特許第6903331号(P6903331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903331
(24)【登録日】2021年6月25日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】コンタクト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/24 20060101AFI20210701BHJP
   H01R 43/16 20060101ALI20210701BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   H01R13/24
   H01R43/16
   H05K9/00 E
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-65285(P2018-65285)
(22)【出願日】2018年3月29日
(65)【公開番号】特開2019-175794(P2019-175794A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 達哉
(72)【発明者】
【氏名】石黒 允昌
【審査官】 高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−72317(JP,A)
【文献】 特開2017−157437(JP,A)
【文献】 特開2017−220426(JP,A)
【文献】 特開2011−60694(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0026406(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/00−13/08
H01R13/15−13/35
H01R43/027−43/28
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一面と、前記第一面に対して垂直に配置される第二面とを電気的に接続可能なコンタクトであって、
前記第一面にはんだ付けされる接合面を有する基部と、
弾性変形して前記第二面に加圧接触する弾性接触部と、
を備え、
前記弾性接触部は、面状に構成される面状部と、前記面状部が有する一方の面において当該一方の面から突出する突起部とを有し、前記突起部で前記第二面に加圧接触するように構成され、
前記突起部は、前記一方の面に対して垂直な方向の寸法を高さH、前記一方の面に対して平行な方向の寸法を長さLとして、前記高さHと前記長さLとの寸法比H/Lが0.25≦H/L≦0.44を満たすように構成され
前記突起部は、前記高さHが0.089mm≦H≦0.296mmを満たし、かつ前記長さLが0.226mm≦L≦0.788mmを満たすように構成され、
ヒートサイクル試験によって温度が−40℃と125℃との間で周期的に変更される処理を167サイクルにわたって実行した後、測定される直流抵抗値が30mΩ以下である、
コンタクト。
【請求項2】
請求項に記載のコンタクトであって、
x軸及びy軸が前記接合面に平行、かつz軸が前記接合面に垂直となり、前記接合面がz軸負方向に向けられる三次元直交座標系を規定した場合に、
前記基部は、
前記基部のz軸正方向に向けられる面を構成する天板部と、
前記天板部のy軸負方向の端部から湾曲してz軸負方向へと延びる部分を少なくとも含む第一垂設壁と、
前記天板部のy軸正方向の端部から湾曲してz軸負方向へと延びる部分を少なくとも含む第二垂設壁と、
前記第一垂設壁のz軸負方向の端部から湾曲してy軸正方向へと延びる部分を少なくとも含む第一底板部と、
前記第二垂設壁のz軸負方向の端部から湾曲してy軸負方向へと延びる部分を少なくとも含む第二底板部と、
を有し、
前記接合面は、前記第一底板部及び前記第二底板部のz軸負方向に向けられる面によって構成され、
前記弾性接触部は、
前記天板部のx軸負方向の端部から湾曲してz軸負方向へと延びる部分を少なくとも含む垂下部と、
前記垂下部のz軸負方向の端部から湾曲してx軸正方向へと延びる部分を少なくとも含む水平延在部と、
前記水平延在部のx軸正方向の端部から湾曲してx軸正方向及びz軸正方向へ斜めに延びる部分を少なくとも含む第一傾斜部と、
前記第一傾斜部のx軸正方向の端部からz軸正方向へと湾曲してx軸負方向へと折り返す部分を少なくとも含む折り返し部と、
前記折り返し部からx軸負方向及びz軸負方向へ斜めに延びる部分を少なくとも含む第二傾斜部と、
を有し、
前記面状部は、前記第一傾斜部によって構成されている
コンタクト。
【請求項3】
請求項に記載のコンタクトであって、
前記基部は、
前記第一垂設壁のx軸正方向の端部から湾曲してy軸正方向へと延びる部分を少なくとも含む第一フック受けと、
前記第二垂設壁のx軸正方向の端部から湾曲してy軸負方向へと延びる部分を少なくとも含む第二フック受けと、
を有し、
前記弾性接触部は、
前記第二傾斜部のx軸負方向の端部から湾曲してz軸負方向へと突出するフック部を有し、
前記水平延在部は、前記第一フック受け及び前記第二フック受けよりもx軸負方向にある前記垂下部から、前記第一フック受け及び前記第二フック受けよりもz軸負方向となる位置を通って、前記第一フック受け及び前記第二フック受けよりもx軸正方向へと延び、
前記第二傾斜部は、前記第一フック受け及び前記第二フック受けよりもx軸正方向にある前記折り返し部から、前記第一フック受け及び前記第二フック受けよりもz軸正方向となる位置を通って、前記第一フック受け及び前記第二フック受けよりもx軸負方向へと延び、
前記フック部は、前記第一フック受け及び前記第二フック受けのx軸負方向側となる位置へと入り込むように構成されている
コンタクト。
【請求項4】
第一面と、前記第一面に対して垂直に配置される第二面とを電気的に接続可能なコンタクトの製造方法であって、
前記コンタクトは、
前記第一面にはんだ付けされる接合面を有する基部と、
弾性変形して前記第二面に加圧接触する弾性接触部と、
を備え、
前記弾性接触部は、面状に構成される面状部と、前記面状部が有する一方の面において当該一方の面から突出する突起部とを有し、前記突起部で前記第二面に加圧接触するように構成され、
前記面状部に前記突起部を形成する工程では、前記突起部の前記一方の面に対して垂直な方向の寸法を高さH、前記突起部の前記一方の面に対して平行な方向の寸法を長さLとして、前記高さHと前記長さLとの寸法比H/Lが0.25≦H/L≦0.44を満たすように、前記突起部が形成され
前記突起部は、前記高さHが0.089mm≦H≦0.296mmを満たし、かつ前記長さLが0.226mm≦L≦0.788mmを満たすように構成され、
ヒートサイクル試験によって温度が−40℃と125℃との間で周期的に変更される処理を167サイクルにわたって実行した後、測定される直流抵抗値が30mΩ以下である、
コンタクトの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のコンタクトであって、
前記温度が−40℃と125℃との間で周期的に変更される処理は、所定のヒートサイクル試験に基づき実施され、
前記所定のヒートサイクル試験は、
前記第一面と、前記第二面と、前記コンタクトとを含む試験対象物を準備し、該試験対象物においては、前記第一面に前記コンタクトを表面実装し、前記第二面を前記第一面に対して垂直に配置し、前記コンタクトを前記第二面に対して加圧接触するように配置し、前記コンタクトと前記第一面との相対位置を、前記コンタクトの前記弾性接触部が10%圧縮されるように設定し、前記第一面と前記第二面とを、スペーサを介して位置決めし、かつ固定具で固定することで互いの相対位置がずれないように構成することと、
前記試験対象物を環境試験機の槽内に設置することと、
前記槽内の温度を125℃まで上昇させ、続いて、前記槽内の温度を125℃のまま2時間保持し、続いて、前記槽内の温度を1時間かけて−40℃まで下降させ、続いて、前記槽内の温度を−40℃のまま2時間保持し、続いて、前記槽内の温度を1時間かけて125℃まで上昇させることをこれらの順に繰り返すことで前記槽内の温度を変更することと、
により行う、
コンタクト。
【請求項6】
請求項4に記載のコンタクトの製造方法であって、
前記温度が−40℃と125℃との間で周期的に変更される処理は、所定のヒートサイクル試験に基づき実施され、
前記所定のヒートサイクル試験は、
前記第一面と、前記第二面と、前記コンタクトとを含む試験対象物を準備し、該試験対象物においては、前記第一面に前記コンタクトを表面実装し、前記第二面を前記第一面に対して垂直に配置し、前記コンタクトを前記第二面に対して加圧接触するように配置し、前記コンタクトと前記第一面との相対位置を、前記コンタクトの前記弾性接触部が10%圧縮されるように設定し、前記第一面と前記第二面とを、スペーサを介して位置決めし、かつ固定具で固定することで互いの相対位置がずれないように構成することと、
前記試験対象物を環境試験機の槽内に設置することと、
前記槽内の温度を125℃まで上昇させ、続いて、前記槽内の温度を125℃のまま2時間保持し、続いて、前記槽内の温度を1時間かけて−40℃まで下降させ、続いて、前記槽内の温度を−40℃のまま2時間保持し、続いて、前記槽内の温度を1時間かけて125℃まで上昇させることをこれらの順に繰り返すことで前記槽内の温度を変更することと、
により行う、
コンタクトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンタクト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路基板のEMC(electromagnetic compatibility)対策に用いられるコンタクトが知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載のコンタクトは、電子回路基板の部品実装面と平行な方向に向かって突出する形状とされた弾性接触部を有する。弾性接触部は、弾性変形するのに伴って電子回路基板の部品実装面と平行な方向へ進退可能に構成されている。
【0003】
弾性接触部は、突出方向先端にある接触部で、電子回路基板の部品実装面に対して垂直に配置される非接触面(例えば筐体のパネル面。)に加圧接触する。これにより、電子回路基板と上述の非接触面は、コンタクトを介して電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−72317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のようなコンタクトが、常温を上回るような高温環境下(例えば自動車のエンジンルーム等。)で長期間にわたって使用された場合には、コンタクトの直流抵抗値が上昇することがある。コンタクトの直流抵抗値が上昇すると、EMC対策効果の低下を招く可能性がある。したがって、上述のような高温環境下での使用が想定される場合には、コンタクトの性能低下を抑制できるような対策を講ずることが好ましい。
【0006】
本開示の一局面においては、長期にわたって直流抵抗値の上昇を抑制可能なコンタクト及びその製造方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、第一面と、第一面に対して垂直に配置される第二面とを電気的に接続可能なコンタクトである。当該コンタクトは、基部と、弾性接触部と、を備える。基部は、第一面にはんだ付けされる接合面を有する。弾性接触部は、弾性変形して第二面に加圧接触する。また、弾性接触部は、面状に構成される面状部と、面状部が有する一方の面において当該一方の面から突出する突起部とを有する。弾性接触部は、突起部で第二面に加圧接触するように構成される。突起部は、一方の面に対して垂直な方向の寸法を高さH、一方の面に対して平行な方向の寸法を長さLとして、高さHと長さLとの寸法比H/Lが0.25≦H/L≦0.44を満たすように構成されている。
【0008】
このように構成されたコンタクトによれば、常温を上回るような高温環境下で長期間にわたって使用された場合であっても、コンタクトの直流抵抗値が上昇するのを抑制することができる。
【0009】
本開示の別の一態様は、第一面と、第一面に対して垂直に配置される第二面とを電気的に接続可能なコンタクトの製造方法である。当該製造方法によって製造されるコンタクトは、基部と、弾性接触部と、を備える。基部は、第一面にはんだ付けされる接合面を有する。弾性接触部は、弾性変形して第二面に加圧接触する。また、弾性接触部は、面状に構成される面状部と、面状部が有する一方の面において当該一方の面から突出する突起部とを有する。弾性接触部は、突起部で第二面に加圧接触するように構成される。このようなコンタクトの製造方法において、面状部に突起部を形成する工程では、突起部の一方の面に対して垂直な方向の寸法を高さH、突起部の一方の面に対して平行な方向の寸法を長さLとして、高さHと長さLとの寸法比H/Lが0.25≦H/L≦0.44を満たすように、突起部が形成される。
【0010】
このようなコンタクトの製造方法によれば、常温を上回るような高温環境下で長期間にわたって使用された場合であっても、直流抵抗値が上昇するのを抑制可能なコンタクトを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1はコンタクトの斜視図である。
図2図2Aはコンタクトの平面図である。図2Bはコンタクトの正面図である。図2Cはコンタクトの右側面図である。図2Dはコンタクトの背面図である。図2Eはコンタクトの底面図である。図2F図2C中に示すIIF部の拡大図である。
図3図3はコンタクトの使用状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、上述のコンタクトについて、例示的な実施形態を挙げて説明する。以下の説明においては、図2Aの平面図に表れる箇所が向けられる方向を上(本開示でいうz軸正方向に相当。)、図2Bの正面図に表れる箇所が向けられる方向を前(本開示でいうx軸正方向に相当。)、図2Cの右側面図に表れる箇所が向けられる方向を右(本開示でいうy軸正方向に相当。)、右の反対方向を左(本開示でいうy軸負方向に相当。)、図2Dの背面図に表れる箇所が向けられる方向を後(本開示でいうx軸負方向に相当。)、図2Eの底面図に表れる箇所が向けられる方向を下(本開示でいうz軸負方向に相当。)と規定する。ただし、これらの各方向は、コンタクト1を構成する各部の相対的な位置関係を簡潔に説明するために規定する方向にすぎない。よって、例えばコンタクト1の出荷時や使用時等に、コンタクト1がどのような方向に向けられるかは不定である。コンタクト1の左側面図は右側面図と対称に表れる。
【0013】
[コンタクトの構成]
図1図2A図2B図2C図2D及び図2Eに示すコンタクト1は、第一面(例えば、電子回路基板の部品実装面。)と、第一面に対して垂直に配置される第二面(例えば、電子回路基板の近傍に配設される金属パネルの表面。)とを電気的に接続可能な導電性部品である。コンタクト1は、基部3と、弾性接触部5と、を備える。これら基部3及び弾性接触部5は、金属の薄板(第一実施形態の場合は、リフロー処理が施されたすずめっき付きのばね用ベリリウム銅の薄板。厚さ0.08mm。)によって一体成形されている。
【0014】
基部3は、コンタクト1の使用時に想定される外力が作用してもほぼ変形しない程度の剛性が確保されている部分である。基部3は、上述の第一面にはんだ付けされる接合面3Aを有する。弾性接触部5は、コンタクト1の使用時に想定される外力が作用するのに伴って弾性変形する部分である。弾性接触部5は、第二面との接触に伴って弾性変形し、その際に生ずる弾性力を第二面に作用させて、第二面に加圧接触する。
【0015】
本実施形態の場合、基部3は、基部3の上面を構成する天板部11と、天板部11の左端から湾曲して下方へと延びる第一垂設壁12Aと、天板部11の右端から湾曲して下方へと延びる第二垂設壁12Bと、第一垂設壁12Aの前端から湾曲して右方へと延びる第一フック受け13Aと、第二垂設壁12Bの前端から湾曲して左方へと延びる第二フック受け13Bと、第一垂設壁12Aの下端から湾曲して右方へと延びる第一底板部14Aと、第二垂設壁12Bの下端から湾曲して左方へと延びる第二底板部14Bとを有する。第一底板部14A及び第二底板部14Bの下面が、上述の接合面3Aとなっている。
【0016】
本実施形態の場合、弾性接触部5は、天板部11の後端から湾曲して下方へと延びる垂下部21と、垂下部21の左端から左方へと突出する第一ストッパー22Aと、垂下部21の右端から右方へと突出する第二ストッパー22Bと、垂下部21の下端から湾曲して前方へと延びる水平延在部23と、水平延在部23の前端から湾曲して斜め上前方へと延びる第一傾斜部24と、第一傾斜部24の前端から上方へと湾曲して後方へと折り返す折り返し部25と、折り返し部25から斜め下後方へと延びる第二傾斜部26と、第二傾斜部26の後端から湾曲して下方へと突出するフック部27と、を有する。
【0017】
第一傾斜部24は、本開示でいう面状部を構成する。以下、第一傾斜部24のことを面状部24とも称する。面状部24には突起部28が設けられている。突起部28は、面状部24が有する一方の面24Aにおいて当該一方の面24Aから突出している。本実施形態の場合、突起部28は、突出方向先端部が球体の一部に相当する形状とされている。ただし、突起部28の突出方向先端部の形状は、球体の一部に相当する形状以外の形状であってもよく、例えば、回転楕円体の一部に相当する形状となっていてもよい。また、突起部28と面状部24との境界付近では、突起部28から面状部24にかけて滑らかに連続する曲面が構成されていてもよい。
【0018】
水平延在部23は、第一フック受け13A及び第二フック受け13Bよりも後方にある垂下部21から、第一フック受け13A及び第二フック受け13Bの下方を通って、第一フック受け13A及び第二フック受け13Bよりも前方へと延びる部分を含む。第二傾斜部26は、第一フック受け13A及び第二フック受け13Bよりも前方にある折り返し部25から、第一フック受け13A及び第二フック受け13Bの上方を通って、第一フック受け13A及び第二フック受け13Bよりも後方へと延びる部分を含む。フック部27は、第一フック受け13A及び第二フック受け13Bの背面側へと入り込んでいる。
【0019】
第一ストッパー22A及び第二ストッパー22Bは、垂下部21が弾性変形して前方へと変位した場合に垂下部21とともに前方へと変位し、第一垂設壁12A及び第二垂設壁12Bに接触する位置まで変位したところで、垂下部21が更に前方へと変位するのを規制する。フック部27は、第一フック受け13A及び第二フック受け13Bの背面に引っ掛かることにより、第二傾斜部26が前方へと変位するのを規制する。
【0020】
水平延在部23は、第一フック受け13A及び第二フック受け13Bによって上方への可動範囲が画定され、第一底板部14A及び第二底板部14Bによって下方への可動範囲が画定されている。また、水平延在部23は、第一垂設壁12A及び第二垂設壁12Bによって左右方向への可動範囲が画定されている。第二傾斜部26は、第一フック受け13A及び第二フック受け13Bによって下方への可動範囲が画定されている。
【0021】
以上のように構成されたコンタクト1は、例えば図3に示すように、電子回路基板51の部品実装面に表面実装されて、電子回路基板51とともに所定の場所に配設される。電子回路基板51を所定の場所に配設する作業を実施する際には、電子回路基板51の部品実装面に対して金属パネル53の表面が垂直方向にスライドするように、電子回路基板51及び金属パネル53のいずれか一方を他方に対して相対的に移動させる。これにより、コンタクト1を所期の位置に配置することができる。このとき、コンタクト1の弾性接触部5は、例えば電子回路基板51の近傍に配設されている金属パネル53の表面に、突起部28で接触し、電子回路基板51と金属パネル53を電気的に接続する。
【0022】
突起部28は、面状部24の一方の面24Aに対して垂直な方向の寸法を高さH(図2F参照。)、面状部24の一方の面24Aに対して平行な方向の寸法を長さL(図2F参照。)として、高さHと長さLとの寸法比H/Lが0.25mm≦H/L≦0.492mmを満たすように構成されている。また、本実施形態の場合、突起部28は、高さHが0.089mm≦H≦0.296mmを満たし、かつ長さLが0.226mm≦L≦0.788mmを満たすように構成されている。
【0023】
突起部28を、上述のような条件を満たす形状とすることにより、常温を上回るような高温環境下で長期間にわたって使用された場合であっても、コンタクトの直流抵抗値が上昇するのを抑制することができる。このような効果は、本件発明者らが突起部28の寸法を変更して数多くの実験を繰り返した結果、確認された効果である。本件発明者らは、突起部28の寸法を変更することにより、直流抵抗値の上昇をどの程度抑制できるかを確認するため、以下に説明するようなヒートサイクル試験を実施した。まず、試験対象物としては、以下のような構造物が作製される。コンタクト1がプリント配線板に表面実装される。そのプリント配線板に対して垂直な位置に金めっき銅板が配置され、コンタクト1が金めっき銅板に対して加圧接触するように配置される。コンタクト1と金めっき銅板との相対位置は、コンタクト1の弾性接触部5が10%圧縮されるように設定される。プリント配線板と金めっき銅板は、スペーサ等を介して位置決めされ、必要な箇所はビス等の固定具で固定されて、互いの相対位置がずれないように構成される。
【0024】
このように構成された試験対象物が、環境試験器(型式名:SH−242、エスペック株式会社製)の槽内に設置される。槽内の温度は−40℃と125℃との間で周期的に変更される。より詳しくは、槽内の温度を125℃まで上昇させた後、125℃のまま2時間保持する。その後、槽内の温度を1時間かけて−40℃まで下降させた後、−40℃のまま2時間保持する。その後、槽内の温度を1時間かけて125℃まで上昇させ、以降は、上述の周期で槽内の温度を変更する。以上のような周期的な処理を167サイクルにわたって実行した後、コンタクト1の抵抗値を抵抗計(ミリオームハイテスタ)によって測定する。試験結果を下記表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
上記表1中、抵抗値が30mΩ以下となったコンタクト(No.15−21,23)について、常温を上回るような高温環境下で長期間にわたって使用された場合であっても、コンタクトの直流抵抗値が上昇するのを抑制できると判定した。No.15−21,23のコンタクトを見ると、突起部28の高さHについては、0.089mm≦H≦0.296mmを満たすと好適であることがわかる。
【0027】
突起部28の高さHが0.089mmを下回るコンタクト(No.1−14,22)の場合、抵抗値は106−827mΩまで上昇する。このことから突起部28の高さHが過度に低い場合には、突起部28が有効に機能しないことがわかる。その一方、突起部28の高さHが0.296mmを上回るコンタクト(No.25)の場合、抵抗値は355mΩまで上昇する。このことから突起部28の高さHが過度に高い場合にも、突起部28が有効に機能しないことがわかる。ただし、突起部28の高さHが、0.089mm≦H≦0.296mmを満たすコンタクトであっても、抵抗値が627mΩまで上昇する例が存在する(No.24)。
【0028】
そこで、本件発明者らは、突起部28の高さHを最適化するだけでは所期の効果が得られるとは限らないと考え、更に検討を重ねた。その検討の中で、No.24のコンタクトは、他のコンタクトに比べて長さLの値が大きいことを見出した。この事実から、No.24のコンタクトは、突起部28の高さHが適度に高いものの、長さLの値が大きいため、突起部28の先端があまり尖っておらず、これが原因で突起部28の機能が低下するのではないかと推察される。以上のような推察結果に基づき、本件発明者らは、突起部28の高さHと長さLとの寸法比H/Lに着目するに至った。
【0029】
No.15−21,23のコンタクトを見ると、突起部28の寸法比H/Lについては、0.25≦H/L≦0.44を満たすと好適であることがわかる。突起部28の寸法比H/Lが0.25を下回るコンタクト(No.1−14,22,24)の場合、抵抗値は106−827mΩまで上昇する。このことから突起部28の寸法比H/Lが過度に小さい場合には、突起部28が有効に機能しないことがわかる。その一方、突起部28の寸法比H/Lが0.44を上回るコンタクト(No.25)の場合、抵抗値は355mΩまで上昇する。このことから突起部28の寸法比H/Lが過度に大きい場合にも、突起部28が有効に機能しないことがわかる。
【0030】
突起部28の特徴を寸法比H/Lで特定する場合には、高さHで特定する場合とは異なり、0.25≦H/L≦0.44を満たせば、例外なく所期の効果を得ることができる。よって、コンタクトの抵抗値が上昇するのを抑制するには、突起部28の寸法比H/Lを最適化することが重要な要素になるものと推察される。
【0031】
[効果]
以上説明した通り、上記コンタクト1によれば、常温を上回るような高温環境下で長期間にわたって使用された場合であっても、コンタクトの直流抵抗値が上昇するのを抑制することができる。
【0032】
[他の実施形態]
以上、コンタクト及びその製造方法について、例示的な実施形態を挙げて説明したが、上述の実施形態は本開示の一態様として例示されるものにすぎない。すなわち、本開示は、上述の例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施することができる。
【0033】
例えば、上述したコンタクト及びその製造方法の他、上述のコンタクトが実装された電子回路基板、上述のコンタクトを収容した部品供給体(例えば、キャリアテープや収容トレイなど。)など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【0034】
[補足]
なお、以上説明した例示的な実施形態から明らかなように、本開示のコンタクトは、更に以下に挙げるような構成を備えていてもよい。
【0035】
本開示の一態様では、突起部は、高さHが0.089mm≦H≦0.296mmを満たし、かつ長さLが0.226mm≦L≦0.788mmを満たすように構成されていてもよい。
【0036】
本開示の一態様では、基部は、天板部と、第一垂設壁と、第二垂設壁と、第一底板部と、第二底板部と、を有してもよい。x軸及びy軸が接合面に平行、かつz軸が接合面に垂直となり、接合面がz軸負方向に向けられる三次元直交座標系を規定した場合に、天板部は、基部のz軸正方向に向けられる面を構成する。第一垂設壁は、天板部のy軸負方向の端部から湾曲してz軸負方向へと延びる部分を少なくとも含む。第二垂設壁は、天板部のy軸正方向の端部から湾曲してz軸負方向へと延びる部分を少なくとも含む。第一底板部は、第一垂設壁のz軸負方向の端部から湾曲してy軸正方向へと延びる部分を少なくとも含む。第二底板部は、第二垂設壁のz軸負方向の端部から湾曲してy軸負方向へと延びる部分を少なくとも含む。接合面は、第一底板部及び第二底板部のz軸負方向に向けられる面によって構成される。弾性接触部は、垂下部と、水平延在部と、第一傾斜部と、折り返し部と、第二傾斜部と、を有してもよい。垂下部は、天板部のx軸負方向の端部から湾曲してz軸負方向へと延びる部分を少なくとも含む。水平延在部は、垂下部のz軸負方向の端部から湾曲してx軸正方向へと延びる部分を少なくとも含む。第一傾斜部は、水平延在部のx軸正方向の端部から湾曲してx軸正方向及びz軸正方向へ斜めに延びる部分を少なくとも含む。折り返し部は、第一傾斜部のx軸正方向の端部からz軸正方向へと湾曲してx軸負方向へと折り返す部分を少なくとも含む。第二傾斜部は、折り返し部からx軸負方向及びz軸負方向へ斜めに延びる部分を少なくとも含む。面状部は、第一傾斜部によって構成される。
【0037】
本開示の一態様では、基部は、第一フック受けと、第二フック受けと、を有してもよい。第一フック受けは、第一垂設壁のx軸正方向の端部から湾曲してy軸正方向へと延びる部分を少なくとも含む。第二フック受けは、第二垂設壁のx軸正方向の端部から湾曲してy軸負方向へと延びる部分を少なくとも含む。弾性接触部は、第二傾斜部のx軸負方向の端部から湾曲してz軸負方向へと突出するフック部を有する。水平延在部は、第一フック受け及び第二フック受けよりもx軸負方向にある垂下部から、第一フック受け及び第二フック受けよりもz軸負方向となる位置を通って、第一フック受け及び第二フック受けよりもx軸正方向へと延びる。第二傾斜部は、第一フック受け及び第二フック受けよりもx軸正方向にある折り返し部から、第一フック受け及び第二フック受けよりもz軸正方向となる位置を通って、第一フック受け及び第二フック受けよりもx軸負方向へと延びる。フック部は、第一フック受け及び第二フック受けのx軸負方向側となる位置へと入り込むように構成される。
【符号の説明】
【0038】
1…コンタクト、3…基部、3A…接合面、5…弾性接触部、11…天板部、12A…第一垂設壁、12B…第二垂設壁、13A…第一フック受け、13B…第二フック受け、14A…第一底板部、14B…第二底板部、21…垂下部、22A…第一ストッパー、22B…第二ストッパー、23…水平延在部、24…第一傾斜部(面状部)、24A…面状部の一方の面、25…折り返し部、26…第二傾斜部、27…フック部、28…突起部。
図1
図2
図3