特許第6903417号(P6903417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6903417固体撮像素子および制御方法、並びに電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903417
(24)【登録日】2021年6月25日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】固体撮像素子および制御方法、並びに電子機器
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/374 20110101AFI20210701BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20210701BHJP
   H04N 5/369 20110101ALI20210701BHJP
   H04N 5/357 20110101ALI20210701BHJP
【FI】
   H04N5/374
   H01L27/146 A
   H01L27/146 F
   H04N5/369
   H04N5/357
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-217278(P2016-217278)
(22)【出願日】2016年11月7日
(65)【公開番号】特開2018-78370(P2018-78370A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082131
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(72)【発明者】
【氏名】須藤 浩希
【審査官】 橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/121352(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0062772(US,A1)
【文献】 国際公開第2016/076126(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/30 − 5/378
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
行列状に配置される複数の画素の1列ごとに2以上の所定数ずつ設けられ、前記画素から出力される画素信号のAD(Analog to Digital)変換を行う際に、前記画素信号と参照信号とを比較する比較器と、
前記1列に配置された前記画素から出力される前記画素信号が、2以上の所定数の前記比較器それぞれに並列的に供給される接続構成と、2以上の所定数の前記比較器のいずれかに逐次的に供給される接続構成との両方で、1列の前記画素と2以上の所定数の前記比較器全てとを接続することができ、前記画素信号が供給される前記比較器を切り替える切り替え部と
を備える固体撮像素子。
【請求項2】
前記画素信号が逐次的にAD変換されるモードである場合に、所定数の前記比較器の中から順次、前記画素信号が供給される前記比較器が切り替えられてAD変換に利用されるように前記切り替え部を制御する制御部
をさらに備える請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記制御部は、所定数の前記比較器のうち、予め特定された特性が良好な前記比較器を前記画素信号のAD変換に選択的に利用する
請求項2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
各列の前記画素から出力される画素信号を並列的にAD変換する列並列AD変換処理部をさらに備え、
前記画素の1列ごとに、所定数の前記比較器と前記切り替え部とが前記列並列AD変換処理部に設けられる
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記画素は、画素信号を出力するための素子を複数の前記画素により共有する画素共有構造である
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
複数の前記画素が形成されるセンサ回路チップと、前記画素を駆動するための回路が形成されるロジック回路チップとが積層された積層構造である
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項7】
行列状に配置される複数の画素の1列ごとに2以上の所定数ずつ設けられ、前記画素から出力される画素信号のAD(Analog to Digital)変換を行う際に、前記画素信号と参照信号とを比較する比較器と、
前記1列に配置された前記画素から出力される前記画素信号が、2以上の所定数の前記比較器それぞれに並列的に供給される接続構成と、2以上の所定数の前記比較器のいずれかに逐次的に供給される接続構成との両方で、1列の前記画素と2以上の所定数の前記比較器全てとを接続することができ、前記画素信号が供給される前記比較器を切り替える切り替え部と
を備える固体撮像素子の制御方法であって、
前記画素信号が逐次的にAD変換されるモードである場合に、所定数の前記比較器の中から順次、前記画素信号が供給される前記比較器が切り替えられてAD変換に利用されるように前記切り替え部を制御する
制御方法。
【請求項8】
行列状に配置される複数の画素の1列ごとに2以上の所定数ずつ設けられ、前記画素から出力される画素信号のAD(Analog to Digital)変換を行う際に、前記画素信号と参照信号とを比較する比較器と、
前記1列に配置された前記画素から出力される前記画素信号が、2以上の所定数の前記比較器それぞれに並列的に供給される接続構成と、2以上の所定数の前記比較器のいずれかに逐次的に供給される接続構成との両方で、1列の前記画素と2以上の所定数の前記比較器全てとを接続することができ、前記画素信号が供給される前記比較器を切り替える切り替え部と
を有する固体撮像素子を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体撮像素子および制御方法、並びに電子機器に関し、特に、低消費電力モードにおける画質の劣化を抑制することができるようにした固体撮像素子および制御方法、並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮像機能を備えた電子機器においては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの撮像素子が使用されている。
【0003】
撮像素子は、光電変換を行うPD(photodiode:フォトダイオード)と複数のトランジスタとが組み合わされた画素を有しており、被写体の像が結像する像面に配置された複数の画素から出力される画素信号に基づいて画像が構築される。また、CMOSイメージセンサは、例えば、画素の列ごとに並列的に画素信号のAD変換を行うカラムADC(Analog to Digital Converter)を備えて構成され、画素信号のAD変換を高速に行うことができる。
【0004】
近年、撮像素子の高機能化が進められており、高速撮像モードや低消費電力モードなど様々な機能を備えた撮像素子が開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、ダイナミックレンジの拡大やノイズの低減などを実現するモード1、高速な読み出しを実現するモード2、および、低消費電力を実現するモード3それぞれに応じた読み出しモード制御が行われる撮像素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−55589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した特許文献1に開示されている撮像素子は、低消費電力モード(モード3)において、2つのカラムADCのうち、一方のカラムADCの利用を常に停止して画像を撮像するように構成されている。そのため、低消費電力モードで撮像された画像は、全てのカラムADCを利用して撮像した画像と比較して、カラムADC固有のバラツキやノイズが縦筋となって見え易くなる傾向があり、画質の劣化が懸念される。
【0008】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、低消費電力モードにおける画質の劣化を抑制することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一側面の固体撮像素子は、行列状に配置される複数の画素の1列ごとに2以上の所定数ずつ設けられ、前記画素から出力される画素信号のAD変換を行う際に、前記画素信号と参照信号とを比較する比較器と、前記1列に配置された前記画素から出力される前記画素信号が、2以上の所定数の前記比較器それぞれに並列的に供給される接続構成と、2以上の所定数の前記比較器のいずれかに逐次的に供給される接続構成との両方で、1列の前記画素と2以上の所定数の前記比較器全てとを接続することができ、前記画素信号が供給される前記比較器を切り替える切り替え部とを備える。
【0010】
本開示の一側面の制御方法は、行列状に配置される複数の画素の1列ごとに2以上の所定数ずつ設けられ、前記画素から出力される画素信号のAD変換を行う際に、前記画素信号と参照信号とを比較する比較器と、前記1列に配置された前記画素から出力される前記画素信号が、2以上の所定数の前記比較器それぞれに並列的に供給される接続構成と、2以上の所定数の前記比較器のいずれかに逐次的に供給される接続構成との両方で、1列の前記画素と2以上の所定数の前記比較器全てとを接続することができ、前記画素信号が供給される前記比較器を切り替える切り替え部とを備える固体撮像素子の制御方法であって、前記画素信号が逐次的にAD変換されるモードである場合に、所定数の前記比較器の中から順次、前記画素信号が供給される前記比較器が切り替えられてAD変換に利用されるように前記切り替え部を制御する。
【0011】
本開示の一側面の電子機器は、行列状に配置される複数の画素の1列ごとに2以上の所定数ずつ設けられ、前記画素から出力される画素信号のAD変換を行う際に、前記画素信号と参照信号とを比較する比較器と、前記1列に配置された前記画素から出力される前記画素信号が、2以上の所定数の前記比較器それぞれに並列的に供給される接続構成と、2以上の所定数の前記比較器のいずれかに逐次的に供給される接続構成との両方で、1列の前記画素と2以上の所定数の前記比較器全てとを接続することができ、前記画素信号が供給される前記比較器を切り替える切り替え部とを有する固体撮像素子を備える。
【0012】
本開示の一側面においては、行列状に配置される複数の画素の1列ごとに2以上の所定数ずつ設けられる比較器により、画素から出力される画素信号のAD変換を行う際に、画素信号と参照信号とが比較される。また、1列に配置された画素から出力される画素信号が、2以上の所定数の比較器それぞれに並列的に供給される接続構成と、2以上の所定数の比較器のいずれかに逐次的に供給される接続構成との両方で、1列の画素と2以上の所定数の比較器全てとを接続することができる切り替え部により、画素信号が供給される比較器が切り替えられる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一側面によれば、低消費電力モードにおける画質の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本技術を適用した撮像素子の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
図2】1列の画素に対して2個の比較器が設けられる撮像素子の構成例を示すブロック図である。
図3】低消費電力モードにおける画素信号の供給の切り替えについて説明する図である。
図4】12並列AD変換を採用した撮像素子の構成例を示すブロック図である。
図5】積層構造で構成された撮像素子の構成例を示す図である。
図6】比較器を選択的に利用する構成を説明する図である。
図7】撮像装置の構成例を示すブロック図である。
図8】イメージセンサを使用する使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
<撮像素子の構成例>
【0017】
図1は、本技術を適用した撮像素子の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【0018】
図1に示すように、撮像素子11は、画素アレイ部12、垂直駆動回路13、カラム信号処理回路14、水平駆動回路15、出力回路16、参照信号生成回路17、および制御回路18を備えて構成される。
【0019】
画素アレイ部12は、図示しない光学系により集光される光を受光する受光面である。画素アレイ部12には、複数の画素21が行列状に配置されており、それぞれの画素21は、水平信号線22を介して行ごとに垂直駆動回路13に接続されるとともに、垂直信号線23を介して列ごとにカラム信号処理回路14に接続される。複数の画素21は、それぞれ受光する光の光量に応じたレベルの画素信号を出力し、それらの画素信号から、画素アレイ部12に結像する被写体の画像が構築される。
【0020】
垂直駆動回路13は、画素アレイ部12に配置される複数の画素21の行ごとに、それぞれの画素21を駆動(転送や、選択、リセットなど)するための駆動信号を、水平信号線22を介して画素21に供給する。
【0021】
カラム信号処理回路14は、複数の画素21から垂直信号線23を介して出力される画素信号に対してCDS(Correlated Double Sampling:相関2重サンプリング)処理を施すことにより、画素信号のAD変換を行うとともにリセットノイズを除去する。また、カラム信号処理回路14は、画素アレイ部12において行列状に配置される複数の画素21の1列ごとにAD変換回路を備えており、各列の画素21から出力される画素信号を並列的にAD変換することができる。
【0022】
水平駆動回路15は、画素アレイ部12に配置される複数の画素21の列ごとに、カラム信号処理回路14から画素信号をデータ出力信号線24に出力させるための駆動信号を、カラム信号処理回路14に供給する。
【0023】
出力回路16は、水平駆動回路15の駆動信号に従ったタイミングでカラム信号処理回路14からデータ出力信号線24を介して供給される画素信号を増幅し、後段の信号処理回路に出力する。
【0024】
参照信号生成回路17は、カラム信号処理回路14の比較器32(図2参照)が画素信号をAD変換する際に参照する参照信号を生成する。例えば、参照信号生成回路17は、一定の勾配で電位が低下する鋸形状をした波形(RAMP波形)の参照信号を生成し、比較器32は、画素信号と参照信号との電位を比較する。
【0025】
制御回路18は、例えば、撮像素子11の各ブロックの駆動周期に従ったクロック信号を生成して供給することで、それらの各ブロックの駆動を制御する。例えば、制御回路18は、図2および図3を参照して後述するように、撮像素子11が低消費電力モードである場合に、所定数の比較器32の中から順次、画素信号が供給される比較器32が切り替えられてAD変換に利用されるように切り替え部31を制御する。
【0026】
また、撮像素子11は、カラム信号処理回路14が画素21の1列ごとに備えるAD変換回路に、切り替え部31および比較器32(図2参照)が設けられた構成となっている。
【0027】
例えば、撮像素子11は、画素アレイ部12において行列状に配置される複数の画素21の1列ごとに、所定数ずつの比較器32が設けられており、切り替え部31により画素21と比較器32との接続構成を変更することができる。これにより、撮像素子11は、撮像速度の高速化、または、消費電力の低減を図ることができる。
【0028】
例えば、撮像素子11は、1列に配置された画素21から出力される画素信号が、所定数の比較器32それぞれに並列的に供給される接続構成として、所定数の比較器32が並列的な駆動を行うことで、高速撮像モードで画像を撮像することができる。一方、撮像素子11は、1列に配置された画素21から出力される画素信号が、所定数の比較器32のいずれかに逐次的に供給される接続構成として、所定数の比較器32が並列的な駆動を行わずに、画素信号のAD変換を順に行うことで、低消費電力モードで画像を撮像することができる。
【0029】
図2には、1列の画素21に対して、2個の比較器32−1および32−2が設けられる撮像素子11の構成例が示されている。
【0030】
また、図2には、1列に配置される複数の画素21のうち、4個の画素21−1乃至21−4が示されている。例えば、撮像素子11は、2つの画素21により画素信号を出力するためのFD(Floating Diffusion)部やトランジスタなどの素子を共有する2画素共有構造を採用することができる。即ち、図示するように、画素21−1および21−2、並びに、画素21−3および21−4が、それぞれ2画素共有構造となっている。なお、撮像素子11は、2画素以上の複数の画素による画素共有構造を採用してもよい。
【0031】
撮像素子11は、2個の比較器32−1および32−2に対して並列的に画素信号を供給することができるように、2本の垂直信号線23−1および23−2が配置されて構成される。例えば、垂直信号線23−1には画素21−1および21−2が接続され、垂直信号線23−2には画素21−3および21−4が接続されており、垂直信号線23−1および23−2に対して画素21が2行ごとに交互に接続される構成となっている。
【0032】
そして、撮像素子11では、垂直信号線23−1および23−2と比較器32−1および32−2との間に、切り替え部31が配置されている。切り替え部31は、画素21−1乃至21−4から出力される画素信号が、比較器32−1および32−2それぞれに並列的に供給される接続構成と、比較器32−1および32−2のいずれか一方に逐次的に供給される接続構成との両方で、画素21−1乃至21−4と比較器32−1および32−2とを接続することができる。
【0033】
切り替え部31は、画素21−1乃至21−4から出力される画素信号が供給される比較器32を切り替えることができるように、4つのスイッチ41a乃至41dが接続されて構成されている。スイッチ41aは、垂直信号線23−1と比較器32−1との間に配置され、スイッチ41bは、垂直信号線23−2と比較器32−1との間に配置される。また、スイッチ41cは、垂直信号線23−1と比較器32−2との間に配置され、スイッチ41dは、垂直信号線23−2と比較器32−2との間に配置される。従って、切り替え部31は、1列に配置される画素21−1乃至21−4と、比較器32−1および32−2の両方とを接続することができる。
【0034】
従って、撮像素子11では、図1の制御回路18が切り替え部31のスイッチ41a乃至41dの開閉を制御することで、画素21−1乃至21−4から出力される画素信号を、比較器32−1および32−2の両方、または、どちらか一方に供給することができる。
【0035】
例えば、撮像素子11が高速撮像モードであるとき、切り替え部31は、垂直信号線23−1および23−2それぞれを介して出力される画素信号が並列的に、比較器32−1および32−2に供給される接続構成となる。従って、撮像素子11は、比較器32−1および32−2が並列的にアクティブ状態となって画素信号のAD変換を行うことで、画素信号のAD変換に要する時間を略1/2に短縮することができる。
【0036】
一方、撮像素子11が低消費電力モードであるとき、切り替え部31は、垂直信号線23−1および23−2それぞれを介して出力される画素信号が逐次的に、比較器32−1または32−2に供給される接続構成となる。従って、撮像素子11は、比較器32−1および32−2が並列的にアクティブ状態となることはなく、どちらか一方がスタンバイ状態となる分だけ、画素信号のAD変換に要する消費電力を低減することができる。
【0037】
このように、撮像素子11が低消費電力モードであるとき、比較器32−1および32−2の一方がアクティブ状態となり、他方がスタンバイ状態となる。
【0038】
従って、図3Aに示すように、低消費電力モードでは、垂直信号線23−1を介して出力される画素信号を、スイッチ41cをオンにして比較器32−2に供給し、その後、垂直信号線23−2を介して出力される画素信号を、スイッチ41dをオンにして比較器32−2に供給することができる。このように、撮像素子11は、画素信号を逐次的に比較器32−2に供給するように切り替え部31による切り替えが制御されることで、比較器32−2を常にアクティブ状態とし、比較器32−1を常にスタンバイ状態するような駆動を行うことができる。
【0039】
しかしながら、上述したように、低消費電力モードにおける画素信号のAD変換に常に一方の比較器32を利用する場合、その比較器32に固有のバラツキやノイズが縦筋となって見え易くなる傾向があり、画質の劣化が懸念される。
【0040】
そこで、撮像素子11では、低消費電力モードにおける画素信号のAD変換に比較器32−1および32−2を交互に利用して、それぞれアクティブ状態とスタンバイ状態とを交互に切り替えるように切り替え部31が制御される。
【0041】
例えば、図3Bに示すように、垂直信号線23−1を介して出力される画素信号を、スイッチ41aをオンにして比較器32−1に供給し、その後、垂直信号線23−2を介して出力される画素信号を、スイッチ41dをオンにして比較器32−2に供給する。続いて、垂直信号線23−2を介して出力される画素信号を、スイッチ41bをオンにして比較器32−1に供給し、その後、垂直信号線23−1を介して出力される画素信号を、スイッチ41cをオンにして比較器32−2に供給する。
【0042】
このように、撮像素子11は、比較器32−1および32−2に交互に画素信号を供給するように切り替え部31を制御することで、比較器32−1および32−2は、それぞれ交互にアクティブ状態とスタンバイ状態とを繰り返すことになる。即ち、撮像素子11では、比較器32−1および32−2が画素信号のAD変換を交互に(時分割に)繰り返すことができる。
【0043】
従って、撮像素子11は、比較器32−1および32−2に固有のバラツキやノイズがあったとしても、比較器32−1および32−2によりAD変換される画素信号が交互に並ぶような画像となる。その結果、撮像素子11は、低消費電力モードにおいて、上述したような縦筋が見え易くなることを回避(例えば、点線のように見え難く)することができ、画質の劣化を抑制することができる。例えば、撮像素子11は、リセットノイズの他、他の原理で発生するノイズや、個別の比較器32に発生する固定的なパターンとなる縦筋が画像に与える悪影響を抑制することができる。
【0044】
<撮像素子の他の構成例>
【0045】
図4は、12並列AD変換を採用した撮像素子11の構成例を示すブロック図である。
【0046】
図4に示すように、撮像素子11は、行列状に配置される複数の画素21の1列ごとに、比較器32が12個ずつ配置されて構成される。なお、図4に示す画素21は、画素共有構造は採用されておらず、12個の画素21−1乃至21−12が順に、12本の垂直信号線23−1乃至23−12にそれぞれ接続されている。そして、12本の垂直信号線23−1乃至23−12と、12個の比較器32−1乃至32−12との間に、12個の切り替え部31−1乃至31−12がそれぞれ配置されている。
【0047】
例えば、切り替え部31−1は、垂直信号線23−1乃至23−12と比較器32−1との間を接続し、切り替え部31−2は、垂直信号線23−1乃至23−12と比較器32−2との間を接続する。以下、同様に、切り替え部31−12は、垂直信号線23−1乃至23−12と比較器32−12との間を接続する。従って、切り替え部31−1乃至31−12は、1列に配置される画素21と、比較器32−1乃至32−12の全てとを任意に接続することができる。
【0048】
そして、例えば、撮像素子11が高速撮像モードであるとき、切り替え部31−1乃至31−12は、垂直信号線23−1乃至23−12それぞれを介して出力される画素信号が並列的に、比較器32−1乃至32−12に供給される接続構成となる。従って、撮像素子11は、比較器32−1乃至32−12が並列的にアクティブ状態となって画素信号のAD変換を行うことで、画素信号のAD変換に要する時間を略1/12に短縮することができる。
【0049】
一方、撮像素子11が低消費電力モードであるとき、切り替え部31−1乃至31−12は、垂直信号線23−1乃至23−12それぞれを介して出力される画素信号が逐次的に、比較器32−1乃至32−12いずれかに供給される接続構成となる。従って、撮像素子11は、比較器32−1乃至32−12のうちのいずれか1つがアクティブ状態となって画素信号のAD変換を行うことで、画素信号のAD変換に要する消費電力を低減することができる。
【0050】
そして、撮像素子11は、低消費電力モードにおいて、比較器32−1乃至32−12のうちの、いずれか1つを順番に、画素信号のAD変換に利用することを繰り返すことができる。従って、上述したように、撮像素子11は、低消費電力モードにおける画質の劣化を抑制することができる。
【0051】
<積層構造で構成された撮像素子の構成例>
【0052】
図5には、積層構造で構成された撮像素子11の構成例が示されている。
【0053】
図5に示すように、撮像素子11は、センサ回路チップ101およびロジック回路チップ102を積層した積層構造で構成することができる。
【0054】
センサ回路チップ101には、図1に示したように、複数の画素21が行列状に配置された画素アレイ部12が形成されるとともに、上下チップ接続部111乃至113が形成される。上下チップ接続部111乃至113には、センサ回路チップ101をロジック回路チップ102に電気的に接続するための複数のコンタクト部が設けられている。
【0055】
例えば、センサ回路チップ101は、画素アレイ部12の上方に設けられた上下チップ接続部111と、画素アレイ部12の下方に設けられた上下チップ接続部112との両方を介して、画素アレイ部12からロジック回路チップ102へ画素信号を出力することができる。また、センサ回路チップ101は、画素アレイ部12の側方に設けられた上下チップ接続部113を介して、ロジック回路チップ102から画素アレイ部12へ駆動信号を供給することができる。
【0056】
ロジック回路チップ102には、図1の垂直駆動回路13および参照信号生成回路17−1および17−2が形成される。また、ロジック回路チップ102に形成される画素アンプ負荷回路131−1および131−2、AD回路132−1および132−2、並びに、カウンタ回路133−1および133−2は、図1のカラム信号処理回路14を構成する。
【0057】
また、ロジック回路チップ102には、センサ回路チップ101の上下チップ接続部111乃至113に対応する箇所に、上下チップ接続部121乃至123が形成されており、それぞれ対応するコンタクト部が互いにメタル接合される。さらに、ロジック回路チップ102は、画素アレイ部12から出力される画素信号に対する各種の信号処理を行う画像信号処理部141を備えている。
【0058】
このように構成される撮像素子11では、切り替え部31および比較器32(上述の図2または図4参照)は、任意の位置に実装することができ、例えば、AD回路132−1および132−2にそれぞれ実装することができる。または、切り替え部31および比較器32をセンサ回路チップ101に実装してもよい。
【0059】
そして、撮像素子11は、低消費電力モードにおいて、切り替え部31を介して画素信号を供給する比較器32の切り替えを制御することで、上述したような縦筋が見え易くなることを回避することができ、画質の劣化を抑制することができる。
【0060】
なお、例えば、撮像素子11は、高速で撮像された画像を、外部に出力する前に一時的に保持するメモリチップ(図示せず)を積層した3層構造を採用してもよい。
【0061】
<比較器の選択的な利用>
【0062】
図6を参照して、比較器32の選択的な利用について説明する。
【0063】
上述したように、撮像素子11が低消費電力モードであるとき、所定数の比較器32の中から順次、画素信号が供給される比較器32が切り替えられてAD変換に利用されるように制御回路18による制御が行われる。このとき、制御回路18は、所定数の比較器32全てを画素信号のAD変換に利用するのではなく、任意の比較器32だけを選択してAD変換に利用することができる。
【0064】
例えば、撮像素子11の製造時の検査工程において、カラム信号処理回路14に形成される全ての比較器32の特性を検査した結果、特性が良好でない比較器32を、例えば、OTP ROM(One Time Programable Read Only Memory)などに記憶させる。そして、制御回路18は、撮像素子11が低消費電力モードであるとき、特性が良好でないと記憶されている比較器32を画素信号のAD変換に利用せずに、特性が良好であると予め特定された比較器32を画素信号のAD変換に選択的に利用することができる。
【0065】
例えば、図6を参照して、4つの比較器32−1乃至32−4のうち、比較器32−2の特性が良好でない場合について説明する。
【0066】
図6Aに示すように、4つの比較器32−1乃至32−4の全てをAD変換に利用して、それらに順次、画素信号の供給を切り替えると、画素21の4行ごとに、特性が良好でない比較器32−2により画素信号がAD変換される。この場合、画像には、上述したような縦筋が見え易くなることはないが、比較器32−2によりAD変換された画素信号に発生するノイズが点線のように見えることになる。
【0067】
これに対し、図6Bに示すように、4つの比較器32−1乃至32−4のうち、比較器32−1、比較器32−3、および比較器32−4を選択的に利用することで、比較器32−2により画素信号がAD変換されることが回避される。従って、この場合、画像には、図6Aのようなノイズが画素信号に発生することはなく、画質の向上を図ることができる。
【0068】
このように、制御回路18が、特性が良好な比較器32−1、比較器32−3、および比較器32−4を、画素信号のAD変換に選択的に利用することで、撮像素子11は、より高画質な画像を撮像することができる。
【0069】
なお、上述したような撮像素子11は、例えば、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮像システム、撮像機能を備えた携帯電話機、または、撮像機能を備えた他の機器といった各種の電子機器に適用することができる。
【0070】
<撮像装置の構成例>
【0071】
図7は、電子機器に搭載される撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【0072】
図7に示すように、撮像装置201は、光学系202、撮像素子203、信号処理回路204、モニタ205、およびメモリ206を備えて構成され、静止画像および動画像を撮像可能である。
【0073】
光学系202は、1枚または複数枚のレンズを有して構成され、被写体からの像光(入射光)を撮像素子203に導き、撮像素子203の受光面(センサ部)に結像させる。
【0074】
撮像素子203としては、上述した撮像素子11が適用される。撮像素子203には、光学系202を介して受光面に結像される像に応じて、一定期間、電子が蓄積される。そして、撮像素子203に蓄積された電子に応じた信号が信号処理回路204に供給される。
【0075】
信号処理回路204は、撮像素子203から出力された画素信号に対して各種の信号処理を施す。信号処理回路204が信号処理を施すことにより得られた画像(画像データ)は、モニタ205に供給されて表示されたり、メモリ206に供給されて記憶(記録)されたりする。
【0076】
このように構成されている撮像装置201では、上述した撮像素子11を適用することで、例えば、低消費電力モードにおける画質の劣化を抑制して、より高画質な画像を撮像することができる。
【0077】
<イメージセンサの使用例>
【0078】
図8は、上述のイメージセンサを使用する使用例を示す図である。
【0079】
上述したイメージセンサは、例えば、以下のように、可視光や、赤外光、紫外光、X線等の光をセンシングする様々なケースに使用することができる。
【0080】
・ディジタルカメラや、カメラ機能付きの携帯機器等の、鑑賞の用に供される画像を撮影する装置
・自動停止等の安全運転や、運転者の状態の認識等のために、自動車の前方や後方、周囲、車内等を撮影する車載用センサ、走行車両や道路を監視する監視カメラ、車両間等の測距を行う測距センサ等の、交通の用に供される装置
・ユーザのジェスチャを撮影して、そのジェスチャに従った機器操作を行うために、TVや、冷蔵庫、エアーコンディショナ等の家電に供される装置
・内視鏡や、赤外光の受光による血管撮影を行う装置等の、医療やヘルスケアの用に供される装置
・防犯用途の監視カメラや、人物認証用途のカメラ等の、セキュリティの用に供される装置
・肌を撮影する肌測定器や、頭皮を撮影するマイクロスコープ等の、美容の用に供される装置
・スポーツ用途等向けのアクションカメラやウェアラブルカメラ等の、スポーツの用に供される装置
・畑や作物の状態を監視するためのカメラ等の、農業の用に供される装置
【0081】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
行列状に配置される複数の画素の1列ごとに所定数ずつ設けられ、前記画素から出力される画素信号のAD(Analog to Digital)変換を行う際に、前記画素信号と参照信号とを比較する比較器と、
前記1列に配置された前記画素から出力される前記画素信号が、所定数の前記比較器それぞれに並列的に供給される接続構成と、所定数の前記比較器のいずれかに逐次的に供給される接続構成との両方で、前記画素と所定数の前記比較器全てとを接続することができ、前記画素信号が供給される前記比較器を切り替える切り替え部と
を備える固体撮像素子。
(2)
前記画素信号が逐次的にAD変換されるモードである場合に、所定数の前記比較器の中から順次、前記画素信号が供給される前記比較器が切り替えられてAD変換に利用されるように前記切り替え部を制御する制御部
をさらに備える上記(1)に記載の固体撮像素子。
(3)
前記制御部は、所定数の前記比較器のうち、予め特定された特性が良好な前記比較器を前記画素信号のAD変換に選択的に利用する
上記(2)に記載の固体撮像素子。
(4)
各列の前記画素から出力される画素信号を並列的にAD変換する列並列AD変換処理部をさらに備え、
前記列並列AD変換処理部において、前記画素の1列ごとに、所定数の前記比較器と前記切り替え部とが設けられる
上記(1)から(3)までのいずれかに記載の固体撮像素子。
(5)
前記画素は、画素信号を出力するための素子を複数の前記画素により共有する画素共有構造である
上記(1)から(4)までのいずれかに記載の固体撮像素子。
(6)
複数の前記画素が形成されるセンサ回路チップと、前記画素を駆動するための回路が形成されるロジック回路チップとが積層された積層構造である
上記(1)から(5)までのいずれかに記載の固体撮像素子。
(7)
行列状に配置される複数の画素の1列ごとに所定数ずつ設けられ、前記画素から出力される画素信号のAD(Analog to Digital)変換を行う際に、前記画素信号と参照信号とを比較する比較器と、
前記1列に配置された前記画素から出力される前記画素信号が、所定数の前記比較器それぞれに並列的に供給される接続構成と、所定数の前記比較器のいずれかに逐次的に供給される接続構成との両方で、前記画素と所定数の前記比較器全てとを接続することができ、前記画素信号が供給される前記比較器を切り替える切り替え部と
を備える固体撮像素子の制御方法であって、
前記画素信号が逐次的にAD変換されるモードである場合に、所定数の前記比較器の中から順次、前記画素信号が供給される前記比較器が切り替えられてAD変換に利用されるように前記切り替え部を制御する
制御方法。
(8)
行列状に配置される複数の画素の1列ごとに所定数ずつ設けられ、前記画素から出力される画素信号のAD(Analog to Digital)変換を行う際に、前記画素信号と参照信号とを比較する比較器と、
前記1列に配置された前記画素から出力される前記画素信号が、所定数の前記比較器それぞれに並列的に供給される接続構成と、所定数の前記比較器のいずれかに逐次的に供給される接続構成との両方で、前記画素と所定数の前記比較器全てとを接続することができ、前記画素信号が供給される前記比較器を切り替える切り替え部と
を有する固体撮像素子を備える電子機器。
【0082】
なお、本実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
11 撮像素子, 12 画素アレイ部, 13 垂直駆動回路, 14 カラム信号処理回路, 15 水平駆動回路, 16 出力回路, 17 参照信号生成回路, 18 制御回路, 21 画素, 22 水平信号線, 23 垂直信号線, 24 データ出力信号線, 31 切り替え部, 32 比較器, 41a乃至41d スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8