(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
天然ガスまたはLPガスの何れか一方の燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスを燃焼させるバーナーと、前記燃料ガスを前記バーナーに供給するガスノズルと、前記燃焼用空気を前記バーナーに供給する燃焼ファンと、前記ガスノズルよりも上流側に設けられて、前記燃料ガスの流量を調整する流量調整弁と、前記燃焼ファンの動作を制御すると共に、前記燃焼用空気に対する前記燃料ガスの流量比が所定の標準流量比となるように前記流量調整弁の動作を制御する制御部とを備えるガス燃焼装置において、
前記制御部は、
前記ガス燃焼装置のユーザーによって所定の設定操作が行われると、前記燃料ガスが前記LPガスであるものとして、前記燃焼用空気に対する前記燃料ガスの流量比が、前記標準流量比の6割以下に設定された所定の緊急時流量比となるように、前記燃料ガスの流量を抑制し、前記ガス燃焼装置のユーザーによって所定の解除操作が行われると、前記燃料ガスが前記天然ガスであるものとして、前記燃料ガスの流量の抑制を解除するガス流量抑制部を備えており、
前記ガスノズルに向けて前記燃料ガスが供給されるガス配管には、
前記燃料ガスのガス流量を6割以下の所定比率に減少させるガス絞り部と、
前記ガス絞り部を迂回する迂回配管と、
前記燃料ガスが前記迂回配管を流れる開放状態と、前記迂回配管が閉鎖された閉鎖状態とに切り換える切換バルブと
が設けられており、
前記切換バルブは、前記ガス燃焼装置のユーザーの設定によって、前記開放状態または前記閉鎖状態の何れかに切換可能となっている
ことを特徴とするガス燃焼装置。
【背景技術】
【0002】
給湯機や一部の暖房機などに内蔵されて、燃料ガスを燃焼させるガス燃焼装置が知られている。このガス燃焼装置は、燃料ガスと燃焼用空気とを適切な割合でバーナーに供給することによって燃料ガスを燃焼させており、その時に発生する燃焼熱を、給湯や暖房などの各種の用途に利用する。また、ガス燃焼装置で燃焼させる燃料ガスとしては、従来は、ガスボンベに充填して配送されるいわゆるLPガス(液化石油ガス)が多く用いられていたが、ガス会社によるガス配管網が整備されるに従って、いわゆる「都市ガス12A」あるいは「都市ガス13A」と呼ばれる天然ガスに切り換えられつつある。その結果、今日では、都市部ではもっぱら、これらの天然ガスが用いられるようになっているが、地方では、依然としてLPガスが用いられている地域も残っている。
【0003】
ここで、LPガスと天然ガスとを比較すると、同じ体積の燃料ガスが燃えたときの発生熱量は、LPガスの方が2倍強も大きい。従って、燃料ガスとしてLPガスを用いると、天然ガスを用いた時の2倍強も火力が強くなる。そこで、LPガス用のガス燃焼装置では、バーナーに燃料ガスを供給するガスノズルの開口面積を、天然ガス用のガス燃焼装置の場合の6割以下(より望ましくは半分以下)の開口面積に絞っている。こうすることで、ガス燃焼装置のユーザーは燃料ガスとして、LPガスまたは天然ガスの何れのガス種が用いられているかを意識することなく、同じようにガス燃焼装置を使用することができる。また、これに伴ってガス燃焼装置のメーカーは、同じタイプのガス燃焼装置であっても、天然ガス用のガスノズルを搭載した都市部向けの製品と、LPガス用のガスノズルを搭載した地方向けの製品の二種類の製品を製造しているのが実状である。
【0004】
また、ガス燃焼装置の火力調整が可能なように、ガスノズルの上流側には、燃料ガスの流量を調整する流量調整弁が搭載されており、流量調整弁の開度を変更することによって、ガスノズルから吹き出す燃料ガスの流量を調整可能となっている。更に、燃料ガスと燃焼用空気とは適切な比率で燃焼させる必要がある。加えて、この適切な比率は、LPガスや天然ガスなどのガス種によって異なっている。そこで、バーナーに燃焼用空気を供給する燃焼ファンの回転速度と、流量調整弁の開度との対応関係を、ガス種毎に対応付けて記憶しておき、この対応関係に基づいて流量調整弁の開度と燃焼ファン回転速度とを連動させる技術も提案されている。こうすれば、燃料ガスと燃焼用空気とを、ガス種に応じた適切な比率でバーナーに供給して燃焼させることが可能となる(特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の技術では、都市部で地震などの災害が発生すると、長期に亘ってガス燃焼装置が使えなくなってしまう可能性があるという問題があった。すなわち、都市部では、地震などの大きな災害が発生するとガス配管網が寸断されてしまい、いわゆる都市ガス12Aや都市ガス13Aなどの天然ガスが長期に亘って供給されない事態が発生し得る。もちろん、ガスボンベに充填して運搬可能なLPガスであれば、比較的短い期間で供給を再開することも可能であるが、上述したように天然ガス用のガス燃焼装置とLPガス用のガス燃焼装置とは、ガスノズルの開口面積が大幅に違うので、天然ガス用のガス燃焼装置では、LPガスを燃焼させることができない。また、LPガスが使えるようにガス燃焼装置の部品を交換しようとしても、ガス配管網が寸断されるような大きな災害が発生した後では部品の入手も容易ではない。その結果、都市部で地震などの災害が発生すると、長期に亘ってガス燃焼装置が使えなくなる可能性があった。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題に対応してなされたものであり、天然ガスが用いられている地域で大きな災害が発生した場合でも、比較的速やかに使用を再開することが可能なガス燃焼装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明のガス燃焼装置は次の構成を採用した。すなわち、
天然ガスまたはLPガスの何れか一方の燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスを燃焼させるバーナーと、前記燃料ガスを前記バーナーに供給するガスノズルと、前記燃焼用空気を前記バーナーに供給する燃焼ファンと、前記ガスノズルよりも上流側に設けられて、前記燃料ガスの流量を調整する流量調整弁と、前記燃焼ファンの動作を制御すると共に、前記燃焼用空気に対する前記燃料ガスの流量比が所定の標準流量比となるように前記流量調整弁の動作を制御する制御部とを備えるガス燃焼装置において、
前記制御部は、
前記ガス燃焼装置のユーザーによって所定の設定操作が行われると、前記燃料ガスが前記LPガスであるものとして、前記燃焼用空気に対する前記燃料ガスの流量比が、前記標準流量比の6割以下に設定された所定の緊急時流量比となるように、前記燃料ガスの流量を抑制し、前記ガス燃焼装置のユーザーによって所定の解除操作が行われると、前記燃料ガスが前記天然ガスであるものとして、前記燃料ガスの流量の抑制を解除するガス流量抑制部を備え
ており、
前記ガスノズルに向けて前記燃料ガスが供給されるガス配管には、
前記燃料ガスのガス流量を6割以下の所定比率に減少させるガス絞り部と、
前記ガス絞り部を迂回する迂回配管と、
前記燃料ガスが前記迂回配管を流れる開放状態と、前記迂回配管が閉鎖された閉鎖状態とに切り換える切換バルブと
が設けられており、
前記切換バルブは、前記ガス燃焼装置のユーザーの設定によって、前記開放状態または前記閉鎖状態の何れかに切換可能となっていることを特徴とする。
【0009】
かかる本発明のガス燃焼装置においては、ユーザーによって所定の設定操作が行われるまでは、燃料ガスが天然ガスであるものとして、燃料ガスを燃焼用空気に対して所定の標準流量比でバーナーに供給する。しかし、ユーザーによって設定操作が行われると、燃料ガスがLPガスであるものとして、燃焼用空気に対する燃料ガスの流量比が標準流量比の6割以下(より望ましくは半分以下)に設定された緊急時流量比となるように、燃料ガスの流量を抑制する。その後、ユーザーによって所定の解除操作が行われると、燃料ガスが天然ガスであるものとして、燃料ガスの流量の抑制を解除することが可能となっている。
更に、ガスノズルに燃料ガスが供給されるガス配管には、燃料ガスのガス流量を6割以下の所定比率に減少させるガス絞り部と、ガス絞り部を迂回する迂回配管と、切換バルブとが設けられている。そして、切換バルブは、ユーザーの設定によって、燃料ガスが迂回配管を流れる開放状態、または迂回配管が閉鎖された閉鎖状態の何れかに切換可能となっている。
【0010】
こうすれば、たとえば大きな災害が発生したなどの理由で、燃料ガスが供給されない事態が生じた場合でも、ガス燃焼装置のユーザーが所定の設定操作を行うことで、燃焼用空気に対する燃料ガスの流量比が緊急時流量比に切り換わるため、燃料ガスとしてLPガスを用いることができる。
あるいは、切換バルブを開放状態から閉鎖状態に切り換えることによっても、燃料ガスとしてLPガスを用いるようにすることができる。このため、都市ガス12Aや都市ガス13Aなどの天然ガスが用いられている地域で大きな災害が発生した場合でも、比較的速やかにガス燃焼装置の使用を再開することができる。また、ユーザーが所定の解除操作を行えば、燃焼用空気に対する燃料ガスの流量比が標準流量比に戻るため、燃料ガスとして天然ガスを用いること
が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施例のガス燃焼装置100を内蔵した給湯器1の大まかな構造を示す説明図である。
【
図2】燃焼ファン20の回転速度と、流量調整弁14の開度との対応関係を例示した説明図である。
【
図3】燃焼ファン20の回転速度と、流量調整弁14の開度との対応関係を決定する方法についての説明図である。
【
図4】制御部40に内蔵された制御基板42に不揮発性メモリー43が搭載されている様子を示した説明図である。
【
図5】緊急時用のディップスイッチ46の設定を切り換える様子を示した説明図である。
【
図6】通常時用の対応関係(標準対応関係)と、緊急時用の対応関係(緊急時対応関係)とを示した説明図である。
【
図7】LPガスを燃焼させる設定に切り換わっている旨の音声を出力する変形例についての説明図である。
【
図8】切換バルブ2dで燃料ガスの流路を分岐通路2bに切り換えることによってガス流量を抑制する変形例についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本実施例のガス燃焼装置100を内蔵した給湯器1の大まかな構造を示した説明図である。図示されるように、給湯器1は大まかに言うと、ガス燃焼装置100と熱交換器30とを組み合わせた構造となっている。
【0021】
このうちのガス燃焼装置100は、燃料ガスを燃焼させる複数のバーナー10と、それぞれのバーナー10に向かって燃料ガスを供給するガスノズル11と、バーナー10に燃焼用空気を供給する燃焼ファン20と、バーナー10に点火する点火プラグ15などを備えている。ガスノズル11は、バーナー10毎に設けられており、ガスマニホールド12がそれぞれのバーナー10に面する箇所から、バーナー10に向かって突設されている。また、ガスマニホールド12にはガス配管2が接続されている。ガス配管2からは、燃料ガスとして都市ガス12Aあるいは都市ガス13Aなどの天然ガスが供給されており、ガスマニホールド12に供給された燃料ガスが、ガスマニホールド12内を通ってそれぞれのガスノズル11に分配された後、ガスノズル11の先端のノズル孔11aから、それぞれのバーナー10に供給される。
【0022】
また、ガス配管2の途中には、元弁13と、流量調整弁14とが設けられており、これらは制御部40に接続されている。制御部40は、元弁13を開弁あるいは閉弁することによって、バーナー10への燃料ガスの供給を開始あるいは停止することができる。また、制御部40は、元弁13を開弁した状態で、流量調整弁14の開度を調整することによって、バーナー10に供給する燃料ガスのガス流量を調整することができる。更に、制御部40は、燃焼ファン20や点火プラグ15にも接続されており、燃焼ファン20の回転速度を変更することによって、バーナー10に供給する燃焼用空気の空気流量を調整したり、点火プラグ15から火花を飛ばすことによって、バーナー10に点火したりすることが可能である。
【0023】
熱交換器30は、バーナー10で燃料ガスが燃焼することによって生じた燃焼排気が、排気口16に向かう途中の位置に搭載されている。熱交換器30は、銅製パイプを蛇行させた通水管30aに、薄板形状の銅製のフィン30bを、溶接あるいはロウ付けなどによって複数枚取り付けた構造となっている。この通水管30aの一端側には給水管3が接続され、通水管30aの他端側には出湯管4が接続されており、給水管3から水を供給すると、通水管30aを通って出湯管4から流出するようになっている。また、給水管3の途中には流量センサー3aが搭載されており、給水管3から通水管30aに供給される水の流量を検出することができる。更に、出湯管4の途中には温度センサー4aが搭載されており、熱交換器30から流出して出湯管4内を流れる湯の温度(以下、出湯温度)を検出することができる。これら、流量センサー3aや温度センサー4aも、制御部40に接続されている。また、出湯管4の先端には、出湯カラン5が取り付けられている。
【0024】
以上のような構造を有する給湯器1は、大まかには次のように動作する。先ず、給湯器1のユーザーが出湯カラン5を開くと、出湯管4内に存在する湯(あるいは水)が出湯カラン5から流出し、それに伴って、給水管3からは、熱交換器30の通水管30aに水が流れ込む。その水の流れが、給水管3に設けられた流量センサー3aによって検出されて、その結果が制御部40に出力される。すると、制御部40は、ユーザーによって出湯カラン5が開かれたことを認識して、所定の回転速度で燃焼ファン20の駆動を開始すると共に、点火プラグ15で火花を飛ばしながら、元弁13および流量調整弁14を制御して、燃料ガスの供給を開始する。その結果、バーナー10では燃料ガスの燃焼が開始されて、燃焼によって生じた高温の燃焼排気が熱交換器30を通過して、排気口16から外部に排出される。熱交換器30では、高温の燃焼排気と、通水管30a内を流れる水とが熱交換することによって、通水管30a内で湯が生成されて、出湯管4を介して出湯カラン5から出湯される。
【0025】
また、制御部40には操作部41が接続されており、給湯器1のユーザーは操作部41を操作することによって、給湯温度を設定しておくことができる。制御部40は、操作部41に設定された給湯温度と、出湯管4の温度センサー4aで検出された湯の温度(以下、熱交出口温度)とを比較する。その結果、熱交出口温度が給湯温度に達していない場合は、流量調整弁14の開度を増加させると共に、燃焼ファン20の回転速度を上昇させる。こうすれば、バーナー10に供給される燃料ガスおよび燃焼用空気の流量が増加するので、バーナー10の火力も増加し、その結果、熱交換器30から流出する湯の温度(熱交出口温度)を上昇させ、出湯カラン5から出湯する湯の温度も上昇させることができる。逆に、熱交出口温度が給湯温度を超えていた場合は、燃焼ファン20の回転速度を低下させると共に、流量調整弁14の開度を減少させる。こうすれば、バーナー10に供給される燃料ガスおよび燃焼用空気の流量が減少するので、バーナー10の火力も減少し、その結果、熱交換器30から流出する湯の温度(熱交出口温度)を低下させ、出湯カラン5から出湯する湯の温度も低下させることができる。
【0026】
ここで、バーナー10で燃料ガスを効率よく燃焼させるためには、燃料ガスのガス流量と、燃焼用空気の空気流量とを、適切な比率でバーナー10に供給する必要がある。このため、バーナー10の火力を調整する際にも、燃料ガスのガス流量と、燃焼用空気の空気流量との比率を、適切な比率に保ったままで、流量調整弁14の開度および燃焼ファン20の回転速度を変更する必要がある。そこで、制御部40には、燃焼ファン20の回転速度と、流量調整弁14の開度との対応関係が予め記憶されており、この対応関係に従って、流量調整弁14の開度および燃焼ファン20の回転速度を変更する。
【0027】
図2は、燃焼ファン20の回転速度と、流量調整弁14の開度との対応関係を例示した説明図である。図示したように、燃焼ファン20の回転速度と、流量調整弁14の開度との間には、一方が直線的に増加すれば他方も直線的に増加し、一方が直線的に減少すれば他方も直線的に減少するような対応関係が設定されている。また、この対応関係は、次のようにして設定されている。
【0028】
先ず、
図3(a)に示したように、流量調整弁14の開度θと、バーナー10に供給される燃料ガスのガス流量Vgとの関係を、実験によって求めておく。また、
図3(b)に示したように、燃焼ファン20の回転速度Nと、バーナー10に供給される燃焼用空気の空気流量Vaとの関係も、実験によって求めておく。次に、ガス燃焼装置100で使用される燃料ガスの最小のガス流量(最小ガス流量Vg1)と、その時の燃焼用空気の空気流量(最小空気流量Va1)とを決定する。燃料ガスのガス種は分かっている(本実施例では、天然ガス)から、最小ガス流量Vg1が決まれば、最小空気流量Va1も決定することができる。そして、予め求めておいた
図3(a)および
図3(b)の対応関係に基づいて、最小ガス流量Vg1が得られる流量調整弁14の開度θ1と、最小空気流量Va1が得られる燃焼ファン20の回転速度N1とを決定する。この流量調整弁14の開度θ1および燃焼ファン20の回転速度N1の組合せが、ガス燃焼装置100の最小火力での運転条件となる。
【0029】
こうして、最小火力での運転条件が得られたら、今度は、ガス燃焼装置100で使用される燃料ガスの最大のガス流量(最大ガス流量Vg2)と、その時の燃焼用空気の空気流量(最大空気流量Va2)とを決定する。そして、
図3(a)および
図3(b)の対応関係に基づいて、最大ガス流量Vg2が得られる流量調整弁14の開度θ2と、最大空気流量Va2が得られる燃焼ファン20の回転速度N2とを決定する。この流量調整弁14の開度θ2および燃焼ファン20の回転速度N2の組合せが、ガス燃焼装置100の最大火力での運転条件となる。そして、燃焼ファン20の回転速度Nと、流量調整弁14の開度θとのグラフ上で、最小火力の運転条件および最大火力の運転条件をプロットして、2つの運転条件を直線で結べば、
図2の対応関係を得ることができる。また、このような対応関係は、制御部40に内蔵された不揮発性メモリーに記憶されている。
【0030】
図4は、制御部40に内蔵された制御基板42に不揮発性メモリー43が搭載されている様子を示した説明図である。図示されるように、制御基板42には、コンデンサーや、抵抗や、パワートランジスターなど、様々な電子部品が搭載されているが、それらの電子部品に加えて、ROMと呼ばれる不揮発性メモリー43や、CPUと呼ばれる論理演算回路44なども搭載されている。不揮発性メモリー43には、ガス燃焼装置100を動作させるためのコンピュータープログラムと共に、
図2に示したような、燃焼ファン20の回転速度Nと流量調整弁14の開度θとの対応関係が記憶されている。論理演算回路44は、不揮発性メモリー43に記憶されているコンピュータープログラムを読み出して実行する。また、流量調整弁14や燃焼ファン20を駆動する場合は、不揮発性メモリー43に記憶されている対応関係を参照することによって、流量調整弁14や燃焼ファン20の動作を制御する。こうすることによって、バーナー10には、燃料ガスと燃焼用空気とが適切な比率(標準流量比)で供給される。更に、制御基板42には、複数のディップスイッチ45が搭載されており、これらディップスイッチ45の設定を切り換えることによって、論理演算回路44が実行するコンピュータープログラムの内容を変更することが可能である。
【0031】
加えて、本実施例のガス燃焼装置100の制御基板42には、複数のディップスイッチ45とは離れた箇所に、緊急時用のディップスイッチ46が搭載されている。このディップスイッチ46は、通常時は、
図5(a)に示すようにOFF状態に設定されている。しかし、この設定を、
図5(b)に示したようにON状態に切り換えると、
図2に示した燃焼ファン20の回転速度Nと流量調整弁14の開度θとの対応関係が、通常時ではあり得ない内容の緊急時用の対応関係に切り換わるようになっている。
【0032】
図6は、通常時用の対応関係(標準対応関係)と、緊急時用の対応関係(緊急時対応関係)とを示した説明図である。図中に破線で示した緊急時対応関係は、実線で示した標準対応関係に対して、燃焼ファン20の回転速度範囲(すなわち、最小の回転速度N1および最大の回転速度N2)は同じであるが、回転速度Nに対する流量調整弁14の開度θは6割以下(より望ましくは半分以下。たとえば40%)の値に設定されている。このように、回転速度Nに対する流量調整弁14の開度θを6割以下に減少させると、バーナー10に供給する空気流量に対してガス流量が6割以下(より望ましくは半分以下。たとえば40%)に減少してしまう。このため、点火プラグ15から火花を飛ばしても燃料ガスに点火することすらできなくなってしまうので、通常ではあり得ない対応関係となっている。
【0033】
尚、本実施例では、標準対応関係および緊急時対応関係が不揮発性メモリー43に記憶されていることから、本実施例の不揮発性メモリー43は、本発明における「標準対応関係記憶部」および「緊急時対応関係記憶部」に対応する。また、ディップスイッチ46の設定を切り換えると、緊急時用の対応関係に切り換わってガス流量が6割以下に抑制されることから、本実施例のディップスイッチ46は、本発明における「ガス流量抑制部」に対応する。
【0034】
このように、本実施例のガス燃焼装置100は、緊急時用のディップスイッチ46の設定を切り換えることによって、流量調整弁14の開度θと燃焼ファン20の回転速度Nとの対応関係を、通常時ではあり得ない内容が設定された緊急時対応関係に切り換えることができる。このため、地震などの原因で、いわゆる都市ガス12Aや都市ガス13Aなどの天然ガスが長期に亘って供給されない事態が発生した場合でも、比較的速やかにガス燃焼装置100の使用を再開することが可能となる。以下では、この点について説明する。
【0035】
燃料ガスを適切に燃焼させるために必要な燃焼用空気の比率は、燃料ガスのガス種に応じて決まっており、LPガスは天然ガスに対して2倍強の燃焼用空気が必要となる。このため、天然ガス用のガス燃焼装置100にLPガスを供給すると、燃焼用空気が大幅に不足した状態となる。しかし、流量調整弁14の開度θと燃焼ファン20の回転速度Nとの対応関係を、
図6に破線で示した緊急時用の対応関係に切り換えてやれば、燃料ガスのガス流量が半分以下(より望ましくは半分以下)に減少するので、燃焼用空気の空気流量に見合ったガス流量に抑制することができ、その結果、天然ガス用のガス燃焼装置100でありながらLPガスを燃焼させることが可能となる。
【0036】
加えて、前述したように、LPガスは、同じ体積の天然ガスを燃やしたときと比較して、2倍強の熱量を発生させる。このため、緊急時用の対応関係に切り換えてガス流量を6割以下(より望ましくは半分以下)に抑制しても、ガス燃焼装置100の火力にはほとんど変化が生じない。その結果、燃料ガスを天然ガスからLPガスに切り換えても、ガス燃焼装置100のユーザーには何ら不便さを感じさせることがない。
【0037】
更に、
図4に示したように、制御基板42上では、複数のディップスイッチ45は近くにまとめて搭載されているのに対して、標準対応関係から緊急時対応関係に切り換えるためのディップスイッチ46は、他のディップスイッチ45から離れた位置に搭載されている。このため、他のディップスイッチ45と間違えて、緊急時用のディップスイッチ46の設定を変更してしまう事態も防止することができる。
【0038】
上述した本実施例のガス燃焼装置100には、幾つかの変形例が存在している。以下では、これらの変形例について、本実施例との相違点を中心として簡単に説明する。
【0039】
上述した本実施例では、緊急用のディップスイッチ46の設定がON状態に切り換えられると、流量調整弁14の開度θと燃焼ファン20の回転速度Nとの対応関係が、標準対応関係から緊急時対応関係に切り換わるが、このことを、ガス燃焼装置100のユーザーに報知するようにしても良い。例えば、
図7(a)に例示したように、制御部40にスピーカー40sを接続しておき、ガス燃焼装置100の電源投入時や、バーナー10への点火時に、LPガスを燃焼させる設定に切り換わっている旨の音声を出力するようにしても良い。あるいは、
図7(b)に例示したように、ユーザーによって操作される操作部41に小型のスピーカー41sを内蔵しておき、スピーカー41sから音声を出力するようにしても良い。こうすれば、緊急時用のディップスイッチ46をON状態に設定したまま、誤って天然ガスを供給した場合でも、そのことに気付くことができる。尚、これら変形例のスピーカー40sあるいはスピーカー41sは、本発明における「報知部」に対応する。
【0040】
また、上述した本実施例では、流量調整弁14の開度θと燃焼ファン20の回転速度Nとの対応関係を変更することによって、ガス流量を6割以下(より望ましくは半分以下)に抑制するものとして説明した。しかし、ガス流量を6割以下(より望ましくは半分以下)に抑制することができるのであれば、他の方法を用いて抑制しても良い。例えば、
図8に示したように、ガスマニホールド12に燃料ガスを供給するガス配管2の一部を、配管2aと配管2bとに分岐させて、一方の配管2bには、ガス流量を減少させるオリフィス2cを設けておく。そして、切換バルブ2dを用いて、燃料ガスが流れる配管を、オリフィス2cが設けられていない配管2aと、オリフィス2cが設けられた配管2bとに切り換えるようにしても良い。このようにしても、オリフィス2cの大きさを、ガス流量が6割以下(より望ましくは半分以下)となるような大きさに設定しておけば、天然ガス用のガス燃焼装置100でLPガスを燃焼させることが可能となる。尚、上述した変形例のオリフィス2cは、本発明における「ガス絞り部」に対応する。また、オリフィス2cが設けられていない方の配管2aが、本発明における「迂回配管」に対応する。
【0041】
尚、
図8では、流量調整弁14とガスマニホールド12との間の位置で、ガス配管2を2つの配管2a,2bに分岐させているが、ガス配管2を分岐させる位置は、流量調整弁14と元弁13との間でも良いし、元弁13の上流側であっても構わない。また、
図8では、ガス配管2が2つの配管2a,2bから分岐する位置に切換バルブ2dを設けているが、切換バルブ2dを設ける位置は別の位置であっても構わない。例えば、2つの配管2a,2bがガス配管2に合流する位置に切換バルブ2dを設けても良いし、オリフィス2cが設けられていない配管2aの途中に切換バルブ2dを設けても良い。
【0042】
以上、本実施例および各種の変形例について説明したが、本発明は上述した実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…給湯器、 2…ガス配管、 2a、2b…通路、
2c…オリフィス、 2d…切換バルブ、 3…給水管、
4…出湯管、 5…出湯カラン、 10…バーナー、
11…ガスノズル、 12…ガスマニホールド、 13…元弁、
14…流量調整弁、 15…点火プラグ、 16…排気口、
20…燃焼ファン、 30…熱交換器、 40…制御部、
40s…スピーカー、 41…操作部、 41s…スピーカー、
43…不揮発性メモリー、 45、46…ディップスイッチ、
100…ガス燃焼装置。