特許第6903414号(P6903414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903414
(24)【登録日】2021年6月25日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】繊維処理剤
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/347 20060101AFI20210701BHJP
   D06M 13/352 20060101ALI20210701BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20210701BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20210701BHJP
   D06M 101/06 20060101ALN20210701BHJP
   D06M 101/32 20060101ALN20210701BHJP
【FI】
   D06M15/347
   D06M13/352
   D06M15/263
   C08F220/06
   D06M101:06
   D06M101:32
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-203635(P2016-203635)
(22)【出願日】2016年10月17日
(65)【公開番号】特開2018-66070(P2018-66070A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年7月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 郁雄
(72)【発明者】
【氏名】岡村 一弘
(72)【発明者】
【氏名】松井 健太朗
【審査官】 荒木 英則
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−348780(JP,A)
【文献】 特開平11−158773(JP,A)
【文献】 特開2004−100069(JP,A)
【文献】 特開2012−188586(JP,A)
【文献】 特開2000−355615(JP,A)
【文献】 特許第6633183(JP,B2)
【文献】 国際公開第2013/031890(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00− 15/715
C08C 19/00− 19/44
C08F 6/00−246/00
C08F 301/00
D06M 101/00−101/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体を含む繊維処理剤であって、
該重合体は、カルボキシル基又はその塩を有し、スルホン酸(塩)基含有単量体(A)由来の構造単位(a)を全構造単位100モル%に対して1〜50モル%有し、
該スルホン酸(塩)基含有単量体(A)は、下記式(1);
【化1】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。X、Yは、水酸基又は−SOZを表し、Zは水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。但し、X、Yのいずれか一方は水酸基であり、もう一方は−SOZである。)で表される単量体を含み、
該繊維処理剤は、自己架橋することを特徴とする繊維処理剤。
【請求項2】
前記繊維処理剤は、オキサゾリン基を有する架橋剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の繊維処理剤。
【請求項3】
前記重合体は、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の繊維処理剤。
【請求項4】
前記繊維処理剤は、架橋剤が有するオキサゾリン基の割合が、前記重合体が有するカルボキシル基又はその塩100モル%に対して0.5〜50モル%であることを特徴とする請求項2又は3に記載の繊維処理剤。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の繊維処理剤で処理されてなるセルロース繊維及び/又はポリエステル繊維。
【請求項6】
繊維生地に請求項1〜4に記載の繊維処理剤を固定化する工程を含むことを特徴とする繊維処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維処理剤に関する。より詳しくは、ポリエステル等の繊維に好適に用いられる繊維処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の衛生・快適性志向から、繊維に吸湿性、抗菌・防臭性、保温性、発熱性、柔軟性等の機能を付与することが求められ、種々の技術が開発されている。特許文献1には、繊維に繊維処理剤をコーティングすることによって風合い等を付与する技術が開示されている。また、特許文献2、3には、カルボキシル基含有重合体(A)及び多価オキサゾリン化合物(B)を用いたセルロース系基材加工用樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−280652号公報
【特許文献2】特開2000−129144号公報
【特許文献3】特開2000−119968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のとおり、繊維に機能を付与する技術が開発されているが、従来の繊維処理剤は、繊維を洗濯することにより、繊維に付与した機能が低下するという問題があった。また、上記機能性の中でも、吸湿性が小さいことで知られるナイロンやポリエステル等の繊維に対して吸湿性を付与する技術が特に求められていた。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、繊維に対し優れた吸湿性を付与することができ、かつ、洗濯耐久性に優れる繊維処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、繊維処理剤について種々検討したところ、スルホン酸(塩)基を有する重合体を含み、自己架橋する繊維処理剤が、繊維に対し優れた吸湿性を付与するとともに、洗濯耐久性にも優れることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、重合体を含む繊維処理剤であって、上記重合体は、スルホン酸(塩)基を有し、上記繊維処理剤は、自己架橋する繊維処理剤である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0008】
本発明の繊維処理剤は自己架橋するものである。繊維処理剤が自己架橋するとは、繊維処理剤に含まれる重合体等の成分が、分子間及び/又は分子内で架橋構造を形成することを意味する。
繊維処理剤を繊維上で自己架橋させることにより、繊維を繊維処理剤でコーティングすることができる。これにより、繊維処理剤が有する吸湿性を繊維に付与することができる。更に、コーティングを形成する過程において、自己架橋により繊維処理剤が繊維に絡まり、固定されることによって、洗濯によっても繊維処理剤が脱落せずに、付与した吸湿性が充分に維持されることとなる。
上記繊維処理剤は、繊維処理剤に含まれる重合体等が有する2つの反応性官能基を縮合反応させることにより架橋構造を形成することができ、加熱処理を行って架橋構造を形成することが好ましい。上記反応性官能基としては、特に制限されないが、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基及びこれらのエステルや塩;水酸基、アミノ基、イミノ基、オキサゾリン基、エポキシ基、カルボジイミド基等が挙げられる。反応性官能基として好ましくはカルボキシル基、水酸基、オキサゾリン基である。
本発明の繊維処理剤は、自己架橋以外に、繊維処理剤に含まれる成分とポリエステル等の繊維とで架橋構造を形成してもよい。
【0009】
<重合体>
上記繊維処理剤に含まれる重合体は、スルホン酸(塩)基を有するものである。
本発明の繊維処理剤は、上記重合体がスルホン酸(塩)基を有することにより、繊維に対して吸湿性を付与することができる。また、上記重合体がスルホン酸(塩)基を有することにより、繊維に対して放湿性を付与することもできる。
上記スルホン酸(塩)基は、スルホン酸基又はその塩を意味し、塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等が挙げられ、より具体的には、金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属の塩;マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属の塩;アルミニウム塩、鉄塩等の塩が挙げられる。有機アミン塩としては、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;モノエチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩等のアルキルアミン塩;モルホリン塩等が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果を十分に発現させるためには、スルホン酸基の塩としてはナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。
【0010】
上記重合体は、スルホン酸(塩)基を有するものであれば特に制限されないが、スルホン酸(塩)基含有単量体(A)由来の構造単位(a)を有するものであることが好ましい。
上記スルホン酸(塩)基含有単量体(A)は、スルホン酸(塩)基とエチレン性不飽和炭化水素基を有するものであれば、特に制限されず、例えば、3−(メタ)アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、α−メチル−p−スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルスルファミン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、4−(アリルオキシ)ベンゼンスルホン酸、1−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸、1,1−ジメチル−2−プロペン−1−スルホン酸、3−ブテン−1−スルホン酸、1−ブテン−3−スルホン酸、2−アクリルアミド−1−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−ブタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−フェニルプロパンスルホン酸、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸等の不飽和スルホン酸及びこれらの塩等が挙げられる。スルホン酸(塩)基含有単量体(A)としては下記式(1);
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。X、Yは、水酸基又は−SOZを表し、Zは水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。但し、X、Yの少なくとも一方は−SOZを表す。)で表される単量体であることが好ましい。すなわち、上記重合体は、上記式(1)で表される単量体由来の構造単位を有するものであることが好ましい。
上記Rとして、好ましくは水素原子である。
上記Rとして、好ましくはCH基である。RがCH基であれば、本発明の効果をより効果的に発現させることができる。
上記X、Yのいずれか一方は水酸基であり、もう一方はスルホン酸(塩)基であることが好ましい。より好ましくはXが水酸基であり、Yがスルホン酸(塩)基である。
上記重合体がスルホン酸(塩)基含有単量体(A)として上記式(1)で表される単量体由来の構造単位を有する場合、構造単位(a)を有することで、スルホン酸(塩)基と水酸基とを有するものとなるため、繊維への吸湿性に寄与するとともに、繊維処理剤の自己架橋をより充分に進行させることができる。
【0013】
上記スルホン酸(塩)基含有単量体としては、3−(メタ)アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸又はその塩がより好ましい。
【0014】
本発明の繊維処理剤に含まれる重合体は、カルボキシル基又はその塩を有するものであることが好ましい。カルボキシル基の塩の具体例及び好ましい例としては、スルホン酸基の塩で述べたものと同様のものが挙げられる。
カルボキシル基は、他の反応性官能基との縮合反応に好適に用いられるため、重合体がカルボキシル基を有することにより、繊維処理剤の自己架橋がより充分に進行することとなる。
【0015】
上記重合体は、カルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)を有するものであることが好ましい。
上記カルボキシル基含有単量体(B)としては、カルボキシル基とエチレン性不飽和炭化水素基(不飽和基)を有するものであれば、特に制限されないが、不飽和モノカルボン酸系単量体や不飽和ジカルボン酸系単量体等が挙げられる。
不飽和モノカルボン酸系単量体としては、分子内に不飽和基とカルボアニオンを形成しうる基とを1つずつ有する単量体であればよく、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、チグリン酸、3−メチルクロトン酸、2−メチル−2−ペンテン酸、α−ヒドロキシアクリル酸等;これらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;下記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1〜22のアルコール又は炭素数2〜4のグリコールとのハーフエステル;不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1〜22のアミンとのハーフアミド等が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸系単量体としては、分子内に不飽和基を1つとカルボアニオンを形成しうる基を2つとを有する単量体であればよく、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸等や、それらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩等、それらの無水物が挙げられる。
上記カルボキシル基含有単量体(B)としては、(メタ)アクリル酸(塩)、マレイン酸(塩)又は無水マレイン酸が好ましい。より好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)である。すなわち、上記重合体が(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位を有する繊維処理剤は、本発明の好ましい形態の1つである。カルボキシル基含有単量体(B)として最も好ましくはアクリル酸(塩)である。
【0016】
上記重合体は、水酸基を有していることが好ましい。
上記重合体がカルボキシル基と水酸基とを有する場合には、重合体中のカルボキシル基と水酸基とにより架橋構造を形成することができ、本発明の繊維処理剤の自己架橋がより充分に進行することとなる。
上記重合体が水酸基を有する場合、上記スルホン酸(塩)基含有単量体(A)及び/又はカルボキシル基含有単量体(B)が水酸基を有していても、重合体が、スルホン酸(塩)基含有単量体(A)及びカルボキシル基含有単量体(B)以外の水酸基含有単量体(C)由来の構造単位(c)を有していてもよい。
上記重合体が水酸基含有単量体(C)由来の構造単位(c)を有する場合、繊維の風合い(手触りや肌触り)を向上させることができる。
【0017】
上記水酸基含有単量体(C)としては、水酸基とエチレン性不飽和炭化水素基を有するものであって、スルホン酸(塩)基、カルボキシル基又はその塩を有しないものであれば特に制限されないが、例えば、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の不飽和アルコール及びこれらのアルキレンオキシド付加物;(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;3−(メタ)アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、1−アリルオキシ−3−ブトキシプロパン−2−オール等の水酸基含有エーテル類等が挙げられる。
水酸基含有単量体(C)として好ましくは不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物であり、より好ましくはイソプレノールのアルキレンオキシド付加物である。
なお、水酸基を有する単量体であっても、スルホン酸(塩)基、カルボキシル基又はその塩を有するものは、スルホン酸(塩)基含有単量体(A)又はカルボキシル基含有単量体(B)に分類するものとする。
【0018】
上記不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物、及び、(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートにおけるオキシアルキレン基としては、炭素数1〜20のオキシアルキレン基が好ましく、炭素数1〜4のオキシアルキレン基がより好ましく、更に好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基である。上記オキシアルキレン基の付加モル数としては、上記不飽和アルコール又は(メタ)アクリレート1モルあたり1〜50モルが好ましく、1〜20モルがより好ましい。
【0019】
上記重合体は、スルホン酸(塩)基含有単量体(A)、カルボキシル基含有単量体(B)及び水酸基含有単量体(C)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していてもよい。
その他の単量体(E)としては、特に制限されないが、例えば、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルラクタム系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸iso−ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のN置換若しくは無置換の(メタ)アクリルアミド;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、ビニルナフタレン、フェニルマレイミド、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体;エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、オクテン等のアルケン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルエチレンカーボネート及びその誘導体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール及びこれらの塩またはこれらの4級化物等の不飽和アミン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体等が挙げられる。
【0020】
上記重合体は、スルホン酸(塩)基含有単量体(A)由来の構造単位(a)の割合が、全構造単位100モル%に対して1〜50モル%であることが好ましい。構造単位(a)の割合が上記好ましい割合であれば、繊維に対してより充分な吸湿性を付与することができる。構造単位(a)の割合としてより好ましくは2〜40モル%であり、更に好ましくは5〜30モル%である。
【0021】
上記重合体は、カルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)の割合が、全構造単位100モル%に対して50〜99モル%であることが好ましい。構造単位(b)の割合が上記好ましい割合であれば、繊維処理剤の自己架橋をより充分に進行させることができる。構造単位(b)の割合としてより好ましくは60〜98モル%であり、更に好ましくは70〜95モル%である。
【0022】
上記重合体は、カルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)の割合が、構造単位(a)100モル%に対して100〜9900モル%であることが好ましい。より好ましくは150〜4900モル%であり、更に好ましくは200〜1900モル%である。
【0023】
上記重合体は、水酸基含有単量体(C)由来の構造単位(c)の割合が、全構造単位100モル%に対して0〜40モル%であることが好ましい。構造単位(c)の割合が0モル%よりも大きく、40モル%以下であれば、繊維の風合いをより向上させることができる。より好ましくは0〜30モル%であり、更に好ましくは0〜25モル%である。
上記重合体はまた、水酸基の割合が、全構造単位100モル%に対して0〜40モル%であることが好ましい。重合体が有する水酸基の割合が0モル%よりも大きく、40モル%以下であれば、繊維処理剤の自己架橋をより充分に進行させることができる。上記水酸基の割合としてより好ましくは0〜30モル%であり、更に好ましくは0〜25モル%である。
【0024】
上記重合体は、その他の単量体(E)由来の構造単位(e)の割合が、全構造単位100モル%に対して0〜30モル%であることが好ましい。より好ましくは0〜15モル%であり、最も好ましくは0モル%である。
【0025】
上記重合体は、重量平均分子量が5,000〜200,000であることが好ましい。重量平均分子量が5,000以上であれば、重合体を繊維上で架橋させた場合に、繊維処理剤が水に溶けにくくなり、洗濯耐久性により優れることとなる。
重量平均分子量が200,000以下であれば、本発明の繊維処理剤で処理した繊維の肌触りがより向上することとなる。重量平均分子量としてより好ましくは10,000〜150,000であり、更に好ましくは10,000〜100,000であり、特に好ましくは20,000〜80,000である。
重合体の重量平均分子量は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0026】
<重合体の製造方法>
本発明の繊維処理剤に含まれる重合体の製造方法は、特に制限されないが、単量体成分を重合することにより製造することができ、単量体成分の具体例及び好ましい例、並びに、各単量体の好ましい割合は、上述のとおりである。
上記重合体の製造方法は、スルホン酸(塩)基含有単量体(A)及びカルボキシル基含有単量体(B)を含む単量体成分を重合する工程(以下、「重合工程」ともいう)を含むことが好ましい。
【0027】
上記重合工程における、単量体成分の重合を開始する方法としては、特に制限されないが、例えば、重合開始剤を添加する方法、UVを照射する方法、熱を加える方法、光開始剤存在下に光を照射する方法等が挙げられる。
上記重合工程において、重合開始剤を用いることが好ましい。
上記重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アスコルビン酸と過酸化水素、過硫酸塩と金属塩等の、酸化剤と還元剤とを組み合わせてラジカルを発生させる酸化還元型開始剤等が好適である。これらの重合開始剤のうち、残存単量体が減少する傾向にあることから、過酸化水素、過硫酸塩、アゾ系化合物が好ましく、過硫酸塩が最も好ましい。これらの重合開始剤は、単独で使用されてもよく、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0028】
上記重合開始剤の使用量としては、全単量体の使用量1モルに対して、好ましくは0.1g以上、15g以下であり、より好ましくは1g〜12gである。
【0029】
上記重合工程においては、必要に応じて連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤として、具体的には、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸等のチオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン等のハロゲン化物;イソプロピルアルコール、グリセリン等の、第2級アルコール;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸(塩)(これらの水和物を含む);亜リン酸、亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸(塩);亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸(塩);亜硫酸水素ナトリウム等の重亜硫酸(塩);亜ジチオン酸ナトリウム等の亜ジチオン酸(塩);ピロ亜硫酸カリウム等のピロ亜硫酸(塩)、過酸化水素などが挙げられる。上記連鎖移動剤として好ましくは、次亜リン酸(塩)、重亜硫酸(塩)、過酸化水素である。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
連鎖移動剤の使用量としては、単量体(全単量体)の使用量1モルに対して、0g以上、20g以下であることが好ましく、0g以上、15g以下であることがより好ましい。
【0030】
上記重合工程において、溶媒を使用する場合、溶媒としては水性溶媒が好ましい。水性溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール(2−プロパノール)、n−ブチルアルコール、ジエチレングリコール等のアルコール類、グリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等が挙げられ、好ましくは水である。
単量体の溶媒への溶解性向上のため、必要に応じて、重合に悪影響を及ぼさない範囲で、任意の適切な有機溶媒を適宜加えてもよい。このような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
溶媒の使用量としては、単量体100質量%に対して40〜300質量%が好ましい。
【0031】
上記重合工程において、重合温度は、特に限定されるものではないが、20℃〜110℃であることが好ましく、より好ましくは50〜105℃であり、更に好ましくは60〜105℃である。
また、反応時間は、上記重合反応が完結するように、反応温度や、単量体成分、重合開始剤、及び、溶媒等の種類(性質)や組み合わせ、使用量等に応じて、適宜設定すればよい。
【0032】
重合体の中和率を好適な範囲とするために、単量体の原料の一部としてスルホン酸(塩)基含有単量体(A)、カルボキシル基含有単量体(B)の塩を用いても、重合中、重合後に中和剤として、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物等を添加してもよい。
【0033】
<架橋剤>
本発明の繊維処理剤は、オキサゾリン基を有する架橋剤を含むものであることが好ましい。上記繊維処理剤に含まれる重合体がカルボキシル基を有するものであって、繊維処理剤が上記架橋剤を含む場合、重合体が有するカルボキシル基と架橋剤が有するオキサゾリン基とで架橋構造を形成することができるため、繊維処理剤の自己架橋反応が短時間で充分に進行することとなる。
すなわち、オキサゾリン基を有する架橋剤を含み、上記重合体が、カルボキシル基又はその塩を有する繊維処理剤もまた本発明の好ましい形態の1つである。
【0034】
上記架橋剤は、オキサゾリン基を有するものであれば特に制限されないが、オキサゾリン基量(架橋剤1g当たりのオキサゾリン基の数)が0.1〜10mmol/gであることが好ましい。より好ましくは0.5〜8mmol/gである。
【0035】
上記架橋剤は、オキサゾリン基を有する重合体(以下、オキサゾリン基含有重合体とも称する。)であることが好ましい。
上記オキサゾリン基含有重合体は、オキサゾリン基含有単量体由来の構造単位を有するものであることが好ましい。より好ましくは、オキサゾリン基含有単量体由来の構造単位とオキサゾリン基含有単量体以外のその他の単量体由来の構造単位とを有するものである。
【0036】
上記オキサゾリン基含有単量体としては、エチレン性不飽和炭化水素基とオキサゾリン基とを有するものであれば特に制限されないが、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、4,4−ジメチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、4,4−ジメチル−2−ビニル−5,5−ジヒドロ−4H−1,3−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4,4−ジメチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等が挙げられる。好ましくは2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4,4−ジメチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリンである。
【0037】
上記その他の単量体は、オキサゾリン基を有しないものであれば特に制限されないが、例えば、上記その他の単量体(E)と同様のものが挙げられる。好ましくは(メタ)アクリル酸エステル類、ビニルアリール単量体及びシアン化ビニル系単量体であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステル類である。
上記(メタ)アクリル酸エステル類として好ましくは、脂肪族アルキル(メタ)アクリレートが好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸メチルである。
上記ビニルアリール単量体として好ましくは、スチレン、α−メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
上記シアン化ビニル系単量体として好ましくは、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。
【0038】
上記オキサゾリン基含有重合体は、オキサゾリン基含有単量体由来の構造単位の割合が、全構造単位100モル%に対して、20〜95モル%であることが好ましく、より好ましくは30〜90モル%であり、更に好ましくは40〜85モル%である。
【0039】
上記オキサゾリン基含有重合体の重量平均分子量は、10,000〜150,000であることが好ましい。より好ましくは30,000〜130,000である。
架橋剤の重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
上記オキサゾリン基含有重合体は、単量体成分から製造したものを用いてもよく、市販の重合体を用いてもよい。
【0040】
<繊維処理剤>
本発明の繊維処理剤は、架橋剤が有するオキサゾリン基の割合が、上記重合体が有するカルボキシル基又はその塩100モル%に対して0.5〜50モル%であることが好ましい。架橋剤が有するオキサゾリン基の割合が0.5モル%以上であれば、繊維処理剤の自己架橋反応をより充分に進行させることができ、50モル%以下であれば架橋反応の反応性が高くなりすぎることを抑制し、繊維処理剤のゲル化を抑制することができる。より好ましくは1〜30モル%であり、更に好ましくは1.5〜25モル%である。
【0041】
本発明の繊維処理剤は、吸湿性及び放湿性を繊維に付与することができるものである。すなわち、本発明の繊維処理剤は吸放湿性付与剤でもある。
【0042】
本発明の繊維処理剤は、親水性の置換基を有しているため、各種の繊維に処理した場合、吸湿性を付与することができる。親水性の置換基とは、水酸基、スルホン基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基、アミノ基等が挙げられる。これらの置換基のうち好ましくはカルボキシル基、スルホン基であり、特に好ましくはスルホン基である。
【0043】
本発明の繊維処理剤に含まれる重合体の割合は、繊維処理剤100質量%に対して、好ましくは50〜100質量%であり、より好ましくは70〜100質量%であり、更に好ましくは80〜100質量%であり、特に好ましくは90〜100質量%である。
【0044】
本発明の繊維処理剤中には、重合体及び架橋剤以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分を含んでいてもよい。
【0045】
<繊維処理剤を用いた繊維の処理方法>
本発明の繊維処理剤を用いた繊維の処理方法は、特に制限されないが、繊維に繊維処理剤を固定化する工程を含むものであることが好ましい。すなわち、本発明は、繊維に繊維処理剤を固定化する工程を含む繊維処理方法でもある。上記繊維処理方法としては、繊維生地を乾燥させる工程(前乾燥工程)と、乾燥した繊維生地を繊維処理剤の水溶液に浸漬させる工程(浸漬工程)と、繊維生地を脱水する工程(脱水工程)と、繊維生地に繊維処理剤を固定化する工程(固定化工程)とを含むことがより好ましい。
【0046】
本発明の繊維処理剤で処理する繊維としては特に制限されないが、ポリエステルやナイロン等の合成繊維や、キュプラ等の再生セルロース繊維、綿等の天然セルロース繊維等のセルロース繊維等が挙げられる。
本発明はまた、本発明の繊維処理剤で処理されてなるセルロース繊維及び/又はポリエステル繊維でもある。
上記前乾燥工程の温度及び時間は特に制限されないが、8〜150℃で1〜180分間行うことが好ましい。
上記繊維処理剤の水溶液の繊維処理剤の濃度は、特に制限されないが、1〜15質量%であることが好ましい。
上記浸漬工程における浸漬時間は、1〜30分間が好ましい。
上記脱水工程においては、例えば、脱水機、マングルを用いて脱水を行うことが好ましい。
【0047】
上記処理方法は、脱水工程と固定化工程との間に中乾燥工程を行ってもよい。中乾燥工程は、8〜150℃において、1〜180分間行うことが好ましい。
上記固定化工程は、例えば、繊維生地がセルロース繊維である場合、好ましくは100〜160℃において、1〜30分間行うことが好ましい。繊維生地がポリエステル繊維等の合成繊維である場合、好ましくは100〜220℃において、好ましくは1〜30分間行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0048】
本発明の繊維処理剤は、上述の構成よりなり、繊維に対し優れた吸湿性を付与することができ、かつ、洗濯耐久性に優れるため、ポリエステル等の繊維に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0050】
<重量平均分子量の測定条件(GPC)>
装置:東ソー株式会社製 HLC−8320GPC
検出器:RI
カラム:昭和電工株式会社製 SHODEX Asahipak GF−310−HQ、
GF−710−HQ、GF−1G 7B
カラム温度:40℃
流速:0.5mL/min.
検量線:創和科学株式会社製 ポリアクリル酸標準
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム水溶液
【0051】
<重合体水溶液の固形分測定方法>
重合反応が終了した時点での重合溶液1gを1gの脱イオン水で希釈して130℃で60分間乾燥させ、その蒸発残分を測定して、以下の計算式より求めた。
固形分(%)=〔乾燥後の蒸発残分(g)/乾燥前の重合溶液の質量(g)〕×100
【0052】
<再生セルロース生地の繊維処理剤による繊維処理>
10cm四方の再生セルロース(キュプラ)試験布を用意し、130℃、60分間の予備乾燥を行い、試験布の質量(X)を測定した。10質量%濃度に調整した繊維処理剤に試験布を浸漬し、試験布に残る繊維処理剤水溶液の量が布に対して150±10%となるように脱水を行い、130℃で15分間乾燥して、質量(Y)を測定した。
試験布に対して固定化された繊維処理剤の割合は以下の計算式より算出した。
固定化量(%)=〔(Y/X)−1〕×100
【0053】
<ポリエステル生地の繊維処理剤による繊維処理>
10cm四方のポリエステル試験布を用意し、130℃、60分間の予備乾燥を行い、試験布の質量(X)を測定した。10質量%濃度に調整した繊維処理剤に試験布を浸漬し、試験布に残る繊維処理剤水溶液の量が布に対して100±10%となるように脱水を行い、130℃で5分間乾燥した後に、さらに190℃で1分間乾燥して、質量(Y)を測定した。
試験布に対して固定化された繊維処理剤の割合は以下の計算式より算出した。
固定化量(%)=〔(Y/X)−1〕×100
【0054】
<洗濯耐久性評価>
繊維処理剤が固定化された試験布を1回洗濯した後に130℃で60分間乾燥して質量(Y’)を測定した。
洗濯後における試験布に対して固定化された繊維処理剤の割合は以下の計算式より算出した。
固定化量(%)=〔(Y’/X)−1〕×100
【0055】
<吸湿性評価>
洗濯耐久性評価後の試験布(比較例については繊維処理していない試験布)を105℃で2時間乾燥し、質量(M)を測定した。続いて、試験布を秤量瓶に入れ、30℃、相対湿度90%の恒温槽にて保管し、24時間後に取り出して、吸湿後の質量(N)を測定した。吸湿率は以下の計算式で計算した。
吸湿率(%)=〔(N−M)/M〕×100
【0056】
〔製造例1〕
還流冷却器、攪拌機を備えた容量25LのSUS製反応容器に、40質量%3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム水溶液(以下、40%HAPSとも称する。)6024gを装入し、攪拌下で沸点還流状態まで昇温した。次いで攪拌下、沸点還流状態の重合反応系中に、80質量%アクリル酸水溶液(以下、80%AAとも称する。)5670gと40%HAPS:6024g、15質量%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、15%NaPSとも称する。)2128gを滴下した。80%AAの添加を開始する時点を基準(0分)として、80%AAを0分〜90分の間、40%HAPSを0分〜60分の間、それぞれ一定速度で滴下した。開始剤である15%NaPSは、添加速度9.7g/分で滴下し、開始55分で添加速度を3倍の29.1g/分に変更し、0分〜110分の間滴下した。次いで、脱イオン水(希釈水)4940gを50分〜90分の間、一定速度で滴下した。それぞれ別個のノズルから滴下し、反応液は、攪拌下、沸点還流状態に保った。
上記15%NaPSの滴下終了後、さらに30分間、上記反応液を沸点還流状態に保持(熟成)し、重合を完結させ、重合体Aの水溶液を得た。重合体Aの水溶液の固形分濃度は40質量%、残存単量体(残存HAPS)は固形分100質量%に対し0.9質量%であった。また重合体Aの重量平均分子量は140,000であった。
【0057】
〔製造例2〕
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS製反応容器に、脱イオン水231.2gを装入し、攪拌下で85℃まで昇温した。次いで攪拌下、85℃の重合反応系中に、80%AA:407.9g、40%HAPS:780.0g、15%NaPS:159.0g、45%次亜リン酸ナトリウム・1水和物水溶液(以下、45%SHPとも称する。)42.4gを滴下した。80%AAの添加を開始する時点を基準(0分)として、80%AAを0分〜180分の間、一定速度で滴下した。40%HAPSについては、0分〜30分の間を添加速度8.67g/分で滴下し、30分〜140分の間を4.73g/分の添加速度で滴下した。開始剤である15%NaPSは、0分〜130分の間を添加速度0.58g/分で滴下し、130分〜200分の間を1.19g/分の添加速度で滴下した。還元剤である45%SHPは0分〜180分の間一定速度で滴下した。それぞれ別個のノズルから滴下し、反応液は、攪拌下、85℃に保った。
上記15%NaPSの滴下終了後、さらに30分間、上記反応液を85℃に保持(熟成)し、重合を完結させ、重合体Bの水溶液を得た。重合体Bの水溶液の固形分濃度は45.4質量%、重量平均分子量は8,000であった。
【0058】
〔製造例3〕
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS製反応容器に、脱イオン水509.1gとモール塩0.03gを装入し、攪拌下で87℃まで昇温した。次いで攪拌下、87℃の重合反応系中に、80%AA:292.4g、40%HAPS:295.1g、イソプレノールのエチレンオキサイド10モル付加物(以下、IPN10とも称する。)285.2g、15%NaPS:202.2g、32.5%亜硫酸水素ナトリウム(以下、32.5%SBSと略す)16.0gを滴下した。80%AAの添加を開始する時点を基準(0分)として、80%AAを0分〜180分の間、40%HAPSについては0分〜40分の間、一定速度で滴下した。IPN10については0分〜170分の間一定速度で滴下した。開始剤である15%NaPSは、0分〜130分の間を添加速度0.73g/分で滴下し、130分〜200分の間を1.53g/分の添加速度で滴下した。還元剤である32.5%SBSは0分〜170分の間一定速度で滴下した。それぞれ別個のノズルから滴下し、反応液は、攪拌下、87℃に保った。
上記15%NaPSの滴下終了後、さらに30分間、上記反応液を87℃に保持(熟成)し、重合を完結させ、重合体Cの水溶液を得た。重合体Cの水溶液の固形分濃度は42.4質量%、重量平均分子量は20,300であった。
【0059】
〔製造例4〕
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS製反応容器に、脱イオン水220.8gを装入し、攪拌下で沸点還流状態まで昇温した。次いで攪拌下、沸点還流状態の重合反応系中に、80%AA:151.0g、40%HAPS:152.4g、IPN10:147.3g、15%NaPS:97.0g、1%SHP:31.3gを滴下した。80%AAの添加を開始する時点を基準(0分)として、80%AAを0分〜180分の間、40%HAPSについては0分〜40分の間、一定速度で滴下した。IPN10については0分〜170分の間一定速度で滴下した。開始剤である15%NaPSは、0分〜130分の間を添加速度0.32g/分で滴下し、130分〜200分の間を0.79g/分の添加速度で滴下した。還元剤である1%SHPは0分〜170分の間一定速度で滴下した。それぞれ別個のノズルから滴下し、反応液は、攪拌下、沸点還流状態に保った。
上記15%NaPSの滴下終了後、さらに30分間、上記反応液を沸点還流状態に保持(熟成)し、重合を完結させ、重合体Dの水溶液を得た。重合体Dの水溶液の固形分濃度は44.1質量%、重量平均分子量は38,100であった。
【0060】
上記製造例1〜4で得られた重合体A〜Dのモノマー組成比及び重量平均分子量を表1に示した。
【0061】
【表1】
【0062】
〔実施例1〕
製造例1で得られた重合体Aの水溶液10.00g、脱イオン水29.50g、オキサゾリン基を有する架橋剤としてエポクロスWS−300(株式会社日本触媒製、オキサゾリン基含有アクリル系重合体、オキサゾリン基量:7.7mmol/g、重量平均分子量:12×10、以下、「WS−300」とも称する。):0.66g(即ち、重合体Aに含まれるカルボキシル基100mol%に対し、オキサゾリン基を2mol%含有)をよく撹拌し、10質量%濃度の繊維処理剤(1)を得た。それを用いて、ポリエステル生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価及び吸湿性評価を行った。結果を表2に示した。
【0063】
〔実施例2〕
製造例1で得られた重合体Aの水溶液10.00g、脱イオン水29.50g、エポクロスWS−300:1.66g(即ち、重合体Aに含まれるカルボキシル基100mol%に対し、オキサゾリン基を5mol%含有)をよく撹拌し、10質量%濃度の繊維処理剤(2)を得た。それを用いて、ポリエステル生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価及び吸湿性評価を行った。結果を表2に示した。
【0064】
〔実施例3〕
製造例1で得られた重合体Aの水溶液10.00g、脱イオン水31.61g、エポクロスWS−500(株式会社日本触媒製、オキサゾリン基含有アクリル系重合体、オキサゾリン基量:4.5mmol/g、重量平均分子量:7×10、以下、「WS−500」とも称する。):0.73g(即ち、重合体Aに含まれるカルボキシル基100mol%に対し、オキサゾリン基を5mol%含有)をよく撹拌し、10質量%濃度の繊維処理剤(3)を得た。それを用いて、ポリエステル生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価及び吸湿性評価を行った。結果を表2に示した。
【0065】
〔実施例4〕
製造例1で得られた重合体Aの水溶液10.00g、脱イオン水31.21g、エポクロスWS−700(株式会社日本触媒製、オキサゾリン基含有アクリル系重合体、オキサゾリン基量:4.5mmol/g、重量平均分子量:4×10、以下、「WS−700」とも称する。):1.14g(即ち、重合体Aに含まれるカルボキシル基100mol%に対し、オキサゾリン基を5mol%含有)をよく撹拌し、10質量%濃度の繊維処理剤(4)を得た。それを用いて、ポリエステル生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価及び吸湿性評価を行った。結果を表2に示した。
【0066】
〔実施例5〕
製造例1で得られた重合体Aの水溶液10.00g、脱イオン水29.50gをよく撹拌し、10質量%濃度の繊維処理剤(5)を得た。それを用いて、ポリエステル生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価及び吸湿性評価を行った。結果を表2に示した。
【0067】
〔実施例6〕
製造例2で得られた重合体Bの水溶液10.00g、脱イオン水35.44g、エポクロスWS−300:1.91g(即ち、重合体Bに含まれるカルボキシル基100mol%に対し、オキサゾリン基を5mol%含有)をよく撹拌し、10質量%濃度の繊維処理剤(6)を得た。それを用いて、ポリエステル生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価及び吸湿性評価を行った。結果を表2に示した。
【0068】
〔実施例7〕
製造例2で得られた重合体Bの水溶液10.00g、脱イオン水35.44gをよく撹拌し、10質量%濃度の繊維処理剤(7)を得た。それを用いて、ポリエステル生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価及び吸湿性評価を行った。結果を表2に示した。
【0069】
〔実施例8〕
製造例3で得られた重合体Cの水溶液10.00g、脱イオン水32.45g、エポクロスWS−300:1.39g(即ち、重合体Cに含まれるカルボキシル基100mol%に対し、オキサゾリン基を5mol%含有)をよく撹拌し、10質量%濃度の繊維処理剤(8)を得た。それを用いて、ポリエステル生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価及び吸湿性評価を行った。結果を表2に示した。
【0070】
〔実施例9〕
製造例3で得られた重合体Cの水溶液10.00g、脱イオン水32.45gをよく撹拌し、10質量%濃度の繊維処理剤(9)を得た。それを用いて、ポリエステル生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価及び吸湿性評価を行った。結果を表2に示した。
【0071】
〔実施例10〕
製造例4で得られた重合体Dの水溶液10.00g、脱イオン水34.06g、エポクロスWS−300:1.44g(即ち、重合体Cに含まれるカルボキシル基100mol%に対し、オキサゾリン基を5mol%含有)をよく撹拌し、10質量%濃度の繊維処理剤(10)を得た。それを用いて、ポリエステル生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価及び吸湿性評価を行った。結果を表2に示した。
【0072】
〔実施例11〕
製造例4で得られた重合体Dの水溶液10.00g、脱イオン水34.06gをよく撹拌し、10質量%濃度の繊維処理剤(11)を得た。それを用いて、ポリエステル生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価及び吸湿性評価を行った。結果を表2に示した。
【0073】
〔比較例1〕
10質量%濃度の繊維処理剤(2)を用いない以外は、実施例2と同様にし、ポリエステル生地についての洗濯耐久性評価及び吸湿性評価を行った。結果を表2に示した。
【0074】
【表2】
なお、表2中、架橋剤の割合は、重合体が有するカルボキシル基100モル%に対する架橋剤が有するオキサゾリン基の割合(モル%)を表す。
【0075】
〔実施例12〕
実施例2に記載した10質量%濃度の繊維処理剤(2)を用いて、再生セルロース生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価及び吸湿性評価を行った。結果を表3に示した。
【0076】
〔実施例13〕
実施例5に記載した10質量%濃度の繊維処理剤(5)を用いて、再生セルロース生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価及び吸湿性評価を行った。結果を表3に示した。
【0077】
〔実施例14〕
実施例6に記載した10質量%濃度の繊維処理剤(6)を用いて、再生セルロース生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価及び吸湿性評価を行った。結果を表3に示した。
【0078】
〔実施例15〕
実施例8に記載した10質量%濃度の繊維処理剤(8)を用いて、再生セルロース生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価及び吸湿性評価を行った。結果を表3に示した。
【0079】
〔実施例16〕
実施例9に記載した10質量%濃度の繊維処理剤(9)を用いて、再生セルロース生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価及び吸湿性評価を行った。結果を表3に示した。
【0080】
〔実施例17〕
実施例10に記載した10質量%濃度の繊維処理剤(10)を用いて、再生セルロース生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価及び吸湿性評価を行った。結果を表3に示した。
【0081】
〔実施例18〕
実施例11に記載した10質量%濃度の繊維処理剤(11)を用いて、再生セルロース生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価及び吸湿性評価を行った。結果を表3に示した。
【0082】
〔比較例2〕
10質量%濃度の繊維処理剤(2)を用いない以外は、実施例12と同様にし、再生セルロース生地についての洗濯耐久性評価及び吸湿性評価を行った。結果を表3に示した。
【0083】
【表3】
なお、表3中、架橋剤の割合は、重合体が有するカルボキシル基100モル%に対する架橋剤が有するオキサゾリン基の割合(モル%)を表す。