(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
不織布単層または複数の不織布が積層されたマスク本体と、前記マスク本体の左右両側部分に設けられた装着者の顔に前記マスク本体を固定するための固定部とを備えるマスクであって、
前記マスク本体は、横方向に沿った山折部と谷折部によって九十九折り状に折畳んで縦方向に並設された複数の襞部と、
前記複数の襞部のそれぞれの両側重畳部分に設けられ、折り畳まれた前記マスク本体を前記山折部から隣接する前記谷折部に向かって前記縦方向に対して所定の角度を有するように、前記マスク本体の左右の側部方向から中央側に向けて前記山折部に対し離間する方向であって前記マスク本体の横センターを示すX軸と縦センターを示すY軸が交差する中心方向に斜めのラインを形成するように配置され、かつ隣接する前記谷折部に達しない長さである接合部と、
を備え、展開したとき、前記複数の襞部における両側重畳部分において、側部から中央側に向けて前記山折部に対して離間する方向に斜めのライン状に設けた前記各接合部が形成されている領域の自由度を大きく動き易くしたことを特徴とするマスク。
【背景技術】
【0002】
従来、防塵用、防花粉用などに使用されるマスクは、埃、花粉などの微粒子の鼻および口からの吸い込みを防ぐために、装着するユーザの顔との密着性を高めることが重要とされている。また、マスクは、ユーザによる呼吸がし易く、且つ蒸れなどの不快感を軽減するため、鼻および口元の空間を十分に保つことが要求されている。
【0003】
そのため従来のマスクでは、縦方向に縦列された横方向に向けて折り畳まれた複数の襞を有する不織布の左右両側部分を接合したものが周知である。このような従来のマスクは、中央部分を縦方向に沿った上下方向に引っ張ると、襞が広がり、ドーム状になるため、口元に空間を形成することができる。
【0004】
ところで、従来のマスクは、襞をできる限り広げるために、両側部分の接合部の面積を小さくしたり、接合点数を減らしたりすると、接合部の強度が弱くなり、襞を広げた際に接合部が剥がれてしまう。
【0005】
また、従来のマスクは、両側部分の接合部の点数を減らした疎状態にすると、襞の山折目および谷折目の固定が安定せず、肌当たりが悪くなると共に、見た目も悪くなる。
【0006】
一方、両側部分の接合部の点数を増やしたり、複数列に配列したり、短冊状の不織布を2つ折りにして両側部分を挟むように接合して両側部分の接合部の強度を高めると硬く柔軟性に欠けるため、頬との密着性や肌当たりが悪くなる。
【0007】
これらの問題を解決するため、従来のマスクにおける、両側部分の接合部の構成について種々の提案がなされており、例えば、特許文献1および特許文献2に開示されている。
特許文献1には、複数の襞が形成された不織布の左右両側部に、マスクの縦方向に延び且つマスクの縦中心線に向かって凸状形状の連続または不連続の接合ラインを形成したマスクの技術が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、両側縁部に点状の溶着部である溶着点が等間隔にかつ1列に形成されて、それら溶着点の列により形成される接合線を上下方向に並んだ2つの円弧部状に形成したマスクの技術が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、および各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。また、以下の説明においては、図の紙面に向かって見た上下左右方向を構成要素の上方、下方、左方および右方として説明している。
【0016】
先ず、本発明の一態様のマスクについて、図面に基づいて、以下に詳しく説明する。
図1は、本実施の形態の一態様のマスクの構成を示す平面図、
図2はマスクの右側部の構成を示す拡大図、
図3は
図2のIII−III線に沿った断面図、
図4は上部側に設けられる接合部の構成を説明するための模式図、
図5は下部側に設けられる接合部の構成を説明するための模式図、
図6はマスクを装着した状態を示す斜視図である。
【0017】
図1に示すように、マスク1は、例えば、防塵用や防花粉用に使用されるもので、マスク本体2と、マスク本体2の左右両側部から環状に取り付けられたゴム紐などの2つの耳掛部3と、を備えている。2つの耳掛部3は、それらの端部がマスク本体2の側部の図中の横方向のセンターを示すX軸に沿った上下方向の両側部分に超音波溶着機などで溶着加工された溶着部4により接合されている。
【0018】
マスク本体2は、2層以上の複数の不織布から形成された表面横長の矩形状となっている。これら複数の不織布は、上下部分が超音波溶着機などによって溶着加工された、図中の縦方向のセンターを示すY軸と平行に左右方向に延びる断続的な複数のシール線5によって接合されている。
【0019】
そして、マスク本体2は、上方側の2つのシール線5の間に、積層する複数の不織布の間に空間が形成され、この空間内にノーズフィッター6が配設されている。また、マスク本体2は、ノーズフィッター6の両端部から所定の距離で離間する部分に、空間内に収容されたノーズフィッター6をズレないように保持するために超音波溶着機などによって溶着加工された2つのシール部7が配設されている。
【0020】
なお、ノーズフィッター6は、ユーザである装着者が鼻と口を覆うようにマスク1を装着した際に、マスク本体2の上部分が装着者の鼻の凹凸形状に沿う形状を維持するため、例えば樹脂製の薄板から形成されている。
【0021】
ここでのマスク本体2には、例えばメルトブローン不織布、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布が用いられ、これら種々の不織布が組み合わされて積層されている。勿論、マスク本体2は、通気性などを考慮した一種類の不織布を複数積層した構成としてもよいし、単層としてもよい。
【0022】
また、マスク本体2は、
図2および
図3に示すように、X軸に沿った上下方向となる縦方向に向けて所定の間隔で並設するように、Y軸方向に沿った左右方向に沿って所謂九十九折り状に折り畳まれた山折部15と谷折部16を有する、複数、ここでは4つの第1、第2、第3および第4の襞部11,12,13,14が形成されている。
【0023】
なお、ここでは、これら第1、第2、第3および第4の襞部11,12,13,14のうち、縦センターとしてのY軸よりも上方側の位置にある、2つの第1および第2の襞部11,12の上方の折目がそれぞれ山折部15となり、下方の折目がそれぞれ谷折部16となっている。
【0024】
また、縦センターとしてのY軸よりも下方側の位置にある、2つの第3および第4の襞部13,14の下方の折目がそれぞれ山折部15となり、上方の折目がそれぞれ谷折部16となっている。
【0025】
即ち、本実施の形態の記載では、マスク本体2が展開したときに、これら4つの第1、第2、第3および第4の襞部11,12,13,14を側方から見て装着者に対して外側に山形状と谷形状が形成される折目に基づいて山折部15と谷折部16が定義されている。
【0026】
マスク本体2は、九十九折り状に折り畳まれた状態において、中央部分に第2および第3の襞部12,13の山折部15によって形成されるY軸に沿った左右方向に延設された横長平面状の中央シート部21が形成される。
【0027】
また、マスク本体2は、九十九折り状に折り畳まれた状態において、中央シート部21の上方側に、この中央シート部21に襞部12の谷折部16を含む下方一部分が装着側で重畳するY軸に沿った左右方向に延設された横長平面状の第1の上方シート部22が形成される。
【0028】
さらに、マスク本体2は、九十九折り状に折り畳まれた状態において、第1の上方シート部22の上方側に、この第1の上方シート部22に襞部11の谷折部16を含む下方一部分が装着側で重畳するY軸に沿った左右方向に延設された横長平面状の第2の上方シート部23が形成される。なお、この第2の上方シート部23には、上述した耳掛部3の端部を上部側で溶着する溶着部4およびノーズフィッター6が配設されている。
【0029】
また、マスク本体2は、九十九折り状に折り畳まれた状態において、中央シート部21の下方側に、この中央シート部21に襞部13の谷折部16を含む上方一部分が装着側で重畳するY軸に沿った左右方向に延設された横長平面状の第1の下方シート部24が形成される。
【0030】
さらに、マスク本体2は、第1の下方シート部24の下方側に、この第1の下方シート部24に襞部14の谷折部16を含む下方一部分が装着側で重畳するY軸に沿った左右方向に延設された横長平面状の第2の下方シート部25が形成される。なお、この第2の下方シート部25には、上述した耳掛部3の端部を下部側で溶着する溶着部4が配設されている。
【0031】
これら各シート部21,22,23,24,25は、第1、第2、第3および第4の襞部11,12,13,14の互いに重畳する両側部分が超音波溶着機などによる溶着加工された接合ラインとして、複数、ここでは左右合計8つの接合部10によって接合されている。即ち、積層された複数の不織布のシートは、第1、第2、第3および第4の襞部11,12,13,14によって重畳された両側部分のそれぞれが接合部10によって接合されている。
【0032】
ここで、接合部10の構成について、以下に詳しく説明する。
図4および
図5に示すように、接合部10は、超音波溶着機などにより溶着加工された複数、ここでは4つの溶着スポット10a,10b,10c,10dによって断続的なライン状として形成されている。なお、
図4および
図5は、マスク本体2の右側部のみを示している。
【0033】
これら4つの溶着スポット10a,10b,10c,10dは、マスク本体2の左右の側部方向から中央側に向けて順に、山折部15からの距離L1,L2,L3,L4が長く(L1<L2<L3<L4)なるように、
図1に示した、マスク本体2の横センターを示すX軸と縦センターを示すY軸が交差する中心O方向に斜めのラインを形成するように配設されている。
【0034】
即ち、マスク1は、
図1に示した、X軸に沿った上下方向に沿って、マスク本体2の中央側に向けて、山折部15からの距離L1,L2,L3,L4が順に長く(L1<L2<L3<L4)、かつL4が山折部15から隣接する谷折部16までの距離より短くなるように、4つの溶着スポット10a,10b,10c,10dが断続的な斜めのライン状となるように配設される。
【0035】
つまり、溶着スポット10a,10b,10c,10dのうち、左右の側部に最も近い溶着スポット10aが山折部15に対して最も近接した位置に配設され、左右の側部に最も遠い溶着スポット10dが山折部に対して最も離間した位置に配設される。
【0036】
こうして、マスク1は、マスク本体2の両側部において、第1、第2、第3および第4の襞部11,12,13,14の重畳する部分が、ここでは合計8つの接合部10によって上下方向である縦方向のX軸に対して所定の角度θを有するように、マスク本体2の中央側に向けて斜めの断続的なライン状に接合される。なお、接合部10は、左右方向である横方向のY軸に対しても所定の角度(90−θ)を有していることは勿論である。
【0037】
このように構成されたマスク1は、マスク本体2の両側部において、第1、第2、第3および第4の襞部11,12,13,14がそれぞれ重畳する部分が斜めの略直線のライン状の接合部10によって接合されることで、X軸に平行な接合部によって接合するよりも接合部10の長さが十分に確保できる構成となっている。
【0038】
これにより、マスク1は、接合部10の面積を十分に稼ぐことができ、第1、第2、第3および第4の襞部11,12,13,14の接合部10による接合箇所が外れて襞部がバラけることがない十分な接合強度を有する構成とすることができる。
【0039】
以上のように構成された本実施の形態のマスク1は、
図6に示すように、装着者100の鼻と口を覆うように第1、第2、第3および第4の襞部11,12,13,14が展開した状態で装着される。
【0040】
このように展開したマスク1は、第1、第2、第3および第4の襞部11,12,13,14における両側重畳部分において、側部から中央側に向けて各接合部10を山折部15に対して離間する方向に斜めのライン状に設けているため、山折部15の複数の不織布のシートが側部から中央側に向った接合部10が形成されている所定の領域Aの自由度が大きく動き易くなる。
【0041】
これにより、マスク1は、各接合部10をマスク本体2の中央側に向けた斜めのライン状に設けても、第1、第2、第3および第4の襞部11,12,13,14が広がり易くなる構成とすることができる。
【0042】
以上に述べたように、本実施の形態のマスク1は、両側部分に設けられる接合部により十分な強度で襞を固定できると共に、襞の広がりを阻害することなく、十分に口元の空間を確保できる。
【0043】
(第1の変形例)
図7は、第1の変形例の接合部の構成を説明するための模式図である。
なお、
図7に示すように、接合部10は、マスク本体2の山折部15の複数の不織布のシートが側部から中央側に向けた領域Aが確保できれば、複数の溶着スポットが重なるような実線状のラインとしてもよい。
【0044】
(第2の変形例)
図8は、第2の変形例の接合部の構成を説明するための模式図である。
また、
図8に示すように、接合部10は、マスク本体2の山折部15の複数の不織布のシートが側部から中央側に向けた領域Aが確保できれば、凹形状の断続的な円弧ライン状としてもよい。勿論、接合部10は、実線状の円弧ラインとしてもよい。
【0045】
(第3の変形例)
図9は、第3の変形例の接合部の構成を説明するための模式図である。
さらに、
図9に示すように、接合部10は、マスク本体2の山折部15の複数の不織布のシートが側部から中央側に向けた領域Aが確保できれば、凸形状の断続的な円弧ライン状としてもよい。勿論、接合部10は、実線状の円弧ラインとしてもよい。
【0046】
(第4の変形例)
図10は、第4の変形例のマスクの構成を示す平面図である。
なお、
図10に示すように、マスク1は、マスク本体2の両側部分の第1、第2、第3および第4の襞部11,12,13,14上に、各接合部10よりも外方側となるX軸に沿った縦方向に延設された断続的なシール線9を有していてもよい。
【0047】
(第5の変形例)
図11は、第5の変形例のマスクの構成を示す断面図である。
マスク1は、
図11に示すように、マスク本体20
の下向きの襞の数を多くした構成としてもよいし、図示しないが
図11とは上下反対として、マスク本体20の上向きの襞の数を多くした構成としてもよい。
【0048】
なお、その他のマスク1の構成、特に接合部10の構成は、上述した実施の形態または変形例と同じである。
【0049】
(第6の変形例)
図12は、第6の変形例のマスクの構成を示す断面図である。
マスク1は、
図12に示すように、マスク本体20がユーザの装着側から順に下方側に折り畳まれた同一方向の襞のみを有していてもよいし、図示しないが
図12とは反対に、マスク本体20がユーザの装着側から順に上方側に折り畳まれた同一方向の襞のみを有していてもよい。
【0050】
なお、本変形例においても、その他のマスク1の構成、特に接合部10の構成は、上述した実施の形態または変形例と同じである。
【0051】
以上に記載のマスク1は、花粉、ハウスダストなどの吸い込み防止用、風邪用、医療分野用、食品製造分野用、精密機器製造などのクリーンルーム用、各種製造業分野などの防塵用など種々の用途に用いることができる。
【0052】
また、マスク1は、上記実施の形態および変形例に記載した4つの第1、第2、第3および第4の襞部11,12,13,14の数に限定されることなく、襞の数に制限されないものである。
【0053】
さらに、以上の各実施の形態に記載した発明は、それら実施の形態および変形例に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。