特許第6902867号(P6902867)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902867
(24)【登録日】2021年6月24日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】エアゾール容器用吐出機構
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/16 20060101AFI20210701BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   B65D83/16 100
   B05B9/04
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-256784(P2016-256784)
(22)【出願日】2016年12月28日
(65)【公開番号】特開2018-108838(P2018-108838A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2019年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】比屋定 拓
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−024559(JP,A)
【文献】 特開平10−273182(JP,A)
【文献】 特開2015−123981(JP,A)
【文献】 特開2007−302338(JP,A)
【文献】 米国特許第04235373(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/16−83/26
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器のステムから、25℃における原液の粘度が500〜20000mPa・sである内容物を吐出させる操作を容易にするエアゾール容器用吐出機構であって、
マウンテンカップと接続させて前記ステムを囲んで配置される支持脚部を含む操作基部と、該操作基部の前記支持脚部に支持させて、前記ステムを押圧する方向に進退可能に配置されると共に、前記ステムの先端部を臨ませる吐出開口部を中央部分に備える進退押圧部と、前記操作基部の前記支持脚部に回転可能に支持させて取り付けられた、前記進退押圧部に当接しながら回転する回転当接部、及び該回転当接部を回転させる回転操作部を備える回転部とを含んで構成されており、
前記回転当接部は、回転中心から周面までの距離が徐々に大きくなった周方向傾斜面部を有しており、前記回転操作部の操作により回転して、前記周方向傾斜面部に当接する前記進退押圧部を、前記ステムを押圧する方向に移動させることにより、前記ステムを前記進退押圧部によって押圧して、内容物を吐出させるようになっており、且つ前記回転当接部には、前記周方向傾斜面部の回転方向の後方側に、前記ステムを押圧する前の状態に復帰させるように前記進退押圧部を落下させる、段差部が設けられているエアゾール容器用吐出機構。
【請求項2】
前記進退押圧部は、前記操作基部に一端部を回転可能に支持させて取り付けられた第2種てこ部となっており、
該第2種てこ部は、他端部に前記回転当接部を当接させると共に、前記一端部と前記他端部との間の部分に前記吐出開口部が設けられており、
前記回転当接部は、前記回転操作部の操作により回転して、前記第2種てこ部を、前記一端部を中心とする周方向に回転させることにより、前記ステムを押圧する方向に移動させる請求項1記載のエアゾール容器用吐出機構。
【請求項3】
前記進退押圧部は、両側の端部を前記操作基部にスライド可能に支持させて取り付けられたスライド押圧部となっており、該スライド押圧部は、前記回転当接部を当接させると共に、前記両側の端部の間の部分に前記吐出開口部が設けられており、
前記回転当接部は、前記回転部の操作により回転して、前記スライド押圧部を、前記ステムを押圧する方向にスライド移動させる請求項1記載のエアゾール容器用吐出機構。
【請求項4】
前記回転当接部は、一方向に傾けた歯を周方向に複数備えるラチェット歯車を用いて形成されている請求項1〜3のいずれか1項記載のエアゾール容器用吐出機構。
【請求項5】
前記回転当接部は、回転中心から円周までの距離が一定でない円板カムを用いて形成されている請求項1〜3のいずれか1項記載のエアゾール容器用吐出機構。
【請求項6】
前記操作基部は、エアゾール容器を、前記マウンテンカップを下方に配置すると共に前記ステムを下面から下方に突出させた倒立状態で立設させる天井部と、該天井部から下方に延設して設けられて、前記ステムから吐出される内容物を受け取る受取り空間を、該天井部の下方に形成する前記支持脚部とを含んで構成されており、
前記進退押圧部は、前記支持脚部に支持させて、前記受取り空間の上部に配置されており、前記回転部は、前記支持脚部に回転可能に支持させて、前記回転当接部を前記受取り空間に配置すると共に、前記回転操作部を前記受取り空間の外側に配置して取り付けられており、
前記回転当接部は、前記回転操作部の操作により回転して、前記進退押圧部を上方に押し上げるようにして移動させることにより、前記ステムを前記進退押圧部によって押圧して、内容物を吐出させる請求項1〜5のいずれか1項記載のエアゾール容器用吐出機構。
、前記回転部は、前記支持脚部に回転可能に支持させて、前記回転当接部を前記受取り空間に配置すると共に、前記回転操作部を前記受取り空間の外側に配置して取り付けられており、
前記回転当接部は、前記回転操作部の操作により回転して、前記進退押圧部を上方に押し上げるようにして移動させることにより、前記ステムを前記進退押圧部によって押圧して、内容物を吐出させる請求項1〜5のいずれか1項記載のエアゾール容器用吐出機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器用吐出機構に関し、特に、エアゾール容器のステムから内容物を所定量ずつ吐出させる操作を容易にするエアゾール容器用吐出機構に関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール容器は、高い内圧に耐えられるように、有底筒状の容器本体の上端開口に金属製のマウンテンカップを固着することによって形成されている。エアゾール容器は、マウンテンカップから突出するステムを、バルブ機構からの付勢力に抗して押し下げることで、マウンテンカップに内蔵されているバルブ機構を開放させて、内容物に溶け込んだ噴射剤や圧縮ガス、又は内容物に混合された噴射剤や圧縮ガスと共に、内容物をステムから霧状、泡状等の状態で吐出させることが可能である。また、エアゾール容器として、内容物を収容した内袋を、金属製の容器本体の内側に装着すると共に、内袋と容器本体との間に圧縮ガスや液化石油ガス等の噴射剤を充填し、これらの噴射剤の圧力により内袋を収縮させて、内容物を吐出させるタイプのものも知られている。
【0003】
一方、エアゾール容器において内容物を吐出させる操作は、ステムに装着された、吐出流路を内部に備える押釦部やノズル部に、手や指で押圧力を加えて押し下げることによって行われている(例えば、特許文献1参照)。また、近年、エアゾール容器の美観の向上や、取扱い易さの向上等を目的として、マウンテンカップを覆う肩カバーを介してノズル部を取り付けたエアゾール容器が用いられているが(例えば、特許文献2参照)、このような肩カバーを用いたエアゾール容器においても、ノズル部に手や指で押圧力を加えることにより、内容物を吐出させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−53154号公報
【特許文献2】特開2008−247470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のエアゾール容器では、内容物を吐出させる操作は、上述のように押釦部やノズル部等に手や指で直接、押圧力を加えることによって行われていたため、例えば吐出された内容物の量を観察しながらの感覚的な操作となり易く、特に内容物の吐出を止める際の操作が曖昧になることで、内容物の吐出時のきれが悪く、所定量の内容物を精度良く吐出させることが困難になる。
【0006】
本発明は、内容物の吐出時のきれを向上させて、所定量の内容物を精度良く吐出させることのできるエアゾール容器用吐出機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エアゾール容器のステムから内容物を吐出させる操作を容易にするエアゾール容器用吐出機構であって、マウンテンカップと接続させて前記ステムを囲んで配置される操作基部と、該操作基部に支持させて取り付けられて、前記ステムを押圧する方向に進退可能に配置されると共に、前記ステムの先端部を臨ませる吐出開口部を備える進退押圧部と、前記操作基部に回転可能に支持させて取り付けられた、前記進退押圧部に当接しながら回転する回転当接部、及び該回転当接部を回転させる回転操作部を備える回転部とを含んで構成されており、前記回転当接部は、回転中心から周面までの距離が徐々に大きくなった周方向傾斜面部を有しており、前記回転操作部の操作により回転して、前記周方向傾斜面部に当接する前記進退押圧部を、前記ステムを押圧する方向に移動させることにより、前記ステムを前記進退押圧部によって押圧して、内容物を吐出させるエアゾール容器用吐出機構を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエアゾール容器用吐出機構によれば、内容物の吐出時のきれを向上させて、所定量の内容物を精度良く吐出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の好ましい第1実施形態に係るエアゾール容器用吐出機構を含む吐出ユニットにエアゾール容器を装着した状態を示す、吐出ユニットを斜め上方から見た部分透視斜視図である。
図2】本発明の好ましい第1実施形態に係るエアゾール容器用吐出機構を含む吐出ユニットにエアゾール容器を装着した状態を示す、吐出ユニットを斜め下方から見た部分透視斜視図である。
図3図1及び図2のA−Aに沿った要部断面図である。
図4】(a)、(b)は、回転ハンドル部の操作により内容物を吐出させる状況を説明する要部断面図である。
図5】本発明の好ましい第2実施形態に係るエアゾール容器用吐出機構を含む吐出ユニットにエアゾール容器を装着した状態を示す、吐出ユニットを斜め上方から見た部分透視斜視図である。
図6】本発明の好ましい第2実施形態に係るエアゾール容器用吐出機構を含む吐出ユニットにエアゾール容器を装着した状態を示す、吐出ユニットを斜め下方から見た部分透視斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好ましい第1実施形態に係るエアゾール容器用吐出機構10は、例えば図1図3に示すように、エアゾール容器20を倒立させた状態で装着して、下端部に配置されたステム21(図3参照)から下方に向けて、例えば歯磨剤等のペースト状の内容物や、粘性の高い液状もしくはゲル状の組成物を所定量ずつ吐出させることを容易にする、吐出ユニット30を構成する吐出機構として用いられる。本第1実施形態のエアゾール容器用吐出機構10は、押釦部やノズル部等を介して手や指でステム21に直接押圧力を加えるのではなく、回転操作部15を回転させる操作に伴わせて、間接的にステム21に押圧力が加えられるようにして、特に押圧力を開放する際のステムの動きを安定させることで、内容物の吐出時のきれを向上させて、所定量の内容物を精度良く吐出できるようにする機能を備えている。また、一般的に噴射ガスを含有するエアゾール製品は、使用毎にガスが抜けることによって内容物を使い切ることが難しいという課題があり、この課題の解決手段の一つとしては、エアゾール容器を正立もしくは倒立させて使用することが挙げられる。本発明のエアゾール容器用吐出機構によれば、エアゾール容器を正立または倒立させて使用することにより噴射ガスのガス抜けを抑制し、安定してエアゾール製品を使い切ることができる。
【0011】
そして、本第1実施形態のエアゾール容器用吐出機構10は、エアゾール容器20のステム21から内容物を吐出させる操作を容易にする吐出機構であって、図1図3に示すように、マウンテンカップ22と接続させてステム21を囲んで配置される操作基部11と、操作基部11に支持させて取り付けられて、ステム21を押圧する方向に進退可能に配置されると共に、ステム21の先端部を臨ませる吐出開口部12aを備える進退押圧部12と、操作基部11に回転可能に支持させて取り付けられた、進退押圧部12に当接しながら回転する回転当接部14、及び回転当接部14を回転させる回転操作部15を備える回転部13とを含んで構成されている。吐出開口部12aは、ステム21と同心円状に位置するように設けることが好ましい。また回転当接部14は、回転中心14aから周面までの距離が徐々に大きくなった周方向傾斜面部14bを有しており、回転操作部15の操作により回転して、周方向傾斜面部14bに当接する進退押圧部12を、ステム21を押圧する方向に移動させることにより、ステム21を進退押圧部12によって押圧して、内容物を吐出させるようになっている。
【0012】
また、本第1実施形態では、進退押圧部12は、操作基部11に一端部16aを回転可能に支持させて取り付けられた第2種てこ部16となっており、第2種てこ部16は、他端部16bに回転当接部14を当接させると共に、一端部16aと他端部16bとの間の部分に吐出開口部12aが設けられており、回転当接部14は、回転操作部15の操作により回転して、第2種てこ部16を、一端部16aを中心とする周方向に回転させることにより、ステム21を押圧する方向に移動させるようになっている。なお、本発明における進退押圧部は、第1種てこ部、第2種てこ部、第3種てこ部のいずれであっても良いが、内容物の吐出時のきれを向上させて、所定量の内容物を精度良く吐出させる観点、及び製造面の簡便さとコストの観点から、第2種てこ部とすることが好ましい。
【0013】
さらに、本第1実施形態では、回転当接部14は、一方向に傾けた歯17aを周方向に複数備えるラチェット歯車17を用いて形成されている。
【0014】
さらにまた、本第1実施形態では、操作基部11は、エアゾール容器20を、マウンテンカップ22を下方に配置すると共にステム21を下面から下方に突出させた倒立状態で立設させる天井部11aと、天井部11aから下方に延設して設けられて、ステム21から吐出される内容物を受け取る受取り空間11cを、天井部11aの下方に形成する支持脚部11bとを含んで構成されている。進退押圧部12は、支持脚部11bに支持させて、受取り空間11cの上部に配置されており、回転部13は、支持脚部11bに回転可能に支持させて、回転当接部14を受取り空間11cに配置すると共に、回転操作部15を受取り空間11cの外側に配置して取り付けられている。回転当接部14は、回転操作部15の操作により回転して、進退押圧部12を上方に押し上げるようにして移動させることにより、ステム21を進退押圧部12によって押圧して(図4(a)参照)、内容物を所定量ずつ吐出させるようになっている。
【0015】
本第1実施形態では、エアゾール容器20は、有底円筒形状の縦長の金属製の容器本体23と、容器本体23の先端開口を閉塞して固着された、公知の金属製のマウンテンカップ22とを含んで構成されており、内容物として、例えばペースト状の歯磨剤が、好ましくは内袋に充填された状態で、噴射剤と共に収容されている。噴射剤と共に容器本体23に収容されている歯磨剤の原液の、25℃における粘度は、噴射剤に二酸化炭素を用いた場合には、かかる原液をエアゾール容器から良好に噴射させる観点から、好ましくは500〜20000mPa・sであり、より好ましくは800〜10000mPa・sであり、さらに好ましくは1000〜5000mPa・sである。ここで、原液の粘度は、BM型粘度計(東機産業(株)製)(ローターNo. 1〜3、6〜60rpm、1分)にて測定することができる。
【0016】
マウンテンカップ22は、バルブ機構を内蔵する公知の部品である。マウンテンカップ22は、外周縁部を巻き締めすることによって、容器本体23の先端部に固着されている。これによって、容器本体23の先端部のマウンテンカップ22との接続部分には、環状縁部22aが形成される。マウンテンカップ22は、環状縁部22aの内側中央部分において、エアゾール容器20の端部から突出させたステム21を、バルブ機構からの付勢力に抗して下方に押し下げることで、バルブ機構を開放させて、内容物である歯磨剤を、噴射剤の圧力によってステム21から吐出させることができるようになっている。
【0017】
ステム21を囲んで配置される操作基部11は、本第1実施形態では、上述のように、下方に配置されたマウンテンカップ22と接続させて、エアゾール容器20を倒立した立設状態で支持する天井部11aと、天井部11aの周縁部分から下方に延設して設けられた支持脚部11bとを含んで形成された、中空の箱型形状を有している。天井部11aは、本実施形態では、矩形の平面形状を備える板状の部分として形成されている。天井部11aには、マウンテンカップ22の環状縁部22aの内側中央部分において、エアゾール容器20の端部から突出させたステム21を、下面よりもさらに下方に突出させた状態で配置させる、切込み挿入凹部11eが形成されている。切込み挿入凹部11eは、天井部11aにおける、下方が開口面となった一辺部から、天井部11aの中央部に致る長さを備えるように切り込まれている。
【0018】
支持脚部11bは、矩形の平面形状を有する天井部11aに、これの三方の辺部から下方に延設する側板部11dが一体として連続する形状を備えており、三方の側板部11dの下端面を載置面に載置することによって、操作基部11の天井部11aから倒立状態で立設するエアゾール容器20を、安定した状態で支持できるようになっている。また支持脚部11bは、天井部11aの下方に、エアゾール容器20のステム21から吐出される内容物として、例えば歯磨剤を歯ブラシの植毛部に受け取らせるための、受取り空間11cを形成できるようになっている。すなわち、側板部11dが設けられていない、天井部11aの残りの一辺部の下方は、開口面となっており、この開口面から、ステム21の下方の受取り空間11cに、歯ブラシの植毛部を差し込むことによって、歯磨剤を、歯ブラシの植毛部に吐出させることができるようになっている。後述するように、操作基部11の支持脚部11bに支持させて、進退押圧部12を形成する第2種てこ部16や、回転当接部14及び回転操作部15を備える回転部13が設けられている。
【0019】
また、本第1実施形態では、操作基部11の天井部11aから上方に立設して、位置決め装着部24が、天井部11aに一体として連続して設けられている。位置決め装着部24は、エアゾール容器用吐出機構10と共に、吐出ユニット30を構成している。位置決め装着部24は、半長円形状の断面形状を備えると共に、エアゾール容器20の容器本体23と同様の高さを有している。位置決め装着部24は、上端部に天面板24aを備えていると共に、半長円形状の断面形状の奥部の円弧状部分は、容器本体23の半円部分の外周面形状と同様の内周面形状を有しており、また半長円形状の断面形状の円弧状部分とは反対側の短辺部分は、開口面となっている。位置決め装着部24の開口面は、操作基部11の開口面と面一に配置されている。また位置決め装着部24の開口面と操作基部11の開口面との間に位置する、天井部11aの残りの一辺部から、天井部11aの中央部に向けて、エアゾール容器20のステム21を、天井部11aの下面よりもさらに下方に突出させた状態で配置させる、上述の切込み挿入凹部11eが形成されている。
【0020】
天井部11aにおけるステム21の突出方向の厚みをt、天井部11aの上面からステム21の先端部下面までの長さをL、本発明のエアゾール吐出機構を使用した際にステム21を進退押圧部12が押し上げる幅をΔLとした場合に、内容物を安定して精度よく吐
出させる観点から、厚さtは5mm以下に設計することが好ましく、長さLは6〜8mmに設計することが好ましく、幅ΔLは1〜3mmに設計することが好ましい。また、上記
のt、L、ΔLの関係は、以下の式(1)で表現される。
【0021】
【数1】
【0022】
これらによって、本第1実施形態では、エアゾール容器20を、ステム21を切込み挿入凹部11eに挿入しながら、開口面側から嵌め込むようにして、倒立状態で位置決め装着部24に装着することが可能になると共に、装着されたエアゾール容器20は、操作基部11の天井部11aと位置決め装着部24の天面板24aとの間に縦長の容器本体23が挟み込まれた状態で、位置決め装着部24によって位置決めされる。これによって、回転ハンドル部15の操作により回転当接部14を回転させて、進退押圧部12を押し上げることによりステム21を押圧する際の押圧力を、安定した状態で支持することが可能になる。
【0023】
本第1実施形態では、ステム21を押圧する方向に進退可能に配置される進退押圧部12は、操作基部11に一端部16aを回転可能に支持させて取り付けられた、第2種てこ部16となっている。第2種てこ部16は、本第1実施形態では、矩形の平面形状を備える板状の部材となっており、対向する一対の辺部うちの一方の辺部を一端部16aとして、当該一端部16aを、操作基部11の開口面を挟んだ両側の側板部11dの上端部分に、回転可能にピン結合することによって取り付けられている。また、第2種てこ部16は、これの中央部分に、操作基部11の天井部11aの下面から突出するステム21の先端部を臨ませる、吐出開口部12aが設けられている。
【0024】
第2種てこ部16は、操作基部11の両側の側板部11dの上端部分にピン結合される一方の辺部を、操作基部11の開口面とは反対側の受取り空間11cの奥部に配置すると共に、中央部分の吐出開口部12aの開口周縁部にステム21の開口周縁部を係止させ、且つ矩形の平面形状の対向する一対の辺部うちの他方の辺部を他端部16bとして、受取り空間11cの開口面側に配置した状態で、操作基部11に取り付けられている。第2種てこ部16は、回転部13の回転操作部15の操作によって、一端部16aを中心とする周方向に回転することにより、吐出開口部12aが設けられた中央部分を、ステム21を押圧する方向に移動させることができるようになっている。
【0025】
進退押圧部12である第2種てこ部16を、ステム21を押圧する方向に移動させる回転部13は、第2種てこ部16の他端部16bに当接しながら回転する回転当接部14と、回転当接部14を回転させる回転操作部15とを備えており、操作基部11の側板部11dに支持させて、回転可能に取り付けられている。回転部13は、回転軸部材13aの一端側に回転当接部14を、他端側に回転操作部15を一体として固定した構成を備えている。回転部13は、操作基部11の開口面を挟んだ両側の一対の側板部11dのうちの一方において、開口面側の上部角部分に貫通して設けられた回転軸穴に、回転軸部材13aを回転可能に挿通させると共に、回転当接部14を受取り空間11cの内部に配置し、回転操作部15を受取り空間11cの外側に配置した状態で取り付けられている。
【0026】
これによって、回転当接部14は、操作基部11の受取り空間11cにおいて、回転部13が取り付けられた一方の側板部11d側の上部角部分に配置されて、第2種てこ部16の他端部16bに、下方から当接した状態で取り付けられると共に、操作基部11の外側に配置された回転操作部15による、例えば当該回転操作部15における操作基部11の開口面側の部分を上方から下方に向けて回転させる回転方向Xへの回転操作によって、第2種てこ部16の吐出開口部12aが設けられた中央部分を、ステム21を押圧する方向に移動させることができるようになっている。
【0027】
すなわち、本第1実施形態では、回転当接部14は、好ましくは一方向に傾けた歯17aを周方向に複数(本実施形態では6箇所)備えるラチェット歯車17を用いて形成されており、各々の歯17aの外周面が、例えば回転操作部15の回転方向Xとは反対の方向に向けて、回転中心14aから周面までの距離が徐々に大きくなった、周方向傾斜面部14bとなっている。これによって、回転操作部15を回転方向Xへ回転させることによる、回転当接部14の回転に伴って、回転当接部14と当接する進退押圧部12である第2種てこ部16の他端部16bを、図4(a)に示すように、歯17aの外周面の周方向傾斜面部14bに沿って高い方に乗り上げさせることにより、第2種てこ部16の吐出開口部12aが設けられた中央部分を、ステム21を押圧する方向に移動させることができるようになっている。これによって、第2種てこ部16の吐出開口部12aの開口周縁部に係止されたステム21を上方に押し上げることで、ステム21及び吐出開口部12aを介して、エアゾール容器20から受取り空間11cに内容物を吐出させることができるようになっている。
【0028】
一方、回転操作部15を回転方向Xへさらに回転させて、第2種てこ部16の他端部16bが、歯17aの外周面の周方向傾斜面部14bの頂部を超えるまで回転当接部14が回転すると、図4(b)に示すように、第2種てこ部16の他端部16bは、吐出開口部12aの開口周縁部と係止するステム21からの付勢力によって、下方に押し出されることで、歯17aの回転方向Xの背面側の段差部に瞬時に落下する。これによって、ステム21を、第2種てこ部16によって押圧される前の状態に、きれよく復帰させることが可能になる。またこれによって、本実施形態のエアゾール容器用吐出機構10によれば、内容物の吐出時のきれを向上させて、所定量の内容物を定量的に精度良く吐出させることが可能になる。段差部の側面は、回転部13の中心、周方向傾斜面部14bの起端部、周方向傾斜面部14bの頂部の3点を通るようにひかれた直線に対し、沿うように設けられていることが好ましい。言い換えると、段差部の側面、回転部13の中心、周方向傾斜面部14bの起端部、周方向傾斜面部14bの頂部は全て同一直線上に位置することが好ましい。
【0029】
先行する歯17aの周方向傾斜面部14bの頂部を超えるまで回転当接部14を回転させたら、回転操作部15を回転方向Xへさらに回転させることで、第2種てこ部16の他端部16bは、次の歯17aの外周面の周方向傾斜面部14bに沿って高い方に乗り上げて行くので、第2種てこ部16の中央部分を、再びステム21を押圧する方向に移動させて、同様に所定量の内容物をステム21から吐出させることが可能になる。また、次の歯17aの周方向傾斜面部14bの頂部を超えるまで回転当接部14を回転させることで、同様にステム21を、第2種てこ部16によって押圧される前の状態に、きれよく復帰させることが可能になる。周方向傾斜面部14bの頂部と、周方向傾斜面部14bの起端部との間の幅は、1〜5mmの長さに設計することが好ましく、2〜4mmの長さに設計することがより好ましい。
【0030】
ここで、本第1実施形態では、回転当接部14は、一方向に傾けた歯17aを周方向に複数備えるラチェット歯車17を用いて形成されているので、好ましくは角形断面形状を備えるように形成された第2種てこ部16の他端部16bの先端が、歯17aの回転方向Xの後方側の段差部に係止されることで、回転部13の回転操作部15が回転方向Xとは反対側に回転するように操作されることになるのを、効果的に回避することが可能になる。
【0031】
図5及び図6は、本発明の好ましい第2実施形態に係るエアゾール容器用吐出機構50を例示するものである。本第2実施形態のエアゾール容器用吐出機構50は、進退押圧部12の形態が、上記第1実施形態のエアゾール容器用吐出機構50のものと相違しており、また回転部13の形態が、上記第1実施形態のエアゾール容器用吐出機構50のものと相違している。本第2実施形態のエアゾール容器用吐出機構50では、上記第1実施形態のエアゾール容器用吐出機構10と異なる構成部分について主として説明し、同様の構成部分については同一の符号を付して説明を省略する。特に言及しない構成部分については、上記第1実施形態のエアゾール容器用吐出機構10に関する説明が適宜適用される。
【0032】
そして、本第2実施形態に係るエアゾール容器用吐出機構50では、進退押圧部12は、両側の端部51bを操作基部11にスライド可能に支持させて取り付けられた、スライド押圧部51となっており、スライド押圧部51は、下端部に回転当接部52を当接させると共に、両側の端部51bの間の部分に吐出開口部51aが設けられており、回転当接部52は、回転操作部53の操作により回転して、スライド押圧部51を、ステム21を押圧する方向にスライド移動させるようになっている。
【0033】
また、本第2実施形態では、スライド押圧部51の下端部において回転当接部52を当接させる部分に、回転当接部52の回転に伴って回転可能な回転ローラ54が取り付けられており、回転当接部52は、回転ローラ54を介してスライド押圧部51に当接している。さらに、本第2実施形態では、回転当接部52は、回転中心から円周までの距離が一定でない円板カム55を用いて形成されている。
【0034】
本第2実施形態では、進退押圧部12を構成するスライド押圧部51は、略横長矩形状の正面形状を備えるスライド板部51cと、スライド板部51cの上端部から操作基部11の開口面側に張り出して設けられた、張り出し板部51dとを含んで構成されている。張り出し板部51dの中央部分には、略横長矩形状のスライド板部51cの両側の端部である短辺部の間の部分に配置されて、吐出開口部51aが設けられている。吐出開口部51aには、これの開口周縁部にステム21の開口周縁部を係止させて、ステム21が配置されるようになっている。スライド板部51cの両側の端部である短辺部の下半部分から、操作基部11の両側の側板部11d側に突出して、端部スライド突起51eが設けられている。
【0035】
本第2実施形態では、操作基部11の、開口面を挟んで対向配置された一対の側板部11dの上部には、縦方向に延設して、スライドガイド開口56が各々形成されている。これらのスライドガイド開口56に、スライド板部51cの両側の端部スライド突起51eを、上下にスライド可能に各々係止して案内させることにより、回転部13の回転操作部53の操作によって、回転当接部52に当接するスライド押圧部51を、ステム21を押圧する方向である上方に移動させることで、ステム21をスライド押圧部51により押圧して、内容物を吐出させることができるようになっている。スライド板部51cの下端部における、回転部13が取り付けられた一方の側板部11d側に配置されて、回転ローラ54が、一対の回転軸受けリブ51fに支持された状態で、これらのリブ51fの間に回転可能に設けられている。回転ローラ54には、回転部13の回転当接部52が当接している。
【0036】
本第2実施形態では、回転部13は、回転ローラ54に当接しながら回転する回転当接部52と、回転当接部52を回転させる回転操作部53とを備えており、操作基部11の側板部11dに支持させて、回転可能に取り付けられている。回転部13は、回転軸部材13aの一端側に回転当接部52を、他端側に回転操作部53を一体として固定した構成を備えている。回転部13は、側板部11dに貫通して設けられた回転軸穴に、回転軸部材13aを回転可能に挿通させると共に、回転当接部52を受取り空間11cの内部に配置し、回転操作部53を受取り空間11cの外側に配置した状態で取り付けられている。回転当接部52は、回転中心から円周までの距離が一定でない円板カム55を用いて形成されていることで、回転中心から周面までの距離が徐々に大きくなった周方向傾斜面部52aを有している。
【0037】
本第2実施形態のエアゾール容器用吐出機構50によっても、回転操作部53を回転させることによる回転当接部52の回転に伴って、円板カム55による回転当接部52と回転ローラ54を介して当接する、進退押圧部12であるスライド押圧部51を、円板カム55の外周面の周方向傾斜面部52aに沿って高い方に乗り上げさせることにより、スライド押圧部51を、ステム21を押圧する方向に移動させ、吐出開口部51aの開口周縁部に係止されたステム21を上方に押し上げることで、ステム21及び吐出開口部51aを介して、エアゾール容器20から受取り空間11cに内容物を吐出させることが可能になる。回転操作部53を同一回転方向へさらに回転させて、回転ローラ54が、円板カム55の外周面の周方向傾斜面部52aの頂部を超えるまで回転当接部53が回転すると、スライド押圧部51は、吐出開口部51aの開口周縁部と係止するステム21からの付勢力によって、瞬時に下方に押し出される。円板カム55は、形が非対称な輪郭を持つ板状のカムであり、短径と長径を有し、きのこ形状カム、なみだ目形状カムであることが好ましく、なみだ目形状カムであることがより好ましい。また、回転ローラ54が、円板カム55の外周面の周方向傾斜面部52aの頂部を超えた際に、回転当接部52が回転方向の背面側に瞬時に落下するように、周方向傾斜面部52aに段差部を設けることがさらに好ましい。これらによって、ステム21を、第2種てこ部16により押圧される前の状態に、きれよく復帰させることが可能になる。またこれによって、上記の第1実施形態のエアゾール容器用吐出機構10と同様に、内容物の吐出時のきれを向上させて、所定量の内容物を精度良く吐出させることが可能になる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、マウンテンカップと接続させてステムを囲んで配置される操作基部は、エアゾール容器を倒立状態で立設させる天井部と、天井部から下方に延設して設けられて、ステムから吐出される内容物を受け取る受取り空間を天井部の下方に形成する支持脚部とを含んで構成されるものである必要は必ずしも無く、回転操作部による回転部の回転操作を、エアゾール容器を手で把持したまま行えるように、ステムの周囲に回転部を配置させるものであっても良い。
【符号の説明】
【0039】
10 エアゾール容器用吐出機構
11 操作基部
11a 天井部
11b 支持脚部
11c 受取り空間
11d 側板部
11e 切込み挿入凹部
12 進退押圧部
12a 吐出開口部
13 回転部
13a 14 回転当接部
14a 回転中心
14b 周方向傾斜面部
15 回転操作部
16 第2種てこ部
16a 一端部
16b 他端部
17 ラチェット歯車
17a 歯
20 エアゾール容器
21 ステム
22 マウンテンカップ
22a 環状縁部
23 容器本体
24 位置決め装着部
24a 天面板
30 吐出ユニット
50 エアゾール容器用吐出機構
51 スライド押圧部
51a 吐出開口部
51b 端部
52 回転当接部
53 回転ハンドル部
54 回転ローラ
55 円板カム
X 回転ハンドル部の回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6