特許第6902968号(P6902968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902968
(24)【登録日】2021年6月24日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】造形ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/14 20060101AFI20210701BHJP
   B65D 83/20 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   B65D83/14 200
   B65D83/20
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-167420(P2017-167420)
(22)【出願日】2017年8月31日
(65)【公開番号】特開2019-43592(P2019-43592A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】新渡戸 耕太
【審査官】 ▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05813785(US,A)
【文献】 特開2017−013895(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0123494(US,A1)
【文献】 特開2016−140811(JP,A)
【文献】 特開2015−229525(JP,A)
【文献】 特開2017−119699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
B65D 83/08−83/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が吐出される吐出孔の上方に配設されるとともに、上下方向に貫通する成形孔が形成された頂壁部を有し、前記頂壁部のうち上方を向く造形面に、内容物が前記成形孔を通過することで形成される造形片が吐出される造形ヘッドであって、
前記成形孔は、上下方向から見た平面視で前記頂壁部の中心軸線に交差する径方向に長い長孔状に形成されるとともに、前記中心軸線回りの周方向に間隔をあけて複数配置され、
前記吐出孔からの内容物が複数の前記成形孔を各別に通過することで形成される複数の造形片を、前記造形面で組み合わせて造形物を形成し、
前記成形孔は、周方向を向き、かつ、上下方向に沿う縦断面視において、上下方向に直交する横方向で互いに対向する第1対向面および第2対向面を有し、
前記縦断面視において、前記第1対向面および前記第2対向面それぞれにおける少なくとも一部は、前記頂壁部のうち下方を向く供給面側から前記造形面側に向けて、前記横方向の一方側に向けて延びる傾斜面とされ、
前記縦断面視において、前記第1対向面は、前記第2対向面より前記横方向の一方側に位置し、前記成形孔の下端開口部は全域にわたって前記第2対向面の前記傾斜面と上下方向に対向し
前記縦断面視において、前記第1対向面の前記傾斜面の下端縁と、前記第2対向面の前記傾斜面の上端縁と、が上下方向で対向し、
前記第1対向面および前記第2対向面それぞれにおける前記傾斜面の、前記中心軸線に対する傾斜角度は、径方向の内端部に位置する部分で最小となり、径方向の外端部に位置する部分で最大となるように、径方向の内側から外側に向かうに従い漸次、大きくなっていることを特徴とする造形ヘッド。
【請求項2】
前記頂壁部の厚さは、0.5mm以上3.0mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の造形ヘッド。
【請求項3】
前記頂壁部、および前記頂壁部の外周縁から下方に向けて延びる周壁部を備える外装部と、
前記外装部内に配置され、前記頂壁部の供給面との間に、前記吐出孔からの内容物を、上下方向に直交する横方向に拡散して前記成形孔に供給する拡散室を画成する中皿と、を備え、
前記拡散室からの内容物が複数の前記成形孔を各別に通過することで形成される複数の造形片を、前記造形面で組み合わせて造形物を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の造形ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、内容物が吐出される吐出孔の上方に配設されるとともに、上下方向に貫通する成形孔が形成された頂壁部を有し、頂壁部のうち上方を向く造形面に、内容物が成形孔を通過することで形成される造形片が吐出される造形ヘッドが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−010919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の造形ヘッドでは、造形片を造形面に対して傾いた姿勢にすることができず、造形片の新たな形態を創出することに限界があった。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであって、造形片を造形面に対して傾いた姿勢にすることができる造形ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明の造形ヘッドは、内容物が吐出される吐出孔の上方に配設されるとともに、上下方向に貫通する成形孔が形成された頂壁部を有し、前記頂壁部のうち上方を向く造形面に、内容物が前記成形孔を通過することで形成される造形片が吐出される造形ヘッドであって、前記成形孔は、上下方向から見た平面視で前記頂壁部の中心軸線に交差する径方向に長い長孔状に形成されるとともに、前記中心軸線回りの周方向に間隔をあけて複数配置され、前記吐出孔からの内容物が複数の前記成形孔を各別に通過することで形成される複数の造形片を、前記造形面で組み合わせて造形物を形成し、前記成形孔は、周方向を向き、かつ、上下方向に沿う縦断面視において、上下方向に直交する横方向で互いに対向する第1対向面および第2対向面を有し、前記縦断面視において、前記第1対向面および前記第2対向面それぞれにおける少なくとも一部は、前記頂壁部のうち下方を向く供給面側から前記造形面側に向けて、前記横方向の一方側に向けて延びる傾斜面とされ、前記縦断面視において、前記第1対向面は、前記第2対向面より前記横方向の一方側に位置し、前記成形孔の下端開口部は全域にわたって前記第2対向面の前記傾斜面と上下方向に対向し、前記縦断面視において、前記第1対向面の前記傾斜面の下端縁と、前記第2対向面の前記傾斜面の上端縁と、が上下方向で対向し、前記第1対向面および前記第2対向面それぞれにおける前記傾斜面の、前記中心軸線に対する傾斜角度は、径方向の内端部に位置する部分で最小となり、径方向の外端部に位置する部分で最大となるように、径方向の内側から外側に向かうに従い漸次、大きくなっていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、成形孔が、前記縦断面視において、前記横方向で互いに対向する第1対向面および第2対向面を有し、これらの第1対向面および第2対向面それぞれにおける少なくとも一部が、上下方向に対して同じ向きに傾斜した傾斜面となっているので、供給面側の下端開口部から成形孔に流入した内容物を、第2対向面の傾斜面により、第1対向面および第2対向面の各傾斜面が上下方向に対して傾斜した向きに流すことが可能になるとともに、第1対向面の傾斜面により、内容物をその向きのまま造形面に向けて流すことができる。これにより、内容物を、第1対向面および第2対向面の各傾斜面が上下方向に対して傾斜した向きに傾いた姿勢の造形片に形成することができる。
特に、成形孔の下端開口部が全域にわたって第2対向面の傾斜面と上下方向に対向しているので、供給面側の下端開口部から成形孔に流入した内容物が、上方に向けて真っ直ぐ流れて直接造形面に到達するのを抑制することができる。したがって、成形孔に流入した内容物全体の流れを、前述の傾斜した向きにすることが可能になり、造形面上の造形片の姿勢を、確実に前述の傾斜した向きに傾かせることができる。
【0009】
この場合、前記縦断面視において、第1対向面の傾斜面の下端縁と、第2対向面の傾斜面の上端縁と、が上下方向で対向しているので、成形孔を、上下方向に移動する金型で成形することが可能になり、頂壁部を成形する金型の構造の複雑化を防ぐことができる。
また、前記縦断面視で、第1対向面の傾斜面の下端縁と第2対向面の傾斜面の上端縁とが上下方向で対向していることから、下端開口部から成形孔に流入した内容物の逆流を抑えることが可能になり、造形片を精度良く形成することができる。
【0011】
この場合、成形孔が、径方向に長い長孔状に形成されるとともに、周方向に間隔をあけて複数配置され、第1対向面および第2対向面が周方向を向いているので、複数の造形片を、周方向における同じ向きに傾けた姿勢にして造形面で組み合わせて造形物を形成することが可能になり、周方向に捩じれた形態の造形物を得ることができる。
また、成形孔が、径方向に長い長孔状に形成されるとともに、周方向に間隔をあけて複数配置されていることから、周方向で互いに隣り合う造形片同士を相互に支え合わせることが可能になり、造形片の型崩れを抑えて高精度の造形物を形成することができる。
【0013】
この場合、上下方向に対する傾斜角度が、径方向の内側から外側に向かうに従い漸次、大きくなっている造形片を形成することができる。したがって、美観に優れた造形物を形成することができるとともに、周方向で互いに隣り合う造形片同士を確実に相互に支え合わせることができる。
【0014】
また、前記頂壁部の厚さは、0.5mm以上3.0mm以下であってもよい。
【0015】
この場合、頂壁部の厚さが0.5mm以上3.0mm以下となっているので、頂壁部を、金型構造の複雑化を抑えつつ高精度に形成することができる。
頂壁部の厚さが0.5mm未満になると、例えば、頂壁部の厚さが薄くなりすぎ、第1対向面および第2対向面それぞれの傾斜面の長さを、前述の作用効果を奏する程度まで確保することができないばかりでなく、成形孔を成形する金型が小さくなり過ぎたり、頂壁部の強度が低下したりする等のおそれがある。
頂壁部の厚さが3.0mmを超えると、例えば、頂壁部にひけが生ずるおそれ等がある。
【0016】
また、前記頂壁部、および前記頂壁部の外周縁から下方に向けて延びる周壁部を備える外装部と、前記外装部内に配置され、前記頂壁部の供給面との間に、前記吐出孔からの内容物を、前記横方向に拡散して前記成形孔に供給する拡散室を画成する中皿と、を備え、前記拡散室からの内容物が複数の前記成形孔を各別に通過することで形成される複数の造形片を、前記造形面で組み合わせて造形物を形成してもよい。
【0017】
この場合、頂壁部と中皿との間に拡散室が設けられているので、複数の成形孔のうちの特定の一部に内容物が集中して流入することを抑え、各成形孔にばらつき少なく内容物を供給することができる。これにより、内容物が成形孔に対して過剰または過少に供給されることを抑え、各成形孔に適量の内容物を供給することができる。したがって、各成形孔により形成される造形片を精度良く形成することが可能になり、造形物を高精度に形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、造形片を造形面に対して傾いた姿勢にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る吐出容器の一部縦断面図であって、中皿が待機位置に位置した状態を示す図である。
図2図1に示す吐出容器の造形ヘッドの上面図である。
図3図2に示す造形ヘッドの(a)A−A線矢視断面図、(b)B−B線矢視断面図、および(c)C−C線矢視断面図である。
図4図1に示す吐出容器の固定部材の上面図である。
図5図1に示す吐出容器の変換機構の展開図である。
図6図1に示す吐出容器の一部縦断面図であって、中皿を吐出位置に下降させた状態を示す図である。
図7図1から図6に示す造形ヘッドを用いて形成した造形物を上方から見た写真である。
図8図1から図6に示す造形ヘッドを用いて形成した造形物を斜め上方から見た写真である。
図9図3に示す造形ヘッドの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
図1に示すように、吐出容器1は、内容物が収容される容器本体12を備える容器体11と、吐出器14と、造形ヘッド10と、を備える。吐出容器1は、例えば泡体や高粘性材料など、吐出後に少なくとも一定時間、形状を保持可能な内容物を吐出する。
ここで、容器本体12は有底筒状に形成されている。以下、容器本体12の横断面における中心を通る直線を容器軸(中心軸線)Oといい、容器軸Oに沿う方向のうち容器本体12の底部側を下側といい、容器本体12の口部12a側を上側といい、容器軸Oに沿う方向を上下方向という。吐出容器1の上面視において、容器軸Oに交差する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0021】
容器体11は、容器本体12と、容器本体12の口部12aに装着された固定部材13と、を備えている。容器本体12の内部は、口部12aが頂板17で覆われることで密閉されている。頂板17には、周方向に延びる環状凹部18が設けられている。
吐出器14は、容器本体12の口部12aに上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステム19を備えている。ステム19は、容器軸Oと同軸に配置され、環状凹部18よりも小径に形成されている。ステム19は、頂板17を上下方向に貫通している。吐出器14の内部において容器本体12内に位置する部分には、図示しない吐出弁、およびステム19を上方付勢する付勢手段が設けられている。
【0022】
容器本体12に対してステム19が押し下げられると、前記吐出弁が開き、容器本体12内の内容物がステム19内を通ってステム19の上端開口部(吐出孔)19aから吐出される。この際、ステム19の上端開口部19aから例えば泡状となった内容物が吐出される。なお、ステム19の上端開口部19aから吐出される内容物は泡状でなくてもよい。ステム19の押し下げを解除すると、ステム19に作用する付勢手段からの上方付勢力によりステム19が上昇して前記吐出弁が閉じられ、内容物の吐出が停止される。
なお、前述の容器本体12および吐出器14は、容器本体12内に収容された内容物をステム19から吐出する吐出容器本体を構成している。図示の例では、吐出容器本体として、内部に液状の内容物が収容されたエアゾール缶を採用している。
【0023】
固定部材13は、ステム19を径方向の外側から囲繞するように容器本体12の口部12aに固定される。固定部材13は、容器本体12の口部12aに、容器軸O回りに回転不能に、かつ上昇不能に固定されている。
固定部材13は、容器本体12の口部12aに頂板17を介して外嵌された外嵌筒63と、外嵌筒63の上端部から径方向の内側に向けて延びる環状の連結部23と、連結部23の内周縁から下方に向けて延びる内筒部22と、内筒部22の下端部から径方向の内側に向けて延びる環状の受部54と、受部54の内周縁から上方に向けて延びる外変換筒部55と、を備えている。外嵌筒63、連結部23、内筒部22、受部54、および外変換筒部55は、容器軸Oと同軸に配置されている。
【0024】
外嵌筒63の下端部には、径方向の内側に向けて突出する嵌合突部63aが形成されている。嵌合突部63aは、周方向に間隔をあけて複数形成されている(図4参照)。嵌合突部63aが頂板17の外周縁部にアンダーカット嵌合するとともに、外嵌筒63が口部12aに外嵌されることで、固定部材13の容器軸O回りの回転移動、および固定部材13の上昇移動が規制されている。平面視において、外嵌筒63は容器軸Oと同軸に配置された円形状を呈する。外嵌筒63の上下方向の中央部には、径方向の外側に向けて突出するフランジ部63bが形成されている。フランジ部63bの外周縁には、下方に向けて延びる囲繞筒部63cが形成されている。
受部54の上面に、後述する付勢部材21の下端部が当接している。
【0025】
連結部23は、内筒部22および外嵌筒63それぞれの上端部同士を連結している。連結部23は、容器本体12の口部12aの上端開口縁を径方向に跨いでいる。連結部23には、これを上下方向に貫通する貫通孔23aが形成されている。貫通孔23aは、周方向に等間隔をあけて複数形成されている(図4参照)。上下方向から見た平面視で、嵌合突部63aは、貫通孔23aの内側に位置している。連結部23の外周縁には、上方に向けて延びる嵌合筒部23bが形成されている。嵌合筒部23bは、外嵌筒63よりも径方向の外側に位置し、囲繞筒部63cよりも径方向の内側に位置する。嵌合筒部23bの外周面には、径方向の外側に向けて突出する被嵌合部23cが全周にわたって形成されている。
内筒部22は、頂板17の環状凹部18内に位置しており、環状凹部18の径方向の内側を向く外周面に、径方向の内側から固定されている。
【0026】
造形ヘッド10は、外装部15と、中皿16と、を備えている。なお、造形ヘッド10は、中皿16を備えなくてもよい。
【0027】
外装部15は、ステム19の上端開口部19aの上方に配設されるとともに、上下方向に貫通する複数の成形孔26が形成された頂壁部24を有し、頂壁部24のうち上方を向く造形面27に成形孔26を通過した内容物が吐出される。なお成形孔26は、頂壁部24に1つのみ形成してもよい。
外装部15は、頂壁部24、および頂壁部24の外周縁から下方に向けて延びる周壁部15aを備える有頂筒状に形成されている。外装部15は、合成樹脂材料で一体に形成されている。外装部15は、容器軸Oと同軸に配置されている。なお周壁部15aを有しない外装部15を採用してもよい。
【0028】
頂壁部24の厚さは、0.5mm以上3.0mm以下となっている。図示の例では、頂壁部24の厚さは、約2.5mmとなっている。頂壁部24には、下方に向けて突出した芯体25が形成されている。芯体25は、容器軸Oと同軸に配置されている。芯体25は、ステム19よりも上側に位置している。芯体25の外径は、ステム19の内径よりも小さく、芯体25は、ステム19の上端開口部19aと上下方向に対向している。芯体25は中実の棒状に形成されている。芯体25は、下方に向かうに従い漸次、縮径している。芯体25の上端部における外径は、ステム19の内径および後述する中皿16の連通孔34の内径よりも小さい。
複数の成形孔26は、頂壁部24において上側を向く造形面27、および下側を向く供給面28に各別に開口している。造形面27および供給面28は、容器軸Oに直交している。
【0029】
外装部15の周壁部15aにおける内周面に、径方向の内側に向けて突出する凸部15dが形成されている。凸部15dは、上下方向に延びており、周方向に間隔をあけて複数形成されている。
外装部15の周壁部15aにおける下端部には、径方向の内側に向けて突出する嵌合部15eが形成されている。嵌合部15eは、固定部材13の被嵌合部23cにアンダーカット嵌合している。これにより、外装部15の固定部材13に対する上方への移動が規制されている。また、外装部15の周壁部15aにおける下端開口縁は、固定部材13のフランジ部63bの上面に当接若しくは近接している。これにより、外装部15の固定部材13に対する下方への移動が規制されている。
【0030】
中皿16は、外装部15内に配置され、図6に示されるように、頂壁部24の供給面28との間に、ステム19の上端開口部19aからの内容物を造形面27に沿う横方向に拡散して成形孔26に供給する拡散室35を画成する。
【0031】
中皿16は、容器軸Oと同軸に配置された板状の皿本体30と、皿本体30から下方に向けて延び、かつ容器軸Oと同軸に配置された内変換筒部32と、を備えている。
中皿16は、図1に示すように、皿本体30の上面が、供給面28に当接または近接する上方の待機位置と、図6に示すように、皿本体30の上面が、供給面28から下方に離間して拡散室35を形成し、かつステム19を下降させて、ステム19の上端開口部19aからの内容物を拡散室35内に供給する下方の吐出位置と、の間を上下動する。
拡散室35は、容器軸Oと同軸に配置されている。拡散室35は、上下方向よりも径方向に大きい偏平形状に形成されている。拡散室35の壁面の一部は、供給面28、および皿本体30の上面により形成されている。
【0032】
皿本体30は、外装部15内に嵌合され、外周縁が外装部15の内周面上を上下方向に摺動する。皿本体30の上面は、後述する付勢部材21の上方付勢力により、外装部15の供給面28に当接若しくは近接している。平面視において、皿本体30および供給面28は、互いに同等の形状かつ同等の大きさに形成されている。
皿本体30に、上下方向に貫く連通孔34が形成されている。連通孔34は、容器軸Oと同軸に配置されている。連通孔34内に、外装部15の芯体25が挿入されている。連通孔34の内径はステム19の外径よりも小さい。なお、図6に示されるように、中皿16が吐出位置に位置した際、連通孔34は、ステム19内と拡散室35とを連通し、皿本体30は芯体25より下方に位置し、芯体25は拡散室35内に突出している。
【0033】
皿本体30には、容器軸Oと同軸に配置され下方に向けて延びるガイド筒31が形成されている。ガイド筒31の内径は、連通孔34の内径より大きく、ガイド筒31は、連通孔34を径方向の外側から囲繞している。中皿16の下降時に、ガイド筒31内にステム19の上端部が進入する。ガイド筒31の内周面における下端部は、下方に向かうに従い漸次拡径している。これにより、中皿16が下降すると、ステム19がスムーズにガイド筒31内に進入する。
【0034】
内変換筒部32は、ガイド筒31を径方向の外側から囲繞している。内変換筒部32の下端部は、ガイド筒31の下端部より下方に位置している。
内変換筒部32の外径は、固定部材13の外変換筒部55の内径より小さい。内変換筒部32は、外変換筒部55の内側に配設されている。内変換筒部32の下端部は、外変換筒部55の上下方向における中央部に位置している。
図6に示すように、中皿16が吐出位置に位置するときには、皿本体30の下面における連通孔34の開口周縁部(以下、係止部36という)が、ステム19に係止される。係止部36は、ステム19の上端開口縁に上方から当接し、中皿16の下降に伴ってステム19を下降させる。
【0035】
皿本体30の外周縁に、外装部15の凸部15dに係合する凹部30aが形成されている。皿本体30の凹部30aが、外装部15の凸部15dに係合することで、外装部15に対する皿本体30の容器軸O回りの回転移動が規制される。これにより、外装部15と中皿16とは、容器軸O回りに一体に回転可能となっている。図示の例では、凸部15dおよび凹部30aは、容器軸Oを径方向に挟んで互いに対向する各位置に配設されている。これにより、外装部15と中皿16とを確実に一体として回転させることができる。
【0036】
なお、外装部15および中皿16を一体に回転させるための形態は、上記凸部15dおよび凹部30aに限られない。例えば、凸部15dおよび凹部30aの数を適宜変更してもよい。あるいは、外装部15に凹部を形成し、この凹部に係合する凸部を中皿16に形成してもよい。
【0037】
図1および図6に示すように、固定部材13と中皿16との間に、例えばコイルスプリング等の付勢部材21が配設されている。付勢部材21は、容器体11と中皿16との間の上下方向の隙間に配設されている。付勢部材21は、中皿16が吐出位置に位置しているときに、下端部が固定部材13の受部54の上面に当接し、かつ上端部が皿本体30の下面に当接した状態で、上下方向に圧縮される。これにより、付勢部材21は吐出位置に位置する中皿16を上方付勢する。なお、付勢手段として金属製のコイルスプリングを用いた場合には、中皿16に充分な上方付勢力を付与することが可能となり、拡散室35内の内容物を確実に造形面27に押し出すことができる。
【0038】
ここで、本実施形態では、外装部15および中皿16の容器体11に対する容器軸O回りの回転動作を、中皿16の上下方向の動作に変換する変換機構37を備えている。変換機構37は、中皿16および容器体11のうちのいずれか一方に設けられた摺動突部42と、いずれか他方に設けられたガイド突部43と、により構成されている。
【0039】
図示の例では、摺動突部42は、内変換筒部32の外周面から径方向の外側に向けて突出しており、ガイド突部43は、容器体11の外変換筒部55における内周面から径方向の内側に向けて突出している。ガイド突部43は、外変換筒部55の上端部から上下方向の中央部にかけて形成されている。摺動突部42の上端部は、ガイド突部43の上端部よりも下側に位置している。
【0040】
図5に示すように、ガイド突部43は、上下方向に延びる第1垂直面43aと、第1垂直面43aの下端部から上方に向かうに従い漸次、第1垂直面43aから周方向の一方側に離間する第1傾斜面43bと、を有し、下方に向けて突出する角部を有する略三角形状に形成されている。第1垂直面43aの下端と第1傾斜面43bの下端とは、下方に向けて突の曲面43cを介して接続されている。
【0041】
摺動突部42は、上下方向に延びる第2垂直面42aと、第2垂直面42aの上端部から下方に向かうに従い漸次、第2垂直面42aから周方向の他方側に離間する第2傾斜面42bと、を有し、上方に向けて突出する角部を有する略三角形状に形成されている。第2垂直面42aの上端と第2傾斜面42bの上端とは、上方に向けて突の曲面42cを介して接続されている。
摺動突部42は、全体としてガイド突部43よりも小さく、ガイド突部43と略相似な形状に形成されている。第1垂直面43aおよび第1傾斜面43bがなす角度と、第2垂直面42aおよび第2傾斜面42bがなす角度と、は互いに同等となっている。
【0042】
第1傾斜面43bおよび第2傾斜面42bによって、中皿16の容器体11に対する周方向の他方側の回転が許容されている。なお、第2傾斜面42bが第1傾斜面43bを摺動する際、第2傾斜面42bは全域にわたって第1傾斜面43bに当接する。
第1垂直面43aおよび第2垂直面42aと、付勢部材21による中皿16への上方付勢力と、によって、中皿16の容器体11に対する周方向の一方側の回転が規制される。なおこの際、第2垂直面42aは全域にわたって第1垂直面43aに当接する。
【0043】
このように、摺動突部42、ガイド突部43、および付勢部材21は、中皿16の容器体11に対する容器軸O回りの回転を一方向にのみ許容するラチェット機構を構成している。図示の例では、上面視において、中皿16の容器体11に対する時計回りの回転が許容され、かつ反時計回りの回転が規制されている。
なお、このラチェット機構は、上面視において中皿16の容器体11に対する反時計回りの回転を許容し、時計回りの回転を規制するように構成されていてもよい。
【0044】
図4は固定部材13の上面図であり、図1に示すX−X切断線から下方に向けて見た中皿16の形状を2点鎖線により表示している。
ガイド突部43は、外変換筒部55の内周面に、周方向に等間隔をあけて複数形成されている。外変換筒部55の内側において、周方向で互いに隣り合うガイド突部43同士の間に位置する部分(以下、逃げ部という)55eの周方向の大きさは、摺動突部42の周方向の大きさよりも大きい。このため、逃げ部55eに摺動突部42が位置している状態では、周方向で互いに隣り合う2つのガイド突部43のうちの少なくとも一方と、摺動突部42と、の間に、周方向の隙間が生じる。これにより、中皿16に過剰に大きな回転力が加えられた際、例えば摺動突部42が複数のガイド突部43を連続して周方向に乗り越えるのを抑制することが可能になり、内容物が連続して吐出されてしまうのを抑止することができる。
【0045】
摺動突部42は、内変換筒部32の外周面に、周方向に等間隔をあけて複数形成されている。摺動突部42は、ガイド突部43と同数(図示の例では4つ)設けられている。なお、摺動突部42はガイド突部43と同数設けられていなくてもよく、例えばガイド突部43より少なくてもよい。
【0046】
そして本実施形態では、成形孔26は、上下方向に沿う縦断面視において、図3に示されるように、前記横方向で互いに対向する第1対向面38および第2対向面39を有している。
第1対向面38および第2対向面39は、図2に示されるように、周方向を向いている。前記縦断面視において、第1対向面38および第2対向面39それぞれにおける少なくとも一部は、供給面28側から造形面27側に向けて、周方向の一方側に向けて延びる傾斜面となっている。前記縦断面視において、第2対向面39のうち、少なくとも供給面28側の下部が、供給面28側から造形面27側に向けて周方向の一方側に向けて延びる傾斜面とされ、第1対向面38のうち、少なくとも造形面27側の上部が、供給面28側から造形面27側に向けて周方向の一方側に向けて延びる傾斜面となっている。
図示の例では、前記縦断面視において、第1対向面38および第2対向面39それぞれにおける上下方向の全域が、供給面28から造形面27に向けて周方向の一方側に向けて延びる傾斜面となっていて、第1対向面38は、第2対向面39より周方向の一方側に位置している。前記縦断面視において、第1対向面38および第2対向面39の各傾斜面は互いに平行となっている。図3に示されるように、前記縦断面視において、成形孔26の上端開口部26aは全域にわたって第1対向面38と上下方向に対向し、成形孔26の下端開口部26bは全域にわたって第2対向面39と上下方向に対向している。
【0047】
前記縦断面視において、第1対向面38の傾斜面の下端縁24aと、第2対向面39の傾斜面の上端縁24bと、が上下方向で対向している。前記縦断面視において、第1対向面38の傾斜面の下端縁24a、および第2対向面39の傾斜面の上端縁24bは、鋭角に尖る角部となっている。なお、第1対向面38の傾斜面の下端縁24a、および第2対向面39の傾斜面の上端縁24bは、前記縦断面視で例えば曲面状若しくは平面状にする等適宜変更してもよい。また、第1対向面38および第2対向面39それぞれにおける周方向の所定長さ分同士を上下方向で対向させてもよい。
【0048】
成形孔26は、上下方向から見て矩形状を呈する。成形孔26は、上下方向から見た平面視で径方向に長い長孔状に形成されている。成形孔26の周方向の幅は、径方向の内側から外側に向かうに従い漸次、広くなっている。成形孔26は、上下方向から見た平面視で、周方向の一方側に向けて突の曲線状を呈する。第1対向面38および第2対向面39それぞれにおける前記傾斜面の上下方向に対する傾斜角度θ1、θ2は、径方向の内端部に位置する部分で最小となり、径方向の外端部に位置する部分で最大となるように、径方向の内側から外側に向かうに従い漸次、大きくなっている。頂壁部24において、容器軸Oからの径方向の距離が同じ部分では、第1対向面38および第2対向面39それぞれの傾斜面の前記傾斜角度θ1、θ2は互いに同等になっている。
【0049】
成形孔26の周方向の幅は、下方から上方に向かうに従い漸次、広くなっている。成形孔26の上端開口部26aの開口面積は、成形孔26の下端開口部26bの開口面積より大きくなっている。
成形孔26は、頂壁部24に周方向に間隔をあけて複数形成されている。複数の成形孔26は、頂壁部24に周方向に同等の間隔をあけて配置されている。頂壁部24の造形面27において、容器軸Oからの径方向の距離が同じ部分では、成形孔26の上端開口部26aの周方向の幅が、周方向で互いに隣り合う成形孔26の上端開口部26a同士の間の間隔と同等になっている。頂壁部24の供給面28において、容器軸Oからの径方向の距離が同じ部分では、成形孔26の下端開口部26bの周方向の幅が、周方向で互いに隣り合う成形孔26の下端開口部26b同士の間の間隔より小さくなっている。
【0050】
次に、上記のように構成された吐出容器1の作用について説明する。
【0051】
外装部15を容器体11に対して容器軸O回りに周方向の他方側に向けて回転させると、中皿16が外装部15と一体に固定部材13に対して容器軸O回りに回転し、第1傾斜面43bと第2傾斜面42bとが周方向で当接する。この際、第2傾斜面42bが全域にわたって第1傾斜面43bに当接する。さらに継続して外装部15を回転させると、図5の矢印M1に示すように、第1傾斜面43bに沿って摺動突部42が下降する。これにより、付勢部材21の上方付勢力に抗して中皿16が下降し、中皿16の係止部36がステム19を下降させるとともに、中皿16と外装部15との間の拡散室35の内容積を増大させつつ、内容物が、ステム19の上端開口部19a、連通孔34、拡散室35、および成形孔26を通して造形面27に吐出される。
【0052】
以上の過程において、拡散室35に流入した内容物は、芯体25の外周面上を上下方向に流動して芯体25に保持される。このとき内容物は、例えば、平面視において芯体25を中心とした円形状をなすように芯体25に保持される。内容物のステム19からの吐出量の増加に伴って、芯体25への内容物の供給量が増加すると、内容物が芯体25上で成長し、径方向の外側に向けて漸次膨張する。これにより、前述のように拡散室35が偏平形状に形成されていることと相俟って、拡散室35内に供給された内容物は径方向に拡散され複数の成形孔26に供給される。複数の成形孔26を通過した内容物は、図7および図8に示されるように、造形面27に吐出されて複数の造形片Z1を形成し、各造形片Z1が組み合わされて造形物Zが形成される。
【0053】
外装部15をさらに継続して回転させると、図5の矢印M2に示すように、摺動突部42が、ガイド突部43の第1傾斜面43bにおける下端部に達し、曲面43cを周方向の他方側に乗り越えて逃げ部55eに到達する。逃げ部55eでは、摺動突部42の上方に向けた移動が許容されるため、付勢部材21の上方付勢力によって、中皿16が待機位置まで上昇する。この際、皿本体30の上面が、外装部15の供給面28に当接若しくは近接することにより、拡散室35の内容積が減少若しくは消滅し、拡散室35に残存していた内容物が拡散室35から成形孔26を通じて造形面27に排出される。
内容物を再度吐出させる場合には、外装部15を同じ向きに回転させる操作を行うことにより、上述した作用が繰り返されて、内容物を繰り返し吐出させることができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の吐出容器1によれば、成形孔26が、前記縦断面視において、第1対向面38および第2対向面39を有し、これらの第1対向面38および第2対向面39それぞれにおける少なくとも一部が、上下方向に対して同じ向きに傾斜した傾斜面となっているので、供給面28側の下端開口部26bから成形孔26に流入した内容物を、第2対向面39の傾斜面により、第1対向面38および第2対向面39の各傾斜面が上下方向に対して傾斜した向きに流すことが可能になるとともに、第1対向面38の傾斜面により、内容物をその向きのまま造形面27に向けて流すことができる。これにより、内容物を、図7および図8に示されるように、第1対向面38および第2対向面39の各傾斜面が上下方向に対して傾斜した向きに傾いた姿勢の造形片Z1に形成することができる。
【0055】
特に、成形孔26の下端開口部26bが全域にわたって第2対向面39の傾斜面と上下方向に対向しているので、供給面28側の下端開口部26bから成形孔26に流入した内容物が、上方に向けて真っ直ぐ流れて直接造形面27に到達するのを抑制することができる。したがって、成形孔26に流入した内容物全体の流れを、前述の傾斜した向きにすることが可能になり、造形面27上の造形片Z1の姿勢を、確実に前述の傾斜した向きに傾かせることができる。
【0056】
また、前記縦断面視において、第1対向面38の傾斜面の下端縁24aと、第2対向面39の傾斜面の上端縁24bと、が上下方向で対向しているので、成形孔26を、上下方向に移動する金型で成形することが可能になり、頂壁部24を成形する金型の構造の複雑化を防ぐことができる。
また、前記縦断面視で、第1対向面38の傾斜面の下端縁24aと、第2対向面39の傾斜面の上端縁24bと、が上下方向で互いに対向していることから、下端開口部26bから成形孔26に流入した内容物の逆流を抑えることが可能になり、造形片Z1を精度良く形成することができる。
【0057】
また、成形孔26が、径方向に長い長孔状に形成されるとともに、周方向に間隔をあけて複数配置され、第1対向面38および第2対向面39が周方向を向いているので、図7および図8に示されるように、複数の造形片Z1を、周方向における同じ向きに傾けた姿勢にして造形面27で組み合わせて造形物Zを形成することが可能になり、周方向に捩じれた形態の造形物Zを得ることができる。
また、成形孔26が、径方向に長い長孔状に形成されるとともに、周方向に間隔をあけて複数配置されていることから、周方向で互いに隣り合う造形片Z1同士を相互に支え合わせることが可能になり、造形片Z1の型崩れを抑えて高精度の造形物Zを形成することができる。
【0058】
また、第1対向面38および第2対向面39それぞれにおける傾斜面の上下方向に対する傾斜角度θ1、θ2が、径方向の内側から外側に向かうに従い漸次、大きくなっているので、図7および図8に示されるように、上下方向に対する傾斜角度が、径方向の内側から外側に向かうに従い漸次、大きくなっている造形片Z1を形成することができる。したがって、美観に優れた造形物Zを形成することができるとともに、周方向で互いに隣り合う造形片Z1同士を確実に相互に支え合わせることができる。
【0059】
また、頂壁部24の厚さが0.5mm以上3.0mm以下となっているので、頂壁部24を、金型構造の複雑化を抑えつつ高精度に形成することができる。
頂壁部24の厚さが0.5mm未満になると、例えば、頂壁部24の厚さが薄くなりすぎ、第1対向面38および第2対向面39それぞれの傾斜面の長さを、前述の作用効果を奏する程度まで確保することができないばかりでなく、成形孔26を成形する金型が小さくなり過ぎたり、頂壁部24の強度が低下したりする等のおそれがある。
頂壁部24の厚さが3.0mmを超えると、例えば、頂壁部24にひけが生ずるおそれ等がある。
【0060】
また、頂壁部24と中皿16との間に拡散室35が設けられているので、複数の成形孔26のうちの特定の一部に内容物が集中して流入することを抑え、各成形孔26にばらつき少なく内容物を供給することができる。これにより、内容物が成形孔26に対して過剰または過少に供給されることを抑え、各成形孔26に適量の内容物を供給することができる。したがって、各成形孔26により形成される造形片Z1を精度良く形成することが可能になり、造形物Zを高精度に形成することができる。
【0061】
また、外装部15を容器体11に対して容器軸O回りに回転させる操作によって、内容物をステム19の上端開口部19aから吐出させるとともに、この吐出を停止させて中皿16を待機位置まで復元変位させることができる。これにより、例えば中皿16を手で押し下げることでステム19の上端開口部19aから内容物を吐出させる場合と比較して操作力を低減し、内容物の吐出量を安定させつつ、内容物がステム19の上端開口部19aから吐出されている間に造形面27に吐出される内容物の流れと、ステム19の上端開口部19aからの吐出を停止して拡散室35内の内容物を中皿16により造形面27に押し出す間に造形面27に吐出される内容物の流れと、を連続的にして、造形物Zを高精度に形成することができる。
【0062】
また、付勢部材21の弾性力を受け止める受部54が、頂板17の環状凹部18内に固定される内筒部22から径方向の内側に向けて延び、ガイド突部43が形成された外変換筒部55がこの受部54の内周縁から上方に向けて延びている。この構成により受部54および外変換筒部55の剛性が高まり、付勢部材21の弾性力により外変換筒部55が変形若しくは変位するのが抑えられるため、ガイド突部43と摺動突部42との位置関係を安定させることができる。これにより、上述したようなガイド突部43および摺動突部42による優れた作用効果を確実に奏功させることができるとともに、付勢部材21および外変換筒部55を容器本体12の口部12aの内側にコンパクトに配設することができる。
【0063】
また、ガイド突部43の第1垂直面43aおよび第1傾斜面43bがなす角度と、摺動突部42の第2垂直面42aおよび第2傾斜面42bがなす角度と、が互いに同等であるため、摺動突部42がガイド突部43を周方向に摺動する際に、第1傾斜面43bと第2傾斜面42bとの接触面積を大きくすることができる。これにより、例えば摺動突部42とガイド突部43とが摺動する際に両者が摩耗するのを抑えて、動作を安定させることができる。
また、第1傾斜面43bおよび第2傾斜面42bそれぞれの上下方向に対する傾斜角度が互いに同等となっているので、ガイド突部43および摺動突部42が周方向に間隔をあけて複数設けられていることと相俟って、外装部15の回転操作時に、中皿16の中心軸線が容器軸Oに対して傾くのを抑えることが可能になり、中皿16を容器体11に対して引っかかりなく円滑に回転させることができる。
【0064】
さらに、ガイド突部43および摺動突部42の双方が、上下方向に延びる垂直面43a、42aを有しているため、外装部15および中皿16の容器体11に対する容器軸O回りの回転を一方向にのみ許容するとともに、逃げ部55eに到達した摺動突部42を付勢部材21の上方付勢力によって上方に向けて速やかに移動させることができる。これにより、外装部15を容器体11に対して回転させる際の操作性を向上させ、かつ造形面27に吐出される内容物の速度および量を安定させて、造形物Zの造形の精度をより確実に向上させることができる。
また、ガイド突部43が下方に向けて突の曲面43cを有し、摺動突部42が上方に向けて突の曲面42cを有していることにより、摺動突部42がガイド突部43を周方向にスムーズに乗り越えることができる。
【0065】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0066】
例えば、前記実施形態では、摺動突部42が中皿16に設けられ、ガイド突部43が固定部材13に設けられているが、本発明はこれに限られない。例えば、摺動突部42が固定部材13に設けられ、ガイド突部43が中皿16に設けられていてもよい。
また、前記実施形態では、ガイド突部43が、容器本体12に固定された固定部材13に設けられ、容器本体12に間接的に設けられているが、本発明はこれに限られない。例えばガイド突部43が、容器本体12の口部12aに一体に形成され、容器本体12に直接設けられていてもよい。
また、摺動突部42およびガイド突部43としては、前記実施形態に限られず、様々な形態を採用することができる。例えば、前記実施形態では、摺動突部42およびガイド突部43がそれぞれ4つ設けられていたが、これに限られず、摺動突部42およびガイド突部43は例えば1つずつ設けられていてもよい。この場合、1つの逃げ部55eが平面視においてC字状に設けられ、その両周端部がガイド突部43を周方向に挟んでいてもよい。
また、第1傾斜面43bと第1垂直面43aとがなす角度と、第2傾斜面42bと第2垂直面42aとがなす角度と、は互いに同等でなくてもよい。また、摺動突部42は内変換筒部32から径方向の外側に向けて突出する円柱状に形成されていてもよい。
また、前記実施形態では、外装部15および中皿16の容器体11に対する容器軸O回りの回転を一方向にのみ許容するラチェット機構を採用したが、本発明はこれに限られず、外装部15および中皿16が容器体11に対して容器軸O回りの双方向に一体として回転可能に設けられてもよい。
【0067】
また、前記実施形態では、外装部15および中皿16の容器体11に対する容器軸O回りの回転動作を、中皿16の上下方向の動作に変換する変換機構37を備える構成を示したが、これに限らず、変換機構37を有さず、中皿16を例えば手若しくはレバー等により直接押し下げることで、ステム19の上端開口部19aから内容物を吐出させる構成を採用してもよい。
さらに、造形物Zをより精度よく形成するために、吐出器14の吐出弁に代えて、例えば、ステム19の一度の押し込み操作により一定量の内容物が吐出される定量バルブを採用してもよい。
【0068】
なお、成形孔26は前記実施形態に限らず適宜変更してもよい。例えば、成形孔26は、周方向および径方向に間隔をあけて複数配置してもよい。成形孔26は、周方向に延びる長孔であってもよい。前記縦断面視で、第1対向面38および第2対向面39は、供給面28から造形面27に向けて周方向の他方側に延びてもよい。第1対向面38および第2対向面39それぞれの前記傾斜角度θ1、θ2を、径方向の全域にわたって同等にしてもよい。成形孔26の周方向の幅を、上下方向の全域にわたって同等にしてもよい。
【0069】
図9に示されるような成形孔26を採用してもよい。
この成形孔26では、前記縦断面視において、第2対向面39のうち、供給面28側の下部のみが供給面28側から造形面27側に向けて周方向の一方側に向けて延びる傾斜面とされ、造形面27側の上部は上下方向に延びる鉛直面となっている。この構成においても、前記縦断面視で、成形孔26の下端開口部26bが全域にわたって第2対向面39の傾斜面と上下方向に対向し、第1対向面38の傾斜面の下端縁24aと、第2対向面39の傾斜面の上端縁24bと、が上下方向で対向している。この成形孔26では、上端開口部26aの開口面積を下端開口部26bの開口面積と比べて大きくすることができる。
【0070】
造形物としては、図7および図8で示した形態に限らず例えば、向日葵、桜などの花、文字、およびロゴタイプなどの形状を造形することができる。成形孔26の数や形状を適宜変更することで、造形する造形物の形状を変更することができる。吐出する内容物の用途などにより、成形孔26の数や形状を適宜変更してもよい。
【0071】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10 造形ヘッド
15 外装部
15a 周壁部
16 中皿
19a ステムの上端開口部(吐出孔)
24 頂壁部
24a 第1対向面の下端縁
24b 第2対向面の上端縁
26 成形孔
26b 成形孔の下端開口部
27 造形面
28 供給面
35 拡散室
38 第1対向面
39 第2対向面
O 容器軸(頂壁部の中心軸線)
Z1 造形片
Z 造形物
θ1、θ2 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9