(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般にサッシュは金属製であり、また、グラスランはゴムや樹脂製であるので、サッシュとグラスランの線膨張係数は相違しており、具体的にはグラスランの線膨張係数がサッシュよりも大きな値となっている。自動車は寒冷地から夏場の炎天下まで様々な温度条件下で使用されることが前提であり、その温度差が大きいことから、サッシュの線膨張係数の方がグラスランよりも大きいと、低温時にはグラスランの縮み量に比べてサッシュの縮み量が少なくなる。つまり、グラスランとサッシュの縮み量が異なることになるので、グラスランがサッシュに対してズレたり、最悪の場合、グラスランがサッシュから脱落してしまう恐れがある。
【0006】
このことに対して、例えば特許文献1のようにサッシュにブラケットを溶接してそのブラケットの切欠部にグラスランの突起を嵌めるようにすれば、温度変化によるグラスランのズレや脱落を抑制することができると考えられる。しかしながら、ブラケットを準備する必要があることから部品点数が増加するとともに、ブラケットの溶接工程が必要になるので工数も増加する。また、特許文献2のようにサッシュに挿通したネジをグラスランのネジ受部に螺合することによっても温度変化によるグラスランのズレや脱落を抑制することができると考えられるが、ネジが必要であることから部品点数が増加するとともに、ネジの螺合工程が必要になるので工数が増加する。さらに、特許文献3のようにサッシュの係合部材をグラスランのグラスランストッパーに係合させることによっても温度変化によるグラスランのズレや脱落を抑制することができると考えられるが、係合部材が必要であることから部品点数が増加するとともに、係合部材を取り付ける工程が必要になるので工数が増加する。
【0007】
また、係合部材は、金属製でなく、樹脂製のため、サッシュの穴に対しての固定が不完全になりやすく、異音発生の懸念もある。
【0008】
そこで、特許文献4のように、サッシュに形成された孔または凹部にグラスランの規制突起を嵌め込むようにすれば、部品点数の増加を招くことなく、グラスランのズレや脱落を抑制することができると考えられる。ところが、サッシュに孔や凹部を形成するための余分な工程が必要となるので、工数が増加するとともに、サッシュ自体の剛性低下を招く懸念があり、特許文献4のような構造を採用することが困難な場合がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、リベットを使用してモール部材をサッシュに固定する構造を採用する場合があることに着目し、このリベットを利用することでブラケット等の別部品を新設することなく、温度変化に起因するグラスランのサッシュに対するズレや脱落を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、モール部材をサッシュに固定するためのリベットの端部に、グラスランに設けた係合突起を係合させるようにした。
【0011】
第1の発明は、自動車のドアが有するサッシュに
、当該サッシュとは別部材で構成されたモール部材がリベットで固定されており、該サッシュと該サッシュに保持されるドアガラスとの間をシールするグラスランが上記サッシュに取り付けられている自動車用グラスランの取付構造において、上記グラスランは、基底部と、該基底部の車室内側から延びる車内側側壁部と、該基底部の車室外側から延びる車外側側壁部と、上記車内側側壁部から上記ドアガラスの車室内面に向けて延び、該車室内面に接触する車内側シールリップ部と、上記車外側側壁部から上記ドアガラスの車室外面に向けて延び、該車室外面に接触する車外側シールリップ部とを備え、
上記モール部材は、上記サッシュにおける上記基底部と対向する対向板部に厚み方向に重なるように配置される取付板部と、該取付板部の車室外側の端部から上下方向に延びる縦板部とを備え、上記サッシュにおける上記基底部と対向する対向板部には、上記モール部材が有する取付板部が厚み方向に重なるように配置され、上記リベットは、上記サッシュの上記対向板部と、上記モール部材の上記取付板部とを厚み方向に貫通して両側へ向けて突出し、該対向板部と該取付板部とを厚み方向に締結するように成形され、上記基底部には、上記リベットにおける該基底部側へ突出した端部に対して車両前後方向から接近するように配置される
係合面を有する係合突起が形成され
、上記係合面は、上記リベットの上記端部が嵌まるように形成された凹面部を有しており、上記凹面部は、上記リベットの上記端部の周面よりも大きな曲率を持った湾曲面であることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、グラスランがサッシュに取り付けられた状態で、グラスランの基底部がサッシュの対向板部に対向するように配置される。一方、サッシュの対向板部には、モール部材の取付板部が重なるように配置されていて、それらを貫通するリベットによってモール部材がサッシュに締結固定されている。リベットの端部は基底部側へ突出しており、この突出した端部に対してグラスランの係合突起が車両前後方向から接近するように配置される。これにより、例えば常温から氷点下まで温度低下することによってサッシュの縮み量よりもグラスランの縮み量の方が大きくなった場合に、グラスランの係合突起がリベットの端部に係合してグラスランのサッシュに対するズレや脱落が抑制される。
【0013】
本発明では、モール部材をサッシュに固定するためのリベットの端部を利用してグラスランのズレや脱落を抑制することが可能になることから、特許文献1〜3のように、グラスランのズレを抑制するためのブラケット等の別部材を新設する必要はなく、部品点数及び工数の増加が回避される。
【0014】
また、サッシュにはモール部材をリベットで締結固定していることからサッシュの剛性低下は殆ど無く、特許文献4のような孔や凹部を形成することによるサッシュの剛性低下は回避される。
【0015】
また、温度が変化することによってリベットの端部が係合突起の凹面部に嵌まることによって係合した状態になるので、この係合状態でリベットの端部と係合突起との車幅方向への相対的な変位が抑制される。これにより、係合突起がリベットの端部から離脱しにくくなる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において
、上記係合面の車幅方向の長さは、上記リベットの上記端部の車幅方向の長さよりも長く設定されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、温度が変化することによって係合突起の係合面がリベットの端部と接触することによって係合した状態になる。このとき、係合面の車幅方向の長さがリベットの端部の車幅方向の長さよりも長いので、係合突起とリベットの端部との相対的な位置関係が車幅方向に多少ずれていたとしても、リベットの端部と係合突起の係合面とが確実に接触するようになる
。
【0018】
第
3の発明は、第1
または2の発明において、上記モール部材の上記取付板部は、上記サッシュの上記対向板部における上記基底部側とは反対側に重なるように配置され、上記係合突起の突出方向先端面は、上記サッシュの上記対向板部に当接するように配置されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、ドアガラスが閉状態にあるときにドアガラスの端部によってグラスランの基底部が押圧されたとき、基底部の係合突起の先端面がサッシュの対向板部に当接する。つまり、閉状態にあるドアガラスが当たる当て部として係合突起を利用することが可能になる。
【0020】
第
4の発明は、第1から
3のいずれか1つの発明において、上記グラスランの車両前後方向の端部に設けられるコーナー部が型成形部とされ、上記型成形部に上記係合突起が形成されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、型成形部の成形時に係合突起を一体に形成することが容易に行える。そして、型成形部がグラスランの前後方向の端部に設けられているので、係合突起もグラスランの前後方向の端部に設けられることになる。従って、グラスランの前後方向の端部をリベットによって位置決めすることが可能になるので、グラスランのズレや脱落の抑制効果がより一層高まる。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明によれば、モール部材をサッシュに固定するリベットの端部に対して車両前後方向から接近するように配置される係合突起をグラスランの基底部に形成したので、別部品を新設することなく、また、サッシュの剛性低下を招くことなく、温度変化に起因するグラスランのサッシュに対するズレや脱落を抑制することができる。
【0023】
また、係合突起の係合面が凹面部を有しているので、係合状態でリベットの端部と係合突起との車幅方向への相対的な変位を抑制することができ、係合突起がリベットの端部から離脱しにくくなる。
【0024】
第2の発明によれば、係合突起の係合面の車幅方向の長さをリベットの端部の車幅方向の長さよりも長くしたので、温度が変化したときにリベットの端部と係合突起の係合面とを確実に係合させることができる。
【0025】
第
3の発明によれば、係合突起の先端面をサッシュの対向板部に当接するように配置したので、係合突起をドアガラスの当て部として使用することができる。
【0026】
第
4の発明によれば、グラスランの車両前後方向の端部に設けられるコーナー部を型成形部に係合突起を一体に形成することができる。そして、グラスランの前後方向の端部をリベットによって位置決めできるので、グラスランのズレや脱落の抑制効果をより一層高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
図1は、本発明の実施形態1に係る自動車用グラスランの取付構造が適用された自動車ドア1を車室外側から見た側面図(左側面図)である。この自動車ドア1は、自動車(図示せず)の側部において前側かつ左側に配設される左フロントドアであり、自動車の側部において左前側に形成された開口部(図示せず)を開閉する。図示しないが、自動車の側部にリヤドアが配設されている場合には、リヤドアに設けられるグラスランにも本発明を適用することができる。また、図示しないが、右側に配設されるドアにも本発明を適用することができる。
【0030】
尚、この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」というものとするが、これは説明の便宜を図るためだけであって本発明を限定するものではない。
【0031】
自動車ドア1は、該自動車ドア1の略下半部を構成するドア本体2と、略上半部を構成するサッシュ3とを有している。ドア本体2の前端部は、図示しないが、上下方向に延びる回動軸を有するヒンジを介して車体のピラーに取り付けられている。ドア本体2は、鋼板等からなるインナパネル(図示せず)とアウタパネル2aとで構成されており、内部には、昇降動作するドアガラス4や、ドアガラス4を昇降動作させるための昇降装置(図示せず)等が収容可能になっている。
【0032】
サッシュ3は、ウインドフレームとも呼ばれる部材であり、ドアガラス4の周縁部を保持するものである。このサッシュ3は、ウインド開口8(
図1にのみ示す)を形成するように延びている。サッシュ3によって形成されているウインド開口8がドアガラス4によって開閉されるようになっている。この実施形態のサッシュ3は、
図6に示すように例えばロール成形法によって構成されたものである。尚、サッシュ3は、例えば鋼板等をプレス成形してなる二枚の板材を組み合わせて構成されたものであってもよい。
【0033】
図1に示すように、サッシュ3は、前側フレーム部3aと、後側フレーム部3bと、フレーム上辺部3cとで構成されている。前側フレーム部3aは、ドア本体2の上縁における前部から上方へ突出している。後側フレーム部3bは、ドア本体2の上縁における後部から上方へ延びている。後側フレーム部3bの方が前側フレーム部3aよりも上方まで延びている。フレーム上辺部3cは、前側フレーム部3aの上端から後側フレーム部3bの上端まで、車体のルーフ側縁部(図示せず)に沿って前後方向に延びている。尚、フレーム上辺部3cの形状は図示した形状に限られるものではなく、全体的に上方へ向けて湾曲した形状であってもよいし、湾曲部の位置やフレーム上辺部3cの傾斜角度も車体のルーフ形状に対応するように任意に設定することができる。
【0034】
サッシュ3の前側フレーム部3aの前方には、ドアミラー(図示せず)が取り付けられるドアミラー取付部3dが設けられている。ドアミラー取付部3dの上縁部は、サッシュ3のフレーム上辺部3cの前端部と連続するように形成されている。
【0035】
図6に示すように、サッシュ3には、後述するグラスラン30の基底部31と対向するように位置する対向板部10が設けられている。サッシュ3を構成する第1板材5における上端部には、車室外側へ向けて突出し、かつ、フレーム上辺部3cの前端部から後端部に亘って前後方向に延びる第1上板部5aが形成されている。また、第2板材6における上端部には、第1上板部5aの下面に沿うように車室外側へ向けて突出し、かつ、フレーム上辺部3cの前端部から後端部に亘って前後方向に延びる第2上板部6aが形成されている。また、第2上板部6aは、車室外側で、略180度折り曲げ屈曲成形(いわゆるヘミング加工)され、車室内側に、更に延出する、第3上板部6cが形成されている。第1上板部5aと第2上板部6aと第3上板部6cが厚み方向(上下方向)に重ね合わされた状態で接合されている。第1上板部5aと第2上板部6aと第3上板部6cとによって上記対向板部10が構成されている。前側フレーム部3a及び後側フレーム部3bにおいても同様な構造とすることができる。また、サッシュ3を構成している第1板材5及び第2板材6は、該サッシュ3の内部に中空部Rを区画形成するように構成されている。
【0036】
また、第1板材5の第1上板部5aには、後述するリベット40が挿通する第1リベット挿通孔5bが形成されている。また、第2板材6の第2上板部6aには、第1リベット挿通孔5bと一致するように、第2リベット挿通孔6bが形成されている。
【0037】
また、第2板材6の第3上板部6cにも、第1リベット挿通孔5bと一致するように、
第3リベット挿通孔6dが形成されている。
【0038】
(モール部材の構成)
図1及び
図6に示すように、自動車ドア1はモール部材20を有している。モール部材20は、サッシュ3のフレーム上辺部3cに沿って前後方向に延びている。モール部材20は、ステンレス鋼やアルミダイキャスト等の金属材からなるものであってもよいし、硬質樹脂材からなるものであってもよい。モール部材20は、縦板部21と取付板部22とを有しており、縦板部21及び取付板部22は一体成形されている。縦板部21は、自動車ドア1にアクセントを与えるためのものであることから、少なくとも縦板部21の車室外面を金属で構成するか、金属メッキで構成するのが好ましい。
【0039】
図6に示すように、縦板部21は車室外面に臨むように配置される部分であり、略上下方向に延びるとともに、サッシュ3のフレーム上辺部3cの前端部から後端部に亘って連続して延びている。縦板部21の上端部には、車室内側へ折り曲げ・屈曲された上側突条部21aが形成されている。また、縦板部21の下端部には、車室内側へ折り曲げ・屈曲された下側突条部21bが形成されている。また、下側突条部21bの上端は、板状モール部材20の一端部となっている。下側突条部21bの縦板部21からの突出高さは、上側突条部21aの縦板部21からの突出高さよりも低く設定されている。これら上側突条部21a及び下側突条部21bもサッシュ3のフレーム上辺部3cの前端部から後端部に亘って連続して延びている。
【0040】
取付板部22は、縦板部21の車室内面における上側突条部21aと中間突条部21cとの間の部分から車室内側へ向けて突出し、かつ、サッシュ3のフレーム上辺部3cの前端部から後端部に亘って連続して延びている。取付板部22は、フレーム上辺部3cの対向板部10に対して厚み方向(上下方向)に重なるように配置されている。取付板部22は、対向板部10に沿って延びている。そして、取付板部22の下面は、対向板部10を構成している第1板材5の第1上板部5aの上面と重なっており、従って、第1板材5の第1上板部5a、第2板材6の第2上板部6aと第3上板部6c及び取付板部22が重なることになる。
【0041】
取付板部22の車室内側の端部には、上方へ突出するとともに、サッシュ3のフレーム上辺部3cの前端部から後端部に亘って連続して延びる上辺部22aが形成されている。上辺部22aは、その上端に近づくほど車室外側に位置するように傾斜しており、上端部が、車室外側に略180度折り曲げ・屈曲されている。
【0042】
取付板部22には、後述するリベット40が挿通する第4リベット挿通孔22bが形成されている。第4リベット挿通孔22bは、第1リベット挿通孔5b及び第2リベット挿通孔6b及び第3リベット挿通孔6dと一致するように形成されている。第1リベット挿通孔5b、第2リベット挿通孔6b、第3リベット挿通孔6d及び第4リベット挿通孔22bは同径にすることができる。
【0043】
(リベットの構成)
図6に示すように、リベット40は、サッシュ3の対向板部10と、モール部材20の取付板部22とを厚み方向に貫通して両側へ向けて突出し、該対向板部10と該取付板部22とを厚み方向に締結するように成形されている。このリベット40は、例えばアルミニウム合金等で構成することができる。
【0044】
すなわち、リベット40は、サッシュ3の対向板部10の第1リベット挿通孔5b、第2リベット挿通孔6b、第3リベット挿通孔6d及びモール部材20の第4リベット挿通孔22bに挿通されることによって、対向板部10と取付板部22とを厚み方向に貫通した状態になる。リベット40の上端部には頭部41が設けられている。この頭部41が取付板部22の上面から上側へ突出している。頭部41の外径は、モール部材20の第4リベット挿通孔22bの径よりも大きく設定されており、頭部41の周縁部が取付板部22の上面に対して上方から接触して係合するようになっている。
【0045】
また、リベット40の下端部にはかしめ部42が設けられている。かしめ部42は、頭部41の形状に類似した形状とされており、上下方向に延びる円柱状をなしている。かしめ部42がサッシュ3の対向板部10の下面から下側へ突出している。かしめ部42の外径は、第2リベット挿通孔6bの径よりも大きく設定されており、かしめ部42の周縁部が第2板材6の下面に対して下方から接触して係合するようになっている。リベット40の頭部41とかしめ部42とによって第1板材5、折り曲げ・屈曲された第2板材6及び取付板部22が上下方向に挟持されて一体化する。
【0046】
かしめ部42は、図示しないかしめ治具を使用してかしめることによって第2リベット挿通孔6bの径よりも大きな径を有する形状に成形されている。リベット40をかしめる前においては、かしめ部42に相当する部分の形状は、第2リベット挿通孔6bの径よりも小さい外径を持った細長い形状となっている。この細長い部分を第1リベット挿通孔5a、第2リベット挿通孔6b、第3リベット挿通孔6d及び第4リベット挿通孔22bに挿通した後に上下方向に押圧して塑性変形させることによってかしめ部42が得られるようになっている。かしめ部42の形状は図示した形状に限られるものではない。
【0047】
(グラスランの構成)
グラスラン30は、サッシュ3と、該サッシュ3に保持されるドアガラス4との間をシールするためのシール材として機能する部材であり、
図6に示すように、グラスラン30は、サッシュ3に組み付けられた状態で使用される。グラスラン30の材料としては、例えばEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)やTPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)等のように、弾性を有する材料を使用することができる。上記EPDMやTPOは、発泡材であってもよいし、ソリッド材であってもよい。
【0048】
図1に示すように、グラスラン30は、サッシュ3の前側フレーム部3aに沿って上下方向に延びるグラスラン前辺部30aと、後側フレーム部3bに沿って上下方向に延びるグラスラン後辺部30bと、フレーム上辺部3cに沿って前後方向に延びるグラスラン上辺部30cとを有している。さらに、グラスラン30は、前端部(前後方向の端部)に設けられる前側コーナー部30dと、後端部(前後方向の端部)に設けられる後側コーナー部30eとを有している。前側コーナー部30dは、グラスラン前辺部30aの上端部と、グラスラン上辺部30cの前端部とを接続する部分である。後側コーナー部30eは、グラスラン後辺部30bの上端部と、グラスラン上辺部30cの後端部とを接続する部分である。
【0049】
図2に示すように、境界線L1と境界線L2との間の部分が前側コーナー部30dである。また、境界線L3と境界線L4との間の部分が後側コーナー部30eである。
図3には後側コーナー部30eとその近傍を示している。グラスラン30における前側コーナー部30d及び後側コーナー部30eは型成形部である。型成形部とは、開閉動作する金型によって成形された部分のことであり、基本的な工程としては、一対の金型を閉じた状態にして材料を注入又は射出成形し、その後、金型を開くことによって成形された部材を脱型する。また、グラスラン30における前側コーナー部30d及び後側コーナー部30e以外の部分は押出成形部である。押出成形部とは、材料を口金から押し出して長手方向に同一断面を有するように成形された部分である。
【0050】
図6に示すように、グラスラン30は、基底部31と、該基底部31の車室内側から延びる車内側側壁部32と、該基底部31の車室外側から延びる車外側側壁部33と、車内側側壁部32からドアガラス4の車室内面に向けて延び、該車室内面に接触する車内側シールリップ部34と、車外側側壁部33からドアガラス4の車室外面に向けて延び、該車室外面に接触する車外側シールリップ部35とを備えている。
【0051】
基底部31は、サッシュ3の対向板部10の下面に対向するように配置され、該対向板部10の下面に沿うように前後方向に延びている。車内側側壁部32は、車外側側壁部33の下端部よりも下方まで延びている。車内側シールリップ部34は、車内側側壁部32の下端部から車室外側に向けて斜め上方向に向けて延びている。また、車外側シールリップ部35は、車外側側壁部33の下端部から車室内側に向けて斜め上方向に向けて延びている。
【0052】
車外側側壁部33の車室外面は、モール部材20の縦板部21によって覆われている。モール部材20の縦板部21は、車外側側壁部33の上端部よりも上方まで延びている。車外側側壁部33の車室外面には、モール部材20の縦板部21に形成されている中間突条部21cが嵌まる凹部33aが形成されている。
【0053】
図3〜
図5に示すように、基底部31には、リベット40における該基底部31側へ突出した端部、即ち、かしめ部42に対して前後方向から接近するように配置される係合突起36が上側へ向けて突出するように形成されている。また、基底部31には、係合突起36以外にも複数の突起37が上側へ向けて突出するように形成されている。係合突起36及び突起37は、後側コーナー部3eに一体成形されている。
【0054】
係合突起36は、リベット40のかしめ部42に対して前後方向に対向する係合面36aを有している。具体的には、係合面36aはかしめ部42に対してその後側から対向するように配置されている。そして、
図5に示すように、係合面36aの車幅方向(車室内外方向)の長さL1は、リベット40のかしめ部42の車幅方向の長さ(直径)L2よりも長く設定されている。また、係合面36aは、リベット40のかしめ部42が嵌まるように形成された凹面部36bを有している。凹面部36bは、前側に向けて開放されている。凹面部36bは、リベット40のかしめ部42の周面と同じ曲率を持った円弧面であってもよいし、かしめ部42の周面よりも大きな曲率を持った円弧面であってもよい。また、凹面部36bは、円弧面以外であってもよく、湾曲した面であればよい。
【0055】
サッシュ3及びグラスラン30が常温(例えば20℃)であるときには、
図5に示すように、リベット40のかしめ部42の周面と、係合突起36の凹面部36bとの間には隙間が形成されるように、凹面部36bの位置が設定されている。常温時におけるリベット40のかしめ部42の周面と、係合突起36の凹面部36bとの隙間の寸法L3は、例えば0.5mm〜2mmに設定することができるが、これに限られるものではなく、サッシュ3のフレーム上辺部3c及びグラスラン30のグラスラン上辺部30cの長さや、サッシュ3及びグラスラン30の材料(線膨張係数の差)等によって任意の値に設定することができる。
【0056】
寸法L3は、低温時にリベット40のかしめ部42の周面と、係合突起36の凹面部36bとが接触して係合するような寸法としておくのが好ましい。低温時とは、例えば氷点下であり、サッシュ3及びグラスラン30が氷点下まで冷却されると全体が縮むことになり、このとき、サッシュ3のフレーム上辺部3c及びグラスラン30のグラスラン上辺部30cは長いので、その分、縮み量も大きくなる。ここで、サッシュ3は金属(例えば鋼板)製であるのに対し、グラスラン30は樹脂等で構成されているので、サッシュ3及びグラスラン30の線膨脹係数は互いに異なっている。具体的には、サッシュ3の線膨脹係数の方が、グラスラン30の線膨脹係数よりも小さいので、常温から氷点下まで冷やされた場合には、グラスラン30の方が前後方向の縮み量が大きくなり、これにより、係合突起36の凹面部36bがリベット40のかしめ部42の周面に接近していき、やがて両者が接触して係合した状態となるように、寸法L3を設定しておく。
【0057】
また、
図6にも示すように、モール部材20の取付板部22は、サッシュ3の対向板部10における基底部31側とは反対側(上側)に重なるように配置されている。係合突起36の突出方向先端面(上端面)は、サッシュ3の対向板部10に当接するように配置されている。この係合突起36の上端面は、サッシュ3の対向板部10の下面に沿うように延びている。
【0058】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係る自動車用グラスランの取付構造によれば、グラスラン30がサッシュ3に取り付けられた状態で、グラスラン30の基底部31がサッシュ3の対向板部10に対向するように配置される。一方、サッシュ3の対向板部10には、モール部材20の取付板部22が重なるように配置されていて、それらを貫通するリベット40によってモール部材20がサッシュ3に締結固定されている。リベット20のかしめ部42は基底部31側へ突出しており、このかしめ部42に対してグラスラン30の係合突起36が前後方向から接近するように配置されることになる。これにより、例えば常温から氷点下まで温度低下することによってサッシュ3の縮み量よりもグラスラン30の縮み量の方が大きくなった場合に、グラスラン30の係合突起36がリベット40のかしめ部42に係合してグラスラン30のサッシュ3に対するズレや脱落が抑制される。
【0059】
この実施形態では、モール部材20をサッシュ3に固定するためのリベット40のかしめ部42を利用してグラスラン30のズレや脱落を抑制することが可能になることから、グラスラン30のズレを抑制するためのブラケット等の別部材を新設する必要はなく、部品点数及び工数の増加が回避される。また、サッシュ3にはモール部材20をリベット40で締結固定していることからサッシュ3の剛性低下は殆ど無い。
【0060】
また、係合突起36の係合面36aの車幅方向の長さがリベット40のかしめ部42の車幅方向の長さよりも長いので、係合突起36とリベット40のかしめ部42との相対的な位置関係が車幅方向に多少ずれていたとしても、リベット40のかしめ部42と係合突起36の係合面36aとが確実に接触して係合するようになる。
【0061】
また、リベット40のかしめ部42が係合突起36の凹面部36bに嵌まることによって係合した状態になるので、この係合状態でリベット40のかしめ部42と係合突起36との車幅方向への相対的な変位が抑制される。これにより、係合突起36がリベット40のかしめ部42から離脱しにくくなる。
【0062】
また、ドアガラス4が閉状態にあるときにドアガラス4の端部によってグラスラン3
の基底部31が押圧されたとき、基底部31の係合突起36の先端面がサッシュ3の対向板部10に当接する。つまり、閉状態にあるドアガラス4が当たる当て部として係合突起36を利用することができる。
【0063】
さらに、グラスラン30をサッシュ3に取り付ける際には、係合突起36をリベット40のかしめ部42に係合させることで、グラスラン30をサッシュ3に対して位置決めすることができる。
【0064】
(その他の実施形態)
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0065】
上記実施形態では、リベット40のかしめ部42が該リベット40の下端部に形成されている場合について説明したが、これに限らず、図示しないが、リベット40の上端部にかしめ部が形成されていて、リベット40の下端部に頭部が形成されていてもよい。