特許第6903323号(P6903323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903323
(24)【登録日】2021年6月25日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】フェリーフック付き面状ステー
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20210701BHJP
【FI】
   B62D25/20 L
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-145536(P2017-145536)
(22)【出願日】2017年7月27日
(65)【公開番号】特開2019-26000(P2019-26000A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年6月11日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年3月24日 新潟市消防局及び前橋市消防局に納品したことにより発表
(73)【特許権者】
【識別番号】593157622
【氏名又は名称】株式会社ヨコハマ・モーターセールス
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】永野 文義
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−081620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 − 25/08
B62D 25/14 − 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体本体のシャーシフレームに接続される面状ステーと、
フェリーフックと、
を備え
前記面状ステーが、燃料タンク、バッテリー、発電機のいずれかを載置するためのステーであることを特徴とするフェリーフック付き面状ステー。
【請求項2】
前記面状ステーが、下方板状ブラケット部分と、水平板状ブラケット部分とから側面視略L字状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフェリーフック付き面状ステー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェリーフック付き面状ステーに関し、詳しくは、警察車両、災害支援車、消防支援車、放送中継車などの様々な特装車に、新たにフェリーフックを取付けするのに好適なフェリーフック付き面状ステーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、海上で発生する大規模な事故への防止対応として、警察車両、災害支援車、消防支援車などの様々な特装車に、フェリーに乗船した際の安全性確保が希求されている。
一般に、貨物自動車などの大型車両をフェリーで安全に移送するには、車両の両側にフェリーフック(固縛用リングなど)を設け、このフェリーフックにロープやワイヤーの一端を引っ掛けて車両を甲板に強固に固縛する必要がある。しかしながら、旧来の特装車の中には、このようなフェリーフックを具備していない車両もある。
【0003】
フェリーフックを具備していない旧来の特装車に新たにフェリーフックを具備させる場合、例えば、サイドエプロンの無い車両に新たにフェリーフックを装備することは比較的容易であるが、サイドエプロンを有する車両(例えば、消防支援車)では、フェリーフックを新たに装備させることは容易ではない。
【0004】
すなわち、海上でしけなどによりフェリーが大きく揺れた場合には、フェリーフックに下方向のみならず前後方向にも大きな力が作用することになるが、仮にサイドエプロンにフェリーフックを設置すると、サイドエプロンごと壊されてしまう虞がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、例えば、現状ではフェリーフックが具備されていない警察車両、災害支援車、消防支援車などの様々な特装車、バス、トラックなどの車両に対し、既設のサイドエプロンの有無に関わらず、強固なフェリーフックを新たに、しかも容易に具備させることができるフェリーフック付き面状ステーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係るフェリーフック付き面状ステーは、
車体本体のシャーシフレームに接続される面状ステーと、
フェリーフックと、を備え
前記面状ステーが、燃料タンク、バッテリー、発電機のいずれかを載置するためのステーであることを特徴としている。
【0007】
このような構成のフェリーフック付き面状ステーであれば、フェリーフックが設置されていない既設の特殊車両などに対して、強度を十分に発揮することのできる新たなフェリーフックを容易に具備させることができる。
また、このような面状ステーであれば、燃料タンク、バッテリー、発電機の載せ替えを行うことにより、既設の車両にフェリーフックを容易に具備させることができる。
【0009】
さらに、本発明では、前記面状ステーが、下方板状ブラケット部分と、水平板状ブラケット部分とから側面視略L字状に形成されていることが好ましい。
このような構造であれば、十分な強度のフェリーフックを提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るフェリーフック付き面状ステーによれば、例えば、現状ではフェリーフックが具備されていない警察車両、災害支援車、消防支援車などの様々な特装車、バス、トラックなどの車両に対し、既設のサイドエプロンの有無に関わらず、強固なフェリーフックを新たに、しかも容易に具備させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、特装車の一例として既設の消防支援車を示した斜視図である。
図2A図2は、図1に示した既設の消防支援車のサイドエプロンの内方を示したもので、図2Aはその燃料タンクの取り付け構造を示した分解斜視図である。
図2B図2は、図1に示した既設の消防支援車のサイドエプロンの内方を示したもので、図2Bは、燃料タンクの取付け後の状態を示した斜視図である。
図3A図3は、本発明の一実施例に係るもので、図3Aは既設の燃料タンクステーに代えて、フェリーフック付きの燃料タンクステーにより燃料タンクを取り付けるときの分解斜視図である。
図3B図3は、本発明の一実施例に係るもので、図3Bは、その新たなフェリーフック付きの燃料タンクステーを介して燃料タンクが取り付けられた状態を示した斜視図である。
図4A図4は、本発明の他の実施例に係るもので、図4Aはバッテリーステーを分解して示す斜視図である。
図4B図4は、本発明の他の実施例に係るもので、図4B図4Aのバッテリーステーに、フェリーフック付きバッテリーステーを具備させたときの分解斜視図である。
図5A図5は、本発明のさらに他の実施例に係るもので、図5Aは発電機ステーを示す斜視図である。
図5B図5は、本発明のさらに他の実施例に係るもので、図5B図5Aの発電機ステーに、フリーフック付き発電機ステーを具備させたときの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施例について説明する。
図1は、本発明の一実施例に係るフェリーフック付き面状ステーが適用される消防支援車2を示したもので、図2A、2Bは、消防支援車2のサイドエプロン4の内方に設置された燃料タンク10の取付け構造を示したものである。
【0013】
なお、本発明は、消防支援車などを新規で製造する場合にも適用可能であるが、以下の説明では、フェリーフックが装着されていない既設の消防支援車に、新たにフェリーフックを取付ける場合について説明する。
【0014】
すなわち、図1に示す既設の消防支援車2では、両側にサイドエプロン4が設置されることにより車両の体裁が整えられているが、製造後において車体本体にフェリーフックが具備されていない。
【0015】
一方、このような消防支援車2では、サイドエプロン4の内側に、図2A、2Bに示したように、車体の前後方向に向かって水平方向にシャーシフレーム6が延出されている。そして、このシャーシフレーム6に、略L字状の2本の燃料タンクステー8,8が、所定間隔離間して設置されている。
【0016】
また、この2本の燃料タンクステー8,8に、略直方体形状の横置き型の燃料タンク10の下面が支持されているとともに、燃料タンク10の側面に燃料タンクバンド12,12が囲繞されることにより、燃料タンク10が緊密に固定されている。
【0017】
ところで、このような消防支援車2に、新たにフェリーフックを具備させようとする場合に、サイドエプロン4には、強度上の問題からフェリーフックを設置することができない。
そこで、本発明者等は、既設の燃料タンクステー8の強度に着目し、ここに新たにフェリーフックを設置すれば、サイドエプロン4の有無に係わらず、フェリーフックを具備できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明では、このような消防支援車2に新たにフェリーフックを設置するにあたり、先ずサイドエプロン4と燃料タンク10とを、車体本体から一旦取り外すとともに、図3Aに示したように、新たに下方板状ブラケット部分20aと水平板状ブラケット部分20bとから側面視略L字状に形成された面状ステー20と、フェリーフック30と、を備えたフェリーフック付き面状ステー40を用意する。なお、フェリーフック30には、ロープなどを固定するための孔部30aが形成されている。
【0019】
また、孔部30aを有する面状のフェリーフック30は、面状ステー20の水平板状ブラケット部分20bに溶接により強固に固定されている。
【0020】
そして、この新たなフェリーフック付き面状ステー40を、図2Aに示した既設の燃料タンクステー8に代えて、図3Bに示したように、スペーサ24などを介してシャーシフレーム6に一体的に取付ける。
【0021】
なお、シャーシフレーム6にフェリーフック付き面状ステー40を取付けるには、強度が確保されていれば、溶接固定あるいはネジ固定のいずれであっても良い。
【0022】
このようにして、新たなフェリーフック付き面状ステー40を既設の燃料タンクステー8に代えてシャーシフレーム6に一体的に設置したら、一旦取り外された燃料タンク10を再度設置すれば良い。その後、燃料タンク10の側面に、既設のあるいは新規の燃料タンクバンド12により、燃料タンク10を固定すれば良い。
【0023】
以上のように、燃料タンクステー8を、フェリーフック付き面状ステー40に交換することにより、車両本体には、フェリーフック30が新たに具備されることになる。
【0024】
このように、フェリーフックが予め具備されていない旧来の車両であっても、新たにフェリーフックを設置することができる。しかも、その取付けは容易である。
【0025】
また、サイドエプロン4が既設に設けられている場合には、このサイドエプロン4を、再度車体本体に取付けることになる。
その場合に、フェリーフック付き面状ステー40の孔部30aが、サイドエプロン4の下面に臨むように配置する必要があるため、サイドエプロン4の影に隠れてしまう場合には、下方板状ブラケット部分20aの長さを長くするように調整すればよい。
【0026】
なお、上記実施例では、面状ステー20と、フェリーフック30とが別体で形成されているが、これらは一体に形成されていても良い。
【0027】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明はこの実施例に何ら限定されない。
例えば、上記実施例では、既設の燃料タンクステー8を利用して、新たにフェリーフックを具備させるようにしているが、用いるステーは燃料タンクステー8に限定されない。
例えば、図4A,4Bに示したように、バッテリー搭載用の既設の2本のバッテリーステー38,38を利用して、フェリーフック付き面状ステー50を設置することも可能である。
【0028】
すなわち、既設の2本のバッテリーステー38,38は、図3Aに示した燃料タンクステー8,8と同等品が用いられている。ここにバッテリーを搭載するために、2本のバッテリーステー38,38を一本の連結具42で連結し、さらに2つの脚部材48,48を所定間隔離間して並設し、その上にフレーム部材56,56を配置したものである。
【0029】
このように既設のバッテリーステー38,38を用いる場合は、一旦バッテリーステー38,38などをシャーシフレーム6から取り外すとともに、図4Aに示したように、下方板状ブラケット部分52aと水平板状ブラケット部分52bとからなる側面視略L字状の面状ステー52と、孔部60aを備えた小片状のフェリーフック60とをそれぞれ用意する。
【0030】
そして、このような面状ステー52の水平板状ブラケット部分52bに、フェリーフック60を溶接などにより固定する。
しかる後、このようにフェリーフック60が一体的に固定された面状ステー52を、シャーシフレーム6に固定する。その後、脚部材48やフレーム部材56が元の状態に設置される。なお、フェリーフック60と水平板状ブラケット部分52bとは、図4Bのように別体であることに限定されず、一体に形成されていても良い。
【0031】
また、図5Aに示したように、シャーシフレーム6に設置された既設の発電機ステー70を利用して、新たにフェリーフックを設置することもできる。
すなわち、図5Aに示した既設の発電機ステー70は、格子状に構成されたもので、主材料の側面視略L字状のステー78は、図2Aに示した燃料タンクステー8,8と同等品が用いられている。
【0032】
そして、既設の発電機ステー70は、これら側面視略L字状のステー78,78に、転び止め用の凹部11が両端部に形成された連結板31、31を差し渡して構成されている。なお、図5Bに示した発電機80は、発電機ステー70の上に、適宜な手段により移動不能に固定される。
【0033】
このような既設の発電機ステー70を用いる場合も、図5Bに示したように、下方板状ブラケット部分90aと水平板状ブラケット部分90bとからなる側面視略L字状の面状ステー90を用意するとともに、孔部60aを備えたフェリーフック60を用意する。なお、面状ステー90の水平板状ブラケット部分90bには、連結板31に設けた転び止め用の凹部11に対応する位置に、孔111aが設けられている。
【0034】
そして、このように形成された水平板状ブラケット部分90bに、フェリーフック60を溶接などにより固定し、フェリーフック付き面状ステー110を構成する。
しかる後、フェリーフック60が一体的に固定されたフェリーフック付き面状ステー110を、シャーシフレーム6に固定する。その後、発電機80がフェリーフック付き面状ステー110の上に設置される。
【0035】
なお、フェリーフック100と水平板状ブラケット部分90bとは、図5Bのように別体であることに限定されず、予め一体に形成されていても良い。
以上説明したように本発明では、燃料タンク、バッテリー、発電機のいずれを載置するためのステーを利用しても、新たにフェリーフックを設置することができる。
【符号の説明】
【0036】
2 消防支援車
4 サイドエプロン
6 シャーシフレーム
8 燃料タンクステー
10 燃料タンク
20 面状ステー
40 フェリーフック付き面状ステー(燃料タンク用のステー)
30 フェリーフック
38 バッテリーステー
50 フェリーフック付き面状ステー(バッテリー用のステー)
52 面状ステー
52a 下方板状ブラケット部分
52b 水平板状ブラケット部分
60 フェリーフック
60a 孔部
80 発電機
90 面状ステー
90a 下方板状ブラケット部分
90b 水平板状ブラケット部分
110 フェリーフック付き面状ステー(発電機用のステー)
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B