概略ブロック図である。コンピュータ801は、CPU802、主記憶装置803、補助記憶装置804、インタフェース805を備える。
【0174】
ここで、各実施形態に係る畜産情報管理サーバ101を構成する各機能を実現するためのプログラムの詳細について説明する。
【0175】
畜産情報管理サーバ101は、コンピュータ801に実装される。そして、畜産情報管理サーバ101の各構成要素の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置804に記憶される。CPU802は、プログラムを補助記憶装置804から読みだして主記憶装置803に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU802は、プログラムに従って、上記した記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置803に確保する。
【0176】
当該プログラムは、具体的には、コンピュータ801において、家畜の情報を管理する畜産情報管理プログラムであって、記憶される繁殖用家畜に紐づけられる繁殖用家畜基礎情報と、取得された繁殖用家畜の飼養環境に関する飼養環境情報と、記憶される繁殖用家畜の飼養履歴に関する飼養履歴情報と、を用いて記憶される繁殖パフォーマンス数理モデルにより、所定のタイミングにおける繁殖用家畜の産子数の推定を実現するプログラムである。
【0177】
なお、補助記憶装置804は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、インタフェース805を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等が挙げられる。また、このプログラムがネットワークNWを介してコンピュータ801に配信される場合、配信を受けたコンピュータ801が当該プログラムを主記憶装置803に展開し、上記処理を実行してもよい。
【0178】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。更に、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置804に既に記憶される他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)
であってもよい。
【0179】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。また、実施形態の説明では家畜として豚を例として説明したが、牛や鳥のような他の家畜、家きんに畜産情報管理システムを適用しても構わない。
【解決手段】畜産情報管理システム1は、繁殖用家畜に紐づけられる、繁殖用家畜の少なくとも品種情報を含む繁殖用家畜基礎情報と、測定装置で取得された少なくとも農場の気温に関する情報を含む飼養環境情報と、少なくとも繁殖用家畜の産子数の履歴情報を含む繁殖用家畜の飼養履歴に関する飼養履歴情報と、少なくとも飼養環境情報に含まれる農場の気温に関する情報と、繁殖用家畜基礎情報に含まれる品種情報と、飼養履歴情報に含まれる繁殖用家畜の産子数の履歴情報とを学習データとして数理モデルに学習にすることより、繁殖数理モデルを用いて、将来の任意のタイミングにおける繁殖用家畜の産子数を推定する。