(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光源と、搬送されるウェブの幅方向に沿ってウェブの幅より長い範囲にわたって複数の読取素子が配置されたラインセンサとを有し、ウェブに向けて前記光源から光を出射し、ウェブ側からの光を前記ラインセンサで読み取ることで、ウェブに印刷された画像を読み取る画像読取部と、
ウェブを挟んで前記画像読取部に対向して配置され、ウェブの幅より長く、ウェブの幅方向の両外側に突出する白色の白基準部材と、
ウェブに印刷された画像の読み取りの際に、前記白基準部材のウェブの両外側へ突出した両端部を読み取って端部読取データを生成するよう前記画像読取部を制御し、
事前に前記画像読取部と前記白基準部材との間にウェブがない状態で前記白基準部材を前記画像読取部が読み取って得られた事前白基準データと、前記端部読取データとに基づき、ウェブの幅方向における両端より内側の領域の白基準データである内側白基準データを生成し、
前記内側白基準データを使用して、前記画像読取部がウェブに印刷された画像を読み取って得られた読取画像データに対してシェーディング補正を行う制御部と
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0020】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像読取装置が設けられた印刷装置を備えた印刷システムの概略構成図である。
図2(a),(b)は、
図1に示す印刷システムにおける印刷装置の画像読取部の斜視図である。
図3(a),(b)は、
図1に示す印刷システムにおける印刷装置の画像読取部の平面図である。
図4は、
図1に示す印刷システムの制御ブロック図である。なお、以下の説明において、
図1の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面表方向を前方とする。また、
図1における紙面の上下左右を上下左右方向とする。
【0022】
図1、
図4に示すように、本実施の形態に係る印刷システム1は、巻出装置2と、印刷装置3と、巻取装置4とを備える。
【0023】
巻出装置2は、フィルム、紙等からなる長尺状の印刷媒体であるウェブWを印刷装置3へ巻き出す。巻出装置2は、ウェブロール支持軸11と、ブレーキ12と、巻出装置制御部13とを備える。
【0024】
ウェブロール支持軸11、は、ウェブロール16を回転可能に支持する。ウェブロール支持軸11は、前後方向に延びる長尺状に形成されている。ウェブロール16は、ウェブWがロール状に巻かれたものである。
【0025】
ブレーキ12は、ウェブロール支持軸11にブレーキをかける。これにより、ウェブロール16と後述する印刷装置3の搬送ローラ43との間のウェブWに張力が付与される。
【0026】
巻出装置制御部13は、ブレーキ12を制御する。巻出装置制御部13は、CPU、メモリ、ハードディスク等を備えて構成される。
【0027】
印刷装置3は、巻出装置2から巻き出されたウェブWを搬送しつつ、ウェブWに画像を印刷する。印刷装置3は、搬送部21と、印刷部22A,22Bと、画像読取部23A,23Bと、白基準ローラ24A,24Bと、白基準ローラ回転モータ25A,25Bと、4つのエッジセンサ26と、操作パネル27と、印刷装置制御部28とを備える。なお、印刷部22A,22B等の符号におけるアルファベットの添え字を省略して総括的に表記することがある。また、印刷装置3に設けられた画像読取装置は、画像読取部23、白基準ローラ(白基準部材)24、白基準ローラ回転モータ(駆動部)25、エッジセンサ26、後述の読取制御部(制御部)63、および後述の記憶部64を有する。
【0028】
搬送部21は、巻出装置2から巻き出されたウェブWを搬送する。搬送部21は、ガイドローラ31〜40と、20本のヘッド下支持部材41と、蛇行制御部42と、一対の搬送ローラ43と、搬送モータ44とを備える。
【0029】
ガイドローラ31〜40は、印刷装置3内で搬送されるウェブWをガイドする。ガイドローラ31〜40は、搬送されるウェブWに従動回転する。ガイドローラ31〜40は、前後方向に延びる長尺状の円柱形状に形成されている。
【0030】
ガイドローラ31,32は、巻出装置2と蛇行制御部42との間でウェブWをガイドする。ガイドローラ31は、印刷装置3の下部の左端部に配置されている。ガイドローラ32は、ガイドローラ31と後述する蛇行制御部42の蛇行制御ローラ47との間に配置されている。
【0031】
ガイドローラ33〜39は、蛇行制御部42と搬送ローラ43との間でウェブWをガイドする。ガイドローラ33は、後述する蛇行制御部42の蛇行制御ローラ48の左方に配置されている。ガイドローラ34は、ガイドローラ33の上方に配置されている。ガイドローラ35は、ガイドローラ34とほぼ同じ高さで、ガイドローラ34の右方に配置されている。ガイドローラ36は、ガイドローラ35の下方であって、ガイドローラ33より高い位置に配置されている。ガイドローラ37は、ガイドローラ36の左方であって、ガイドローラ33,34間のウェブWの右側近傍であり、ガイドローラ36とほぼ同じ高さである位置に配置されている。ガイドローラ38は、ガイドローラ37の右下方に配置されている。ガイドローラ39は、ガイドローラ38のやや右側の下方に配置されている。
【0032】
ガイドローラ40は、搬送ローラ43と巻取装置4との間でウェブWをガイドする。ガイドローラ40は、印刷装置3の下部の右端部に配置されている。
【0033】
ヘッド下支持部材41は、ガイドローラ34,35間およびガイドローラ36,37間において、後述するヘッドユニット51の下でウェブWを支持する。ヘッド下支持部材41は、前後方向に延びる長尺状に形成されている。ガイドローラ34,35間およびガイドローラ36,37間に、それぞれ10本ずつのヘッド下支持部材41が配置されている。そして、ヘッド下支持部材41は、各ヘッドユニット51の直下に2本ずつ配置されている。
【0034】
蛇行制御部42は、ウェブWの蛇行を修正するものである。蛇行制御部42は、蛇行制御ローラ47,48と、蛇行制御モータ49とを備える。
【0035】
蛇行制御ローラ47,48は、ウェブWをガイドするとともに、ウェブWの蛇行を修正するためのローラである。蛇行制御ローラ47,48は、前後方向に延びる長尺状の円柱形状に形成されている。蛇行制御ローラ47,48は、搬送されるウェブWに従動回転する。蛇行制御ローラ47,48は、その軸方向の、ウェブWの幅方向(前後方向)に対する角度を調整可能に構成されている。蛇行制御ローラ47は、ガイドローラ32の右方に配置されている。蛇行制御ローラ48は、蛇行制御ローラ47の上方に配置されている。
【0036】
蛇行制御モータ49は、蛇行制御ローラ47,48の軸方向の、ウェブWの幅方向(前後方向)に対する角度を調整するために、左右方向に平行な軸を中心に蛇行制御ローラ47,48を回動させる。
【0037】
一対の搬送ローラ43は、ウェブWをニップしつつ、巻取装置4へ向けてウェブWを搬送する。搬送ローラ43は、前後方向に延びる長尺状の円柱形状に形成されている。一対の搬送ローラ43は、ガイドローラ39,40間に配置されている。
【0038】
搬送モータ44は、搬送ローラ43を回転駆動させる。
【0039】
印刷部22A,22Bは、それぞれウェブWのおもて面、うら面に画像を印刷する。印刷部22Aは、ガイドローラ34,35間のウェブWの上方近傍に配置されている。印刷部22Bは、ガイドローラ36,37間のウェブWの上方近傍に配置されている。印刷部22A,22Bは、それぞれ5つのヘッドユニット51を備える。
【0040】
ヘッドユニット51は、ウェブWへインクを吐出して画像を印刷する。印刷部22において、5つのヘッドユニット51は、それぞれ異なる色のインクを吐出する。
【0041】
画像読取部23A,23Bは、それぞれ印刷部22A,22Bで印刷された画像を光電的に読み取る。画像読取部23A,23Bは、それぞれウェブWの搬送方向における印刷部22A,22Bの下流側近傍において、ウェブWの上方に配置されている。
図3(a),(b)に示すように、画像読取部23は、光源56と、ラインセンサ57とを備える。
【0042】
光源56は、ウェブWに向けて光を出射する。光源56は、ウェブWの幅方向である主走査方向(前後方向)に延びる長尺状に形成されている。光源56は、冷陰極管、LED等からなる。
【0043】
ラインセンサ57は、主走査方向に沿ってウェブWの幅より長い範囲にわたって配置された複数の読取素子を有する。ラインセンサ57は、ウェブW側(下側)からの光を読取素子で受光し、読取データを生成する。ラインセンサ57の読取素子は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)からなる。
【0044】
白基準ローラ24A,24Bは、読取画像データに対するシェーディング補正を行うために使用される後述の事前白基準データ等を取得するために読み取られるものである。白基準ローラ24A,24Bは、それぞれウェブWを挟んで画像読取部23A,23Bに対向して配置されている。白基準ローラ24A,24Bは、ウェブWの幅より長い白色のローラである。白基準ローラ24A,24Bは、ウェブWの幅方向の両外側(前側および後側)に突出するように配置されている。なお、白基準ローラ24A,24Bは、ウェブWに従動回転するものではなく、白基準ローラ回転モータ25A,25Bにより回転させられる。
【0045】
白基準ローラ回転モータ25A,25Bは、それぞれ白基準ローラ24A,24Bを回転させる。
【0046】
エッジセンサ26は、ウェブWの幅方向(前後方向)の端の位置を検出する。
図2(a)、
図3(a)に示すように、2つのエッジセンサ26が、画像読取部23Aの上流側近傍に一対で配置されている。この2つのエッジセンサ26は、それぞれ画像読取部23Aの上流側近傍におけるウェブWの前側の端の位置、後側の端の位置を検出する。
【0047】
また、
図2(b)、
図3(b)に示すように、他の2つのエッジセンサ26が、画像読取部23Bの上流側近傍に一対で配置されている。この2つのエッジセンサ26は、それぞれ画像読取部23Bの上流側近傍におけるウェブWの前側の端の位置、後側の端の位置を検出する。
【0048】
操作パネル27は、各種の入力画面等を表示するとともに、ユーザによる入力操作を受け付ける。操作パネル27は、液晶表示パネル等を有する表示部と、各種の操作キー、タッチパネル等を有する入力部(いずれも図示せず)とを備える。
【0049】
印刷装置制御部28は、印刷装置3全体の動作を制御する。印刷装置制御部28は、搬送制御部61と、印刷制御部62と、読取制御部63と、記憶部64とを備える。印刷装置制御部28の各部は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等によってソフトウェア的またはハードウェア的に実現できる。
【0050】
搬送制御部61は、搬送モータ44により搬送ローラ43を駆動させてウェブWを搬送させる。
【0051】
印刷制御部62は、印刷部22A,22Bのヘッドユニット51を制御してウェブWに画像を印刷させる。
【0052】
読取制御部63は、後述の印刷読取動作においてウェブWに印刷された画像を読み取るよう画像読取部23A,23Bを制御する。
【0053】
また、読取制御部63は、印刷読取動作におけるウェブWに印刷された画像の読み取りの際に、規定時間ごとに、白基準ローラ24の両端部24a,24bを読み取って端部読取データを生成するよう画像読取部23を制御する。ここで、白基準ローラ24の端部24aは、ウェブWから前側の外側に突出した部分であり、端部24bは、ウェブWから後側の外側に突出した部分である。
【0054】
読取制御部63は、画像読取部23が白基準ローラ24の両端部24a,24bを読み取って端部読取データを生成すると、記憶部64に記憶された後述の事前白基準データと、端部読取データとに基づき、内側白基準データを生成する。内側白基準データは、ウェブWの幅方向における両端より内側の領域の白基準データである。内側白基準データを生成する処理の詳細は後述する。
【0055】
そして、読取制御部63は、内側白基準データを使用して、画像読取部23がウェブWに印刷された画像を読み取って得られた読取画像データに対してシェーディング補正を行う。
【0056】
記憶部64は、事前白基準データおよび黒基準データを記憶する。事前白基準データは、後述の事前基準データ取得処理により、画像読取部23と白基準ローラ24との間にウェブWがない状態で、画像読取部23が光源56を点灯させた状態で白基準ローラ24を読み取って生成した読取データである。事前白基準データは、上述の内側白基準データを生成するために使用される。黒基準データは、事前基準データ取得処理により、画像読取部23が光源56を消灯した状態で白基準ローラ24を読み取って生成した読取データである。黒基準データは、読取画像データに対するシェーディング補正に使用される。
【0057】
巻取装置4は、印刷装置3で印刷されたウェブWを巻き取る。巻取装置4は、巻取軸71と、巻取モータ72と、巻取装置制御部73とを備える。
【0058】
巻取軸71は、ウェブWを巻き取って保持する。巻取軸71は、前後方向に延びる長尺状に形成されている。
【0059】
巻取モータ72は、巻取軸71を
図1における時計回りに回転させる。巻取軸71の回転により、ウェブWが巻取軸71に巻き取られる。
【0060】
巻取装置制御部73は、巻取モータ72の駆動を制御する。巻取装置制御部73は、CPU、メモリ、ハードディスク等を備えて構成される。
【0061】
次に、印刷装置3における事前基準データ取得処理について説明する。
【0062】
事前基準データ取得処理は、ウェブWに画像を印刷しつつ、印刷された画像を画像読取部23で読み取る印刷読取動作の事前に、前述の事前白基準データおよび黒基準データを取得するための処理である。
【0063】
図5は、事前基準データ取得処理のフローチャートである。事前基準データ取得処理は、画像読取部23と白基準ローラ24との間にウェブWがない状態において行われる。画像読取部23と白基準ローラ24との間にウェブWがない状態となるのは、例えば、ウェブロール16の交換時である。事前基準データ取得処理は、画像読取部23A,23Bのそれぞれについて行われる。
【0064】
図5のステップS1において、読取制御部63は、汚れ検出回数カウント値Cをリセットする。ここで、汚れ検出回数カウント値Cは、後述する
図5のステップS4および
図8のステップS26において白基準ローラ24に汚れがあると判断された回数を示す値である。白基準ローラ24の汚れは、例えば、印刷部22におけるインク吐出により発生したインクミストが付着することにより発生する。汚れ検出回数カウント値Cは、直近の値が記憶部64に記憶されている。
【0065】
次いで、ステップS2において、読取制御部63は、画像読取部23の光源56を点灯させる。
【0066】
次いで、ステップS3において、読取制御部63は、白基準ローラ24を読み取るよう画像読取部23を制御する。
【0067】
ここで、画像読取部23による白基準ローラ24の読取データの一例を
図6に示す。
図6の例では、ラインセンサ57の読取素子の受光感度のバラツキや、白基準ローラ24の端部による反射光と内側部分による反射光との光量差や、周囲温度等の影響による光源56の光量不均一により、主走査方向の位置によって読取値が変化している。
【0068】
次いで、ステップS4において、読取制御部63は、上述のステップS3で読み取られた白基準ローラ24の読取データに基づき、白基準ローラ24に汚れがあるか否かを判断する。
【0069】
ここで、白基準ローラ24に汚れがある場合の白基準ローラ24の読取データの一例を
図7に示す。白基準ローラ24に汚れがある場合、
図7のように、白基準ローラ24の読取データに局所的な読取値の落ち込みが生じる。
【0070】
そこで、例えば、読取制御部63は、白基準ローラ24の読取データを走査し、隣接する画素に対する読取値の変化率が閾値以上の画素がある場合、白基準ローラ24に汚れがあると判断する。隣接する画素に対する読取値の差分が閾値以上の画素がある場合に、白基準ローラ24に汚れがあると判断するようにしてもよい。
【0071】
白基準ローラ24に汚れはないと判断した場合(ステップS4:NO)、ステップS5において、読取制御部63は、ステップS3の読取動作による、
図6のような白基準ローラ24の読取データを、事前白基準データとして記憶部64に記憶する。
【0072】
次いで、ステップS6において、読取制御部63は、画像読取部23の光源56を消灯させる。
【0073】
次いで、ステップS7において、読取制御部63は、白基準ローラ24を読み取るよう画像読取部23を制御し、生成された読取データを黒基準データとして取得して記憶部64に記憶する。これにより、事前基準データ取得処理が終了となる。
【0074】
ステップS4において、白基準ローラ24に汚れがあると判断した場合(ステップS4:YES)、ステップS8において、読取制御部63は、汚れ検出回数カウント値Cをカウントアップする。すなわち、読取制御部63は、汚れ検出回数カウント値Cに「1」を加算する。
【0075】
次いで、ステップS9において、読取制御部63は、汚れ検出回数カウント値Cが閾値Cthに到達したか否かを判断する。ここで、閾値Cthは、白基準ローラ24の清掃が必要になる汚れ検出回数として予め設定された値である。
【0076】
汚れ検出回数カウント値Cが閾値Cthに到達していないと判断した場合(ステップS9:NO)、ステップS10において、読取制御部63は、白基準ローラ回転モータ25により白基準ローラ24を所定角度だけ回転させる。これにより、画像読取部23による被読取領域をずらすように白基準ローラ24が動かされる。この結果、白基準ローラ24の表面の汚れがない領域が画像読取部23に読み取られるようにすることが可能である。この後、読取制御部63は、ステップS3に戻る。
【0077】
ステップS9において、汚れ検出回数カウント値Cが閾値Cthに到達したと判断した場合(ステップS9:YES)、ステップS11において、読取制御部63は、事前基準データ取得処理を中止する。この際、読取制御部63は、光源56を消灯するとともに、白基準ローラ24の清掃を促すメッセージを操作パネル27に表示させて、事前基準データ取得処理を終了する。
【0078】
次に、印刷装置3における印刷読取動作について説明する。
【0079】
印刷読取動作は、前述のように、ウェブWに画像を印刷しつつ、印刷された画像を画像読取部23で読み取る動作である。印刷読取動作は、例えば、印刷品質等の検査のために行われる。印刷品質等の検査のための印刷読取動作では、テストパターン画像等の複数ページの画像が連続的に印刷される。
【0080】
印刷読取動作を開始する際、印刷装置制御部28の搬送制御部61は、搬送モータ44の駆動を開始させる。また、巻取装置制御部73は、巻取モータ72の駆動を開始させる。これにより、ウェブWの搬送が開始される。ウェブWの搬送開始後、ウェブWの搬送速度が所定の印刷搬送速度に達すると、巻出装置制御部13が、ブレーキ12の駆動を開始させる。これにより、ウェブWに張力が付与されつつ、ウェブWが搬送される。ウェブWの搬送速度が印刷搬送速度に達した後、印刷が終了するまで、ウェブWの搬送速度が印刷搬送速度で維持される。
【0081】
ウェブWの搬送速度が印刷搬送速度に達した後、印刷装置制御部28の印刷制御部62は、印刷部22A,22Bのヘッドユニット51からインクを吐出させて、ウェブWに画像を印刷させる。
【0082】
ウェブWに画像が印刷されると、印刷装置制御部28の読取制御部63は、ウェブWに印刷された画像を画像読取部23A,23Bに読み取らせる。ここで、読取制御部63は、印刷制御部62の制御による各ページの印刷タイミング、および図示しないエンコーダの出力パルス数に基づき、ウェブW上の印刷された各ページの位置を判断し、画像読取部23A,23Bに各ページの画像を読み取らせることができる。
【0083】
読取制御部63は、画像読取部23がウェブWに印刷された画像を読み取って生成した読取画像データにシェーディング補正を含む各種の画像処理を施し、画像処理後の読取画像データを、検査のための画像解析を行う外部装置へ出力する。
【0084】
画像の印刷および読み取りが終了した後、巻出装置制御部13はブレーキ12を停止させ、印刷装置制御部28は搬送モータ44を停止させ、巻取装置制御部73は巻取モータ72を停止させる。これにより、ウェブの搬送が終了し、印刷読取動作が終了となる。
【0085】
次に、上述した印刷読取動作中に行われる読取時白基準データ取得処理について説明する。
【0086】
読取時白基準データ取得処理は、印刷読取動作中において、シェーディング補正に用いる白基準データを逐次更新するための処理である。
図8、
図9は、読取時白基準データ取得処理のフローチャートである。読取時白基準データ取得処理は、画像読取部23A,23Bのそれぞれについて行われる。
図8、
図9のフローチャートの処理は、印刷読取動作の開始により、開始となる。
【0087】
図8のステップS21において、読取制御部63は、汚れ検出回数カウント値Cをリセットする。
【0088】
次いで、ステップS22において、読取制御部63は、画像読取部23の光源56を点灯させる。この光源56の点灯は、ウェブWに印刷された画像の読み取りのために行われるものである。
【0089】
次いで、ステップS23において、読取制御部63は、現在がウェブWに印刷された1ページ目の画像の読取開始前であるか否かを判断する。
【0090】
現在がウェブWに印刷された1ページ目の画像の読取開始前であると判断した場合(ステップS24:YES)、ステップS25において、読取制御部63は、エッジセンサ26にウェブWの幅方向の両端の位置を検出させる。
【0091】
次いで、ステップS25において、読取制御部63は、エッジセンサ26により検出されたウェブWの幅方向の両端の位置より外側の白基準ローラ24の両端部24a,24bを読み取るよう画像読取部23を制御する。画像読取部23は、白基準ローラ24の両端部24a,24bを読み取って、
図10に示すような端部読取データを生成する。
【0092】
次いで、ステップS26において、読取制御部63は、端部読取データに基づき、白基準ローラ24の両端部24a,24bの少なくともいずれかに汚れがあるか否かを判断する。白基準ローラ24の端部24a,24bに汚れがあるか否かを判断する手法は、前述の
図5のステップS4で説明した手法と同様である。
【0093】
白基準ローラ24の両端部24a,24bのいずれにも汚れがないと判断した場合(ステップS26:NO)、ステップS27において、読取制御部63は、端部読取データと、記憶部64に記憶された事前白基準データとに基づき、内側白基準データを生成する。
【0094】
ここで、内側白基準データを生成する方法について、
図11を参照して説明する。
【0095】
図11において、端部読取データは、0〜N番目の画素の範囲と、M〜X番目の画素の範囲とに分布している。ここで、Xは最終画素の番号である。
【0096】
図11の例では、端部読取データは、事前白基準データよりも暗くなっている。これは、事前白基準データを生成した際の白基準ローラ24の読み取り時に比べて、端部読取データを生成した際の白基準ローラ24の両端部24a,24bの読み取り時では、光源56の光量が減少したからである。事前白基準データを生成した際の白基準ローラ24の読み取り時よりも、端部読取データを生成した際の白基準ローラ24の両端部24a,24bの読み取り時の方が光源56の光量が大きくなった場合は、端部読取データが事前白基準データよりも明るくなる。
【0097】
図11に示すように、事前白基準データのN番目の画素における読取値をP(N)とし、端部読取データのN番目の画素における読取値をQ(N)とする。また、事前白基準データのM番目の画素における読取値をP(M)とし、端部読取データのM番目の画素における読取値をQ(M)とする。また、P(N)からQ(N)への変化率をN´、P(M)からQ(M)への変化率をM´とする。
【0098】
また、ウェブWの両端より内側の領域内(ウェブWの存在範囲内)の任意の画素である(N+α)番目の画素とN番目の画素との間の主走査方向における距離をJとし、(N+α)番目の画素とM番目の画素との間の主走査方向における距離をKとする。
【0099】
また、端部読取データを生成した際の白基準ローラ24の両端部24a,24bの読み取り時の光源56の光量で白基準ローラ24全体を読み取った場合の(N+α)番目の画素の読取値の推定値をQ(N+α)とする。
【0100】
また、事前白基準データの(N+α)番目の画素における読取値であるP(N+α)からQ(N+α)への予測変化率をα´とし、予測変化率α´を、変化率をN´,M´および距離J,Kから、内挿により算出する。具体的には、下記の式(1)により、予測変化率α´を算出する。
【0101】
α´=N´×(K/L)+M´×(J/L) …(1)
そして、下記の式(2)のように、P(N+α)に予測変化率α´を乗算することで、Q(N+α)を算出する。
【0102】
Q(N+α)=P(N+α)×α´ …(2)
内側白基準データは、(N+1)番目の画素から(M−1)番目の画素のそれぞれに対応する、すなわち、α=1〜(M−1−N)のそれぞれに対応するQ(N+α)の値からなるものである。
【0103】
読取制御部63は、α=1〜(M−1−N)のそれぞれに対応するQ(N+α)の値を算出することで、
図12に示すような、内側白基準データを生成する。
【0104】
なお、
図11の例では、内側白基準データの生成のために端部読取データのうちウェブW側の端の位置(N番目、M番目)の画素の読取値を用いたが、端部読取データの他の位置の画素の読取値を用いてもよい。
【0105】
図8に戻り、ステップS28において、読取制御部63は、内側白基準データの生成が終了した時点において、画像読取部23がページの読取途中であるか否かを判断する。画像読取部23がページの読取途中であると判断した場合(ステップS28:YES)、読取制御部63は、ステップS28を繰り返す。
【0106】
画像読取部23がページの読取途中ではない、すなわち、1ページ目の読取開始前、または画像読取部23の読取対象位置がページ間の区切りの位置にある状態、または最後のページの読取終了後である場合(ステップS28:NO)、ステップS29において、読取制御部63は、最後のページの読み取りが終了したか否かを判断する。
【0107】
最後のページの読み取りは終了していないと判断した場合(ステップS29:NO)、ステップS30において、読取制御部63は、シェーディング補正に用いる白基準データとして、最新の全幅白基準データを設定する。ここで、全幅白基準データは、
図12に示すように、ステップS27で生成された内側白基準データと、ステップS25で取得された端部読取データとからなる。ステップS30の後、読取制御部63は、ステップS23に戻る。
【0108】
ステップS29において、最後のページの読み取りが終了したと判断した場合(ステップS29:YES)、ステップS31において、読取制御部63は、光源56を消灯し、読取時白基準データ取得処理を終了する。
【0109】
ステップS23において、現在がウェブWに印刷された1ページ目の画像の読取開始後であると判断した場合(ステップS23:NO)、ステップS32において、読取制御部63は、タイムカウント値Tをリセットする。ここで、タイムカウント値Tは、白基準ローラ24の両端部24a,24bの読み取りを行うタイミングを判断するための時間のカウント値である。
【0110】
次いで、ステップS33において、読取制御部63は、タイムカウント値Tをカウントアップする。すなわち、読取制御部63は、タイムカウント値Tに「1」を加算する。タイムカウント値Tのカウントアップは、例えば、1秒ごとに行われる。
【0111】
次いで、ステップS34において、読取制御部63は、タイムカウント値Tが規定値(規定時間)に到達したか否かを判断する。タイムカウント値Tが規定値に到達していないと判断した場合(ステップS34:NO)、読取制御部63は、ステップS33へ戻る。
【0112】
タイムカウント値Tが規定値に到達したと判断した場合(ステップS34:YES)、読取制御部63は、ステップS24へ進む。
【0113】
ステップS26において、白基準ローラ24の両端部24a,24bの少なくともいずれかに汚れがあると判断した場合(ステップS26:YES)、読取制御部63は、
図9のステップS35へ進む。
【0114】
ステップS35〜S37の処理は、前述した
図5のステップS8〜S10と同様である。ステップS37の後、読取制御部63は、
図8のステップS25に戻る。
【0115】
ステップS36において、汚れ検出回数カウント値Cが閾値Cthに到達したと判断した場合(ステップS36:YES)、ステップS38において、読取制御部63は、読取時白基準データ取得処理を中止する。この際、読取制御部63は、光源56を消灯するとともに、白基準ローラ24の清掃を促すメッセージを操作パネル27に表示させて、読取時白基準データ取得処理を終了する。また、この際、印刷読取動作自体も中止となる。
【0116】
上述のような読取時白基準データ取得処理により、印刷読取動作中は、規定時間ごとに、画像読取部23による白基準ローラ24の両端部24a,24bの読み取りが行われる(ステップS32〜S34,S25)。また、画像読取部23が白基準ローラ24の両端部24a,24bを読み取るごとに、端部読取データと、事前白基準データとに基づき、内側白基準データが生成される(ステップS27)。そして、最新の内側白基準データの生成後に最初に読取開始されるページから、読取画像データに対するシェーディング補正に使用する内側白基準データとして最新のものが設定される(ステップS28〜S30)。
【0117】
シェーディング補正は、読取時白基準データ取得処理で生成される全幅白基準データ(内側白基準データ、端部読取データ)と、事前基準データ取得処理で生成されて記憶部64に記憶された黒基準データとを用いて行われる。具体的には、読取画像データをD、全幅白基準データをWk、黒基準データをBとすると、シェーディング補正後の読取画像データDsは、下記の式(3)により算出される。
【0118】
Ds=(D−B)×階調値/(Wk−B) …(3)
このような演算により、例えば、読取データが8ビットの階調である場合、シェーディング補正は、
図12に示すように、白基準ローラ24の読取値が最大明度の255に変換されるように行われる。
【0119】
なお、シェーディング補正は、補正精度を高めるためRGBチャネルごとに行うことが望ましい。
【0120】
以上説明したように、印刷装置3では、読取制御部63は、ウェブWに印刷された画像の読み取りの際に、白基準ローラ24の両端部24a,24bを読み取って端部読取データを生成するよう画像読取部23を制御する。この後、読取制御部63は、事前白基準データと端部読取データとに基づき、内側白基準データを生成する。そして、内側白基準データを使用して、画像読取部23がウェブに印刷された画像を読み取って得られた読取画像データに対してシェーディング補正を行う。
【0121】
これにより、画像読取部23と白基準ローラ24との間にウェブWがある状態でも、白基準ローラ24の両端部24a,24bを読み取ることで、光源56の光量変化に応じた白基準データとして内側白基準データを取得できる。このため、シェーディング補正の精度の低下を抑えることができる。
【0122】
また、ウェブWに白基準部材の代用となる領域を設けることはないため、ウェブWの無駄や印刷の生産性の低下を回避できる。
【0123】
したがって、印刷装置3によれば、ウェブWの無駄や印刷の生産性の低下を回避しつつ、ウェブWに印刷された画像を読み取る際のシェーディング補正の精度の低下を抑制できる。
【0124】
また、印刷装置3では、読取制御部63は、規定時間ごとに、画像読取部23による白基準ローラ24の両端部24a,24bの読み取りを行うよう制御し、画像読取部23が白基準ローラ24の両端部24a,24bを読み取って得られた端部読取データと、事前白基準データとに基づき、内側白基準データを生成する。そして、読取制御部63は、最新の内側白基準データの生成後に最初に読取開始されるページから、シェーディング補正に使用する内側白基準データとして最新のものを設定する。
【0125】
これにより、内側白基準データを逐次更新してシェーディング補正の精度を高めつつ、ページの読取途中で内側白基準データが切り替わることによる読取画像データの画質低下を回避できる。
【0126】
また、印刷装置3では、読取制御部63は、白基準ローラ24の両端部24a,24bの少なくともいずれかに汚れがあると判断した場合、白基準ローラ24を回転させて画像読取部23による被読取領域をずらす。その後、読取制御部63は、画像読取部23による白基準ローラ24の両端部24a,24bの読み取りをやり直すよう制御する。これにより、白基準ローラ24の両端部24a,24bの汚れを読み取ることにより内側白基準データが不適切なデータになることを抑え、シェーディング補正の精度の低下をより抑えることができる。
【0127】
なお、上述した実施の形態では、白基準部材として白基準ローラ24を用いたが、これに限らず、板状の白基準部材を用いてもよい。この場合、例えば、板状の白基準部材を副走査方向に動かすことで、画像読取部23による被読取領域をずらすように構成することができる。
【0128】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。