(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成分(A):示差走査熱量計による融点が120〜170℃であり、且つ測定温度が180℃、測定荷重が2.16kgの条件で測定したメルトフローレートが50〜2000g/10分であるポリオレフィン樹脂と、
成分(B):示差走査熱量計による融点が120℃未満又は融点が観測されないポリオレフィン樹脂と、
を含有する成分(C):ポリオレフィン樹脂の、
成分(D):α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体、及び
成分(E):(メタ)アクリル酸エステル
によるグラフト変性物であり、
前記成分(C)において、前記成分(A)と前記成分(B)の割合(成分(A):成分(B))が、1〜50:50〜99質量%(但し、成分(A)+成分(B)=100質量%とする)である
変性ポリオレフィン樹脂。
前記成分(A)及び前記成分(B)が、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、及びエチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体を含む請求項1に記載の変性ポリオレフィン樹脂。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0011】
[1.変性ポリオレフィン樹脂]
本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、成分(A):示差走査熱量計による融点が120〜170℃であり、且つ測定温度が180℃、測定荷重が2.16kgの条件で測定したメルトフローレートが50〜2000g/10分であるポリオレフィン樹脂と、成分(B):示差走査熱量計による融点が120℃未満又は融点が観測されないポリオレフィン樹脂と、を含有する成分(C):ポリオレフィン樹脂の、成分(D):α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体、及び成分(E):(メタ)アクリル酸エステルによるグラフト変性物である。
【0012】
高融点である成分(A)を含有する成分(C)を用いることで、耐熱性を有する変性ポリオレフィン樹脂を製造することができる。
また、低融点又は融点が観測されない成分(B)を含有する成分(C)を用いることで、良好な溶液性状を有する変性ポリオレフィン樹脂を製造することができる。
さらに、成分(C)を、成分(D)及び成分(E)によりグラフト変性することで、ポリオレフィン樹脂の非極性樹脂基材に対する付着性を向上させることができる。
【0013】
(成分(A):ポリオレフィン樹脂)
成分(A)は、示差走査熱量計(以下、「DSC」ともいう)による融点(以下、「Tm」ともいう)が120〜170℃であり、且つ測定温度が180℃、測定荷重が2.16kgの条件で測定したメルトフローレートが50〜2000g/10分であるポリオレフィン樹脂である。
【0014】
成分(A)のTmは、120〜170℃であり、好ましくは120〜165℃であり、より好ましくは125〜165℃である。成分(A)の融点が斯かる範囲にあることで、得られる変性ポリオレフィン樹脂の耐熱性を向上させることができる。
DSCによるTmの測定は、例えば以下の条件で行うことができる。JIS K7121−1987に準拠し、DSC測定装置(セイコー電子工業製)を用い、約5mgの試料を200℃で10分間加熱融解状態を保持した後、10℃/分の速度で降温して−50℃で安定保持する。その後、更に10℃/分で200℃まで昇温して融解した時の融解ピーク温度を測定し、該温度をTmとして評価する。尚、後述の実施例におけるTmは斯かる条件で測定されたものである。
【0015】
成分(A)の測定温度が180℃、測定荷重が2.16kgの条件で測定したメルトフローレートは、50〜2000g/10分であり、好ましくは50〜1000/10分であり、より好ましくは100〜900g/10分であり、さらに好ましくは150〜700g/10分である。当該数値が50g/10分未満であると、溶液安定性が悪くなる場合がある。一方、2000g/10分を超えると、凝集力が低すぎて、非極性樹脂基材に対する付着性能が落ちる場合がある。
メルトフローレートの測定は、ASTM D1238に準拠し、測定温度180℃、測定荷重2.16kgの条件でメルトフローインデックステスタ(安田精機製作所製)にて算出することができる。
【0016】
成分(A)は、上記の物性を満たすものであれば、その共重合体の構成について特に限定されるものではない。但し、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、及びエチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の共重合体であることが好ましい。なお、これら共重合体に占めるプロピレン成分の割合は、共重合体全体の30〜99モル%が好ましく、50〜98モル%がより好ましい。
なお、プロピレン成分等の成分(A)の構成成分の割合は、共重合体を調製する際の各単量体の仕込み量で算出することができる。
【0017】
成分(A)の重量平均分子量は、10,000〜200,000の範囲であることが好ましく、15,000〜150,000の範囲であることがより好ましい。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準物質:ポリスチレン)により測定することができる。
【0018】
(成分(B):ポリオレフィン樹脂)
成分(B)は、DSCによるTmが120℃未満又は融点が観測されないポリオレフィン樹脂である。
【0019】
成分(B)のTmは、120℃未満又はTmが観測されないものである。Tmが観測される場合、好ましくは110℃未満であり、より好ましくは100℃以下である。成分(B)の融点が斯かる範囲にあることで、得られる変性ポリオレフィン樹脂の溶液性状が良好なものとなる。ここで、「融点が観測されない」とは、−150〜200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。
なお、成分(B)のDSCによるTmの測定は、上記の成分(A)のTmの測定と同様にして行うことができるが、その分解能のため融点が観測されないことがある。
【0020】
成分(B)は、上記の物性を満たすものであれば、その共重合体の構成について特に限定されるものではない。但し、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、及びエチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の共重合体であることが好ましい。なお、これら共重合体に占めるプロピレン成分の割合は、共重合体全体の30〜99モル%が好ましく、50〜98モル%がより好ましい。
なお、プロピレン成分等の成分(B)の構成成分の割合は、共重合体を調製する際の各単量体の仕込み量で算出することができる。
【0021】
成分(B)の測定温度が230℃、測定荷重が2.16kgの条件で測定したメルトフローレートは、好ましくは1〜20g/10分であり、より好ましくは1.5〜10g/10分、更に好ましくは2〜8.5g/10分である。当該数値が1g/10分未満であると、溶液安定性が悪くなる場合がある。一方、20g/10分を超えると、凝集力が低すぎて、非極性樹脂基材に対する付着性能が落ちる場合がある。
メルトフローレートの測定は、ASTM D1238に準拠し、測定温度230℃、測定荷重2.16kgの条件でメルトフローインデックステスタ(安田精機製作所製)にて算出することができる。
【0022】
(成分(C):ポリオレフィン樹脂)
成分(C)は、上記の成分(A)及び成分(B)を含有するものである。高融点である成分(A)を含有する成分(C)を用いることで、耐熱性を有する変性ポリオレフィン樹脂を製造することができる。また、低融点又は融点が観測されない成分(B)を含有する成分(C)を用いることで、良好な溶液性状を有する変性ポリオレフィン樹脂を製造することができる。
【0023】
成分(C)における成分(A)と成分(B)の割合(成分(A):成分(B))は、1〜50:50〜99質量%の範囲であることが好ましく、10〜50:50〜90質量%の範囲であることがより好ましく、20〜50:50〜80質量%の範囲であることがさらに好ましい(但し、成分(A)+成分(B)=100質量%とする)。
なお、成分(C)における成分(A)と成分(B)の割合は、成分(C)又は変性ポリオレフィンを製造する際の成分(A)と成分(B)の仕込み量で算出することができる。
【0024】
(グラフト変性物)
本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、上記の成分(C)を成分(D)及び成分(E)でグラフト変性したものである。成分(C)を成分(D)及び成分(E)でグラフト変性することにより、ポリオレフィン樹脂の非極性樹脂基材に対する付着性を向上させることができる。
【0025】
(成分(D):α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体)
成分(D)は、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体である。α,β−不飽和カルボン酸及びその誘導体としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。中でも、無水マレイン酸、無水アコニット酸、無水イタコン酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
成分(D)は、α,β−不飽和カルボン酸及びその誘導体から選ばれる1種以上の化合物であればよく、α,β−不飽和カルボン酸1種以上とその誘導体1種以上の組み合わせ、α,β−不飽和カルボン酸2種以上の組み合わせ、α,β−不飽和カルボン酸の誘導体2種以上の組み合わせであってもよい。
【0026】
変性ポリオレフィン樹脂中の成分(D)のグラフト質量は、変性ポリオレフィン樹脂を100質量%とした場合に、好ましくは0.1〜20質量%であり、より好ましくは0.5〜15質量%であり、さらに好ましくは1〜10質量%である。グラフト質量が0.1質量%以上であることにより、得られる変性ポリオレフィン系樹脂の、金属被着体に対する接着性を保つことができる。グラフト質量が20質量%以下であることにより、グラフト未反応物の発生を防止することができ、樹脂被着体に対する十分な接着性を得ることができる。
【0027】
成分(D)のグラフト質量%は、公知の方法で測定することができる。例えば、アルカリ滴定法やフーリエ変換赤外分光法によって求めることができる。
【0028】
(成分(E):(メタ)アクリル酸エステル)
成分(E)は(メタ)アクリル酸エステルである。(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸又はメタクリル酸のエステルである。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0029】
成分(E)は、一般式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましく、一般式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルであることがより好ましい。
CH
2=CR
1COOR
2・・・(I)
一般式(I)中、R
1は、水素原子又はメチル基を示し、R
2は、C
nH
2n+1で表される炭化水素基を示す。但し、nは8〜18の整数である。
【0030】
成分(E)として、一般式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルを用いることにより、変性ポリオレフィン樹脂を合成する際の成分(C)からの分子量低下を抑制するとともに、分子量分布を狭くすることができる。そのため、変性ポリオレフィン樹脂の溶剤溶解性、溶液の低温安定性、接着剤組成物中の他樹脂との相溶性、接着性を向上させることができる。一般式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルは、1種単独で用いてもよく、複数種を任意の割合で混合して使用することもできる。
【0031】
一般式(I)中、R
1は、水素原子又はメチル基を示し、メチル基であることが好ましい。R
2はC
nH
2n+1で表される炭化水素基を示す。nは8〜18の整数をであり、8〜15の整数であることが好ましく、8〜14の整数であることがより好ましく、8〜13の整数であることが更に好ましい。
一般式(I)で示される化合物としては、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレートが好ましく、ラウリルメタクリレート、オクチルメタクリレート、トリデシルメタクリレートがより好ましい。
【0032】
変性ポリオレフィン樹脂中の成分(E)のグラフト質量は、変性ポリオレフィン樹脂を100質量%とした場合に、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは0.5〜15質量%であり、さらに好ましくは1〜10質量%である。グラフト質量が0.1質量%以上であることにより、変性ポリオレフィン樹脂の分子量分布を十分狭い範囲に保つことができる。すなわち、高分子量部分の悪影響を防止して、溶剤溶解性、溶液の低温安定性及び他樹脂との相溶性を良好に保持することができる。また、低分子量部分の悪影響を防止して、接着力を向上させることができる。グラフト質量が30質量%以下であることにより、グラフト未反応物の発生を防止し、樹脂被着体に対する接着性を良好に保持することができる。
【0033】
成分(E)のグラフト質量は、公知の方法で測定することができる。例えば、フーリエ変換赤外分光法や
1H−NMRによって求めることができる。
【0034】
変性ポリオレフィン樹脂は、成分(D)のグラフト質量及び成分(E)のグラフト質量のうちのいずれかが、0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、両方が0.1〜10質量%の範囲にあることがより好ましい。
【0035】
(他のグラフト成分)
本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、用途や目的に応じて、本発明の特性を損なわない範囲で、成分(D)及び成分(E)以外の他のグラフト成分を併用することができる。使用可能なグラフト成分としては、例えば、成分(E)以外の(メタ)アクリル酸誘導体(例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等)が挙げられる。
変性ポリオレフィン樹脂中の成分(D)及び成分(E)以外のグラフト成分は、1種単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて併用してもよい。但し、合計のグラフト質量が成分(D)及び成分(E)の合計のグラフト質量を超えないことが好ましい。
【0036】
(成分(F):ラジカル発生剤)
成分(C)の成分(D)及び成分(E)によるグラフト変性は、成分(F)としてラジカル発生剤を用いて行うことができる。成分(F)は、公知のラジカル発生剤の中より適宜選択することができ、有機過酸化物系化合物が好ましい。有機過酸化物系化合物としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,4−ビス[(t−ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエートが挙げられる。中でも、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド及びジラウリルパーオキサイドが好ましい。成分(F)は、1種単独のラジカル発生剤でもよいし、複数種のラジカル発生剤の組み合わせであってもよい。
【0037】
グラフト変性反応における成分(F)の添加量は、成分(D)の添加量及び成分(E)の添加量の合計(質量)に対し、好ましくは1〜100質量%であり、より好ましくは10〜50質量%である。1質量%以上であることにより、十分なグラフト効率を保持することができる。100質量%以下であることにより、変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量の低下を防止することができる。
【0038】
(製造方法)
本発明の変性ポリオレフィン樹脂を得る方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。成分(A)と成分(B)をそれらが反応する程度に溶解する有機溶剤(例えば、トルエン等)に加熱溶解し、成分(C)を得た後、成分(D)、成分(E)、成分(F)及び他のグラフト成分を加え反応させることで本発明の変性ポリオレフィン樹脂を得ることができる。また、成分(A)、成分(B)、成分(D)、成分(E)、成分(F)及び他のグラフト成分を予めそれらが反応する程度に溶解する有機溶剤に加熱溶解して反応させる溶液法や、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等を使用して、成分(A)、成分(B)、成分(D)、成分(E)、成分(F)及び他のグラフト成分を加え反応させる溶融混練法等でも本発明の変性ポリオレフィン樹脂を得ることができる。
【0039】
(物性)
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の、測定温度が180℃、測定荷重が2.16kgの条件で測定したメルトフローレートは、好ましくは100〜1000g/10分の範囲であり、より好ましくは150〜900g/10分の範囲であり、更に好ましくは200〜800g/10分の範囲である。メルトフローレートが100g/10分未満であると、有機溶剤に対する溶解性が不十分となり、溶液安定性に劣る場合がある。1000g/10分を超であると、凝集力が不足し、非極性樹脂基材に対する付着性能が落ちる場合がある。
【0040】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、10000〜150000であることが好ましい。重量平均分子量が10000以上であることにより、十分な接着力を発現できる。150000未満であることにより、十分な溶剤溶解性を得ることができる。実施例を含む本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準物質:ポリスチレン)によって測定し、算出された値である。
【0041】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂のDSCによるTmは、その融点ピークが成分(B)に由来する40℃〜120℃の範囲及び成分(A)に由来する120〜170℃の範囲の2つあることが好ましく、成分(B)に由来する50℃〜120℃の範囲及び成分(A)に由来する120〜170℃の範囲の2つあることがより好ましい。変性ポリオレフィン樹脂の融点が斯かる範囲にあることで、本発明の効果をより優れて発揮し得る。
【0042】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂が、優れた溶液安定性、耐熱性を持つのは以下の理由が推測される。一般的に、融点の高い樹脂は耐熱性に優れることが知られているが、融点が高くなるにつれて結晶性が高まるために、溶液安定性が悪くなる。
本発明は、特定のメルトフローレートを示す高融点ポリオレフィン樹脂と、低融点ポリオレフィン樹脂を併用することで、変性ポリオレフィン樹脂が、溶液安定性に優れることを発明し得たものである。
【0043】
(用途)
本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、付着性(接着性)が低く、塗料等の塗工が困難な基材のための中間媒体として有用であり、例えば、付着性(接着性)の乏しいポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系基材同士の接着剤として使用し得る。この際、基材がプラズマ、コロナ等により表面処理されているか否かを問わず用いることができる。また、ポリオレフィン系基材の表面に本発明の変性ポリオレフィン樹脂をホットメルト方式で積層し、更にその上に塗料等を塗工することにより、塗料の付着安定性等を向上させることもできる。
また、本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、金属と樹脂との優れた接着性をも発揮し得る。金属としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスが挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂等の非極性樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂が挙げられる。従って、本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、接着剤、プライマー、塗料用バインダー及びインキ用バインダーとして、又はこれらの成分として、用いることができる。
【0044】
[2.組成物]
本発明の組成物は、上記の変性ポリオレフィン樹脂を含むものである。組成物は、他の成分として、溶液、硬化剤、及び接着成分からなる群より選択される少なくとも1種の成分をさらに含むものが好ましい。
【0045】
(溶液)
本発明の組成物の一実施態様は、上記の変性ポリオレフィン樹脂と溶液を含む樹脂組成物である。溶液としては、有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、エチルシクロヘキサン等のケトン溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノナン、デカン等の脂肪族又は脂環式炭化水素溶剤が挙げられる。これら有機溶剤は1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として樹脂組成物に含まれていてよい。環境問題の観点から、有機溶剤として、芳香族溶剤以外の溶剤を使用することが好ましく、脂環式炭化水素溶剤とエステル溶剤又はケトン溶剤との混合溶剤を使用することがより好ましい。
【0046】
また、変性ポリオレフィン樹脂と溶液を含む樹脂組成物の溶液の保存安定性を高めるために、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール)、プロピレン系グリコールエーテル(例、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール−t−ブチルエーテル)を、1種単独で、又は2種以上混合して用いてもよい。この場合、上記有機溶剤に対して、1〜20質量%添加することが好ましい。
【0047】
(硬化剤)
本発明の組成物の他の実施態様は、上記の変性ポリオレフィン樹脂と硬化剤を含む組成物である。硬化剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリアミン化合物、ポリオール化合物、或いはそれらの官能基が保護基でブロックされた架橋剤が例示される。硬化剤は1種単独であってもよいし、複数種の組み合わせであってもよい。
【0048】
硬化剤の配合量は、本発明の変性ポリオレフィン樹脂中の成分(D)の含有量により適宜選択できる。また、硬化剤を配合する場合は、目的に応じて有機スズ化合物、第三級アミン化合物等の触媒を併用することができる。
【0049】
(接着成分)
本発明の組成物の更に他の実施態様は、上記の変性ポリオレフィン樹脂と接着成分を含む組成物である。接着成分としては、所望の効果を阻害しない範囲でポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤等の公知の接着成分を用いることができる。
【0050】
本発明の組成物は、ポリオレフィン系基材等の非極性樹脂同士や非極性樹脂と金属の接着に優れるので、接着剤、プライマー、塗料用バインダー及びインキ用バインダーとして用いることができ、例えば、アルミラミネートフィルム等のラミネートフィルムにおける接着剤として有用である。
【0051】
[3.プライマー、バインダー]
本発明のプライマー、塗料用バインダー又はインキ用バインダーは、上記の変性ポリオレフィン樹脂又は上記の組成物を含むものである。そのため、接着性、溶液安定性、耐熱性に優れており、自動車のバンパー等ポリオレフィン基材への上塗り塗装時のプライマー、上塗り塗料やクリアーとの付着性に優れる塗料用バインダーとして好適に利用することができる。
【0052】
本発明のプライマー、塗料用バインダー又はインキ用バインダーは、溶液、粉末、シート等、用途に応じた形態で使用できる。また、その際に必要に応じて添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、無機充填剤等を配合できる。
【0053】
[4.積層体]
本発明の積層体は、上記の変性ポリオレフィン樹脂又は上記の組成物を含む層、金属層及び樹脂層を有する。積層体における層の配置は特に限定されないが、金属層及び樹脂層が変性ポリオレフィン樹脂又は組成物を含む層を挟んで位置する態様、金属層を挟んで第1の樹脂層と第2の樹脂層が存在し、金属層と各樹脂層の間に変性ポリオレフィン樹脂又は組成物を含む層が挟持されている態様が例示される。本発明の積層体は、リチウムイオン二次電池、コンデンサー、電気二重層キャパシター等の外装材として用いられるものであってもよい。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。なお、成分(A)、成分(B)及び変性ポリオレフィン樹脂の物性値並びに変性ポリオレフィン樹脂の評価は、下記に記載した方法で行う。また、「部」は別途記載がない限り質量部を示す。
【0055】
[MFR(g/10min)]:ASTM D1238に準拠し、所定の測定温度、測定荷重2.16kgの条件でメルトフローインデックステスタ(安田精機製作所製)にて算出することができる。
【0056】
[Tm(℃)]:JIS K7121−1987に準拠し、DSC測定装置(セイコー電子工業製)を用い、約5mgの試料を200℃で10分間加熱融解状態を保持した後、10℃/分の速度で降温して−50℃で安定保持した。その後、更に10℃/分で200℃まで昇温して融解した時の融解ピーク温度を測定し、該温度をTmとして評価した。
【0057】
[成分(D)のグラフト質量(質量%)]:アルカリ滴定法により測定した。
【0058】
[成分(E)のグラフト質量(質量%)]:
1H−NMRにより測定した。
【0059】
[溶液性状]:透明なガラスビーカー内で、実施例及び比較例で得られる変性ポリオレフィン樹脂を、メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン溶液(混合比80/20)に溶解して、15質量%の濃度の変性ポリオレフィン樹脂塗料組成物を調製した。溶剤が揮発しないようにしっかりと封をし、1週間静置した後に溶解安定性を目視し、下記評価基準で評価した。
○:組成物溶液は透明なままであり、流動性が保たれている。
△:組成物溶液の流動性が若干低下するが、実用上問題はない。
×:組成物溶液は濁っており、流動性が低下している。
【0060】
[耐熱性]:調製した変性ポリオレフィン樹脂塗料組成物を、ポリオレフィン系基材としてポリプロピレン(OPP)にスプレー塗工した。該塗工面に表面処理がされていない超高剛性PP板を貼り合わせた後、ヒートシール(接着幅10mm、0.2MPa、160℃、10秒)し、試験片を得た。試験片のOPPフィルム側に100gのおもりを取り付け、OPPフィルム側を下にし、100℃に設定した乾燥機の中に入れ、2時間後にOPPの剥離状態を目視確認し、下記評価基準で評価した。
○:OPPフィルムの剥がれが無い。
×:OPPフィルムが超高剛性PP板から剥離している。
【0061】
[接着性]:アルミ箔上に樹脂乾燥膜厚2μmとなるように#16のマイヤーバーで調製した変性ポリオレフィン樹脂塗料組成物の溶液試料を接着剤として塗布し、180℃で10秒間乾燥した。塗布済みのアルミ箔を無延伸ポリプロピレン(CPP)シートと貼合し、120℃で3秒間、200kPaの条件で熱圧着を行った後、15mm幅に切り出して試験片を作製した。試験片を23℃、相対湿度50%で24時間恒温恒湿に保管した後、180度方向剥離、剥離速度100mm/minの条件でラミネート接着強度を測定し、下記の基準にて評価を行った。
○:接着強度が1000g/15mm以上であり、接着性が良好。
×:接着強度が1000g/15mm未満であり、接着性に劣る。
【0062】
(実施例1)
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、成分(A)としてプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン成分88モル%、エチレン成分12モル%、重量平均分子量100,000、MFR:500g/10min(180℃)、Tm=125℃)30部、及び成分(B)としてプロピレン−1−ブテン共重合体(プロピレン成分85モル%、ブテン成分15モル%、重量平均分子量300,000、MFR:7.0g/10min(230℃))、Tm=85℃)70部を、トルエン400gに加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、成分(D)として無水マレイン酸2.0部、成分(E)としてラウリルメタクリレート1.5部、及び成分(F)としてジ−t−ブチルパーオキサイド1部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応後、室温まで冷却した反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、MFR:300g/10min(180℃)、無水マレイン酸のグラフト質量が1.5質量%、ラウリルメタクリレートのグラフト質量が1.1質量%の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
【0063】
(実施例2)
成分(A)としてプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン成分90モル%、エチレン成分10モル%、MFR:150g/10min(180℃)、Tm=145℃)30部、成分(B)としてプロピレン−1−ブテン共重合体(プロピレン成分92モル%、ブテン成分8モル%、MFR:5.0g/10min(230℃)、Tm=85℃)70部、成分(D)として無水マレイン酸3.0部、成分(E)としてラウリルメタクリレート2.4部、及び成分(F)としてジ−t−ブチルパーオキサイド1部を、190℃に設定した二軸押出機を用いて混練して反応を行った。押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去し、MFR:400g/10min(180℃)、無水マレイン酸のグラフト質量が2.2質量%、ラウリルメタクリレートのグラフト質量が1.6質量%の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
【0064】
(実施例3)
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、成分(A)としてプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン成分88モル%、エチレン成分12モル%、MFR:500g/10min(180℃)、Tm=125℃)30部、成分(B)としてプロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(プロピレン成分77モル%、エチレン成分15モル%、ブテン成分8モル%、MFR:2.0g/10min(230℃)、Tm=70℃)70部を、トルエン400gに加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、成分(D)として無水マレイン酸3.0部、成分(E)としてラウリルメタクリレート2.5部、及び成分(F)としてジ−t−ブチルパーオキサイド1.5部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応後、室温まで冷却した反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、MFR:300g/10min(180℃)、無水マレイン酸のグラフト質量が2.5質量%、ラウリルメタクリレートのグラフト質量が2.1質量%の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
【0065】
(実施例4)
成分(A)としてプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン成分88モル%、エチレン成分12モル%、MFR:500g/10min(180℃)、Tm=125℃)30部、成分(B)としてプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン成分95モル%、エチレン成分5モル%、MFR:8.5g/10min(230℃)、Tm=60℃)70部、成分(D)として無水マレイン酸4.0部、成分(E)としてラウリルメタクリレート3.0部、及び成分(F)としてジ−t−ブチルパーオキサイド2部を、200℃に設定した二軸押出機を用いて混練して反応を行った。押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去し、MFR:320g/10min(180℃)、無水マレイン酸のグラフト質量が3.7質量%、ラウリルメタクリレートのグラフト質量が2.3質量%の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
【0066】
(実施例5)
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、成分(A)としてプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン成分86モル%、エチレン成分14モル%、MFR:700g/10min(180℃)、Tm=125℃)50部、及び成分(B)としてプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン成分87モル%、エチレン成分13モル%、MFR:8.0g/10min(230℃)、Tm=80℃)50部を、トルエン400gに加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、成分(D)として無水イタコン酸2.0部、成分(E)としてラウリルメタクリレート1.6部、及び成分(F)としてジ−t−ブチルパーオキサイド1部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応後、室温まで冷却した反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、MFR:630g/10min(180℃)、無水イタコン酸のグラフト質量が1.2質量%、ラウリルメタクリレートのグラフト質量が1.0質量%の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
【0067】
(実施例6)
成分(A)としてプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン成分88モル%、エチレン成分12モル%、MFR:500g/10min(180℃)、Tm=125℃)30部を、成分(B)としてプロピレン−1−ブテン共重合体(プロピレン成分90モル%、ブテン成分10モル%、MFR:5.0g/10min(230℃)、Tm=85℃)70部、成分(D)として無水マレイン酸3.0部、成分(E)としてトリデシルメタクリレート2.4部、及び成分(F)としてジ−t−ブチルパーオキサイド2部を、180℃に設定した二軸押出機を用いて混練して反応を行った。押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去し、MFR:450g/10min(180℃)、無水マレイン酸のグラフト質量が2.2質量%、トリデシルメタクリレートのグラフト質量が1.9質量%の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
【0068】
(実施例7)
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、成分(A)としてプロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(プロピレン成分81モル%、エチレン成分7モル%、ブテン成分12モル%、MFR:300g/10min(180℃)、Tm=165℃)30部、及び成分(B)としてプロピレン−1−ブテン共重合体(プロピレン成分90モル%、ブテン成分10モル%、MFR:5.0g/10min(230℃)、Tm=85℃)70部を、トルエン400gに加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、成分(D)として無水アコニット酸2.0部、成分(E)としてオクチルメタクリレート1.6部、及び成分(F)としてジ−t−ブチルパーオキサイド1部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応後、室温まで冷却した反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、MFR:370g/10min(180℃)、無水アコニット酸のグラフト質量が1.4質量%、オクチルメタクリレートのグラフト質量が1.1質量%の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
【0069】
(実施例8)
成分(A)としてプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン成分90モル%、エチレン成分10モル%、MFR:700g/10min(180℃)、Tm=125℃)20部を、成分(B)としてプロピレン−1−ブテン共重合体(プロピレン成分93モル%、ブテン成分7モル%、MFR:2.0g/10min(230℃)、Tm=100℃)80部、成分(D)として無水マレイン酸2.0部、成分(E)としてトリデシルメタクリレート1.5部、及び成分(F)としてジ−t−ブチルパーオキサイド1部を、180℃に設定した二軸押出機を用いて混練して反応を行った。押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去し、MFR:280g/10min(180℃)、無水マレイン酸のグラフト質量が1.4質量%、トリデシルメタクリレートのグラフト質量が1.0質量%の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
【0070】
(実施例9)
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、成分(A)としてプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン成分88モル%、エチレン成分12モル%、MFR:500g/10min(180℃)、Tm=125℃)70部、及び成分(B)としてプロピレン−1−ブテン共重合体(プロピレン成分85モル%、ブテン成分15モル%、MFR:7.0g/10min(230℃)、Tm=85℃)30部を、トルエン400gに加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、成分(D)として無水マレイン酸2.0部、成分(E)としてラウリルメタクリレート1.5部、及び成分(F)としてジ−t−ブチルパーオキサイド1部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応後、室温まで冷却した反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、MFR:300g/10min(180℃)、無水マレイン酸のグラフト質量が1.4質量%、ラウリルメタクリレートのグラフト質量が1.0質量%の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
【0071】
(実施例10)
成分(A)としてプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン成分88モル%、エチレン成分12モル%、MFR:500g/10min(180℃)、Tm=125℃)30部、成分(B)としてプロピレン−1−ブテン共重合体(プロピレン成分90モル%、ブテン成分10モル%、MFR:3.0g/10min(230℃)、Tm=85℃)70部、成分(D)として無水マレイン酸4.0部、成分(E)としてトリデシルメタクリレート3.0部、及び成分(F)としてジ−t−ブチルパーオキサイド1部を、200℃に設定した二軸押出機を用いて混練して反応を行った。押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去し、MFR:470g/10min(180℃)、無水マレイン酸のグラフト質量が2.7質量%、トリデシルメタクリレートのグラフト質量が1.8質量%の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
【0072】
(比較例1)
成分(A)としてプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン成分90モル%、エチレン成分10モル%、MFR:150g/10min(180℃)、Tm=125℃)100部、成分(D)として無水マレイン酸3.0部、成分(E)としてラウリルメタクリレート2.4部、及び成分(F)としてジ−t−ブチルパーオキサイド1部を、190℃に設定した二軸押出機を用いて混練して反応を行った。押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去し、MFR:240g/10min(180℃)、無水マレイン酸のグラフト質量が2.2質量%、ラウリルメタクリレートのグラフト質量が1.6質量%の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
【0073】
(比較例2)
成分(B)としてプロピレン−1−ブテン共重合体(プロピレン成分92モル%、ブテン成分8モル%、MFR:5.0g/10min(230℃)、Tm=85℃)100部、成分(D)として無水マレイン酸3.0部、成分(E)としてラウリルメタクリレート2.4部、及び成分(F)としてジ−t−ブチルパーオキサイド1部を、190℃に設定した二軸押出機を用いて混練して反応を行った。押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去し、MFR:60g/10min(180℃)、無水マレイン酸のグラフト質量が2.5質量%、ラウリルメタクリレートのグラフト質量が1.9質量%の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
【0074】
(比較例3)
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、成分(A)としてプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン成分88モル%、エチレン成分12モル%、MFR:2.0g/10min(180℃)、Tm=125℃)30部、及び成分(B)としてプロピレン−1−ブテン共重合体(プロピレン成分85モル%、ブテン成分15モル%、MFR:7.0g/10min(230℃)、Tm=85℃)70部を、トルエン400gに加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、成分(D)として無水マレイン酸3.0部、成分(E)としてラウリルメタクリレート2.4部、及び成分(F)としてジ−t−ブチルパーオキサイド1部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応後、室温まで冷却した反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、MFR:40g/10min(180℃)、無水マレイン酸のグラフト質量が2.4質量%、ラウリルメタクリレートのグラフト質量が2.1質量%の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
【0075】
(比較例4)
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、成分(A)としてプロピレン−1−ブテン共重合体(プロピレン成分93モル%、ブテン成分7モル%、MFR:0.3g/10min(180℃)、Tm=100℃)50部、及び成分(B)としてプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン成分85モル%、エチレン成分15モル%、MFR:5.5g/10min(230℃)、Tm=70℃)50部を、トルエン400gに加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、成分(D)として無水マレイン酸3.0部、成分(E)としてラウリルメタクリレート2.4部、及び成分(F)としてジ−t−ブチルパーオキサイド1部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応後、室温まで冷却した反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、MFR:22g/10min(180℃)、無水マレイン酸のグラフト質量が2.3質量%、ラウリルメタクリレートのグラフト質量が1.7質量%の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
【0076】
実施例1〜10及び比較例1〜4の成分(A)及び成分(B)の構成及び物性値を下記の表1に記し、成分(D)及び成分(E)の構成並びに変性ポリオレフィン樹脂の物性値及びそれらの評価を表2に記す。なお、表1中、Pはプロピレンを、Eはエチレンを、1−B又はBは1−ブテンを示す。
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
上記結果からわかるように、実施例1〜10及び比較例1〜4の変性ポリオレフィン樹脂はいずれも接着性は良好であった。しかしながら、比較例1〜4の変性ポリオレフィン樹脂は、溶液性状及び耐熱性の少なくともいずれかが劣るものであったが、本発明の変性ポリオレフィン樹脂に該当する実施例1〜10の変性ポリオレフィン樹脂は、両性能に優れるものであった。
従って、本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、プライマーやバインダー、積層体への利用が期待できる。