(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903076
(24)【登録日】2021年6月24日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】レーダアンテナ装置及びレーダアンテナ装置をシールドする方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20210701BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
G01S7/03 238
H01Q21/06
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-552248(P2018-552248)
(86)(22)【出願日】2016年4月7日
(65)【公表番号】特表2019-516957(P2019-516957A)
(43)【公表日】2019年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2016057579
(87)【国際公開番号】WO2017174135
(87)【国際公開日】20171012
【審査請求日】2019年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】510103130
【氏名又は名称】ティーエムティー タッピング−メジャリング−テクノロジー ゲゼルシャフトミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TMT Tapping−Measuring−Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストュンペール ジャン−フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトール ケヴィン
【審査官】
安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−172184(JP,A)
【文献】
特開2014−215166(JP,A)
【文献】
特開2009−233481(JP,A)
【文献】
特開昭59−207701(JP,A)
【文献】
特開2011−021910(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101492750(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0272865(US,A1)
【文献】
特開2012−237560(JP,A)
【文献】
特開2015−219129(JP,A)
【文献】
Wei, Jidong et al.,3-Dimension Burden Surface Imaging System with T-shaped MIMO Radar in the Blast Furnace,ISIJ Journal,日本,一般財団法人 日本鉄鋼協会,2015年 3月15日,Vol.55(2015),No.3,p.592-599
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00− 7/42,
G01S 13/00−13/95,
H01Q 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(17)内に収容され、炉室内に形成される炉内雰囲気から隔てられるための保護板(20)が設けられるアンテナアレイ(19)、を有するレーダアンテナ装置(16)であって、前記保護板(20)は前記ハウジング上に配置されており、
孔(30)を含みレーダ透過性を有する柔軟な織物層(21)が、前記炉室から前記織物層(21)によって隔てられる空間(23)が形成されるように、シールドとして前記保護板(20)の上流に離れて配置され、
流体の流れ(26)を前記織物層(21)に作用させるために、流体路(24)が前記空間(23)に開口し、
前記流体路(24)には、少なくとも部分的に加熱装置が設けられる
ことを特徴とするレーダアンテナ装置。
【請求項2】
前記織物層(21)は、弾性を有するように形成される
ことを特徴とする請求項1のレーダアンテナ装置。
【請求項3】
前記織物層(21)は、織物構造(33)を有する
ことを特徴とする請求項1又は2のレーダアンテナ装置。
【請求項4】
前記織物構造(33)は、少なくとも部分的に弾性のある縦糸(27)又は横糸(28)を有する
ことを特徴とする請求項3のレーダアンテナ装置。
【請求項5】
前記縦糸(27)又は横糸(28)は、弾性のある被覆(29)を有する
ことを特徴とする請求項4のレーダアンテナ装置。
【請求項6】
前記縦糸(27)又は横糸(28)には、弾性のある物質が含浸されている
ことを特徴とする請求項4のレーダアンテナ装置。
【請求項7】
前記流体路(24)は、少なくとも部分的に、前記ハウジング(17)のハウジング壁(22)内に形成される
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項のレーダアンテナ装置。
【請求項8】
レーダ放射を放出し、ハウジング(17)内に配置されたアンテナアレイ(19)を含む、レーダアンテナ装置(16)をシールドする方法であって、前記アンテナアレイ(19)には、炉室内に形成される炉内雰囲気から隔てられるための保護板(20)が設けられ、前記保護板は前記ハウジング上に配置され、
孔(30)を含みレーダ透過性を有する柔軟な織物層(21)が、炉内雰囲気からシールドするための保護板(20)の上流に、
空間(23)が、前記炉室から隔てられており前記保護板(20)と前記織物層(21)との間に形成されるように、かつ、
前記織物層の前記孔(30)に浸透する流体の流れ(26)が、前記織物層(21)に振動を発生させるために、前記空間(23)に通じる流体路(24)によって前記織物層(21)に作用するように、
配置され、
前記流体の流れ(26)は、加熱され、窒素流として形成される
ことを特徴とするレーダアンテナ装置をシールドする方法。
【請求項9】
時間依存の作用プロファイルを形成する前記流れが、交番圧力を用いて作用する
ことを特徴とする請求項8の方法。
【請求項10】
前記織物層の振動を生成するために、前記織物層(21)は、前記織物層(21)の設計及び/又は前記織物層(21)の弾性の範囲内で、前記作用プロファイルと調整される
ことを特徴とする請求項9の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内に収容され、炉室内に形成される炉内雰囲気から隔てられるためのレーダ透過性を有する保護板が設けられるアンテナアレイ、を有するレーダアンテナ装置に関し、保護板はハウジング上に配置される。更に、本発明は、レーダ放射を放出し、ハウジング内に配置されたアンテナアレイを含む、レーダアンテナ装置をシールドする方法に関し、アンテナアレイには、炉室内に形成される炉内雰囲気から隔てられるための保護板が設けられ、保護板はハウジング上に配置される。
【背景技術】
【0002】
前述のタイプのレーダアンテナ装置は、炉室内に配置され、高炉内の装入物表面の形状を求めるために使用される。この目的のため、アンテナアレイのアンテナによって放出されるレーダ放射が、装入物表面に加えられる。アンテナアレイを炉内雰囲気から隔てるレーダ透過性を有する保護板が、アンテナアレイを炉内雰囲気に関して保護するために設けられ、その結果、塵埃、特に炉の雰囲気内に含まれる塵埃が、アンテナアレイに乗らない。炉内雰囲気に含まれる水分に関しては、レーダアンテナ装置の通常の動作に必要な保護板のレーダ透過性を低減させる付着物が保護板の表面上に形成され、その結果、装入物表面の形状を確実に求めることができるために、保護板を清掃することが定期的に必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
WO 2010/144936 A1から、アンテナアレイの上流に配置された保護板を清掃するすすぎノズルが設けられたレーダアンテナ装置が知られており、すすぎノズルは、保護板の表面に直接向けられ、すすぎ液がそのすすぎノズルによって保護板表面に絶えず吹きつけられる。保護板表面を清掃することは、WO 2010/144936 A1から知られているように防護板を洗うことによって繰り返し可能であるが、レーダアンテナ装置の長期にわたる動作において、絶えず保護板の表面を洗っているにもかかわらず保護板が混濁するということが確認され得る。その結果、保護板を最終的には交換する必要がある。
【0004】
本発明の目的は、アンテナアレイを炉内雰囲気から隔てる保護板の耐用期間をより長くすることを可能にする、レーダアンテナ装置又はレーダアンテナ装置をシールドする方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため、本発明によるレーダアンテナ装置は、請求項1の特徴を有する。
【0006】
本発明によると、孔を含みレーダ透過性を有する柔軟な織物層が、前記炉室から前記織物層によって隔てられる空間が形成されるように、シールドとして前記保護板の上流に離れて配置され、流体の流れを前記織物層に作用させるために、流体路が前記空間に開口する。
【0007】
本発明によるレーダアンテナ装置は、シールドとして保護板の上流に配置される織物層のため、炉内雰囲気内に含まれる塵埃が保護板に直接作用しないようにする。その代わりに、炉内雰囲気からの塵埃は、織物層の表面に沈降する。加圧流体、特に窒素は、窒素が織物層の孔を通って炉室内に漏れ、よって、織物層によって形成される流れ抵抗によって織物層を振動させるように、前記空間に開口する流体路を経由して、前記空間に作用し得る。前記空間は織物層と保護板との間に配置される。織物層に沈降した塵埃は、織物層によって引き起こされる振動によって、及び織物層内に形成される孔を通って流れる流れによって、織物層から振り落とされ、又は吹き飛ばされる。
【0008】
すすぎ液が保護板に直接作用する既知の装置とは対照的に、本発明によるレーダアンテナ装置は、一方では、織物層が上流に配置されているため、全く、又はオプションとして実質的により小さな程度にしか、塵埃を保護板に沈降させないこと、他方では、代わりに織物層に置かれた塵埃が織物層から除去されることを可能にする。いずれにしても、それによって保護板上の塵埃の量が少なくともはっきりと減少することにより、保護板の総合的な耐用期間をより長くすることが可能になる。
【0009】
前記織物層は、好ましくは弾性を有するように形成され、その結果、それによって織物層の振動の発生が支持される。しかし、織物層の弾性のある実施形態は、織物層の振動の生成の要件ではない。振動の発生は、流体の流れによって与えられる圧力の結果として織物層がばたつくことができるように、柔軟な織物層を、予め張力を掛けずに、特にたるませてハウジング上に配置することによって、促進さえされ得る。
【0010】
もし前記織物層が、例えば布として実現される、織物構造を有するなら、特に有利であり、その結果、規定された一定の孔の直径を、織物の設計によって織物層内に形成することが可能である。
【0011】
もし前記織物が、少なくとも部分的に弾性のある縦糸又は横糸を有するなら、織物構造の所望の弾性を規定された方法で調整することもできる。
【0012】
この目的のため、前記縦糸又は横糸には、特に、所望の弾性を可能にする材料から作られた、又は所望の弾性を可能にする材料厚を有する、弾性のある被覆が設けられ得る。
【0013】
代替として、前記縦糸又は横糸には、弾性のある物質が含浸され得る。
【0014】
もし前記流体路が、少なくとも部分的に、前記ハウジングのハウジング壁内に形成されるなら、また有利であり、その結果、流体の流れを前記空間に導くことが、更なる設備なしに可能である。
【0015】
もし前記流体路に、少なくとも部分的に加熱装置が設けられるなら、炉内雰囲気に含まれる水分が織物層上で凝結するのを防ぐことが可能であり、したがって生じ得る湿った塵埃層が織物層上に形成されるのを防ぐ。
【0016】
本発明による方法は、請求項
8の特徴を有する。
【0017】
本発明によると、孔を含みレーダ透過性を有する柔軟な織物層が、シールドとして保護板の上流に、空間が前記炉室から隔てられて前記保護板と前記織物層との間に形成されるように、かつ、前記織物層に振動を発生させるために、前記織物層の前記孔に浸透する流体の流れが、前記空間に通じる流体路によって前記織物層に作用するように、配置される。
【0018】
好ましくは窒素流が前記織物層に作用する。
【0019】
より好ましくは、前記流体の流れは加熱される。
【0020】
もし時間依存の作用プロファイルを形成する前記流れが、交番圧力を用いて作用するなら、前記作用プロファイル及び前記織物層の振動の周波数は、前記織物層の振動の特に大きな共振振幅が引き起こされるように、調整され得る。
【0021】
もし前記織物層が、前記織物層の設計(Aufbau)及び/又は前記織物層の弾性の範囲内で前記作用プロファイルと調整されるなら、共振振動を生成するための、前記作用プロファイルと前記織物層の振動挙動との間の相互の特に良好な調整が可能となる。
【0022】
以下に、前記レーダアンテナ装置の好ましい実施形態が、図面を利用してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、高炉の炉室内に配置されたレーダ装置を示す。
【
図2】
図2は、保護板の上流に配置された織物層を有する、
図1に示されたレーダ装置の拡大断面図を示す。
【
図3】
図3は、流れが作用していない、
図2のビューXによる織物層の部分拡大図を示す。
【
図4】
図4は、流れが作用している、
図3に図示された織物層を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
炉開口部13であって、それを経由して
図1にはより詳細な点が図示されていないコークス及び装入物の層で高炉が充填される炉開口部13、を有する高炉の炉上部10を、
図1は示す。炉開口部13は、ここにはより詳細な点が図示されていない蓋によって閉鎖可能である。装入物表面14が炉底部12内に形成され、炉開口部13に向かって上昇する高温ガスを含む雰囲気が、装入物表面14の上方に形成される。炉の充填のため、雰囲気には塵埃が充満している。
【0025】
図1に図示された装入物表面14の測定(Erfassung)のために、レーダアンテナ装置16が炉上部10の炉壁15内に配置され、レーダアンテナ装置16は、炉壁15を貫通するハウジングレセプタクル18内に配置されるハウジング17内に配置されるアンテナアレイ(Antennenanordnung)19を有する。炉内雰囲気に向かって、アンテナアレイ19はレーダ透過性を有する保護板20で蓋をされ、保護板20はこの例ではハウジング前面壁を形成する。
図2に示されているように、織物層(Materiallage)21と保護板20との間に全方向にわたって限定された空間23が形成されるように、炉内雰囲気に向かって距離を離して配置され、柔軟な織物層21として実現され、かつ、その周囲がハウジング壁22に接続される、シールド機構を、ハウジング17は含む。
【0026】
柔軟な織物層21は、手近な例では布として実現され、織物層21は、フランジリング31によってハウジング17のフロントエッジ32に取り付けられる。
【0027】
図2が更に示すように、ハウジング壁22は流体路24を含み、流体路24は、手近な例では、ハウジング壁22内でハウジング17の長手方向に伸び、出口開口25によって空間23に通じる、穴として実現される。流体路24は、流体の流れ26を発生させることを可能にし、流体の流れ26は、手近な例では高炉10の外から空間23への窒素流として実現される。
【0028】
手近な例であってより詳細には図示されていない流体供給路は、好ましくは高炉の外の領域に設けられ、この流体供給路は、規定された流体の流れ26、並びに、流体の流れ26の圧力及び体積流量の設定を、好ましくは予め決められ得る流体の流れ26の規定された時間依存の圧力勾配とともに可能にする、バルブ装置を有する。時間に依存して変化する圧力を織物層21に作用させること、例えば規定のレベルで1秒間隔で圧力インパルスを作用させることが、バルブ装置によって行われ得る。織物層21の孔30(
図3及び4)の流れ断面が脈動して広がることが、圧力インパルスに応じて生じ、それによって織物層21が振動を始める。振動は、特に織物層21の柔軟な構成における織物層21、つまり、たるんでいる織物層21のばたつきを有し、ハウジング17において重畳され得る。織物層21を、予め張力を与えてハウジング17上に配置することも可能であり、この織物層21は振動振幅を実現するのに十分な弾性を有する。
【0029】
図3及び4は、織物層21の拡大図を示し、これは手近な例では、互いに交差する縦糸27と横糸28とを有する織物構造33を有し、この横糸28は、孔30の境を成し、したがって孔30の流れ断面を規定する。手近な例では、縦糸27は横糸28とともに、弾性のある被覆を有する。縦糸27及び横糸28は、例えば、ガラス繊維から作られ得る。ガラス繊維は、被覆を形成するテフロンによって覆われる。
【0030】
図3は、圧力が作用していない織物層21を示す。
図4は、圧力の作用のため広がった孔30を有する織物層21を示す。これと比較して、もし圧力が低下すると、孔30はそれに対応してより小さくなり、その結果、弾性のある織物層21の場合には、そのような織物層21が振動振幅を示すだけではなく、織物層の孔30も振動又は脈動する。
【0031】
炉の雰囲気に面する織物層21の前面29(
図2)に堆積した塵埃を含む層は、したがって、織物層21の振動によって振り落とされる。それと同時に、織物層21は、被膜層が保護板20上に生じるのを防止する。