(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記放電信号発生源により発生される参照放電信号の既知の放電電荷量と、前記電荷量換算部から出力された放電電荷量との差分値が予め設定した許容範囲内か否かを判定し、判定結果に応じた情報を出力する判定部を具備する請求項1項に記載の部分放電測定装置。
部分放電の計測対象の電気機器の回路上の接地線または接地極に接続された放電信号発生源から、放電電荷量が既知の参照放電信号を前記接地線または前記接地極に入力し、
前記参照放電信号の電流量に応じた前記電気機器の箱体固有の係数を記憶し、
前記箱体に取り付けた放電センサにより検出される放電信号の表面電位に応じた電位差と前記係数とから求めた放電電荷量を出力する部分放電測定方法。
前記放電信号発生源により発生される参照放電信号の既知の放電電荷量と、前記放電信号と係数とから求めた放電電荷量との差分値が予め設定した許容範囲内か否かを判定し、判定結果に応じた情報を出力する請求項4に記載の部分放電測定方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1〜
図4を参照して第1実施形態の部分放電測定システムを説明する。
図1は第1実施形態の部分放電測定システムの構成を示す図、
図2は
図1の部分放電測定システムの部分放電信号発生源の構成を示す図、
図3は部分放電信号を説明するための図、
図4は部分放電測定装置の動作を説明するための図である。
【0010】
図1に示すように、第1実施形態の部分放電測定システムは、例えばスイッチギヤなどと呼ばれる電力機器に発生する部分放電を検出する部分放電測定装置2を備える。
【0011】
電力機器の箱体1の内部には、遮断器や主回路導体などの電気機器12が収容されている。電気機器12は、接地線13を通じて接地極14に接続されている。接地極14は接地されている。電気機器12には電力供給源11(送配電系統など)からの電源線15(高圧配電線)が接続されている。
【0012】
ここで、箱体1は、外壁を構成する複数の金属の構成板(正面板、天井板、背面板、床板、側面板など)を備える筐体である。構成板は、接地線13を介して接地極14に接続される。
【0013】
部分放電測定装置2は、部分放電検出ユニット20と、部分放電電荷量校正ユニット30とを有し、電力機器内部で発生する部分放電を測定する機器であり、部分放電電荷量評価のための校正機能を備える。
【0014】
部分放電検出ユニット20は、箱体1の構成板に接触させて固定した放電センサとしての電極21、電位信号増幅部22、この電位信号増幅部22に伝送線23を介して接続された部分放電検出部24を有する。伝送線23は例えば同軸ケーブルなどを用いるものとする。つまり部分放電検出ユニット20は、箱体1の外面に取り付けた電極21により検出される放電信号(パルス電流i
1)の表面電位v
1に応じた電位差ΔVを出力する。
【0015】
電極21は、箱体1の構成板との間で形成される浮遊容量を介して部分放電に伴う箱体1の表面電位v
1(の変化)を検出しそれを出力信号として電位信号増幅部22へ出力する。
【0016】
電位信号増幅部22は、電極21より入力された表面電位v
1を増幅および電流i
2に変換して伝送線23を介して部分放電検出部24に入力する。このように電位信号増幅部22を設けることで、電極21により検知された箱体1の表面電位v
1を高インピーダンスで受け、電流i
2に変換して後段の伝送線23に伝送することで、伝送線23の配線の長さ、引き回しによる影響を抑制することができる。
【0017】
表面電位v
1の周波数成分は、1MHz以上であることから、電位信号増幅部22は、その周波数を検出可能な周波数帯域のものを用いる。電位信号増幅部22は、箱体1の接地極14に接続し、接地(アース)するものとする。このようにすることで電位信号増幅部22での接地の基準が接地極14に定まり、部分放電に伴う箱体1の表面電位v
1の変化を正確に計測できる。
【0018】
部分放電電荷量校正ユニット30は、放電信号発生源としての部分放電信号発生源31と、部分放電電流計測部32と、この部分放電電流計測部32と信号線33を介して接続された部分放電電荷量換算部34と、記憶部35とを有する。
【0019】
部分放電信号発生源31は、校正の際に、部分放電の計測対象の電子機器12の回路上の接地線13または接地極14に入力線10を介して接続される。部分放電信号発生源31は、放電電荷量が既知の参照放電信号S1(パルス電流i)を発生し、入力線10を通じて接地線13または接地極14に入力する。部分放電電流計測部32は、部分放電信号発生源31から発生された参照放電信号S1が入力線10を通る際のパルス電流iを計測する。
【0020】
部分放電電流計測部32は、入力線10と絶縁しつつ入力線10に流れる電流量を計測するために、例えば貫通型のカレントトランス(以下「CT」と称す)などを使用する。信号線33は、例えば同軸ケーブルなどである。
【0021】
記憶部35には、参照放電信号S1(パルス電流i)の電流量に応じた電子機器12の箱体1固有の係数αが記憶されている。
【0022】
部分放電電荷量換算部34には、部分放電検出部24の出力信号(電位差ΔV)と、部分放電電流計測部32の出力信号(検出された電流i)とが入力される。
【0023】
部分放電電荷量換算部34は、入力された出力信号(電位差ΔV)を部分放電電荷量Qに換算し出力する。つまり部分放電電荷量換算部34は、放電検出ユニット20より出力される電位差ΔVと記憶部35の係数αとから求めた放電電荷量Qを出力する。
また部分放電電荷量換算部34は、部分放電電流計測部32からの出力信号(電流i)を部分放電電荷量Q
refに換算し出力する。
【0024】
なお、部分放電電流計測部32により検出される電流iから換算した部分放電電荷量Q
refが既知の部分放電電荷量Q
refとほぼ同じ場合は、既知の部分放電電荷量Q
refを予め記憶部35に記憶しておき、それを実測の部分放電電荷量Qとの比較に用いてもよい。
【0025】
部分放電電荷量を校正する際、放電電荷量が既知の部分放電信号発生源31を、入力線10を介して接地線13に接続する。接地線13への接続/解放には切り替えスイッチを利用する。
【0026】
ここで、部分放電信号発生源31により発生される参照放電信号S1は、箱体1内で生じる部分放電の信号を模擬するために、既知の放電電荷量Q
refを有し、
図2に示すように、立ち上がり時間が30nsec以下のパルス信号(電圧)である必要がある。
【0027】
この条件を満たすために、部分放電信号発生源31は、
図3に示すように、一方の端子を入力線10に接続し、他方の端子を箱体1に接続(接地)した圧電素子42を用いる。また、立ち上がり時間を30nsec以下に制御するために、圧電素子42と入力線10との間にコンデンサ41などの波形整形素子を挿入するものとする。なお、ここに示す部分放電信号発生源31の構成は一例であり、他の構成であってもよい。
【0028】
以下、
図4を参照してこの第1実施形態の部分放電測定装置2の部分放電電荷量の求め方について説明する。
図4に示すように、部分放電信号発生源31から参照放電信号S1を発生し、既知の放電電荷量Q
refのパルス電流である電流iを箱体1内の接地線13に入力するとき、大部分の電流i
0は、接地極14からアースに流出するが、そのうち一部分の電流i
1が箱体1の外面(構成板)に流入(伝達)する。
【0029】
この箱体1の外面(構成板)に一部流入した電流i
1は、表面電位v
1を励起し、構成板の板面に取り付けられた電極21で検出され、伝送線23を通じて部分放電検出部24に入力される。部分放電検出部24では、電位信号増幅部22により増幅された電流i
2を伝送線23を介して受信して電位差ΔVに変換し、電位差ΔVを放電電荷量換算部34に入力する。
【0030】
ここで、部分放電信号発生源31から発生し部分放電電流計測部32で計測されるパルス電流iと放電電荷量Q、ならびに表面電位v
1(電位差ΔV)は相関関係にあることから、放電電荷量Qと表面電位v
1(電位差ΔV)は係数αを用いて、Q=α×v
1と表すことができる。v
1をΔVと置き換えてもよい。
【0031】
係数αは、参照放電信号S1(パルス電流i)の電流量に応じた電子機器12の箱体1固有の係数である。この係数αは、放電電荷量換算部34での演算に使用するため、予め記憶部35に記憶しておくものとする。
【0032】
放電電荷量換算部34では、入力された電位差ΔVと記憶部35の係数αを用いて放電電荷量Qを算出し出力、つまり電位差ΔVを、計数αを用いて放電電荷量Qに換算し出力する。換算には、電位差ΔV以外に表面電位v
1を用いてもよい。
【0033】
(部分放電測定動作)
この部分放電測定システムにおいて、実際に電力機器の箱体1内部の部分放電を測定する際には、入力線10を接地線13から切り離し、箱体1内部の電気機器12を動作させる。そして、箱体1から電極21が検出した電流i
1の表面電位v
1を部分放電検出部24にて電位差ΔVに変換し放電電荷量換算部34に入力し、放電電荷量換算部34は入力された電位差ΔVに係数αを積算し、部分放電電荷量Qに換算しその電荷量Qの値を出力する。
【0034】
以上説明したように、第1実施形態によれば、校正の際に、入力線10を接地線13に接続して部分放電信号発生源31から発生させた既知の参照放電信号S1(パルス電流i)を接地線13に入力すると、接地線13から箱体1の外面を通じて電極21により検出された電流i
1の表面電位v
1が電流i
2として部分放電検出部24に入力されて電位差ΔVに変換されて部分放電電荷量校正ユニット30に入力される。
【0035】
つまり電極21により検出される電流i
1は、電気機器12の箱体1の内部構成によらず、接地線13や接地極14と箱体1の外面の構成板の接続状況によって決定されるため、部分放電測定装置2では、既知の参照放電信号S1(パルス信号)を電気機器12の接地線13に入力して箱体1の外面に取り付けた電極21で検出し信号処理することで、部分放電の大きさ(放電電荷量Q)を定量的に評価(校正)することができる。
【0036】
図5を参照して第2実施形態を説明する。
上記第1実施形態(
図1参照)では、電位信号増幅部22から接地極14へ接地線22aを接続することを説明したが、この第2実施形態では、
図1と同様の効果を得る他の構成例として、
図5に示すように、電極21と電位信号増幅部22との間に差分算出器29を介在させて、差分算出器29から配線した接地線29aの先端に設けた電極16を接地極14に接触固定してもよい。また電極16を接地極14に接触固定する以外にも、例えば電極16を箱体1の構成板に取り付けるようにしてもよい。
【0037】
図6を参照して第3実施形態を説明する。
図6に示すように、この第3実施形態の部分放電信号発生源31は、電池などの定電圧電源43とスイッチング素子44を用いて部分放電信号発生回路を構成する。
【0038】
この場合、上記第1実施形態(
図2)と同様に、コンデンサ等の素子41を挿入することで部分放電信号発生源31が発生する放電信号S1の立ち上がり時間を30nsec以下に制御する。
【0039】
図7を参照して第4実施形態を説明する。
図7に示すように、この第4実施形態の部分放電信号発生源31は、出力端子と入力端子の二端子を備え、各端子(出力端子と入力端子)と接地線13とを入力線10a、出力線10bでそれぞれ接続する。この場合、出力線10bの側に部分放電電流計測部32を設ける。
【0040】
この第4実施形態では、部分放電信号発生源31から発生した部分放電信号S1を、破線矢印Aで示すように、入力線10aを通じて接地線13に流し、接地線13から出力線10bを通じて部分放電信号発生源31に戻すようにする。出力線10bに流れる部分放電のパルス電流iが部分放電電流計測部32により検出されて、部分放電電荷量換算部34に入力される。
【0041】
この第4実施形態によれば、上記実施形態と同様の効果が得られる以外に、部分放電信号発生源31から接地線13へ出力し接地線13を通じて戻ってくる部分放電信号S1を部分放電電流計測部32が検出することで、測定誤差がより少なくなる。
【0042】
図8を参照して第5実施形態を説明する。
図8に示すように、この第5実施形態は、判定部4を有する。判定部4は、
図1、
図5に示した部分放電電荷量換算部34の出力(放電電荷量Q)が、誤差範囲(許容範囲)内にあるか否かの判定結果を出力する。
【0043】
より具体的には、判定部4は、部分放電電荷量換算部34から出力された放電電荷量Qと放電信号発生源31により発生される参照放電信号S1の既知の放電電荷量Q
ref)との差分値が予め記憶(設定)していた許容範囲(誤差範囲)内か否かを判定し、判定結果に応じた情報(許容範囲内であればOK、許容範囲を超えていればNGなど)を出力する。なお、判定結果に、求めた差分値と許容範囲を含めて出力してもよい。予め設定した許容範囲としては、例えば±0.5%などの誤差範囲とする。
【0044】
本発明の実施の形態を説明したが、この実施の形態は、例として示したものであり、この他の様々な形態で実施が可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成要素の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0045】
また上記の実施の形態に示した部分放電測定装置2の各構成要素を、コンピュータのハードディスク装置などのストレージにインストールしたプログラムで実現してもよく、また上記プログラムを、コンピュータ読取可能な電子媒体:electronic mediaに記憶しておき、プログラムを電子媒体からコンピュータに読み取らせることで本発明の機能をコンピュータが実現するようにしてもよい。電子媒体としては、例えばCD−ROM等の記録媒体やフラッシュメモリ、リムーバブルメディア:Removable media等が含まれる。さらに、ネットワークを介して接続した異なるコンピュータに構成要素を分散して記憶し、各構成要素を機能させたコンピュータ間で通信することで実現してもよい。