(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】鋼管連結機構によって連結された鋼管杭を一部切断して示す説明図
【
図12】別実施形態の鋼管連結機構の要部を拡大した断面図
【
図13】別実施形態の鋼管連結機構の要部を拡大した断面図
【
図14】別実施形態の鋼管連結機構の要部を拡大した断面図
【
図15】別実施形態の鋼管連結機構の要部を拡大した断面図
【0020】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1には、オーガーで掘削しながら地中に回転圧入して沈設する中掘工法に使用される鋼管杭P(P1,P2)が示されている。
【0021】
鋼管杭P(P1,P2)は、スパイラル鋼管等の鋼管S(S1,S2)の一方の端部に筒状継手10が溶接連結されるともに、他方の端部に軸状継手20が溶接連結された円筒体である。
【0022】
鋼管軸心X方向に隣り合う鋼管杭P(P1,P2)の互いに対向する鋼管S(S1,S2)の鋼管端部どうしは、本発明の鋼管連結機構Jによって抜け止め状態で、かつ、回り止め状態で連結される。
【0023】
鋼管連結機構Jは、筒状継手10と、軸状継手20と、荷重伝達キー30と、回転抑止キー40とを備えている。
【0024】
筒状継手10は、鋼製の筒状体を加工することによって作成される。
図2に示すように、筒状継手10の下端側に突条11と、周方向に間隔を隔てて複数の筒側切欠凹部12が備えられている。筒状継手10の内周面13の上端側に周溝14が備えられている。本実施形態における内周面13が、本発明に係る筒状継手内周面である。
【0025】
内周面13に、周方向に沿って、二条の内向き溝部15が備えられている。各内向き溝部15は、後述する荷重伝達キー30(分割キー部材31)の厚みより深く構成されている。これにより、
図3及び
図4に示すように、分割キー部材31は、内向き溝部15に内周面13よりも内側に入り込んだ収容位置に収容可能となっている。
【0026】
軸状継手20は、鋼製の筒状体を加工することによって作成される。
図2に示すように、軸状継手20の上端側に、筒状継手10に備えられた周溝14に嵌合可能な突条21が備えられている。
【0027】
筒状継手10と軸状継手20とが互いに嵌合させられた状態であるときに、筒状継手10に備えられた筒側切欠凹部12と対向する位置に軸側切欠凹部22が備えられている。筒側切欠凹部12と軸側切欠凹部22とによって、後述する回転抑止キー40のキー溝部が構成される。軸側切欠凹部22の中央部分に、回転抑止キー40をキー溝部に固定するための固定ネジ41を螺着可能な雌ネジ26が備えられている(
図1参照)。
【0028】
外周面23は、鋼管軸心X方向の長さが筒状継手10の内周面13の鋼管軸心X方向の長さと略同じで、外径が内周面13に嵌合可能な大きさに構成されている。本実施形態における外周面23が、本発明に係る軸状継手外周面である。
【0029】
外周面23の下端側に、筒状継手10に備えられた突条11が嵌合可能な周溝24が形成されている。
【0030】
外周面23に、周方向に沿って、二条の外向き溝部25が、筒状継手10と軸状継手20とが互いに嵌合させられた状態であるときに内向き溝部15に対向するように備えられている。
【0031】
荷重伝達キー30は、筒状継手10と軸状継手20とが互いに嵌合させられた際に、筒状継手10と軸状継手20とを抜け止め状態で連結するための部材である。本実施形態においては、鋼管軸心X周りで六個の分割キー部材31から構成されている。本実施形態における荷重伝達キー30(分割キー部材31)が、本発明に係るキー部材である。
【0032】
分割キー部材31は、横断面が矩形で、外向き溝部25の底面に対向するキー内周面が前記底面と略同じ曲率を有する円弧形状の鋼製部材である(
図4参照)。
【0033】
後述する固定部材51により、分割キー部材31が、内向き溝部15に収容された収容位置から、互いに対向する内向き溝部15と外向き溝部25とに跨った跨設位置に押し込まれることによって、筒状継手10と軸状継手20とが抜け止め状態で連結される。また、後述する六角ボルト50により、分割キー部材31は、跨設位置から収容位置に引き戻されることによって、筒状継手10と軸状継手20との連結が解除される。
【0034】
外向き溝部25の溝深さは、分割キー部材31の鋼管杭P(P1,P2)の径方向に沿う厚みの略半分になるように構成され、分割キー部材31が跨設位置にあるときに、分割キー部材31は、内向き溝部15と外向き溝部25とに略均等に跨るように配置される。
【0035】
図3に示すように、筒状継手10に、その外周面から内向き溝部15内に連通する断面円形の貫通孔16が、分割キー部材31ごとに対応して周方向に等間隔を隔てた六箇所に設けられている。貫通孔16の内周面に、後述する固定部材51に備えられた雄ネジ52を螺合可能な雌ネジ18が備えられている(
図8参照)。
【0036】
図8に示すように、分割キー部材31の長手方向かつ高さ方向の中央位置には厚み方向に貫通する穴部32が穿設されている。該穴部32に、座ぐり33と雌ネジ34が備えられている。
【0037】
図3に示すように、分割キー部材31が、穴部32が貫通孔16に対向する位置となるように内向き溝部15に配置された際に、貫通孔16に遊挿された六角ボルト50を、分割キー部材31の雌ネジ34に螺合させることにより、分割キー部材31は収容位置に保持される。本実施形態における六角ボルト50が、本発明に係る保持部材である。
【0038】
また、跨設位置に位置する分割キー部材31の雌ネジ34に、貫通孔16を介して遊挿された六角ボルト50を螺合させることで、分割キー部材31を収容位置に引き戻すこともできる。
【0039】
図8に示すように、貫通孔16に取り付けることができる固定部材51は、円柱状の胴部の周囲に貫通孔16の雌ネジ18に螺合可能な雄ネジ52が備えられ、固定部材51の胴部の一端側に円錐部53が備えられ、他端側に貫通孔16に螺合させた固定部材51を螺進させるための六角レンチ等の工具が嵌合可能な穴部54が備えられている。なお、固定部材51の長さは、分割キー部材31を跨設位置に押し込んだ状態であるときに、筒状継手10の外周面から突出しない長さに構成されている。
【0040】
円錐部53は、前記胴部の一端側に連なる基端が穴部32の直径より大きく、先端が穴部32の直径より小さく構成され、先端が雌ネジ34に挿入されるが、その円錐面は雌ネジ34に接触することなく、分割キー部材31の表面と座ぐり33の内周面との境界周縁部36と接触する。このため、分割キー部材31に、内向き溝部15及び外向き溝部25から鋼管軸心X方向や周方向の大きな荷重が作用したとしても、雌ネジ34は破損することはなく、六角ボルト50の螺合が可能なままである。したがって、鋼管杭P(P1,P2)の連結の解除が不可能とならない。
【0041】
本実施形態における円錐部53が本発明に係る縮径部であり、固定部材51を貫通孔16に螺合させたときに、分割キー部材31の穴部32に挿入可能かつ雌ネジ34に螺合不可能に構成され、分割キー部材31が周方向に沿って移動することを係止する。
【0042】
図5に示すように、筒状継手10と軸状継手20とが互いに嵌合させられた状態のときに、六角ボルト50を分割キー部材31から取り外したあと、
図6に示すように、固定部材51を貫通孔16の雌ネジ18に浅く螺合し穴部54に工具を嵌合させ、固定部材51を螺進させることによって、
図7に示すように、円錐部53が境界周縁部36に接触し、分割キー部材31が収容位置から跨設位置に押し込まれる。このとき、分割キー部材31は、跨設位置に固定されるとともに、周方向に沿って移動することが係止される。
【0043】
なお、貫通孔16には、筒状継手10の外周面に近いところに、周溝17が形成されている。この周溝17には、穴用のスナップリング19が取り付け自在となっている。
図9から
図11に示すように、周溝17に取り付けたスナップリング19によって、鋼管杭P(P1,P2)の埋設作業時の振動等によって、固定部材51が回転したとしても、固定部材51が貫通孔16から脱落することが防止され、分割キー部材31は跨設位置に維持されるため、筒状継手10と軸状継手20との連結が解除されてしまう虞はない。
【0044】
回転抑止キー40について説明する。
図1に示すように、回転抑止キー40は、筒状継手10と軸状継手20とを回り止め状態で連結するための部材であり、互いに対向する筒側切欠凹部12及び軸側切欠凹部22により構成されるキー溝部に対応した形状に構成されている。
【0045】
筒状継手10と軸状継手20とが互いに嵌合させられた状態であるときに、回転抑止キー40を筒側切欠凹部12と軸側切欠凹部22(
図2参照)とに亘って跨設することで、互いに連結した鋼管杭P(P1,P2)どうしの相対回転が防止される。回転抑止キー40は、固定ネジ41により軸状継手20に固定される。
【0046】
上述した実施形態においては、縮径部が円錐部53である場合について説明したが、これに限らない。前記縮径部は前記基端から前記先端にかけて一定の割合で徐々に直径が小さくなる必要はなく、球冠を有する球欠部のように、前記基端から前記先端にかけて異なる割合で徐々に直径が小さくなってもよい。この場合は、球欠部の球冠が境界周縁部36と接触する。
【0047】
また、上述した実施形態においては、穴部32には座ぐり33が備えられる場合について説明したが、穴部32には皿座ぐりが備えられてもよい。
図12に、縮径部が球欠部55であり、穴部32に皿座ぐり37が備えられている例を示す。この場合は、球欠部55の先端が穴部32に挿入された際に、球欠部55の球冠と皿座ぐり37のテーパ面とが接触する。
【0048】
また、上述した実施形態においては、縮径部は基端から先端にかけて徐々に直径が小さくなる場合について説明したが、これに限らない。縮径部は基端から先端にかけて途中で段階的に直径が小さくなる小径部から構成されてもよい。
【0049】
図13に、縮径部が小径部56であり、小径部56の先端が穴部32に挿入された際に、小径部56の外周面と座ぐり33の内周面とが接触する例を示す。なお、穴部32には、座ぐり33に替えて、
図12に示すような、皿座ぐり37が備えられてもよい。この場合は、小径部56の先端が穴部32に挿入された際に、小径部56の先端周縁部と皿座ぐり37のテーパ面とが接触する。
【0050】
上述した実施形態においては、保持部材が六角ボルト50である場合について説明したが、保持部材は六角ボルト50に限らない。保持部材は、たとえば、
図14に示すように、通常のボルトにくらべてその頭部の高さが低いボルト、いわゆる、極低頭六角穴付ボルト60であってもよい。なお、
図14において
図3における構成と同様の構成については同じ符号を付している。
【0051】
このとき、極低頭六角穴付ボルト60の頭部の直径を、貫通孔16のうち雌ネジ18が形成されている部分の内径よりも大きく、貫通孔16のうち周溝17が形成されている部分の内径よりも小さく設定する、換言すると、貫通孔16のうち雌ネジ18が形成されている部分の内径を極低頭六角穴付ボルト60の頭部の直径よりも小さく設定するとともに、貫通孔16のうち周溝17が形成されている部分の内径を極低頭六角穴付ボルト60の頭部の直径よりも大きく設定することによって、分割キー部材31に螺合された極低頭六角穴付ボルト60の頭部が、貫通孔16のうち雌ネジ18が形成されている部分と貫通孔16のうち周溝17が形成されている部分との境界部に接触する。
【0052】
分割キー部材31が、穴部32が貫通孔16に対向する位置となるように内向き溝部15に配置された際に、極低頭六角穴付ボルト60を貫通孔16に遊挿し、分割キー部材31の雌ネジ34に螺合させることにより、分割キー部材31を収容位置に保持することができる。
【0053】
このとき、極低頭六角穴付ボルト60は、その軸部が適当な長さであるとともに、その頭部が貫通孔16に収まる適当な高さものを用いる、換言すると、筒状継手10の表面から貫通孔16のうち周溝17が形成されている部分まで深さを、該頭部の高さよりも深く設定することによって、分割キー部材31の雌ネジ34に螺合させた際に、該頭部が筒状継手10の表面から外に突出しない。
【0054】
また、保持部材は、
図15に示すように、六角穴付皿ボルト70であってもよい。なお、
図15において
図3における構成と同様の構成については同じ符号を付している。
【0055】
このとき、六角穴付皿ボルト70の頭部の直径を、貫通孔16のうち雌ネジ18が形成されている部分の内径よりも大きく、貫通孔16のうち周溝17が形成されている部分の内径よりも小さく設定する、換言すると、貫通孔16のうち雌ネジ18が形成されている部分の内径を六角穴付皿ボルト70の頭部の直径よりも小さく設定するとともに、貫通孔16のうち周溝17が形成されている部分の内径を六角穴付皿ボルト70の頭部の直径よりも大きく設定することによって、分割キー部材31に螺合された六角穴付皿ボルト70の頭部が、貫通孔16のうち雌ネジ18が形成されている部分と貫通孔16のうち周溝17が形成されている部分との境界部に接触する。
【0056】
分割キー部材31が、穴部32が貫通孔16に対向する位置となるように内向き溝部15に配置された際に、六角穴付皿ボルト70を貫通孔16に遊挿し、分割キー部材31の雌ネジ34に螺合させることにより、分割キー部材31を収容位置に保持することができる。
【0057】
このとき、六角穴付皿ボルト70は、その軸部が適当な長さであるとともに、その頭部が貫通孔16に収まる適当な高さのものを用いることによって、換言すると、筒状継手10の表面から貫通孔16のうち周溝17が形成されている部分まで深さを、該頭部のうち、雌ネジ18の内径より大径の部分の高さよりも深く設定することによって、分割キー部材31の雌ネジ34に螺合させた際に、該頭部が筒状継手10の表面から外に突出しない。
【0058】
上述した実施形態においては、分割キー部材31の長手方向かつ高さ方向の中央位置には厚み方向に貫通する穴部32は、座ぐり33と雌ネジ34とから構成されている場合について説明したが、これに限らない。穴部32は、雌ネジ34のみから構成されても良いし、雌ネジが形成されていない単なる窪みや貫通孔から構成されていてもよい。
【0059】
上述した実施形態においては、分割キー部材31を収容位置に保持する保持部材が六角ボルト50である場合について説明したが、これに限らない。保持部材は、分割キー部材31の雌ネジ34に螺合する寸切りボルトと、貫通孔16の外側から寸切りボルトに螺合するナットとから構成されてもよい。この場合は、寸切りボルトの一端を分割キー部材31に螺合させたまま、他端からナットを緩める又は取り外すことにより、筒状継手の外周面側から分割キー部材31を収容位置から跨設位置へと押し込み操作することが可能となる。
【0060】
〔その他の実施形態〕
1.本発明に係る鋼管連結機構Jは、筒状継手10の外周側から、貫通孔16を通して、適当なロッドなどで収容位置の分割キー部材31を跨設位置に押し込み操作可能に構成されていてもよい。
2.本発明に係る鋼管連結機構Jは、貫通孔16に螺合したプラグなどで、分割キー部材31を跨設位置に固定可能な固定手段を固定解除自在に設けてあってもよい。
3.本発明に係る鋼管連結機構Jによって連結された鋼管杭P(P1,P2)は、建物支持杭、地滑り抑止用杭、鋼管矢板などの土留め用柱列杭、仕切壁、護岸壁、構造体の柱などの各種用途に使用することができ、中掘工法の他、打撃を加えて行う打込み工法や、既設の掘削孔に挿入するプレボーリング工法、あるいはソイルセメントを造成しながら回転埋設するソイルセメント合成杭工法、あるいは単に回転して圧入(埋設)する回転埋設杭工法等を使用して沈設できる。鋼管の打込みに回転を伴はない工法であるときは、鋼管連結機構に回転抑止キー40を備えていてなくてもよい。
4.本発明に係る鋼管連結機構Jは、UO管やベンディング管,遠心鋳造法で鋳造した鋳鋼管などの管端部に、筒状継手10や軸状継手20を設けてあってもよい。
【0061】
上述した実施形態は、いずれも本発明の一例であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能である。