(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903071
(24)【登録日】2021年6月24日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】PCB変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 30/10 20060101AFI20210701BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20210701BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
H01F30/10 A
H01F30/10 D
H01F17/00 B
H01F17/04 F
【請求項の数】18
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-544779(P2018-544779)
(86)(22)【出願日】2017年1月25日
(65)【公表番号】特表2019-510370(P2019-510370A)
(43)【公表日】2019年4月11日
(86)【国際出願番号】GB2017050190
(87)【国際公開番号】WO2017144848
(87)【国際公開日】20170831
【審査請求日】2020年1月24日
(31)【優先権主張番号】1603209.6
(32)【優先日】2016年2月24日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518042280
【氏名又は名称】イートン インテリジェント パワー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Eaton Intelligent Power Limited
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・ウラジミール・エスポジット
【審査官】
秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0057164(US,A1)
【文献】
特開2014−056868(JP,A)
【文献】
特開平04−367208(JP,A)
【文献】
特開2003−151838(JP,A)
【文献】
特開平09−120910(JP,A)
【文献】
特開2000−323333(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0206060(US,A1)
【文献】
特開2005−203744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 17/00
H01F 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、2つの平面PCB巻線とを備えるPCB変圧器であって、前記コアが、テーブルから延在する2つの脚を有し、それぞれの2つの平面PCB巻線が、前記2つの脚の各々の1つの周りに延在し、前記平面PCB巻線の上にある前記テーブルの外側平面寸法が、前記平面PCB巻線の外側の外形寸法に一致し、
前記2つの脚の間に延在する前記テーブルの領域を除く全ての領域において、前記テーブルの外側平面及び前記平面PCB巻線の外側の外形のそれぞれの寸法が一致し、
前記テーブルが、エッジ領域で徐々に薄くなるように、前記エッジ領域で先細りを示し、
前記先細りは、前記テーブルの外側平面寸法が前記平面PCB巻線の外側の外形寸法と一致するエッジ領域のみに形成されるPCB変圧器。
【請求項2】
磁気結合が、前記コアの前記テーブル上に集束されるように構成されている、請求項1に記載のPCB変圧器。
【請求項3】
前記テーブルの外側平面及び前記平面PCB巻線の外側の外形のそれぞれの寸法が、それらの外周部にわたって一致する、請求項1または2に記載のPCB変圧器。
【請求項4】
前記テーブルのフットプリントは、前記平面PCB巻線のフットプリントに対応するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項以上に記載のPCB変圧器。
【請求項5】
前記平面PCB巻線の上にある前記テーブルのサイズ及び形状が、前記2つの脚の間に延在する領域を除いて、前記平面PCB巻線の形状及び構成を反映するように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項以上に記載のPCB変圧器。
【請求項6】
前記平面PCB巻線の各々が、前記2つの脚のうちの一方を中心としている、請求項1〜5のいずれか1項以上に記載のPCB変圧器。
【請求項7】
前記平面PCB巻線の上にある前記テーブルは、前記2つの脚の各々の上を中心とする、請求項6に記載のPCB変圧器。
【請求項8】
前記コアが、間に延在する前記2つの脚を有する複数のテーブルを含む、請求項1〜7のいずれか1項以上に記載のPCB変圧器。
【請求項9】
前記複数のテーブルが、同じ形状を共有する、請求項8に記載のPCB変圧器。
【請求項10】
前記2つの脚が、同じ形状を備える、請求項1〜9のいずれか1項以上に記載のPCB変圧器。
【請求項11】
前記平面PCB巻線の上にある前記テーブルが、前記テーブルの8字状のフットプリントを画定する、請求項1〜10のいずれか1項以上に記載のPCB変圧器。
【請求項12】
前記テーブルが、前記8字状の外形のより幅広な端部領域にのみ次第に薄くなる先細りを含み、中央領域には含まない、請求項11に記載のPCB変圧器。
【請求項13】
コアと、平面PCB巻線とを備えるPCB変圧器であって、前記コアが、テーブル、ならびに前記テーブルの中央領域と外周領域とからそれぞれ延在する中央脚及び2つの外周脚を有し、前記平面PCB巻線が、前記中央脚の周りに延在し、前記平面PCB巻線の上にある前記テーブルの外側平面寸法が、前記平面PCB巻線の外側の外形寸法と一致し、
前記テーブルが、エッジ領域で徐々に薄くなるように、前記エッジ領域で先細りを示し、
前記先細りは、前記テーブルの外側平面寸法が前記平面PCB巻線の外側の外形寸法と一致するエッジ領域のみに形成されるPCB変圧器。
【請求項14】
前記テーブルの前記部分のフットプリントが、前記平面PCB巻線のフットプリントに対応するように構成されている、請求項13に記載のPCB変圧器。
【請求項15】
前記中央脚が、前記2つの外周脚と同じ形状を有する、請求項13または14に記載のPCB変圧器。
【請求項16】
前記中央脚が、前記2つの外周脚と同じ形状及びサイズを有する、請求項13,14または15に記載のPCB変圧器。
【請求項17】
前記コアが、間に延在する前記中央脚及び2つの外周脚を有する複数のテーブルを含む、請求項13〜16のいずれか一項以上に記載のPCB変圧器。
【請求項18】
前記複数のテーブルが、同じ形状を共有する、請求項17に記載のPCB変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、平面PCB巻線を有する平面PCB変圧器に関する。
【0002】
鉄またはフェライト変圧器コアのそれぞれの脚に沿って螺旋状に延在する一次巻線及び二次巻線を含む、より従来的に確立された構成を有する様々な構成変圧器が知られている。このようなコアは、通常、U−U、U−I、E−EまたはE−I構成で設けられる。さらに近年では、脚に沿って螺旋状に延在するのではなく、巻線は、PCB上のトラックとして平面に設けられ、該巻線は、通常、平坦な螺旋状トラックに沿って、かつU−U、U−I、E−EまたはE−Iコア構成の脚に対してほぼ同心で延在する。
【0003】
また、
図6A〜6Eに例証されるように、本発明のPCB変圧器とは異なるポットコア変圧器の様々な構成が知られており、これらは、コアの中央脚が、巻線が配置され外壁部によって囲まれた環状トラックによって包囲されている。
【0004】
しかし、平面PCB巻線の寸法、形状及び全体的なフットプリントに関連した変圧器コアの設計及び構成は、既知の平面変圧器設計の限界及び不利点につながる。
【0005】
特に、不利なことには、磁束の結合は制限され、そのような既知の平面PCB変圧器が被る損失が顕著になる可能性がある。
【0006】
本発明は、既知のそのような変圧器よりも優れた利点を有する平面PCB変圧器を提供することを目的とする。
【0007】
具体的には、本発明は、改善された磁気結合効率と低減された損失を有する平面PCB変圧器を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の1つの態様によれば、コアと、平面PCB巻線とを備えるPCB変圧器が提供され、コアは、テーブルから延在するほぼ同一の形状及びサイズであることができる2つの脚を有し、平面PCB巻線は、上記脚の少なくとも一方の周りに延在し、平面PCB巻線の上にあるテーブルの部分の外寸は、平面PCB巻線の外寸にほぼ一致する。
【0009】
本発明は、巻線の外寸及び巻線の上にあるテーブル部分の外寸のそれぞれがほぼ一致する場合に限り、磁気結合及び動作効率の改善並びに損失を低減することができ、特に有利であることが判明している。
【0010】
したがって、コアの形状及び構成は、巻線を形成する略平面の同心円状PCBトラックと共に使用するのにより適切である。
【0011】
有利には、磁気結合は、従来の変圧器コア設計のような脚部ではなく、変圧器コアのテーブル部分を利用し、それに集束されるように構成される。
【0012】
有利には、上記テーブル部分及び巻線のそれぞれの寸法は、ほぼそれらの外周の大部分にわたって一致する。
【0013】
特に、2つの隣接する脚の間に延在するテーブルの領域を除く全ての領域において、上記テーブル部分及び巻線のそれぞれの寸法の間は、実質的に一致する。
【0014】
有利には、巻線の上にあるテーブル部分のフットプリントは、巻線のフットプリントにほぼ対応するように構成されることが理解されよう。
【0015】
巻線の上にあるテーブルの部分のサイズ及び形状は、2つの隣接する脚の間に延在する領域を除いて、巻線の形状及び構成を反映するように構成される。
【0016】
有利には、それぞれの巻線は2つの脚のまわりに延在する。代替として、PCB変圧器は、中央脚と2つの外周脚とを含むことができ、単一の巻線を中央脚の中心に配置することができる。
【0017】
このような態様では、巻線の上にある領域内の上記テーブル部分は、少なくとも1つの脚を中心とする。
【0018】
特に、本発明は、2つの脚を有するコアと、コアのそれぞれの第1及び第2の脚の周りに延びるそれぞれの第1及び第2の平面巻線とを含むPCB変圧器を提供する。
【0019】
別の実施形態では、本発明のPCB変圧器は、3つの脚を含むコアと、3つの脚のうちの中央脚の周りに延在する平面巻線とを含むことができる。
【0020】
特に、第1及び第2の巻線は、整合する対の巻線を備えることができる。
【0021】
特に、1対の巻線の上方に延在するコアのテーブルの領域及び1対の巻線は、「8字状」のフットプリントを含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明は、添付の図面を参照し、例示のみを目的として、以下にさらに説明される。
【0023】
【
図1A】既知の変圧器コア及び関連する巻線の2つの異なる例による断面図である。
【
図1B】既知の変圧器コア及び関連する巻線の2つの異なる例による断面図である。
【
図2A】
図1A及び1Bの変圧器コアの概略表現であり、巻線によって生成される磁束線を示す。
【
図2B】
図1A及び1Bの変圧器コアの概略表現であり、巻線によって生成される磁束線を示す。
【
図3A】既知の平面変圧器の設計による変圧器コアの4つの異なる例の斜視図である。
【
図3B】PCB及びその平面配置における変圧器巻線トラックの位置を示す、
図3Aのコアの断面図である。
【
図3C】
図3Bの2脚型及び3脚型変圧器コア及び巻線の平面図である。
【
図4A】既知の変圧器設計によるPCB変圧器の動作の概略断面図及び平面図を示し、磁束線を示す。
【
図5A】本発明の一実施形態による変圧器コア及びPCB変圧器の斜視図及び平面図を示す。
【
図5B】本発明の別の実施形態による、PCB変圧器コア及びPCB巻線の概略斜視図及び平面図を提供する。
【
図6】
図6A〜
図6Eに例証されるように、本発明のPCB変圧器とは異なるポットコア変圧器の様々な構成を示す。
【0024】
ここで
図1Aを参照すると、従来の変圧器の断面図が提供され、鉄またはフェライト101で形成され、変圧器の脚のうちの1つの周りに螺旋状に巻かれた一次変圧器巻線111を有するU−U構成変圧器コアと、2つの変圧器コア脚のうちの第2の脚の周りに同様の態様で延びる二次巻線121とを含む。
【0025】
図1Bは、3脚型、すなわちE−Eコアを備える既知の変圧器コア102のさらなる例を例証し、ここでは、一次変圧器巻線112と二次変圧器巻線122との両方が、変圧器コア102の中央脚の周りに、それに沿って延在する。
【0026】
図1A及び
図1Bの変圧器U−U及びE−Eコアの同様の断面図が
図2A及び
図2Bに示されているが、
図2A及び
図2Bでは、磁束線131によって示される磁場は、変圧器コア巻線に関連して例証されている。理解されるように、変圧器巻線が変圧器巻線101、102の脚に沿って延在することによって、相当量の磁束結合が、磁路131に対する最小抵抗を提供する鉄/フェライトコア101、102を経由する。
【0027】
図1A、1B、2A及び2Bの既知の変圧器設計の代替として、平面変圧器が周知であり、周知の螺旋状変圧器巻線の代わりに平面PCB巻線トラックが設けられており、変圧器コアの脚の周りほぼ同心円状に、かつ平面変圧器のコアのテーブル部分に対して平行な平面内に延在する。
【0028】
図3Aに示されているように、2部型平面変圧器コアの異なる構成202が知られており、2脚型平面変圧器コア設計のU−I及びU−Uバージョン、及び3脚型平面変圧器コアのE−I及びE−Eバージョンが示される。
【0029】
図3Bを参照して、全体的な変圧器構造241が示され、また、平面変圧器コア202を通って延び、その上にプリント巻線251が設けられたPCB242を示す。
【0030】
このようなPCB変圧器の設計のさらなる詳細は、
図3Cを参照して例証され、これは、2脚型平面変圧器コア及び3脚型平面変圧器コアの典型的な平面構成を示し、2脚型平面変圧器コアは、2つの脚の各々の周りに延在する同心円状のトラックを使用し、3脚型平面変圧器コアは、3脚の中央付近にほぼ同心円状に延在するPCB巻線トラックを使用する。
【0031】
ここで
図4Aおよび
図4Bを参照すると、
図3A、3B、3Cの2脚型U−U平型PCBコアと、および
図3A、
図3B及び
図3Cの3脚型E−E平型コア構成との概略図が示されているが、
図2Aおよび
図2Bと同様に、PCBトラックから生じる磁束線231、232をさらに図示している。
【0032】
理解されるように、磁束線231のいくつかは、平面コア202によって提供される磁気媒体を通って延在し、その一方で磁束領域232は、磁気コアを通して結合せず、変圧器内の磁気結合における不利かつ特に望ましくない損失及び全体的な非効率性につながる。
【0033】
また、
図4A及び
図4Bは、PCB242上に設けられた巻線251を示す。
【0034】
しかし、ここで
図5Aを参照すると、本発明の1つの態様を具体化するPCB変圧器による2脚の平面変圧器コアの斜視図と、本発明の実施形態の平面巻線によって提供されるフットプリントの平面図とが、平面的かつ螺旋状に延在する巻線トラックを含むPCBトラックのフットプリントに対応するとして提供される。
【0035】
理解されるように、
図5Aに例証されている2脚型変圧器コア302は、チェーンリンク、またはほぼ8字状構成の全体的な外観を有し、完成したPCB変圧器の一部を形成する場合、平面で見ると、PCBトラックの外周の大部分において、変圧器巻線を形成する二重のPCBトラック351の上に重なる。すなわち、これは一般には、脚に対して、かつ2つの脚の間に横方向に延びるテーブルの部分のみであり、これらは、下にあるPCB巻線351の外寸及び構成に従わない。
【0036】
本発明の実施形態のさらなる例が、
図5Bを参照して説明され、ここでは、本発明を具現化する平面変圧器巻線302の斜視図を再度示しているが、本例では3脚型E−E平面変圧器コアを備える。理解されるように、本発明の実施形態のこの特定の例は、中心脚と、サイズ及び形状がほぼ同様である2つの外周脚とを有するコアを使用する。
【0037】
また、完成したPCB変圧器の平面図が
図5Bに示されており、PCB平面変圧器コアのテーブルの一般的な形状及び構成は、概して、変圧器巻線351を形成するPCB巻線の「レーストラック」構成を反映するか、またはそれに対応する。
【0038】
この3脚の変圧器コアのこの例では、PCBトラックは、3脚の中央付近のみに延在し、平面コアのフットプリントがPCB巻線トラックのフットプリントを反映するか、またはそれにほぼ一致する様子が明確に例証されている。
【0039】
図示されていないが、例証された実施形態のさらなる変形は、変化する厚さを有するテーブルを含むことができる。例えば、先細りの度合いは、テーブルがエッジ領域で徐々に薄くなることによって提供されることができる。これは、より少ない磁束密度が存在し、そのためしたがって必要でない場合にはフェライトの量を減らすことができるため、損失なしに達成することができる。
【0040】
特に、各端部でより広くなる構成、例えば8字状型の構成を呈するテーブルによって、テーブルの端部領域での先細りは、端部領域でのみ徐々に薄くなり、中央領域ではそうではないようにされる。そして、このような先細りは、8字状構成の端部領域の弧の約3/4の周囲に設けることができる。
【0041】
したがって、本発明によれば、巻線の実質的な部分が磁気媒体から離間し、損失が著しいという従来技術の欠点が回避され、平面変圧器の効率及び動作方法を大きく向上させる。
【0042】
したがって、本発明は、特に有利には、平面PCB巻線に関連して使用するのに適切なコアの形状を提供することに向けられており、巻線脚の高さは最小限に抑えられ、コアテーブルの形状は、PCBトラックために最適化されるが、PCB巻線の側方外周部を越えて不必要に延在することはない。これは有利には、特に効率的な方法で磁束を流すための最小抵抗磁気経路の短い距離及び経路を提供する。
【0043】
したがって、本発明によってより高い効率がもたらされる。
【0044】
当然のことながら、本発明は、平面変圧器コアの任意の適切な形状構成が、平面図で考慮された場合、任意の適切な数の脚をもって提供されることができ、それに対応して、PCB巻線トラックの適切な寸法が、任意の必要とされる数で同様に提供されて、平面変圧器巻線にほぼ整合し、それによってフットプリントにおいてほぼ対応するようにすることができる限りにおいて、前述の実施形態の詳細に制限されないことが理解されるべきである。
【0045】
当然のことながら、PCBは、任意の適切な材料から、剛性及び柔軟性のような様々な可能な特性を有するように形成されることができる。