(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903073
(24)【登録日】2021年6月24日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】係数1誘導センサデバイス
(51)【国際特許分類】
G01V 3/10 20060101AFI20210701BHJP
G01N 27/72 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
G01V3/10 A
G01N27/72
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-548724(P2018-548724)
(86)(22)【出願日】2017年3月15日
(65)【公表番号】特表2019-511717(P2019-511717A)
(43)【公表日】2019年4月25日
(86)【国際出願番号】FR2017050587
(87)【国際公開番号】WO2017158287
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2020年3月11日
(31)【優先権主張番号】1652242
(32)【優先日】2016年3月16日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505101042
【氏名又は名称】サンストロニツク
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロ,トマ
【審査官】
安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0162158(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0184301(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0376586(US,A1)
【文献】
国際公開第2015/143500(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00−15/00
G01N 27/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導タイプの、および「係数1」モードで機能する、すなわち、様々な金属に対してその検出距離Snにおいて変動を有する、近接または存在センサデバイス(1)であって、
一方では、連続および反復検出フェーズを規定する励起パルス発生器(3)によって供給または充電されるLC共振回路(2)と、他方では、特にサンプリング手段(4)およびアナログ/デジタル変換回路(6)を備えた、各検出フェーズの間、前記LC検出回路(2)によって供給される自由振動の形の応答信号の取得および処理のための手段(4、5、6、12)の動作チェーンと、最後に、処理された信号の少なくとも1つの時間ロック値を特に比較により評価し、情報あるいは論理的検出または非検出信号を提供するための評価手段(7、8)の機能組立品とを備え、前記デバイス(1)の機能を制御するためのマイクロコントローラタイプの管理および制御ユニット(9)も備える前記センサデバイス(1)において、
取得および処理手段が、一方では、サンプリングされた応答信号を、その取得の後およびそのデジタル変換の前にフィルタリングおよび/または増幅するためのアナログ手段(5;12、13)と、他方では、LC共振回路(2)とA/D変換回路(6)の上流に配置された動作チェーンの取得および処理のための手段(4、5、11、12、13)とを備えるセンサデバイス(1)の少なくとも一部分の温度に関する情報を提供する温度センサ(10’)に関連したまたは温度センサ(10’)を備えた、サンプリングされた信号をデジタル変換の後に補正することによって応答信号の温度における偏差を補償するための手段(10)とを備えることを特徴とする、センサデバイス(1)。
【請求項2】
動作チェーンが、サンプリング手段(4)に続いてサンプル・ホールド回路の形で、差動増幅器(5)の入力において提示された信号の連続成分を減算するための手段(5’)に関連した、差動増幅器の形の増幅手段(5)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項3】
動作チェーンが、サンプリング手段(4)に続いて、および変換回路(6)の上流に、ならびに増幅手段(5)の前に、アナログフィルタリング回路(12)を、直列抵抗器(12’)と並列コンデンサ(12”)とを備えたRC低域通過フィルタの形で備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のセンサデバイス。
【請求項4】
LC検出回路(2)の下流に、およびサンプリング手段(4)の上流に、前記LC回路(2)を選択的に放電するためのスイッチング手段(11)も備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のセンサデバイス。
【請求項5】
動作チェーンが、LC検出回路(2)の上流に、およびサンプリング手段(4)の上流に、アナログフィルタリング回路(13)を、直列抵抗器(13’)と並列コンデンサ(13”)とを備えたRC低域通過フィルタの形で備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のセンサデバイス。
【請求項6】
温度の偏差を補償するための手段(10)が、一方では、温度センサ(5’)によって測定された値を使用し、他方では、結果として検出信号上の温度の影響に関係した事前の実験評価となる格納された情報であって、推定補償機能または相関表からなる前記格納された情報を使用する、マイクロコントローラ(9)によって各検出フェーズにおいて実行される論理的タスクからなることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のセンサデバイス。
【請求項7】
サンプル・ホールド回路(4)を制御するためにマイクロコントローラ(9)によって使用され、「係数1」ポイントに対応する時間設定の値が、所望の検出距離(Sn)において配置されたそれぞれの鉄およびアルミニウムターゲットによって供給される応答信号をサンプリングすることによって実験的に決定される一対の[振幅の値、励起パルスの終了の後の時間遅延]からなり、前記応答信号が、使用の準備が整ったセンサデバイス(1)によって読み取られることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のセンサデバイス。
【請求項8】
選択された「係数1」ポイントが、鉄およびアルミニウムターゲットの、正弦波平滑疑似発振の形での応答信号の2つの曲線の、第3の周期の正の交番の下降フェーズにおいて、2つの曲線の交点に対応することを特徴とする、請求項7に記載のセンサデバイス。
【請求項9】
鉄ターゲットおよびアルミニウムターゲットを所望の検出距離(Sn)において連続的に配置するステップと、センサデバイス(1)のLC検出回路(2)によって供給される正弦波応答信号の複数のサンプルであって、少なくとも10のサンプルを、前記回路のパルス励起の後に、前記2つの信号の第3の周期の正の交番の下降フェーズの間に取得するステップと、「係数1」ポイントに対応する2つの応答信号の代表曲線の交点ポイントの座標(振幅、時間)を比較および可能な補間によって決定するステップとからなることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のセンサデバイスを較正するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属体の所与の場所または位置における存在または近接を検知することを可能にする誘導センサデバイスの分野に関し、詳細には、産業において、および少なくとも1つのLC共振回路によって提供される信号の分析に基づいて使用されるセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなセンサは、何年にもわたって出願人によって商品化されており、例えば文書FR2827677、EP1580889、EP1580536、EP1965177およびEP2546614に記載されている。
【0003】
より具体的には、本発明の目的は、誘導タイプおよび「係数1」タイプの近接または存在センサデバイスであり、すなわち、それは、様々な主金属材料(鋼鉄、アルミニウム、真鍮、銅、亜鉛、...)の検出距離における好ましくは非常に小さな変動をもたらすように設計され、機能する。
【0004】
従来の誘導センサの場合、公称検出距離Snは、常に鋼鉄ターゲットに定義されている(規格EN60947−5−2)。アルミニウムまたは銅などの他の金属が検出距離を決定するためには、補正係数を前記公称Sn範囲に適用する必要がある。例えば、アルミニウムの検出距離は、0.40xSn(係数0.40)またはステンレス鋼には0.70xSn(係数0.70)であることができる。鋼鉄の場合、係数は1であり、すなわち、1xSn=Snの検出距離である。
【0005】
検出の観点から、金属材料は、2つのカテゴリーに分類することができることに留意されたい:
− 検出コイルに近接しているとき、コイルの直列抵抗Rを増加させる傾向を有する(直列インダクタンスLは、ほとんど変動しない)強磁性材料(鋼鉄、鉄)。
− 検出コイルに近接しているとき、コイルの直列インダクタンスLを低減する傾向を有する(Rは、ほとんど変動しない)非強磁性材料(アルミニウム、銅、真鍮...)。
【0006】
従来技術において、センサは、本質的に同じ検出距離Snがすべての金属、または少なくともそれらの間の動作原理(すなわち、少なくとも、鋼鉄、鉄、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛および後者の可能な合金)に適用されるように設計され、機能し次第、適格な「係数1」であることができる。
【0007】
図1は、このタイプのセンサの性能/特性の定義に関与する主パラメータを概略的に示す。前記図は以下を示す:
− 公称範囲「Sn」、すなわち、センサを識別するのに使用される従来の範囲。
− 実際の範囲「Sr」、すなわち、公称供給電圧の下でおよび周囲温度において測定された範囲(Snの+/−10%)。
− 有効範囲「Su」、すなわち、温度および供給電圧の許容限度内で測定された範囲(Srの+/−10%)。
【0008】
例えば、3つまたは4つのコイルを有する送信/受信ベースのシステム(変圧器タイプ組立品)、(米国特許第7,106,052号およびEP2493076A1参照)または周波数測定に基づくシステム(EP2017652A1参照)など、「係数1」センサのすでに数多くの実施形態がある。
【0009】
しかし、複数のコイルを使用する前記システムは、複雑で、高価であり、かさばる。さらに、周波数に基づくシステムは、高価な構成部品を使用することを必要とすることがあるが、限定された性能(低いスイッチング周波数、短い検出距離)を有する。
【0010】
これらの不利点を克服するために、誘導タイプの、および「係数1」モードで機能する近接または存在センサデバイスが、提案されており、すなわち、それは、主なタイプの金属に対して検出距離Snにおいて非常に小さい変動を有し、一方では、連続および反復検出フェーズを規定する励起パルス発生器によって供給されるLC共振回路と、他方では、特にサンプリング手段およびアナログ/デジタル変換回路とを備えた、各検出フェーズの間、前記LCセンサ回路によって供給される自由振動の形で応答信号を取得し、処理するための手段の動作チェーンと、最後に、処理された信号の少なくとも1つの時間遅延値を評価し、情報または論理的検出もしくは非検出信号を供給するための手段の機能組立品とを本質的に備える。
【0011】
そのようなセンサデバイスは、例えば、文書EP1530064から少なくとも部分的に知られている。
【0012】
LC共振タイプのそのような自由発振器組立品の場合、以下がある:
− コイルが強磁性材料に近接して配置されているとき、発振の振幅における変動。
− コイルが非強磁性材料に近接して配置されているとき、発振の周波数における変動。
【0013】
「係数1」検出を実施するために、2つのタイプの材料を参照することは十分である:
− 強磁性材料を代表し、Rsの変動、したがって、LC自由発振器の場合、振幅における変動を生じる、鋼鉄。
− 非強磁性材料を代表し、Lsの変動、したがって、LC自由発振器の場合、周波数における変動を生じる、アルミニウム。
【0014】
鋼鉄(鉄)の場合、ターゲットへの接近により、疑似発振の低減が生じるが、信号の周波数における変動はほとんど生じない(
図2A)。
【0015】
アルミニウムの場合、ターゲットへの接近により、疑似発振の周波数において増加が生じるが、信号の振幅はほとんど変動しない(
図2B)。
【0016】
文書EP1530064では、「係数1」の機能の条件が確認されるサンプリングの瞬間「Trif」があることが示されており、すなわち、その場合、鋼鉄ターゲットへの接近によって生じた信号の振幅の低減は、アルミニウムターゲットへの接近によって生じた正弦波の脱位相によって生じた振幅の低減に等しい(
図3参照)。
【0017】
このEP文書において、「Trif」の瞬間は、計算によって決定されるが、前記計算を実施することを可能にする値を決定するやり方は示されていない。さらに、製作の方法も、検出器を制御する方法も、本文書では説明されない。
【0018】
さらに、文書EP1530064によって開示された回路の構築は、検出信号を生の形で、特に、フィルタリングされない形で使用し、検出信号の弱いダイナミズムおよび同時に後者の高い温度偏差がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2827677号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1580889号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1580536号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1965177号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第2546614号明細書
【特許文献6】米国特許第7,106,052号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第2493076号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第2017652号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第1530064号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第2748936号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】EN60947−5−2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、前述の文書EP1530064によって開示されたタイプの「係数1」モードでのセンサデバイスの機能を、後者の限度の少なくとも一部を克服し、デバイスに検出範囲の増加をもたらし、信頼できる、および再現可能な検出を確実にすることによって改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この点において、本発明の目的は、取得および処理手段が、一方では、サンプリングされた応答信号を、その取得の後およびそのデジタル変換の前にフィルタリングおよび/または増幅するためのアナログ手段と、他方では、LC共振回路とA/D変換回路の上流に配置された動作チェーンの取得および処理のための手段とを備えたセンサデバイスの少なくとも一部分の温度に関する情報を提供する温度センサに関連したまたは温度センサを備えた、サンプリングされた信号をデジタル変換の後に補正することによって応答信号の温度における偏差を補償するための手段とを備えることを特徴とした、上記の誘導タイプおよび「係数1」タイプの近接または存在センサデバイスである。
【0023】
本発明は、非制限的な例により与えられ、添付の概略的図面を参照して説明される、好ましい実施形態に関係する以下の記載においてより詳細に説明される
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】このタイプのセンサの性能/特性の定義に関与する主パラメータを概略的に示す図である。
【
図2A】鋼鉄(鉄)の場合、ターゲットへの接近により、疑似発振の低減が生じるが、信号の周波数における変動はほとんど生じないことを示す図である。
【
図2B】アルミニウムの場合、ターゲットへの接近により、疑似発振の周波数において増加が生じるが、信号の振幅はほとんど変動しないことを示す図である。
【
図3】鋼鉄ターゲットへの接近によって生じた信号の振幅の低減が、アルミニウムターゲットへの接近によって生じた正弦波の脱位相によって生じた振幅の低減に等しい場合を示す図である。
【
図4】本発明によるセンサデバイスの主要構成機能要素の概略図である。
【
図5A】本発明によるデバイスの一部を形成するセンサ信号の動作生成および取得チェーンの異なる実施形態の簡略化された等価電気回路図である。
【
図5B】本発明によるデバイスの一部を形成するセンサ信号の動作生成および取得チェーンの異なる実施形態の簡略化された等価電気回路図である。
【
図5C】本発明によるデバイスの一部を形成するセンサ信号の動作生成および取得チェーンの異なる実施形態の簡略化された等価電気回路図である。
【
図5D】本発明によるデバイスの一部を形成するセンサ信号の動作生成および取得チェーンの異なる実施形態の簡略化された等価電気回路図である。
【
図5E】本発明によるデバイスの一部を形成するセンサ信号の動作生成および取得チェーンの異なる実施形態の簡略化された等価電気回路図である。
【
図5F】本発明によるデバイスの一部を形成するセンサ信号の動作生成および取得チェーンの異なる実施形態の簡略化された等価電気回路図である。
【
図6】ターゲットが存在しない場合、距離Snにおいて鋼鉄ターゲット(鉄−Fe)が存在する場合、および距離Snにおいてアルミニウム(Al)ターゲットが存在する場合、インパルス励起に応答して、本発明によるセンサデバイスのLC共振回路の端子におけるセンサ信号(疑似平滑正弦波)を表す曲線[振幅/時間]のグラフ(時間遅延を有する)である。
【
図7】信号のサンプリングの瞬間をやはり示す
図6の詳細Aに対する異なるスケールのグラフである(「鉄」および「アルミニウム」の信号の曲線だけが示される)。
【
図8A】本発明によるセンサデバイスの制御および較正の試験フェーズの間、効果的に実施された有望なサンプリングの瞬間に対してサンプリングの瞬間の「係数1」(Tacq)を位置決めする異なる場合を示すグラフである。
【
図8B】本発明によるセンサデバイスの制御および較正の試験フェーズの間、効果的に実施された有望なサンプリングの瞬間に対してサンプリングの瞬間の「係数1」(Tacq)を位置決めする異なる場合を示すグラフである。
【
図8C】本発明によるセンサデバイスの制御および較正の試験フェーズの間、効果的に実施された有望なサンプリングの瞬間に対してサンプリングの瞬間の「係数1」(Tacq)を位置決めする異なる場合を示すグラフである。
【
図9】本発明によって実施された学習または較正プロセスの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図4および部分的に
図5は、誘導タイプのおよび「係数1」モードで機能する近接または存在センサデバイス1を概要的および機能的に示す。
【0026】
前記デバイス1は、一方では、連続および反復検出フェーズを規定する励起パルス発生器3によって供給または充電されるLC共振回路2と、他方では、特にサンプリング手段4およびアナログ/デジタル変換回路6を備えた、各検出フェーズの間、前記LC検出回路2によって供給される応答信号(自由振動)の取得および処理のための手段4、5、6、12の動作チェーンと、最後に、処理された信号の少なくとも1つの時間ロック値を特に比較により評価し、情報または論理的検出または非検出信号を提供するための評価手段7、8の機能組立品とを本質的に備える。
【0027】
前記デバイス1は、前記デバイス1の機能を制御するためのマイクロコントローラタイプの管理および制御ユニット9も備える。
【0028】
本発明によれば、前述の取得および処理手段は、一方では、サンプリングされた応答信号を、その取得の後およびそのデジタル変換の前にフィルタリングおよび/または増幅するためのアナログ手段5、12、13と、他方では、LC共振回路2とA/D変換回路6の上流に配置された動作チェーンの取得および処理のための手段4、5、11、12、13とを備えるセンサデバイス1の少なくとも一部分の温度に関する情報を提供する温度センサ10’に関連したまたは温度センサ10’を備えた、サンプリングされた信号をデジタル変換の後に補正することによって応答信号の温度における偏差を補償するための手段10とを備える。
【0029】
品質および精度の観点から、したがってセンサデバイス1の最大範囲の観点から性能の改善に累積的に寄与する前記特定の構成を用いて、温度の変動に対して使用可能信号およびその独立性のダイナミクスが、従来技術に対して大幅に改善される。
【0030】
有利には、決定された臨界的瞬間におけるサンプリングされた値の評価は、生成の間の較正フェーズの間に決定された閾値との比較によって実施される。
【0031】
好ましくは、および
図5A、5C、5Eおよび5Fに示すように、動作チェーンは、サンプリング手段4に続いて、例えば
サンプル・ホールド部の形で、差動増幅器5の入力において提供された信号の連続成分を減算するための手段5’に関連した、差動増幅器の形の増幅手段を備える。
【0032】
さらに、信号のダイナミクスを増加させるために構造的デバイスを設けることが可能である:
− サンプリング時間を低減して、サンプリングされたものによりよくポイントを定め、アナログ−デジタル変換の前にアナログ処理(増幅、フィルタリング)を実施することを可能にする、マイクロコントローラ9の外部に
サンプル・ホールド部4を使用すること。
− A/D変換器6の分解能を増加させること(例えば12ビットに)であって、前記回路が、LC回路2の出力信号の直接変換ではなく、増幅器5から信号のアナログ−デジタル変換を実施する、増加させること。
【0033】
寄生信号または高周波数干渉を回避するために、
図5Bから5Dおよび5Fに示すように、動作チェーンが、サンプリング手段4に続いて、および変換回路6の上流に、ならびに潜在的に、可能な増幅手段5の前に、アナログフィルタリング回路12を、好ましくは直列抵抗器12’と並列コンデンサ12”とを備えたRC低域通過フィルタの形で備えることが可能である。
【0034】
検出サイクルまたはフェーズの再現性および周波数を容易にし、増加させるために、
図5に象徴的に示すように、検出センサ2LCの下流に、およびサンプリング手段4の上流に、前記LC回路2を選択的に放電するためのスイッチング手段11を設けることが可能である。
【0035】
ブロッキングサンプラ4は、例えば、メモリ容量4”に関連したスイッチ4’を備えることができる(
図5参照)。
【0036】
第1の前述のフィルタリング回路12の代替または追加のやり方において、場合により増幅手段5の存在に関連して、動作チェーンは、LC検出回路2の下流に、およびサンプリング手段4の上流に、アナログフィルタリング回路13を、好ましくは直列抵抗器13’と並列コンデンサ13”とを備えたRC低域通過フィルタの形で、やはり備えることができる(
図5Dから5F)。
【0037】
図5Aから5Fは、本発明によるデバイス1の動作チェーンのための異なる可能な構造変形体を、異なるフィルタリングおよび増幅手段5、12および13の組合せおよび存在または非存在に応じて示す。
【0038】
本発明の実際の実施に関して、以下の検討事項を有利には考慮に入れることができる。
【0039】
場合によりサンプラ4の後に配置されたフィルタ12は、アナログ−デジタル変換の前に信号を安定化させることを可能にする(サンプラによって誘導された干渉の抑制、発振LC回路によって誘導されたクロストークの抑制、無線周波数干渉の抑制、...)。そのカットオフ周波数は低い(例えば16kHz程度であるが、それはセンサデバイス1の特徴の、特に、そのスイッチング周波数に応じて変動することがある)。
図5Dの組立品の場合、容量12”は、変換の間にアナログ−デジタル変換器6の内部容量の方へのこの容量12”の電荷移動によって誘導された弱化を制限するために十分に高くなければならない(例えば最小10nF)。
【0040】
場合によりサンプラ4の前に配置されたフィルタ13は、主に、LC回路のインダクタンスによってとらえられた無線周波数干渉(アンテナ効果)を低減することを可能にする。このフィルタ13のカットオフ周波数は、有効な信号を変えないようにLC回路2の発振周波数よりも高くなければならない。カットオフ周波数は、無線周波数干渉の実際のタイプに応じて、典型的には数百kHzから数十または数百MHzまでに及ぶ。容量13”は、低い値(数十または数百pF)でなければならず、抵抗13’は、低いインダクタンスまたはフェライトで置き換えることができる。
【0041】
したがって、フィルタ12またはフィルタ13によって、またはこれらの2つのフィルタ12および13の同時使用によっても実施される「低域通過」フィルタリングは、一方では、信号を安定化させ(サンプリングの前および/または後)、他方では、センサデバイス1、特に、変換器6の前に配置されたその動作チェーンの一部に、産業環境(例えば、特にはんだ付けによる組立ラインなど)に存在する高周波数電磁干渉に対する耐性を与えることを可能にする。
【0042】
もちろん、抵抗器12’および13’をインダクタンスで置き換えることができる。
【0043】
増幅手段5の利得に関して、後者は、有効な信号のダイナミクスを本質的に改善するために十分に高くあるべきである。増幅器5の飽和を回避するために、特に温度の変動の間の信号およびその成分の連続偏差の場合に、あまりそれを上げ過ぎてはならない。好ましくはほぼ6に固定された5および10の利得は、本発明人によって実施された試行の間、満足すべき結果をもたらしている。
【0044】
本発明の有利な特徴によれば、温度の偏差を補償するための手段10は、各検出フェーズにおいてマイクロコントローラ9によって実行される論理的タスクからなり、一方では温度センサ10’によって測定される値を使用し、他方では結果として検出信号に対する温度の影響に関係する事前の実験評価となる格納された情報を使用し、前記格納された情報は、例えば、推定補償機能または相関表からなる。
【0045】
したがって、規範的制約に配慮するための十分に正確で再現可能な補償を実現するために(実際の範囲から+/−10%の温度の偏差を許容するEN60947−5−2参照)、温度の偏差を補償するための本発明による解決策は、センサ10’を介しての上昇された温度からの信号のデジタル補正に基づく。
【0046】
この温度の補償を実現するために、信号の偏差を温度に応じてあらかじめ留意しておく必要がある。前記偏差の測定は、インダクタンスセンサ(LC回路2)ならびに連続的な取得チェーン全体の両方の偏差を補償するために、A/D変換器6の出力値を用いて実施される。
【0047】
複数の同一のセンサデバイス1上の信号の偏差のデジタル読取りをあらかじめ実施したならば(明確化フェーズにおいて)、少なくとも一連のそのようなデバイス1の平均および再現可能な偏差を決定することが可能である。マイクロコントローラ9における直接符号化された機能を用いて偏差を補償することが可能である。補償は、相関表(「ルックアップテーブル」と呼ばれる)を用いて実施することもできる。
【0048】
複雑な計算を回避することを可能にし、ならびにこの趣旨で資源を使用しなければならない、本発明の別の特徴によれば、有利には、マイクロコントローラ9によって
サンプル・ホールド部4を制御するために使用され、「係数1」ポイントに対応する時間設定の値(パルス励起の終了の後の時間遅延の値)が、所望の検出距離Snにおいて配置されたそれぞれの鉄およびアルミニウムターゲットによって供給される応答信号をサンプリングすることによって実験的に決定される一対の[振幅の値、励起インパルスの終了の後の時間遅延]からなることが確実にされ、前記応答信号は、使用の準備が整った検出デバイス1によって読み取られる。
【0049】
実際には、および
図6に示すように、選択された「係数1」ポイントは、好ましくは、それらの第3の周期の正の交番の下降フェーズにおける平滑正弦波疑似発振の形の鉄およびアルミニウムターゲットの応答信号の2つの曲線の交点に対応する。しかし、2つの曲線の間の任意の他の交点ポイントは、応答信号の負の交番の間のものを含めて、使用することができる。
【0050】
したがって、本発明の1つの特徴によれば、以下を決定するために制御フェーズにある:
− 「係数1」検出を可能にする最適サンプリングポイント。
− 必要な範囲Snに関連したデバイス1のスイッチングポイント。
【0051】
実際には、選択された解決策は、連続的なサンプリングによる「係数1」ポイントの探索に基づく。この方法は、デバイス1が完全に組み立てられ、樹脂で処理されると、最適ポイントを見つけることを可能にするが、その一方で、外部のおよび高価なデバイス(計算機、...)の使用を不要にする。この技法は、範囲の増加および/または温度範囲の拡大の場合に特に関心がある、公称範囲Snによりよく近づくことをやはり可能にする。
【0052】
所望の検出距離Snに配置された2つの基準材料(鉄およびアルミニウム)のそれぞれに対して、マイクロコントローラ9は、T0からT0+N.dtのサンプリングの瞬間「Tacq」の変形で(Tacq=T0+Nxdtであり、この場合dtが時間分解能に対応し、Nが0から9の変形に対応する)、「係数1」ポイントを中心にしてN個の測定を実施する。異なるサンプルに対応する振幅は、テーブルにセーブされる(「ValueFe」および「ValueAl」)。
【0053】
「係数1」ポイント(Fe/Al曲線の交点)が平滑発振信号の周期のそれぞれにわたって存在するが、第3の周期の下降フェーズの開始におけるサンプリング(
図6参照)は、安定性の観点から良好な妥協案であるように見える。
【0054】
選択されたサンプリングポイントの数Nは、すべての場合において「係数1ポイント」を見つけることができるためにはかなり高くなければならない(少なくとも10):ある部分と別の部分の振幅、周波数または基準時間の変動をもたらす構成部品の初期許容差を考慮に入れる必要がある。
【0055】
図7の2つの曲線をサンプリングした結果は、以下の表に2つの部分で表される:
【0057】
次いで、「ValueFe」および「ValueAl」の値は、互いに比較され、それにより、ValueFe[N]とValueAl[N]の間の距離の絶対値を決定することが可能になる。最短距離は、2つの応答曲線FeおよびAlの交点ポイントである「係数1」ポイントの最も近接したサンプリングポイントに対応する。
【0058】
最短距離Fe/Alに対応する指数Mは、以下を決定することを可能にする:
− 「係数1」の検出に最適なサンプリングの瞬間Tacq=T0+Mxdt。
− ValueFe[M]とValueAl[M]との間の平均に対応する選択された検出閾値。
【0059】
サンプリングの瞬間Tacqは、Fe(鉄)とAl(アルミニウム)との応答曲線の間の交点に理論的に対応するが、実際には、距離を2つの曲線のサンプリングポイントと実際の交点との間で観察することができる(
図8Aから8C参照)。開発フェーズにおいて、この距離にもかかわらず、センサデバイス1は、常に「係数1」と見なすことができることを確認する必要があり、すなわち、このギャップに起因する材料に応じて実際の範囲Srの変動は、規格EN60947−5−2によって許容されるSnの+/−10%以内にとどまる。
【0060】
製作フェーズにおいて、サンプリングポイントTacqの制御および検出距離Snの制御は、2つの連続的なステップで実施される(2つのステップは切り替えることができる):
1.鋼鉄(鉄)ターゲットが、センサデバイス1の前に距離Snにおいて配置され、制御装置が、「ValueFe」テーブルを完成させることを可能にする学習シーケンスを開始させる。センサは、出力を用いて、この手順の終了を信号で伝える。
2.アルミニウムターゲットが、センサデバイス1の前に距離Snにおいて配置され、制御装置が、「ValueAl」テーブルを完成させることを可能にする学習シーケンスを開始させる。
【0061】
次いで、2つのテーブルを用いて、マイクロコントローラ9は、最適サンプリングポイントおよび検出閾値を決定することができる。次いで、これらの2つのパラメータは、メモリにセーブされ、センサが開始するたびに呼び出される。センサデバイス1は、その出力を用いてこの手順の終了を信号で伝達する。
【0062】
学習コマンドは、出願人の名称の文書EP2748936に開示されているように、供給線およびセンサデバイスの出力を介して通信する設定インターフェースを介して送ることができる。
【0063】
「係数1」ポイントの最大に近づくための別の重要なポイントは、サンプリングに対する時間分解能の増加を、したがってマイクロコントローラ9に対する増加したおよび安定したクロックサイクルを、好ましくは、少なくとも32MHz程度で、および温度の小さな偏差により、もたらすことである。したがって、水晶振動子またはMEMS発振器の形の時間基準が好ましい。
【0064】
本発明の主題は、鉄ターゲットおよびアルミニウムターゲットを所望の検出距離Snにおいて連続的に配置するステップと、センサデバイス1のLC検出回路2によって提供される正弦波応答信号の複数のサンプル、好ましくは、少なくとも10のサンプルを、前記回路のパルス励起の後、好ましくは前記2つの信号の第3の周期の第1の交番の下降フェーズの間、取得するステップと、比較および可能な補間により、「係数1」ポイントに対応する2つの応答信号の代表曲線の交点ポイントの座標(振幅、時間)を決定するステップとからなることを特徴とする、上記のセンサデバイス1を較正するための方法でもある。
【0065】
前述の方法の異なるステップの1つの可能な実際の実施形態が
図9に示される。
【0066】
もちろん、本発明は、添付の図面に表される記載された実施形態に限定されない。変更は、そのようなものとして本発明の保護の分野から逸脱することなく、特に、様々な要素の組成または代替の同等技法の観点から、依然として可能である。