【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。まず、実施例で用いた測定方法及び評価方法について説明する。
(1)性量
20℃×65%RHの環境に保たれた恒温室にて布帛を一昼夜保管した後、同じく恒温室内で測定した。
経糸・緯糸密度(inchあたりの本数):デンシメーターで計測
目付(g/m
2):精密電子天秤
厚み(μm):JIS1096規格に準拠した厚み計により測定、例えば、ピーコック 定圧厚み計 FFA10、接圧:2.4N/cm
2
【0033】
(2)接触冷感値Qmax
同恒温室内で、カトーテック社製KES−F7 サーモラボIIを用い、最大熱移動量(Qmax値)、環境温度20℃、湿度65%RH、接触圧力98cN/cm
2、接触面積9cm
2(3cm×3cm)を測定した。断熱材として、発泡スチロールを用いた。測定回数はN=5とし、その平均値を得た。
【0034】
(3)吸湿率M(裏地吸湿率)
80℃の送風乾燥機で1時間予備乾燥をし、次いで、20℃×65%RHの恒温室にて布帛を一昼夜保管した後、同じく恒温室内で布帛重量を測定した。測定回数はN=5とし、その平均値を得た。
【0035】
(4)通気抵抗R(裏地RL、表地RS)
同恒温室内で、カトーテック社製KES−F8通気抵抗測定器を用い、表地(RS)、裏地(RL)の通気抵抗を測定した。測定回数は測定箇所を変え、N=5とし、その平均値を得た。
【0036】
(5)空隙指数V
走査型電子顕微鏡(50倍〜100倍が好ましい)で裏地表面写真を5箇所撮影、画像解析装置の二値化法により、繊維糸条の面積占有率(%)を求め、平均値を得、この値から空隙率(%)を算出した(空隙率=100−面積占有率)。空隙率と厚み(mm)を乗算し、空隙指数を算出した。
【0037】
(6)裏地面積占有率(%)
CADを用いた画像処理により、表地の型紙と裏地の型紙の面積比から、裏地の面積占有率を算出した。面積計算には、ポケット布や、天狗布、ベルト布は除いて計算した。
図1に、総裏仕様の例を、
図2に、前当て仕様の例(裏地短め、裏地通常)を示す。
【0038】
以下、実施例で用いたズボンの着用試験方法について説明する。
(7)着用官能試験
被験者は身長170〜175cm、体重60〜70kgの健全な男性10名を選定した。下半身は、後述するズボンの下に綿100%のブリーフ、綿、ポリエステル混の靴下、上半身は、肌着として綿60%、キュプラ20%、ポリエステル20%フライス(グンゼ社製YG−X)、半袖シャツとして、綿65%、ポリエステル35%混紡を供試した。いずれの被験者にも、ノーネクタイとし、シャツ第一ボタンをはめずに着用させた。
30℃×50%RHの環境にて、まずは裏地なしの綿100%ズボン着用の状態で15分坐位安静にさせた。続いて、試作のズボンを1種ずつランダムに着用(乱数表使用)、以下の指定動作をさせ、1着ごと官能評価を実施した。回答は、SD法による以下の5段階評定とし、その平均値を示した。平均値が3.4以上であると好ましい。
[指定動作]
脚曲げ伸ばし繰り返し5回−座り、立ち繰り返し5回、ズボン脱衣して綿100%ズボン着用し5分安静後、次のズボン着用試験へ移行
[清涼感評価(清涼性)]
5:非常に清涼
4:清涼
3:どちらともいえない
2:やや暑い
1:非常に暑い
【0039】
(8)着用生理試験
被験者は身長170〜175cm、体重60〜70kgの健全な男性5名を選定した。各被験者共にサーカディアンリズムを考慮し、摂食コントロールのもとで1日1着の実験を行った。
下半身は、ズボンの下に綿100%のブリーフ、綿、ポリエステル混の靴下、上半身は、肌着として綿60%、キュプラ20%、ポリエステル20%フライス(グンゼ社製YG−X)、半袖シャツとして、綿65%、ポリエステル35%混紡を供試した。いずれの被験者にも、ノーネクタイとし、シャツ第一ボタンをはめずに着用させた。
32℃×50%RHの環境にて、試作ズボン着用の状態で30分間坐位安静後、時速5kmにて10分間トレッドミル上で歩行させ、終了後10分座位安静にさせた。着用試験中は、安静開始から歩行後安静終了まで10秒ごとの平均皮膚温を得た。皮膚温は5人分のデータを時間軸に平均した後、測定開始から終了までの区間平均値を得た。平均皮膚温は、皮膚温度センサー(グラム社製LT−2N−12)を被験者の右胸、上腕、大腿、下腿、ラマナサンの4点法に従い貼り付けて採取した。歩行後安静時に、各ズボンの清涼性についての官能評価を実施した。回答は、SD法による以下の5段階評定とし、その平均値を示した。平均値が3.4以上であると好ましい。
[清涼感評価(歩行後清涼性)]
5:非常に清涼
4:清涼
3:どちらともいえない
2:やや暑い
1:非常に暑い
【0040】
[裏地付きズボン試作]
各種表地と裏地を用いた、ズボンをJIS標準サイズA6にて縫製した。裏地の縫製時には、織機上の経糸方向が胴体経方向になるように縫製した。
[ウール/ポリエステル混紡表地X]
経糸2/72、緯糸2/72のウールとポリエステルの混紡糸のトップ染めを経て紡績糸を得、仕上げ密度が経64本/inch、緯55本/inch、通気抵抗値が0.083Kpa・s/mの平織表地Xを用意した。
[ウール表地Y]
経糸2/60、緯糸2/60のウール紡績糸を得、定法の染色加工の後、仕上げ密度が経62本/inch、緯48本/inch、通気抵抗が0.100Kpa・s/mの平織表地Yを用意した。
続いて、この表地Xと表地Yを用いて、下記実施例、比較例中に詳細を示す裏地を用いて、紳士用ズボンを16着作製した。表地Xによるズボンは、実施例1〜8、比較例1〜7の15種、表地Yによるズボンは、実施例9の1種である。尚、比較例5として、裏地無しも用意した。
裏地の構成、物性、配置場所、面積占有率及び着用試験結果を以下の表1−1、1−2に示す。
【0041】
[実施例1、5、6]
経糸用にキュプラアンモニウムレーヨン(旭化成(製)ベンベルグ)56dtex/45fを、処理温度85℃、処理時間20分を二回、撚り止めセットを実施し、1000回/mのS撚糸を得た。続いて、緯糸用にベンベルグ84dtex/45fを、処理温度85℃、処理時間20分を二回、撚り止めセットを実施し、1825回/m、SZ撚糸を得た。これらをエアージェットルーム織機により、平織物を得た後、染色加工工程1により裏地1を得た。
【0042】
<染色加工工程1>
連続精練−プレセット−パッドスチーム染色・ソーピング・乾燥−柔軟樹脂加工−ホットペーパーカレンダー(温度90℃、1000N/cm)−検査
裏地の厚みはカレンダー前後で0.147mmから0.128mmに13%変化した。
この裏地を、実施例1については、図
2に例示したような前当て仕様、KL(ニーライン)よりも20cm下(前当て通常長さ)としてズボンをA法により縫製した。裏地面積は表地面積対比42%、表地前身対比84%であった。実施例5については、図
1に例示したような総裏仕様としてズボンを縫製した。裏地面積は表地面積対比90%であった。
実施例6については、図
2に例示したような前当て仕様、KLよりも15cm下(前当て短め)としてズボンをA法により縫製した。裏地面積は表地面積対比36%、表地前身対比72%であった。
【0043】
[実施例2]
経糸用にポリエステル56dtex/24fを処理温度80℃、処理時間30分で撚り止めセットを実施し、600回/mのS撚糸を得た。緯糸用にビスコースレーヨン84dtex45fを、処理温度80℃、処理時間40分で撚り止めセットを実施し、1825回/mのSZ撚糸を得た。これらを用いてエアージェットルーム織機により、平織物を得た後、染色加工工程2により裏地2を得た。
【0044】
<染色加工工程2>
連続精練−プレセット−液流染色・ソーピング−乾燥−パッドスチーム染色・ソーピング−乾燥−樹脂加工−コールドペーパーカレンダー(温度常温、1000N/cm)−検査
裏地の厚みはカレンダー前後で0.154mmから0.140mmに10%変化した。
この裏地を、実施例2については、図
2に例示したような前当て仕様、KL(ニーライン)よりも20cm下(前当て通常長さ)としてズボンをA法により縫製した。裏地面積は表地面積対比42%、表地前身対比84%であった。
【0045】
[
参考例3]
経糸用にキュプラアンモニウムレーヨン(旭化成(製)ベンベルグ)56dtex/45fを、処理温度70℃、処理時間20分を二回、撚り止めセットを実施し、1000回/mのS撚糸を得た。続いて、緯糸用にベンベルグ84dtex/45fを、処理温度70℃、処理時間20分を二回、撚り止めセットを実施し、1825回/mのSZ撚糸を得た。これらを用いてエアージェットルーム織機により、平織物を得た後、染色加工工程1により裏地3を得た。
裏地の厚みはカレンダー前後で0.146mmから0.133に10%変化した。
この裏地を、実施例3については、
図2に例示したような前当て仕様、KL(ニーライン)よりも20cm下(前当て通常長さ)としてズボンをA法により縫製した。裏地面積は表地面積対比42%、表地前身対比84%であった。
【0046】
[実施例4]
経糸用にキュプラアンモニウムレーヨン(旭化成(製)ベンベルグ)84dtex/45fを、処理温度70℃、処理時間40分で撚り止めセットを実施し、600回/mのS撚糸を得た。続いて、緯糸用にベンベルグ84dtex/45fを、処理温度70℃、処理時間40分で撚り止めセットを実施し、600回/mのSZ撚糸を得た。これら用いてをエアージェットルーム織機により、平織物を得た後、染色加工工程3により裏地4を得た。
裏地の厚みはカレンダー前後で0.154mmから0.140mmに10%変化した。
【0047】
<染色加工工程3>
連続精練−プレセット−パッドスチーム染色・ソーピング・乾燥−柔軟樹脂加工−コールドペーパーカレンダー(温度常温、1000N/cm)−検査
この裏地を、実施例4については、図
2に例示したような前当て仕様、KL(ニーライン)よりも20cm下(前当て通常長さ)としてズボンをA法により縫製した。裏地面積は表地面積対比42%、表地前身対比84%であった。
【0048】
[実施例7]
経糸用にキュプラアンモニウムレーヨン(旭化成(製)ベンベルグ)56dtex/45fを、処理温度85℃、処理時間20分を二回、撚り止めセットを実施し、1000回/mのS撚糸を得た。続いて、緯糸用にベンベルグ84dtex/45fを、処理温度85℃、処理時間20分を二回、撚り止めセットを実施し、1825回/m、SZ撚糸を得た。これらをエアージェットルーム織機により、平織物を得た後、染色加工工程3により裏地5を得た。
裏地の厚みはカレンダー前後で0.140mmから0.128mmに10%変化した。
この裏地を、実施例7については、図
2に例示したような前当て仕様、KL(ニーライン)よりも20cm下(前当て通常長さ)としてズボンをA法により縫製した。裏地面積は表地面積対比42%、表地前身対比84%であった。
【0049】
[参考例8]
経糸用にキュプラアンモニウムレーヨン(旭化成(製)ベンベルグ)56dtex/45fを、処理温度70℃、処理時間20分を二回、撚り止めセットを実施し、1000回/mのS撚糸を得た。続いて、緯糸用にベンベルグ84dtex/45fを、処理温度70℃、処理時間20分を二回、撚り止めセットを実施し、1825回/mのSZ撚糸を得た。これらを用いてエアージェットルーム織機により、平織物を得た後、染色加工工程3により裏地6を得た。
裏地の厚みはカレンダー前後で0.147mmから0.137mmに7%変化した。
この裏地を、実施例8については、
図2に例示したような前当て仕様、KL(ニーライン)よりも20cm下(前当て通常長さ)としてズボンをA法により縫製した。裏地面積は表地面積対比42%、表地前身対比84%であった。
【0050】
[実施例9]
経緯糸に、キュプラアンモニウムレーヨン(旭化成(製)ベンベルグ)短繊維60/−(単糸1.4dtex、繊維長38mm、Ks=3.8)を用いて、エアージェットルーム織機により平織物を得た後、染色加工工程3により裏地7を得た。
裏地の厚みはカレンダー前後で0.176mmから0.160mmに10%変化した。
この裏地を、実施例9については、図
2に例示したような前当て仕様、KL(ニーライン)よりも20cm下(前当て通常長さ)としてズボンをA法により縫製した。裏地面積は表地面積対比42%、表地前身対比84%であった。
【0051】
[比較例1、6]
経緯糸に、ポリエステルの融着延伸仮撚加工糸100dtex/36fを用いて、ウォータージェットルーム織機により平織物を得た後、染色加工工程4により裏地8を得た。ここで融着延伸仮撚加工糸とは、糸長方向に加撚時の撚り状態を保持している部分(いわゆる「未解撚部分」)と、解撚作用が集中して形成された解撚と同一方向の撚りとなっている過剰解撚部分とを有している糸である。
【0052】
<染色加工工程4>
連続精練−プレセット−液流染色・ソーピング−乾燥−仕上げ加工−検査
【0053】
この裏地を、比較例1については、図
1に例示したような総裏仕様としてズボンを縫製した。裏地面積は表地面積対比90%であった。比較例6については、図
2に例示したような前当て仕様、KL(ニーライン)よりも20cm下(前当て通常長さ)としてズボンを常法により縫製した。裏地面積は表地面積対比42%、表地前身対比84%であった。
【0054】
[比較例2]
経糸にポリエステル56dtex/36f、緯糸にポリエステル84dtex/36fを用いて、ウォータージェットルーム織機により平織物を得た後、染色加工工程4により裏地9を得た。
この裏地を、比較例2については、図
2に例示したような前当て仕様、KL(ニーライン)よりも20cm下(前当て通常長さ)としてズボンを定法により縫製した。裏地面積は表地面積対比42%、表地前身対比84%であった。
【0055】
[比較例3]
経糸にキュプラアンモニウムレーヨン(旭化成(製)ベンベルグ)84dtex/45f、緯糸に同110dtex/75fを用いて、エアージェットルーム織機により、平織物を得た後、染色加工工程3により裏地10を得た。
裏地の厚みはカレンダー前後で0.104mmから0.100mmに4%変化した。
この裏地を、比較例3については、図
2に例示したような前当て仕様、KL(ニーライン)よりも20cm下(前当て通常長さ)としてズボンを定法により縫製した。裏地面積は表地面積対比42%、表地前身対比84%であった。
【0056】
[比較例4]
経緯糸に、キュプラアンモニウムレーヨン(旭化成(製)ベンベルグ)短繊維60/−(単糸1.4dtex、繊維長38mm、Ks=3.8)を用いて、エアージェットルーム織機により平織物を得た後、染色加工工程3により裏地9を得た。
裏地の厚みはカレンダー前後で0.176mmから0.160mmに10%変化した。
この裏地を、比較例4については、図
2に例示したような前当て仕様、KL(ニーライン)よりも20cm下(前当て通常長さ)としてズボンを定法により縫製した。裏地面積は表地面積対比42%、表地前身対比84%であった。
【0057】
[比較例5]
表地Xを用いて、裏地無しのズボンを縫製した。
【0058】
[比較例7]
経緯糸に、キュプラアンモニウムレーヨン(旭化成(製)ベンベルグ)短繊維60/−(単糸1.4dtex、繊維長38mm、Ks=3.3)を用いて、エアージェットルーム織機により平織物を得た後、染色加工工程3により裏地11を得た。
裏地の厚みは0.172mmから0.165mmに4%変化した。
この裏地を、比較例7については、図
2に例示したような前当て仕様、KL(ニーライン)よりも20cm下(前当て通常長さ)としてズボンを定法により縫製した。裏地面積は表地面積対比42%、表地前身対比84%であった。
【0059】
【表1-1】
【表1-2】