(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基準信号を発する基準信号発生器と、測距光を発する発光素子と、前記基準信号に基づき変調信号を生成する変調信号生成部と、前記変調信号に基づき断続発光駆動信号を発して前記発光素子を所定周期でバースト発光させる発光素子駆動回路と、測定対象物からの反射測距光を受光する受光素子と、該受光素子からの受光信号に基づき測定対象物迄の距離を演算する制御演算部とを有し、前記発光素子駆動回路は、変調信号と変調信号を90゜位相シフトした変調信号とを合成した信号を前記断続発光駆動信号として発し、前記制御演算部は、前記受光信号をDFT演算処理し、得られる中間周波数と、該中間周波数に対する側波帯の位相、振幅を求め、前記側波帯に含まれる2つの周波数に基づきバースト周期に対応する周波数の位相を求め、該周波数の位相に基づき距離を演算する光波距離計。
前記受光信号は受光信号処理部を介して受光回路に入力され、前記受光信号処理部は、前記受光信号を分岐し、分岐した一方の分岐受光信号に基準信号をミキシングし、分岐した他方の分岐受光信号に90゜位相シフトした基準信号をミキシングし、前記制御演算部に入力する請求項1に記載の光波距離計。
前記受光信号処理部は、前記分岐した両分岐受光信号を加算、減算し、更に合成して前記制御演算部に入力し、前記制御演算部は、断続受光信号をパルス信号とし、TOF方式により測定対象物迄の距離を演算する請求項2に記載の光波距離計。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0016】
先ず、
図1に於いて光波距離測定装置の基本構成を説明する。
【0017】
発光素子1(例えば、レーザダイオード:LD)は発光素子駆動回路12によって所定周波数に強度変調されたレーザ光線を射出する。該レーザ光線はハーフミラー2によって測距光3と内部参照光4とに分割され、前記ハーフミラー2を透過した前記測距光3は対物レンズ5を通して測定対象物(図示せず)に照射され、該測定対象物で反射された反射測距光3′は前記対物レンズ5、ハーフミラー8を通して受光素子7により受光される。尚、受光素子としてはフォトダイオード、例えば、アバランシフォトダイオード(APD)が用いられる。
【0018】
前記発光素子1、前記発光素子駆動回路12等は、測距光射出部を構成し、前記受光素子7、増幅器19(
図2参照)、受光回路13等は、受光信号発生部を構成する。
【0019】
前記ハーフミラー2で反射された前記内部参照光4は、前記反射測距光3′の光路上の前記ハーフミラー8で反射され、前記受光素子7に受光される。前記ハーフミラー2から前記受光素子7に至る光路は内部参照光路を構成し、既知の光路長を有する。
【0020】
前記測距光3の光路と前記内部参照光4の光路に掛渡り光路切替え器9が設けられ、該光路切替え器9は駆動回路14によって光路の切替えが行われ、前記反射測距光3′と前記内部参照光4とが交互に前記受光素子7に受光される。該受光素子7の受光信号は、前記受光回路13に入力される。
【0021】
尚、前記光路切替え器9は、前記受光素子7が前記内部参照光4と前記測距光3とを分離して受光できる様にする為の手段であり、前記内部参照光4の光路に光ファイバ等の光路調整部材を設け、前記受光素子7が内部参照光、測距光を受光する際に時間差が生じる様にすれば、前記光路切替え器9は省略できる。
【0022】
前記受光回路13は、前記受光素子7からの受光信号をアンプによる増幅、ミキサーによる周波数変換(ビートダウン)、A/D変換する等所要の信号処理を実行して、処理後の信号を制御演算部15に入力する。
【0023】
前記制御演算部15は、前記発光素子駆動回路12を制御し、該発光素子駆動回路12を介して前記発光素子1の発光状態を制御する。又、前記制御演算部15は前記駆動回路14を制御して前記受光素子7に入射する前記反射測距光3′と前記内部参照光4との切替えを行う。
【0024】
又、前記制御演算部15は、受光信号から前記内部参照光4と前記反射測距光3′との位相差(受光時間差)を求めて距離を演算している。又、前記内部参照光4と前記反射測距光3′との位相差を求めることで、前記受光回路13のドリフト等回路上の、不安定要素が除去される。
【0025】
図2は、本発明の実施例に係る測距部の概略構成図を示している。
図2中、
図1中で示したものと同等のものには、同符号を付してある。
【0026】
図2中、16は基準信号発生器を示し、所定の基準周波数を発する。以下の説明では、基準周波数として120MHz、ビートダウンされた周波数(中間周波数)として7.5MHz、アナログデジタル変換のサンプリング周波数として60MHzを例示している。尚、各周波数としては、その他240MHz等、サンプリング周波数を整数倍したものが用いられ、光波距離計が要求される精度、能力に応じて適宜基準周波数が選択される。
【0027】
前記基準信号発生器16から発せられる基準周波数に対して、分周波信号が生成され、該分周波信号と前記基準周波数によって変調周波数が生成される。尚、分周波信号は、演算の都合上、基準周波数に整数倍を除して得られるものであり、更に、除数はS/N比に依存する為、8〜20程度が好ましい。以下の説明では、除数を16とし、7.5MHzの分周波信号が生成されている。
【0028】
前記基準信号発生器16からの基準信号は、変調周波数生成器17a,17bによって2つの近接した変調信号120MHz+7.5MHz及び120MHz−7.5MHzが生成される。
【0029】
該変調信号120MHz+7.5MHzは前記発光素子駆動回路12に入力されると共に、位相シフト器18aによって90゜位相がシフトされ、90゜位相がシフトされた変調信号120MHz+7.5MHzが前記発光素子駆動回路12に入力される。
【0030】
同様に、前記変調信号120MHz−7.5MHzは前記発光素子駆動回路12に入力されると共に、位相シフト器18bによって90゜位相がシフトされ、90゜位相がシフトされた変調信号120MHz−7.5MHzが前記発光素子駆動回路12に入力される。
【0031】
前記発光素子駆動回路12は、前記変調信号120MHz+7.5MHz及び90゜位相がシフトされた前記変調信号120MHz+7.5MHzにより前記発光素子1をバースト発光(断続発光)させる。例えば、
図3(A)に示される様に、バースト発光の周期は、10μs(10kHz)であり、バースト発光時間は933.33nsである。
【0032】
又、前記発光素子駆動回路12から発せられる発光駆動信号は、前記変調信号120MHz+7.5MHzに90゜位相がシフトされた前記変調信号120MHz+7.5MHzが加算され、IQ変調の第1合成信号となっている。
【0033】
同様に、前記発光素子駆動回路12は、前記変調信号120MHz−7.5MHzに90゜位相がシフトされた前記変調信号120MHz−7.5MHzが加算され、IQ変調の第2合成信号により、前記発光素子1をバースト発光(断続発光)させる。
【0034】
更に、前記発光素子駆動回路12は、時分割し、前記第1合成信号、前記第2合成信号により、前記発光素子1を交互に発光させる(
図3(参照))。
【0035】
従って、該発光素子1からは、120MHz−7.5MHz及び90゜位相がシフトされた120MHz−7.5MHzに変調された合成測距光3a、更に120MHz+7.5MHz及び90゜位相がシフトされた120MHz+7.5MHzに変調された合成測距光3bが交互にバースト発光周期(10μs)でバースト発光される。
【0036】
前記基準信号発生器16、前記変調周波数生成器17a,17b、前記位相シフト器18a,18b等は変調信号生成部20を構成する。
【0037】
更に、前記制御演算部15は、記憶部21に格納された各種プログラムを実行し、距離測定に必要な所要の演算を実行する。
【0038】
該記憶部21には、測定に必要な演算の為の各種プログラムが格納されている。例えば、前記受光回路13から出力される信号を増幅、アナログデジタル変換(A/D変換)する等の信号処理を実行する為の信号処理プログラム、バースト信号に対して離散フーリエ変換(DFT:discrete Fourier transform)を実行する為の演算プログラム、DFTの結果を位相と振幅に変換するプログラム、DFTを実行することで得られた1次周波数、2次周波数等、…(後述)の位相と振幅を抽出する為の演算プログラム等が格納されている。
【0039】
又、前記記憶部21には、測距結果、演算結果等の各種データが格納される。
【0040】
主制御部22は、光波距離計(図示せず)の測距作動を制御すると共に前記制御演算部15の演算処理を制御する。前記主制御部22と前記制御演算部15は、統合して制御部としてもよい。
【0041】
測距光3に対する信号処理と内部参照光に対する信号処理とは同一であるので、以下は測距光について説明する。
【0042】
前記受光素子7からは断続受光信号27a,27b(
図3(B)参照)が交互に発せられ、該断続受光信号27a,27bは前記合成測距光3a,3bに対応しており、前記断続受光信号27aは、933.33nsの信号幅と、120MHz−7.5MHzと90゜位相がシフトされた120MHz−7.5MHzが合成されたIQ変調の受光信号となっている。
【0043】
同様に、前記断続受光信号27bは、933.33nsの信号幅と、120MHz+7.5MHzと90゜位相がシフトされた120MHz+7.5MHzが合成されたIQ変調の受光信号となっている。
【0044】
上記した様に、前記発光素子1の発光周期は10μs(100kHz)となっている。従って、両断続受光信号27a,27bの発生周期(発生間隔)は10μsとなっている。尚、発光間隔は、測距光が測定対象物に対して往復する時間より充分長く設定され、要求される最大測距距離に対応させ、適宜設定される。
【0045】
前記断続受光信号27a,27bは、それぞれミキシング回路26a,26bに於いて120MHzの基準信号とミキシングされ、+7.5MHzと−7.5MHzの断続変調信号にビートダウンされる。更に、位相変換器24で90゜位相がシフトされた120MHzの基準信号が前記断続受光信号27a,27bと前記ミキシング回路26a,26bによりミキシングされIQ復調されると共に、前記位相変換器24で90゜位相がシフトされた±7.5MHzの断続変調信号にビートダウンされる。
【0046】
IQ復調により、+7.5MHzと−7.5MHzの断続変調信号と90゜位相がシフトされた+7.5MHzと−7.5MHzの断続変調信号とに分離される。
【0047】
前記ミキシング回路26a,26b、前記位相変換器24等は、IQ復調部を構成する。
【0048】
±7.5MHzにビートダウンされた断続変調信号は増幅器28aで増幅され、90゜位相がシフトされた±7.5MHzの断続変調信号は増幅器28bで増幅され、前記受光回路13に入力される。前記断続変調信号は、前記受光回路13で、A/D変換される等、所要の信号処理が行われ、前記制御演算部15に入力される。
【0049】
又、前記受光素子7には、120MHz+7.5MHzと90゜位相がシフトされた120MHz+7.5MHzが合成された内部参照光及び120MHz−7.5MHzと90゜位相がシフトされた120MHz−7.5MHzが合成された内部参照光が時分割で入射し、前記受光素子7から発せられる受光信号も、測距光3と同様の処理が成される。
【0050】
尚、前記発光素子駆動回路12、前記基準信号発生器16、前記変調周波数生成器17a,17b、前記位相シフト器18a,18b等は発光駆動信号生成部34を構成し、又前記増幅器19、前記ミキシング回路26a,26b、前記増幅器28a,28b、前記位相変換器24、前記受光回路13等は、受光信号処理部35を構成する。
【0051】
尚、内部参照光については、光路長は一定しており、前記受光回路13等の回路が安定した状態では、前記発光駆動信号の発生タイミングと、前記受光回路13が内部参照光を受光し、発する受光信号の発生タイミングは固定される。従って、前記受光回路13等の回路が安定した状態では、前記受光回路13が内部参照光を受光し、発する断続受光信号31(
図4参照)の発生タイミングと前記発光駆動信号の発生タイミングとの関係も固定され、前記受光回路13が発する内部参照光の受光信号は、前記発光駆動信号に基づく信号となる。
【0052】
而して、前記発光素子駆動回路12が発する前記発光駆動信号を参照用の信号として使用してもよい。
【0053】
図4(A)は、1周期10μsの周期でバースト発光させた場合の、前記内部参照光4の前記断続受光信号31を示し、
図4(B)は、前記測距光3の断続受光信号27aを示し、
図4(C)は、前記断続受光信号27a、前記断続受光信号31からDFTの演算処理、側波帯の処理により抽出した1次周波数(1周期10μs)27a′,31′を示している。
【0054】
尚、
図4では、前記測距光3(3a,3b)、前記内部参照光4の120MHz+7.5MHzの変調周波数の断続受光信号は省略している。又、以下は、90゜位相をシフトした120MHz−7.5MHzを省略し、120MHz−7.5MHz単独で、前記発光素子1をバースト発光させた場合を説明する。
【0055】
断続光をパルス光と仮定し、前記断続受光信号31について、前記測距光3の発光タイミングから前記断続受光信号31が発せられる迄の時間差をt1とし、前記測距光3の発光タイミングから断続受光信号27が発せられる迄の時間差をt2とすると、t2−t1=Δtが前記測距光3が測定対象物迄を往復する時間であり、光速とΔtにより測定対象物迄の距離が測定できる。ところが、断続光は単パルス光とは異なり、断続光には120MHz±7.5MHzの変調光が含まれているので、受光された変調光(発せられる変調信号)は距離によって形状が変わる。この為、変調光に対するサンプリング位置にバラツキを生じてしまい、結果的に時間差Δtが誤差を含むことになり、測定精度が悪くなる。従って、実際は、反射測距光の受光信号と内部参照光の受光信号の位相差に基づき距離測定が行われる。
【0056】
ところが、上記した様に、反射測距光の受光信号と内部参照光の受光信号は、共に断続光であるので、反射測距光の受光信号と内部参照光の受光信号間の位相差が求められない。従って、バースト区間全体をバースト周期(周波数100kHz)2πとしたときの位相を求めるが、周波数変換した場合、100kHz(10μs)に現れるスペクトルの振幅は小さくなってしまう。
【0057】
例えば、バースト波形(
図3(A)の区間(バースト周期10μs))を離散フーリエ変換(DFT:discrete Fourier transform)した場合、周波数と周波数に対する振幅と位相が得られる。
図5は周波数と振幅との関係を示す曲線32を示している。
【0058】
尚、
図5は、特に発光周波数(7.5MHz)近傍を拡大したグラフとなっている。図示される様に、発光周波数(7.5MHz)を中心とした近傍では大きな振幅(以下、側波帯33)が得られるが、中間周波数(7.5MHz)から離れると急激に振幅が小さくなり、発光周期である100kHz(1次の周波数)ではほとんど振幅はでない。
【0059】
図5中の前記曲線32上のプロットは、DFT演算処理した離散間隔を示している。
【0060】
これは、前記発光素子駆動回路12から発せられる発光駆動信号は、1次周波数に直交する周波数のsin波であり、バースト区間(信号が存在する区間)に含まれる信号も1次周波数に直交する周波数のsin波となり、打ち消され、1次の周波数に有効な振幅が出てこないことによる。
【0061】
これに対し、本発明者は、中間周波数の発光周波数(7.5MHz)前後に振幅の大きな側波帯33が現れることに着目し、この中間周波数に対する側波帯33を利用し、中間周波数に対する側波帯の位相、振幅を求め、更に1次〜4次波長の位相を求めることを見出した。
【0062】
尚、1次周波数とはバースト発光の周期を2πとする周波数であり、丁度DFTするデータの長さで1周期回る周波数になる。
【0063】
DFTする全域に周波数がある場合、理想的には発光周波数のみピークが立ちその前後の周波数は0となるが、バースト波形(
図4(A)、
図4(B)参照)をバースト周期についてDFTすると一部のみ波形がある為、発光周波数との周波数ズレに関係した振幅が現れる。
【0064】
前記側波帯33の振幅も発光周波数(7.5MHz)との周波数ズレの関係式になる為、ここから周波数差の位相を求めることができる。DFTの求められる周波数間隔は全域で等しい(即ち周波数間隔はバースト発光周波数)為、前記側波帯33に含まれ、発光周波数P1と該発光周波数P1と1番近い発光周波数P2との周波数差=1次周波数となり、前記発光周波数P1と2番目に近い発光周波数P3との差=2次周波数となり、同様に3番目に近い発光周波数P4との差=3次周波数、4番目に近い発光周波数P5との差=4次周波数となる。これにより低次(例えば、1次〜4次)の周波数の位相を求めることができる(
図4(C)参照)。
【0065】
更に、発光周波数P2と該発光周波数P2に隣接する発光周波数P3とで1次周波数を求める等、異なる隣接する発光周波数Pn、Pn+1を用いて複数の1次周波数を求め、得られた複数の1次周波数について重み付けを行う等、求める1次周波数の精度を高めてもよい。2次周波数、3次周波数等についても、同様に発光周波数の組合せを変え複数の周波数を求め、重み付け等により精度を高めてもよい。
【0066】
この1次周波数を求めることで長距離の測定ができる。又、2次周波数、3次周波数、4次周波数を求めることで中距離、近距離について高精度の距離測定が行える。
【0067】
図6は、前記側波帯33に含まれる周波数に関して隣接する2点の周波数P1、P2の位相を示し、前記側波帯33のDFTの演算を単心円上で表している。
【0068】
図6中、ωtを発光周波数(7.5MHz、
図5中、P1)の角速度、ω
0 tを前記側波帯33(
図5中、P2)の周波数の角速度とする。
【0069】
発光周波数と側波帯との角速度の違いから、発光周波数の位相に対して角速度の差分((ω−ω
0 )t)位相が回転する。
【0070】
ωとω
0 は、DFTの離散間隔で存在するので、隣合った周波数間の差で求まる位相((ω−ω
0 )t)は、DFTの1次周波数の位相と等しくなる。従って、隣合った周波数間の差を求めることで1次周波数の位相を求めることができる。
【0071】
内部参照光の断続受光信号に対しても、DFTを行い、側波帯を利用して1次周波数の位相を求めることができる。内部参照光の1次周波数の位相は、測距光との位相差を求める為の参照用1次周波数の位相であり、該参照用1次周波数の位相と前記測距光の断続受光信号の側波帯で得られた1次周波数の位相とにより、内部参照光と測距光との位相差が求められ、測定距離が演算される。
【0072】
図7は、バースト周期について、DFT演算処理を行う演算式(1)を示している。
【0073】
式(1)に基づき演算処理した結果を、
図8に示す。
【0074】
DFT演算処理により、側波帯33が得られるが、同時に同じ波形を有するエイリアス成分33′も得られる。このエイリアス成分33′は、式(1)中、a項、b項に該当する。
【0075】
前記側波帯33、前記エイリアス成分33′のいずれを利用しても、前記1次周波数27a′,31′を求めることはできるが、前記側波帯33と前記エイリアス成分33′とが相互に影響を及しているので、精度を向上させる為には、いずれか一方を削除することが好ましい。以下は、前記エイリアス成分33′を除去する場合について説明する。
【0076】
式(1)に示される様に、a項、b項はそれぞれ、cos、sinに依存している。従って、式(1)で演算処理するバースト信号に対して、位相がπ/2(90゜)ずれたバースト信号を式(1)により演算処理し、得られた結果を加算処理することでa項、b項が除去できる。
【0077】
本発明では、斯かる着目に基づき、位相がπ/2(90゜)ずれたバースト信号を作成し、即ち、90゜位相をシフトさせた120MHz±7.5MHzを作成し、この90゜位相をシフトさせた120MHz±7.5MHzと120MHz±7.5MHzとを合わせた変調信号により、前記発光素子1を駆動発光させる。
【0078】
測定対象物で反射された反射測距光3′が前記受光素子7で受光され、該受光素子7から発せられる断続受光信号が、前記ミキシング回路26a,26bによりビートダウンされ、更に位相変換器24からの信号によりIQ復調される。
【0079】
ビートダウンした受光信号が+7.5MHz及び90゜位相がシフトされた+7.5MHzの断続受光信号に分離され、−7.5MHz及び90゜位相がシフトされた−7.5MHzの断続受光信号がDFT演算処理され、更に得られた結果が合算されることで、前記エイリアス成分33′が除去される。
図9は、該エイリアス成分33′が除去された状態を示している。
【0080】
次に、
図10を参照して、上記した信号処理について具体的に説明する。
【0081】
120±7.5MHzの変調信号に対して90゜位相がずれた信号が作成され、更に前記制御演算部15より断続化信号が入力されることで、120±7.5MHzと90゜位相がずれた120±7.5MHzが合成され、更に断続した変調信号がバースト(Burst)信号として出力される。
【0082】
バースト信号により発光された反射測距光(及び内部参照光)を受光した、前記受光素子7からは、断続受光信号が発せられる。分岐された断続受光信号の一方の分岐受光信号には基準信号(120MHz)がミキシングされてビートダウンし、波形データA(Waveform data A)が得られる。又、分岐された他方の分岐受光信号には90゜位相がずれた基準信号がミキシングされ、IQ復調されると共にビートダウンされ、波形データB(Waveform data B)が得られる。
【0083】
波形データAと波形データBとを加算処理する(
図11(A)、式(2))ことで、cos(ω−ω
0 )t(7.5MHzにビートダウンされた信号)が得られる。
【0084】
又、波形データAから波形データBを減算処理する(
図11(B)、式(3))ことで、sin(ω−ω
0 )t(7.5MHzにビートダウンされ、90゜位相がずれた信号)が得られる。
【0085】
尚、合算、減算の過程で、sin(ω+ω
0 )t、cos(ω+ω
0 )tが現れるが、ω+ω
0 =480±7.5MHzは高周波であり、ローパスフィルタによって除去される。
【0086】
更に、(A+B)信号と(A−B)信号とを合成し、DFT演算処理することで、前記エイリアス成分33′が除去された側波帯33が得られる(
図9参照)。
【0087】
而して、本実施例では、バースト発光させる発光駆動信号として、断続化された変調信号及びこの変調信号に対して90゜位相がシフトされた断続化された変調信号が用いられることで、断続受光信号をDFT演算処理した場合に、側波帯33を残し、不要な信号であるエイリアス成分33′を除去することができる。
【0088】
更に、側波帯33に含まれる隣接周波数から、バースト区間を1周期とする1次周波数を求めることができ、バースト発光方式で、複雑な回路構成を必要とせず、高精度の測距が可能となる。