(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記柱部は、前記円すいころの前記転動面と周方向に接触するころ案内面を有し、当該ころ案内面の径方向幅は、当該転動面の最小径の1/3以下である請求項1から7のいずれか1項に記載の円すいころ軸受。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のトランスミッションの軸、デファレンシャルの軸等、各種機械装置の回転軸を支持する用途において、従来、円すいころ軸受が用いられている。軸受内部の潤滑には液体の潤滑油を用いる油潤滑方式が一般的である。その潤滑油の供給方式としては、機械装置の運転中、ギヤの回転に伴う潤滑油の撹拌などによって当該潤滑油が軸受にはね飛ばされる跳ね掛け潤滑法、又は軸受の一部をオイルバス中に浸ける油浴潤滑法が一般的である。
【0003】
円すいころ軸受の内輪は、運転中、円すいころの大端面を案内する大鍔部を有する。その大鍔部と円すいころの大端面との摺接部では、周方向に滑る接触となるため、その摺接部において潤滑油が不足したり枯渇したりすることによる焼き付きの発生が懸念される。
【0004】
運転中は、大鍔部と円すいころの大端面に十分な量の潤滑油が供給される。運転中に大鍔部又は円すいころの大端面に付着した潤滑油は、運転停止時後、重力によって次第に流れ落ちていくが、短時間であれば、その摺接部に十分に残っている。このため、短時間で運転が再開される場合は、潤滑油の不足等が起こる懸念はない。運転再開までの時間が長い場合、円すいころの大端面や大鍔部から潤滑油が流れ落ちてしまい、運転再開当初、その摺接部において潤滑油の不足等が起こる。
【0005】
また、潤滑油が運転中に低粘度のものである程、あるいは、運転中に軸受内部へ供給される潤滑油量が少なくなる程、内輪の大鍔部と円すいころの大端面との摺接部における潤滑環境が厳しくなる。円すいころ軸受では、運転中に軸受内部で生じるポンプ作用により、潤滑油が保持器と内輪の間から軸受内部に入り易く、遠心力によって軸受内部を外輪側へ流動して軸受の外部へ抜け易い。このため、少油量化を進めると、潤滑油が大鍔部に届きにくくなる。
【0006】
特に、自動車のトランスミッション又はデファレンシャルに使用される円すいころ軸受では、近年、自動車の省燃費化を目的に軸受回転トルクの低減が求められている。軸受回転トルクの低減を図る手段として、軸受内部での潤滑油の攪拌抵抗を抑えることが有効である。このため、低粘度潤滑油の使用又は少油量化の傾向にあり、内輪の大鍔部と円すいころの大端面との摺接部において、十分な潤滑が確保できないことが懸念される。
【0007】
この懸念に対して、特許文献1に開示された円すいころ軸受では、樹脂によって形成されたかご形保持器の柱部が複数の溝状の油誘導部を有し、これら油誘導部により、上述のポンプ作用で軸受内部を流れる潤滑油が内輪側へ誘導される。このような円すいころ軸受は、保持器の軽量化により、軸受回転トルクの低減を図ることができ、さらに、油誘導部により、内輪の大鍔部と円すいころの大端面との摺接部に潤滑油が供給され易くすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された円すいころ軸受では、潤滑油が柱部の油誘導部を通って円すいころの大端面や大鍔部側へ供給される際、潤滑油は、円すいころの転動面に接触する。つまり、運転中に公転する円すいころの転動面とぶつかる潤滑油が増加するため、攪拌抵抗の増加につながり、軸受回転トルクが増加する問題がある。
【0010】
また、保持器の柱部に複数の油誘導部を形成すると、柱部の径方向幅が大きくなる。これに伴い、柱部のうち、円すいころと周方向に接触するころ案内面も、径方向に拡大するため、円すいころの転動面と柱部のころ案内面との間に発生する潤滑油のせん断抵抗が大きくなり、これも軸受回転トルクの増加要因になってしまう。
【0011】
また、最近では、円すいころ軸受の外輪を支持するアルミハウジングの採用による軸受のミスアライメント量の増加、軸受回転トルクを低トルク化するために円すいころ軸受に与える予圧量の低減による軸受剛性の低下等により、運転中の円すいころの挙動が不安定となり、内輪の大鍔部と円すいころ大端面の摺接部における潤滑不足の懸念が一層高まっている。
【0012】
また、運転再開当初は、潤滑油の温度が低く、軸受内部に供給される潤滑油の粘度が高くて流動性が悪いため、内輪の大鍔部と円すいころ大端面間に潤滑油が特に届き難くい条件となり、その摺接部における潤滑不足が特に懸念される。この懸念は、特に寒冷地(例えば、−40℃〜−30℃のような極低温環境下)で顕著となる。
【0013】
上述の背景に鑑み、この発明が解決しようとする課題は、円すいころ軸受の回転トルクの増加を避けつつ、運転再開当初における内輪の大鍔部と円すいころの大端面間の潤滑不足を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を達成するため、この発明は、小端面と大端面と転動面とを有する円すいころと、外周に設けられた軌道面と、前記円すいころの前記大端面を案内する大鍔部とを有する内輪と、内周に設けられた軌道面を有し、前記内輪と同軸に配置される外輪と、樹脂によって形成された保持器と、を備え、前記保持器は、第一環状部と、当該第一環状部に比して大径な第二環状部と、当該第一環状部と当該第二環状部との間をポケットに区切る複数の柱部とを有し、前記円すいころは、前記大端面を前記第二環状部側へ向けた姿勢で前記ポケットに収容されており、前記第二環状部のうち前記ポケットを形成するポケット内側面には、外径から内径まで貫通する油溝が設けられており、前記油溝の少なくとも一部分が、前記円すいころの前記大端面と対向している構成を採用したものである。
【0015】
上記構成によれば、軸受運転中に外部から供給される潤滑油は、第二環状部の内径側又は外径側から油溝へ容易に入り込む。その油溝の少なくとも一部分が円すいころの大端面と対向するポケット内側面上の領域を通っているため、その対向領域では、ポケット内側面と円すいころの大端面との間が広くなり、潤滑油が多く保持され易くなり、ポケット内側面付近で円すいころの大端面に付着する潤滑油の量が増加する。ポケット内側面付近で円すいころの大端面に付着した潤滑油は、円すいころの中心軸回りの回転に伴い、内輪の大鍔部との間へ運ばれる。したがって、ポケット内側面付近で円すいころの大端面に付着する潤滑油の量が増加すれば、内輪の大鍔部と円すいころの大端面との摺接部への潤滑油供給量も増加する。これにより、運転再開当初のように潤滑油が少量になった環境でも、内輪の大鍔部と円すいころの大端面間の潤滑不足が防止される。
【0016】
さらに、上記構成によれば、油溝が第二環状部のポケット内側面を通っているため、円すいころの転動面とぶつかる潤滑油の増加がなく(すなわち攪拌抵抗の増加がなく)、これにより、円すいころ軸受の回転トルクの増加が避けられる。
【0017】
さらに、上記構成によれば、第二環状部のポケット内側面が有する油溝と円すいころの大端面との対向領域では、ポケット内側面と円すいころの大端面との間が広くなるため、油溝がないとき比較して、ポケット内側面と円すいころの大端面との間に発生する潤滑油のせん断抵抗が低減される。このことも、円すいころ軸受の回転トルクの低減につながる。
【0018】
好ましくは、前記油溝の全部が、前記円すいころの前記大端面と対向する位置を通っているとよい。このようにすると、油溝を無駄なく活用して前述の潤滑不足を防止することができる。
【0019】
この発明において、ポケットごとの油溝の本数は問わない。
【0020】
例えば、前記第二環状部は、前記ポケットごとに複数の前記油溝を有し、前記複数の油溝は、前記ポケットを周方向に二等分する仮想平面を境界として対称形状になっていることが挙げられる。このようにすると、円すいころの公転方向がいずれであっても同様に前述の潤滑不足を防止することができる。
【0021】
この発明において、油溝は、径方向に一直線に延びてもよいし、傾斜していてもよいし、曲がっていてもよい。いずれにせよ、円すいころの大端面と油溝とが当該円すいころの中心軸方向に対向する面積が大きくなる程、当該大端面に潤滑油が付着し易くなる。このため、油溝は、当該大端面の周長(円すいころの中心軸回りの周長)が大きいところと多く対向する程よい。
【0022】
例えば、前記油溝は、前記第二環状部の外径から内径に向かって次第に前記柱部へ接近する方向に延びていることが挙げられる。このようにすると、第二環状部の外径から内径に向かって油溝が、円すいころの大端面の周縁投影位置から遠ざかることを抑えて、当該大端面に潤滑油を供給し易くすることができる。
【0023】
また、別例として、前記油溝は、前記円すいころの回転方向に向けて曲がる曲面状の溝側面を有することが挙げられる。このようにすると、軸受運転中、円すいころの大端面が当該円すいころの中心軸回りに回転する方向と、油溝を通る潤滑油の流れの向きが近くなるため、油溝の溝側面が直線状のときと比して、潤滑油が回転する当該大端面に巻き込まれて内輪の大鍔部まで届き易くなるので、当該大鍔部と当該大端面との摺接部へ潤滑油を供給し易くすることができる。
【0024】
この発明において、油溝の幅は、一定でもよいし、変化してもよい。また、油溝の幅は、要求される円すいころの大端面と内輪の大鍔部との摺接部における潤滑性能、第二環状部の機械的強度、油溝の成形難易度等を考慮して適宜に決定すればよい。
【0025】
例えば、前記油溝は、前記第二環状部の外径から内径まで一定の幅を有することが挙げられる。
【0026】
例えば、前記油溝の幅は、前記円すいころの最大径の半分以下であることが挙げられる。
【0027】
この発明においては、第二環状部のポケット内側面に油溝を形成するだけなので、柱部の径方向幅を特許文献1の保持器のように広く設定する必要がない。
【0028】
例えば、前記柱部は、前記円すいころの前記転動面と周方向に接触するころ案内面を有し、当該ころ案内面の径方向幅は、当該転動面の最小径の1/3以下であることが挙げられる。このようにすると、特許文献1の保持器と比して、柱部のころ案内面と、円すいころの転動面との間での潤滑油のせん断抵抗を抑えることができる。
【0029】
この発明に係る円すいころ軸受は、自動車の動力伝達経路に含まれた回転軸を支持する用途であって、跳ね掛け又は油浴潤滑法で潤滑油を外部から軸受内部へ供給する用途に好適である。この発明に係る円すいころ軸受は、前述のように円すいころ軸受の回転トルクの増加を避けつつ、運転再開当初における内輪の大鍔部と円すいころの大端面間の潤滑不足を防止することが可能なため、低粘度潤滑油の使用や少油量化にも対応することができ、ひいては自動車の動力損失を低減して低燃費化に貢献することができる。
【発明の効果】
【0030】
この発明は、上記構成の採用により、保持器の第二環状部のポケット内側面が有する油溝で円すいころの大端面に付着する潤滑油の量を増やし、ポケット内側面と円すいころの大端面との間に発生する潤滑油のせん断抵抗の低減を図ることが可能なため、円すいころ軸受の回転トルクの増加を避けつつ、運転再開当初における内輪の大鍔部と円すいころの大端面間の潤滑不足を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、この発明の第一実施形態に係る円すいころ軸受を添付図面の
図1〜
図4に基づいて説明する。
【0033】
図1に示す円すいころ軸受1は、所定数の円すいころ10と、内輪20と、外輪30と、保持器40と、を備える。なお、
図1は、この円すいころ軸受1の軸受中心軸(図示省略)を含む仮想アキシアル平面上における断面を示すものであり、その断面の位置は、
図2に示すI−I線を通る位置である。
図2は、
図1中の円すいころ10の中心軸に直交する仮想ラジアル平面上における断面を示すものであり、その断面の位置は、
図1中に示すII−II線を通る位置である。
【0034】
内輪20、外輪30及び保持器40の各中心軸(図示省略)は、同軸上にある。この同軸の回転中心となる軸線が、この円すいころ軸受1の軸受中心軸(図示省略)である。以下、この軸受中心軸(図示省略)に沿った方向のことを単に「軸方向」といい、この軸方向は、
図1中左右方向に相当する。また、その軸受中心軸に対して直角な方向のことを単に「径方向」といい、この径方向は、
図1中上下方向に相当する。また、その軸受中心軸(図示省略)周りの円周方向のことを単に「周方向」という。
【0035】
図1に示す内輪20は、その外周に円すい状の軌道面21と、この軌道面21の大径側よりも径方向に高い大鍔部22とを有する軌道輪となっている。大鍔部22は、周方向に沿った全周連続部となっている。
【0036】
外輪30は、その内周に円すい状の軌道面31を有する軌道輪となっている。
【0037】
円すいころ10は、小端面11と、大端面12と、内輪20の軌道面21及び外輪30の軌道面31に対応の円すい状に形成された転動面13とを有する転動体となっている。小端面11は、円すいころ10の小径側の側面であって、内輪20の軌道面21、外輪30の軌道面31を転がることのない表面部分である。大端面12は、円すいころ10の大径側の側面であって、内輪20の軌道面21、外輪30の軌道面31を転がることのない表面部分である。円すいころ10の側面は、円すいころ10の中心軸方向に露出する円すいころ10の表面部分である。
【0038】
ここで、円すいころ10の中心軸方向は、中心軸CLが延びる直線方向のことをいい、以下、この方向を単に「ころ中心軸方向」という。また、円すいころ10の中心軸CL周りの円周方向のことを単に「ころ周方向」という。
【0039】
円すいころ10の大端面12と内輪20の大鍔部22とは、この円すいころ軸受1に対する予圧により、ころ中心軸方向に接触する状態とされる。軸受運転中、円すいころ10は、この転動面13において、内輪20の軌道面21と外輪30の軌道面31との間に介在し、円すいころ10の中心軸CL回りに回転しながら、軌道面21、31上を転がる(円すいころ10の公転)。この際、円すいころ10の大端面12は、内輪20の大鍔部22に対して周方向に滑り、大鍔部22は、当該大端面12を周方向に案内する。
【0040】
円すいころ10、内輪20及び外輪30は、それぞれ鋼、例えば軸受鋼によって一体に形成されている。
【0041】
保持器40は、第一環状部41と、第一環状部41に比して大径な第二環状部42と、第一環状部41と第二環状部42との間をポケット43に区切る複数の柱部44とを有する。
【0042】
保持器40は、合成樹脂により一体に形成されている。その合成樹脂は、例えば、強化繊維が含まれた繊維強化樹脂であってもよい。保持器40は、軸方向に二分割された金型によって形成されている。
【0043】
第一環状部41は、保持器40の小径側で周方向に連続する保持器部分となっている。
【0044】
第二環状部42は、保持器40の大径側で周方向に連続する保持器部分となっている。第二環状部42の外径は、第一環状部41の外径よりも大径である。
【0045】
ポケット43は、保持器40に形成された、円すいころ10を収容するための空間である。柱部44は、隣接するポケット43、43間を周方向に分離するように第一環状部41と第二環状部42間に亘る保持器部分となっている。保持器40におけるポケット43の数は、内輪20の軌道面21と外輪30の軌道面31との間に配置される円すいころ10の総数と同数になっている。
【0046】
円すいころ10は、この大端面12を第二環状部42側へ向けた姿勢でポケット43に収容されている。
【0047】
保持器40は、軸受運転中、円すいころ10間の周方向間隔を柱部44で所定に保ちながら回転する。保持器40は、円すいころ10によって径方向に案内される、いわゆる転動体案内方式のものとなっている。
【0048】
図1では、保持器40と円すいころ10との間に設定された径方向のポケットすきまδの大きさを示すため、当該ポケットすきまδに相当分、外輪30を円すいころ10から径方向に離れた位置に描いている。軸受運転中、外輪30の軌道面31が円すいころ10の転動面13に接することは勿論である。ポケット43に収容された円すいころ10に対して保持器40が相対的に径方向へ自由に移動可能な範囲は、径方向のポケットすきまδに相当する。
【0049】
柱部44は、円すいころ10の転動面13と周方向に接触するころ案内面45を有する。ころ案内面45は、前述のポケットすきまδの範囲で円すいころ10の転動面13と周方向に接触し得る。ころ案内面45の径方向幅W1は、その転動面13における最小径D1の1/3以下であることが好ましい。ころ案内面45の径方向幅W1は、円すいころ10の転動面13と最も径方向内側で接触する柱部44上の接触位置と、円すいころ10の転動面13と最も径方向外側で接触する柱部44上の接触位置との間の径方向の距離である。
【0050】
第二環状部42は、内周部46と、外周部47と、当該内周部46と当該外周部47とを連結する連結部48とを有する。第二環状部42の内周部46は、内輪20の大鍔部22を取り囲む全周表面部となっている。第二環状部42の外周部47は、内周部46に周方向に沿う全周表面部となっている。第二環状部42の連結部48は、ポケット43を形成するポケット内側面48aを有する。第二環状部42のポケット内側面48aは、ポケット43ごとに形成され、いずれも同形になっている。
【0051】
ポケット内側面48aは、第二環状部42の外径から内径(外周部47から内周部46)まで貫通する油溝49を有する。
図2〜
図4に示すように、油溝49の全部は、軸方向のうちポケット43側へ向けて開放されており、軸方向に凹んでいる。このような油溝49の形状は、軸方向に二分割された金型の一方で転写することが可能であり、アンダーカットとなる部分を含まない点で好ましい。
【0052】
油溝49は、周方向に向き合う溝側面49a、49bと、径方向に沿った溝底部49cとで構成されている。溝側面49a、49b、49cは、油溝49の深さをもたせるための溝内面部分である。
【0053】
図示例では、油溝49の全部で深さを一定にしたが、油溝の深さは変化してもよく、例えば、油溝を横断面V溝状に、すなわち、周方向に沿った断面でV字状を成す対の溝側面で構成してもよい。
【0054】
油溝49は、第二環状部42の外径(外周部47)から内径(内周部46)まで一定の幅W2を有する。油溝49の幅W2は、溝側面49aの縁上の任意の一点と、溝側面49bの縁上との間の最短距離である。
【0055】
油溝49の幅W2は、円すいころ10の最大径D2の半分以下である。円すいころ10の最大径D2は、転動面13の最大径である。
【0056】
ポケット43を周方向に二等分する仮想平面Paxを
図2に示す。仮想平面Paxは、軸受中心軸(図示省略)を含む仮想平面であって、ポケット内側面48aの周方向中央を通る。
図1に示す円すいころ10の中心軸CLが
図2の仮想平面Pax上にある位置で、円すいころ10の大端面12をころ中心軸方向に第二環状部42へ投影したとき、その大端面12の周縁の投影位置を
図2に二点鎖線で示し、その二点鎖線に符号12を付す。大端面12のころ周方向の最大周長さは、二点鎖線で示す周縁上である。
【0057】
その二点鎖線の内側に油溝49の全部が収まっていることから分かるように、油溝49の全部は、円すいころ10の大端面12と対向している。言い換えると、油溝49の全部は、ころ中心軸方向に大端面12と対向する位置に設けられている。
【0058】
図2、
図3に示すように、油溝49は、第二環状部42の外径(外周部47)から内径(内周部46)に向かって次第に柱部44へ接近する方向に延びている。このため、仮想平面Paxに沿って真っ直ぐに延びる油溝を採用した場合に比して、第二環状部42の外周部47から内周部46に向かって油溝49が大端面12の周縁投影位置(二点鎖線上)から遠ざかることが抑えられている。
【0059】
第二環状部42は、ポケット43ごとに複数の油溝49を有する。図示例では、2つの油溝49がポケット内側面48aに含まれている。
【0060】
複数の油溝49は、仮想平面Paxを境界として対称形状になっている。仮想平面Paxと、仮想平面Paxを境とした周方向両側に存在する各油溝49との間の各距離は、第二環状部42の外周部47から内周部46に向かって次第に大きくなる。つまり、どの油溝49も、内周部46に接近する程、ポケット43の周方向両側に位置する柱部44の中で自己に近い側の柱部44の方へ接近するため、大端面12の周縁投影位置(二点鎖線上)から遠ざかることが抑えられている。
【0061】
この円すいころ軸受1は、跳ね掛け又は油浴潤滑方式で使用される。軸受運転中、外部から供給される潤滑油は、第二環状部42の内径側又は外径側から油溝49の夫々へ容易に入り込む(
図1、
図2参照)。これら油溝49の全部が円すいころ10の大端面12ところ中心軸方向に対向するポケット内側面48a上の領域を通っているため、その油溝49の対向領域では、ポケット内側部48aと大端面12との間が広くなり、潤滑油(
図1中にドット模様で示す)が多く保持され易くなり、結果的に、ポケット内側面48a付近で大端面12に付着する潤滑油の量が増加する。しかも、運転再開当初のように潤滑油の粘度が高い状態である程、大端面12と油溝49との間に潤滑油が保持され易くなる。ポケット内側面48a付近で大端面12に付着した潤滑油は、円すいころ10のころ周方向回転に伴い、内輪20の大鍔部22との間へ運ばれる。したがって、大鍔部22と大端面12との摺接部への潤滑油供給量も増加する。これにより、運転再開当初のように、円すいころ軸受1へ供給される潤滑油が少量である環境でも、大鍔部22と大端面12間の潤滑不足が防止される。
【0062】
また、油溝49が第二環状部42のポケット内側面48aを通っているため、円すいころ10の転動面13とぶつかる潤滑油の増加がなく(すなわち攪拌抵抗の増加がなく)、これにより、円すいころ軸受1の回転トルクの増加が避けられる。
【0063】
また、油溝49と大端面12との対向領域では、ポケット内側面48aと大端面12との間が広くなるため、油溝49がないとき比較して、ポケット内側面48aと大端面12との間に発生する潤滑油のせん断抵抗が低減される。このことも、円すいころ軸受1の回転トルクの低減につながる。
【0064】
このように、この円すいころ軸受1は、保持器40の第二環状部42のポケット内側面48aが有する油溝49で円すいころ10の大端面12に付着する潤滑油の量を増やして内輪20の大鍔部22と大端面12との摺接部への潤滑油の供給量を増やすことが可能であると共に、ポケット内側面48aと大端面12との間に発生する潤滑油のせん断抵抗の低減を図ることが可能なため、軸受回転トルクの増加を避けつつ、運転再開当初における大鍔部22と大端面12間の潤滑不足を防止することができる。
【0065】
また、この円すいころ軸受1は、油溝49の全部がころ中心軸方向に大端面12と対向する位置を通っているため、油溝49を無駄なく活用して前述の潤滑不足を防止することができる。
【0066】
また、円すいころ10の公転方向に転がり、大端面12がころ周方向に回転するとき、油溝49と大端面12との間で潤滑油が当該回転方向にせん断される。円すいころ10の回転方向に応じて、仮想平面Paxを境界とした周方向一方側の油溝49では、潤滑油が内輪20の大鍔部22側へ引き摺られ、反対の周方向他方側の油溝49では、潤滑油が外輪30側へ引き摺られる。この円すいころ軸受1は、第二環状部42がポケット43ごとに複数の油溝49を有し、これら油溝49がポケット43を周方向に二等分する仮想平面Paxを境界として対称形状になっているので(
図2参照)、円すいころ10の公転方向がいずれであっても複数の油溝49による潤滑油の保持、供給性能に差がでず、同様に前述の潤滑不足を防止することができる。
【0067】
また、この円すいころ軸受1は、油溝49が第二環状部42の外周部47から内周部46に向かって次第に柱部44へ接近する方向に延びているので、当該外周部47から内周部46に向かって油溝49が大端面12の周縁投影位置(
図2中の二点鎖線上)から遠ざかることを抑えて、当該大端面12に潤滑油を供給し易くすることができる。
【0068】
また、この円すいころ軸受1は、柱部44が円すいころ10の転動面13と周方向に接触するころ案内面45を有し、ころ案内面45の径方向幅W1が転動面13の最小径の1/3以下であるので、ころ案内面45と転動面13との間での潤滑油のせん断抵抗を抑えることができる。
【0069】
なお、第一実施形態では、油溝49の全部がころ中心軸方向に大端面12と対向する位置を通る例を示したが、油溝の少なくとも一部分が当該対向する位置を通るように変更してもよく、このような変更を行っても、大端面12に付着する潤滑油の量を増やすことは可能である。
【0070】
この発明の第二実施形態を
図5に基づいて説明する。なお、以下では、第一実施形態との相違点を述べるに留め、第一実施形態と対応の構成要素に同じ名称を用いる。
【0071】
図5に示すように、第二実施形態の第二環状部50は、ポケット51ごとに油溝53を1つだけ有する。なお、
図5は、軸受中心軸(図示省略)に対して直角な仮想ラジアル平面上における柱部44の断面を示し、第二環状部50のポケット51付近を軸方向から視た外観を示している。
【0072】
第二実施形態は、ポケット51ごとに油溝53が1つだけであり、円すいころの公転方向の相違で油溝53による潤滑油の保持、供給性能に差が生じるが、第二環状部50の肉量減少を抑えることができ、軸受回転方向が一方向に限定される場合に好適である。
【0073】
この発明の第三実施形態を
図6に基づいて説明する。なお、
図6は、
図5と切断位置が異なるが同様の断面及び外観を示している。
【0074】
図6に示すように、第三実施形態の第二環状部60は、円弧状に延びる油溝61を有する。油溝61は、円すいころの大端面12の周縁(図中に二点鎖線で示す)と同側へ曲がる曲面状の溝側面61a、61bを有する。つまり、片側の溝側面61aの曲率の中心は、溝側面61aを境として大端面12の中心に近い側にある。反対の片側の溝側面61bの曲率の中心も同様にある。
【0075】
軸受運転中、大端面12がころ周方向に回転すると、ころ10の回転方向と同じ方向に曲がる油溝61の溝側面61a、61bにより、油溝61を通る潤滑油の流れの向きが当該ころ10の回転方向に近くなるため、油溝の溝側面が直線状の第一実施形態又は第二実施形態と比して、油溝61の潤滑油が回転する当該大端面12に巻き込まれて内輪の大鍔部(
図1参照)まで届き易くなる.このため、第三実施形態は、当該大端面12と内輪の大鍔部との摺接部へ潤滑油をより供給し易くすることができる。
【0076】
なお、溝側面61a、61bは、単一の円弧面状にしてもよいし、複数の円弧面を滑らかに繋いだ複合曲面状にしてもよい。また、図示例では、油溝61の両側の溝側面61a、61bを曲面状にしたが、大端面12への付着性を考慮すると、少なくとも大端面12の周縁に近い側の溝側面61aを曲面状にすることが好ましく、一方側のみを曲面状にしてもよい。
【0077】
この発明の第四実施形態を
図7に基づいて説明する。なお、
図7は、
図5と切断位置が異なるが、同様の断面及び外観を示している。
【0078】
図7に示すように、第四実施形態の第二環状部70は、油溝71の幅W2が第二環状部70の内周面に向かって次第に小さくなっている。この幅変化は、片側の溝側面71aが延びる方向に対して、反対の片側の溝側面71bが延びる方向を溝側面71a側へ傾斜させることにより、実現されている。
【0079】
軸受運転中、円すいころの大端面(
図1参照)がころ周方向に回転するとき、油溝71と当該大端面との間に存在する潤滑油は、当該回転方向、例えば、
図7中時計回りの方向にせん断される。そうすると、
図7中右側の油溝71において、潤滑油は、時計回りの方向に第二環状部70の内周面側(つまり内輪側)へ引き摺られる。その油溝71の幅W2が第二環状部70の内周面に向かって次第に小さくなっているので、油溝71から潤滑油が内輪側へ流出し難くなる。したがって、第四実施形態は、油溝71と当該大端面(
図1参照)との間に潤滑油をより保持し易くすることができる。
【0080】
上述した実施形態に係る円すいころ軸受は、自動車用円すいころ軸受として用いると好適である。具体的には、上述した実施形態に係る円すいころ軸受は、自動車の動力伝達装置の回転軸を支持する用途であって、跳ね掛け又は油浴潤滑によって、潤滑油を外部から軸受内部へ供給する用途に好適である。上述の円すいころ軸受の使用例を
図8及び
図9に基づいて説明する。
図8は、自動車用デファレンシャルの一例を示すものである。
【0081】
図8に示すデファレンシャルは、ハウジング101に対して2つの円すいころ軸受102、103で回転自在に支持されたドライブピニオン104と、このドライブピニオン104に噛み合うリングギヤ105と、このリングギヤ105が取り付けられ、一対の円すいころ軸受106でハウジング101に対して回転自在に支持された差動歯車ケース107と、この差動歯車ケース107の中に配設されたピニオン108と、ピニオン108と噛み合う一対のサイドギヤ109とを備え、これらがギヤオイルの封入されたハウジング101内に収納されている。このギヤオイルは、各円すいころ軸受102、103、106の潤滑油にもなっており、跳ね掛け又は油浴潤滑法により軸受側面に供給される。各円すいころ軸受102、103、106は、上述の実施形態のいずれかに該当するものである。
【0082】
上述の円すいころ軸受の別の使用例を
図9に基づいて説明する。
図9は、自動車用トランスミッションの一例を示すものである。
【0083】
図9に示すトランスミッションは、段階的に変速比を変化させる多段変速機になっており、その回転軸(例えば入力軸201および出力軸202)を回転可能に支持する転がり軸受203〜208として、上述の実施形態のいずれかに係る円すいころ軸受を備えている。図示のトランスミッションは、エンジンの回転が入力される入力軸201と、入力軸201と平行に設けられた出力軸202と、入力軸201から出力軸202に回転を伝達する複数のギヤ列209〜212と、各ギヤ列209〜212と入力軸201または出力軸202との間に組み込まれた図示しないクラッチとを有する。トランスミッションは、クラッチを選択的に係合させることで使用するギヤ列209〜212を切り替え、入力軸201から出力軸202に伝達する回転の変速比を変化させるものである。出力軸202の回転は出力ギヤ213に出力され、その出力ギヤ213の回転がディファレンシャルギヤ等に伝達される。入力軸201と出力軸202は、それぞれ対応の円すいころ軸受203、204又は円すいころ軸受205、206で回転可能に支持されている。また、このトランスミッションは、ギヤの回転に伴う潤滑油(ミッションオイル)のはね掛けにより、潤滑油が各円すいころ軸受203〜208の側面にかかるようになっている。
【0084】
図8、
図9に例示する円すいころ軸受102、103、106、203〜208は、
図1〜7に示すいずれかの円すいころ軸受を使用している。そのため、トランスミッション又はデファレンシャル内で跳ね掛け又は油浴潤滑法により軸受内部へ供給された潤滑油の攪拌抵抗やせん断抵抗による軸受回転トルクの増加を避けつつ、運転再開当初における内輪の大鍔部と円すいころの大端面間の潤滑不足を防止することが可能なため、低粘度潤滑油の使用や少油量化にも対応することができ、ひいては自動車の動力損失を低減して低燃費化に貢献することができる。
【0085】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。