特許第6903130号(P6903130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903130
(24)【登録日】2021年6月24日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】犠牲的マイクロスフェア
(51)【国際特許分類】
   C08K 7/22 20060101AFI20210701BHJP
   B01J 13/22 20060101ALI20210701BHJP
   C09C 3/10 20060101ALI20210701BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   C08K7/22
   B01J13/22
   C09C3/10
   C08L101/00
【請求項の数】16
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-520442(P2019-520442)
(86)(22)【出願日】2017年10月19日
(65)【公表番号】特表2019-533049(P2019-533049A)
(43)【公表日】2019年11月14日
(86)【国際出願番号】US2017057381
(87)【国際公開番号】WO2018075765
(87)【国際公開日】20180426
【審査請求日】2019年9月26日
(31)【優先権主張番号】62/409,997
(32)【優先日】2016年10月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519130410
【氏名又は名称】インターフェイシャル・コンサルタンツ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】サーノハウス,ジェフリー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ハンパル,ポール・イー
(72)【発明者】
【氏名】オクウィグ,ネイサン
【審査官】 幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−295031(JP,A)
【文献】 特開平04−295030(JP,A)
【文献】 特表2016−503100(JP,A)
【文献】 特表2014−513185(JP,A)
【文献】 特開平06−254380(JP,A)
【文献】 特開平05−139783(JP,A)
【文献】 特開平03−079644(JP,A)
【文献】 特開昭60−019033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/00
C08K 7/22
C09C 3/00
B01J 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部表面を有する中空マイクロスフェアと、弾性の高分子コーティングと、を含んでなり、弾性の高分子コーティングが中空マイクロスフェアの少なくとも一部の外部表面上にあり、高分子コーティングがフィラーを含有する、犠牲的マイクロスフェア。
【請求項2】
前記高分子コーティングが、熱可塑性ポリマーである、請求項1に記載の犠牲的マイクロスフェア。
【請求項3】
前記高分子コーティングが、架橋された熱可塑性ポリマーである、請求項1に記載の犠牲的マイクロスフェア。
【請求項4】
前記高分子コーティングが、エラストマーである、請求項1に記載の犠牲的マイクロスフェア。
【請求項5】
前記高分子コーティングが、熱硬化性ポリマーである、請求項1に記載の犠牲的マイクロスフェア。
【請求項6】
前記フィラーが、熱伝導性フィラーを包含する、請求項1〜5のいずれかに記載の犠牲的マイクロスフェア。
【請求項7】
前記フィラーが、導電性フィラーを包含する、請求項1〜6のいずれかに記載の犠牲的マイクロスフェア。
【請求項8】
軽量物品を生産するための方法であって、
(a)外部表面を有する中空マイクロスフェアを提供すること、
(b)該中空マイクロスフェアの該外部表面の少なくとも一部を、重合性または高分子コーティングでコーティングすること、
(c)該外部表面上の該重合性または高分子コーティングを凝固または硬化させて、弾性の高分子コーティングを形成すること、
を含み、高分子コーティングがフィラーを含有する、上記方法。
【請求項9】
前記外部表面上の前記重合性または高分子コーティングを化学線によって凝固または硬化させる、請求項に記載の方法。
【請求項10】
犠牲的マイクロスフェアを生産するための方法であって、
(a)外部表面を有する中空マイクロスフェアを表面処理すること、
(b)該中空マイクロスフェア上に高分子コーティングを適用して、該中空マイクロスフェア上に弾性のコーティングを形成すること、および、任意選択で、
(c)その後、該高分子コーティングを硬化または架橋すること、
を含み、高分子コーティングがフィラーを含有する、上記方法。
【請求項11】
複数の中空マイクロスフェアが分散されたポリマーマトリックスを含む組成物であって、
該複数の中空マイクロスフェアが弾性の高分子コーティングを有しており、高分子コーティングがフィラーを含有する、上記組成物。
【請求項12】
ポリマー性複合材料を含む物品であって、該ポリマー性複合材料の少なくとも一部中に、請求項1〜7のいずれかに記載の犠牲的マイクロスフェアが分散されている、上記物品。
【請求項13】
溶融加工デバイスに、弾性の高分子コーティングを有する複数の犠牲的中空マイクロスフェアを提供すること、
該溶融加工デバイスにポリマー性材料を提供すること、および
該複数の犠牲的中空マイクロスフェアと該ポリマー性材料とを該溶融加工デバイスで溶融加工して、組成物を生産すること、
を含む、犠牲的中空マイクロスフェアを溶融加工する方法であって、
弾性の高分子コーティングによって、犠牲的中空マイクロスフェアの少なくとも一部が、該組成物中で破砕されることなく溶融加工に耐えられるようにされており、高分子コーティングがフィラーを含有する、上記方法。
【請求項14】
前記弾性の高分子コーティングによって、複数の犠牲的前記中空マイクロスフェアの少なくとも90重量パーセントが、前記組成物中で破砕されることなく溶融加工に耐えられるようになる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記弾性の高分子コーティングによって、複数の犠牲的前記マイクロスフェアの少なくとも95重量パーセントが、前記組成物中で破砕されることなく溶融加工に耐えられるようになる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記弾性の高分子コーティングによって、複数の犠牲的前記マイクロスフェアの少なくとも98重量パーセントが、前記組成物中で破砕されることなく溶融加工に耐えられるようになる、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
[0001]本出願は、参照により本明細書に組み入れられる2016年10月19日付けで出願された米国仮出願第62/409,997号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
[0002]本開示は、犠牲的マイクロスフェア(sacrificial microsphere)の生産および使用のための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]世界的に、軽量のポリマー性複合材料を生産する費用効率が高い方法を発見することが求められている。このような複合材料の作製には、発泡またはフィラーの使用などの多くの戦略が採用されてきた。しかしながら、発泡は、広く普及した使用にもかかわらず、以下のような数々の制限を有する可能性がある:(1)発泡と一部の溶融加工技術(例えば、射出成形、回転成形、および熱成形)とを併用することがしばしば難しいことがあること;(2)発泡に適応する高分子樹脂が特定のものに限られていること;および(3)発泡を用いて高充填のポリマー性複合材料を生産することが難しい場合があること。
【0004】
[0004]ポリマーマトリックスにフィラーを添加することによって軽量のポリマー性複合材料を生産することに、相当な努力が集中してきた。しかしながらこのアプローチも同様に、以下のような制限に直面する可能性がある:(1)多くの軽量フィラーは、溶融加工に耐えられず、破砕される可能性があるため、得られた組成物、複合材料、または物品中の周囲の高分子マトリックスがその弾力を失うことになること;(2)極めて高い破砕強度を有する軽量フィラーは、ほとんどの適用において法外な費用がかかる可能性があること;および(3)一部の軽量フィラーは、取り扱いとポリマーマトリックスへの分散が難しい場合があること。
【発明の概要】
【0005】
[0005]犠牲的マイクロスフェアは、軽量のポリマー性複合材料を生産するための費用効率が高い方法を提供することができる。ポリマー性材料を中空マイクロスフェアの表面の一部に堆積またはコーティングさせて、犠牲的マイクロスフェアを生産することができる。中空マイクロスフェアとポリマー性材料との反応または表面親和性は、様々な方法で、例えば、中空マイクロスフェアの表面の一部を官能化すること、中空マイクロスフェアの表面の一部を、液状の単量体と重合開始剤、縮合重合、および架橋で処理することなどによって促進することができる。犠牲的マイクロスフェアを使用して作製された複合材料は、対応する未処理のポリマーマトリックスより実質的に低い比重を有し得る。中空マイクロスフェアを破砕する条件(例えば、一部の溶融加工条件または高い衝撃力)で、高分子コーティングは、その元の形状を保持するかまたは実質的に近い形状に戻ることが可能な弾性を保つ。
【0006】
[0006]したがって、一実施態様において、犠牲的マイクロスフェアは、中空マイクロスフェアの表面の一部に弾性の高分子コーティングを有する中空マイクロスフェアを包含する。別の実施態様において、組成物は、複数の中空マイクロスフェアがポリマーマトリックスに分散されたポリマーマトリックスを包含し、ここで中空マイクロスフェアは、弾性の高分子コーティングを有する。さらに別の実施態様において、物品は、犠牲的マイクロスフェアがポリマー性複合材料の少なくとも一部中に分散されたポリマー性組成物を包含する。
【0007】
[0007]別の実施態様において、犠牲的マイクロスフェアを生産するための方法は、複数の中空マイクロスフェアを表面処理すること、複数の中空マイクロスフェア上に高分子コーティングを適用して、その上に弾性のコーティングを形成すること、および任意選択で、その後、高分子コーティングを硬化または架橋することを包含する。さらに別の実施態様において、軽量物品を生産するための方法は、複数の中空マイクロスフェアを提供すること、複数の中空マイクロスフェアの外部表面の少なくとも一部を高分子コーティングでコーティングすること、および複数の中空マイクロスフェア上の高分子コーティングを、熱放射または化学線を使用して硬化することを包含する。
【0008】
[0008]別の実施態様において、犠牲的中空マイクロスフェアを溶融加工するための方法は、溶融加工デバイスに、弾性の高分子コーティングを有する複数の犠牲的中空マイクロスフェアを提供すること、溶融加工デバイスに、ポリマー性材料を提供すること、および複数の犠牲的中空マイクロスフェアとポリマー性材料とを該溶融加工デバイスで溶融加工して、組成物、複合材料、または物品を生産することを包含する。弾性の高分子コーティングは、犠牲的中空マイクロスフェアの少なくとも一部を、組成物、複合材料、または物品中で破砕されることなく溶融加工に耐えられるようにすることができる。
【0009】
[0009]上記の要約は、それぞれの例示された実施態様またはその主題の全ての実行を記載することを意図したものではない。以下により詳細に記載された特許請求の範囲および詳細な説明は、様々な例示的な実施態様を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】[0010]図1は、熱可塑性エラストマー(TPE)でコーティングされた中空マイクロスフェアを示す1000倍の走査型電子顕微鏡画像(SEM)である。
図2A】[0011]図2Aは、圧縮前のキャスティングされた犠牲的マイクロスフェアを示す100倍のSEM画像である。
図2B】[0012]図2Bは、圧縮後の犠牲的マイクロスフェアを示す100倍のSEM画像である。
図3】[0013]図3は、ポリオレフィンエラストマーマトリックス中のナイロン6,6でコーティングされた中空マイクロスフェアを示す800倍のSEM画像である。
図4】[0014]図4は、カーボンブラックを含有するナイロンでコーティングされた中空マイクロスフェアを示す1000倍のSEM画像である。
図5】[0015]図5は、ポリオレフィンエラストマーマトリックス中の導電性の犠牲的マイクロスフェアを示す500倍のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0016]文脈上別段の指定がない限り、以下の用語は、以下の意味を有するものとし、単数形にも複数形にも当てはまるものとする。
[0017]用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの」、および「1つまたはそれより多くの」は、同義的に使用される。したがって、例えば、「1つの(a)」犠牲的マイクロスフェアを含有する物品は、その物品が「1つまたはそれより多くの」犠牲的マイクロスフェアを包含し得ることを意味する。
【0012】
[0018]用語「カップリング剤」は、ポリマーマトリックスとフィラー(例えばセルロース系フィラー)との界面の接着を改善する添加剤を意味する。
[0019]用語「フィラー」は、溶融加工中に限定的な粘弾性を示す材料を指す。
【0013】
[0020]用語「高充填」は、溶融加工後に80wt%または50体積%より多くのフィラーを含有するポリマーの濃縮物を指す。
[0021]用語「中空」は、内部に空隙を有することを意味する。
【0014】
[0022]用語「溶融加工可能な組成物」は、典型的には、配合物の少なくとも1つの構成要素の融点または軟化点に近いかまたはそれを超える高い温度で溶融加工技術を使用して加工される配合物を意味する。
【0015】
[0023]用語「溶融加工技術」は、熱および機械的エネルギーをかけてポリマーまたは組成物を溶融加工するための技術を意味する。このような技術の非限定的な例としては、配合、押出し、射出成形、吹込成形、回転成形、またはバッチ混合が挙げられる。本開示の目的のために、溶融加工は、熱圧着の適用と区別することができる。
【0016】
[0024]用語「マイクロスフェア」は、丸い形状(例えば、球状、長楕円型、卵型、楕円型、または他の平均して回転楕円に近い形状)を有する粒子であって、典型的には約1μm〜約1000μmの平均直径を有するものを指す。
【0017】
[0025]用語「ポリマー」および「ポリマー性」は、比較的高い分子量を有する分子であって、本質的に、その構造が、実際的または概念的に比較的低い分子量を有する分子から誘導される単位の複数の繰り返しを含有するものを意味する。
【0018】
[0026]用語「ポリマーの濃縮物」は、溶融加工すると砕けにくいペレットまたは塊に形成することができる、ポリマー性材料とフィラーとの混合物を意味する。
[0027]用語「ポリマーマトリックス」は、ポリマー性組成物、複合材料、または物品中の連続的なポリマー相を指す。
【0019】
[0028]用語「好ましい」および「好ましくは」は、特定の環境下で特定の利益を付与する可能性がある実施態様を指す。しかしながら、同じまたは他の環境下で、他の実施態様が好ましい場合もある。さらに、1つまたはそれより多くの好ましい実施態様の列挙は、他の実施態様が有用ではないことを含意しておらず、特許請求された範囲から他の実施態様を排除することは意図されない。
【0020】
[0029]用語「弾力」、「弾性」または「弾性の」は、破砕を防ぐかまたは実質的に低減すること、または中空マイクロスフェアがその元の体積または形状に実質的に近い形態に自然に戻ることのいずれかによって、得られたマイクロスフェアを溶融加工に耐えることを可能にする、中空マイクロスフェアの表面上に適用されたポリマー性材料の能力を指す。
【0021】
[0030]用語「犠牲的マイクロスフェア」は、ポリマー性材料を堆積またはコーティングさせた中空マイクロスフェアを意味する。
[0031]用語「実質的に近い」は、高分子コーティングがその元の体積または形状の少なくとも50%、少なくとも75%、または好ましくは少なくとも90%に戻ることを意味する。
【0022】
[0032]端点を使用する数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数値を含む(例えば1〜5は、1、1.5、3、3.95、4.2、5などを含む)。
[0033]この開示は、犠牲的マイクロスフェアを生産および使用するための組成物および方法に関する。図1は、犠牲的マイクロスフェア12の1000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示し、これは、熱可塑性エラストマーコーティング14を有する中空マイクロスフェアを包含する。ポリマー性材料、例えば熱可塑性エラストマーコーティング14を形成するポリマー性材料は、中空マイクロスフェアの表面に堆積またはコーティングさせて犠牲的マイクロスフェア、例えば犠牲的マイクロスフェア12を生産することができる。中空マイクロスフェアを破砕することができる条件(例えば、一部の溶融加工条件または高い衝撃力)で、このような犠牲的マイクロスフェアは、弾性のままであり得る。
【0023】
[0034]一部の実施態様において、約90重量%より大きいかまたはそれに等しい犠牲的マイクロスフェアが、破砕を防ぐかまたは実質的に低減すること、またはマイクロスフェアがその元の形状に実質的に近い形態に自然に戻ることのいずれかによって、溶融加工に耐えることができる。他の実施態様において、約95重量%より大きいかまたはそれに等しい犠牲的マイクロスフェアが、破砕を防ぐかまたは実質的に低減すること、またはマイクロスフェアがその元の形状に実質的に近い形態に自然に戻ることのいずれかによって、溶融加工に耐えることができる。他の実施態様において、約98重量%より大きいかまたはそれに等しい犠牲的マイクロスフェアが、破砕を防ぐかまたは実質的に低減すること、またはマイクロスフェアがその元の形状に実質的に近い形態に自然に戻ることのいずれかによって、溶融加工に耐えることができる。
【0024】
[0035]犠牲的マイクロスフェアを生産するために、様々な中空マイクロスフェアを使用することができる。このような中空マイクロスフェアは、有機物質であってもよいし、または無機物質であってもよい。非限定的な例としては、ガラスマイクロスフェア、合成ガラスマイクロスフェア、セラミックマイクロスフェア、発泡パーライト、発泡火山灰、ポリマー性マイクロスフェア、フェノール系マイクロスフェア、およびセノスフェアが挙げられる。中空マイクロスフェアの非限定的な例としては、シルブリコ社(Silbrico, Inc.)によってSil−Cell(商標)という商標で販売されているものが挙げられる。好ましい実施態様において、中空マイクロスフェアは、1.0g/cm未満の比重を有し、これは、ASTM規格D792に従って測定することができる。
【0025】
[0036]犠牲的マイクロスフェアを生産するために、様々な高分子材料を、中空マイクロスフェアの表面の全てまたは一部に堆積またはコーティングさせることができる。このような高分子材料としては、未加工または再利用の熱可塑性物質、エラストマー、および熱硬化物質を挙げることができる。このようなポリマーの非限定的な例としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリオレフィンコポリマー(例えば、エチレン−ブテン、エチレン−オクテン、エチレン−酢酸ビニル、エチレン−ビニルアルコール)、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー(例えば、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、フルオロポリマー、液晶ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリアセタール、ポリカーボネート、シクロオレフィンコポリマー、シリコーン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、熱可塑性加硫物(vulcanate)、エポキシ、アルキド、メラミン、フェノール系樹脂、ビニルエステルまたはそれらの組合せが挙げられる。このような高分子材料は、犠牲的マイクロスフェアに適用されると、犠牲的マイクロスフェアを溶融加工に耐えるようにすることができ、さらに衝突時の車のバンパーのようにエネルギーを吸収するように機能することができる。
【0026】
[0037]犠牲的マイクロスフェアは、様々な方法で生産することができる。一実施態様において、中空マイクロスフェアの表面の少なくとも一部は、ポリマー性材料に関する化学反応または表面親和性のいずれかを促進するために、表面を官能化する試薬または表面を修飾する試薬で官能化または処理されてもよい。
【0027】
[0038]例えば、様々な表面を官能化する試薬または調節剤は、中空マイクロスフェアの表面の全てまたは一部と高分子コーティング材料との反応または表面親和性を促進するのに使用することができる。それらの全体が本明細書に組み入れられる米国特許第4,659,889号、4,122,062号および4,623,738号は、この開示を考慮して読むことにより犠牲的マイクロスフェアを生産するのに使用できる好適な表面の修飾の実例を記載している。表面を官能化する試薬の非限定的な例としては、オルガノシラン、有機チタン酸塩および有機ジルコン酸塩が挙げられる。好ましい実施態様において、表面を修飾する試薬としては、1種またはそれより多くの官能性オルガノシラン、例えば、表面に、アミノ、アクリル酸、ビニル、エポキシおよびイソシアナト(isocyanto)官能基を提供するものなどを挙げることができる。
【0028】
[0039]別の実施態様において、中空マイクロスフェアは、ポリマー性材料の溶媒溶液または水性溶液で処理してもよく、その結果生じた溶媒は、除去または乾燥させてもよい。ポリマー性材料の水性溶液の非限定的な例としては、ダウ・ケミカル(Dow Chemical)によりHYPOD(商標)という商標で販売されているものが挙げられる。
【0029】
[0040]別の実施態様において、中空マイクロスフェアは、液状の単量体および重合開始剤で処理されてもよい。このような単量体で処理した後、開始剤の選択に応じて化学線または熱を使用してコーティングを重合することができる。別の実施態様において、中空マイクロスフェアは、縮合重合を使用して重合できる単量体(例えば、ポリアミド、エポキシ、フェノール、ウレタン、ポリエステル、またはシリコーン単量体)で処理されてもよい。好ましい実施態様において、中空マイクロスフェアの外部表面は、アジピン酸の塩およびヘキサン−1,6−ジアミン(AH塩)を重合することによって、ポリアミドでコーティングすることができる。
【0030】
[0041]別の実施態様において、犠牲的マイクロスフェアは、架橋反応を使用して生産することができる。架橋は、中空マイクロスフェア表面上の重合中に実行してもよいし、またはその後に実行してもよい。例えば、重合中に架橋が起こるように、多官能性の単量体を包含させてもよい。重合後の架橋は、様々な方法で行うことができる。例えば、重合および架橋後の反応が可能な官能性単量体、例えばアクリル酸で官能化したアルコキシシランを配合物中に包含させてもよい。このような架橋後の反応は、例えば、様々な方法で開始させることができる。架橋後の反応を開始させる方法の非限定的な例としては、以下:1)水分への曝露、2)交差反応性を有する化学物質(例えば、エポキシ系の化学物質)への曝露、3)紫外線または電子ビーム放射線への曝露、および4)熱放射への曝露が挙げられる。フリーラジカル開始剤/架橋剤の非限定的な例としては、ダウ・コーニング社(Dow Corning Co.)により販売されている32−441添加剤が挙げられる。縮合重合体はまた、重合中に多官能性単量体を包含させることによって架橋することもできる。マイクロスフェアの表面上に架橋されたコーティングを作り出すために、例えば、AH塩の重合における三官能性または多官能性のカルボン酸または三官能性または多官能性のアミンを採用することができる。架橋する単量体は、典型的には低いレベル(例えば、配合物の約1〜約20wt%)で添加できるが、コーティングの具体的な特性に合わせてより高いレベルで配合物中に包含されてもよい。
【0031】
[0042]好ましい実施態様において、まず中空マイクロスフェアの表面の少なくとも一部を修飾して、ポリマー性材料を受け入れることが可能な反応性表面を生産することによって、犠牲的マイクロスフェアを生産することができる。一部の実施例において、ポリマー性材料は、中空マイクロスフェアの表面に直接結合していなくてもよいし、または結合が生じる場合、破砕時に中空マイクロスフェアのフラグメントが放出される場合もあるし、または保持される場合もある。その後、表面が修飾された中空マイクロスフェアを溶媒(例えば、水)中に分散して、重合フローセルを介して連続的にポンプ注入してもよい。その後、官能化した中空マイクロスフェアを、多官能性の単量体を包含する単量体混合物で処理し、熱または放射線(例えば、化学線)に曝露して、中空マイクロスフェアの表面上に高分子コーティングを作り出すこともできる。好ましい実施態様において、中空マイクロスフェアは、高分子コーティングによって完全にコーティングされていてもよい。
【0032】
[0043]犠牲的マイクロスフェアはまた、熱または放射線エネルギー(例えば、化学線)への曝露によって一緒に直接融合させてもよい。一部の実施態様において、犠牲的マイクロスフェアの高分子コーティングは、熱可塑性物質または熱硬化物質であり得る。一部の実施態様において、マイクロスフェア表面上の熱可塑性ポリマーコーティングをリフローさせ、犠牲的マイクロスフェアを一緒に融合させてもよい。他の実施態様において、犠牲的マイクロスフェアが一緒に硬化したりまたは架橋により融合したりするように、熱硬化性高分子コーティングを化学線に曝露させてもよい。他の実施態様において、化学線または熱放射への曝露を介して犠牲的マイクロスフェアがその後一緒に融合できるように、犠牲的マイクロスフェアは、架橋された熱可塑性物質を包含していてもよい。
【0033】
[0044]犠牲的マイクロスフェアは、組成物、複合材料(例えば、軽量複合材料)、または物品中に取り込むことができる。一実施態様において、処理後にポリマーがポリマーマトリックスを形成するように、犠牲的マイクロスフェアは、1種またはそれより多くのポリマーと共に溶融加工することができる。犠牲的マイクロスフェアは、溶融加工中に破砕されてもよい。犠牲的マイクロスフェアの表面上の高分子コーティングは、周囲のポリマーマトリックスが無傷のまま弾性を保つように、溶融加工中にその完全性を維持することができる。破砕条件への曝露後、中空マイクロスフェアに適用された高分子コーティングは、マイクロスフェアの中空部分の全てまたは少なくとも一部が回復し保持されるのに十分な程度のエラストマーの特徴を有し得る。犠牲的マイクロスフェアを取り込んだポリマーマトリックスは、未処理のポリマーマトリックスより低い比重を有し得る。一実施態様において、比重は、未処理のポリマーマトリックスより少なくとも5%低い。別の実施態様において、比重は、未処理のポリマーマトリックスの比重より少なくとも10%低い。さらに、好ましい実施態様において、比重は、未処理のポリマーマトリックスの比重より少なくとも20%低い。
【0034】
[0045]犠牲的マイクロスフェアを取り込んだ組成物、複合材料、または物品において、様々なポリマーを使用することができる(例えば、ポリマーマトリックスとして)。このようなポリマーとしては、未加工または再利用の熱可塑性物質、エラストマー、および熱硬化物質を挙げることができる。このようなポリマーの非限定的な例としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリオレフィンコポリマー(例えば、エチレン−ブテン、エチレン−オクテン、エチレン−酢酸ビニル、エチレン−ビニルアルコール)、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー(例えば、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、フルオロポリマー、液晶ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリアセタール、ポリカーボネート、シクロオレフィンコポリマー、シリコーン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、熱可塑性加硫物、エポキシ、アルキド、メラミン、フェノール系樹脂、ビニルエステルまたはそれらの組合せが挙げられる。好ましい実施態様において、ポリマーマトリックスとしては、ポリオレフィンが挙げられる。
【0035】
[0046]開示された組成物、複合材料、もしくは物品、または犠牲的マイクロスフェアの高分子コーティング中に、様々なフィラーを使用することができる。フィラーの非限定的な例としては、無機および有機フィラー、例えば、炭酸塩、ケイ酸塩、タルク、雲母、ケイ灰石、粘土、シリカ、アルミナ、炭素繊維、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、火山灰、ガラス繊維、固体ガラスマイクロスフェア、セラミックなど、ならびに従来のセルロース系材料、例えば、木粉、木材繊維、おがくず、木材の削りくず、新聞用紙、紙、亜麻、麻、麦わら、もみ殻、ケナフ、ジュート、サイザル、落花生の殻、ダイズ外皮など、または本開示を考慮すれば当業界において通常の技術を有する者に一般的と予想される他のセルロース含有材料が挙げられる。一部の実施態様において、フィラーは、ポリマー性材料の機械特性または熱的特性を改善することができる。他の実施態様において、フィラーはまた、ポリマー物品の熱膨張係数(CTE)を低減することもできる。
【0036】
[0047]犠牲的マイクロスフェアまたは犠牲的マイクロスフェアの高分子コーティングを取り込んだ組成物、複合材料、または物品において、様々な添加剤を採用することができる。好適な添加剤の非限定的な例としては、抗酸化剤、光安定剤、繊維、発泡剤、発泡添加剤、アンチブロッキング剤、熱安定剤、耐衝撃性改良剤、殺生剤、抗菌性添加剤、相溶化剤、可塑剤、粘着性付与剤、加工助剤、潤滑剤、カップリング剤、難燃剤および着色剤が挙げられる。添加剤は、粉末、ペレット、顆粒の形態で、または他のあらゆる押出し可能な形態で、溶融加工可能な組成物中に取り込ませることができる。溶融加工可能な組成物中の従来の添加剤の量およびタイプは、ポリマーマトリックス、犠牲的マイクロスフェア、および完成した組成物の望ましい物理的特性に応じて様々であってもよい。
【0037】
[0048]好ましい実施態様において、添加剤としては、カップリング剤または抗酸化剤を挙げることができる。カップリング剤の非限定的な例としては、オルガノシラン、有機ジルコン酸塩、有機チタン酸塩および官能化ポリマーが挙げられる。好ましいカップリング剤としては、オルガノシランおよび無水マレイン酸グラフト化ポリマーが挙げられる。無水マレイン酸グラフト化ポリマーの非限定的な例としては、Polybond(商標)(アディバント(Addivant))、Extinity(商標)(NWP)、Integrate(商標)(ライオンデルバセル(Lyondell Basell))、およびFusabond(商標)(デュポン(DuPont))という商標で販売されているものが挙げられる。カップリング剤または抗酸化剤の典型的な含有レベルは、軽量複合材料配合物の約0.1〜5wt%であり得る。
【0038】
[0049]一部の実施態様において、犠牲的マイクロスフェアの高分子コーティング中にフィラーまたは添加剤を使用することは、フィラーまたは添加剤の性能を改善することができる。例えば、電気または熱伝導効率は、このような高分子コーティングに導電性の炭素またはナノチューブを包含させることによって増加させることができる。理論にとらわれるつもりはないが、これは、中空マイクロスフェアの導電性表面が、導電性の炭素またはカーボンナノチューブ単独より効率的に浸透限界に到達できるためであり得る。したがって犠牲的マイクロスフェアは、自由体積に充填する高価な添加剤の全体的な充填量をかなり低くすることができる。
【0039】
[0050]犠牲的マイクロスフェアおよびポリマーの溶融加工は、様々な温度(例えば、80℃〜300℃)で、最適な動作温度で実行することができ、これらは、典型的には組成物の融点、溶融粘度、および熱安定性に応じて選択される。溶融加工のために、異なるタイプの溶融加工装置、例えば押出機を使用することができる。
【0040】
[0051]犠牲的マイクロスフェアは、自動車、建造物および建築物、ならびに消費産業および家電産業において広範な有用性を有する。非限定的な使用としては、自動車の部品や家電のハウジングが挙げられる。
【0041】
[0052]犠牲的マイクロスフェアはまた、直接的または間接的な衝撃力を低減するように設計された最終用途物品を提供することにおいても有用性を有する。このような最終用途物品は、永続的な変形を起こさずに接触時の力を散逸させることを可能にする。これらの最終用途の非限定的な例としては、これらに限定されないが、ヘルメット(例えば、モーターサイクルおよびバイクのヘルメット、フットボールのヘルメット、建築作業用ヘルメットなど)、保護層(例えば、すね当てなど)、および他のバリア(例えば、フェンス、レール、屋根、下見張り、コンテナーなど)が挙げられる。
【0042】
[0053]以下の非限定的な例において、開示された犠牲的マイクロスフェアおよびそれらの利点をさらに説明する。以下の実施例において、全ての部およびパーセンテージは、別段の指定がない限り重量に基づく。
【実施例】
【0043】
【表1】
【0044】
実施例1
ポリオレフィンコーティングを有する犠牲的マイクロスフェア
[0054]犠牲的マイクロスフェアを、ポリオレフィンで中空マイクロスフェアをコーティングすることによって調製した。中空マイクロスフェアをシラン1で処理し、次いでポリオレフィン分散液でコーティングした。次いでコーティングされた中空マイクロスフェアをDow Corning(商標)32−441添加剤に曝露し、圧力鍋中100℃で24時間後硬化して、犠牲的マイクロスフェアを生産した。
【0045】
実施例2
アクリル酸熱硬化性コーティングを有する犠牲的マイクロスフェア
[0055]犠牲的マイクロスフェアを、アクリル酸熱硬化性ポリマーで中空マイクロスフェアをコーティングすることによって調製した。中空マイクロスフェアをシラン1で処理し、次いで1%開始剤を含有するMMAおよびEGDMAの10:1混合物でコーティングした。次いでコーティングされた中空マイクロスフェアを高強度の紫外光(365nmのピーク波長を有するUV LED)に曝露して、犠牲的マイクロスフェアを生産した。
【0046】
実施例3
熱可塑性ポリウレタンコーティングを有する犠牲的マイクロスフェア
[0056]犠牲的マイクロスフェアを、熱可塑性ウレタンで中空マイクロスフェアをコーティングすることによって調製した。第1の1クォート(約0.95リットル)の透明ガラスジャーに、400gのテトラヒドロフラン中のTPUの10wt%溶液および2g(TPUに対して5wt%)の界面活性剤を添加した。得られた溶液を回転させて、界面活性剤を溶解させた。次いでこの溶液に、53〜106μmの平均直径を有する中空マイクロスフェア60gを添加した。次いでジャーをキャップし、ローラーミル上に少なくとも10分置いて、材料を混合した。第2の1クォート(約0.95リットル)の透明ガラスジャーに、140gのこの混合物、150mLの酢酸エチル、および100mLのエタノールを添加した。次いで150mLのエタノールを、少なくとも5分間にわたり一滴ずつ添加した。得られた犠牲的マイクロスフェア混合物を圧縮空気ペイントスプレーヤー中に流し込み、スプレーブースに噴霧乾燥した。残留溶媒を約15分間蒸発させた後、犠牲的マイクロスフェアを収集した。
【0047】
実施例4〜5
熱可塑性エラストマーコーティングを有する犠牲的マイクロスフェア
[0057]犠牲的マイクロスフェアを、熱可塑性エラストマーコーティングで中空マイクロスフェアをコーティングすることによって調製した。図1に、その実施例を示す。実施例4において、およそ100mLの1:1のTPEおよび中空マイクロスフェアのトルエン中15wt%溶液と、約100mLの蒸留水とを8オンス(226.79616g)の透明ガラスジャーに添加した。混合物を力強く振盪して混合を促進し、TPEでコーティングされたマイクロスフェアの緩い分散液を得た。次いで混合物を、約400mLの蒸留水と共に1クォート(約0.95リットル)の空気で作動するペイントスプレーヤー中に流し込んだ。得られた混合物をポリエチレンシート上に噴霧した。乾燥させた後、犠牲的マイクロスフェアを収集した。
【0048】
[0058]実施例5を実施例4と類似の方式で調製した。しかしながら、TPEでコーティングされた中空マイクロスフェアを噴霧乾燥する代わりに、混合物をガラストレイ中に流し込んで、溶媒を蒸発させた。蒸発により、厚さおよそ4mmのスポンジ様材料を得た。図2A〜2Bで示されるように、スポンジ様材料の断面図を圧縮前および圧縮後のSEMによって分析した。図2Aは、スポンジ様材料20におけるキャスティングされたTPEでコーティングされた中空マイクロスフェア22AのSEM画像を示す。次いでスポンジ様材料の一部を、圧縮成形機における2枚のKapton(商標)フィルム間に入れ、およそ10,000psi(およそ68,900kPA)で圧縮した。圧縮を解放して、スポンジ様材料を一部回収した。図2Bは、スポンジ様材料20における圧縮されたTPEでコーティングされた中空マイクロスフェア22BのSEM画像を示す。表2は、TPEベース樹脂、キャスティングされた犠牲的マイクロスフェアスポンジ、および圧縮された犠牲的マイクロスフェアスポンジの比重およびデュロメーター値を包含する。
【0049】
【表2】
【0050】
実施例6〜7および比較例1
ナイロンコーティングおよびそれから製造された複合材料を有する犠牲的マイクロスフェア
[0059]実施例6において、犠牲的マイクロスフェアを、ナイロンで中空マイクロスフェアをコーティングすることによって調製した。15gのナイロン塩および15gの中空マイクロスフェア(Sil−Cell(商標)42bcマイクロセルラーフィラー(直径75〜106μm))を、コイルばね式のかき混ぜ機を備えた500mLの丸底フラスコに添加した。フラスコをロータリーエバポレーター(モデルR200、ビュッヒ(Buchi)製)上に置き、約60RPMで回転させた。10torr(およそ1333Pa)未満で真空を適用した。フラスコおよびその内容物を205〜210℃に加熱したところ、混合物が濡れた砂のようになり始めた。混合物をこの温度で30分維持した。次いで混合物を室温に冷却し、その後真空を開放した。材料のサンプルを取り出し、窒素中でのDSC/TGAによって30℃から230℃まで10℃/分の速度で分析したところ(モデルSTA449F3、ネッチグループ(Netzsch Group)、ドイツ、ゼルプ)、質量損失または追加の重合がないことが解明された。
【0051】
[0060]実施例7において、実施例6の犠牲的マイクロスフェアをオレフィンエラストマーで処理した。ポリオレフィンエラストマーとナイロンでコーティングされた犠牲的マイクロスフェアとの90:10混合物をプラスチックバッグ中で乾式混合し、11mmのツインスクリュー押出機(プロセス11、サーモ・サイエンティフィック(Thermo Scientific)から市販、40:1のL:D)に重量測定によりフィードした。150rpmのスクリュー速度および14g/分の出力で200℃のダイ温度を有するゾーン1〜8については、205℃の温度プロファイルで混合を実行した。表3で示されるように、得られた鎖の比重をアルキメデス法を使用して評価した。押出されたフィラメントの一部も液体窒素中で冷却し、破砕して、内部表面の断面を解明し、図3で示されるようにSEM下で分析した。図3は、ポリオレフィンエラストマーマトリックス30にナイロン6,6コーティング34を有する犠牲的マイクロスフェア32を示す800倍のSEM画像である。
【0052】
[0061]比較例1(CE1)において、10wt%のコーティングされていない中空マイクロスフェアを、実施例7と同じ工程を使用して、オレフィンエラストマーで処理した。これらの鎖の比重も、表3で示されるようにASTM規格D792に従って評価した。表3で示されるように、実施例7の犠牲的マイクロスフェア複合材料は、ベース樹脂および比較例1より低い比重を示した。
【0053】
【表3】
【0054】
実施例10〜14および調製例(1)および比較例(2〜4)
三官能性ナイロン塩架橋剤の合成
[0062]調製例1において、三官能性ナイロン塩架橋剤を調製した。75mLの無水テトラヒドロフラン中の5.17g(29.3mmol)の1,2,3−プロパントリカルボン酸を、250mLのシングルネック丸底フラスコに添加した。次いで75mLの無水テトラヒドロフラン中の5.139g(44.2mmol)の1,6−ジアミノヘキサンを、約1時間かけて力強く撹拌しながら一滴ずつフラスコに添加した。次いでフラスコをロータリーエバポレーター上に置いて、テトラヒドロフランを除去した。得られたナイロン塩をフラスコから掻き取り、熱風オーブン中、75℃で乾燥させて、10.1gの三官能性ナイロン塩架橋剤を得た。
【0055】
導電性の犠牲的マイクロスフェア
[0063]実施例8において、調製例1の三官能性塩架橋剤を使用して、導電性の犠牲的マイクロスフェアを生産した。14.25gのナイロン塩、0.75gの三官能性ナイロン塩架橋剤、および1.13gのカーボンブラックのブレンドした混合物を、コイルばね式のかき混ぜ機を備えた500mLの丸底フラスコに添加した。次いで15gのSil−Cell(42bcマイクロセルラーフィラー(直径75〜106μm))をフラスコに添加した。フラスコをロータリーエバポレーター上に置き、約60RPMで回転させた。10torr未満で真空適用した。フラスコおよびその内容物を205〜210℃に加熱したところ、混合物が濡れた砂のようになり始めた。混合物をこの温度で30分維持した。次いで混合物を室温に冷却し、その後真空を開放した。材料のサンプルを取り出し、窒素中でのDSC/TGAによって30℃から230℃まで10℃/分の速度で分析したところ(モデルSTA449F3、ネッチグループ、ドイツ、ゼルプ)、質量損失または追加の重合がないことが解明された。SEM分析も実行した。図4は、カーボンブラックを含有するナイロンコーティング44を有する導電性マイクロスフェア42を示す1000倍のSEM画像を示す。カーボンブラックの代わりに0.375gのカーボンナノチューブをコーティングに使用したことを除き、実施例9を実施例8と類似の方式で調製した。
【0056】
導電性の犠牲的マイクロスフェア複合材料
[0064]ここで実施例10〜14および比較例2〜4を参照して、表4に記載の配合に従い複合材料を生産し、抵抗率試験に供した。実施例10〜12に関して、実施例8の導電性の犠牲的マイクロスフェアを包含する複合材料を生産した。実施例13〜14に関して、実施例9の導電性の犠牲的マイクロスフェアを包含する複合材料を生産した。比較例2はポリオレフィンエラストマーのみを包含していたが、比較例3〜4はポリオレフィンエラストマー中にカーボンブラックを取り込ませた。
【0057】
【表4】
【0058】
[0065]実施例10〜14および比較例3〜4に関して、導電性の犠牲的マイクロスフェアまたはカーボンブラックを、ポリオレフィンエラストマーと共にプラスチックバッグ中で乾式混合した。実施例10〜14および比較例2〜4を、11mmのツインスクリュー押出機(プロセス11、サーモ・サイエンティフィックから市販、40:1のL:D)に重量測定によりフィードした。150rpmのスクリュー速度および14g/分の出力で200℃のダイ温度を有するゾーン1〜8については、205℃の温度プロファイルで混合を実行した。押出されたフィラメントの一部を、図5で示されるようにSEM下で分析した。図5は、ポリオレフィンマトリックス50中の導電性の犠牲的マイクロスフェア42を示す500倍のSEM画像である。実施例10〜14および比較例2〜4の別の押出されたフィラメントの一部をそれぞれペレット化し、次いで熱板プレスを使用してプラーク状にプレスした。サンプルを、KAPTON(商標)ポリイミドフィルム(デュポンから商業的に入手可能)間に、約200psi(約1378kPa)で、150℃で数分プレスした。得られた材料を、ASTM規格D257−07に従って表面および体積抵抗に関して試験した。以下の表5に、抵抗の結果を示す。
【0059】
【表5】
【0060】
[0066]好ましい実施態様を説明する目的で具体的な実施態様を本明細書で例示し説明したが、示され説明された具体的な実施態様は、開示の範囲から逸脱することなく、同じ目的が達成されるように計算された様々な代替のまたは等価な実施態様で代用され得ることが当業者には理解されるものとする。本出願は、このような開示された実施態様のあらゆる改変または変更が網羅されるように意図される。
[1] 外部表面を有する中空マイクロスフェア;および、該中空マイクロスフェアの該外部表面の少なくとも一部上の弾性の高分子コーティング;を含む犠牲的マイクロスフェア。
[2] 前記高分子コーティングが、熱可塑性ポリマーである、[1]に記載の犠牲的マイクロスフェア。
[3] 前記高分子コーティングが、架橋された熱可塑性ポリマーである、[1]に記載の犠牲的マイクロスフェア。
[4] 前記高分子コーティングが、エラストマーである、[1]に記載の犠牲的マイクロスフェア。
[5] 前記高分子コーティングが、熱硬化性ポリマーである、[1]に記載の犠牲的マイクロスフェア。
[6] 前記高分子コーティングが、フィラーを包含する、[1]に記載の犠牲的マイクロスフェア。
[7] 前記フィラーが、熱伝導性フィラーを包含する、[6]に記載の犠牲的マイクロスフェア。
[8] 前記フィラーが、導電性フィラーを包含する、[6]に記載の犠牲的マイクロスフェア。
[9] 軽量物品を生産するための方法であって、
(a)外部表面を有する中空マイクロスフェアを提供すること、
(b)該中空マイクロスフェアの該外部表面の少なくとも一部を、重合性または高分子コーティングでコーティングすること、
(c)該外部表面上の該重合性または高分子コーティングを凝固または硬化させて、弾性の高分子コーティングを形成すること、
を含む、上記方法。
[10] 前記外部表面上の前記重合性または高分子コーティングを凝固または硬化させて、弾性の高分子コーティングを形成することが、化学線の熱放射を包含する、[9]に記載の方法。
[11] 犠牲的マイクロスフェアを生産するための方法であって、
(a)外部表面を有する中空マイクロスフェアを表面処理すること、
(b)該中空マイクロスフェア上に高分子コーティングを適用して、該中空マイクロスフェア上に弾性のコーティングを形成すること、および、任意選択で、
(c)その後、該高分子コーティングを硬化または架橋すること
を含む、上記方法。
[12] 複数の中空マイクロスフェアが分散されたポリマーマトリックスを含む組成物であって、該複数の中空マイクロスフェアは、弾性の高分子コーティングを有する、上記組成物。
[13] ポリマー性複合材料を含む物品であって、該ポリマー性複合材料の少なくとも一部中に、[1]に記載の犠牲的マイクロスフェアが分散されている、上記物品。
[14] 犠牲的中空マイクロスフェアを溶融加工するための方法であって、
溶融加工デバイスに、弾性の高分子コーティングを有する複数の犠牲的中空マイクロスフェアを提供すること、
該溶融加工デバイスに、ポリマー性材料を提供すること;および
該複数の犠牲的中空マイクロスフェアと該ポリマー性材料とを該溶融加工デバイスで溶融加工して、組成物を生産すること、
を含み、該弾性の高分子コーティングは、該犠牲的中空マイクロスフェアの少なくとも一部を、該組成物中で破砕されることなく溶融加工に耐えられるようにする、上記方法。
[15] 前記弾性の高分子コーティングが、複数の犠牲的前記中空マイクロスフェアの少なくとも90重量パーセントを、前記組成物中で破砕されることなく溶融加工に耐えられるようにする、[14]に記載の方法。
[16] 前記弾性の高分子コーティングが、複数の犠牲的前記マイクロスフェアの少なくとも95重量パーセントを、前記組成物中で破砕されることなく溶融加工に耐えられるようにする、[14]に記載の方法。
[17] 前記弾性の高分子コーティングが、複数の犠牲的前記マイクロスフェアの少なくとも98重量パーセントを、前記組成物中で破砕されることなく溶融加工に耐えられるようにする、[14]に記載の方法。
【符号の説明】
【0061】
12 犠牲的マイクロスフェア
14 熱可塑性エラストマーコーティング
20 スポンジ様材料
22A 中空マイクロスフェア
22B 圧縮されたTPEでコーティングされた中空マイクロスフェア
30 ポリオレフィンエラストマーマトリックス
32 ナイロン6,6コーティング34を有する犠牲的マイクロスフェア
34 ナイロン6,6コーティング
42 導電性マイクロスフェア
44 カーボンブラックを含有するナイロンコーティング
50 ポリオレフィンマトリックス
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5