特許第6902857号(P6902857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902857
(24)【登録日】2021年6月24日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】封止材を備えた電気的装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20210701BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20210701BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20210701BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20210701BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20210701BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20210701BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20210701BHJP
   H01M 50/10 20210101ALI20210701BHJP
【FI】
   H01L23/30 Z
   H01L21/56 Z
   H01L25/04 C
   H01M10/04 Z
   H01M10/613
   H01M50/10
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-229017(P2016-229017)
(22)【出願日】2016年11月25日
(65)【公開番号】特開2017-123457(P2017-123457A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2019年7月31日
(31)【優先権主張番号】10 2015 223 449.5
(32)【優先日】2015年11月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス スチューウィング
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート シュミット
(72)【発明者】
【氏名】サンドリーヌ ボドリー−ヴィントリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ペトラ ステディーレ
【審査官】 平林 雅行
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭50−007487(JP,Y1)
【文献】 独国特許出願公開第102013112267(DE,A1)
【文献】 特開2010−109011(JP,A)
【文献】 特開平05−258902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 1/00−1/16
H01G 2/10
H01L 21/56
H01L 23/28−23/31
H01L 25/00−25/07
H01L 25/10−25/11
H01L 25/16−25/18
H01M 10/00−10/04
H01M 10/06−10/34
H01M 10/52−10/667
H01M 50/00−50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント材(26)を含む封止材(20;20’;20’’)によって少なくとも部分的に封止された電気部品(12,12’)を備えた電気的装置において、
前記封止材(20;20’;20’’)は、それぞれ1つのセメント材(26,26’,26’’)を含む少なくとも2つの離散層(24,24’,24’’)からなる積層体(22;22’;22’’)を含み、
前記積層体(22;22’;22’’)は、当該積層体(22;22’;22’’)の厚さ方向(30)に勾配を有しており、
前記勾配は、前記セメント材(26,26’,26’’)の化学的及び/又は物理的特性の勾配である、
ことを特徴とする、電気的装置(10)。
【請求項2】
前記セメント材(26,26’,26’’)のうちの少なくとも1つは、アルミナセメントを含む、請求項1に記載の電気的装置(10)。
【請求項3】
前記積層体(22;22’;22’’)は、それぞれ1つのセメント材(26,26’,26’’)を含む少なくとも1つのさらなる離散層(24,24’,24’’)を含む、請求項1又は2に記載の電気的装置(10)。
【請求項4】
前記積層体(22;22’;22’’)は、前記離散層(24,24’,24’’)のうちの少なくとも2つの間に、機能的境界層(32)を備えている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気的装置(10)。
【請求項5】
前記離散層(24,24’,24’’)のうちの少なくとも2つは、部分的に、前記電気部品(12,12’)に配置されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気的装置(10)。
【請求項6】
前記勾配は、前記積層体(22;22’;22’’)の前記離散層(24,24’,24’’)に関して段階的に形成されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気的装置(10)。
【請求項7】
前記勾配は、以下のものからなるグループ、即ち、多孔性勾配、密度勾配、層密度勾配、水和勾配、組成勾配、セメント添加材の濃度勾配、セメントの反応性化学官能基の濃度勾配、充填剤(28)の濃度勾配、充填剤(28)の粒径勾配からなるグループから選択されている、請求項乃至のいずれか一項に記載の電気的装置(10)。
【請求項8】
前記勾配が前記多孔性勾配を含む場合、前記多孔性勾配は、孔径及び/又は細孔数勾配を含む、請求項に記載の電気的装置(10)。
【請求項9】
前記充填剤(28)は、有機材料、無機材料、及び、金属材料からなるグループから選択されている材料を含む、請求項又はに記載の電気的装置(10)。
【請求項10】
前記有機材料は、ポリマーであり、前記無機材料は、セラミック材料又はガラスである、請求項に記載の電気的装置(10)。
【請求項11】
前記電気部品(12,12’)は、半導体構成素子(12)、センサ素子(12’)、インダクタンス、キャパシタンス、バッテリセル、バッテリモジュール又は回路装置である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電気的装置(10)。
【請求項12】
セメント材(26)を含む封止材(20;20’;20’’)によって少なくとも部分的に封止された電気部品(12,12’)を備えた、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の電気的装置(10)を製造する方法であって、
少なくとも、第1及び第2のセメント材(26,26’,26’’)を準備するステップと、
前記第1のセメント材(26)を、第1の離散層(24)として前記電気部品(12,12’)に塗布するステップと、
前記封止材(20;20’;20’’)の積層体(22;22’;22’’)を形成するために、前記第2のセメント材(26’)を第2の離散層(24’)として前記第1の離散層(24)に塗布するステップと、
前記離散層(24,24’)の前記セメント材(26,26’)のうちの少なくとも1つを処理するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記離散層(24,24’,24’’)の前記セメント材(26,26’,26’’)を処理する前記ステップは、以下の処理、即ち、
前記セメント材(26,26’,26’’)の熱処理、
前記セメント材(26,26’,26’’)を所定のガス雰囲気中に曝露する処理、
前記セメント材(26,26’,26’’)に所定の圧力を加える処理、
前記セメント材(26,26’,26’’)に電磁ビームを加える処理、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記セメント材(26,26’,26’’)はそれぞれ、前記積層体(22;22’;22’’)において、段階的な勾配が、前記積層体(22;22’;22’’)の前記離散層(24,24’,24’’)に関して形成されるように構成及び/又は塗布及び/又は処理される、請求項12又は13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止材によって少なくとも部分的に封止された電気部品を備えた電気的装置、及び、この種の電気的装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
パワーエレクトロニクスモジュール及び堅固なセンサシステムの信頼性及び効果の向上並びにコストの低減は、今日では最大の重要性を有する。現在の封止材料(エポキシド化合物、シリコン封止材)は、200℃未満の温度範囲に限られている。封止材料に対する300℃乃至350℃までの温度範囲の開発により、最新のパワー半導体(例えばSiC)の動作範囲は、封止材料の付加的機能(例えば環境への影響からの保護、熱上昇流の改善)を省くことなく200℃を超えて拡張可能である。
【0003】
独国特許出願公開第102013112267号明細書(DE102013112267A1)からは、半導体部品を被覆する、異なるセメント材からなる封止材を備えた半導体モジュールが公知である。この封止材は、ここではさらに保護層と、接着促進剤層とを有し、この両方はセメントを含んでいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102013112267号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の開示
本発明の態様は、セメント材を含む封止材によって少なくとも部分的に封止された電気部品を備えた電気的装置であり、封止材は、それぞれ1つのセメント材を含む少なくとも2つの離散層からなる積層体を含む。
【0006】
さらに本発明の態様は、セメント材を含む封止材によって少なくとも部分的に封止された電気部品を備えた電気的装置を製造する方法であり、この方法は、
少なくとも、第1及び第2のセメント材を準備するステップと、
第1のセメント材を第1の離散層として電気部品に、当該電気部品が少なくとも部分的に封止されるように塗布するステップと、
封止材の積層体を形成するために、第2のセメント材を第2の離散層として第1の離散層に塗布するステップと、
離散層のセメント材のうちの少なくとも1つを処理するステップと、を含む。
【0007】
その他に本発明の態様は、電気的装置の電気部品のための、封止材としての積層体の適用であり、積層体は、それぞれ1つのセメント材を含む少なくとも2つの離散層を含む。
【0008】
この電気部品は、例えば半導体素子、センサ素子、インダクタンス、キャパシタンス、バッテリセル、バッテリモジュール又は回路装置であってもよい。しかしながら、電気部品とは、本発明の範囲内では、あらゆる能動及び受動素子又はハイパワー素子と理解されたい。電気的装置は、ここでは、その上に電気部品が配置された支持体基板を有し得る。
【0009】
セメントとは、本発明の範囲内では、金属を含まない水硬性の無機結合剤と理解されたい。このセメントは、ここでは水硬性セメントとして硬化する。即ち、安定した不溶性の結合のもとで水と化学反応を起こす。ここでのセメントは、当該方法の開始時点又は水和前では、水又は添加水溶液と反応し水和物を形成しながら硬化及び凝固する微粉砕粉末として構成されていてもよい。この水和物は、インターロックひいてはセメントの高い強度につながる針状及び/又は小板状の形成物をなし得る。これとは対照的に、リン酸セメントは、水硬性のように硬化しない。ここでは、後で大半はアモルファス塊に凝固する塩ゲルの形成下で酸塩基反応が起きる。この酸塩基反応では、H+(水素イオン)が交換される。
【0010】
セメントは、主にアルミン酸カルシウムからなり、水和の間にアルミン酸カルシウム水和物を形成し得る。好ましくは、セメント材は、アルミナセメントを含み、特にアルミナセメントからなる。アルミナセメント(略称CAC)は、欧州ではDINEN14647規格で規制されている。アルミナセメントは、主に第一アルミン酸カルシウム(CaO*Al)で構成されている。
【0011】
アルミナセメントは、例えば以下の組成、即ち、
Al:67.8重量%以上、
CaO:31.0重量%以下、
SiO:0.8重量%以下、
Fe:0.4重量%以下、
の組成を有し得る。
【0012】
離散層とは、本発明の範囲内では、その周囲に対して画定された境界面を有している層と理解されたい。従って、各離散層は、固有の単位/ユニットを形成する。各離散層は、ほとんど均質な化学的及び/又は物理的特性を有している。離散層は、相互にそれらの化学的及び/又は物理的特性が異なり得る。離散層のうちの少なくとも1つは、セメント複合材として構成されてもよい。即ち、換言すれば、この離散層は、充填剤及び/又は添加剤及び/又はセメント複合材を含んだセメントマトリックスを含むことができる。これらの離散層は、以下の組成、即ち、
結合剤 アルミナセメント:8重量%以上から47重量%以下まで(例えばSECAR71)、
反応剤 水:10重量%以上から28重量%以下まで
充填剤:25重量%以上から82重量%以下まで、
の組成を有し得る。
【0013】
充填剤は、以下のものからなるグループ、即ち、
Al:微小粒径d50約1μmから粗い粒径d50約150乃至200μmまで、
Alpha−Si:微小粒径約1μmから粗い粒径約100μmまで、
HEX.BN:微小粒径約15μmから粗い粒径約250μmまで、
SiC:微小粒径約10乃至50μmから粗い粒径約600μmまで、
AlN:微小粒径1μmから粗い粒径約100μmまで、
からなるグループから選択されていてもよい。
【0014】
セメント材は、例えば圧入法、スプレー法及び/又は注型法を用いて塗布可能である。
【0015】
処理のステップとは、本発明の範囲内では、硬化ステップ又は反応ステップと理解されたい。処理のステップは、例えば浸漬法を含み得る。処理のステップは、セメント材(複数可)又はセメント層(複数可)の部分処理のみも含み得る。即ち、換言すれば、処理の際に、セメント材(複数可)又はセメント層(複数可)の部分的な又は完全な処理が行われ得る。処理のステップでは、例えば第1の離散層としての第1のセメント材の塗布の後に、この第1のセメント材が(部分的に)処理され、第2の離散層としての第2のセメント材の塗布の後に、この第2の離散層が(部分的に)処理されることが可能である。しかしながら、積層体全体が、セメント材の塗布後に処理されることも考えられ得る。
【0016】
積層体とは、本発明の範囲内では、相互に積層された複数の層からなる層結合体と理解されたい。この積層体は、離散層のうちの少なくとも2つの間に1つの機能的境界層を備え得る。この機能的境界層は、例えば2つの離散層の共通の境界面に形成され得る。機能的境界層は、ここでは2つの離散層との対比において、構造、化学的組成及び化学的特性において有する局所的な相違を有する反応ゾーンのタイプを形成している。
【0017】
封止材とは、本発明の範囲内では、被包材(パッケージング)のあらゆるタイプと理解されたい。
【0018】
封止材が、関連するセメント材からだけなく、それどころか、積層体を有し、それぞれ1つのセメント材を含む複数の離散層からなっていることにより、一方では、電気部品への封止材のはるかに改善された接着性が得られ得る。これに対する根拠は、材料対へ適合的にセメント材がその接着特性に関して最適化され、さらに層構造が材料対のために選択的に1つの積層体に組み合わせられ得ることにある。即ち、換言すれば、例えば層の熱膨張係数が適合化され得ることにあり、そのため、電気部品と全封止材との間の生じ得る熱的又は機械的整合不良が回避される。他方では、離散層の1つに形成されたクラックの、層を横断する拡張が、効果的に阻止され得る。なぜなら、クラックが層の境界又は境界層までにしか拡がらず、そこで止められるか又は「緩衝」されるからである。さらに個々の離散層と共に封止材全体の特性は、要求に対して正確に適合化可能となり、セメントの好ましい特性は、常に、全ての離散層において維持される。それにより、例えば複数の層の一部が付加的機能を、例えば液状セメント材及び生じ得る外的周辺環境の影響、例えば湿気、ほこりなどからの保護を提供すると共に、電気部品及び金属を攻撃的な腐食から保護するために、不動態化又は犠牲層としての化学的機能を実施することが可能となる。従って、改善された機械的特性及び耐クラック性並びにより高められた寿命を有する電気的な装置が提供され得る。
【0019】
さらに好ましくは、離散層のうちの少なくとも2つが、部分的に電気部品に配置される。即ち、換言すれば、離散層のうちの少なくとも2つが、それらの両方が電気部品と接触接続するように配置及び/又は構成されている。この手段により、所定の熱伝導路が形成可能になり、例えばこれらの離散層の両セメント材が、異なる熱伝導率を有している場合には、それによって周囲への所期の熱放出と共に迅速な熱放出が達成可能になる。
【0020】
さらに好ましくは、積層体が、積層体の厚さ方向において勾配を有している。この場合、好ましくは、この勾配は、セメント材の化学的及び/又は物理的特性の勾配である。それにより、離散層は、例えばその化学的及び/又は構造的組成に関する勾配を有し得る。勾配はここでは、好ましくは積層体の離散層に関して段階的に形成されている。即ち、換言すれば、勾配は、離散層の内部に生じるのではなく、それどころかこれは、1つの離散層から次の離散層まで存在している。従って、個々の離散層は、それらの化学的及び/又は物理的特性に関してそれぞれ均質に構成されていてもよい。勾配は、セメント材の構成若しくは組成、及び/又は、塗布及び/又は処理のタイプに基づいて形成され得る。勾配は、正又は負の勾配であり得る。勾配は好ましくは電気部品を起点として外方へ向けて低減され得る。
【0021】
勾配は、好ましくは、以下のものからなるグループ、即ち、多孔性勾配、特に孔径及び/又は細孔数勾配、密度勾配、層密度勾配、水和度の勾配、組成勾配、セメント添加材の濃度勾配、セメントの反応性化学官能基の濃度勾配、充填剤の濃度勾配、充填剤の粒径勾配からなるグループから選択されていてもよい。ここでは、多数のさらなる勾配が、本発明の範囲を逸脱することなく考えられ得る。
【0022】
異なる離散層のセメント材は、類似の化学組成を有し得る。これらの離散層の相違は、例えば、セメント添加剤の濃度においてのみ、及び/又は、セメント及び/又は充填剤の反応性化学官能基の濃度においてのみ生じるものであってもよい。また、離散層の相違は、水和度において生じるものであってもよい。離散層の多孔性又は多孔性度(例えば細孔の数又は孔径に関する)は、例えば充填剤濃度の変更及び/又は充填剤の粒径の変更によって、設定又は変更可能である。多孔性を高めることによって減量化及び改善された耐クラック性が達成可能である。後者は、クラックが細孔に基づいて迂回し、それに伴い離散層内で悪影響を及ぼして、さらに層を横断して拡張しかねないという状況によるものである。さらに多孔性の増加に伴い、反応に対する抑止面も増加し、これによって一方では接着特性もさらに向上させることが可能である。他方では、熱交換が減少し、これによって絶縁特性も変更し得るか又は多孔性の増加に伴って向上し得る。その他にも、多孔性によって機械的特性、即ち、離散層及びひいては封止材の硬度又は柔軟性も設定可能となる。さらに細孔は、それによって付加的機能を提供するために、充填することも可能である。
【0023】
離散層の密度は、例えば多孔性度を維持しながら、充填剤の濃度の変更により設定又は変更可能である。これにより、セメント材の熱伝導率が変更可能である。離散層の選択的及び指向的構造は、指向性の熱放出を可能にする。
【0024】
水和勾配とは、水和度の勾配と理解されたい。水和は、例えばセメントの割合と水の割合とを変化させることによって設定可能である。水和度は、セメント材中に存在するセメントのどのくらいの割合が水和によってセメントペーストに変換され、それによって強度形成に作用しているかを示す。従って、水和勾配又は水和度の勾配により、離散層の機械的特性も同様に設定可能である。その他にこれによって、緩衝水(Wasserpuffer)のタイプも統合又は提供可能である。
【0025】
層厚さ勾配により、界面における機械的応力が減衰可能である。即ち、換言すれば、例えばセメント層の熱膨張係数が材料対に応じて適合化され、それに伴い機械的応力の低減が達成され得る。
【0026】
さらに好ましくは、充填材は、有機材料、特にポリマー、無機材料、特にセラミック材料(例えばAl,ZrO)、ガラス、金属材料からなるグループから選択される材料を含むか又はそのような材料からなる。
【0027】
その他に好ましくは、離散層のセメント材を処理するステップは、以下の処理、即ち、
セメント材の熱処理、
セメント材を所定のガス雰囲気中に曝露する処理
セメント材に所定の圧力を加える処理、
セメント材に例えば所定の波長及び強度の電磁ビーム、例えば紫外線ビーム、赤外線ビーム、可視光を加える処理、
のうちの少なくとも1つを含む。
【0028】
熱処理は、焼戻し炉での焼戻しステップを含み得る。熱処理は、40℃以上から95℃までの温度範囲又は95℃に等しい温度で行うことができる。
【0029】
ガス雰囲気は、例えば100%までの高められた湿度を有する雰囲気又は空気として構成されてもよい。ガス雰囲気は、触媒又は促進分子を含むことも可能である。
【0030】
この手段により、例えば添加剤は、その機能を発揮するために効率的にかつ高い信頼性のもとで活性化され得る。
【0031】
以下では、本発明を、添付の図面に基づき例示的に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態による電気的装置を示した図。
図2】本発明のさらなる実施形態による電気的装置を示した図。
図3本発明のさらなる実施形態による電気的装置を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1には、本発明に係る電気的装置が示されており、当該装置は、その全体において符号10が付されている。
【0034】
電気的装置10は、電気部品12を備えている。この電気部品12は、半導体素子12として構成されている。電気部品12は、支持体基板14上に配置されている。電気部品12と支持体基板14との間には、銅層16が配置されている。この銅層16は、ここでは複数の機能、詳細には熱の伝導及び放出を向上させるための機能、電気部品12に対する電気的接触接続を提供するための機能、並びに、場合によっては封止材の塗布の際の流出止めとしての機能を有している。
【0035】
電気部品12は、ボンディングワイヤ18を介して支持体基板14の、自身とは反対側に接続されており、これによって外部からの電気部品12の電気的接触接続が可能になる。ここでは支持体基板14は、例えばプレートとして構成されていてもよく、さらにその中には導体線路又は電気的コンタクトが、電気部品12との接触接続のために集積化されていてもよい。導体線路は、支持体基板14の表面に配置されていてもよい。支持体基板14は、1つのチップに構成されていてもよい。
【0036】
電気的装置10は、さらに積層体22を含む封止材20を備えている。封止材20と積層体22とは、グローブトップ(Glob-Top)として構成されている。封止材20又は積層体22は、支持体基板14に配置されている。積層体22はここでは、電気部品12を、支持体基板14によって被覆されていない面において封止している。従って、電気部品12は、支持体14と封止材20によって完全に封止されている。この積層体22は、さらに、それを介して自身が支持体基板14と固定的に結合している、支持体基板14の一部も被覆している。
【0037】
積層体22は、第1の離散層24、第2の離散層24’、第3の離散層24’’を含んでいる。これらの離散層24,24’,24’’は相互に積層され、電気部品12を被覆している。第1の離散層24は、内方に、即ち、電気部品12に隣接して配置されている。第2の離散層24’は、中間に、即ち、第1の離散層24と第3の離散層24’’の間に配置されている。第3の離散層24’’は、外方に、即ち、電気的装置10の周囲に隣接して配置されている。
【0038】
本発明によれば、これらの離散層24,24’,24’’は、それぞれ1つのセメント材26,26’,26’’を含んでいる。ここでは第1の離散層24は、第1のセメント材26を含んでいる。第2の離散層24’は、第2のセメント材26’を含んでいる。第3の離散層24’’は、第3のセメント材26’’を含んでいる。図示の実施形態では、全ての離散層24,24’,24’’がそれぞれ充填剤28を含んでいる。充填剤28は、粒子状に形成されている。充填剤28は、離散層24,24’,24’’毎にそれぞれ実質的に均質に分散されている。各離散層24,24’,24’’は、実質的に同じ濃度の充填剤28を含んでいる。充填剤28の粒径は、各離散層24,24’,24’’の内部では大半が一定である。しかしながら、充填剤28の粒径は、内方にある第1の離散層24から中間にある第2の層24’を介して外方の離散層24’’まで増加している。従って、積層体22は、その厚さ方向30において、充填剤28の粒径の勾配を有している。この厚さ方向30は、ここでは個々の離散層24,24’,24’’の厚さ方向に相当している。即ち、換言すれば、従って充填剤28の粒径の勾配は、第1の離散層24から第3の離散層24’’まで連続的に増加しているのではなく、それどころか第1の離散層24から第2の離散層24’へ段階的に増加し、さらに第2の離散層24’から第3の離散層24’’へ再度段階的に増加する。従って、本発明によれば、充填剤28の粒径の勾配によって、封止材20の強度及び空隙充填度を変更することが可能である。
【0039】
積層体22はさらに、機能的境界層32を有している。これらの機能的境界層32は、それぞれ離散層24,24’,24’’の間に配置されている。これらの機能的境界層32は、ここでは反応ゾーンとして構成されている。それにより、これらの機能的境界層32は、別個に塗布されたものではなく、それどころかプロセス中に個々の離散層24,24’,24’’の間の境界面に形成されたものである。従って、機能的境界層32は、局所的な相違を、構造、化学的組成及び化学的特性において有している。
【0040】
これにより、はるかに改善された接着性を、特に封止材20の内部において得ることが可能になる。さらにクラックの拡張が、離散層24,24’,24’’の境界面又は機能的境界層32において効果的に阻止若しくは停止され得る。
【0041】
図2には、本発明に係るさらなる電気的装置10’が示されている。この電気的装置10’は、図1による電気的装置10に類似して構成されている。但し、この電気的装置10’は、一方では複数の電気部品12,12’を有している。これらの電気部品12,12’は、半導体素子12及びセンサ素子12’を含んでいる。封止材20’又は積層体22’は、ここでは全ての電気部品12,12’を封止している。他方では、封止材20’及び積層体22’は、平坦に形成されている。
【0042】
この電気的装置10’も、本発明によれば、同様に、積層体22’の厚さ方向30に勾配を有している。しかしながら、図1による実施形態とは対照的にここでは、それは水和勾配又は水和度の勾配である。既に前述したように、水和度は、セメント材中に存在するセメントのどのくらいの割合が水和によってセメントペーストに変換され、それによって強度形成に作用しているかを示す。ここでは勾配とそれに伴う水和度は、積層体22’の厚さ方向30において外方に向けて減少している。各離散層24,24’,24’’の内部の水和度は、ここでも実質的に同じである。水和度は、1つの離散層24,24’から次の離散層24’,24’’へ段階的にのみ増加している。従って、第1の離散層24は、最大水和度を有し、第3の離散層24’’は、最小の水和度を有する。
【0043】
図3には、本発明に係るさらなる電気的装置10’’が示されている。この電気的装置10’’は、図2による装置10’に類似して構成され、それにより同様に、複数の電気部品12,12’及び平坦な構造を有している。図2による実施形態とは対照的に、積層体22’’は、付加的にパス34を有している。これらのパス34は、離散層の一部であり、複数の電気部品12,12’に対して相対的にさらに外方へ配置された離散層24’,24’’から介在的に配置された層24又は24,24’を通って電気部品12,12’の1つまで延在している。第3の離散層24’’の一部であり、かつ同様にセメント材26’’を含んでいる、パス34の1つは、第1の離散層24及び第2の離散層24’を通って電気部品12まで延在している。従って電気部品12は、第1の離散層24によっても、第3の離散層24’’によっても接触接続されている。第2の離散層24’の一部であり、かつ同様にセメント材26’を含んでいる、さらなるパス34は、第1の離散層24を通って電気部品12’まで延在している。従って、電気部品12’は、第1の離散層24によっても、第2の離散層24’によっても接触接続されている。パス34は、ここでは、例えば離散層24,24’,24’’の2つのセメント材26,26’,26’’がそれぞれ異なる熱伝導率を有していることによって、熱伝導路を形成しており、そのため周囲への所期の熱放出と共に迅速な熱放出が達成され得る。
【0044】
本発明に係る電気的装置10の製造の際には、まず例えば粉末状のセメント材26,26’,26’’が準備される。引き続き各セメント材26,26’,26’’には、それぞれ異なる粒径を有する充填剤28が混合され、それによって、実質的に同じ充填剤濃度を有するが、但し、充填剤28における粒径が異なっている3つのセメント材26,26’,26’’が結果的に生じる。続いて液状構成要素、例えば場合により融剤Mehlfluxを含む水が、それぞれセメント材26,26’,26’’に混和される。最小の粒径を有する第1の湿ったセメント材26はその後排気され、そこに電気部品12が被着され、第1の離散層24として型にもたらされ、例えば射出成形又は注型成形を用いて型にもたらされる。それに続いて第1のセメント材26は、例えば60℃の温度及び90%の相対湿度のもとで熱処理又は焼戻しされ、これによって第1の離散層24の完全な又は部分的なゲル形成、結晶化、ニードリング及び硬化が行われる。ここでは、湿度が水分損失(水対セメント値)を予防し、温度は所望の構造体の形成を引き起こす。引き続き、平均的な粒径を有する第2の湿ったセメント材26’が排気され、そこに第1の離散層24が塗布され、第2の離散層24’として型にもたらされ、例えば射出成形又は注型成形を用いて型にもたらされる。それに続いて第2のセメント材26’は、例えば60℃の温度及び90%の相対湿度のもとで熱処理又は焼戻しされ、これによって第2の離散層24’の完全な又は部分的なゲル形成、結晶化、ニードリング及び硬化が行われる。ここでは、場合によって機能的境界層32が、第1及び第2の離散層24,24’の間に形成される。引き続き、最大粒径を有する第3の湿ったセメント材26’’が排気され、そこに第2の離散層24’が塗布され、第3の離散層24’’として型にもたらされ、例えば射出成形又は注型成形を用いて型にもたらされる。それに続いて第3のセメント材26’’は、例えば60℃の温度及び90%の相対湿度のもとで熱処理又は焼戻しされ、これによって第3の離散層24’’の完全な又は部分的なゲル形成、結晶化、ニードリング及び硬化が行われる。ここでは、場合によって機能的境界層32が、第2及び第3の離散層24’,24’’の間に形成される。最後に封止材20又は積層体22が任意選択的に処理され、その後例えば300℃の温度のもとで型から取り出され、保管される。
図1
図2
図3