特許第6902981号(P6902981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902981
(24)【登録日】2021年6月24日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】溶接ロボットの操作端末
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/12 20060101AFI20210701BHJP
   B23K 9/32 20060101ALI20210701BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   B23K9/12 331J
   B23K9/32 B
   B25J19/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-209099(P2017-209099)
(22)【出願日】2017年10月30日
(65)【公開番号】特開2019-81181(P2019-81181A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2020年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】赤路 雄一
(72)【発明者】
【氏名】吉武 和志
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−341087(JP,A)
【文献】 特開昭60−6377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00 − 9/32
B25J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ロボットの溶接関連教示情報を表示する表示面を有する表示部と、
タッチパネル及び物理ボタンを含んで構成され、前記溶接ロボットの溶接関連教示情報の入力を受け付ける入力部と、
前記表示部及び前記入力部が設けられる当該溶接ロボットの操作端末の筐体に埋め込まれるように配置され、前記溶接ロボットによる溶接により生じるアーク放電に伴う溶接光の一部を遮り、前記溶接光を部分的に透過させる遮光板と、を備え、
前記筐体において、前記表示部の表示面及び前記遮光板は、前記入力部の物理ボタンよりも上部に配置され、
前記入力部のタッチパネルは、前記表示部の表示面に重畳する位置に設けられる、
溶接ロボットの操作端末。
【請求項2】
前記表示面は、第1の辺及び前記第1の辺と対向する第2の辺を有する矩形であり、
前記遮光板は、前記第1の辺側に設けられ、
前記入力部の少なくとも一部は、前記第2の辺側に設けられている、
請求項1に記載の溶接ロボットの操作端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ロボットの操作端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶接ロボットの動作を教示する情報や溶接条件等を含む溶接関連教示情報は、ティーチペンダント等と称される溶接ロボットの操作端末を用いて入力されることがある。操作端末は、溶接関連教示情報を表示する表示部及び溶接関連教示情報の入力を受け付ける入力部を有する。
【0003】
溶接関連教示情報の入力は、アークの状態に応じて行われることがある。しかし、アーク放電に伴って強い光(以下、「溶接光」という。)が発せられるため、直視によりアークの状態を確認することは難しい。そこで、作業者の顔を覆う溶接面に遮光板を設け、当該遮光板を通してアークの状態を確認することがある。遮光板は、溶接光をほとんど遮るように構成されており、遮光板を用いることによりアークの形状や態様を安全に確認できる。
【0004】
特許文献1には、溶接光の有無に応じて遮光板の透過率を自動で切り替える溶接面を備えた溶接ヘルメットが記載されている。これにより、溶接時と非溶接時に溶接面の着脱を繰り返す必要がなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−507580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
溶接時に溶接ロボットの溶接関連教示情報を入力する場合に、例えば特許文献1に記載の溶接ヘルメットを装着すると、暗くなった遮光板により視界が遮られるため、アークの状態を確認できても手元の操作端末に表示される溶接関連教示情報を確認し難い。そのため、溶接関連教示情報の確認を行うために溶接ヘルメットの着脱を繰り返さなければならず、溶接関連教示情報の確認作業が煩雑となる。一方、溶接ヘルメットを装着しなければ、操作端末に表示される溶接関連教示情報の確認を行うことができるが、アークの状態の確認が困難となる。
【0007】
そこで、本発明は、アークの状態と溶接関連教示情報を同時に確認しつつ、溶接関連教示情報の入力を行える溶接ロボットの操作端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る溶接ロボットの操作端末は、溶接ロボットの溶接関連教示情報を表示する表示面を有する表示部と、溶接ロボットの溶接関連教示情報の入力を受け付ける入力部と、溶接ロボットによる溶接により生じるアーク放電に伴う溶接光の一部を遮り、溶接光を部分的に透過させる遮光板と、を備える。
【0009】
この態様によれば、操作端末が備える遮光板が溶接光の一部を遮るため、作業者は操作端末を用いて、強い光を目に入れることなくアークの状態を確認することができる。また、操作端末には、溶接関連教示情報を表示する表示部と、溶接関連教示情報の入力を受け付ける入力部と、が設けられている。そのため、作業者は、アークの状態と溶接関連教示情報を同時に確認しつつ、入力部を介して溶接関連教示情報の入力を行うことができる。
【0010】
上記態様において、遮光板は、表示部及び入力部が設けられる筐体に、着脱可能に取り付けられてもよい。
【0011】
この態様によれば、アークの状態を確認する必要が無い場合に遮光板を操作端末から取り外すことで操作端末のコンパクト化を図ることができる。また、異なる種類の遮光板を操作端末に付け替えたり、劣化した遮光板を取り換えたりすることが容易となる。
【0012】
上記態様において、遮光板は、表示部及び入力部が設けられる筐体に、引き出し可能に収容されてもよい。
【0013】
この態様によれば、アークの状態を確認する必要が無い場合に遮光板を操作端末に収容することで操作端末のコンパクト化を図ることができ、同時に遮光板の損傷を防ぐことができる。
【0014】
上記態様において、遮光板は、表示部及び入力部が設けられる筐体に埋め込まれてもよい。
【0015】
この態様によれば、遮光板の外縁が筐体によって保護され、遮光板の破損を防止できる。また、遮光板の紛失を防止することができる。
【0016】
上記態様において、表示面は、第1の辺及び前記第1の辺と対向する第2の辺を有する矩形であり、遮光板は、第1の辺側に設けられ、入力部の少なくとも一部は、第2の辺側に設けられてもよい。
【0017】
この態様によれば、遮光板によってアークの状態を確認する際に、表示面が遮光板の下側に位置し、入力部の少なくとも一部が表示面の下側に位置する。そのため、操作端末を把持した状態でアークの状態の確認と表示面に表示された溶接関連教示情報の確認を同時に行いつつ、入力部により溶接関連教示情報の入力を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アークの状態と溶接関連教示情報を同時に確認しつつ、溶接関連教示情報の入力を行える溶接ロボットの操作端末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る溶接ロボットシステムの概要を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る溶接ロボットの操作端末を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る溶接ロボットの操作端末により実行される処理のフローチャートである。
図4】本発明の第2実施形態に係る溶接ロボットの操作端末を示す図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る溶接ロボットの操作端末を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る溶接ロボットシステム100の概要を示す図である。溶接ロボットシステム100には、溶接ロボット30の操作端末10a、コントローラ20、溶接ロボット30及び溶接電源40が含まれ、溶接ロボット30は、溶接トーチ31を備える。
【0022】
溶接ロボット30は、アーク溶接を行う機器である。溶接ロボット30は、アーム先端部に溶接トーチ31を備える。溶接トーチ31は、溶接ワイヤを送給する送給機構を備える。アーク溶接は、溶接トーチ31に備えられた送給機構により溶接ワイヤを送給し、溶接対象となる金属材料との間にアークを発生させることにより行う。アーク溶接は、作業者が溶接ロボット30の動作を指定したプログラムを作成し、当該プログラムを溶接ロボット30で実行することにより行われることもある。ここで、作業者とは、溶接作業を実施する者であり、より具体的には、アークの状態を確認しつつ溶接ロボット30の溶接関連教示情報を入力する者である。
【0023】
溶接ロボット30による溶接では、溶接ロボット30の溶接関連教示情報を予め入力する必要がある。ここで、溶接関連教示情報とは、溶接ロボット30により行われる溶接に関する情報であり、溶接ロボット30の動作を教示する情報及び溶接条件が含まれる。溶接ロボット30の動作を教示する情報には、溶接ロボット30のアームの動作を教示する情報や、溶接ロボット30の位置及び姿勢に関する情報、溶接トーチ31の突出し長を指定する情報等が含まれる。また、溶接条件には、溶接ワイヤに印加される電圧(以下、「溶接電圧」という。)や溶接ワイヤを流れる電流(以下、「溶接電流」という。)の値及び溶接中における溶接線方向への溶接トーチ31の移動速度を表す溶接速度等が含まれる。作業者は、アークの状態を確認しつつ、最適な溶接関連教示情報を入力する。また、溶接ロボット30は、ケーブルを介してコントローラ20と接続されており、コントローラ20から動作指令を取得することができる。さらに、溶接トーチ31は、ケーブルを介して溶接電源40と接続されており、溶接ワイヤへの溶接電圧や溶接電流の供給を受ける。
【0024】
アーク溶接では、溶接ワイヤを溶接対象に瞬間的に接触させて通電させると、溶接ワイヤと金属材料の間にアーク放電が発生し、発生したアークの熱により溶接ワイヤと金属材料を溶解させることで、溶接が行われる。
【0025】
溶接電源40は、ケーブルを介して溶接トーチ31へ電力を送電する。また、溶接電源40は、内部に電圧計及び電流計を備えている。溶接電源40が備える電圧計は溶接電圧の値を測定し、電流計は溶接電流の値を測定する。測定された溶接電圧及び溶接電流の値は、ケーブルを介してコントローラ20へと伝達される。
【0026】
操作端末10aは、溶接ロボット30の溶接関連教示情報の入力を受け付ける。溶接関連教示情報の調整は、作業者がアークの状態を確認しつつ操作端末10aに溶接関連教示情報を入力することで行われる。図1に示す溶接ロボット30の操作端末10aは、ケーブルを介してコントローラ20と接続されているが、ワイヤレスで接続されていてもよい。すなわち、操作端末10aとコントローラ20は、無線通信を行う通信部を備えていてもよい。コントローラ20と操作端末10aがワイヤレスに接続されることで、作業者はケーブルの存在に煩わされたり、ケーブルの長さによる移動範囲の制限を受けたりすることなく、自由に移動をしながら溶接関連教示情報の入力を行うことができる。
【0027】
コントローラ20は、溶接ロボット30の制御を行う機器である。コントローラ20は、上述の通り、操作端末10aに接続されており、当該操作端末10aに入力された溶接関連教示情報を取得することができる。また、コントローラ20は、溶接ロボット30とケーブルを介して接続されており、操作端末10aから取得した溶接関連教示情報を溶接ロボット30へ伝達することができる。
【0028】
コントローラ20は、溶接電源40から取得した実測値を操作端末10aへ伝達する。ここで、実測値とは、溶接に関して実際に測定された値であり、溶接電源40が備える電圧計が測定した溶接電圧の測定値や、電流計が測定した溶接電流の測定値等が含まれる。また、操作端末10aは取得した実測値を表示部に表示する。そのため、作業者は操作端末10aにより実測値を確認することができる。
【0029】
図2は、溶接時における本発明の実施形態に係る溶接ロボット30の操作端末10aを示す図である。操作端末10aは、筐体50a及び遮光板16を備える。
【0030】
筐体50aは、表示部11、タッチパネル14及び物理ボタン15を備える。筐体50aは、表示部11及びタッチパネル14を囲うように形成されている。また、筐体50aには、複数の開口部が設けられており、当該開口部から物理ボタン15が突出している。筐体50aの内部には、図示しない操作端末10aを制御する制御部等が収納されている。
【0031】
表示部11は、表示面を有し、当該表示面に溶接ロボット30の溶接関連教示情報12を表示する。表示面には、実測値13等の溶接関連教示情報12以外の情報を表示してもよい。表示面は、表示部11の一部又は全域を占める大きさで構成されてよく、表示面の一部に溶接関連教示情報12及び実測値13が表示されてよい。表示部11は、筐体50a内部に収容され、筐体50aには表示面の大きさに合わせた穴が開いており、作業者は当該穴を通して表示面を視認することができる。
【0032】
本実施形態において、表示部11は、フレーム領域70を備える。フレーム領域70は、表示面の外周を囲うように設けられ、表示面の表示制御回路等を内蔵するものであってよい。フレーム領域70は、筐体50a内部に設けられて、筐体50aに形成された穴の周囲に当接するよう位置してよい。本実施形態において、フレーム領域70と遮光板16は、正面視において重畳しない位置に設けられるが、フレーム領域70と遮光板16は、正面視において重畳する位置に設けられてもよい。
【0033】
本実施形態において、表示面は、第1の辺60及び第1の辺60と対向する第2の辺61を有する矩形である。遮光板16と物理ボタン15は、表示面を隔てて設けられており、表示面の第1の辺60側に遮光板16が、第2の辺61側に入力部の一部である物理ボタン15が位置する。つまり、操作端末10aの上端側に遮光板16が設けられ、操作端末10aの下端側に物理ボタン15が設けられ、遮光板16と入力部の間に表示面が設けられている。なお、入力部の一部であるタッチパネル14は、表示面と重畳する位置に設けられてよい。
【0034】
本実施形態に係る溶接ロボット30の操作端末10aによれば、遮光板16によってアークの状態を確認する際に、表示面が遮光板16の下側に位置し、入力部の少なくとも一部が表示面の下側に位置する。そのため、操作端末10aを把持した状態で、作業者の腕等によって遮光板16及び表示面が遮られることなく、アークの状態の確認と表示面に表示された溶接関連教示情報12の確認を同時に行いつつ、入力部により溶接関連教示情報の入力を行うことができる。
【0035】
溶接関連教示情報12は、上述の通り、溶接ロボット30により行われる溶接に関する情報であり、溶接条件及び溶接ロボット30の動作を教示する情報が含まれる。図2に示す溶接関連教示情報12は、溶接関連教示情報の一例であり、溶接条件として溶接電流の値及び溶接電圧の値が含まれ、溶接ロボット30の動作を教示する情報として溶接ロボット30が行う溶接工程の情報が含まれる。同図に示す溶接関連教示情報12より、溶接ロボット30は、溶接電流が「200A」、溶接電圧が「18.0V」の状態で「STEP5」の溶接工程に対応した動きをするよう設定されていることがわかる。
【0036】
操作端末10aに表示される溶接関連教示情報12は、必ずしも溶接電流の値、溶接電圧の値及び溶接工程を含まなくともよく、これらのうち一部のみを含んでもよいし、溶接ロボット30のアームの位置及び姿勢に関する情報、突出し長といった溶接工程「STEP5」の詳細な教示内容や、溶接速度といった他の溶接条件を含んでいてもよい。なお、溶接関連教示情報12は、必ずしも文字で出力されなくともよく、グラフによる表示等、作業者が溶接関連教示情報12の内容を確認することができればどのような態様で出力されていてもよい。
【0037】
実測値13は、上述の通り、溶接ロボット30により行われる溶接に関して実際に測定して得られた値である。例えば、実測値13には、溶接電流及び溶接電圧の測定値等が含まれる。図2に示す実測値13は、実測値の一例である。同図に示す実測値13より、実際の溶接は、溶接電流が「200A」、溶接電圧が「17.9V」で行われていることがわかる。
【0038】
タッチパネル14は、溶接ロボット30の溶接関連教示情報12の入力を受け付ける入力部である。タッチパネル14での溶接関連教示情報12の入力は、作業者が、指先やペンでタッチパネル14に触れることにより行われる。より具体的には、表示部11のうちタッチパネル14の部分には、作業者が視認できるアイコン等を一つ又は複数表示することができる。また、タッチパネル14は、作業者の指先が触れた位置を検出でき、表示された複数のアイコンのうち、作業者によって選択されたアイコンを特定することができる。タッチパネル14は、作業者によって特定されたアイコンの情報を操作端末10aが備える制御部やコントローラ20等へ伝達することができる。
【0039】
物理ボタン15は、溶接ロボット30の溶接関連教示情報12の入力を受け付ける入力部である。物理ボタン15での溶接関連教示情報12の入力は、作業者が、物理ボタン15を押下することにより行われる。なお、図2に示す物理ボタン15の形状は、正面視において正方形であるが、物理ボタン15の形状は任意である。例えば、物理ボタン15の形状は、正面視において長方形や円形等であってもよい。また、物理ボタン15の個数についても任意である。
【0040】
なお、溶接ロボット30の操作端末10aが備える入力部は、図2に示すタッチパネル14及び物理ボタン15に限らない。例えば、操作端末10aは、レバーやダイヤルといった任意の入力手段を入力部として備えることができる。
【0041】
遮光板16は、溶接により生じる溶接光17の一部を遮り、溶接光17を部分的に透過させる。遮光板16は、液晶、偏光子等の溶接光17を遮ることができる任意の部材によって構成される。
【0042】
本実施形態において、遮光板16は、表示部11及び入力部が設けられる筐体50aに、着脱可能に取り付けられている。本実施形態において、遮光板16は、ねじ18によって筐体50aにねじ止めされている。遮光板16の筐体50aへの取り付けは、ねじ止めに限られず、着脱可能な任意の方法によって行われてよい。例えば、遮光板16と筐体50aのそれぞれに磁石を設け、磁力により遮光板16を筐体50aに取り付けてもよい。また、遮光板16に凸部を設け、筐体50aに凹部を設けて、凸部と凹部をはめ合せることにより行ってもよい。なお、遮光板16に凹部を設け、筐体50aに凸部を設けてもよい。
【0043】
本実施形態において、遮光板16は、表示面に対して平行になるよう、操作端末10aに設けられている。また、操作端末10aの正面視において、遮光板16は、表示面に重ならないように位置する。
【0044】
また、遮光板16の取り付け位置は、作業者が遮光板16を通してアークの状態を確認できる位置であればどのような位置であっても構わないが、図2に示すように、遮光板16を表示部11に隣接する位置に設けることで、溶接関連教示情報12とアークの状態の確認がより行い易くなる。
【0045】
溶接光17は、アーク放電に伴って生じる光である。溶接光17には、可視光、紫外線及び赤外線が含まれることがある。中でも、溶接光17に含まれる強い可視光及び紫外線を直視することは避けるべきであるため、作業者は溶接光17を肉眼では視認し難い。そのため、作業者は、操作端末10aの遮光板16を通して溶接光17の一部を遮りつつアークの状態を確認する。
【0046】
図3は、本発明の実施形態に係る溶接ロボット30の操作端末10aにより実行される処理のフローチャートである。溶接ロボット30の操作端末10aの処理は制御部による制御のもと、入力された溶接関連教示情報12に応じて溶接ロボット30の溶接関連教示情報12を調整する処理である。
【0047】
操作端末10aは、表示部11に溶接ロボット30の溶接関連教示情報12を表示する(S10)。その後、コントローラから実測値13を受け取る(S11)。受け取った実測値13を表示部11に表示する(S12)。
【0048】
次に、入力部が溶接関連教示情報12の入力を受け付けたか否かを判断する(S13)。入力部が溶接関連教示情報12の入力を受け付けた場合(S13:YES)、入力された溶接関連教示情報12の内容に従って溶接ロボット30の溶接関連教示情報12を調整する(S14)。
【0049】
操作端末10aの入力部が溶接関連教示情報12の入力を受け付けていないと判断した場合は(S13:NO)、溶接関連教示情報12の調整を行わずに処理を終える。以上により、溶接ロボット30の操作端末10aによる処理が終了する。
【0050】
本実施形態に係る溶接ロボット30の操作端末10aによれば、操作端末10aが備える遮光板16が溶接光17の一部を遮るため、作業者は操作端末10aを用いて、強い光を目に入れることなくアークの状態を確認することができる。また、操作端末10aには、溶接関連教示情報12を表示する表示部11と、溶接関連教示情報12の入力を受け付ける入力部と、が設けられている。そのため、作業者は、アークの状態と溶接関連教示情報12を同時に確認しつつ、入力部を介して溶接関連教示情報12の入力を行うことができる。
【0051】
本実施形態に係る溶接ロボット30の操作端末10aによれば、アークの状態を確認する必要が無い場合に遮光板16を操作端末10aから取り外すことで操作端末10aのコンパクト化を図ることができる。また、異なる種類の遮光板16を操作端末10aに付け替えたり、劣化した遮光板16を取り換えたりすることが容易となる。
【0052】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態に係る溶接ロボット30の操作端末10bを示す図である。第2実施形態に係る操作端末10bは、遮光板16を収容する収容部19を有する点で第1実施形態に係る操作端末10aと相違する。その他の構成については、本実施形態に係る操作端末10bは、第1実施形態に係る操作端末10aと同様の構成を備える。本実施形態に係る操作端末10bも、図1を用いて説明した溶接ロボットシステム100に含まれてよい。
【0053】
収容部19は、表示部11及び入力部が設けられる筐体50bに形成され、遮光板16を収容する。例えば、収容部19は、遮光板16を内部に収容できるように形成された凹部である。凹部の両端側に位置する内壁には、それぞれ凹部の開口部から底面部に向かって直線状に溝が設けられている。溝の幅は、遮光板16の厚さに合わせて形成されており、遮光板16の両端を溝にはめることができる。そのため、収容部19内において遮光板16のぐらつきを抑制することができる。遮光板16を溝に沿ってスライドさせることで、アークの状態を確認する必要がない場合には、遮光板16を収容部19へ差し込むように収容することができ、アークの状態を確認する必要がある場合には、遮光板16を収容部19から引き出すことができる。図4に示す操作端末10bは、遮光板16を収容部19から引き出した状態である。また、収容部19に、遮光板16を任意の位置で固定する固定機構を設けてもよい。固定機構により遮光板16を固定することで、アークの状態を確認する際に、作業者の意に反して遮光板16の位置が変動してしまうことを防止できる。
【0054】
遮光板16の収容方法は、筐体50bへの差し込みに限られない。例えば、遮光板16を筐体50bに対して回動可能に連結するヒンジ部によって、筐体50bの上端部と遮光板16の下端部とを連結してもよい。この構成によれば、アークの状態を確認しない場合に、ヒンジ部を軸として操作端末10bを折り畳むことにより、遮光板16を筐体50bの裏側に隠すように収容することができる。このような構成では、遮光板16の収容時に、操作端末10bを側面視すると、筐体50bの裏面と遮光板16の裏面とが接触した状態となる。また、アークの状態を確認する場合には、ヒンジ部を回動させて遮光板16を開くように引き出すことで、アークの状態の確認を行うことができる。
【0055】
本実施形態に係る溶接ロボット30の操作端末10bによれば、アークの状態を確認する必要が無い場合に遮光板16を操作端末10aに収容することで操作端末10bのコンパクト化を図ることができ、同時に遮光板16の損傷を防ぐことができる
【0056】
[第3実施形態]
図5は、本発明の第3実施形態に係る溶接ロボット30の操作端末10cを示す図である。第3実施形態に係る操作端末10cは、遮光板16が表示部11及び入力部が設けられる筐体50cに埋め込まれている点で、第1実施形態に係る操作端末10aと相違する。その他の構成については、本実施形態に係る操作端末10cは、第1実施形態に係る操作端末10aと同様の構成を備える。本実施形態に係る操作端末10cも、図1を用いて説明した溶接ロボットシステム100に含まれてよい。
【0057】
本実施形態に係る筐体50cは、遮光板16の形状に合わせて部分的に貫通している。遮光板16は、筐体50cの貫通した部分に埋め込まれるようにして設けられている。
【0058】
本実施形態に係る溶接ロボット30の操作端末10cによれば、遮光板16の外縁が筐体50cによって保護され、遮光板16の破損を防止できる。また、遮光板16の紛失を防止することができる。
【0059】
操作端末10cは、操作端末10cの上端側に表示面が設けられ、操作端末10cの下端側に入力部の一部である物理ボタン15が設けられ、表示面と物理ボタン15の間に遮光板16が設けられた構成であってもよい。なお、入力部の一部であるタッチパネル14は、表示面と重畳する位置に設けられてよい。この構成によると、アークの状態を確認する際に、遮光板16が表示面の下側に位置し、物理ボタン15が遮光板16の下側に位置することになる。そのため、操作端末10cを把持した状態で、作業者の腕等によって遮光板16及び表示面が遮られることなく、アークの状態の確認と溶接関連教示情報12の確認を同時に行いつつ、入力部により溶接関連教示情報12の入力を行うことができる。
【0060】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0061】
10a…操作端末、10b…操作端末、10c…操作端末、11…表示部、12…溶接関連教示情報、13…実測値、14…タッチパネル、15…物理ボタン、16…遮光板、17…溶接光、18…ねじ、19…収容部、20…コントローラ、30…溶接ロボット、31…溶接トーチ、40…溶接電源、50a…筐体、50b…筐体、50c…筐体、60…第1の辺、61…第2の辺、70…フレーム領域、100…溶接ロボットシステム
図1
図2
図3
図4
図5