(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903528
(24)【登録日】2021年6月25日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】切断ブレード
(51)【国際特許分類】
B24D 5/12 20060101AFI20210701BHJP
B24D 5/06 20060101ALI20210701BHJP
B28D 1/24 20060101ALI20210701BHJP
B28D 7/02 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
B24D5/12 Z
B24D5/06
B28D1/24
B28D7/02
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-173133(P2017-173133)
(22)【出願日】2017年9月8日
(65)【公開番号】特開2019-48342(P2019-48342A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2019年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】熊本 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼尾 浩二
(72)【発明者】
【氏名】池尻 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 浩孝
【審査官】
山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−509840(JP,A)
【文献】
特開2001−018174(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0002971(US,A1)
【文献】
特開平11−277444(JP,A)
【文献】
特開2013−018118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00 − 99/00
B28D 1/24
7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の基板の外周に複数のセグメントチップを一定間隔に配置し、前記基板の円周方向に隣り合う前記セグメントチップの間の前記基板に、前記基板の外周側が開口し、前記基板の中心に向かって凹状をなし、前記基板の円周方向に対向する一対の直線状の内縁部を備えたスリットを有する切断ブレードであって、
前記スリットは、前記基板の円周方向に対向する一対の直線状の内縁部の間隔である当該スリットの幅が前記スリットの底部側から開口端側に向かって連続的に減少している部分を備え、前記スリットの底部の側面視形状(前記基板の側面に垂直な方向から見た形状)は一対の前記内縁部に内接する円の一部をなし、前記スリットの内縁部と底部との境界部分に変曲面や段差部が存在せず、滑らかに連続している切断ブレード。
【請求項2】
前記スリットにおいて、前記基板の円周方向に沿って対向する一対の内縁部のうち、当該切断ブレードの回転方向の後方側に位置する内縁部が前記基板の半径方向と平行をなす請求項1記載の切断ブレード。
【請求項3】
前記スリットにおいて、前記基板の円周方向に沿って対向する一対の内縁部のなす角度が10度〜50度である請求項1または2記載の切断ブレード。
【請求項4】
前記スリットの開口端から底部までの距離が異なる複数種類のスリットを備えた請求項1〜3の何れかに記載の切断ブレード。
【請求項5】
前記スリットの開口端の開口幅が1.5mm〜5mmである請求項1〜4の何れかに記載の切断ブレード。
【請求項6】
前記スリットの底部の側面視形状が直径5mm〜12mmの円の一部をなす請求項1〜5の何れかに記載の切断ブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木建設業の作業現場において、アスファルト、鉄筋コンクリート、石材などの切断作業に使用される切断ブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
土木建設業の作業現場において、アスファルトや鉄筋コンクリートの切断作業に使用される切断ブレードとして、例えば、
図10に示すようなものがある。この切断ブレード50は、ダイヤモンド砥粒を金属粉末で焼結して形成されたセグメントチップ51を、円板状の基板52の外周に一定間隔ごとに固着することによって形成されている。また、基板52の外周部分において、基板52の円周方向に隣り合うセグメントチップ51,51の間にはそれぞれスリット53が開設されている。
【0003】
スリット53の側面視形状はU字形状であってもよいが、スリット底部の応力集中を緩和するため、従来、
図10に示すように、スリット53の底部(基板52の中心寄りの部分)に丸孔54を設けた所謂「キースリット」が広く採用されている。
【0004】
一方、本発明に係る切断ブレードのように基板のスリットに特徴のある従来の切断ブレードとして、例えば、特許文献1,2に記載された切断ブレードがある。特許文献1記載の切断ブレードにおいては、それぞれのスリットの底部の丸穴を楕円形の孔にして、スリット底部の曲率を大きくすることにより応力集中を緩和する機能の向上が図られている。しかしながら、スリット底部をこのような構造にすると、外力が加わったときの応力集中位置が、曲率が最も小さくなる楕円の小径側に発生し易くなるため、クラック発生の防止に有効とは言えない。
【0005】
また、特許文献2記載の切断ブレードにおいては、それぞれのスリットの底部に、切断ブレードの回転方向に延びる騒音低減用ホールを設けることにより、切断ブレードの空転時に発生する騒音の低減が図られている。このスリット形状であれば、空転時の風切り音に含まれる2KHzの耳障りな周波数域の音圧が低下するので、騒音対策としては有効である。
【0006】
しかしながら、特許文献2記載の切断ブレードにおいては、ブレードの回転方向に対し、スリットの騒音低減用ホールはチップ後方下部まで侵入した形状であるため、チップ後方部の基板の剛性が低くなり、切断作業中にチップ自体の振動が発生し、切断作業中の騒音は一般品の切断ブレードと大差がないのが実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−160416号公報
【特許文献2】特開2015−39760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般にアスファルト道路などの切断作業においては、道路面に沿って移動可能な台車に切断ブレードを回転駆動するエンジンを搭載した自走式の切断機が使用されている。このような自走式の切断機による切断作業における切断深さは、アスファルト層の厚みにもよるが、10cm〜60cm程度であり、切断作業中にアスファルト層に形成される溝部分は、その溝幅に対し、溝深さが深いという特徴がある。
【0009】
自走式の切断機による切断作業においては、切断部分への冷却水の供給が行われるが、加工点への注水効率を高めるため、主軸スピンドルから冷却水を供給し、切断ブレードの回転時に生じる遠心力を利用して注水する方法が一般的である。
【0010】
切断作業中に発生する切粉混じりの汚泥水は切断機のカバーに取り付けられたバキューム装置によって吸引し、所定の場所へ回収されているが、近年、切断ブレードの性能向上及び切断機の高馬力化により切断速度が速くなっているため、冷却水の供給量に比べ、切粉の排出量が増大し、切粉の取り残しが問題となっている。
【0011】
一般に、自走式の切断機に使用する冷却水はタンクに貯留した状態で運搬車に載せて作業現場に搬入し、ポンプを用いて切断機に供給されているので、供給可能な総水量は冷却水タンクの容量の範囲内に限られる。このため、前記問題を解決する手段として、冷却水の供給量を増やすことが考えられるが、それにも限度があり、また、冷却水の供給量を増やすと、相対的に切断距離が短くなってしまうため、有効な手段とはいえない。
【0012】
図10に示す従来の切断ブレード50においては、スリット形状が「キースリット」であるため、スピンドル(図示せず)から放出された冷却水は遠心力で基板52の側面を伝わって刃先(セグメントチップ51の外周側)に向かって流動するが、スリット53の丸孔54に流れ込むと、丸孔54と直線部53が接合した段差部分で冷却水の流動が妨げられ、冷却水の一部が基板52の側面に流れ込み、セグメントチップ51と基板52の接合部の段差に留まってしまうので、ポンプから供給された冷却水が加工点付近に効率良く供給されないという現象が生じている。
【0013】
この結果、切粉に対する冷却水の供給量が減少し、汚泥の濃度が高まり、相対的に、切粉に対するバキューム装置の吸引力が不足するので、切断溝に切粉が残ったり、バキューム装置の内面に付着した切粉が落下して大きな汚泥塊が路面に堆積したりするという問題が生じている。
【0014】
一方、特許文献1記載の切断ブレードにおいては、スリットの底部に楕円形孔が設けられ、特許文献2記載の切断ブレードにおいては、スリットの底部に切断ブレードの回転方向に延びる騒音低減用ホールを設けられているが、これらのスリットは冷却水を効率良く刃先に誘導する作用を有していないので、切断作業中に発生する切粉の取り残しをなくすことができない。
【0015】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、冷却水を効率良く刃先に誘導することができ、切粉の排出機能に優れた切断ブレードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る切断ブレードは、円板状の基板の外周に複数のセグメントチップを一定間隔に配置し、前記基板の円周方向に隣り合う前記セグメントチップの間の前記基板に、前記基板の外周側が開口し、前記基板の中心に向かって凹状をなし、前記基板の円周方向に対向する一対の直線状の内縁部を備えたスリットを有する切断ブレードであって、
前記スリットは、前記基板の円周方向に対向する一対の直線状の内縁部の間隔である当該スリットの幅が前記スリットの底部側から開口端側に向かって連続的に減少している部分を備え
、前記スリットの底部の側面視形状(前記基板の側面に垂直な方向から見た形状)は一対の前記内縁部に内接する円の一部をなし、前記スリットの前記内縁部と前記底部との境界部分に変曲面や段差部が存在せず、滑らかに連続していることを特徴とする。ここで、前記「スリットの幅」とは、前記基板の円周方向におけるスリットの寸法(基板の円周方向における内縁部の間隔)をいう。
【0017】
前記切断ブレードの場合、前記スリットにおいて、前記基板の円周方向に沿って対向する一対の内縁部のうち、当該切断ブレードの回転方向の後方に位置する内縁部が前記基板の半径方向と平行をなすようにすることができる。
【0018】
前記切断ブレードの場合、前記スリットにおいて、前記基板の円周方向に沿って対向する一対の内縁部のなす角度が10度〜50度であることが望ましい。
【0019】
なお、前記角度が10度未満であると冷却水の水圧を高めるのに十分な流速が得られず、前記角度が50度を超えると、スリット内に流入した冷却水がスリットの開口端から流出するときの抵抗が増大し、注水効率が低下するので、前記角度は10度〜50度であることが望ましい。
【0020】
前記切断ブレードにおいては、前記スリットの開口端から底部までの距離が異なる複数種類のスリットを備えることができる。
【0021】
前記切断ブレードにおいては、前記スリットの開口端の開口幅が1.5mm〜5mmであることが望ましい。
【0022】
前記開口幅が1.5mm未満であるとスリットが狭すぎて、水流の抵抗が増大し、刃先に十分な水流を供給することができなくなり、切粉と冷却水との混合状態が悪化する傾向が生じ、前記開口幅が5mmを超えると、冷却水の流速を高める効率が低下し、従来のU字形状のスリットと同等の性能しか得られなくなるので、前記開口幅は1.5mm〜5mmであることが望ましい。
【0023】
前記切断ブレードにおいては、前記スリットの底部の側面視形状が直径5mm〜12mmの円の一部をなすものであることが望ましい。
【0024】
前記直径が5mm未満であると、スリット部分の容積が小さくなり、スピンドルから供給され基板側面を伝わってスリットまで流動してきた冷却水の捕捉量が少なくなるので、刃先への供給量が不足し、前記直径が12mmを超えると、回転方向に隣り合うスリットまでの距離が短くなるので、セグメントチップに基板側面と交差する方向の力が加わったときの基板の剛性が不足し、曲がり切れなどの不具合が発生し易くなるので、前記直径は5mm〜12mmであることが望ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、冷却水を効率良く刃先に誘導することができ、切粉の排出機能に優れた切断ブレードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態である切断ブレードを示す側面図である。
【
図2】
図1に示す切断ブレードの一部拡大図である。
【
図3】
図2に示す切断ブレードのスリット付近の一部拡大図である。
【
図5】
図1に示す切断ブレードによる切断作業を示す一部省略垂直断面図である。
【
図6】切断試験に使用した切断ブレードの寸法及びその他のデータを示す図表である。
【
図8】その他の実施形態である切断ブレードの一部を示す側面図である。
【
図9】その他の実施形態である切断ブレードの一部を示す側面図である。
【
図10】従来の切断ブレードの一部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、
図1〜
図9に基づいて本発明の実施形態である切断ブレード100,200,300について説明する。
【0028】
初めに、
図1〜
図7に基づいて切断ブレード100について説明する。
図1〜
図4に示すように、切断ブレード100は、円板状の基板10の外周に複数のセグメントチップ11を一定間隔に配置し、基板10の円周方向に隣り合うセグメントチップ11,11の間の基板10に、基板10の外周側が開口し、基板10の中心10cに向かって凹状をなすスリット12を有している。切断ブレード100は、スリット12の幅12wが、スリット12の底部12b側から開口端12a側に向かって連続的に減少している部分を備えている。以下、スリット12を、従来の「キースリット」に対して「ノズル型スリット」と記すことがある。
【0029】
各スリット12において、基板10の円周方向に沿って対向する一対の直線状の内縁部12c,12dのうち、当該切断ブレード100の回転方向Rの後方側に位置する内縁部12cが基板10の半径方向10rと平行をなしている。なお、スリット12の幅12wは、基板10の円周方向におけるスリット12の寸法(基板10の円周方向における内縁部12c,12dの間隔)を意味している。
【0030】
各スリット12において対向する一対の内縁部12c,12dのなす角度12θは10度〜50度の範囲内で任意に設定可能であるが、本実施形態においては、スリット12の内縁部12c,12dのなす角度12θを15度に設定している。
【0031】
各スリット12の開口端12aの開口幅12eは1.5mm〜5mmの範囲内で任意に設定可能であるが、本実施形態では開口幅12eを3mmに設定している。
【0032】
図3に示すように、スリット12の底部12bの側面視形状(基板10の側面に垂直な方向から視た形状)は内縁部12c,12dに内接する円Cの一部をなしている。詳しくは、
図3に示すように、スリット12を側面視したとき、円Cは、開口端12a側から中心10c側(
図1参照)に向かって連続的に拡幅する2本の直線として表れる内縁部12c,12dに内接している。即ち、円Cは、側面視形状が2本の直線をなす内縁部12c,12dの内接円に相当する。
【0033】
内縁部12c,12dと底部12bとの境界部分には、変曲面や段差部などの不連続部分が存在せず、滑らかに連続している。円Cの直径12fは5mm〜12mmの範囲内で任意に設定可能であるが、本実施形態では円Cの直径12fを8mmに設定している。
【0034】
図5に示すように、切断ブレード100を用いてアスファルト道路Dの切断作業を行った場合、スピンドル軸(図示せず)から供給された冷却水は遠心力により、基板10の側面を伝わって外周側へ流動し、矢線Wで示すように、各スリット12の底部12bから開口端12aに向かって流動するが、スリット12は、その幅12wが、スリット12の底部12b側から開口端12a側に向かって連続的に減少した部分を備えた「ノズル型スリット」であるため、冷却水がスリット12内を開口端12a側に向かって流動する過程にて、冷却水の流速が大きく加速され、開口端12aから放出されるときの水圧は急激に上昇し、冷却水は強烈な圧力で加工点Pに流れ込む。
【0035】
これにより、加工点Pの近傍で発生する切粉及び汚泥と冷却水とは十分に混合され、バキューム装置(図示せず)によって速やかに回収される。従って、切断溝Mに切粉が残ったり、バキューム装置の内面に付着した切粉が落下して、大きな汚泥塊がアスファルト道路D上に堆積したりすることがない。
【0036】
このように、切断ブレード100は、幅12wが、スリット12の底部12b側から開口端12a側に向かって連続的に減少した部分を備えた「ノズル型スリット」であるスリット12を備えているため、切断作業中に冷却水を効率良く刃先に誘導することができ、加工点Pなどで発生する切粉を効率良く排出することができる。
【0037】
次に、
図6,
図7に基づいて、本発明の実施形態に係る切断ブレードである「開発品1」、「開発品2」及び比較対象の切断ブレードである「比較1」〜「比較4」について行った切断実験の内容及びその結果について説明する。
【0038】
実験に使用した切断ブレード(評価ブレード)の寸法及びその他のデータは
図6に示す通りである。
図6中に記載した「寸法:18”×40L×3.6T×12X×30N」中のL,T,Xは、それぞれ
図2,
図4中に示すセグメントチップ11の各部分の寸法を示し、Nは基板外周のセグメントチップ11の配置個数を示している。また、
図6中に示す「角度」、「開口幅」、「底部径」及び「深さ」は、それぞれ、
図3中に示す「角度θ」、「開口幅12e」、「直径12f」及び「深さ12g」を表している。
【0039】
「開発品1」、「開発品2」に係る切断ブレード及び「比較1」〜「比較4に係る切断ブレードをそれぞれ台車式の切断機に取り付け、下記の切断条件に基づいて、被削材であるアスファルトの切断を行った。
ブレード回転速度:3000m/min
切込み:15cm
切断距離:200m/ブレード
【0040】
前述した
図6中に示す各切断ブレードによる切断実験の結果はそれぞれ
図7に示す通りである。「開発品1」及び「開発品2」は、切断作業中の刃先への水回りが良く、セグメントチップ表面のクリーニング性、冷却性が向上し、
図10に示す従来の「キースリット」型の切断ブレード50より切断速度が10〜20%向上した。また、開発品1」及び「開発品2」は、切断作業中に、切粉と冷却水との混合が十分に行われ、バキューム装置で安定して回収されるので、切断溝内の切粉の詰まりや切粉の残留は殆ど発生しなかった。
【0041】
従来品である「比較1」については、切断溝に切粉の詰まりがあり、機械に付着した切粉が、時折、塊となって路面上に堆積した。また、「キースリット」の円形部分と直線状の内縁部が対向した部分との境界部分の基板側面に、円周方向の筋が見られ、冷却水の一部が流れを遮られ、基板の側面側に流れる現象が生じた。
【0042】
「比較2」は、スリットの開口端が狭いので、刃先部への冷却水の供給量が不足し、目詰まりを起こし、切粉が噴き上がる現象が発生した。
【0043】
「比較3」は、「比較1」と同等の切断速度であるが、冷却水の圧力向上が十分でなく、切断溝への切粉の詰まりが見られた。
【0044】
「比較4」は、「比較2」のスリットの開口端が広がった構造を有するが、供給される冷却水の量に対し、スリットの開口端の開口幅が広過ぎるため、圧力を向上させるような貯水効果が不足し、切粉と冷却水との混合効果が低下し、切断溝内に切粉の詰まりが見られた。
【0045】
これに対し、本発明の実施形態に係る切断ブレードである「開発品1」及び「開発品2」は、前述したように、刃先部への水回りが良く、切粉の詰まりも発生しなかった。
【0046】
次に、
図8,
図9に基づいて、本発明のその他の実施形態である切断ブレード200,300について説明する。なお、切断ブレード200,300において、
図1〜
図5に示す切断ブレード100と共通する部分については、
図1〜
図5中の符号と同符号を付して説明を省略する。
【0047】
図8に示す切断ブレード200においては、スリット22の内縁部22c,22dのなす角度22θが45度、スリット22の底部22bの直径22fが11mm、スリット22の開口端22aの開口幅22eが3mm、開口端22aから底部22bまでのスリット22の深さが21mmに設定されている。
【0048】
図8に示すように、切断ブレード200においては、スリット22の側面視形状が、底部22bから開口端22aに向かって大きく絞られた形状となっているので、切断作業中、スリット22の開口端22aから放出される冷却水の水圧は、
図1に示す切断ブレード100より高くなり、切粉と冷却水の混合効率が高まるので、切粉の排出機能に優れている。
【0049】
次に、
図9に示す切断ブレード300においては、スリットの開口端から底部までの深さ及び対向する内縁部のなす角度がそれぞれ異なる複数種類のスリット12,32が基板10の外周方向に沿って交互に配置されている。スリット12の開口端12aから底部12bまでの深さ12gは、スリット32の開口端32aから底部32bまでの深さ32gより大である。また、スリット12の対向する内縁部12c,12dのなす角度12θは、スリット32の対向する内縁部32c,32dのなす角度32θより小である。
【0050】
図9に示す切断ブレード300においては、基板10の円周方向に隣り合うスリット12,32の底部12b,32bの距離が離れた状態となっているので、基板10のスリット12,32間の曲げ強度が高くなり、アスファルトなどの切断作業中に、斜断が発生難くなる。
【0051】
なお、
図1〜
図9に基づいて説明した切断ブレード100,200,300は本発明に係る切断ブレードを例示するものであり、本発明に係る切断ブレードは、前述した切断ブレード100,200,300に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る切断ブレードは、アスファルト、鉄筋コンクリート、石材などの切断作業用工具として、土木建設業などの産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 基板
10c 中心
10r 半径方向
11 セグメントチップ
12,22,32 スリット
12a,22a,32a 開口端
12b,22b,32b 底部
12c,12d,22c,22d,32c,32d 内縁部
12e,22e 開口幅
12f,22f 直径
12g,22g,32g 深さ
100,200,300 切断ブレード
12θ,22θ,32θ 角度
C 円
D アスファルト道路
M 切断溝
P 加工点