(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記段差部は、前記接着面の前記コンデンサモジュールの重心投影された位置に配置され、前記段差部に配置された前記接着層よりも前記段差部以外の位置に配置された前記接着層の厚みが厚いことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
前記実装面の前記接着層が配置された位置と異なる位置には、前記接着面に接触する突き当て部が配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
[第1実施形態の構造]
図1は、第1実施形態の電力変換装置1の平面図である。
図2は、
図1のA−A線断面図である。
図3は、
図1のB−B線断面図である。
図1等に示すように、第1実施形態の電力変換装置1(インバータ)は、インバータケース(ケース)、パワーモジュール4、コンデンサモジュール6、電流センサ8等により構成されている。
【0011】
インバータケースは、パワーモジュール4等が搭載されるトレー形状のプレート2と、冷媒(水、またはオイル)を循環させプレート2を裏面から冷却させる循環路3と、を備える。循環路3は冷媒を循環させるポンプ(不図示)に接続され、ポンプから供給された冷媒を冷媒入口31から導入し、導入した冷媒をプレート2の裏面に接触させ、冷媒出口32から排出された冷媒をポンプに戻している。プレート2及び循環路3は、金属等の熱伝導性が高い材料で形成することが望ましい。
【0012】
プレート2の実装面21(底面)には、パワーモジュール4、端子台7、電流センサ8、放電抵抗9が固定されている。またプレート2の実装面21には、コンデンサモジュール6が接着剤により固着されている。コンデンサモジュール6の接着構造については後述する。
【0013】
パワーモジュール4は、内部にパワートランジスタ42A,42B(
図4)等を備え、プレート2に固定されている。パワーモジュール4の上部には、三相端子44U、三相端子44V、三相端子44W、単相端子46P、単相端子46Nが配置され、さらにドライバー・コントローラ基板5(
図4、コントローラ51)が搭載されている。三相端子44Uには、バスバー45Uが接続され、三相端子44Vには、バスバー45Vが接続され、三相端子44Wには、バスバー45Wが接続されている。
【0014】
端子台7は、プレート2の実装面21に固定される端子台下部71と、端子台下部71の上部にボルト締めにより固定される端子台上部72と、を有する。端子台7は、端子台下部71と端子台上部72との間にバスバー45U、バスバー45V、バスバー45Wを挟んだ状態でボルト締めすることによりバスバー45U、バスバー45V、バスバー45Wを固定する。
【0015】
電流センサ8は、例えば、パワーモジュール4と端子台7の間に配置されている。電流センサ8は、プレート2の実装面21に固定される基部81と、ボルト締めにより基部81の上部に固定されるセンサ部82と、を有する。電流センサ8は、基部81とセンサ部82との間にバスバー45U、バスバー45V、バスバー45Wを挟んだ状態でボルト締めすることでセンサ部82がバスバー45U、バスバー45V、バスバー45Wに対向する。そして、センサ部82がバスバー45U、バスバー45V、バスバー45Wに発生する磁束をそれぞれ検出することで、バスバー45U、バスバー45V、バスバー45Wに流れる電流値をそれぞれ検出することができる。
【0016】
コンデンサモジュール6は、モータに接続される単相入力端子63P及び単相入力端子63N、パワーモジュール4に接続される単相出力端子64P及び単相出力端子64Nを有し、内部に平滑コンデンサ65(
図4)を備えている。単相出力端子64Pは、単相端子46Pに接続され、単相出力端子64Nは単相端子46Nに接続されている。
【0017】
放電抵抗9は、プレート2の実装面21に固定され内部に抵抗素子93(
図4)を備える本体91と、抵抗素子93に電気的に接続され本体91から上方に延出する支柱92P及び支柱92N(
図5)と、を備える。支柱92Pの上部には単相入力端子63Pが配置され、単相入力端子63Pが支柱92Pにボルト締めされることにより単相入力端子63Pが抵抗素子93の一端と電気的に接続される。同様に、支柱92N(
図5)の上部には単相入力端子63Nが配置され、単相入力端子63Nが支柱92Nにボルト締めされることにより単相入力端子63Nが抵抗素子93の他端と電気的に接続される。
【0018】
[第1実施形態の回路構成]
図4は、第1実施形態の電力変換装置1の回路図である。
図4に示すように、第1実施形態の電力変換装置1は、パワーモジュール4、平滑コンデンサ65、電流センサ8、抵抗素子93、コントローラ51により回路が形成されている。
【0019】
パワーモジュール4は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワートランジスタ42Aと帰還ダイオード43Aとの並列回路と、パワートランジスタ42Bと帰還ダイオード43Bとの並列回路と、を直列に接続した直列回路(直列回路41U、直列回路41V、直列回路41W)が3個並列に接続されたものである。直列回路41Uの接続中点UMは三相端子44U(バスバー45U)に接続され、直列回路41Vの接続中点VMは三相端子44V(バスバー45V)に接続され、直列回路41Wの接続中点WMは三相端子44W(バスバ45W)に接続されている。
【0020】
コンデンサモジュール6は、平滑コンデンサ65の一端側の回路が単相入力端子63P及び単相出力端子64Pに分岐し、平滑コンデンサ65の他端側の回路が単相入力端子63N及び単相出力端子64Nに分岐したものである。単相出力端子64Pはパワーモジュール4の単相端子46Pに接続され、単相出力端子64Nはパワーモジュール4の単相端子46Nに接続されている。
【0021】
抵抗素子93は、一端が単相入力端子63Pに接続され、他端が単相入力端子63Nに接続されている。すなわち、バッテリ(単相入力端子63P及び単相入力端子63N)に対して抵抗素子93と平滑コンデンサ65が並列となるように接続されている。ここで、抵抗素子93は、バッテリからの電力供給が停止すると、平滑コンデンサ65に蓄えられた電荷を放電させて熱として消費する。
【0022】
コントローラ51は、パワーモジュール4(直列回路41U、直列回路41V、直列回路41W)を制御することにより、直流電圧のバッテリと三相交流電圧のモータとの間で電力の授受を行うための制御を行う。ここで、コントローラ51は、電流センサ8が検出する電流値がモータ(不図示)等の要求に基づいた所定の電流値となるようにパワーモジュール4対してPWM(Pulse Width Modulation)制御を行う。
【0023】
[コンデンサモジュールの接着構造]
図5は、第1実施形態の電力変換装置1の平面図(コンデンサモジュール実装前)の平面図である。
図6は、
図1のC−C線断面図である。
図5、
図6に示すように、プレート2の実装面21は矩形形状を有している。そして実装面21の長辺方向の中央部が実装される位置には、実装面21の短辺に並行であって当該短辺と同じ長さ若しくはそれよりも長い段差部211が形成されている。この段差部211により、プレート2の実装面21(主面)と段差部211との間に段差が形成される。
【0024】
コンデンサモジュール6は、その下面となる接着面61が樹脂等を材料とする接着剤によりプレート2(実装面21)と接合することにより固着される。本実施形態では、接着面61の中央部であって段差部211に対向する領域と段差部211の上面とに挟まれた位置に当該接着剤による接着層101が配置されている。また接着面61の長辺の一方の端部と実装面21の当該端部に対向する領域に挟まれた位置と、接着面61の長辺の他方の端部と実装面21の当該端部に対向する領域に挟まれた位置に、当該接着剤により接着層102、102が配置される。
【0025】
ところで、コンデンサモジュール6の外形を形成するパッケージは樹脂等の材料で形成され、プレート2の材料(金属等)とは異なる。このため、パッケージとプレート2では一般的に線膨張係数が互いに異なる。よって、接着層101,102には、温度変化により厚み滑り方向(面方向)にせん断応力が印加される場合がある。また、パッケージの材料と接着層101,102の材料の線膨張係数が互いに異なる場合は、接着層101,102に対して面方向に引張り・圧縮させる面方向応力が印加される。
【0026】
特に、冷媒を循環させた状態で電力変換装置1を駆動させるとコンデンサモジュール6が自己発熱して膨張する一方、プレート2は冷媒により冷却され膨張が抑制されるので、上記せん断応力及び面方向応力はさらに大きくなることが考えられる。
【0027】
一方、コンデンサモジュール6の重心はほぼ中央にある。このため、コンデンサモジュール6の下面となる接着面61に重心投影すると、接着面61の中央部が最も荷重が掛る部分となる。したがって、温度変化があった場合、当該中央部はほとんど変位せず、中央部から離れるにしたがって温度変化に伴う変位が大きくなるようにコンデンサモジュール6(接着面61)は膨張・収縮する。したがって、接着層101には厚み滑り方向のせん断応力はほとんど印加されない。一方、接着層102には厚みすべり方向(長辺方向)にせん断応力が印加され、その大きさは中央部から離れるほど大きくなる。したがって、接着層102が当該せん断応力により劣化する虞がある。
【0028】
そこで、本実施形態では、
図6に示すように、接着面61の長辺の両端に対向する位置に配置された接着層102の厚みが、接着面61の長辺方向の中央部に対向する配置された接着層101の厚みよりも厚くなるように段差部211が配置されている。ここで、接着層101,102は、厚くなるほど、厚みすべり方向の弾性変形を起こしやすくなる。したがって、せん断応力が大きく発生する箇所においては接着層102を厚く形成して接着層102を弾性変形させ易くすることで接着層102に対するせん断応力を吸収させて接着層102の劣化を低減させることができる。一方、せん断応力の小さい位置においては接着層101の厚みを薄くすることで、接着強度を確保することができる。
【0029】
本実施形態では、接着層101と接着層102が互いに分離している。これにより、厚みが厚く形成された接着層102の弾性変形に対して厚みが薄く形成された接着層101が干渉することはなく、接着層102が接着層101から受ける面方向応力を回避することができる。
【0030】
また、接着層101と接着層102が分離することで、接着面61と実装面21の間に挟まれた内部空間を外部に連通させる貫通孔101Aが形成される。これにより、内部空間が閉塞されないので、接着の際に空気を確実に逃がすことができ、コンデンサモジュール6の高さ位置を接着層101,102の厚みに基づいて定めることができる。
【0031】
なお、プレート2の実装面21の接着層101と接着層102との間となる位置には凹部212が形成されている。これにより、凹部212が接着剤だまりとなるので、接着剤により貫通孔101A(連通孔102A、
図9)が閉止することを防止できる。しかし、そのような虞のない場合は凹部212を省略することもできる(第2実施形態参照)。
【0032】
接着層101,102を形成する接着剤は、エポキシ系の樹脂等様々なものを適用できるが、その線膨張係数が、コンデンサモジュール6の外形を形成するパッケージの線膨張係数と等しいもの、またはその近似値となるものが好ましい。これにより、接着層102に対するせん断応力及び面方向応力をさらに緩和することができる。特に、接着剤の線膨張係数がパッケージの線膨張係数に等しい場合には、接着層101,102に対する面方向応力を回避することができる。さらに、接着剤は、熱伝導率が高いものを適用することが好ましい。これにより、プレート2とコンデンサモジュール6との温度差を低減でき、これにより接着層102に対するせん断応力(及び面方向応力)を低減することができる。
【0033】
[第1実施形態の変形例]
図7は、第1実施形態の電力変換装置1の第1変形例の断面図である。
図8は、第1実施形態の電力変換装置1の第2変形例の断面図である。本実施形態では、プレート2の実装面21に段差(段差部211)を形成しているが、第1変形例のように実装面21に段差部211を形成せず、接着面61の中央部に段差(段差部611)を形成し、段差部611の下面と実装面21との間に接着層101を配置してもよい。また、第2変形例のように、段差部211と段差部611を配置し、段差部211と段差部611の間に接着層101を配置してもよい。
【0034】
その他、本実施形態では、段差部211を接着面61の長辺方向に一列に並ぶように複数配置し、段差部211の高さをコンデンサモジュール6の接着面61の中央部から離れるごとに段階的に低くなるようにする。そして、接着面61の中央部に対向する段差部211に接着層102を配置し、他の段差部211に接着層102を配置し、当該接着層102の厚みが接着面61の中央部に配置された接着層101よりも厚く、且つコンデンサモジュール6の接着面61の中央部から離れるごとに段階的に厚くなるように構成してもよい。
【0035】
また、本実施形態では、接着面61の中央部にコンデンサモジュール6の荷重が最も掛ることを前提としているが、例えば接着面61の長辺方向の一方の端部に最も荷重が掛る場合にも適用できる。この場合、段差部211を接着面61の長辺方向に一列に並ぶように複数配置するとともに、当該端部から離れるごとにその高さが段階的に低くなるように配置し、当該端部に対向する段差部211に接着層101を配置し、それ以外の段差部211に接着層102を配置し、接着層102の厚みを、接着層101よりも厚く、且つ当該端部から離れるごとに段階的に厚くなるように構成してもよい(
図18参照)。
【0036】
[第1実施形態の効果]
本実施形態の電力変換装置1は、コンデンサモジュール6と、コンデンサモジュール6が固着されるプレート2(インバータケース)と、コンデンサモジュール6の接着面61と、接着面61に対向するプレート2(インバータケース)の実装面21と、の間に配置され、コンデンサモジュール6とプレート2(インバータケース)とを互いに固着する接着層101,102と、を備える電力変換装置1において、実装面21及び接着面61の少なくとも一方には段差部211,611が配置され、接着層101,102は、段差部211,611と段差部211,611以外の位置に分離して配置されるとともに、段差部211,611に配置された接着層101の厚みと、段差部211,611以外の位置に配置された接着層102の厚みが互いに異なることを特徴とする。
【0037】
上記構成により、せん断応力の大きい位置においては接着層102の厚みを厚くして接着層102の厚みすべり方向の弾性変形をし易くすることでせん断応力を吸収し、せん断応力の小さい位置においては接着層101の厚みを薄くすることで、接着強度を確保することができる。したがって、所望の固定強度と、適切な接着量を設定しつつ、当該固定強度の劣化を抑制することができる。また、接着層101と接着層102が互いに分離しているので、厚みが厚く形成された接着層102の弾性変形に対して厚みが薄く形成された接着層101が干渉することはなく、接着層102が接着層101から受ける面方向応力を回避することができる。
【0038】
本実施形態において、段差部211,611は、接着面61のコンデンサモジュール6の重心投影された位置に配置され、段差部211,611に配置された接着層101よりも段差部211,611以外の位置に配置された接着層102の厚みが厚くなっている。
【0039】
上記構成により、コンデンサモジュール6の自己発熱により、接着面61の重心投影された位置(中央部)に配置された接着層101よりも、重心投影された位置から離れた位置に配置された接着層102に対してより大きなせん断応力が印加されるが、接着層102を接着層101よりも厚く設計することにより、接着層102を厚み滑り方向に弾性変形させ易くさせ、せん断応力を緩和することができる。
【0040】
本実施形態において、接着面61と実装面21との間の内部空間(空間)は(貫通孔101Aにより)外部に連通していることを特徴とする。これにより、内部空間が(貫通孔101Aにより)閉塞しないので、接着の際に空気を確実に逃がすことができ、コンデンサモジュール6の高さ位置を接着層101,102の厚みに基づいて定めることができる。
【0041】
本実施形態において、実装面21の互いに隣接する接着層101,102の隙間となる領域には凹部212が形成されている。これにより、凹部212が接着剤だまりとなるので、接着剤により貫通孔101A(連通孔102A、
図9)が閉塞されることを防止できる。
【0042】
[第2実施形態]
図9は、第2実施形態の電力変換装置1の平面図である。
図10は、第2実施形態の電力変換装置1の平面図(コンデンサモジュール実装前)である。
図11は、
図9のA−A線断面図である。
【0043】
第2実施形態の電力変換装置1において、プレート2の実装面21に配置された段差部213は、接着面61の中央部(重心投影位置)に対向する位置であって、平面視で接着面61の外形よりも内側となる領域(接着面61の中心を含む領域)に配置されている。
【0044】
接着層101は、段差部213の上面と接着面61の間であって平面視で当該上面の外形と重なる外形、または当該上面の外形よりも内側に外形を有するように配置されている。接着層102は、平面視で接着面61の周縁を周回するように配置されている。これにより、接着層102よりも内側には内部空間104が形成される。また、接着層102には、内部空間104と外部とを連通する連通孔102Aが複数(本実施形態では8個)形成されている。これにより、内部空間104が閉塞されることはない。なお、連通孔102Aは内部空間104を外部に連通させるものであり、少なくとも1つ形成されていればよい。また接着層102は実装面21上に配置されるので、接着層102は、接着層101よりも厚くなっている。
【0045】
[第2実施形態の効果]
本実施形態では、接着面61の長辺方向のみならず短辺方向においても中央部から離れた位置に配置された接着層102が中央部に配置された接着層101よりも厚くなっている。これにより、接着面61の長辺方向または短辺方向の両端部付近に配置された接着層102に印加されるせん断応力をも緩和させることで、接着層102を厚み滑り方向(長辺方向または短辺方向)に弾性変形させ易くさせ、せん断応力を緩和することができる。
【0046】
本実施形態において、接着面61と実装面21との間の内部空間104(空間)は(連通孔102Aにより)外部に連通している。これにより、内部空間104が(連通孔102Aにより)閉塞しないので、接着の際に空気を確実に逃がすことができ、コンデンサモジュール6の高さ位置を接着層101,102の厚みに基づいて定めることができる。
【0047】
[第3実施形態]
図12は、第3実施形態の電力変換装置1の平面図である。
図13は、
図12のA−A線断面図である。
図14は、第3実施形態の電力変換装置1の変形例の断面図である。第3実施形態は、第1実施形態の構成において、接着面61に凸部612(ダボ)が配置され実装面21にボス部214が配置されたものである。
【0048】
凸部612は、円柱形の部材であって、接着面61において接着層101と接着層102との間となる位置に配置されている。ボス部214は、円筒形の部材であって、実装面21において凸部612に対向する位置に配置され、ボス部214の上端に形成された開口部から凸部612が収容される。これにより、凸部612及びボス部214は、コンデンサモジュール6の実装面21に対する面方向の位置決めを行う位置決め部として機能する。また、凸部612及びボス部214は、少なくとも互いに異なる位置に2つ以上配置する。これにより、接着時においてコンデンサモジュール6が凸部612を中心として回転ズレを起こすことを防止できる。
【0049】
また、ボス部214の内径は凸部612の径よりも大きくなるように設計されており、ボス部214の内壁面と、凸部612の側面が互いに離間している。これにより、コンデンサモジュール6が自己発熱により膨張しても凸部612がボス部214に押圧され当該押圧によりコンデンサモジュール6に応力が掛ることを防止できる。
【0050】
さらに、ボス部214の上端は、接着面61に当接している。これにより、ボス部214は、コンデンサモジュール6の高さを規定する突き当て部として機能する。また、これとは別に凸部612をボス部214の底面に当接させることで突き当て部として機能させることもできる。
【0051】
もちろん、
図14に示すように、ボス部214が接着面61から離間し、且つ凸部612がボス部214の底面から離間した状態で接着層101,102を形成してしてもよい。この場合は、凸部612及びボス部214は位置決め部としてのみ機能する。なお、第3実施形態(第4実施形態、第5実施形態)においても凹部212を有するが、上記のように省略することができる。
【0052】
また、位置決め部の他の形態としては、接着面61(または実装面21)に凸部612(ダボ)を配置し、実装面21(または接着面61)に凸部612を収容するダボ穴(不図示)を配置し、ダボ穴の内径が凸部612の外径よりも大きくなるようにし、凸部612がダボ穴に収容された状態において、ダボ穴の内壁面と凸部612の側面が互いに離間するように構成してもよい。なお、本実施形態では、ボス部214を接着面61に配置し、凸部612を実装面21に配置してもよい。
【0053】
[第3実施形態の効果]
本実施形態において、接着面61及び実装面21の互いに対向する位置には、コンデンサモジュール6の実装位置を決める位置決め部(凸部612及びボス部214)が配置され、位置決め部は、接着層101,102とは異なる位置に配置されている。これにより、位置決め部に接着剤の硬化物などが入り込むこと、または接着剤の凝固収縮により位置ズレが発生することを防止できる。
【0054】
本実施形態において、位置決め部は、接着面61及び実装面21のいずれか一方に形成された凸部612と、接着面61及び実装面21のいずれか他方に形成され凸部612に向けて突出するとともに凸部612を収容する開口部を備えたボス部214と、を備え、ボス部214に収容された凸部612の側面とボス部214の内壁面とは互いに離間している。これにより、コンデンサモジュール6が自己発熱により膨張しても凸部612がボス部214に押圧され当該押圧によりコンデンサモジュール6に応力が掛ることを防止できる。
【0055】
本実施形態において、実装面21の接着層101,102が配置された位置と異なる位置には、接着面61に接触する突き当て部(ボス部214または凸部612)が配置されている。これにより、コンデンサモジュール6(接着面61)の膨張・収縮に干渉することなくコンデンサモジュール6の高さ位置を規定することができる。
【0056】
[第4実施形態]
図15は、第4実施形態の電力変換装置1の平面図である。
図16は、
図15のA−A線断面図である。第4実施形態では、上記の位置決め部と突き当て部が互いに分離した構成を有している。
【0057】
突き当て部216は、実装面21において、接着面61の長辺方向の両端部に対向する位置にそれぞれ配置され、突き当て部216の上面が接着面61に接触している。段差部211は、実装面21において、接着面61の中央部に対向する位置に配置され、段差部215は、当該中央部から接着面61の長辺方向の一方側に離間した位置と他方側に離間した位置にそれぞれ配置されている。ここで段差部215は、段差部211よりも高さが低くなるように配置されている。
【0058】
また、凸部612及びボス部214は、突き当て部216と段差部215の間に配置されている。
図16において凸部612及びボス部214は位置決め部として機能しているが、ボス部214を接着面61に当接させ、または凸部612をボス部214の底面に接触させて突き当て部として機能させてもよい。
【0059】
段差部211と接着面61の間に接着層101が配置され、段差部215と接着面61の間に接着層103が配置されている。接着層103は接着層101よりも厚くなるように配置されている。このように、接着層103を接着層101よりも厚く設計することにより、接着層103を厚み滑り方向(長辺方向)に弾性変形させ易くさせ、せん断応力を緩和することができる。なお、接着層103が当該弾性変形をする際、凸部612はボス部214の内壁面に当接しない範囲で長辺方向に変位し、接着面61は、突き当て部216に対して長辺方向にスライドする。
【0060】
本実施形態において、接着面61の中央部に対向する位置に配置された段差部211から長辺方向に離れる順に、段差部215、凸部612及びボス部214、突き当て部216が左右対称で配置されているが、左右対称である必要はなく並ぶ順番も任意に変更することができる。特に、突き当て部216を接着面61の長辺方向の両端となる位置にそれぞれ配置することで、コンデンサモジュール6の傾斜を低減して、コンデンサモジュール6を安定的に実装面21に実装することができる。
【0061】
なお、
図16では省略しているが、例えば、ボス部214と段差部215との間で、接着面61と実装面21との間で挟まれる接着層102(
図6参照)を配置してもよく、この場合、接着層103は、接着層101と接着層102の間の厚さとなる。また、
図16において、段差部211と段差部215が互いに分離しているが、これらを一体とすることも可能である。この場合、接着層101、接着層102、接着層103は互いに分離するように、例えば、平面視で段差部211の外形よりも内側となる領域に接着層101を配置し、段差部215の外形よりも内側となる領域に接着層103を配置し、実装面21であって段差部215から離間した位置に接着層102を配置すればよい。
【0062】
[第4実施形態の効果]
本実施形態において、実装面21の接着層101,102,103が配置された位置と異なる位置には、接着面61に接触する突き当て部216が配置されている。これにより、突き当て部216は単に接着面61に接触するのみであるので、コンデンサモジュール6(接着面61)の膨張・収縮に干渉することなくコンデンサモジュール6の高さ位置を規定することができる。特に、突き当て部216を接着面61の長辺方向の両端となる位置にそれぞれ配置することで、コンデンサモジュール6の傾斜を低減して、コンデンサモジュール6を安定的に実装面21に実装することができる。
【0063】
[第5実施形態]
図17は、第5実施形態の電力変換装置1の平面図である。
図18は、
図17のA−A線断面図である。第5実施形態では、突き当て部216が接着面61の長辺方向の一端に配置されるとともにコンデンサモジュール6の側面62に当接する突き出し部216Aを備えている。また位置決め部(凸部612、ボス部214)が接着面61の長辺方向の他端に配置されている。突き出し部216A及び位置決め部により、接着時にコンデンサモジュール6が回転ズレを起こすことを防止している。
【0064】
本実施形態では、コンデンサモジュール6に対して突き出し部216Aがその側面62から当接しているため、コンデンサモジュール6が膨張してもコンデンサモジュール6と突き出し部216Aとの相対位置に変化はなく、コンデンサモジュール6は、膨張に伴いコンデンサモジュール6の長辺方向の他端に向けて変位し、当該変位は、突き出し部216Aから離れるほど大きくなる。
【0065】
そこで、本実施形態では、実装面21において、突き当て部216と位置決め部(凸部612、ボス部214)の間に、段差部215A(段差)、段差部215B(段差)、段差部215C(段差)が長辺方向に並んで配置され、その高さが突き当て部216(突き出し部216A)から離れるほど低くなるように配置されている。また、接着層103Aが段差部215Aと接着面61の間に配置され、接着層103Bが段差部215Bと接着面61の間に配置され、接着層103Cが段差部215Cと接着面61の間に配置され、接着層103A、接着層103B、接着層103Cの順に厚みが厚くなるように配置される。
【0066】
ここで、接着層103A、接着層103B、接着層103Cのうち、当該変位に伴う厚み滑り方向(長辺方向)からのせん断応力は接着層103Cに対して最も大きく印加され、接着層103Aに対して最も小さく印加される。接着層103Bに対して印加されるせん断応力は、接着層103Aに対して印加されるせん断応力と接着層103Cに対して印加されるせん断応力との中間の大きさとなる。
【0067】
よって、せん断応力が最も小さく印加される接着層103Aを最も薄くすることでコンデンサモジュール6(接着面61)とプレート2(実装面21)との接合強度を最も大きくすることができる。一方、せん断応力が最も大きく印加される接着層103Cを最も厚くすることで、印加されるせん断応力を効率的に吸収させることができる。また、接着層103Bの厚みを接着層103Aと接着層103Cの間の厚みとすることで、印加されるせん断応力を効率的に吸収させるとともにコンデンサモジュール6(接着面61)とプレート2(実装面21)との間において一定の接合強度を確保することができる。
【0068】
なお、
図18では省略しているが、ボス部214と段差部215Cとの間で、接着面61と実装面21との間で挟まれる接着層102(
図6参照)を配置してもよく、この場合、接着層103Cは、接着層102よりも厚みが小さくなる。また、
図18において、突き当て部216、段差部215A,215B,215Cが互いに分離しているが、これらを一体とすることも可能である。この場合、接着層103A、接着層103B、接着層103C、接着層102は互いに分離するように、例えば、平面視で段差部215Aの外形よりも内側となる領域に接着層103Aを配置し、段差部215Bの外形よりも内側となる領域に接着層103Bを配置し、段差部215Cの外形よりも内側となる領域に接着層103Cを配置し、実装面21であって段差部215Cから離間した位置に接着層102を配置すればよい。
【0069】
[第5実施形態の効果]
本実施形態において、実装面21の接着面61の(長辺方向の)端部に対向する位置であって接着層102,103A,103B、103Cが配置された位置と異なる位置には、接着面61に接触する突き当て部216が配置され、突き当て部216は、コンデンサモジュール6の側面62に接触する突き出し部216Aを備え、段差部215A,215B,215Cは、突き出し部216Aから離れる方向に並んで複数配置されるとともに、突き出し部216Aから離れるほど高さが低くなっており、接着層103A,103B、103Cは、段差部215A,215B,215Cに分離して配置されるとともに、突き出し部216Aから離れるほど厚みが厚くなっており、接着層103A,103B、103Cは、段差部215A,215B,215Cに分離して配置されるとともに、突き出し部216Aから離れるほど厚みが厚くなっている。
【0070】
これにより、線膨張係数の相違、または温度差により生じる接着面61の実装面21に対する変位(相対変位)の大きさ、即ちせん断応力の大きさに対応して接着層103A,103B、103Cの厚みを設計することで、各接着層(接着層103A,103B、103C)に印加されるせん断応力をそれぞれ効率的に吸収させつつ各接着層において所定の強度の接着強度をそれぞれ確保することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。