(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のラチェット機構は、従動側軸に取り付けられたラチェットホイールとラチェットとで構成され、ラチェットホイールには、周方向に沿って径方向に延長されている複数の衝止面が形成されている。また、ラチェットは、略円筒状の周壁を備えており、周壁の一部に回転軸を挟んで対向するラチェット部が形成されている。ラチェット部は、弾性を持つ樹脂により形成され、先端が衝止面に対向している。
【0006】
このラチェット機構では、ラチェットを順方向に回転させた際、ラチェット部先端が衝止面と係合して押すことで、ラチェットホイールに回転力が伝わる。ラチェットを逆方向に回転させた際は、ラチェット部が衝止部に乗り上げるように撓んで変形し、衝止面との係合が解除されるので、ラチェットの回転力は、ラチェットホイールには伝わらず、ラチェットだけが空転する。
【0007】
上述したラチェット機構は、ラチェット部と衝止面との係合がラチェット部先端の1面で行われる構造とされている。そのため、ラチェットの回転をラチェットホイールに伝える際には、ラチェット部の先端に作用する反力がラチェット部を撓ます方向に作用する。その結果、ラチェットの回転力の一部は、ラチェット部の撓み変形に使われて、効率よく回転力を伝えることができないという虞があった。また、ラチェット部の撓み変形によって、ラチェット部が疲労破壊する虞があった。さらに、上述したラチェット機構を回転トルクが大きいローラに使用した場合、ラチェット部の撓み変形量が大きくなって、ラチェット部を破損する虞があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、動力伝達時において、駆動力を伝達する部分の撓みを抑えることができ、効率よく回転力を伝えることができる駆動力伝達機構、および駆動力伝達機構を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る駆動力伝達機構は、駆動力を一方向に伝達する駆動力伝達機構であって、同じ回転中心軸上に配置される第1伝達部材および第2伝達部材を備え、前記第1伝達部材は、前記第2伝達部材に係合する伝達爪を有し、前記伝達爪は、前記回転中心軸から離れた位置に前記第1伝達部材との固定部が設けられ、前記固定部から前記回転中心軸に向かう方向と交差する方向に延伸されており、前記第2伝達部材は、前記伝達爪の先端と係合するストッパ部と、前記伝達爪の前記回転中心軸に面する側と係合する保持部とを有
し、前記ストッパ部の端部には、前記伝達爪の先端のうち、前記回転中心軸と反対の側を係止する係止突起が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る駆動力伝達機構では、前記伝達爪は、前記回転中心軸に面する側が平面状とされ、前記保持部は、平面状とされている構成としてもよい。
【0011】
本発明に係る駆動力伝達機構では、
前記第1伝達部材は、前記回転中心軸側に突出する突出部を有し、前記突出部は、前記伝達爪の延伸方向に対して、垂直な方向に形成された壁部を有し、前記固定部は、前記壁部に繋がっている構成としてもよい。
【0012】
本発明に係る駆動力伝達機構では、前記伝達爪は、前記係止突起に面する側に設けられ、端部に向かうに従って厚みが小さくなるように傾斜した爪傾斜部が設けられ、前記係止突起は、前記爪傾斜部に係合するように傾斜した傾斜部が設けられている構成としてもよい。
【0013】
本発明に係る駆動力伝達機構では、前記保持部は、前記伝達爪と係合する位置から前記回転中心軸側へ凹んだ保持溝が設けられている構成としてもよい。
【0014】
本発明に係る駆動力伝達機構では、前記保持溝は、潤滑剤を保持する構成としてもよい。
【0015】
本発明に係る駆動力伝達機構では、前記第1伝達部材は、前記回転中心軸を挟んで平行に配置された複数の前記伝達爪を有し、前記第2伝達部材は、前記回転中心軸を挟んで平行に配置された複数の前記保持部および前記ストッパ部を有する構成としてもよい。
【0016】
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る駆動力伝達機構を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、駆動力を伝達する伝達爪が、駆動力をストッパ部に伝える際に、ストッパ部から反力を受けても撓むことがないので、効率よく駆動力を伝えることができる。また、駆動力による伝達爪の撓みが発生しないので、伝達爪の変形や疲労破壊を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の概略側面図である。
【0021】
本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1は、露光装置11、現像装置12、感光体ドラム13、クリーナ装置14、帯電器15、中間転写ベルト装置16、定着装置17、給紙カセット18、排紙トレイ19、および用紙搬送経路Sを備える構成とされており、外部から伝達された画像データに応じて、所定の用紙に対して多色及び単色の画像を形成する。
【0022】
画像形成装置1において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたものである。従って、現像装置12、感光体ドラム13、帯電器15、クリーナ装置14は、各色に応じた4種類の潜像を形成するようにそれぞれ4個ずつ設けられ、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローに設定され、これらによって4つの画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdが構成されている。
【0023】
感光体ドラム13は、画像形成装置1の略中央に配置されている。帯電器15は、感光体ドラム13の表面を所定の電位に均一に帯電させる。露光装置11は、感光体ドラム13の表面を露光して静電潜像を形成する。現像装置12は、感光体ドラム13の表面の静電潜像を現像して、感光体ドラム13の表面にトナー像を形成する。上述した一連の動作によって、各感光体ドラム13の表面に各色のトナー像が形成される。クリーナ装置14は、現像および画像転写の後に感光体ドラム13の表面の残留トナーを除去および回収する。
【0024】
中間転写ベルト装置16は、感光体ドラム13の上側に配置され、中間転写ベルト21、中間転写ベルト駆動ローラ22、中間転写ベルト従動ローラ23、中間転写ローラ24、および中間転写ベルトクリーニング装置25を備えている。なお、中間転写ローラ24は、YMCK用の各色の画像ステーションに対応して4本設けられている。
【0025】
中間転写ベルト駆動ローラ22、中間転写ベルト従動ローラ23、および中間転写ローラ24は、中間転写ベルト21を張架して、中間転写ベルト21の表面を所定方向(矢符Cの方向)に移動させるように構成されている。
【0026】
中間転写ベルト21は、矢符Cの方向へ周回移動し、中間転写ベルトクリーニング装置25によって残留トナーを除去および回収され、各感光体ドラム13の表面に形成された各色のトナー像が順次転写して重ね合わされて、中間転写ベルト21の表面にカラーのトナー像が形成される。
【0027】
画像形成装置1は、転写ローラ26aを含む2次転写装置26をさらに備えている。転写ローラ26aは、中間転写ベルト21との間にニップ域が形成されており、用紙搬送経路Sを通じて搬送されて来た用紙をニップ域に挟み込んで搬送する。用紙は、ニップ域を通過する際に、中間転写ベルト21の表面のトナー像が転写される。
【0028】
給紙カセット18は、画像形成に使用する用紙を蓄積しておくためのカセットであり、露光装置11の下側に設けられている。また、排紙トレイ19は、画像形成装置1の上側に設けられており、画像形成済みの用紙を載置するためのトレイである。
【0029】
用紙搬送経路Sは、S字状に設けられた主経路S1と、主経路S1の途中で分岐して再合流する反転経路S2とを備え、主経路S1に沿って、ピックアップローラ31、レジスト前ローラ33、レジストローラ32、2次転写装置26、定着装置17、および排紙ローラ34が配置されている。反転経路S2は、定着装置17と排紙ローラ34との間から分岐し、複数の搬送ローラ35を経由してレジスト前ローラ33とレジストローラ32との間に再合流する。
【0030】
ピックアップローラ31は、給紙カセット18の端部近傍に備えられ、給紙カセット18から用紙を1枚ずつ用紙搬送経路Sに供給する呼び込みローラである。レジストローラ32は、給紙カセット18から搬送されている用紙を一旦保持し、感光体ドラム13上のトナー像の先端と用紙の先端とを合わせるタイミングで用紙を転写ローラ26aに搬送する。レジスト前ローラ33は、用紙の搬送を促進補助するための小型のローラである。
【0031】
定着装置17は、ベルト定着方式とされており、定着ローラ171および加熱ローラ173に定着ベルト174が巻き掛けられている。定着装置17では、定着ベルト174を介して定着ローラ171に加圧ローラ172が押圧されるようになっている。定着装置17では、未定着のトナー像が形成された用紙を受け取り、用紙を定着ベルト174と加圧ローラ172との間に挟み込んで搬送する。定着後の用紙は、排紙ローラ34によって排紙トレイ19上に排出される。
【0032】
また、用紙の表面だけでなく、裏面に画像形成を行う場合は、用紙を排紙ローラ34から反転経路S2へと逆方向に搬送して、用紙の表裏を反転させ、用紙をレジストローラ32へと再度導き、表面と同様にして裏面に画像形成を行い、用紙を排紙トレイ19へと搬出する。
【0033】
次に、本発明の第1実施形態に係る駆動力伝達機構の適用箇所について、図面を参照して説明する。
【0034】
図2は、モータ近傍を示す概略斜視図である。
【0035】
図2では、モータ60の回転力を定着ローラ171に伝える駆動力伝達部を斜めから見た状態を示している。
【0036】
上述した画像形成装置1において、モータ60は、定着ローラ171に対し、互いの間に設けられた駆動ギア61、第1伝達部材40、および第2伝達部材50を順に介して、回転力を伝えている。第1伝達部材40と第2伝達部材50とは、支持軸62上に隣り合って配置されている。なお、モータ60と定着ローラ171との間には、上述したものの他、モータ60の軸に固定されたギアや、定着ローラ171の軸に固定されたギアなどの図示しない部材が設けられていてもよい。
【0037】
本発明の第1実施形態に係る駆動力伝達機構は、第1伝達部材40と第2伝達部材50との係合部に設けられている。
【0038】
最初に、第1伝達部材の構造について、
図3Aおよび
図3Bを参照して説明する。
【0039】
図3Aは、第1伝達部材を示す概略斜視図であって、
図3Bは、
図3Aの伝達爪近傍を拡大して示す拡大説明図である。
【0040】
第1伝達部材40は、略円柱状のギアであって、支持軸62を挿通する第1支持穴42が中心に設けられ、駆動ギア61と噛み合う第1接続ギア歯41が外周部に設けられている。第1伝達部材40の端面部のうち、第2伝達部材50に対向する対向面45には、外縁部に略円筒状の円筒壁部43を備え、円筒壁部43の内側は、空間になっている。そして、円筒壁部43の内壁面から伝達爪44が延伸されている。
【0041】
具体的に、伝達爪44は、端部に位置する固定部44aが、円筒壁部43に設けられており、支持軸62の回転中心(回転中心軸63)から半径方向に離れた位置に向かって、円筒壁部43の内側に延伸されている。つまり、伝達爪44は、固定部44aから半径方向と交差する方向で回転中心軸63寄りに延伸されている。円筒壁部43の内壁面のうち、固定部44aと繋がる壁部43aは、伝達爪44の延伸方向に対して、直角な方向に形成されている。伝達爪44は、固定部44aが壁部43aに繋がっており、先端(当接端44b)側が対向面45に固定されていない。そのため、伝達爪44は、自身の有する弾性の範囲内で、当接端44b側が移動する構造とされている。
【0042】
伝達爪44の当接端44bは、後述する第2伝達部材50のストッパ部53aと係合する。また、伝達爪44の延伸部(固定部44aと先端部44bとの間)では、回転中心軸63側に、第2伝達部材50の保持部53b(後述する
図4Aおよび
図4B参照)と当接する支持面44cを備える。
【0043】
支持面44cは、平面状に形成され、当接端44bには、支持面44cと反対側の角部を切り欠いた爪傾斜部44dが設けられている。爪傾斜部44dは、固定部44aから当接端44bに向かうに従って、伝達爪44の厚みが小さくなるように傾斜している。
【0044】
本実施の形態においては、伝達爪44は、別の伝達爪44と支持軸62を挟んで平行になるように配置される。更に、対となる伝達爪44を複数備えるように構成した際には、複数の伝達爪44が支持軸62の円周方向に沿って、均等な間隔で配置してもよい。また、伝達爪44の数が奇数である場合など、伝達爪44を対にして配置しないときは、支持軸62の円周方向に沿って、複数の伝達爪44を均等な間隔で配置してもよい。
【0045】
第1伝達部材は、例えば、ポリカーボネートやポリアセタール(POM)などのエンジニアリング用樹脂材料で形成されている。
【0046】
次に、第2伝達部材50の構造について、
図4Aおよび
図4Bを参照して説明する。
【0047】
図4Aは、第2伝達部材を示す概略斜視図であって、
図4Bは、
図4Aの伝達歯近傍を拡大して示す拡大説明図である。
【0048】
第2伝達部材50は、略円柱状のギアであって、支持軸62を挿通する第2支持穴52が中心に設けられ、定着ローラ171に接続されたギア等と噛み合う第2接続ギア歯51が外周部に設けられている。第2伝達部材50の端面部のうち、第1伝達部材40に対向する端面部には、伝達爪44に当接する伝達歯53が設けられている。
【0049】
伝達歯53は、第1伝達部材40の側へ、第2支持穴52を中心にして突出するように形成されており、回転中心軸63を挟んで平行に配置される保持部53bを複数備える。本実施の形態では、平行に配置された2つの保持部53bが、回転中心軸63を中心に、円周方向での設置間隔が均等になるように配置されている。
図4Aに示す構成では、8つの保持部53bが設けられ、45度の角度間隔で配置されている。なお、保持部53bの設置間隔が均等とされている場合には、回転中心軸63を挟んで平行となるように保持部53bを配置しなくてもよい。また、保持部53bは平面状に形成される。
【0050】
保持部53bの端部には、保持部53bから回転中心軸63の半径方向の外側に延びたストッパ部53aが備えられている。ストッパ部53aは、平面状に形成されており、
図4Bに示す構成では、保持部53bに対して垂直な方向へ延伸されている。
【0051】
ストッパ部53aにおいて、保持部53bと反対側の端部には、周囲から突出するように形成された係止突起53fが設けられている。係止突起53fの突出した先端部では、ストッパ53a側(
図4Bでは下方)の角が、傾斜面を備えるように切り欠かれた歯傾斜部53cとされている。更に、係止突起53fの突出した先端部では、歯傾斜部53cと反対側(
図4Bでは上方)の角も、同様に傾斜部を備えるように切り欠かれ、保持部53bに対して平行な面とされた外周斜面部53dに繋がっている。
【0052】
外周斜面部53dは、係止突起53fと反対側の端部が、隣に形成された保持部53bと所定の角度で繋がっている。なお、外周傾斜面部53dは、伝達歯53の外径を小さくするように傾斜されていればよく、隣接する保持部53bとの間の角度は、適宜設定すればよい。
【0053】
上述したように、伝達歯53は、保持部53b、ストッパ部53a、係止突起53f、および外周斜面部53dの順に繋がっており、隣接する保持部53bと連続して歯面(伝達歯車54)が形成されている。
【0054】
本実施の形態では、複数の保持部53b、ストッパ部53a、係止突起53f、および外周斜面部53dの組み合わせが連続した伝達歯53を示したが、これに限定されず、保持部53bおよびストッパ部53aを1箇所だけ設けた構造としてもよい。また、伝達歯53では、保持部53bおよびストッパ部53aの組み合わせが、複数繋がった構造とする必要はなく、組み合わせ同士が途切れていてもよい。この場合には、例えば、第2伝達部材50の端面部に、第1伝達部材40の側に突出した突起を、保持部53bおよびストッパ部53aに応じた形状で設けてもよい。
【0055】
本実施の形態の第2伝達部材50は、ガラス繊維が含まれたエンジニアリング用樹脂材料で形成されているが、耐熱性の高い材料で形成されていてもよい。
【0056】
次に、第1伝達部材40と第2伝達部材50との間で駆動力を伝達する機構について、
図5および
図6を参照して説明する。
【0057】
図5は、第1伝達部材と第2伝達部材とを組み合わせた状態を示す概略平面図であって、
図6は、
図5の伝達爪および伝達歯近傍を拡大した拡大説明図である。なお、
図5は、図面の見易さを考慮して、第2伝達部材50のうち、伝達歯53だけを示し、第2接続ギア歯51を省略している。
【0058】
図5では、円筒壁部43に挿入された伝達歯53が、伝達爪44と噛み合った状態を示している。具体的には、
図6に示すように、当接端44bとストッパ部53aとが当接し、支持面44cと保持部53bとが当接している。
【0059】
この状態で、モータ60を回転させると、第1接続ギア歯41にモータ60の回転力が伝わり、第1伝達部材40は、
図5中の矢符Aの方向に回転する。ここで、第1伝達部材40の回転力は、当接端44bが係合しているストッパ部53aを押すように作用する。ストッパ部53aは、回転中心軸63から離れた位置に設置されているので、ストッパ部53aが受けた力は、回転中心軸63回りの回転力を生み、第2伝達部材50が矢符B1の方向に回転する。
【0060】
この時、保持部53bを備えない従来の伝達機構で発生する現象と課題について、簡単に説明する。
図5および
図6の状態でモータ60が回転した時、伝達爪44の当接端44bは、ストッパ部53aからの反力を受ける。この反力は、伝達爪44の延伸部を押し返すように作用するが、固定部44aが円筒壁部43に固定されているので、伝達爪44を座屈させる方向に作用する。しかも、この座屈させる方向に作用する反力は、回転しながら伝達爪44に作用するので、伝達爪44を撓ます方向に作用して伝達爪44の撓み変形を引き起こす。モータ60による回転駆動力の一部が、伝達爪44の撓み変形に使われるので、第2伝達部材50に回転力がスムーズに伝わらなくなる。そして、第2伝達部材50の回転ムラを引き起したり、伝達爪44の変形による駆動トルクの増大や、伝達爪44の疲労破壊を起こしたりする虞があった。
【0061】
本実施の形態では、伝達爪44が、当接端44bだけでなく、側面の延伸部にある支持面44bでも伝達歯53と接している。そのため、伝達爪44は、ストッパ部53aから反力を受けても、保持部53bによって撓まないように支持されるので、伝達ロスがなく効率よくモータ60の駆動力を伝達できる。それゆえ、より大きな回転トルクを第2伝達部材50に伝えることができる。換言すると、負荷の大きい回転体に対しても、駆動力を確実に伝えることができる。
【0062】
更に、保持部53bと伝達爪44とが、それぞれ回転中心軸63を挟んで平行に向き合うように配置されているので、伝達爪44は、弾性力で伝達歯53を挟むように押圧し、ガタつきがなくなるので安定して駆動力を伝達できる。
【0063】
本実施の形態では、更に係止突起53fを設けられているので、伝達爪44が、保持部53bから浮き上がることなく、伝達歯53に確実に係止される。また、爪傾斜部44dが歯傾斜部53cに当接した際、当接端44bをストッパ部53aの側に案内するので、当接端44bとストッパ部53aとを確実に係合させることができる。これによって、更に確実に駆動力を伝えることができるようになる。
【0064】
このように、互いの形状に応じた傾斜部を設けることで、より確実に伝達爪44が押さえられ、支持面44cでの密着性が向上する。また、傾斜部を設けたことで、当接端44bが噛み合う隙間は、奥が狭くなる形状となり、逆方向へ空転させる際(例えば、第2伝達部材40が矢符B1と反対の方向に回転する場合)には、当接端44bが抜けやすく、容易に係止を解除できるようにもなる。
【0065】
次に、第2伝達部材50が空転する場合について、
図7を参照して説明する。
【0066】
図7は、第2伝達部材が空転している状態を示す概略平面図である。
【0067】
第2伝達部材50は、ジャムした用紙を定着装置17から引き抜こうとした場合など、定着ローラ171が用紙搬送方向に強制的に回転させられる場合に、用紙搬送方向の回転力を定着ローラ171の駆動ギア(図示なし)から受ける。
図7は、上述した場合を示す図面とされている。
【0068】
図7に示す状態において、第2伝達部材50および伝達歯53は、矢符B2の方向に回転するが、モータ60が停止しているので、第1伝達部材40は停止したままとなる。
【0069】
伝達歯53が回転したことで、伝達爪44は、保持部53bおよび外周斜面部53dに押され、回転中心軸63の中心から外側の方向へ、撓むように押し広げられる。伝達爪44が撓んでストッパ部53aおよび保持部53bから離れるので、定着ローラ171が用紙搬送方向に回転させられても、回転の駆動力が第1伝達部40に伝わらず、第2伝達部材だけが空転する。
【0070】
なお、押し広げられた伝達爪44は、回転が進み外周斜面部53dが通りすぎると、再び保持部53bと係合するように、弾性力で元の形状に戻る。
【0071】
このように、空転時において、伝達爪44は、撓み変形を生じるが、変形が瞬間的であることと、力の作用する方向が当接端44bから固定部44aに向けた座屈方向の力ではないことから、破損することがない。また、撓み変形によって、固定部44aにも変形応力が作用するが、固定部44aを備える壁部43aが、伝達爪44の延伸方向と垂直な方向に形成されているので、応力をより緩和することができ、固定部44aの破損を防止できる。また、外周斜面部53dが伝達歯53の外径を小さくするように構成されているため、空転時における伝達爪44の撓み量が減るので、さらに応力を緩和できる。また、空転時の伝達爪44の撓み量が減るので、伝達爪44が再び保持部53bと当接するときのラップ音(詳しくは、第2実施形態を参照)を、小さくすることができる。
【0072】
以上のように、伝達爪44と伝達歯53とを本実施の形態の形状にすることで、簡単な構成でありながらも、より大きな駆動力を確実に一方向にだけ伝えることができる。
【0073】
本実施の形態では、駆動源であるモータ60を第1伝達部材40の側に接続したが、これに限定されず、第2伝達部材50の側に駆動源を接続する構成としてもよい。また、本実施の形態では、伝達爪44の数と伝達歯53の数とが異なる構成としたが、これに限定されず、互いの数を同じにするなど適宜設定してもよい。
【0074】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置について、図面を参照して説明する。なお、第2実施形態に係る画像形成装置の構造については、第1実施形態と略同様であるので、説明および図面を省略する。
【0075】
図8Aは、本発明の第2実施形態での伝達爪および伝達歯近傍を拡大した拡大説明図であって、
図8Bは、伝達歯が伝達爪を押し広げている状態を示す拡大説明図である。
【0076】
第2実施形態では、第1実施形態に対して、伝達歯53の形状が異なっている。具体的には、伝達歯53が、保持部53bに保持溝53eを備えている。保持溝53eは、支持面44cから回転中心軸63側に凹んだ形状をしており、
図8Aに示す例では、1箇所の保持部53bに2つの保持溝53eが設けられている。つまり、保持部53bは、支持面44cに対し、ストッパ部53aの下部近傍と、外周斜面部53d近傍と、両者の中間との3箇所で接する構造とされている。
【0077】
駆動力伝達機構では、伝達歯53が矢符Dの空転方向に回転する際、伝達爪44は、保持部53bによって押し広げられて撓む(
図8B参照)。さらに回転すると、撓み変形が大きくなり、当接端44bがストッパ部53aの上部を通過すると、伝達爪44を支えて撓ませていた保持部53bが一旦離れる。そして、伝達爪44は、自身の弾性によって、保持部53bに接触して保持される(
図8A参照)。
【0078】
このように、伝達爪44が回転する保持部53bに弾かれて、再び保持部53bに保持される時(衝突する時)、大きなラップ音(衝突音)が生じることがある。これに対して、本実施の形態では、保持部53bに保持溝53eを設けているので、伝達爪44との接触面積(衝突する面の面積)が減るため、ラップ音を小さくし、静音化が可能となる。
【0079】
さらに、伝達歯53の外周にグリースを塗布した際は、保持溝53eにグリースが保持されるので、回転性および静粛性を向上させることができる。また、長期にわたって、スムーズな回転性と静粛性とを維持できるようになる。
【0080】
なお、保持溝53eには、グリースの換わりに、弾性変形可能な弾性部材を設置してもよい。弾性部材としては、例えば、スポンジなどの多孔質材料を用いることができ、ラップ音の吸音効果をさらに高めることができる。また、弾性部材を保持部53bの面から1mm程度突出させ、支持面44cが当接した際に、支持面44cに押されて保持溝53e内に押し込まれるような構成にしてもよい。
【0081】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る画像形成装置について、図面を参照して説明する。なお、第3実施形態に係る画像形成装置の構造については、第1実施形態および第2実施形態と略同様であるので、説明および図面を省略する。
【0082】
図9は、本発明の第3実施形態での伝達爪および伝達歯近傍を拡大した拡大説明図である。
【0083】
第3実施形態は、第1実施形態に対して、伝達歯53および伝達爪44の形状が異なっている。具体的に、伝達歯53では、ストッパ部53aに係止突起53fが設けられていない。また、ストッパ部53aは、下部よりも上部の方が当接端44bの側に突出するように傾斜している。そして、伝達爪44では、爪傾斜部44dが設けられておらず、当接端44b自体がストッパ部53aに係合するように傾斜している。つまり、当接端44bは、ストッパ部53aの上部に面する側の角を切り欠いたような傾斜とされている。このように、当接端44bとストッパ部53aとに傾斜を設けることで、支持面44cが保持部53bに接するように案内される。この構成によると、伝達爪44では、当接端44b自体が爪傾斜部44dと同様の働きをし、伝達歯53では、ストッパ部53a自体が係止突起53fおよび歯傾斜部53cと同様の働きをする。
【0084】
上述した画像形成装置1では、定着ローラ171へ駆動力を伝える伝達機構に駆動力伝達機構を適用したが、これに限定されず、他の部分に駆動力を伝える伝達機構に駆動力伝達機構を適用してもよい。また、駆動力伝達機構として、第1伝達部材40および第2伝達部材50がギアとされている構造を示したが、これに限定されず、第1伝達部材40および第2伝達部材50自体が回転するシャフトとされていてもよい。
【0085】
なお、今回開示した実施の形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。