特許第6902914号(P6902914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6902914分析装置および分析装置のラックスロットの中にラックを装填するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902914
(24)【登録日】2021年6月24日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】分析装置および分析装置のラックスロットの中にラックを装填するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20210701BHJP
【FI】
   G01N35/04 H
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-85005(P2017-85005)
(22)【出願日】2017年4月24日
(65)【公開番号】特開2017-198674(P2017-198674A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2020年2月4日
(31)【優先権主張番号】16167270.4
(32)【優先日】2016年4月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(72)【発明者】
【氏名】アルミン・ビルラー
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ・フレイ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・マーティ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ・ペーター
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・トロクスラー
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・サンゲルマノ
【審査官】 倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−189362(JP,A)
【文献】 特開2006−275567(JP,A)
【文献】 特開平08−285859(JP,A)
【文献】 特開平11−106018(JP,A)
【文献】 特開平10−332709(JP,A)
【文献】 特開平09−325151(JP,A)
【文献】 特開2015−045550(JP,A)
【文献】 特開2014−085187(JP,A)
【文献】 特開2001−272408(JP,A)
【文献】 特表2008−534924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置(100)であって、
少なくとも1つのラック(104)を収容するように構成されたラックスロット(102)であって、前記ラック(104)を前記ラックスロット(102)の中に手動で装填することが可能な前方端部(106)と、前記前方端部(106)の反対側であり、前記ラック(104)の全体を前記ラックスロット(102)の中に収容することが可能な後方端部(108)とを備えるラックスロット(102)と、
前記後方端部(108)に配置されたばね装置(112)であって、前記前方端部(106)に向かって付勢力を与えるように構成され、前記付勢力は、前記ラック(104)が完全には前記ラックスロット(102)の中に収容されていない場合に前記ラック(104)を前記前方端部(106)に向けて移動させるように適合されており、前記ばね装置(112)は、前記ラック(104)の全体が前記ラックスロット(102)の中に収容された場合、前記ラック(104)を最終位置に固定するように構成された、ばね装置(112)とを備え
前記ラックスロット(102)が、前記ラック(104)が前記最終位置にある場合に前記ラック(104)に係合するように構成された弾性式のスナップ嵌合装置(114)を備え、
前記ばね装置(112)が、前記ラック(104)を前記スナップ嵌合装置(114)に押しつけることによって前記ラック(104)を前記最終位置に固定するように構成される、分析装置(100)。
【請求項2】
前記ラックスロット(102)が、前記ラック(104)が前記前方端部(106)と前記後方端部(108)との間を前記前方端部(106)から前記後方端部(108)に向かう方向に移動できるように構成される、請求項1に記載の分析装置(100)。
【請求項3】
前記スナップ嵌合装置(114)が前記前方端部(106)に隣接して配置される、請求項1に記載の分析装置(100)。
【請求項4】
前記ラック(104)に設けられた識別子、前記ラック(104)内に設けられた試料、試薬または消耗品に設けられた識別子、ならびに/あるいは前記ラック(104)の小室に設けられた識別子を読み取るためのバーコードリーダ(134)をさらに備える、請求項1または2に記載の分析装置(100)。
【請求項5】
前記ラック(104)が前記最終位置にあるかどうかを検知するように構成されたセンサ(126)をさらに備える、請求項4に記載の分析装置(100)。
【請求項6】
前記センサ(126)が、前記バーコードリーダ(134)の読み取りプロセスを始動させるように構成される、請求項5に記載の分析装置(100)。
【請求項7】
前記センサ(126)が前記後方端部(108)に隣接して配置される、請求項5または6に記載の分析装置(100)。
【請求項8】
前記センサ(126)が、前記ばね装置(112)の圧縮状態を検知することによって前記ラック(104)が前記最終位置にあるかどうかを検知するように構成される、請求項7に記載の分析装置(100)。
【請求項9】
前記センサ(126)が光バリア(128)である、請求項5から8のいずれか一項に記載の分析装置(100)。
【請求項10】
前記ばね装置(112)が、プランジャ(120)とプランジャロッド(122)とを備え、前記プランジャ(120)及び前記プランジャロッド(122)は前記ばね装置(112)と共に可動であり、前記光バリア(128)が、前記プランジャロッド(122)を検知することによって前記ばね装置(112)の圧縮状態を検知するように構成される、請求項9に記載の分析装置(100)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の分析装置(100)のラックスロット(102)の中にラック(104)を装填するための方法であって、
− ラック(104)を前記ラックスロット(102)の前方端部(106)に手動で装填するステップと、
− ばね装置(112)の付勢力に対抗して前記ラック(104)を前記ラックスロット(102)の後方端部(108)まで手動で移動させるステップと、
− 前記ラック(104)の全体が前記ラックスロット(102)内に収容されたとき、前記ばね装置(112)を利用して前記ラック(104)を最終位置に固定するステップとを含む、方法
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の分析装置(100)と、前記分析装置(100)のラックスロット(102)の中にラック(104)を装填するプロセスを管理するように構成されたコンピュータ制御装置(138)とを備えるシステム(136)
【請求項13】
前記ラック(104)の正確な装填および/または不正確な装填を信号で伝えるように構成された信号装置(140)をさらに備える、請求項12に記載のシステム(136)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置および分析装置のラックスロットの中にラックを装填するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の分析装置は、ハイスループットの標本処理を可能にする自動化された試料処理システムに基づいている。そのようなシステムは、試料処理作業のスループットを大幅に増大させることを可能にするだけでなく、分析することができない試料の数を減少させ、手作業を減らし、試料を処理する間の操作者の「放置可能時間」を生産的に利用することをも可能にする。そのような分析装置は通常、ラックを挿入することができるラックスロットを備えており、ラックは、複数の試料容器、例えば試料管などを備える。
【0003】
EP0738541B1は、複数の試料容器を保持するラックを挿入することができる複数のラックスロットを備える分析装置を記載している。
【0004】
ラックが分析装置内に装填される際、バーコードリーダを使用してラックID、位置IDおよび試料IDを識別することが多い。バーコードリーダを始動させる、またはラックをその最終位置に維持するために、固定装置またはセンサが必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第0738541号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのような自動化された分析装置を使用することは処理作業に関する利点を提供する。それでもなお何らかの欠点が依然として存在する。そういった分析装置は、コストがかかりすぎ、またそれらは手動の装填プロセスが頻繁であることに対してロバスト性が欠けている。よってユーザの利便性は十分なものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、分析装置は、少なくとも1つのラックを収容するように構成されたラックスロットであって、ラックをラックスロットの中に手動で装填することが可能な前方端部と、前方端部の反対側であり、ラックの全体をラックスロットの中に収容することが可能な後方端部とを備えるラックスロットと、後方端部に配置されたばね装置であって、前方端部に向かって付勢力を与えるように構成され、付勢力は、ラックが完全にはラックスロットの中に収容されていない場合にラックを前方端部に向けて移動させるように適合されており、ばね装置は、ラックの全体がラックスロットの中に収容された場合、ラックを最終位置に固定するように構成された、ばね装置とを備える。
【0008】
ばね装置がラックをその最終位置に固定するので、ラックの確固たる位置決めが実現される。さらにラックが最終位置になければ、ばね装置はラックを後方に、すなわち前方端部に向かって押すように構成されている。このようにばね装置はラックがラックスロットの中に完全にまたは正確に挿入されても、あるいはそうでなくとも一種の機械的なフィードバックを与える。これにより、ラック内で行われる試料の分析プロセスの早すぎる誤った開始が阻止される。
【0009】
ラックスロットは、ラックが前方端部と後方端部との間を縦方向に移動できるように構成されてよい。よってラックをその最終位置に移動させるには、ばね装置の付勢力に対抗するようにラックを一直線に移動させるだけでよい。これによりラックを不正確に挿入する危険性が最小になる。
【0010】
ラックスロットは、ラックが最終位置にある場合にラックに係合するように構成された弾性式のスナップ嵌合装置を備えてよい。こうしてラックを最終位置に固定するのが容易になる。
【0011】
ばね装置は、ラックをスナップ嵌合装置に押しつけることによってラックを最終位置に固定するように構成されてよい。ばね装置は、ラックをスナップ嵌合装置に押しつけることによって最終位置におけるラックの正確な位置決めを保証する。詳細には、ラックは、分析プロセスにおいてその位置から外れる可能性がないため、位置のずれに起因する分析プロセスのいかなる中断も回避される。
【0012】
スナップ嵌合装置は、ラックの下方面にあるくぼみに係合するように構成されてよい。こうして単純な押し込み嵌合を利用して、最終位置におけるラックの位置決めが保証される。
【0013】
ラックスロットは、ラックが前方端部と後方端部の間を摺動式に移動できる摺動面を備えてよく、スナップ嵌合装置は、この摺動面に配置されてよい。こうしてスナップ嵌合装置は、技術的に可能な限り短い経路に沿ってラックに係合することができる。
【0014】
スナップ嵌合装置は、ラックが最終位置にある場合にスナップ嵌合装置が摺動面から突出することでラックの下方面と係合する突出位置と、ラックがラックスロットの中に装填されているものの最終位置にない場合にスナップ嵌合装置が摺動面から突出しない後退位置との間で可動であってよい。こうして摺動面から突出することによってスナップ嵌合装置による下方面との係合が行われ、摺動面から突出しないことによって係合解除が行われる。詳細には、ラックが最終位置になければ、ラックの下方面がスナップ嵌合装置を後退位置に下方に押し下げるため、スナップ嵌合装置が、ラックをラックスロットに挿入したりその中に装填したりする作業を邪魔することはない。
【0015】
スナップ嵌合装置は、前方端部に隣接して配置されてよい。前方端部と後方端部の間の距離は少なくともラックの長さに相当するため、ラックは、その長さのほぼ全体でばね装置によってスナップ嵌合装置に押しつけられる。
【0016】
分析装置はさらに、ラック識別子、位置識別子、ラック内に設けられた試料、試薬または消耗品の識別子、ならびに/あるいはラックの小室の識別子を読み取るためのバーコードリーダを備えてよい。よって分析装置は、ラックやその中に保管される試料などに関してバーコードが使用されるのが一般的であるため、バーコードリーダを利用して直接または間接的にラックに関連する種々の情報を得るように構成される。
【0017】
分析装置はさらに、ラックが最終位置にあるかどうかを検知するように構成されたセンサを備えてよい。そのような構造によって、ラックが完全かつ正確にラックスロットに挿入された場合のみ任意の分析プロセスを開始することが可能になる。
【0018】
センサは、バーコードリーダの読み取りプロセスを始動させるように構成されてよい。こうしてバーコードリーダは、センサがラックが完全かつ正確にラックスロットに挿入されたことを示した場合のみ作動される。これによりいかなる潜在的な読み取りエラーも回避される。さらにバーコードリーダが恒常的に作動されるのでなければ、エネルギーを節減することもできる。
【0019】
センサは後方端部に隣接して配置されてよい。よってセンサは、検知プロセスを容易にする最終位置に近接している。
【0020】
センサは、ばね装置の圧縮状態を検知することによってラックが最終位置にあるかどうかを検知するように構成されてよい。よってばね装置は、ばね装置が圧縮された場合、ラックの最終位置を示す。そのようなばねの圧縮状態は、センサにとって検知するのが容易である。
【0021】
センサは光バリアであってよい。よって十分に確立された技術装置を利用してラックが最終位置にあるか否かを検知することが可能であり、これによりセンサを設置し易くなる。
【0022】
ばね装置は、ばね装置と共に可動であるプランジャとプランジャロッドとを備えてよい。光バリアは、プランジャロッドを検知することによって、ばね装置の圧縮状態を検知するように構成されてよい。よってセンサは、プランジャロッドが検知されたかどうかによってラックが最終位置にあるか否かを示すことが可能である。
【0023】
光バリアは、発光体と、受光体とを備えてよい。発光体は、受光体に向かって光路に光を放出するように構成されてよい。光バリアは、受光体が発光体から光を受け取ることができない場合、プランジャロッドを検知するように構成されてよい。よって受光体が受光しない場合、センサは、ラックが最終位置にあることを示す。したがって単純な構造を利用して、ラックのラックスロットへの正確かつ完全な挿入を検知することができる。
【0024】
プランジャロッドは、光路を遮断できるように可動であってよい。よって光路の遮断はラックの最終位置を示し、プランジャロッドが光路を露出させる場合は、これはラックが完全にはラックスロットの中に収容されていないことを示す。
【0025】
光バリアは、ラックが最終位置にあることを光バリアが検知した場合、バーコードリーダの読み取りプロセスを始動させるように構成されてよい。よってバーコードリーダは、ラックが完全かつ正確にラックスロットに挿入されたことをセンサが示す場合のみ作動される。これによりいかなる潜在的な読み取りエラーも回避される。さらに、バーコードリーダが恒常的に作動されるのでない場合には、エネルギーを節減することもできる。したがって、分析装置のラックスロット内へのユーザの操作性が高いラックの装填が実現される。
【0026】
本発明によると、分析装置のラックスロットの中にラックを装填するための方法は、
− ラックをラックスロットの前方端部に手動で装填するステップと、
− ばね装置の付勢力に対抗してラックをラックスロットの後方端部まで手動で移動させるステップと、
− ラックの全体がラックスロット内に収容されたとき、ばね装置を利用してラックを最終位置に固定するステップとを含む。
【0027】
こうして、ユーザの操作性が高く確固たる装填の構想が実現される。
ラックは、ラックが最終位置にあるとき、弾性式のスナップ嵌合装置によって係合されてよい。こうして最終位置におけるラックの固定が容易になる。
【0028】
ばね装置は、ラックをスナップ嵌合装置に押しつけることによって、ラックを最終位置に固定することができる。ラックをスナップ嵌合装置に押しつけることによって、ばね装置は、最終位置におけるラックの正確な位置決めを保証する。詳細には、ラックは、分析プロセス中にその位置から外れる可能性がないため、位置のずれに起因する分析プロセスのいかなる中断も回避される。
【0029】
スナップ嵌合装置は、ラックの下方面にあるくぼみと係合することができる。こうして単純な押し込み嵌合を利用してラックの最終位置における位置決めが保証される。
【0030】
ラックがラックスロット内の最終位置にあるとき、スナップ嵌合装置はラックスロットの摺動面から突出することでラックの下方面と係合することができ、ラックがラックスロットの中に装填されているものの最終位置にない場合、スナップ嵌合装置は摺動面から突出しない。こうして摺動面から突出することによってスナップ嵌合装置による下方面との係合が行われ、摺動面から突出しないことによって係合解除が行われる。詳細には、ラックが最終位置になければ、ラックの下方面がスナップ嵌合装置を後退位置に下方に押し下げるため、スナップ嵌合装置が、ラックをラックスロットに挿入したりその中に装填する作業を邪魔することはない。
【0031】
本発明の方法はまた、バーコードリーダを利用して、ラック識別子、位置識別子、ラック内に設けられた試料、試薬または消耗品の識別子、ならびに/あるいはラックの小室の識別子を読み取るステップを含んでよい。よって分析装置は、ラック、中に保管される試料などに対してバーコードが使用されるのが一般的であるため、バーコードリーダを利用して直接または間接的にラックに関連する種々の情報を得るように構成される。
【0032】
方法はさらに、センサを利用してラックが最終位置にあるかどうかを検知するステップを含んでよい。こうして、この方法によって、ラックが完全かつ正確にラックスロットに挿入された場合のみ任意の分析プロセスを開始することが可能になる。
【0033】
センサは、バーコードリーダの読み取りプロセスを始動させることができる。よってバーコードリーダは、センサが、ラックが完全かつ正確にラックスロットに挿入されたことを示した場合のみ作動される。これによりいかなる潜在的な読み取りエラーも回避される。さらにバーコードリーダが恒常的に作動されるのでない場合には、エネルギーを節減することもできる。
【0034】
センサは、ばね装置の圧縮状態を検知することによってラックが最終位置にあるかどうかを検知することができる。よってばね装置は、ばね装置が圧縮された場合には、ラックの最終位置を示す。そのようなばねの圧縮状態は、センサにとって検知するのが容易である。
【0035】
ばね装置は、ばね装置と共に可動であるプランジャとプランジャロッドとを備えてよく、センサは、プランジャロッドを検知することによって、ばね装置の圧縮状態を検知することができる。こうしてセンサは、プランジャロッドが検知されたか否かによってラックが最終位置にあるか否かを示すことが可能である。
【0036】
センサは光バリアであってよく、発光体と、受光体とを備えてよく、発光体は、受光体に向かって光路に光を放出することができ、光バリアは、受光体が発光体から光を受け取らない場合、プランジャロッドを検知することができる。したがって、受光体が受光しない場合、センサは、ラックが最終位置にあることを示す。したがって単純なやり方でラックのラックスロットへの正確かつ完全な挿入を検知することができる。
【0037】
ラックが最終位置にあるときに光路が遮断されるように、プランジャロッドを移動させることができる。よって光路の遮断はラックの最終位置を示しており、プランジャロッドが光路を露出させる場合、これはラックが完全にはラックスロットの中に収容されていないことを示す。
【0038】
光バリアは、ラックが最終位置にあることを光バリアが検知した場合、バーコードリーダの読み取りプロセスを始動させることができる。よってバーコードリーダは、センサがラックが完全かつ正確にラックスロットに挿入されたことを示す場合のみ作動される。これによりいかなる潜在的な読み取りエラーも回避される。さらに、バーコードリーダが恒常的に作動されるのでない場合には、エネルギーを節減することもできる。したがって、分析装置のラックスロット内へのユーザの操作性が高いラックの装填構想が実現される。
【0039】
本発明によると、システムは、上記に記載した分析装置と、ラックを分析装置のラックスロットの中に装填するプロセスを管理するように構成されたコンピュータ制御装置とを備える。したがって、ラックの装填および取り出し作業を管理するためのソフトウェアベースの方法が提供される。
【0040】
コンピュータ制御装置は、ラックが最終位置にあるかどうかを検知するように構成されてよい。こうしてユーザの操作性が高められる。
【0041】
分析装置は、ラックが最終位置にあるかどうかを検知するように構成されたセンサを備えてよく、センサは、コンピュータ制御装置に接続されてよい。こうして装填プロセスのコンピュータベースの管理が実現され、ユーザは、正確な装填をチェックする必要がなくなる。
【0042】
分析装置は、ラック識別子、位置識別子、ラック内に設けられた試料、試薬または消耗品の識別子、ならびに/あるいはラックの小室の識別子をバーコードリーダによって読み取るためのバーコードリーダを備えてよく、バーコードリーダは、コンピュータ制御装置に接続されてよい。こうして分析装置は、バーコードリーダおよびコンピュータ制御装置を利用して多くの情報を得ることができる。詳細には、コンピュータ制御装置は、バーコードリーダによって与えられた情報を処理することができる。
【0043】
センサは、ラックが最終位置にある場合、バーコードリーダを始動させるように構成されてよい。よってバーコードリーダは、センサがラックが完全かつ正確にラックスロットに挿入されたことを示す場合のみ作動される。これによりいかなる潜在的な読み取りエラーも回避される。さらにバーコードリーダが恒常的に作動されるのでない場合には、エネルギーを節減することもできる。
【0044】
システムはさらに、ラックの正確な装填および/または不正確な装填を信号で伝えるように構成された信号装置を備えてよい。こうしてシステムは、装填プロセスのフィードバックをユーザに提供することができる。
【0045】
したがって、例示の実施形態は、装填および取り出し作業全体がソフトウェアによって管理されることを規定している。ソフトウェアは、スキャンした結果と予測した結果を比較することによってラックが正確に装填されたかどうかをチェックする。ソフトウェアは読み取ったバーコードをバッファに入れ、端部位置に到達した場合にその内容の完全性を比較する。光バリアの信号は、上記に挙げた完全性のチェックを開始するために規定された間隔にわたって安定している必要がある。これにより、装填作業のロバスト性が高まるため、ユーザの操作性が向上する。完全性のチェックは端部においてのみ行われるため、ラックの移動は問題ではなく、すなわちラックが前方方向に装填されてしまった場合、装填作業において後ろ向きに移動させ、端部位置に到達するまで再び前向きに移動される。ソフトウェアはさらに、光バリアが対応するラックスロット識別子と直接関連付けられる際、光バリアのフィードバックを分析することによって、正しいスロット、すなわち予想されるスロットまたは目的とするスロットが装填されたかどうかをチェックすることもできる。
【0046】
装填プロセスが無事に完了した後、光バリアが非作動状態になってしまった場合、これはラックが持ち上げられ、そのスナップ嵌合位置から解放されたことを意味しており、装填プロセス全体が無効になり、ユーザはラックを出力手段の上に装填し直すように要求され得る。万一データバッファの完全性のチェックが失敗であった場合、例えば試料バーコードが正確に配置されていない、またはユーザがラックを移動させるのが速すぎたためにバーコードを読み取れないことに起因してデータを喪失した場合、読み取りプロセスは拒絶され、タッチスクリーンまたは他の出力手段を介してユーザに通知される。ひとたびラックスロットが装填され、分析装置を閉鎖するために入力手段を介してユーザが分析装置のカバーの安全ロックを始動させると、バーコードスキャナの読み取り作業は終わりになる。
【0047】
記載した構想は、単一のラックスロットに対して1つのバーコードスキャナを想定している。しかしながら1つのバーコードスキャナが多数のラックスロットを読み取る構想を利用することも可能である。バーコードスキャナの技術的特性に基づいて、および構成要素の配置に応じて、バーコードスキャナの焦点を対応するラックスロット読み取り距離に対して調節するために、各々のラックスロットの最前部に位置決めされたラックスロットごとに追加のセンサが必要とされる場合もある。このことから、ラックスロット識別子は、ラックが読み取られる前に識別されるべきである。
【0048】
本発明の所見を概説すると、以下の実施形態が開示される。
実施形態1:分析装置であって、少なくとも1つのラックを収容するように構成されたラックスロットであって、ラックをラックスロットの中に手動で装填することが可能な前方端部と、前方端部の反対側であり、ラックの全体をラックスロットの中に収容することが可能な後方端部とを備えるラックスロットと、後方端部に配置されたばね装置であって、前方端部に向かって付勢力を与えるように構成され、付勢力は、ラックが完全にはラックスロットの中に収容されない場合にラックを前方端部に向けて移動させるように適合されており、ばね装置は、ラックの全体がラックスロットの中に収容された場合、ラックを最終位置に固定するように構成された、ばね装置とを備える分析装置。
【0049】
実施形態2:ラックスロットが、ラックが前方端部と後方端部との間を縦方向に移動できるように構成される、実施形態1に記載の分析装置。
【0050】
実施形態3:ラックスロットが、ラックが最終位置にある場合にラックに係合するように構成された弾性式のスナップ嵌合装置を備える、実施形態1または2に記載の分析装置。
【0051】
実施形態4:ばね装置が、ラックをスナップ嵌合装置に押しつけることによってラックを最終位置に固定するように構成される、実施形態3に記載の分析装置。
【0052】
実施形態5:スナップ嵌合装置が、ラックの下方面にあるくぼみと係合するように構成される、実施形態3または4に記載の分析装置。
【0053】
実施形態6:ラックスロットが、ラックが前方端部と後方端部の間を摺動式に移動できる摺動面を備え、スナップ嵌合装置はこの摺動面に配置される、実施形態5に記載の分析装置。
【0054】
実施形態7:スナップ嵌合装置が、ラックが最終位置にある場合にスナップ嵌合装置が摺動面から突出することでラックの下方面と係合する突出位置と、ラックがラックスロットの中に装填されているものの最終位置にない場合にスナップ嵌合装置が摺動面から突出しない後退位置との間で可動である、実施形態6に記載の分析装置。
【0055】
実施形態8:スナップ嵌合装置が前方端部に隣接して配置される、実施形態4から7のいずれか1つに記載の分析装置。
【0056】
実施形態9:ラック識別子、位置識別子、ラック内に設けられた試料、試薬または消耗品の識別子、ならびに/あるいはラックの小室の識別子を読み取るためのバーコードリーダをさらに備える、実施形態1から8のいずれか1つに記載の分析装置。
【0057】
実施形態10:ラックが最終位置にあるかどうかを検知するように構成されたセンサをさらに備える、実施形態9に記載の分析装置。
【0058】
実施形態11:センサがバーコードリーダの読み取りプロセスを始動させるように構成される、実施形態10に記載の分析装置。
【0059】
実施形態12:センサが後方端部に隣接して配置される、実施形態10または11に記載の分析装置。
【0060】
実施形態13:センサが、ばね装置の圧縮状態を検知することによってラックが最終位置にあるかどうかを検知するように構成される、実施形態12に記載の分析装置。
【0061】
実施形態14:センサが光バリアである、実施形態10から13に記載の分析装置。
【0062】
実施形態15:ばね装置が、ばね装置と共に可動であるプランジャとプランジャロッドとを備え、光バリアは、プランジャロッドを検知することによってばね装置の圧縮状態を検知するように構成される、実施形態14に記載の分析装置。
【0063】
実施形態16:光バリアが、発光体と、受光体とを備え、発光体は、受光体に向かって光路に光を放出するように構成され、光バリアは、受光体が発光体から光を受け取ることができない場合、プランジャロッドを検知するように構成される、実施形態15に記載の分析装置。
【0064】
実施形態17:プランジャロッドが、光路を遮断できるように可動である、実施形態16に記載の分析装置。
【0065】
実施形態18:光バリアは、ラックが最終位置にあることを光バリアが検知した場合、バーコードリーダの読み取りプロセスを始動させるように構成される、実施形態11から17のいずれか1つに記載の分析装置。
【0066】
実施形態19:
− ラックをラックスロットの前方端部に手動で装填するステップと、
− ばね装置の付勢力に対抗してラックをラックスロットの後方端部まで手動で移動させるステップと、
− ラックの全体がラックスロット内に収容されたとき、ばね装置を利用してラックを最終位置に固定するステップとを含む、実施形態1から18のいずれか1つに記載の分析装置のラックスロットの中にラックを装填するための方法。
【0067】
実施形態20:ラックが最終位置にあるとき、ラックが弾性のスナップ嵌合装置によって係合される、実施形態19に記載の方法。
【0068】
実施形態21:ばね装置が、ラックをスナップ嵌合装置に押しつけることによってラックを最終位置に固定する、実施形態20に記載の方法。
【0069】
実施形態22:スナップ嵌合装置がラックの下方面におけるくぼみと係合する、実施形態20または21に記載の方法。
【0070】
実施形態23:ラックがラックスロット内の最終位置にあるとき、スナップ嵌合装置がラックスロットの摺動面から突出することでラックの下方面と係合し、ラックがラックスロットの中に装填されているものの最終位置にないとき、スナップ嵌合装置が摺動面から突出しない、実施形態22に記載の方法。
【0071】
実施形態24:バーコードリーダを利用して、ラック識別子、位置識別子、ラック内に設けられた試料、試薬または消耗品の識別子、ならびに/あるいはラックの小室の識別子を読み取るステップをさらに含む、実施形態20から23のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
実施形態25:センサを利用してラックが最終位置にあるかどうかを検知するステップをさらに含む、実施形態24に記載の方法。
【0073】
実施形態26:センサがバーコードリーダの読み取りプロセスを始動させる、実施形態25に記載の方法。
【0074】
実施形態27:センサが、ばね装置の圧縮状態を検知することによってラックが最終位置にあるかどうかを検知する、実施形態26に記載の方法。
【0075】
実施形態28:ばね装置が、ばね装置と共に可動であるプランジャとプランジャロッドとを備え、光バリアが、プランジャロッドを検知することによってばね装置の圧縮状態を検知する、実施形態27に記載の方法。
【0076】
実施形態29:センサが光バリアであり、発光体と、受光体とを備え、発光体が、受光体に向かって光路に光を放出し、光バリアは、受光体が発光体から光を受け取らない場合、プランジャロッドを検知する、実施形態28に記載の方法。
【0077】
実施形態30:ラックが最終位置にあるとき光路が遮断されるようにプランジャロッドが移動される、実施形態29に記載の方法。
【0078】
実施形態31:センサが、ラックが最終位置にあることをセンサが検知した場合、バーコードリーダの読み取りプロセスを始動させる、実施形態25から30のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
実施形態32:実施形態1から18のいずれか1つに記載の分析装置と、分析装置のラックスロットの中にラックを装填するプロセスを管理するように構成されたコンピュータ制御装置とを備えるシステム。
【0080】
実施形態33:コンピュータ制御装置が、ラックが最終位置にあるかどうかを検知するように構成される、実施形態32に記載のシステム。
【0081】
実施形態34:ラックの正確なおよび/または不正確な装填を信号で伝えるように構成された信号装置をさらに備え、分析装置は、ラックが最終位置にあるかどうかを検知するように構成されたセンサを備え、センサがコンピュータ制御装置に接続される、実施形態33に記載のシステム。
【0082】
実施形態35:分析装置が、バーコードリーダを利用して、ラック識別子、位置識別子、ラック内に設けられた試料、試薬または消耗品の識別子、ならびに/あるいはラックの小室の識別子を読み取るためのバーコードリーダを備え、バーコードリーダがコンピュータ制御装置に接続される、実施形態34に記載のシステム。
【0083】
実施形態36:センサが、ラックが最終位置にある場合にバーコードリーダを始動させるように構成される、実施形態35に記載のシステム。
【0084】
実施形態37:ラックの正確なおよび/または不正確な装填を信号で伝えるように構成された信号装置をさらに備える、実施形態32から36のいずれか1つに記載のシステム。
【0085】
本発明のさらなる特徴および実施形態が、好ましくは従属クレームと併せて次の実施形態の記載においてより詳細に開示される。その中で、それぞれの特徴は別々のやり方でならびに当業者が理解し得るような任意の実現可能な組合せにおいて実現される。実施形態は図面に概略的に示されている。図面では、同一の参照番号は、全く同一の要素または機能的に同一の要素を指している。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1】分析装置の斜視図である。
図2】分析装置のラックスロットの側面図である。
図3】ラックスロットの別の側面図である。
図4図3の細部Aの拡大図である。
図5図3の細部Bの拡大図である。
図6図3の細部Bの別の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
図1は、分析装置100の拡大図を示している。分析装置100は、少なくとも1つのラックスロット102を備える。ラックスロット102は、少なくとも1つのラック104を収容するように構成されている。基本的にラック104は、EP0738541B1に記載されるように設計されてよく、ラックの構造に関するその内容は参照により本明細書に組み込まれている。ラックスロット104は、ラック104を手動でラックスロット102の中に装填することが可能な前方端部106と、前方端部106の反対側であり、ラック104の全体をラックスロット102の中に収容することが可能な後方端部108とを備える。ラックスロット102は、ラック104が前方端部106と後方端部108の間を縦方向に移動できるように構成される。言い換えると、ラックスロット102は、前方端部106から後方端部108まで縦方向に延在している。よってラックスロット102は、長さが幅よりも大幅に大きい縦方向の形状を有する。この目的のために、ラックスロット102は、ラック104が前方端部106と後方端部108の間で摺動式に移動できる摺動面110を備える。
【0088】
図2は、ラックスロット102の側面図を示す。図3は、ラックスロット102の別の側面図を示す。詳細には、図2は、前方端部106に配置されたためにラック104が完全にはラックスロット102の中に収容されていないラック104を示す。図3は、ラック104の全体がラックスロット102の中に収容された後方端部108におけるラック104を示す。言い換えると、図3は、ラック104がラックスロット102の中に完全に配置されており、その端部の一端が後方端部108に位置していることを示す。
【0089】
分析装置100はさらにばね装置112を備える。ばね装置112は、後方端部108に配置される。ばね装置112は、前方端部106に向かって付勢力を与えるように構成される。この付勢力は、ラック104が完全にはラックスロット102の中に収容されていない場合、ラック104を前方端部106に向かって移動させるように適合されている。よってこの付勢力は、ラック104の重量の力および摺動面110に沿ったラック104の摩擦力に打ち勝つようにばね装置112の適切な材料およびばね定数を選択することによって調節される。ばね装置112はさらに、以下でさらに詳細に記載するように、ラック104の全体がラックスロット102の中に収容された場合、ラック104を最終位置に固定するように構成されている。
【0090】
図4は、図3の細部Aの拡大図を示す。ラックスロット102は、弾性式のスナップ嵌合装置114を備える。スナップ嵌合装置114は、ラック104が最終位置にある場合にラック104と係合するように構成される。図4に示されるように、スナップ嵌合装置114は、ラック104の下方面118にあるくぼみ116と係合するように構成される。この目的のために、スナップ嵌合装置114は、ラック104が最終位置にある場合、スナップ嵌合装置114が摺動面110から突出することでラック104の下方面118と係合する突出位置と、ラック104がラックスロット102の中に装填されているものの最終位置にない場合、スナップ嵌合装置114が摺動面110から突出しない後退位置との間で可動である。スナップ嵌合装置114は、前方端部106に隣接して配置される。ばね装置112は、ラック104をスナップ嵌合装置114に押しつけることによってラック104を最終位置に固定するように構成されている。
【0091】
図5は、図3の細部Bの拡大図を示す。図6は、図3の細部Bの別の拡大図を示す。詳細には、図5は、ラック104が完全にはラックスロット102の中に収容されていないときの伸張位置にあるばね装置112を示しており、図6は、ラック104がラックスロット102内の最終位置にあるときのばね装置112を示している。図5および図6に示されるように、ばね装置112はプランジャ120と、プランジャロッド122とを備える。プランジャ120およびプランジャロッド122は一体式に形成されてよい。プランジャ120およびプランジャロッド122は、ばね装置112と共に可動である。この目的のために、プランジャ120およびプランジャロッド122は、ばね装置112に接続または固定されてよい。ラックスロット102は、プランジャ120の下に、プランジャ120の前方端部106に向かう過度の移動を阻止するように構成されたねじなどのストッパー要素124を備える。
【0092】
分析装置100はさらに、ラック104が最終位置にあるかどうかを検知するように構成されたセンサ126を備える。センサ126は、後方端部108に隣接して配置される。詳細には、センサ126は、ばね装置112の圧縮状態を検知することによってラック104が最終位置にあるかどうかを検知するように構成される。例えばセンサ126は光バリア128である。光バリア128は、プランジャロッド122を検知することによってばね装置112の圧縮状態を検知するように構成される。この目的のために、光バリア128は、発光体130と、受光体132とを備える。発光体130は、受光体132に向かって光路に光を放出するように構成される。図5および図6の実例に関して、光路は、描画面に対して垂直である。光バリア128は、受光体132が発光体130から光を受け取ることができない場合にプランジャロッド122を検知するように構成される。よってプランジャロッド122は、光路を遮断できるように可動である。詳細には、プランジャロッド122は、発光体130と受光体132の間の空隙を通って移動されるように構成される。言い換えると、受光体132が発光体130から放出された光を受け取る場合、それにより光路が遮断されないため光バリア128がプランジャロッド122を検知することはない。それとは反対に、受光体132が発光体130から放出された光を受け取らない場合、光バリア128はプランジャロッド122を検知し、それにより光路が遮断される。あるいはプランジャロッド122は、光が通過することができるスロットなどの開口部を備える場合もある。プランジャロッド122に開口部が配置されることで、発光体130から放出された光は、ばね装置112が圧縮状態にあるときは開口部を通過し、受光体132まで伝わることができるが、ばね装置112が伸張状態にあるときは開口部を通過することができない。
【0093】
分析装置100はさらにバーコードリーダ134を備える。バーコードリーダ134は、ラック識別子、位置識別子、ラック104内に設けられた試料、試薬または消耗品の識別子ならびに/あるいはラック104の小室の識別子を読み取るように機能する。光バリア128は、バーコードリーダ134の読み取りプロセスを始動させるように構成されており、光バリア128は、ラック104が最終位置にあることを検知する。言い換えると、バーコードリーダ134は、ラック104がラックスロット102の中に正しくまたは全体が収容された場合に限って作動される。
【0094】
これ以後、分析装置100のラックスロット102の中にラック104を装填するための方法を記載する。この方法を始める際、ユーザは、タッチスクリーンなどの分析装置100の入力手段によって装填プロセスを開始する。これにより少なくとも1つのラックスロット102のためのカバーの安全ロックが開放する(詳細には示されない)。次いで、ラック104が、例えば分析装置100のユーザによってラックスロット102の前方端部106に手動で装填される。言い換えると、ラック104は、ラック104の一端がラックスロット102の後方端部108に向いている状態で、前方端部106において摺動面110上に置かれる。よって、ラック102はその下方面118の一部分のみによって摺動面110上に置かれる。このステップは図2に示されている。
【0095】
この状態ではスナップ嵌合装置114は摺動面110から突出していないが、ラック104の下方面118によって下方に押圧されている。よってスナップ嵌合装置114はくぼみ116と係合しない。さらに図5に示されるように、ばね装置112は伸張状態にあるため、プランジャロッド122は発光体130から受光体132までの光路を遮断しない。よって受光体132は、発光体130から放出された光を受け取る。したがってバーコードリーダ134は始動されない。その後、ラック104が、ばね装置112の付勢力に対抗してラックスロット102の後方端部108まで手動で移動される。言い換えると、分析装置100のユーザは、ラック104を後方端部108まで移動させるために、ばね装置112の付勢力を上回る力でラック104を移動させる必要がある。これによりばね装置112が圧縮される。
【0096】
ラック104の全体がラックスロット102の中に収容された場合、ラック104は、ばね装置112を利用して最終位置に固定される。詳細には、ばね装置112は、このとき摺動面110から突出しておりくぼみ116と係合する弾性式のスナップ嵌合装置114にラック104を押しつける。この状態が図3に示される。ラック104が完全にはラックスロット102の中に収容されていない場合、ばね装置112が付勢力を利用してラック104を前方端部106に向かって押すことで、分析装置100のユーザは、ラック104がラックスロット102の中に正確に挿入されていないことの物理的なフィードバックを受け取ることに留意されたい。
【0097】
ラック104が最終位置にある場合、プランジャロッド122がばね装置112と一体式に移動され、発光体130から受光体132までの光路を遮断する。よって受光体132が発光体130から放出された光を受け取ることはなく、光バリア128がばね装置112の圧縮状態を検知する。それに応じてセンサ126が、ラック104がラックスロット102の中に正しく挿入されたことを示す信号を出力する。これによりバーコードリーダ134が始動され、その読み取りプロセスが開始される。こうしてバーコードリーダ134が、ラック識別子、位置識別子、ラック104内に設けられた試料、試薬または消耗品の識別子ならびに/あるいはラック104の小室の識別子を読み取る。ラック104を取り出すには、ユーザは、ラック104全体を持ち上げてスナップ嵌合装置114からそれを解放する必要がある。ばね装置112が伸張し、ラックを前方端部106に向けて押すことで、ユーザはラックをラックスロット102から取り外すことができる。ひとたびスナップ嵌合が解除されると、光バリア128は非作動状態になる。
【0098】
これ以後、別の任意選択の実施形態を記載する。この別の実施形態は、分析装置100と、分析装置100のラックスロット102の中にラック104を装填するプロセスを管理するように構成されたコンピュータ制御装置138とを備えるシステム136に関する。詳細には、コンピュータ制御装置138は、ラック104が最終位置にあるかどうかを検知するように構成される。センサ126は、コンピュータ制御装置138に接続されてよい。さらに、バーコードリーダ134もコンピュータ制御装置138に接続されてよい。システム136はさらに、ラック104の正確な装填および/または不正確な装填を信号で知らせるように構成された信号装置140を備えてよい。信号装置140は、ユーザに音によるフィードバックを与える音響装置であってよい。あるいは信号装置140は、分析装置100の操作者に視覚的なフィードバックを与えるタッチスクリーンなどの視覚装置である場合もある。ラックスロット102の中にラック104を装填するための方法ステップは、先に記載したものと同一である。
【符号の説明】
【0099】
100 分析装置
102 ラックスロット
104 ラック
106 前方端部
108 後方端部
110 摺動面
112 ばね装置
114 スナップ嵌合装置
116 くぼみ
118 下方面
120 プランジャ
122 プランジャロッド
124 ストッパー要素
126 センサ
128 光バリア
130 発光体
132 受光体
134 バーコードリーダ
136 システム
138 コンピュータ制御装置
140 信号装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6