(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、従来と異なる位相補間器の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、位相補間器に関する。位相補間器は、第1レベルから第2レベルに遷移する第1信号を受ける第1入力ノードと、第1信号から遅延して、第1レベルから第2レベルに遷移する第2信号を受ける第2入力ノードと、第1電圧が供給される第1ラインと、第2電圧が供給される第2ラインと、中間ラインと、一端が中間ラインと接続されるキャパシタと、第1信号と第2信号がともに第1レベルである期間、キャパシタの電圧を初期化する初期化回路と、入力コードの複数のビットに対応し、中間ラインと第2ラインの間に並列に接続された複数の回路ユニットと、キャパシタの電圧が所定のしきい値とクロスすると、レベルが変化する出力信号を生成する出力回路と、を備える。各回路ユニットは、中間ラインと第2ラインの間に直列に設けられる抵抗および第1経路と、第1経路と並列に設けられる第2経路と、を含む。第1経路は、第1信号が第2レベルであり、かつ入力コードの対応するビットが第1値であるときオンとなるよう構成され、第2経路は、第2信号が第2レベルであり、かつ入力コードの対応するビットが第2値であるときオンとなるように構成される。
【0007】
この態様によると、第1信号に対する第2信号の遅延時間をT
P、回路ユニットの個数をNとするとき、出力信号の位相を、T
P/Nを単位遅延幅として制御できる。
【0008】
キャパシタの充電電流あるいは放電電流(充放電電流と総称する)を規定する電流源が不要であるため、一実施の形態において、低電圧動作が可能となる。
【0009】
また電流源を用いる構成では、電流源をバイアスするバイアス回路が必要であり、動作開始時の遅延が問題となり得る。一方、この態様ではバイアス回路が不要であるため、一実施の形態において、動作開始時にバイアス回路の起動を待たずに位相補間動作が可能となる。
【0010】
また抵抗や電流源を用いず、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタのみでキャパシタを放電(あるいは充電)する構成では、MOSトランジスタのゲート長Lにもとづいて充放電電流を規定する必要があるが、この場合、電流を小さくするためにゲート長Lを大きくするとゲート容量が大きくなり、消費電力が増大する。一方、MOSトランジスタのチャネル幅Wにもとづいて充放電電流を調節する手法をとることも可能であるが、電流を小さくするためにチャネル幅Wを小さくすることは、バラツキ増大を招き、性能が低下することになる。加えて、チャネル幅Wの最小幅には、プロセス製造上の限界がある。そのため、MOSFETのパラメータW/Lのみによる充放電電流の設計手法では、低消費電力と高性能を両立することは難しい。これに対して、この態様では、抵抗によって充放電電流を規定することができる。したがって一実施の形態において、第1スイッチのゲート容量を小さくすることも可能であり、消費電力を低減できる。
【0011】
さらには、キャパシタの容量と抵抗の抵抗値の両方をパラメータとした回路設計が可能であるため、精度、回路面積、消費電力などのバランスを考慮した設計が可能となる。
【0012】
第1経路および第2経路はそれぞれ、第1スイッチおよび第2スイッチを含んでもよい。第1経路の第1スイッチには、第1信号が入力され、第2経路の第1スイッチには、第2信号が入力され、第1経路の第2スイッチには、入力コードの対応するビットが入力され、第2経路の第2スイッチには、入力コードの対応するビットの相補信号が入力されてもよい。
【0013】
第2スイッチは、第1スイッチと抵抗の間に設けられてもよい。これにより、逆の場合に比べて、DNL(微分非直線性誤差)、INL(積分非直線性誤差)を改善できる。
【0014】
第1経路および第2経路はそれぞれ、第1スイッチを挟んで第2スイッチと反対側に設けられた第3スイッチをさらに含んでもよい。第1経路の第3スイッチには、入力コードの対応するビットが入力され、第2経路の第3スイッチには、入力コードの対応するビットの相補信号が入力されてもよい。
これにより、抵抗側および中間ライン側両方に対するクロックフィードスルーおよびチャージインジェクションの影響を抑制でき、DNL(微分非直線性誤差)、INL(積分非直線性誤差)をさらに小さくできる。
【0015】
抵抗の一端は第2ラインと接続され、第1経路は、抵抗の他端と中間ラインの間に設けられてもよい。
【0016】
抵抗の一端は中間ラインと接続され、第1経路は、抵抗の他端と第2ラインの間に設けられてもよい。
【0017】
初期化回路は、第1ラインと中間ラインの間に設けられる初期化トランジスタと、第1信号と第2信号がともに第1レベルである期間、初期化トランジスタをオンする論理ゲートと、を含んでもよい。
【0018】
キャパシタは可変キャパシタであってもよい。キャパシタの他端は接地されてもよい。
【0019】
本発明の別の態様はタイミング発生器に関する。タイミング発生器は、複数の上述した位相補間器の組み合わせで構成される。タイミング発生器は、N個(N≧2)のステージを備え、各ステージは、第1位相補間器および第2位相補間器を含む。i番目(1≦i≦N−1)のステージの第1位相補間器の出力ノードは、(i+1)番目のステージの第1位相補間器および第2位相補間器それぞれの第1入力ノードと接続される。i番目のステージの第2位相補間器の出力ノードは、(i+1)番目のステージの第1位相補間器および第2位相補間器それぞれの第2入力ノードと接続される。第1位相補間器および第2位相補間器はそれぞれ、第1入力ノードに第1信号を、第2入力ノードに第2信号を受け、制御データに応じたタイミングにエッジを有する出力信号を生成可能に構成される。
【0020】
この態様によれば、各ステージにおける分解能Kを設計パラメータとすることができ、この分解能Kとステージの個数Nに応じて、タイミング発生器全体としての分解能を規定できる。理論上は、基準信号の周波数に制限されずに、無限に高い時間分解能を得ることができる。またエッジにタイミング情報を有する信号がマルチプレクサ(アナログスイッチ)を通過しないため、高精度なタイミング制御が可能となる。また、各ステージの分解能Kを調整することで、ステージの個数Nを抑える設計が可能であり、ステージ数の増加に伴うバラツキの抑制も可能となる。
【0021】
N番目のステージでは、第1位相補間器と第2位相補間器の一方が省略されてもよい。これにより回路面積を小さくできる。
【0022】
i番目(1≦i≦N−1)のステージにおいて、第1位相補間器と第2位相補間器の出力信号のエッジは、そのステージの時間分解能に相当する時間差を有してもよい。たとえば各ステージにおいて、第1位相補間器と第2位相補間器には、値が1異なるコードが供給されてもよい。これにより、最高の時間分解能を得ることができる。
【0023】
1番目のステージにおいて、第1位相補間器および第2位相補間器の第1入力ノードには、共通の第1基準信号が入力され、第1位相補間器および第2位相補間器の第2入力ノードには、共通の第2基準信号が入力されてもよい。
【0024】
1番目のステージにおいて、第1位相補間器の第1入力ノードには第1基準信号が入力され、第1位相補間器の第2入力ノードと第2位相補間器の第1入力ノードには、共通の第2基準信号が入力され、第2位相補間器の第2入力ノードには、第3基準信号が入力されてもよい。
【0025】
位相補間器は、キャパシタと、(i)第1信号に応じて、第1タイミングの発生後に、制御データに応じた電流量でキャパシタを充電または放電し、(ii)第2信号に応じて、第2タイミングの発生後に、一定の電流量でキャパシタを充電または放電する充放電回路と、キャパシタの電圧がしきい値に達するとレベルが変化する出力信号を生成する出力回路と、を含んでもよい。
【0026】
ある態様において位相補間器は、第1レベルから第2レベルに遷移する第1信号を受ける第1入力ノードと、第1信号から遅延して、第1レベルから第2レベルに遷移する第2信号を受ける第2入力ノードと、第1電圧が供給される第1ラインと、第2電圧が供給される第2ラインと、中間ラインと、一端が中間ラインと接続されるキャパシタと、第1信号と第2信号がともに第1レベルである期間、キャパシタの電圧を初期化する初期化回路と、入力コードの複数のビットに対応し、中間ラインと第2ラインの間に並列に接続された複数の回路ユニットと、キャパシタの電圧が所定のしきい値とクロスすると、レベルが変化する出力信号を生成する出力回路と、を備える。各回路ユニットは、中間ラインと第2ラインの間に直列に設けられる抵抗および第1経路と、第1経路と並列に設けられる第2経路と、を含む。第1経路は、第1信号が第2レベルであり、かつ入力コードの対応するビットが第1値であるときオンとなるよう構成され、第2経路は、第2信号が第2レベルであり、かつ入力コードの対応するビットが第2値であるときオンとなるように構成される。
【0027】
この態様によると、第1信号に対する第2信号の遅延時間をT
P、回路ユニットの個数をNとするとき、出力信号の位相を、T
P/Nを単位遅延幅として制御できる。
【0028】
キャパシタの充電電流あるいは放電電流(充放電電流と総称する)を規定する電流源が不要であるため、一実施の形態において、低電圧動作が可能となる。
【0029】
また電流源を用いる構成では、電流源をバイアスするバイアス回路が必要であり、動作開始時の遅延が問題となり得る。一方、この態様ではバイアス回路が不要であるため、一実施の形態において、動作開始時にバイアス回路の起動を待たずに位相補間動作が可能となる。
【0030】
また抵抗や電流源を用いず、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタのみでキャパシタを放電(あるいは充電)する構成では、MOSトランジスタのゲート長Lにもとづいて充放電電流を規定する必要があるが、この場合、電流を小さくするためにゲート長Lを大きくするとゲート容量が大きくなり、消費電力が増大する。一方、MOSトランジスタのチャネル幅Wにもとづいて充放電電流を調節する手法をとることも可能であるが、電流を小さくするためにチャネル幅Wを小さくすることは、バラツキ増大を招き、性能が低下することになる。加えて、チャネル幅Wの最小幅には、プロセス製造上の限界がある。そのため、MOSFETのパラメータW/Lのみによる充放電電流の設計手法では、低消費電力と高性能を両立することは難しい。これに対して、この態様では、抵抗によって充放電電流を規定することができる。したがって一実施の形態において、第1スイッチのゲート容量を小さくすることも可能であり、消費電力を低減できる。
【0031】
さらには、キャパシタの容量と抵抗の抵抗値の両方をパラメータとした回路設計が可能であるため、精度、回路面積、消費電力などのバランスを考慮した設計が可能となる。
【0032】
第1経路および第2経路はそれぞれ、第1スイッチおよび第2スイッチを含んでもよい。第1経路の第1スイッチには、第1信号が入力され、第2経路の第1スイッチには、第2信号が入力され、第1経路の第2スイッチには、入力コードの対応するビットが入力され、第2経路の第2スイッチには、入力コードの対応するビットの相補信号が入力されてもよい。
【0033】
第2スイッチは、第1スイッチと抵抗の間に設けられてもよい。これにより、逆の場合に比べて、DNL(微分非直線性誤差)、INL(積分非直線性誤差)を改善できる。
【0034】
第1経路および第2経路はそれぞれ、第1スイッチを挟んで第2スイッチと反対側に設けられた第3スイッチをさらに含んでもよい。第1経路の第3スイッチには、入力コードの対応するビットが入力され、第2経路の第3スイッチには、入力コードの対応するビットの相補信号が入力されてもよい。
これにより、抵抗側および中間ライン側両方に対するクロックフィードスルーおよびチャージインジェクションの影響を抑制でき、DNL(微分非直線性誤差)、INL(積分非直線性誤差)をさらに小さくできる。
【0035】
抵抗の一端は第2ラインと接続され、第1経路は、抵抗の他端と中間ラインの間に設けられてもよい。
【0036】
抵抗の一端は中間ラインと接続され、第1経路は、抵抗の他端と第2ラインの間に設けられてもよい。
【0037】
初期化回路は、第1ラインと中間ラインの間に設けられる初期化トランジスタと、第1信号と第2信号がともに第1レベルである期間、初期化トランジスタをオンする論理ゲートと、を含んでもよい。
【0038】
キャパシタは可変キャパシタであってもよい。キャパシタの他端は接地されてもよい。
【0039】
本発明の別の態様は、半導体集積回路に関する。半導体集積回路は、遅延パルス発生器を備える。遅延パルス発生器は、セット信号を生成するセット信号発生器と、リセット信号を生成するリセット信号発生器と、を備えてもよい。セット信号発生器とリセット信号発生器の少なくとも一方は、上述のいずれかのタイミング発生器を含んでもよい。遅延パルス発生器は、セット信号発生器の出力信号に応じて第1レベル、リセット信号発生器の出力信号に応じて第2レベルに遷移するパルス信号を出力してもよい。
【0040】
パルス信号は、パルス幅変調信号であってもよい。両側のエッジを変調する場合、セット信号発生器とリセット信号発生器の両方を、上述のタイミング発生器で構成してもよい。片側のエッジのみを変調する場合、セット信号発生器とリセット信号発生器の一方のみを、上述のタイミング発生器で構成し、他方は固定遅延回路で構成してもよい。
【0041】
半導体集積回路は、D級アンプのコントローラ、DC/DCコンバータのコントローラ、LEDドライバのコントローラ、モータのコントローラであってもよい。
【0042】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、あるいは本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【0043】
さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0044】
本発明のある態様によれば、従来と異なる位相補間器を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0047】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさず、あるいは機能を阻害しない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0048】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさず、あるいは機能を阻害しない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0049】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る位相補間器700の回路図である。位相補間器700は、第1入力ノードIN1、第2入力ノードIN2および出力ノードOUTを有する。2つの入力ノードIN1,IN2には、第1タイミングφ
Aにエッジを有する第1信号S
1と、第2タイミングφ
Bにエッジを有する第2信号S
2が入力される。位相補間器700は、入力コードD
CNTに応じたタイミングφ
OUTにエッジを有する出力信号S
OUTを生成し、出力ノードOUTから出力する。ここでは理解の容易化のために、第1タイミングφ
Aは、第2タイミングφ
Bに先行するものとし、それらの時間差をT
Pとする。この時間差T
Pを基準時間T
Pとも称する。また、この実施の形態ではタイミング(位相)を規定するエッジは、ポジエッジ(立ち上がりエッジ、リーディングエッジ)とする。
【0050】
位相補間器700は、第1ライン702、第2ライン704、中間ライン706、キャパシタC
1、初期化回路710、複数の回路ユニット720_1〜720_N、出力回路730および入力バッファ740を備える。回路ユニット720の個数Nは、位相補間器700の階調数(時間分解能)、言い換えれば入力コードD
CNTの階調数に対応しており、入力コードD
CNTをサーモメータコードで表記したときのビット数と等しい。
【0051】
第1ライン702には第1電圧が、第2ライン704には第2電圧が供給されている。本実施の形態において第1電圧は電源電圧V
DD、第2電圧は接地電圧V
SS(V
GND)であり、したがって第1ライン702は電源ライン、第2ライン704は接地ラインとなる。
【0052】
キャパシタC
1の一端は中間ライン706と接続され、他端は接地されてその電位が固定されている。
【0053】
初期化回路710は、第1ライン702と中間ライン706の間に設けられ、第1信号S
1と第2信号S
2がともに第1レベル(ローレベル)である期間、キャパシタC
1の電圧(キャパシタ電圧V
C1という)を初期化する。ここでは初期化電圧は、第1ライン702の電源電圧V
DDである。
【0054】
複数の回路ユニット720_1〜720_Nは、中間ライン706と第2ライン704の間に並列に接続される。複数の回路ユニット720_1〜720_Nは、キャパシタC
1の電荷を放電する機能を有する。
【0055】
出力回路730は、キャパシタ電圧V
C1が所定のしきい値V
THとクロスするとレベルが変化する出力信号S
OUTを生成する。キャパシタ電圧V
C1と所定のしきい値V
THがクロスするタイミングが出力タイミングφ
OUTであり、出力信号S
OUTは出力タイミングφ
OUTにエッジを有する。その限りでないが、たとえば出力回路730は、たとえばCMOSインバータあるいはバッファ、電圧コンパレータ、ダイナミックラッチ回路、レベルシフト回路など、電圧信号を2値化する電圧比較手段で構成できる。
【0056】
複数の回路ユニット720_1〜720_Nは同様に構成される。各回路ユニット720は、抵抗R
g、第1経路724、第2経路726を含む。
【0057】
抵抗R
gの一端は、第2ライン704と接続される。第1経路724は、抵抗R
gの他端と中間ライン706の間に設けられる。第1経路724は、第1信号S
1が第2レベル(ハイ)であり、かつ入力コードD
CNTの対応するビットselが第1値(ここでは1とする)であるときオンとなる。
【0058】
また第2経路726は、抵抗R
gの他端と中間ライン706の間に、第1経路724と並列に設けられる。第2経路726は、第2信号S
2が第2レベル(ハイ)であり、かつ入力コードD
CNTの対応するビットselが第2値(ここでは0とする)であるときオンとなる。
【0059】
以上が位相補間器700の基本構成である。
この位相補間器700は、回路構成がシンプルであり、電流源を有しないため、低電圧で動作である。また、詳しくは後述するように、プロセスばらつき、電源電圧変動、温度変動の影響を受けにくく、また高速で起動させることができる。
【0060】
また抵抗R
gのばらつきは、第1信号S
1および第2信号S
2のエッジのタイミングφ
A,φ
Bの相対時間差内に圧縮されて現れるため、その影響は実質的に無視できる。これにより、抵抗R
gを高精度にトリミングするなどの処理が不要となる。
【0061】
本発明は、
図1のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、回路に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や回路動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な実施例や変形例を説明する。
【0062】
(第1実施例)
図2は、第1実施例に係る位相補間器700Aの回路図である。初期化回路710は、PMOSトランジスタである初期化トランジスタM
P1と、論理ゲート712を含む。論理ゲート712は、第1信号S
1と第2信号S
2の論理和に応じた信号を、初期化トランジスタM
P1のゲートに出力する。この例では論理ゲート712はORゲートであり、第1信号S
1と第2信号S
2が両方ローレベルの期間、初期化トランジスタM
P1がオンとなり、キャパシタ電圧V
C1がV
DDに初期化される。
【0063】
第1経路724は、直列に接続された第1スイッチSW
A1〜第3スイッチSW
A3を含む。同様に第2経路726は、直列に接続された第1スイッチSW
B1〜第3スイッチSW
B3を含む。
【0064】
第1スイッチSW
A1,SW
B1はNMOSトランジスタであり、それぞれのゲートには、第1信号S
1,S
2が入力される。第1経路724の第1スイッチSW
A1は、第1信号S
1が第2レベル(ハイ)の期間にオンとなり、第2経路726の第1スイッチSW
B1は、第2信号S
2が第2レベル(ハイ)の期間にオンとなる。入力バッファ740は、第1信号S
1、第2信号S
2に応じて複数の回路ユニット720に含まれる複数の第1スイッチSW
A1,SW
B1を駆動する。なお、第1信号S
1および第2信号S
2を生成する回路の出力インピーダンスが十分に低い場合(駆動能力が高い場合)、入力バッファ740は省略してもよい。
【0065】
第1経路724の第2スイッチSW
A2と第3スイッチSW
A3のペアは、第2経路726の第2スイッチSW
B2と第3スイッチSW
B3のペアと相補的にオン(オフ)する。第2スイッチおよび第3スイッチSW
A2,SW
A2,SW
B2,SW
B2は、第1スイッチSW
A1,SW
B1と同型のトランジスタ(すなわちNMOSトランジスタ)を用いればよい。
【0066】
位相補間器700に入力される入力コードD
CNTはNビットのサーモメータコードとすることができ、サーモメータコードは、N個のビットsel[0]〜sel[N−1]を含む。各ビットselは、複数の回路ユニット720のうち対応するひとつに供給される。各回路ユニット720_i(1≦i≦N)において、第1経路724の第2スイッチSW
A2と第3スイッチSW
A3のペアは、対応するビットsel[i−1]に応じて制御され、第2経路726の第2スイッチSW
B2と第3スイッチSW
B3のペアは、対応するビットsel[i−1]の反転信号#sel[i−1]に応じて制御される。反転信号#selは、インバータ722によって生成することができる。
【0067】
複数の回路ユニット720_1〜720_Nに関して、第1経路724(もしくは第2経路726)が導通状態であるときに、その経路のインピーダンスは等しいものとし、そのインピーダンスをRとする。第1経路724のインピーダンスRは、抵抗R
gの抵抗値と、複数のスイッチSW
A1〜SW
A3のオン抵抗の合計であり、第2経路726のインピーダンスRは、抵抗R
gの抵抗値と、複数のスイッチSW
B1〜SW
B3のオン抵抗の合計である。
【0068】
図3(a)〜(c)は、出力回路730の構成例の回路図である。
図3(a)の出力回路730は、CMOSインバータである。
図3(b)の出力回路730は、差動アンプを用いた電圧コンパレータである。
図3(c)の出力回路730は、レベルシフト回路を利用して構成される。
【0069】
図4は、出力回路730の構成例の回路図である。
図4の出力回路730は、ダイナミックラッチ回路を利用して構成される。キャパシタ電圧V
C1は、ダイナミックラッチ回路のイネーブル端子(ラッチ端子、クロック入力)に入力される。この出力回路730にはさらにリセット信号RST(反転論理)が入力されており、電圧比較動作前に初期化可能に構成される。初期化された状態では出力S
OUTはハイである。キャパシタ電圧V
C1がしきい値V
THとクロスすると、ダイナミックラッチ回路が活性化し、V
DDとV
GNDの電圧比較が行われ、出力S
OUTがローレベルに遷移する。
【0070】
出力回路730は、位相補間器700の後段の回路と一体に形成されてもよい。たとえば位相補間器700の後段に、差動フリップフロップが配置される場合、出力回路730は差動フリップフロップに内蔵することができる。
図5は、出力回路730が組み込まれた差動フリップフロップの回路図である。
図5の出力回路730の構成は
図4のダイナミックラッチ回路と同様である。
【0071】
図6は、キャパシタC
1の構成例の回路図である。キャパシタC
1は、可変容量で構成してもよい。可変容量の構成は特に限定されず、公知技術を用いればよい。キャパシタC
1に加えて、あるいはそれに代えて、抵抗R
gを可変抵抗としてもよい。
【0072】
以上が位相補間器700Aの構成である。続いて位相補間器700Aの動作を説明する。
図7は、位相補間器700Aの動作波形図である。ここではN=4を例とする。時刻t
0より前において、第1信号S
1、第2信号S
2はともにローレベルであり、したがってキャパシタ電圧V
C1は初期値である電源電圧V
DDに初期化されている。第1信号S
1、第2信号S
2がローレベルであるから、第1スイッチSW
A1、SW
B1はともにオフであり、第1経路724、第2経路726は遮断状態であり、キャパシタC
1に電荷が保持される。
【0073】
図8(a)、(b)は、位相補間器700の動作を説明する等価回路図である。
図8(a)は、第1信号S
1がハイレベル、第2信号S
2がローレベルの状態、すなわち
図7の時刻t
0〜t
1を表す。また
図8(b)は、第1信号S
1および第2信号S
2が両方ハイレベルの状態、すなわち
図7の時刻t
1以降を表す。キャパシタ電圧V
C1がしきい値電圧V
THとクロスすると、出力信号S
OUTが遷移する。
【0074】
位相補間器700に入力されるサーモメータコードsel[N−1:0]のうち、値が1であるビットの個数をKとする。ただし、0≦K≦Nである。
【0075】
図8(a)の状態では、キャパシタC
1は、K個の抵抗Rの並列接続回路721aによって放電される。並列接続回路721aの抵抗は、R/Kであり、時定数はC R/Kである。したがって
図Aの時刻t
1におけるキャパシタ電圧V
C1(t
1)は、式(1)で表される。
V
C1(t
1)=V
DD・exp(−T
P/(C R/K)) …(1)
【0076】
図8(b)の状態では、制御コードD
CNTの値(すなわちK)に依存せず、キャパシタC
1は、N個すべての抵抗Rの並列接続回路721bによって放電される。並列接続回路721bの抵抗はR/Nであり、時定数はC R/Nである。
【0077】
式(1)の電圧V
C1(t
1)を初期値として、電圧V
C1がしきい値電圧V
THに低下するのに要する時間τは、式(2)で表される。
τ=C R/N ln(V
C1(t
1)/V
TH) …(2)
【0078】
式(1)を式(2)に代入すると、式(3)を得る。
τ=C R/N ln(V
DD・exp(−T
P/(C R/K))/V
TH)
=C R/N {ln(V
DD/V
TH)−T
P/(C R/K))}
=C R/N ln(V
DD/V
TH)−T
P K/N (3)
【0079】
したがって、時刻t
0から時刻t
3までの遅延時間T
DELAYは、式(4)で表される。
T
DELAY=T
P+τ
=C R/N ln(V
DD/V
TH)+T
P (N−K)/N (4)
【0080】
式(4)の右辺第1項は制御コードに依存しない定数(オフセット遅延)である。したがって実施の形態に係る位相補間器700によれば、基準時間T
P/Nを時間分解能(単位遅延幅)として、出力信号S
OUTの位相φ
OUTを制御することができる。
【0081】
定電流源でキャパシタを放電(あるいは充電)すると、キャパシタ電圧は直線的に変化する。一方、抵抗でキャパシタを放電(あるいは充電)すると、キャパシタ電圧はCR時定数でCR時定数で決まる指数関数にしたがって非直線的に変化する。したがって、直感的には、抵抗を用いると、定電流源を用いる場合に比べて精度が劣化するように思われる。しかしながら、式(4)は、遅延時間を単位遅延幅T
P/N刻みで正確に制御可能であることを数学的に示しており、抵抗を用いることのデメリットは存在しない。抵抗を用いることのメリットについては後述する。
【0082】
この位相補間器700により正確な位相遅延を発生させるためには、(N−K)=1であるときの遅延時間T
DELAYが、基準時間T
Pより大きくなければならない。そうすると、基準時間T
Pは、以下の範囲で用いることができる。
T
P<C R ln(V
DD/V
TH)/(N−1)
【0083】
なお、初期化されたキャパシタC
1を、N個すべての回路ユニット720で放電したときに、放電開始から基準時間T
Pの経過後に、キャパシタ電圧V
C1がしきい値電圧V
THとクロスするように、インピーダンスRおよびキャパシタCを定めてもよい。言い換えれば、以下の関係式が成り立つように、RとCを定めてもよい。
T
P=C R/N ln(V
DD/V
TH) …(5)
【0084】
式(5)を式(4)に代入すると、式(6)を得る。
T
DELAY=T
P+T
P/N×(N−K) …(6)
を得る。つまりK=Nの場合に、出力信号S
OUTの位相を、第2信号S
2の位相と一致させることができる。
【0085】
図9は、位相補間器700の動作の制御コードの依存性を説明する図である。ここでは理解の容易化のためキャパシタ電圧V
C1の電圧変化を直線で表す。また式(5)を満たすように回路が設計されているものとする。
図9には、制御コードsel[3:0]=[1111]〜[0000]それぞれの波形が示される。なお、制御コードはサーモメータコードであり、1の個数のみに意味があり、ビットの順序に本質的な意味はないことに留意されたい。
図9から明らかなように、出力信号S
OUTの位相φ
OUTを、制御コードsel[3:0]に応じて制御することができる。
【0086】
以上が位相補間器700Aの動作である。続いて位相補間器700Aの利点を説明する。位相補間器700の利点は、いくつかの比較技術との対比によって明確となる。
【0087】
(第1の比較技術)
図10は、第1の比較技術に係る位相補間器700Rの簡略化された回路図である。なお、比較技術を公知技術と認定してはならない。位相補間器700Rの回路ユニット720Rは、回路ユニット720の抵抗R
gに代えて、電流源CSが設けられる。この位相補間器700Rでは、電流源CSの両端間電圧ΔVを、飽和電圧V
SATより大きく維持しなければならない。そのため、電源電圧V
DDを小さくすることができず、また消費電力が大きくなってしまう。
【0088】
これに対して実施の形態に係る位相補間器700では、電流源CSが存在しないため、電源電圧V
DDを低くすることができ、消費電力を下げることができる。たとえば、0.18μm〜28nmのプロセス世代では、MOSトランジスタのしきい値は、Vth=0.25〜0.7V、オーバードライバ電圧はVod=0.15〜0.2V程度である。したがって、実施の形態に係る位相補間器700では、V
DD=1V以下での動作が可能であり、製作したサンプルでは、0.6V以下での動作も可能であった。
【0089】
また比較技術のように電流源CSを用いると、電流源CSをバイアスするためのバイアス回路750が必要となるため、回路面積の点でも有利である。また、バイアス電圧のノイズの影響を考慮する必要がないため、レイアウトが容易となる。
【0090】
さらに比較技術では、ICの電源投入後、バイアス回路750が起動して初めて、位相補間器700Rが動作可能となる。
【0091】
これに対して実施の形態に係る位相補間器700では、ICの電源投入後、直ちに動作可能となる。
【0092】
(第2の比較技術)
図11は、第2の比較技術に係る位相補間器700Sの簡略化された回路図である。位相補間器700Sの回路ユニット720Sは、
図10の位相補間器700Rから電流源CSを省略した構成である。この比較技術では、第1経路724のインピーダンスRは、第1スイッチSW
A1およびスイッチSW
A2のオン抵抗の合計で規定され、第2経路726のインピーダンスRは、第1スイッチSW
B1およびスイッチSW
B2のオン抵抗の合計で規定される。
【0093】
位相補間器700Sの消費電力を下げるためには、インピーダンスRを高くして、放電電流を小さくすることが望ましい。しかしながら位相補間器700Sにおいて、スイッチSW
A1、SW
A2(SW
B1,SW
B2)のオン抵抗を大きくするためには、MOSトランジスタのゲート長Lを長くしなければならない。ゲート長Lが長くなると、MOSトランジスタのゲート容量が増大するため、ゲート電圧のスルーレートが低下し、スイッチング損失が増大する。また、スイッチをターンオン、あるいはターンオフさせるために必要なゲート駆動電流も増大する。このため
図11の位相補間器700Sでは、消費電力の低下に限界がある。
【0094】
一方、MOSトランジスタのチャネル幅Wにもとづいて充放電電流を調節する手法をとることも可能であるが、電流を小さくするためにチャネル幅Wを小さくすることは、バラツキ増大を招き、性能が低下することになる。加えて、チャネル幅Wの最小幅には、プロセス製造上の限界がある。そのため、MOSFETのパラメータW/Lのみによる充放電電流の設計手法では、低消費電力と高性能を両立することは難しい。
【0095】
これに対して位相補間器700(700A、あるいは後出の700B,700C)によれば、抵抗R
gの抵抗値を大きくすれば、SW
A1〜SW
A3,SW
B1〜SW
B3のゲート長Lを長くする必要がないため、スイッチング損失を低減でき、またゲート駆動電流を低減でき、チャネル幅Wを小さくする必要がないため、バラツキの増加およびそれに伴う性能の低下を抑制できる。
【0096】
(第2実施例)
図12は、第2実施例に係る位相補間器700Bの回路図である。この実施例では、
図2の回路ユニット720から、中間ライン706側の第3スイッチSW
A3,SW
B3が省略されている。その他の構成は、位相補間器700Aと同様である。第2実施例によっても、制御コードに応じた位相を有する出力信号S
OUTを生成できる。また第1実施例に関連して説明したのと同様の利点を有する。
【0097】
(第3実施例)
図13は、第3実施例に係る位相補間器700Cの回路図である。この実施例では、
図2の回路ユニット720から、抵抗R
g側の第2スイッチSW
A2,SW
B2が省略されている。その他の構成は、位相補間器700Aと同様である。第3実施例によっても、制御コードに応じた位相を有する出力信号S
OUTを生成できる。また第1実施例に関連して説明したのと同様の利点を有する。
【0098】
(比較評価)
続いて、第1〜第3実施例に係る位相補間器700A,700B,700Cの特性を比較する。
【0099】
図14(a)〜(c)は、第1〜第3実施例に係る位相補間器700A〜700Cそれぞれの動作波形図である。
図14(a)〜(c)はシミュレーション結果であり、V
DD=1.5V、N=16である。
図14(a)〜(c)を対比すると、第1信号S
1、第2信号S
2が遷移するタイミングにおけるキャパシタ電圧V
C1の振る舞いが異なっている。
【0100】
図15(a)、(b)は、第1〜第3実施例に係る位相補間器700A〜700Cそれぞれの、入力コードと遅延量の関係を示す図である。
図15(b)は、入力コードがゼロであるときの遅延量がゼロになるようにオフセットした相対遅延時間を示す。
【0101】
図16(a)は、第1〜第3実施例に係る位相補間器700A〜700CそれぞれのDNLを示す図であり、
図16(b)は、第1〜第3実施例に係る位相補間器700A〜700CそれぞれのINLを示す図である。
【0102】
シミュレーション結果について説明する。
・第1実施例
より詳しくは、第1実施例700Aに関連する
図14(a)を参照すると、
図9に示すような最も理想に近い波形で動作する。第1経路724側に着目すると、第1スイッチSW
A1の両側にスイッチSW
A2,SW
A3が設けたことにより、第1スイッチSW
A1におけるクロックフィードスルーおよびチャージインジェクションが抑制されていることに起因する。
【0103】
すなわち、第1信号S
1が入力される第1スイッチSW
A1の上下のスイッチSW
A2,SW
A3をオフできるため、第1スイッチSW
A1のクロックフィードスルー、チャージインジェクションによる中間ライン706への不要な、あるいは好ましくないチャージが抑制され、不要な電圧変動が抑制される。
【0104】
さらに上下のスイッチSW
A2,SW
A3をオフできるため、SW
A1とSW
A2間のノード、SW
A1とSW
A3の間のノードに対する不要な、あるいは好ましくないチャージが抑制され、これにより中間ライン706の電圧V
C1への不要な影響が取り除かれている。第2経路726側についても同様である。
【0105】
第1実施例では、上述のように、上側、下側両方に対するチャージインジェクション、クロックフィードスルーの影響が抑制されているため、
図16(a)、(b)に示すように、INL,DNLともに、ゼロに近いきわめて良好な特性を示している。
【0106】
・第2実施例
第2実施例700Bに関連する
図14(b)を参照すると、上側のスイッチSW
A3が無いため、第1スイッチSW
A1のクロックフィードスルー、チャージインジェクションにより、中間ライン706への不要なチャージが発生し、キャパシタ電圧V
C1が変動する(作用1)。
【0107】
さらに上側のスイッチSW
A3が無いため、第1スイッチSW
A1がターンオンしたときに、SW
A1とSW
A2間のノードに対する不要な、あるいは好ましくないチャージが発生し、中間ライン706の電荷から不要なディスチャージを発生させる(作用2)。
【0108】
図16(a)を参照すると、DNLの初めのコードでズレが大きく、少しずつ減少し、理想に近づくが、最終的に理想と交わることはなく、中間のコード(6から7)を境界として、DNLが増加する。これは、作用1と作用2は互いに相殺しあうが、作用1の方がわずかに大きい影響をもつためであり、わずかに遅延が大きくなり、結果としてDNLが増加する。DNLが理想より大きいため、
図16(b)に示すようにINLは単調増加を示す。
【0109】
・第3実施例
第3実施例700Cに関連する
図14(c)では、上側のスイッチSW
A3が存在するため、第1スイッチSW
A1から中間ライン706へのクロックフィードスルー、チャージインジェクションは抑制されている。
【0110】
一方、下側のスイッチSW
A2が無いため、第1スイッチSW
A1がターンオンしたときに、SW
A1とSW
A3の間のノードの余分なチャージが発生する。このチャージによって、抵抗R
gの上側ノードの電圧が下がり、第1スイッチSW
A1のゲートソース間電圧V
gsが大きくなり、オン抵抗が小さくなり、中間ライン706の放電が早まってしまう。
【0111】
図16(a)を参照すると、第3実施例ではDNLのズレがマイナス側に大きくなる。これは、第2実施例とは異なり、ディスチャージの影響が大きいことに起因する。そのため
図16(b)に示すようにINLも大きく減少していく。
【0112】
これらの比較結果から、第1、第2、第3実施例の順で、すぐれた特性を示す。したがって、回路素子数が大きくて構わない場合には、第1実施例を採用するとよい。一方、特性を妥協できる場合には、第2実施例を採用することで回路面積を小さくできる。第3実施例を積極的に採用すべき理由は見当たらないが、要求される性能によっては、第3実施例であっても十分に有用である。
【0113】
(第2の実施の形態)
図17は、第2の実施の形態に係る位相補間器700Cの回路図である。この位相補間器700Cは、第1の実施の形態に係る位相補間器700(
図1)と抵抗R
gの配置が異なっている。すなわち第1の実施の形態では、抵抗R
gが第1経路724よりも第2ライン704側に設けられていたのに対して、第2の実施の形態に係る位相補間器700Cでは、抵抗R
gが第1経路724よりも中間ライン706側に設けられている。この位相補間器700Cによっても、第1の実施の形態と同じ効果を得ることができる。
【0114】
(第4実施例)
続いて、第2の実施の形態に係る位相補間器700Cの具体的な構成例を説明する。
図18は、第4実施例に係る位相補間器700Dの回路図である。位相補間器700Dにおいて、第1経路724、第2経路726の構成は、
図2のそれらと同様である。これにより、クロックフィードスルーおよびチャージインジェクションの影響を抑制でき、DNL(微分非直線性誤差)、INL(積分非直線性誤差)を小さくできる。
【0115】
(第5実施例)
図19は、第5実施例に係る位相補間器700Eの回路図である。位相補間器700Eでは、第1経路724から、第2ライン704側のスイッチSW
A2が省略され、また第2経路726からも、第2ライン704側のスイッチSW
B2が省略されている。
【0116】
第5実施例では、第1スイッチSW
A1と抵抗R
gの間には第3スイッチSW
A3が設けられ、第1スイッチSW
B1と抵抗R
gの間には、第3スイッチSW
B3が設けられる。したがって第3スイッチSW
A3,SW
B3によって、抵抗側に対するクロックフィードスルーおよびチャージインジェクションの影響を抑制できる。
【0117】
一方、第2ライン704が接地ライン(あるいは電源ライン)の場合、そのインピーダンスは十分に低いため、第1スイッチSW
A1、第1スイッチSW
B1のソース側へのチャージインジェクション、クロックフィードスルーが発生しても、第2ライン704の電位の変動は無視できる。したがって第2スイッチSW
A2、第2スイッチSW
B2を省略したとしても、第4実施例と遜色の無いDNL,INLを実現できる。第5実施例は、トランジスタの個数を減らすことができるため、回路面積を小さくできる。
【0118】
(第3の実施の形態)
図20は、第3の実施の形態に係る位相補間器700Fの回路図である。第1、第2の実施の形態では、第1信号S
1、第2信号S
2のポジエッジの位相に着目したが、第3の実施の形態では、ネガエッジ(立ち下がりエッジ、トレーリングエッジ)をトリガとして動作する。位相補間器700Fは、
図1の位相補間器700を天地反転した構成を有する。
【0119】
(第6実施例)
図21は、第6実施例に係る位相補間器700Gの回路図である。回路ユニット720において、第1経路724、第2経路726はそれぞれ、第1実施例と同様に、3個のスイッチSW
A1〜SW
A3,SW
B1〜SW
B3を含む。各スイッチはPMOSトランジスタである。
【0120】
初期化回路710は、NMOSトランジスタである初期化トランジスタM
N1と、論理ゲート712を含む。この実施例では、論理ゲート712はAND(論理積)ゲートである。
【0121】
図22は、
図21の位相補間器700Gの動作波形図である。
図20〜
図22を参照して説明したように、ネガエッジをトリガとする位相補間器700も構成できる。また
図21の位相補間器700GからスイッチSW
A3,SW
B3を省略してもよい。あるいは
図21の位相補間器700GからスイッチSW
A2,SW
B2を省略してもよい。
【0122】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0123】
第2の実施の形態(
図17〜
図19)に関しても、天地反転してPチャンネルとNチャンネルを入れ替えた構成も本発明の一態様として有効である。
【0124】
第1経路724の上側、下側の両方に抵抗R
gを挿入し、第1経路724と並列に第2経路726を接続してもよい。
【0125】
制御コードD
CNTがMビットのバイナリコードとして与えられる場合、制御コードD
CNTを複数のビットsel[0]〜sel[N−1]に展開すればよい。これには、バイナリコードをサーモメータコードに変換するデコーダを用いてもよいが、簡易には以下の処理を行ってもよい。たとえばM=3の場合、N=2
M=8階調の制御が可能である。この場合、バイナリのMSB(Most Significant Bit)を、sel[0]〜sel[3]とし、バイナリの2ビット目を、sel[4]〜sel[5]とし、バイナリのLSB(Least Significant Bit)を、sel[6]としてもよい。
【0126】
(用途)
続いて、位相補間器の用途を説明する。上述した位相補間器は、タイミング発生器に用いることができる。はじめに
図23、
図24を参照して公知のタイミング発生器について、機能や構成を説明する。本明細書において、任意のタイミング(位相)を発生する回路を、タイミング発生器と称する。
【0127】
図23(a)〜(c)は、従来のタイミング発生器の回路図である。
図23(a)のタイミング発生器10は、デジタルのカウンタ12および判定器14を含む。カウンタ12には、目標となるタイミングに応じた初期値INITがセットされる。基準となるタイミングでカウンタ12をアクティブにすると、カウント動作が開始する。判定器14は、カウンタ12のカウント値が所定値になると、出力OUTを変化させる。出力OUTは、基準となるタイミングから、T
CK×INITだけ遅延した信号となる。このタイミング発生器10における時間分解能はT
CKであり、カウンタ12に与えるクロック信号CLKの周波数による制約を受ける。
【0128】
図23(b)のタイミング発生器20は、直列に接続された複数の遅延要素(バッファ)D
1〜D
Nと、複数の遅延要素の出力タップを選択するセレクタ22を含む。この構成における時間分解能は、遅延要素の遅延時間τ
dによる制約を受ける。遅延時間τ
dは製造バラツキ、温度、電源電圧条件により大きく変わるため、通常は遅延時間τ
dを安定化するためのフィードバックループが構築される。
【0129】
図23(c)のタイミング発生器30は、PLL(Phase Locked Loop)回路を含む。PLL回路は、位相比較器PC、チャージポンプCP、VCO(Voltage Controlled Oscillator)32および分周器34を含む。VCO32は、リング発振器を含み、リング発振器に設けられた複数のタップから、セレクタ36によってひとつのクロックが選択可能となっている。
図23(c)のタイミング発生器30は回路面積が大きく、また消費電力が大きい。またフィードバックループが安定化されるまでに時間を要するため、起動時間が長いという問題がある。
【0130】
図23(a)〜(c)のタイミング発生器を用いると、それを利用した応用回路の速度の上限もしくは最小値遅延値が、タイミング発生器によって制約を受ける。そこで別のアプローチとして、位相補間器(PI:Phase Interpolator)を利用した回路が提案されている(非特許文献1)。非特許文献1には、2入力、3出力の位相補間器(フェーズブレンダとも称される)を多段に接続する回路構成が開示されている。
図24(a)、(b)は、従来の位相補間器を用いたタイミング発生器の回路図である。
図24(a)のタイミング発生器40は、トーナメント状に配置された複数の位相補間器42で構成される。この方式の場合、Mビット(2
M階調)の分解能を得るために、(2×2
M−1)個の位相補間器42が必要であり、回路面積が膨大となる。またタイミングの異なる2
M個の位相出力φ
outの中の出力から一つを選択するためのマルチプレクサ44が必要である。さらに、最終的な出力に寄与しない信号経路の位相補間器42も動作するため、無駄な電力消費が発生している。
【0131】
図24(b)のタイミング発生器50は、直列に接続された複数の位相補間器52およびマルチプレクサ54を備えるパイプライン型で構成される。この方式の場合、Mビット(2
M階調)の分解能を得るために、(M+1)個の位相補間器52とM個のマルチプレクサ54で済むため、
図24(a)のタイミング発生器40に比べて回路面積を大幅に削減できる。
【0132】
実施の形態に係る位相補間器は、従来のタイミング発生器にも採用することができるが、従来のタイミング発生器には以下の問題がある。本発明者は、
図24(b)のタイミング発生器50について検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
図24(b)のタイミング発生器50では、中間的な信号がマルチプレクサ(アナログスイッチ)54を通過する。
【0133】
各マルチプレクサ54は、常に2つの信号経路が選択されるが、選択される2つの信号経路の遅延量は完全に同一であることが求められる。言い換えれば、タイミング発生器50のタイミング制御の線形性(すなわち実効的な時間分解能)は、マルチプレクサ54の遅延量のバラツキによって制約を受ける。
【0134】
加えて、パルス信号がマルチプレクサを通過すると、波形歪みが発生する。この波形歪みも、タイミング発生器50のタイミング制御の線形性を劣化させる要因となる。
【0135】
さらに、時間分解能を1ビット高めるごとに、位相補間器52およびマルチプレクサ54の組み合わせを1段追加する必要がある。これは時間分解能1ビットの向上と引き替えに、遅延量のバラツキが増大することを意味し、このトレードオフの関係により、時間分解能の向上が大きな制約を受ける。
【0136】
以下では、従来のタイミング発生器よりも高精度なタイミング発生器について説明する。
【0137】
図25は、実施の形態に係るタイミング発生器100のブロック図である。タイミング発生器100は、複数の位相補間器PIの組み合わせで構成される。
【0138】
位相補間器PIは、2つの入力ノードIN1,IN2とひとつの出力ノードOUTを有する。2つの入力ノードIN1,IN2には、第1タイミングφ
Aにエッジを有する第1信号S
1と、第2タイミングφ
Bにエッジを有する第2信号S
2が入力される。位相補間器PIは、制御データに応じたタイミングφ
OUTにエッジを有する出力信号を生成し、出力ノードOUTから出力する。ここでは理解の容易化のために、第1タイミングφ
Aは、第2タイミングφ
Bに先行するものとする。
【0139】
図26は、位相補間器PIの基本動作を説明する図である。時刻t
0に入力ノードIN1の第1信号S
1のエッジが発生し、時刻t
0から所定時間ΔT経過後の時刻t
1に、入力ノードIN2の第2信号S
2のエッジが発生する。この位相補間器PIの階調数をK(K≧2)とすると、時間分解能ΔtはΔT/Kで与えられる。位相補間器PIには、制御データD
CNTが与えられ、この制御データD
CNTの値を10進数でdとするとき、出力信号S
OUTのエッジの発生する時刻t
2(出力タイミングφ
OUT)は、以下の式で与えられる。
t
2=t
1+τ+d×Δt
τは所定のオフセット遅延量であり、τ≧0である。
【0140】
位相補間器PIの構成は特に限定されず、公知技術を用いてもよいし、後述する構成を採用してもよい。
【0141】
図25に戻る。タイミング発生器100は、N個(N≧2)のステージ110_1〜110_Nを備える。各ステージ110は、第1位相補間器(以下、主補間器という)112および第2位相補間器(以下、副補間器という)114を含む。
【0142】
i番目(1≦i≦N−1)のステージ110_iの主補間器112の出力ノードOUTは、(i+1)番目のステージ110_(i+1)の主補間器112および副補間器114それぞれの第1入力ノードIN1と接続される。またi番目のステージ110_iの副補間器114の出力ノードOUTは、(i+1)番目のステージ110_(i+1)の主補間器112および副補間器114それぞれの第2入力ノードIN2と接続される。
【0143】
1番目のステージ110_1の主補間器112、副補間器114には、一点鎖線で示すように、2つの基準信号REF
1,REF
2を与えてもよい。一方の基準信号REF
2のエッジは、他方REF
1のエッジから所定時間ΔT
0遅延している。
【0144】
各ステージは、異なる階調数Kを有することができ、i番目のステージの階調数をK
i(K≧2)と表す。もちろんすべてのステージの階調数を同じにしてもよい。
【0145】
各ステージ110には、制御データD
CNT[i]が与えられる。主補間器112は、制御データD
CNT[i]の値d
iに応じたタイミングφ
OUTA[i]にエッジを有する出力信号S
OUTA[i]を発生する。
【0146】
一方、副補間器114は、主補間器112のタイミングφ
OUTA[i]から所定の遅延時間ΔT
[i]、遅れたタイミングφ
OUTB[i]にエッジを有する出力信号S
OUTB[i]を発生する。
【0147】
主補間器112および副補間器114にはそれぞれ、制御データD
CNT[i]に応じた値d
A[i],d
B[i]が供給される。
【0148】
たとえば、主補間器112と副補間器114の構成が同一の場合、主補間器112と副補間器114に与えるコードに所定の差J
[i]を与えればよい。
d
A[i]=d
i
d
B[i]=d
i+J
i
とすればよい。J
[i]は定数であり、好ましくは1であるが、任意の別の値を用いてもよく、遅延時間ΔT
[i]は以下の式で表される。
ΔT
[i]=Δt
[i−1]×J
[i]
【0149】
以下では、J
[i]=1とし、遅延時間ΔT
[i]は時間分解能Δt
[i]と等しいものとし、以下の関係式が成り立つ。
Δt
[i]=Δt
[i−1]/K
i
【0150】
あるいは、主補間器112と副補間器114に同じ値d
iを与えたときに、所定の遅延時間ΔT
[i]が発生するように、主補間器112と副補間器114の回路構成に変更を加えてもよい。
【0151】
N番目のステージ110_Nでは、主補間器112と副補間器114の一方を省略してもよい。これにより回路面積を小さくできる。
【0152】
以上がタイミング発生器100の構成である。続いてその動作を説明する。
図27は、
図25のタイミング発生器100の動作波形図である。
【0153】
ここでは理解の容易化のために、N=2、K
1=K
2=4とする。また、各ステージのオフセット遅延量τをゼロとしている。1番目のステージに、時間差ΔT
0を有する基準信号REF
1とREF
2が入力される。
図27には、d
1=1、d
2=3を与えたときの動作が示される。
【0154】
1番目のステージの主補間器112の出力S
OUTA[1]のエッジのタイミングφ
A[1]は、時刻t
2に発生する。
t
2=t
1+Δt
[1]×d
1=t
1+Δt
[1]
1番目のステージの副補間器114の出力S
OUTB[1]のエッジのタイミングφ
B[1]は、時刻t
3に発生する。
t
3=t
2+ΔT
[1]
【0155】
2番目のステージの主補間器112の出力S
OUTA[2]のエッジのタイミングφ
A[2]は、時刻t
4に発生する。
t
4=t
3+Δt
[2]×d
2=t
3+3×Δt
[2]
2番目のステージの副補間器114の出力S
OUTB[2]のエッジのタイミングφ
B[2]は、時刻t
5に発生する。
t
5=t
4+ΔT
[2]
【0156】
この例では、2番目のステージの主補間器112の出力S
OUTA[2]が、タイミング発生器100の出力として取り出される。出力S
OUTA[2]のエッジφ
OUTA[2]は、2つの制御データD
CNTに応じた位相を有している。
【0157】
図28は、
図25のタイミング発生器のパイプライン動作を説明する図である。M
iは、i番目のステージの分解能を表しており、K
i=2
Miの関係が成り立つ。ステージが進む毎に、前のステージの2つの出力の時間差ΔTが、1/2
Mi倍となり、時間分解能が高くなっていく。
【0158】
以上がタイミング発生器100の動作である。このタイミング発生器100によれば、ステージの段数Nを増やすにしたがい、また、各ステージの分解能K
iを高めるにしたがい、位相の分解能を高めることができる。一般化すると、タイミング発生器100の階調数は、K
1×K
2×・・・×K
Nとなる。ステージ数をN,K
1=K
2=・・・=K
N=Kとすれば、K
N階調での位相制御が可能となり、時間分解能はΔT
0/K
Nとなる。たとえばK=16、N=2の場合、256階調(8ビット相当)の制御が可能である。
【0159】
タイミング発生器100は、以下のような利点を有する。
第1に、タイミング発生器100は、微細な時間分解能を得るために、必ずしも高速なクロックを必要としない。低速なクロックしか存在せず、2つの基準信号REF
1,REF
2の時間差ΔT
0が大きい場合には、ステージ数を増やす、および/または、各ステージの階調数を増やすことにより、時間分解能を高くすることができる。
【0160】
第2に、タイミング発生器100は回路面積が小さく、また消費電力も小さいという利点を有する。具体的には
図24(a)のタイミング発生器40との対比において、同じ時間分解能を得るために必要な位相補間器PIの個数を大幅に減らすことができる。また
図24(b)のタイミング発生器50も含めた対比においては、ステージごとの分解能Kを高めることで、同じ時間分解能を得るために必要なステージ数を減らすことができる。
【0161】
加えてタイミング発生器100ではすべての位相補間器PIが出力に寄与しており、無駄な消費電力が発生しておらず、消費電力の観点からも有利である。
【0162】
さらに消費電力に関連して、タイミング発生器100は、2つの基準信号REF
1,REF
2が変化したときだけ動作するため、無駄な消費電力が発生しない。
【0163】
第3に、タイミング発生器100は、信号経路上にアナログスイッチ(マルチプレクサ)が不要であり、かつ各ステージの分解能K
iによりステージ数Nを調整できるという利点を有する。上述したように、
図24(b)のタイミング発生器50は、信号経路上のマルチプレクサ(スイッチ)52によって、時間分解能が低下し、あるいは制約を受ける。また、
図24(b)のタイミング発生器50では、必要な時間分解能に応じてステージ数を増やさなければならない。ステージ数が増加すると、遅延量のバラツキを大きく受けることになり、タイミング制御の線形性が劣化し、実効的な時間分解能が低下する。これに対してタイミング発生器100では、信号経路を切りかえる必要がなく、マルチプレクサが不要であり、時間分解能を向上させても、ステージ数の増加を抑えることも可能であるため、数ps以下の時間分解能を、高い線形性で実現できる。もっともタイミング発生器100を、数十ps〜サブnsの時間分解能が要求されるアプリケーションに用いてもよい。
【0164】
第4に、タイミング発生器100はフィードバックループを有しないため、起動が高速であるという利点がある。
【0165】
第5に、タイミング発生器100の位相補間器として、
図1〜22を参照して説明した位相補間器を用いることにより、プロセスばらつき、電源電圧変動、温度変動の影響を受けにくくなるという利点がある。
【0166】
続いてタイミング発生器100の変形例を説明する。
【0167】
(第1変形例)
図29は、第1変形例に係るタイミング発生器100の回路図である。1番目のステージ110_1において、主補間器112の第1入力ノードN1には基準信号REF
1が、主補間器112の第2入力ノードN2と副補間器114の第1入力ノードN1には、共通の基準信号REF
2が、副補間器114の第2入力ノードN2には、基準信号REF
3が入力される。
【0168】
(第2変形例)
実施の形態では主補間器112を基準として、副補間器114の出力を遅延させる場合を説明したが、その限りでなく、副補間器114の出力を基準として、主補間器112の出力を先行させてもよい。
d
A[i]=d
i−J
[i]
d
B[i]=d
i
【0169】
(用途)
続いて、タイミング発生器100の用途を説明する。
図30は、タイミング発生器100を用いた遅延パルス発生器200の回路図である。遅延パルス発生器200は、セット信号発生器210、リセット信号発生器220、出力回路230、基準信号発生器240を備える。セット信号発生器210、リセット信号発生器220の少なくとも一方は、
図24のタイミング発生器100を備える。
【0170】
基準信号発生器240は、所定の周波数を有する基準信号REF
1,REF
2を生成し、セット信号発生器210およびリセット信号発生器220に供給する。セット信号発生器210は、制御データD
CNT_SETに対応するタイミングt
1にエッジを有するセット信号S
SETを生成する。リセット信号発生器220は、制御データD
CNT_RESETに対応するタイミングt
2にエッジを有するリセット信号S
RESETを生成する。出力回路230はセット信号S
SETに応答して第1レベル(たとえばハイ)、リセット信号S
RESETに応答して第2レベル(たとえばロー)に遷移するパルス信号S
OUTを生成する。出力回路230の構成は限定されず、フリップフロップやラッチで構成することができる。
【0171】
この遅延パルス発生器200は、制御データD
CNT_SET,D
CNT_RESETに応じて、パルス信号S
OUTのエッジを任意のタイミングt
1,t
2に設定できる。遅延パルス発生器200は、たとえばデジタルパルス幅変調器(DPMW)として利用できる。
【0172】
デジタルパルス幅変調器として利用する場合には、パルス信号S
OUTの周期は一定であるから、制御データD
CNT_SET,D
CNT_RESETの一方の値(すなわちパルス信号S
OUTのポジエッジ(立ち上がりエッジ、リーディングエッジ)とネガエッジ(立ち下がりエッジ、トレーリングエッジ)の一方のタイミング)を固定し、他方を可変とすることで、パルス幅(ハイ区間またはロー区間の長さ)を変化させることができる。
【0173】
あるいは、パルス信号S
OUTのポジエッジのタイミングを固定する場合、リセット信号発生器220のみをタイミング発生器100を用いて構成し、セット信号発生器210は遅延回路で構成してもよい。反対にパルス信号S
OUTのネガエッジのタイミングを固定する場合、セット信号発生器210のみをタイミング発生器100を用いて構成し、リセット信号発生器220は遅延回路で構成してもよい。
【0174】
続いて、遅延パルス発生器200の用途を説明する。遅延パルス発生器200は、デジタルのさまざまなコントローラIC(Integrated Circuit)に用いることができる。
【0175】
図31は、デジタル制御のスイッチング電源300のブロック図である。スイッチング電源300は、コントローラ400に加えて、周辺回路310を備える。
図31には降圧(Buck)コンバータを示すが、周辺回路310のトポロジーはそれに限定されず、昇圧コンバータ、昇降圧コンバータ、フライバックコンバータやフォワードコンバータなどさまざまな回路構成を取り得る。
【0176】
コントローラ400は、一つの半導体チップに集積化されたIC(Integrated Circuit)である。トランジスタM
H,M
Lはコントローラ400に集積化されてもよい。コントローラ400のフィードバック(FB)ピンには、出力電圧V
OUTに応じたフィードバック信号V
FBが入力される。A/Dコンバータ410は、フィードバック信号V
FBをデジタル信号D
FBに変換する。デジタルコントローラ420は、デジタル信号D
FBが目標値D
REFに近づくように、デューティ比指令値DUTYをフィードバック制御する。デジタルコントローラ420は、PI(比例・積分)制御器あるいはPID(比例・積分・微分)制御器を含む。
【0177】
デジタルパルス幅変調器430は、
図30の遅延パルス発生器200のアーキテクチャを用いて構成され、デューティ比指令値DUTYに応じたパルス幅を有するハイサイドパルスS
Hと、それと相補的なローサイドパルスS
Lを生成する。ハイサイドドライバ440H、ローサイドドライバ440Lはそれぞれ、ハイサイドパルスS
H、ローサイドパルスS
Lに応じて、周辺回路310のトランジスタM
H,M
Lを駆動する。
【0178】
この例では定電圧出力を説明したが、定電流出力にも本発明は適用可能である。
【0179】
図32は、モータ駆動システム500のブロック図である。モータ駆動システム500は、三相モータ502、三相インバータ510、回転数検出器520およびモータコントローラ600を備える。
【0180】
回転数検出器520は、三相モータ502の回転数を示す回転数信号S
DETを生成する。モータコントローラ600は、回転数信号S
DETが示す現在の回転数が目標回転数に近づくように、三相インバータ510を制御する。
【0181】
モータコントローラ600は一つの半導体チップに集積化されたIC(Integrated Circuit)である。モータコントローラ600は、デジタルコントローラ610、デジタルパルス変調器620U〜620W、ゲートドライバ630U〜630Wを備える。
【0182】
デジタルコントローラ610は、回転数信号S
DETが示す現在の回転数が目標回転数に近づくように、デューティ比指令値DUTY_U〜DUTY_Wを生成する。デジタルコントローラ610の構成や制御方式は特に限定されず、公知技術を用いればよい。デジタルパルス変調器620U〜630Wは、対応するデューティ比指令値DUTY_U〜DUTY_Wに応じたパルス幅を有するパルス信号S
OUT_U〜S
OUT_Wを生成する。ゲートドライバ630U〜630Wは、対応するパルス信号S
OUT_U〜S
OUT_Wに応じて、三相インバータ510の対応するレグを駆動する。
【0183】
この例では、回転数制御のシステムを説明したが、トルク制御や位置制御のモータ駆動システムにも本発明は適用可能である。また、デジタルパルス変調器620およびゲートドライバ630をひとつのICに集積化してもよい。
【0184】
図33(a)、(b)は、オーディオ回路のブロック図である。
図33(a)はシングルエンド方式であり、
図33(b)はBTL(Bridged Transformerless)方式であるが、基本構成は同様である。オーディオ回路800は、電気音響変換素子802、フィルタ804およびオーディオIC820を備える。電気音響変換素子802は、スピーカあるいはヘッドホンであり、電気信号を音響信号に変換する。フィルタ804は、オーディオIC820が生成するPWM(Pulse Width Modulation)信号の高周波成分を除去し、電気音響変換素子802に供給する。
【0185】
オーディオIC820は、デジタルパルス幅変調器822、ゲートドライバ824、D級アンプ826を備える。デジタルパルス幅変調器822は、デジタルオーディオ信号D
INをPWM信号S
PWMに変換する。ゲートドライバ824は、PWM信号に応じてD級アンプ826を駆動する。
【0186】
図33(a)、(b)において、デジタルパルス幅変調器822を、上述の遅延パルス発生器200のアーキテクチャを用いて構成することができる。
【0187】
図34は、発光装置のブロック図である。発光装置900は、LED902、調光回路904、DC/DCコンバータ906およびLEDドライバコントローラ920を備える。
【0188】
DC/DCコンバータ906は、LED902に駆動電圧V
OUTを供給するとともに、一定量に安定化された電流I
LEDを出力する。DC/DCコンバータ906のトポロジーは限定されず、同期整流型の降圧コンバータであってもよい。あるいはDC/DCコンバータ906は昇圧コンバータや、フライバックコンバータであってもよい。センス抵抗R
Sは、LED902(もしくは調光回路910)に流れる電流I
LEDを検出するためにLED902と直列に設けられる。調光回路910は、LED902に流れる電流I
LEDを、目標輝度に応じたデューティ比でスイッチングする。調光回路910は、LED902と並列なバイパススイッチ912と、デジタルパルス幅変調器914を含む。デジタルパルス幅変調器914は、LED902の目標輝度に応じたデューティ比のPWM信号を生成し、PWM信号に応じてバイパススイッチ912を駆動する。デジタルパルス幅変調器914は上述の遅延パルス発生器200のアーキテクチャを用いて構成することができる。
【0189】
LEDドライバコントローラ920は、DC/DCコンバータ906の出力電流I
LEDが一定となるように、DC/DCコンバータ906のスイッチング素子908を駆動する。A/Dコンバータ922は、電流I
LEDがある程度大きい動作領域では、電流検出信号V
CSの一方をデジタル値に変換する。コントローラ924は、電流検出信号V
CSが目標値に近づくように、デューティ比指令値DUTYを生成する(定電流モード)。電流I
LEDが小さい動作領域では、電流検出信号V
CSの検出が困難であるため、A/Dコンバータ922は、出力電圧V
OUTをデジタル値に変換する。コントローラ924は出力電圧V
OUTが目標値に近づくように、デューティ比指令値DUTYを生成する(定電圧モード)。デジタルパルス幅変調器926は、デューティ比指令値DUTYに応じたPWM信号S
PWMを生成する。ドライバ928は、PWM信号S
PWMに応じて、DC/DCコンバータ906のスイッチング素子を駆動する。デジタルパルス幅変調器926を、上述の遅延パルス発生器200のアーキテクチャを用いて構成してもよい。
【0190】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。