(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ブチルゴムが、少なくとも1種のイソオレフィンモノマーから誘導される反復単位及び少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーから誘導される反復単位を含むイソオレフィンコポリマーを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によると、アリルアルコール官能化ブチルゴムを生成するための方法は、エポキシ化ブチルゴムを安息香酸、安息香酸アナログ又はC
1-C
7アルカン酸と接触させることを含む。エポキシ化ブチルゴムは、酸と、例えばミキサー中でその2つを一緒に混合してポリマーコンパウンドを形成することによって接触させることができ、酸にエポキシド官能基の開環を触媒させてブチルゴム上にアリルアルコール官能基を生成する。適当なミキサーとしては、例えば、パドルミキサー、音波攪拌器、ミル(例えばボールミル、ロールミル)、Banbury(商標)ミキサー、Brabender(商標)ミキサー、押出機(例えば1軸スクリュー、2軸スクリュー)、及び回転式ミキサー等が挙げられる。
【0015】
一実施形態において、エポキシ化ブチルゴムは、ブチルゴムの生成中に生成されたコンパウンド中でその場で利用することができる。エポキシ化ブチルゴムをその場で利用する場合、酸は、エポキシ化ブチルゴムに添加し、その中に混合して、酸を分散させて、エポキシ化ブチルゴム及び酸を含むポリマーコンパウンドを形成することができる。しかしながら、好ましい実施形態において、酸は、エポキシ化ブチルゴムの生成において副生成物として生成されることで、エポキシ化ブチルゴム及び安息香酸、安息香酸アナログ又はC
1-C
7アルカン酸を含むポリマーコンパウンドを直接的に形成することができる。エポキシ化ブチルゴムの生成と同じ方法において酸を生成することにより、エポキシ基をアリルアルコール基に変換するために、任意の他の酸(例えば、p-トルエンスルホン酸(PTSA), HCl)を使用する必要性がなくなる。
【0016】
エポキシ化ブチルゴムは、溶媒中または溶媒の非存在下で酸と接触させることができる。好ましい実施形態において、エポキシ化ブチルゴムは溶媒の非存在下で酸と接触させることができる。エポキシ化ブチルゴムは、固体状態であってよいが、典型的にはミキサー中で酸と混合するのに十分な加工性を有する。固体状態のプロセスにおいて酸及びエポキシ化ブチルゴムを同時に生成することにより、溶媒を利用する必要性、及び、ポリマーコンパウンド中で安息香酸、安息香酸アナログ又はC
1-C
7アルカン酸(若しくは任意の他の酸)を分散させるための更なる混合の必要性がなくなる。
【0017】
酸の存在下でエポキシ化ブチルゴム上のエポキシド官能基をアリルアルコール官能基に変換することは、高温で達成することができ、好ましくはポリマーコンパウンドを混合する間に、好ましくはポリマーコンパウンドが生成されるのと同じミキサー内で達成される。温度は、好ましくは約95°C以上である。温度は好ましくは約200°C以下である。温度は、より好ましくは約95〜200°Cの範囲であり、さらに好ましくは、約100〜180°Cであり、よりさらに好ましくは約140〜180°Cである。変換は、好ましくは約10分間以上、より好ましくは20分間以上の時間継続する。変換は、望ましい結果に応じて任意の時間継続することができる。変換は、好ましくは約48時間以下、より好ましくは約6時間以下、さらに好ましくは約4時間以下継続する。変換は、好ましくは約20分間から約4時間の範囲、より好ましくは約0.5時間から約2時間の範囲で達成される。
【0018】
コンパウンド中の安息香酸、安息香酸アナログ又はC
1-C
7アルカン酸は、好ましくは触媒量で存在する。触媒量は、好ましくは約0.01〜10phr(ゴム100部当たりの部)の範囲、より好ましくは約0.1〜8phrの範囲、例えば約0.1〜3.4phrの範囲である。
【0019】
エポキシド官能基のアリルアルコール官能基への変換は、一つ以上の他の酸性化合物をポリマーコンパウンドに含めることで加速することができる。一つ以上の他の酸性化合物は、ポリマーコンパウンドに添加しても、ポリマーコンパウンドと混合してもよく、エポキシ化ブチルゴムの生成中存在することができる。より強い酸である他の酸性化合物では、架橋を回避するために温度を制御する必要があり得る。一つ以上の他の酸性化合物は、好ましくは一つ以上の金属ケイ酸塩である。金属ケイ酸塩は、例えば、アルミノシリケーリ、マグネシウムシリケート等を含む。好ましいアルミノシリケートの一例は、水分画されたカオリンの、制御された高温加熱によって生成された、脱ヒドロキシル化アルミニウムシリケートである、Glomax(商標)LLである。好ましいマグネシウムシリケートの一例は、化学式H
2Mg
3(SiO
3)
4又はMg
3Si
4O
10(OH)
2の水和マグネシウムシリケートから成る鉱物である、タルクである。
【0020】
安息香酸、安息香酸アナログ又はC
1-C
7アルカン酸
安息香酸及び安息香酸アナログは既知の化合物である。好ましい実施形態において、安息香酸又は安息香酸アナログは、式(I):
【化1】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、独立して、水素、メチル、エチル、フェニル、クロロ又はブロモである]
の化合物である。好ましくは、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5のうちの1つはクロロである。好ましくは、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5のうちの4つは水素である。安息香酸又は安息香酸アナログは、好ましくは、メタ-クロロ安息香酸(mCBA)を含む。
【0021】
C
1-C
7アルカン酸もまた既知の化合物である。好ましい実施形態において、C
1-C
7アルカン酸は、式(II):
【化2】
[式中、R
6は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルである]の化合物である。C
1-C
7アルカン酸は、好ましくは酢酸を含む。
【0022】
安息香酸、安息香酸アナログ又はC
1-C
7アルカン酸は、商業的に容易に入手可能であるか、または当該技術分野における多くの周知の方法のいずれか1つによって合成することができる。特に好ましい実施形態において、酸は、エポキシ化ブチルゴムを生成する同じ反応において副生成物として生成され、エポキシ化ブチルゴムコンパウンド中にすでによく分散されている酸の存在により、アリルアルコール官能化ブチルゴムを生じさせるために、さらに酸をエポキシ化ブチルゴムに添加及び混合する必要がなくなる。酸は固体でも液体でもよい。好ましくは、酸は固体状態で使用される。
【0023】
エポキシ化ブチルゴム
エポキシ化ブチルゴムは、任意の適当な方法によるブチルゴムの少なくとも部分エポキシ化によって生成することができる。ブチルゴムをエポキシ化するための様々な方法は、当技術分野において知られている。例えば、ブチルゴムは、しばしば触媒を用いて過酸化水素前駆体で処理することで、ブチルゴムにおけるエチレン性結合をエポキシ化することができることが知られている。触媒としては、例えば、遷移金属錯体、例えばZiegler/Natta型触媒(例えば、ネオジムベース)、モリブデン錯体(例えば、ナフテン酸モリブデン)、バナジウム錯体(例えば、アセチルアセトンバナジウム錯体)チタン錯体、タングステン化合物(例えば、酸化タングステン)及びその混合物が挙げられ得る。
【0024】
該処理は、溶媒中で又は溶媒の非存在下で行うことができる。該処理が、溶媒中でも又は溶媒の非存在下でも、ブチルゴムに過酸化水素前駆体を分散するための処理中には、適当なミキサーが利用され得る。溶媒の非存在下での固体状態反応においてエポキシ化ブチルゴムを生成するのが好ましい。適当なミキサーとしては、例えば、パドルミキサー、音波攪拌器、ミル(例えば、ボールミル、ロールミル)、Banbury(商標)ミキサー、Brabender(商標)ミキサー、押出機(例えば、シングルスクリュー、ツインスクリュー)、及び回転式ミキサー等が挙げられる。一旦生成されると、エポキシ化ブチルゴムは、最初に単離し、場合により精製し、その後に安息香酸、安息香酸アナログ又はC
1-C
7アルカン酸と接触させることができ、又は酸とその場で接触させることでアリルアルコール官能化ブチルゴムを形成することができる。
【0025】
ブチルゴムをエポキシ化するのに適当な過酸化水素前駆体としては、以下に限定されないが、過酸化水素、無機過酸化物、有機過酸化物及びその混合物が挙げられる。有機過酸化物又はその混合物が好ましい。一部の有機過酸化物としては、例えば、アルキル過酸化物、アルキルヒドロペルオキシド(例えば、tert-ブチルヒドロペルオキシド、エチルヒドロペルオキシド)、ペルオキシ酸及びその混合物が挙げられる。ペルオキシ酸又はそれらの混合物が好ましい。一部のペルオキシ酸としては、例えば、ペルオキシ安息香酸、ペルオキシ安息香酸アナログ、ペルオキシアルカン酸、トリフルオロペルオキシ酢酸、マグネシウムモノ-ペルオキシフタレート又はその混合物が挙げられる。式(III)又は(IV):
【0027】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、独立して、水素、メチル、エチル、フェニル、クロロ又はブロモであり、R
6は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルである]
の化合物である有機ペルオキシ酸が好ましい。好ましくは、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5のうちの1つはクロロである。好ましくは、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5のうちの4つは水素である。ペルオキシ酸は、好ましくは、メタ-クロロペルオキシ安息香酸(mCPBA)又は過酢酸を含む。
【0028】
特に注記すべきは式(III)又は(IV)のペルオキシ酸であり、なぜならば、ブチルゴムをエポキシ化するためのこうしたペルオキシ酸の使用は、副生成物として式(I)又は(II)の酸の生成をもたらし、エポキシ化ブチルゴムコンパウンド中にすでによく分散されている式(I)又は(II)の酸の存在はアリルアルコール官能化ブチルゴムを生じさせるために、酸をエポキシ化ブチルゴムに添加及び混合する必要がなくなる。式(III)のペルオキシ酸が特に好ましい。
【0029】
ブチルゴムをエポキシ化するためにペルオキシ酸を使用する際、ブチルゴムは、好ましくは、周囲温度又はそれより上の温度でペルオキシ酸と混合される。周囲温度は、ブチルゴムが、外部から適用された加熱の非存在下でペルオキシ酸と混合されている温度である。混合プロセスそれ自体は、ポリマーを軟化することによって混合プロセスにおいて助けとなる熱を提供する。ポリマー分解の可能性を低減するため、ブチルゴムをペルオキシ酸と、約95℃以下、より好ましくは約75℃以下、より好ましくは約65℃以下、より好ましくは約50℃以下の温度で混合することが好ましい。混合するという行為は、周囲温度を約30℃又はそれより更に高く上昇させ得るが、一部の実施形態において、より多くの熱を適用することで温度を更により高く上昇させることが望ましい場合がある。一部の実施形態において、ブチルゴムは、周囲温度から約95℃の範囲の温度で、周囲温度から約75℃の範囲の温度で、又は周囲温度から約50℃の範囲の温度で、ペルオキシ酸と混合することができる。一部の実施形態において、不飽和ポリマーは、約20℃から約95℃の範囲の温度で、又は約30℃から約50℃の範囲の温度で、ペルオキシ酸と混合することができる。好ましい一実施形態において、ブチルゴムがペルオキシ酸と混合される温度は、外部から適用された加熱の非存在下での周囲温度である。
【0030】
ブチルゴムは、好ましくは、約4時間未満、より好ましくは約1時間未満、いっそう好ましくは約0.5時間未満の時間長さで、ペルオキシ酸と混合される。一実施形態において、時間長さは約10分以下であってよい。別の実施形態において、時間長さは約5分以下であってよい。一部の実施形態において、時間長さは30秒以上、又は1分以上、又は2分以上であってよい。
【0031】
ペルオキシ酸は、好ましくは、溶媒の非存在下でブチルゴムと混合される。ブチルゴムは固体状態であるが、しかしながら、ブチルゴムは、典型的に、ミキサーの中でペルオキシ酸との混合を可能にするために充分な加工性を有する。ペルオキシ酸は、固体又は液体であってよい。固体状態のペルオキシ酸が好ましい。固体ブチルゴム及びペルオキシ酸の混合は、当技術分野における任意の適当なミキサーを使用して達成することができる。ポリマー及びポリマー添加剤のためのミキサーの一部の例としては、ミル(例えば、ロールミル、ボールミル)、ブレードミキサー、内部ミキサー(例えば、Banbury(商標)及びBrabender(商標)ミキサー)、及び押出機(ツインスクリュー、シングルスクリュー)等が挙げられる。ミルが特に好ましい。有効なミキサー容量並びに使用されるブチルゴム及びペルオキシ酸の量を視野に入れて、混合している間の時間、温度及び剪断が制御されることで、変換効率を最適化することができる。
【0032】
ペルオキシ酸は、当技術分野における他の固体状態エポキシ化プロセスにおけるよりも、かなり少ない量で使用することができる。ペルオキシ酸は、好ましくは、不飽和に対して約5mol%当量以下の量、さらには不飽和に対して約3mol%当量以下の量で使用されるが、ブチルゴムからエポキシ化ポリマーへの高変換効率を有する。一部の実施形態において、ペルオキシ酸の適当な量は、不飽和に対して0.1〜5mol%、又は0.4〜4mol%又は0.7〜3mol%当量の範囲である。
【0033】
エポキシ化反応の速い動態に対する制御の増強のため、混合へのマスターバッチ手法が好ましい。この手法において、ペルオキシ酸は、支持マトリックス、例えば飽和ポリマーを含むマトリックス上に支持されてよく、支持されたペルオキシ酸は、ブチルゴムと混合される。飽和ポリマーは、好ましくは飽和エラストマーを含む。飽和ポリマーの一部の例としては、ポリイソブチレン(IB)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、ポリアクリル酸のゴム(ACM、ABR)、シリコーンゴム(SI、Q、VMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)、フルオロエラストマー(FKM、及びFEPM)、ペルフルオロエラストマー(FFKM)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)又はその混合物が挙げられる。飽和ポリマーは、好ましくはポリイソブチレンを含む。低又は中分子量ポリイソブチレンが好ましい。
【0034】
ブチルゴムをエポキシ化するために上に記載されている通りのペルオキシ酸を使用することは、溶媒を全く必要としないこと、触媒を全く必要としないこと、外部の熱インプットの適用を全く若しくはほとんど必要としないこと、冷却の適用を全く必要としないこと、エポキシ化剤をほとんど必要としないこと、より速いこと、及び/又はポリマーのより効果的な変換をもたらすことを含めて、1つ又は複数の利点を有することができる。
【0035】
ブチルゴムは、少なくとも1種のイソオレフィンモノマーから誘導される反復単位、及び少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーから誘導される反復単位を含むコポリマーを含むことができる。
【0036】
ブチルゴムは、特殊のイソオレフィンに限定されない。しかしながら、イソブテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、4-メチル-1-ペンテン及びその混合物等、4個から16個の炭素原子、好ましくは4〜7個の炭素原子の範囲内におけるイソオレフィンが好ましい。より好ましいのは、イソブテン(イソブチレン)である。
【0037】
ブチルゴムは、特殊のマルチオレフィンに限定されない。当業者によって知られているイソオレフィンと共重合可能なあらゆるマルチオレフィンが使用され得る。しかしながら、イソプレン、ブタジエン、2-メチルブタジエン、2,4-ジメチルブタジエン、ピペリリン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、2-ネオペンチルブタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、2-メチル-1,6-ヘプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、1-ビニル-シクロヘキサジエン及びその混合物、好ましくは共役ジエン等、4〜14個の炭素原子の範囲内におけるマルチオレフィンが使用される。イソプレンが、より好ましくは使用される。本発明において有用なブチルゴムとしては、以下に限定されないがC
1〜C
4アルキル置換スチレン、例えばパラ-メチルスチレンを含めて、アルキル置換ビニル芳香族コモノマー等、上記参照のマルチオレフィン以外のコモノマーが挙げられ得る。
【0038】
任意選択のモノマーとして、当業者によって知られているイソオレフィン及び/又はジエンと共重合可能な任意のモノマーが使用され得る。α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、クロロスチレン、シクロペンタジエン及びメチルシクロペンタジエンが、好ましくは使用される。インデン及び他のスチレン誘導体も使用することができる。ブチルゴムとしては、例えば、イソブチレン、イソプレン及びパラ-メチルスチレンのランダムコポリマーを挙げることができる。
【0039】
一実施形態において、イソオレフィンコポリマーは、モノマー混合物の共重合によって形成することができる。好ましくは、モノマー混合物は、モノマー混合物中のモノマーに基づき、約80〜99.9mol%の少なくとも1種のイソオレフィンモノマー及び約0.1〜20mol%の少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーを含む。より好ましくは、モノマー混合物は、約90〜99.9mol%の少なくとも1種のイソオレフィンモノマー及び約0.1〜10mol%の少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーを含む。一実施形態において、モノマー混合物は、約92.5〜97.5mol%の少なくとも1種のイソオレフィンモノマー及び約2.5〜7.5mol%の少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーを含む。別の実施形態において、モノマー混合物は、約97.4〜95mol%の少なくとも1種のイソオレフィンモノマー及び約2.6〜5mol%の少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーを含む。
【0040】
モノマー混合物が、イソオレフィン及び/又はジエンと共重合可能な任意選択のモノマーを含むならば、任意選択のモノマーは、好ましくは、マルチオレフィンモノマーの一部と置き換わる。モノマー混合物は、0.01質量%から1質量%の少なくとも1種のマルチオレフィン架橋剤を含むこともでき、マルチオレフィン架橋剤が存在する場合、マルチオレフィンモノマーの量は、それに応じて低減される。
【0041】
イソオレフィンコポリマーは、モノマー混合物の共重合によって、例えば溶液重合によって形成することができる。溶液重合反応は、重合プロセスを開始できる開始剤系(例えば、ルイス酸触媒及びプロトン源)の存在下で行われる。本発明において適当なプロトン源としては、ルイス酸又はルイス酸を含有する組成物に添加された場合にプロトンを生成する任意の化合物が挙げられる。プロトンは、ルイス酸とプロトン源との反応から発生させることができ、プロトン及び対応する副生成物を生成する。こうした反応は、プロトン化された添加剤とのプロトン源の反応の方が、モノマーとのそれの反応と比較してより速いという場合においては、好ましい場合がある。プロトン発生反応物としては、例えば、水、アルコール、フェノールチオール、及びカルボン酸等、又はその任意の混合物等が挙げられる。水、アルコール、フェノール又はその任意の混合物が好ましい。最も好ましいプロトン源は水である。ルイス酸対プロトン源の好ましい比は、質量により5:1から100:1、又は質量により5:1から50:1である。触媒及びプロトン源を含めて開始剤系は、好ましくは、反応混合物の総質量に基づき0.02〜0.1wt%の量で反応混合物中に存在する。
【0042】
ハロゲン化アルキルアルミニウム触媒は、本発明による溶液重合反応を触媒するためのルイス酸の特に好ましいクラスである。ハロゲン化アルキルアルミニウム触媒の例としては、二臭化メチルアルミニウム、二塩化メチルアルミニウム、二臭化エチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、二臭化ブチルアルミニウム、二塩化ブチルアルミニウム、臭化ジメチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム、臭化ジエチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、臭化ジブチルアルミニウム、塩化ジブチルアルミニウム、セスキ臭化メチルアルミニウム、セスキ塩化メチルアルミニウム、セスキ臭化エチルアルミニウム、セスキ塩化エチルアルミニウム及びその任意の混合物が挙げられる。好ましいのは、塩化ジエチルアルミニウム(Et
2AlCl又はDEAC)、セスキ塩化エチルアルミニウム(Et
1.5AlCl
1.5又はEASC)、二塩化エチルアルミニウム(EtAlCl
2又はEADC)、臭化ジエチルアルミニウム(Et
2AlBr又はDEAB)、セスキ臭化エチルアルミニウム(Et
1.5AlBr
1.5又はEASB)及び二臭化エチルアルミニウム(EtAlBr
2又はEADB)、並びにその任意の混合物である。特に好ましい開始剤系において、触媒は、好ましくは希釈剤中で等モル量の塩化ジエチルアルミニウム及び二塩化エチルアルミニウムを混合することによって好ましくは発生されたセスキ塩化エチルアルミニウムを含む。希釈剤は、好ましくは、共重合反応を行うために使用されるのと同じものである。
【0043】
イソオレフィンの溶液共重合に有用な1種又は複数の他の触媒は、開始剤系、例えば四塩化チタン、四塩化第一スズ、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素又はメチルアルモキサン中に存在してもよい。該モノマーは一般に、カチオン的に、好ましくは約-100℃から約-50℃の範囲の温度、好ましくは約-95℃から約-65℃の範囲の温度で重合される。温度は、好ましくは約-80℃以上である。
【0044】
該溶液は、溶液の体積に基づき0〜30vol%の脂肪族炭化水素希釈剤を含む。好ましい実施形態において、溶液は、0.1〜30vol%又は0.1〜20vol%の脂肪族炭化水素希釈剤を含む。脂肪族炭化水素は、1013hPaの圧力で45℃から80℃の範囲における沸点を有する1種又は複数の脂肪族炭化水素を少なくとも80wt%、好ましくは少なくとも90wt%、いっそう好ましくは少なくとも95wt%含む共通脂肪族媒体中にあってよい。1013hPaの圧力で45℃から80℃の範囲における沸点を有する脂肪族炭化水素としては、シクロペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、n-ヘキサン、メチルシクロペンタン及び2,2-ジメチルペンタンが挙げられる。
【0045】
C6溶媒は、溶液プロセスにおける使用に特に好ましい選択である。C5又はそれより軽いもの等、より小さい分子量の溶媒は、該モノマーに近い沸点を有し、該モノマーは、そのため、蒸留によって溶液から分離不可能であり得る。C7又はそれより重いもの等、より大きい分子量の溶媒は、ハロゲン化後にゴムから分離するのがより困難であると思われる。C7溶媒の使用によって提供される溶液粘度も、C6溶媒よりも著しく高く、溶液を取り扱うのをより困難にし、上に記載されている高いモノマー対溶媒比で提供された場合でさえ、反応器内での伝熱を妨げる。結果として、本発明のC6溶媒は、利用可能な溶媒の中からの好ましい選択である。本発明における使用に適当なC6溶媒は、好ましくは、50℃から69℃の間の沸点を有する。好ましいC6溶媒の例としては、n-ヘキサン又はヘキサン異性体、例えば2-メチルペンタン若しくは3-メチルペンタン又はn-ヘキサン及びこうした異性体の混合物、並びにシクロヘキサンが挙げられる。共通脂肪族媒体は、例えば、重合条件下で不活性である他の化合物、例えば他の脂肪族炭化水素、例えば1013hPaの圧力で80℃超の沸点を有するヘプタン及びオクタン、プロパン、ブタン、n-ペンタン、シクロヘキサン、並びにハロ炭化水素、例えば反応条件下で不活性である塩化メチル、ハイドロフルオロカーボン(HFC)及び他のハロゲン化脂肪族炭化水素を更に含むことができる。
【0046】
共重合プロセスは、バッチ反応器内でバッチプロセス又は連続反応器内で連続プロセス(例えば、プラグフロープロセス)として行うことができる。連続プロセスにおいて、プロセスは、好ましくは少なくとも以下の供給流で行われる。溶媒/希釈剤+イソオレフィン(好ましくはイソブテン)+マルチオレフィン(好ましくはジエン、イソプレン);開始剤系;及び任意選択により、マルチオレフィン架橋剤。
【0047】
マルチオレフィン架橋剤は、イソオレフィン及びマルチオレフィンと同じ供給流において添加することもできることが注記されるべきである。架橋剤は、コポリマーの分子量を加工可能なレベルに増加させるためには必要ないが、架橋剤はそれでもなお、所望であれば使用してよい。
【0048】
ハロゲン化ブチルゴムを形成するため、ブチルゴムはハロゲン化プロセスにかけられ得る。臭素化又は塩素化は、当業者によって知られているプロセス、例えば、Maurice Morton、Kluwer Academic Publishers、297〜300頁によって編集されたRubber Technology、第3版及びそこに引用されている更なる文献に記載されている手順に従って行うことができる。好ましくは、ハロゲン化は、1999年3月23日に発行された米国特許第5,886,106号に記載されている通りのプロセスに従って行われ、この内容は、参照により本明細書に組み込まれる。添加されるハロゲン化剤の量は、ハロゲン化コポリマー中0.05〜2.5mol%の最終のハロゲン含有量を提供するように制御される。ブチルゴムをハロゲン化するのに有用なハロゲン化剤は、元素状の塩素(Cl
2)若しくは臭素(Br
2)及び/又はそれらへのオルガノ-ハロゲン化物前駆体、例えばジブロモ-ジメチルヒダントイン、トリ-クロロイソシアヌル酸(TClA)、若しくはn-ブロモスクシンイミド等を含むことができる。好ましくは、ハロゲン化剤は臭素を含むか、又は臭素である。好ましくは、ハロゲン化は臭素化を含む。
【0049】
イソプレン等の共役ジエンを含有するブチルゴムのハロゲン化中、イソオレフィンコポリマーのマルチオレフィン含有量の一部又は全ては、ハロゲン化アリルに変換される。ハロゲン化ブチルゴムのハロゲン化アリルの総含有量は、親ブチルゴムのマルチオレフィン出発含有量を超えない。ハロゲン化アリル部位は、求核試薬をハロゲン化ブチルゴムと反応させること、及び求核試薬をハロゲン化ブチルゴムに付着させることを可能にする。
【0050】
硬化:
この方法によって生成されたアリルアルコール官能化ブチルゴムは、任意の適当な方法、例えば硫黄ベースの硬化剤、過酸化物ベースの硬化剤、ZnO硬化剤、樹脂硬化系又はUV光によって、更に硬化することができる。典型的な硫黄ベースの硬化系は、(i)金属酸化物、(ii)元素状硫黄及び(iii)少なくとも1種の硫黄ベースの加速剤を含む。硬化系における成分としての金属酸化物の使用は、当技術分野においてよく知られている。適当な金属酸化物は酸化亜鉛であり、これは、典型的に、該組成物中のポリマー100質量部当たり約1質量部から約10質量部、好ましくは約2質量部から約5質量部の量で使用される。好ましい硬化系の成分(ii)を含む元素状硫黄は、典型的に、該組成物中のポリマー100質量部当たり約0.2質量部から約10質量部の量で使用される。適当な硫黄ベースの加速剤(好ましい硬化系の成分(iii))は、典型的に、該組成物中のポリマー100質量部当たり約0.5質量部から約3質量部の量で使用される。有用な硫黄ベースの加速剤の非限定的な例は、チウラムスルフィド、例えばテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、チオカルバメート、例えばジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDC)、並びにチアジル化合物及びベンゾチアジル化合物、例えばメルカプトベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)から選択することができる。好ましくは、硫黄ベースの加速剤は、メルカプトベンゾチアジルジスルフィドである。樹脂硬化系の一部の実施形態において、樹脂硬化系は、ハロゲン化フェノールホルムアルデヒド樹脂又はフェノールホルムアルデヒド樹脂を、任意選択によりアクチベーターと併せて含むことができる。ハロゲン化フェノールホルムアルデヒド樹脂及びフェノールホルムアルデヒド樹脂は、米国特許第2,701,895号、同3,093,613号及び同3,165,496号に記載されている通り、当技術分野において知られており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。アルキルフェノール-ホルムアルデヒド誘導体、例えばメチロール活性基を有するオクチルフェノール-ホルムアルデヒドが典型的である。金属酸化物、例えば酸化亜鉛、及び/又は他の硬化助剤又は加工助剤(例えば、ステアリン酸)は、樹脂硬化系において使用することもできる。金属酸化物は、該組成物中のポリマー100質量部当
たり約1質量部から約10質量部の量で使用することができる。樹脂は、約0.2phrから約20phrの量で使用することができる。他の硬化助剤又は加工助剤は、約0.2phrから約10phrの量で使用することができる。
【0051】
添加剤:
アリルアルコール官能化ブチルゴムは、様々な補助生成物と配合され、物品に形状化され、結果として得られたコンパウンドは硬化され得る。ポリマー(例えば、ゴム)のための補助生成物としては、例えば、反応加速剤、加硫加速剤、加硫加速助剤、抗酸化剤、起泡剤、抗エージング剤、熱安定剤、光安定剤、オゾン安定剤、加工助剤、可塑剤、粘着性付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、増量剤、有機酸、阻害剤、金属酸化物、及び活性化剤、例えばトリエタノールアミン、ポリエチレングリコール、ヘキサントリオール等が挙げられ、これらはゴム工業に知られている。ゴム助剤は、とりわけ意図される使用に依存する従来の量で使用される。加硫に対する更なる情報は、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、17巻、666頁以下参照(Vulcanization)で得ることができる。
【0052】
特定の実施形態において、アリルアルコール官能化ブチルゴムは、適当な充填剤(例えば、鉱物及び/又は非鉱物充填剤)と配合されることで、ある特定の望ましい物理的特性、例えば引張強度、粘度、硬さ、透過性等を増強することができる。適当な充填剤は、望ましくない残留物を付与しない又はそうでなければ前に記述の「きれいな」用途における使用のためのポリマーに悪く影響しないものから選択される。適当な充填剤の例としては、シリカ、シリケート、その高いアスペクト比又はナノサイズのバージョン、及び他の適当なきれいな充填剤が挙げられる。所望の物理的特性を付与しながらきれいな特徴を保持するための充填剤の選択は、当業者の権限内にある。充填剤の従来の量は約1phrから150phr(ゴム100部当たりの部)である。
【0053】
使用:
本発明の方法に従って生成されたアリルアルコール官能化ブチルゴムは、インナーライナー、ブラダー、チューブ、エアークッション、空気ばね、エアベロー、アキュムレーターバッグ、ホース、コンベアベルト及び医薬閉鎖具、自動車サスペンションバンパー、自動排気ハンガー、ボディマウント、靴底、タイヤのサイドウォール及びトレッドコンパウンド、ベルト、ホース、靴底、ガスケット、Oリング、ワイヤー/ケーブル、膜、ローラー、ブラダー(例えば、硬化性ブラダー)、タイヤのインナーライナー、タイヤトレッド、ショックアブソーバー、機械架台、バルーン、ボール、ゴルフボール、防護衣、医療用チュービング、貯蔵タンクライニング、電気絶縁、軸受、医薬ストッパー、接着剤、容器、例えば瓶、トート、貯蔵タンク、容器閉鎖具又は蓋;シール又はシーラント、例えばガスケット又はコーキング;材料取扱い器具、例えばオーガ又はコンベアベルト;冷却塔;金属加工器具、又は金属加工流体に接触する任意の器具;エンジン部品、例えば燃料ライン、燃料フィルター、燃料貯蔵タンク、ガスケット、シール等;流体濾過又はタンクシーリングのための膜、機器、ベビー製品、浴室備品、浴室安全具、床張り、食品貯蔵、庭園、キッチン備品、キッチン製品、事務所製品、ペット製品、シーラント及びグラウト、スパ、水の濾過及び貯蔵、装置、食品調理用表面及び装置、ショッピングカート、表面用途、貯蔵容器、履物、防護服、スポーツ用具、カート、歯科装置、ドアノブ、衣類、電話、玩具、病院におけるカテーテルを挿入した流体、槽及びパイプの表面、コーティング、食品加工、生体医用装置、フィルター、添加剤、コンピューター、船殻、シャワー用壁、チュービング、ペースメーカー、インプラント、創傷包帯、医療用織物、製氷機、水冷却器、果汁ディスペンサー、清涼飲料機、配管、貯蔵槽、計測システム、バルブ、取付具、アタッチメント、フィルターハウジング、ライニング、並びにバリアコーティングを含めて、様々な製品において有用である。
【0054】
硬化ポリマーが優れた老化特性を示すため、アリルアルコール官能化ブチルゴムは、ブラダー(例えば、硬化性ブラダー)、タイヤインナーライナー、コーティング応用及びシーラント(例えば、窓及び浴室のコーキング)及びコーティングにおいて特に有用である。アリルアルコール官能化ブチルゴムの特に有用な応用は、高アスペクト比(HAR)タルクで充填されたタイヤインナーライナーである。
【実施例】
【0055】
図1は、アリルアルコール官能化ブチルゴムの生成における好ましい実施形態を図示している。ブチルゴム(IIR)は、溶媒の非存在下、周囲温度と95℃の間の温度でメタ-クロロペルオキシ安息香酸(mCPBA)を用いて固体状態でエポキシ化され、エポキシ化ブチルゴムとポリマーコンパウンド中によく分散されたメタ-クロロ安息香酸(mCBA)とを生成することができる。温度(T)を95°C超に上昇させた後、エポキシ化ブチルゴムをメタクロロ安息香酸の存在下でアリルアルコール官能化ブチルゴムに変換する。
【0056】
(実施例1)
1.36mol%のエポキシ基を含有するエポキシ化ブチルゴム(エポキシ化RB301)を、周囲温度と95℃の間の温度で十分量のメタ-クロロ安息香酸(mCBA)と固体状態で混合すると、得られたポリマーコンパウンド中には約6phrの残留mCBAが提供される。
【0057】
エポキシ化ブチルゴム及び残留メタ-クロロ安息香酸(mCBA)を含むポリマーコンパウンドの生成後、温度を上昇させ、コンパウンドを更に同じミキサー中で混合し、エポキシ官能基をアリルアルコール官能基に変換させる。アリルアルコールで官能化されたIIRのエキソ異性体は、エンド異性体よりも優先的に形成されることに留意すべきである。
【0058】
図2は、120
oC、140
oC、及び160
oCで、Glomax(商標)LL未添加及び10phr又は50phrのGlomax(商標)LLの存在下で、エポキシドのアリルアルコールへの変換率(%EXO-OH)対時間(分)のグラフを図示している。%EXO-OHは、マクロを用いて
1H NMR分析で決定した。
図2は、温度上昇させるとエポキシドの開環率および固体状態でのアリルアルコールへの変換率が増加することを示している。さらに、変換の程度は0.6%〜0.7%の間である。
図2はまた、Glomax(商標)LLが変換率を増大させ、Glomax(商標)LLが増大すると、少なくともGlomax(商標)LLの量50phrまでの変換率をさらに増大することを示している。
【0059】
新規な特色は、本明細書の考察で当業者に明らかになる。しかしながら、特許請求の範囲は実施形態によって限定されるべきではなく、全体として特許請求の範囲及び本明細書の表現と一致する最も広い解釈が与えられるべきであることは理解されるべきである。